以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、膝関節を人工膝関節に置換する人工膝関節置換術において用いられる人工膝関節置換術用手術器具として広く適用することができる。
[人工膝関節置換術用手術器具の概略]
図1は、本発明の一実施の形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1を示す斜視図である。図1に示す人工膝関節置換術用手術器具1は、膝関節を人工膝関節に置換する人工膝関節置換術において用いられる。
図1に示す人工膝関節置換術用手術器具1は、切除方向ガイド部11、両顆接触固定部12、本体部13を備えて構成されている。尚、図1では、両顆接触固定部12(図4を参照)の図示が省略されている。切除方向ガイド部11、両顆接触固定部12、本体部13は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
[切除方向ガイド部]
図2は、切除方向ガイド部11を示す斜視図である。図3は、人工膝関節置換術用手術器具1を用いて、大腿骨100の遠位側の端部100aの切除面100bに対して交差する複数の方向に沿って大腿骨100を切除する作業が行われた状態の大腿骨100の端部100aを、人工膝関節置換術用手術器具1の一部とともに示す図である。ここで、「遠位側」とは、体幹からより遠い側であり、「近位側」とは、体幹により近い側である。尚、図3では、大腿骨100の遠位側の端部100aに対して、切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12が設置されたままの状態が、図示されている。また、図3(後述する図5、図11乃至図15、図17も同様)では、大腿骨100の端部100a以外の人体組織の図示が省略されており、大腿骨100の外形の凹凸形状が仮想の線で模式的に表されている。
図1乃至図3に示す切除方向ガイド部11は、大腿骨100の遠位側の端部100aの切除面100bに設置される。尚、人工膝関節置換術においては、人工膝関節の大腿骨コンポーネント(図示省略)が大腿骨100に設置される際には、まず、大腿骨100の遠位側の端部100aが一部切除される。これにより、大腿骨100の遠位側の端部100aにおいて、大腿骨100の軸方向(図3にて両端矢印Aで示す方向)に対して略垂直に広がる切除面100bが形成される。
上記のように切除面100bが形成された後、切除方向ガイド部11が、切除面100bに設置される。このとき、人工膝関節置換術を行う術者は、後述するように人工膝関節置換術用手術器具1を操作し、切除面100bに対して切除方向ガイド部11の位置を調整して設置する。そして、切除面100bに対して切除方向ガイド部11が設置された状態で、大腿骨コンポーネントの設置用の面を大腿骨100の遠位側の端部100aに形成する作業が行われる。
切除方向ガイド部11には、大腿骨設置面21、複数のスリット(22a、22b、22c、22d)、取付穴23、固定ピン孔24、凹部25、等が設けられている(図2及び図3を参照)。
大腿骨設置面21は、切除方向ガイド部11が大腿骨100の切除面100bに設置される際に切除面100bに当接する平坦な端面として設けられている。尚、切除方向ガイド部11は、平坦な大腿骨設置面21に沿って広がるとともに大腿骨設置面21に対して垂直な方向の厚みを有するブロック状の基本形状を有している。そして、切除方向ガイド部11は、上記の基本形状に対して、更に、複数のスリット(22a、22b、22c、22d)等の凹凸形状が形成されている。
複数のスリット(22a、22b、22c、22d)は、切除面100bに対して交差する複数の方向に沿って大腿骨100を電動カッター等として構成される骨切除器具(図示省略)によって切除する際の切除方向をガイドするように設けられている。各スリット(22a、22b、22c、22d)は、大腿骨設置面21から切除方向ガイド部11における大腿骨設置面21とは反対側の面に亘って切除方向ガイド部11を貫通するスリットとして形成されている。
大腿骨100の切除面100bに対して切除方向ガイド部11が設置された状態で、各スリット(22a、22b、22c、22d)のそれぞれに対して前述の骨切除器具のカッター刃が挿入される。そして、各スリット(22a、22b、22c、22d)によって切除方向がガイドされながら、骨切除器具のカッター刃による大腿骨100の端部100aの切除が行われる。
図3では、各スリット(22a、22b、22c、22d)によって切除方向がガイドされながら骨切除器具によって切除が行われることで形成された大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)が示されている。スリット22aによって切除方向がガイドされて骨切除器具による切除が行われることで、大腿骨コンポーネント設置用面101aが形成される。スリット22bによって切除方向がガイドされて骨切除器具による切除が行われることで、大腿骨コンポーネント設置用面101bが形成される。スリット22cによって切除方向がガイドされて骨切除器具による切除が行われることで、大腿骨コンポーネント設置用面101cが形成される。スリット22dによって切除方向がガイドされて骨切除器具による切除が行われることで、大腿骨コンポーネント設置用面101dが形成される。
大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)の形成作業が完了すると、切除方向ガイド部11が大腿骨100の端部100aから取り外される。そして、大腿骨コンポーネントが、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)と、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)が形成された状態で残された切除面100bとに対して嵌合するように取り付けられ、大腿骨100の端部100aに固定される。
取付穴23は、本体部13に対して切除方向ガイド部11を取り付け可能にするための部分として設けられている。取付穴23は、本体部13における後述の前後位置調整機構30の前後移動フレーム40の取付穴嵌合部40bが嵌合可能な嵌合穴として設けられている。そして、上記の取付穴嵌合部40bが、取付穴23に対して嵌合することで、切除方向ガイド部11が本体部13に対して取り付けられる。
固定ピン孔24は、切除方向ガイド部11を大腿骨100の端部100aに対して固定するための固定ピン14(図3を参照)が挿入される貫通孔として設けられている。後述するように人工膝関節置換術用手術器具1が術者によって操作され、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の位置の調整が完了すると、固定ピン14が、固定ピン孔24に対して挿通されて嵌合する。更に、固定ピン14の先端部は、大腿骨100の端部100aに対して突き刺さるようにして打ち込まれ、大腿骨100に固定される。これにより、切除方向ガイド部11が大腿骨100の端部100aに対して固定される。尚、図2では、1つの固定ピン孔24のみが表れているが、切除方向ガイド部11において、固定ピン孔24は、複数設けられている。
凹部25は、本体部13に対して両顆接触固定部12が取り付けられる際に、本体部13における後述の回転軸31と両顆接触固定部12における後述の回転軸取付部27とが挿通される空隙を区画する部分として設けられている。即ち、本体部13に対して両顆接触固定部12が取り付けられた状態では、本体部13における回転軸31と両顆接触固定部12における回転軸取付部27とが互いに接続されて凹部25の内側に配置される。
[両顆接触固定部]
図4は、人工膝関節置換術用手術器具1に設けられる両顆接触固定部12を示す斜視図である。図5は、両顆接触固定部12が大腿骨100の遠位側の端部100aに固定された状態を示す斜視図である。尚、図5では、大腿骨100の端部100aに切除面100bのみが形成され、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)は形成されていない状態の大腿骨100が図示されている。
図3乃至図5に示す両顆接触固定部12は、大腿骨100の遠位側の端部100aの両顆(102a、102b)に対して患者の人体の後方側で接触して大腿骨100に固定される。尚、図5では、人体の前後方向を両端矢印Bで示している。
両顆接触固定部12は、中央部26、回転軸取付部27、一対の顆接触部(28a、28b)、を備えて構成されている。中央部26、回転軸取付部27、一対の顆接触部(28a、28b)は、一体に形成されている。
中央部26は、一対の顆接触部(28a、28b)の間に配置されて一対の顆接触部(28a、28b)を一体に連結する部分として設けられている。中央部26は、架橋部分26a及び一対の脚部(26b、26c)を備えている。
架橋部分26aは、細長いプレート状に形成され、一対の脚部(26b、26c)を介して一対の顆接触部(28a、28b)を架橋するように一体に連結している。また、架橋部分26aには、貫通孔として形成された固定ピン孔26dが設けられている。固定ピン孔26dは、両顆接触固定部12を大腿骨100の端部100aに対して固定するための固定ピン15(図5を参照)が挿入される貫通孔として設けられている。
一対の脚部(26b、26c)は、架橋部分26aからそれぞれ突出して延びるように設けられている。尚、一対の脚部(26b、26c)のそれぞれは、いずれも、プレート状に細長く延びる架橋部分26aにおける一方の端部から突出するように設けられている。尚、一対の脚部(26b、26c)は、架橋部分26aから互いに異なる方向に突出しており、更に、架橋部分26aの長手方向に対して架橋部分26a側とは反対側に向かって斜めの方向に延びるように突出している。
回転軸取付部27は、本体部13における後述の回旋位置調整機構29の回転軸31に対して取り付けられる部分として設けられている。この回転軸取付部27は、略円筒状に形成された部分を有し、中央部26の架橋部分26aから片持ち状に突出するように設けられている。回転軸取付部27における架橋部分26aから突出する先端側には、嵌合穴27aが設けられている。回転軸取付部27の嵌合穴27aに後述する回転軸31が嵌合することで、回転軸取付部27と回転軸31とが接続されて連結される。そして、回転軸取付部27と回転軸31とが接続されることで、両顆接触固定部12が本体部13における後述の回旋位置調整機構29に取り付けられる。
一対の顆接触部(28a、28b)は、大腿骨100の遠位側の端部100aの顆(102a、102b)のそれぞれに対して接触する部分として設けられている。そして、一対の顆接触部(28a、28b)のそれぞれは、顆(102a、102b)のそれぞれに対して接触する面を有する平坦なプレート状に設けられている。
顆接触部28aは、脚部26bを介して架橋部分26aに一体に連結されている。一方、顆接触部28bは、脚部26cを介して架橋部分26aに一体に連結されている。そして、顆接触部28aにおける架橋部分26a側の平坦な面が、大腿骨100の遠位側の端部100aにおける一方の顆102aに対して接触する面として構成されている。一方、顆接触部28bにおける架橋部分26a側の平坦な面が、大腿骨100の遠位側の端部100aにおける他方の顆102bに対して接触する面として構成されている。
尚、顆接触部28aにおける顆102aに対して接触する面と、顆接触部28bにおける顆102bに対して接触する面とは、同一の仮想の平面に沿って配置されている。また、顆接触部28aにおける顆102aに対して接触する面と顆接触部28bにおける顆102bに対して接触する面とが配置される平面は、回転軸取付部27に接続する後述の回転軸31が延びる方向と平行に設定されている。
両顆接触固定部12は、大腿骨100の端部100aに切除面100bが形成された後、大腿骨100の端部100aに固定される。このとき、まず、両顆接触固定部12は、一対の顆接触部(28a、28b)において両顆(102a、102b)に接触した状態で設置される。そして、固定ピン15が、固定ピン孔26dに対して挿通されて嵌合する。更に、固定ピン15の先端部は、大腿骨100の端部100aに対して突き刺さるようにして打ち込まれ、大腿骨100に固定される。これにより、両顆接触固定部12が大腿骨100の端部100aに対して固定される。
[本体部の概略]
図6は、本体部13を示す斜視図である。図7は、本体部13の断面構造を示す斜視図である。図8は、本体部13の断面図であって、図7に表れた断面を示す図である。図9は、人工膝関節置換術用手術器具1の断面構造を示す斜視図である。図10は、人工膝関節置換術用手術器具1の断面図であって、図9に表れた断面を示す図である。
図1、図6乃至図10に示すように、本体部13は、回旋位置調整機構29及び前後位置調整機構30を備えて構成されている。そして、本体部13には、切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12が取り付けられる(図1、図9、図10を参照)。尚、図7及び図8は、切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12が取り付けられていない状態の本体部13を示している。一方、図9及び図10は、切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12が取り付けられた状態の本体部13を示している。
[回旋位置調整機構の概略]
図1、図6乃至図10に示す回旋位置調整機構29は、大腿骨100の遠位側の端部100aの切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置を調整するための機構として設けられている。図5では、切除面100bが配置される平面に垂直な軸線Lが一点鎖線で示されている。上記の回旋位置は、軸線Lを中心として切除方向ガイド部11が切除面100bに対して回旋する方向における切除方向ガイド部11の位置として構成される。
回旋位置調整機構29は、軸線Lに沿って配置される回転中心Lを中心として後述の前後位置調整機構30とともに切除方向ガイド部11を揺動させることで、切除面100bに対して切除方向ガイド部11を回旋させるように構成されている。ここで、切除方向ガイド部11が回旋する際の中心線となる回転中心Lは、軸線Lに沿って配置されるため、回転中心L及び軸線Lについて、同一の符号を用いている。以下、回旋位置調整機構29に関し、切除面100bに対して切除方向ガイド部11を回旋させるための更に具体的な構成について説明する。
図1、図6乃至図10に示すように、回旋位置調整機構29は、回転軸31、回旋側フレーム32、支持フレーム33、スライド移動部材34、ナット部材35、等を備えて構成されている。
[回転軸]
図1、図6乃至図10に示す回転軸31は、直線状に延びる円柱状の部分を有し、切除方向ガイド部11が回旋する際の中心線となる前述の回転中心Lに沿って配置される軸部材として設けられている。回転軸31には、胴部31a、先端嵌合部31b、キャップ部材31cが設けられている。胴部31aは、直線状に延びる円柱状の部分として設けられている。胴部31aは、後述する回旋側フレーム32及び支持フレーム33を貫通した状態で配置される。即ち、回転軸31は、回旋側フレーム32及び支持フレーム33を貫通した状態で配置される。
先端嵌合部31bは、胴部31aの長手方向における一方の先端側の部分として設けられている。更に、先端嵌合部31bは、両顆接触固定部12における回転軸取付部27の嵌合穴27aに対して嵌合する部分として設けられている。先端嵌合部31bが嵌合穴27aに嵌合することで、回転軸取付部27と回転軸31とが接続されて連結される。これにより、両顆接触固定部12が回旋位置調整機構29に取り付けられる。また、上記の構成により、両顆接触固定部12は、回転軸13の先端において、回旋位置調整機構29に取り付けられることになる。
尚、先端嵌合部31bには、先端側に向かって段状に縮径する部分が設けられている。そして、先端嵌合部31bに嵌合する嵌合穴27aは、先端嵌合部31bの外形に対応して孔の奥側に向かって縮径する部分が設けられている(図9、図10を参照)。これにより、先端嵌合部31bは、嵌合穴27aに対して、直径寸法の異なる2つの領域において2段階に嵌合し、強固に嵌合可能に構成されている。
キャップ部材31cは、胴部31aに対して、先端嵌合部31bとは反対側の端部で取り付けられる部材として設けられている。胴部31aにおける先端嵌合部31bとは反対側の端部には、外部に対して開口するネジ穴31dが設けられている。ネジ穴31dの深さ方向は、胴部31aの軸方向に沿って延びており、ネジ穴31dの内周には、ネジ溝が形成されている。
キャップ部材31cには、円盤状に広がった円盤状端部31eと、円盤状端部31eの中央部分から片持ち状に延びるネジ部31fとが設けられている。円盤状端部31eとネジ部31fとは、一体に設けられている。ネジ部31fの外周には、ネジ穴31dの内周のネジ溝に螺合するネジ山が設けられている。ネジ部31fがネジ穴31dに螺合することで、キャップ部材31cが胴部31aの端部に取り付けられる。
[回旋側フレーム]
図1、図6乃至図10に示す回旋側フレーム32は、回旋位置調整機構29において、回転軸31を中心として揺動可能なフレームとして設けられている。回旋側フレーム32は、前後位置調整機構支持部32a、回転軸貫通部32b、連結部32c、揺動操作部32d、等を備えて構成されている。前後位置調整機構支持部32a、回転軸貫通部32b、連結部32c、揺動操作部32dは、一体に設けられている。
前後位置調整機構支持部32aは、回旋側フレーム32において、後述する前後位置調整機構30を支持する部分として設けられている。また、前後位置調整機構支持部32aは、回転軸貫通部32bから突出する略四角形断面の筒状の部分として設けられている。尚、前後位置調整機構支持部32aは、回転軸貫通部32b及び回転軸31の長手方向に対して直交する方向に向かって突出するように設けられている。また、前後位置調整機構支持部32aは、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の端部100aに配置された状態で、回転軸31に対して患者の人体の前方側に配置されるように構成されている。略四角形断面の筒状の部分である前後位置調整機構支持部32aは、回転軸貫通部32b側と反対側の端部で開口している。そして、前後位置調整機構支持部32aの開口からは、後述する前後位置調整機構30における前後調整オネジ部材41の一部が挿入されて配置されている。
回転軸貫通部32bは、回旋側フレーム32において、回転軸31が挿通されて回転軸31の胴部31aが貫通する部分として設けられている。回転軸貫通部32bは、両端部が開口する筒状の部分として設けられ、内側に回転軸31の胴部31aが配置される。回転軸31は、胴部31aの外周が回転軸貫通部32bの内周に対して摺動自在の状態で、回転軸貫通部32bに対して配置される。これにより、回旋側フレーム32は、回転軸31に対して、回転軸31を中心として回転可能に連結されている。また、回転軸31は、先端嵌合部31b側の端部とその反対側の端部とが、回転軸貫通部32bから突出した状態で、回転軸貫通部32bに対して配置される。
回転軸31の胴部31aには、先端嵌合部31b側に向かって段状に縮径した部分が設けられている。胴部31aにおいて縮径した先端嵌合部31b側の部分は、回転軸貫通部32bから突出した状態で配置されている。そして、胴部31aには、先端嵌合部31b側から円筒状のリング部材36が嵌め込まれている。即ち、胴部31aがリング部材36の円形断面の貫通孔に挿入されている。リング部材36は、胴部31aに設けられた段状に縮径した部分に当接する位置まで、胴部31aに嵌め込まれている。
また、リング部材36及び胴部31aには、円柱状のピン37が貫通して嵌合する貫通孔が形成されている。そして、上記のようにリング部材36が胴部31aに嵌め込まれた状態で、リング部材36及び胴部31aの貫通孔に対してピン37が貫通して嵌合されている。これにより、リング部材36が胴部31aに固定されている。そして、回転軸31に固定されたリング部材36は、回転軸貫通部32bの端部に当接可能に配置されている。回旋位置調整機構29においては、上記のようにリング部材36が設けられていることで、回転軸31の回旋側フレーム32に対する位置を位置決め可能に構成されている。
連結部32cは、回旋側フレーム32において、回転軸貫通部32bと揺動操作部32dとを架橋するように連結する部分として設けられている。連結部32cは、例えば、細長く延びるプレート状の部分として設けられている。連結部32cは、回転軸貫通部32bから突出するように設けられ、回転軸貫通部32bから突出する先端側において揺動操作部32dが一体に設けられている。尚、連結部32cは、回転軸貫通部32bに対して、前後位置調整機構支持部32aが突出する側と反対側に向かって突出している。即ち、連結部32cは、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の端部100aに配置された状態で、回転軸31に対して患者の人体の後方側に配置されるように構成されている。
揺動操作部32dは、回旋位置調整機構29の操作が術者によって行われる際に、術者によって把持されて操作される部分として設けられている。揺動操作部32dは、連結部32cにおける回転軸貫通部32b側と反対側の端部に設けられている。尚、連結部32cには、揺動操作部32dに接続する部分の一部において、加工上の制約から生じる切欠き部が設けられている。また、揺動操作部32dには、揺動方向延長部32e、一対の把持用壁部(32f、32f)、等が設けられている。
揺動方向延長部32eは、回転軸31を中心とする円周の円弧方向に沿って延長されるように延びるプレート状の部分として設けられている。回旋側フレーム32は、前述のように、回転軸31に対して回転軸31を中心として回転可能に連結されている。このため、回旋側フレーム32は、回転軸31を中心として揺動可能に構成されている。そして、回旋側フレーム32が回転軸31を中心として揺動する際、揺動方向延長部32eは、回転軸31を中心とする円周の円弧方向に沿って揺動する。また、揺動方向延長部32eには、回転軸31を中心とする円周の円弧方向に沿って延びる長孔32gが形成されている。また、長孔32gは、回転軸31を中心とする円周の直径方向において揺動方向延長部32eを貫通するように形成されている。
一対の把持用壁部(32f、32f)は、術者が回旋側フレーム32を回転軸31を中心として揺動させるように操作する際に、術者によって把持される部分として設けられている。一対の把持用壁部(32f、32f)のそれぞれは、揺動方向延長部32eに対して、回転軸31を中心とする円周の円弧方向における両端部のそれぞれにおいて、設けられている。各把持用壁部32fは、揺動方向延長部32eの端部から、回転軸31を中心とする円周の直径方向に沿って短くプレート状に延びる壁部として設けられている。また、各把持用壁部32fの外面、即ち、各把持用壁部32fにおける揺動方向延長部32e側と反対側の面には、術者が把持し易くするための凹凸形状が形成されている。
[支持フレーム]
図1、図6乃至図10に示す支持フレーム33は、回旋位置調整機構29において、回転軸31を支持するフレームとして設けられている。支持フレーム33には、回転軸支持部33a、スライド移動部材支持部33bが設けられている。
回転軸支持部33aは、回転軸31を支持する部分として設けられている。回転軸31は、回転軸支持部33aにおいて、支持フレーム33を貫通して支持されている。より具体的には、回転軸支持部33aには貫通孔が設けられ、その貫通孔を回転軸31の胴部31aにおけるキャップ部材31cが取り付けられる端部側の部分が貫通している。
また、回転軸支持部33aの貫通孔には、回転軸31の胴部31aが貫通する方向と平行な方向にキー溝状に延びる係合溝33cが設けられている(図7、図9を参照)。一方、胴部31aにおける上記の貫通孔を貫通する部分には、上記の係合溝33cに対応して嵌まり込むキー状の係合部31gが設けられている(図7、図9を参照)。回転軸支持部33aの貫通孔に胴部31aが貫通した状態では、回転軸支持部33aの係合溝33cに回転軸31の係合部31gが嵌まり込んで係合している。このため、回転軸支持部33aの貫通孔の内周に対して胴部31aの外周が周方向に相対回転することが規制されている。上記の構成により、回旋位置調整機構29においては、支持フレーム33は、回転軸31に対する回転軸31を中心とする回転方向の変位が規制された状態で、回転軸31を支持している。
尚、回転軸支持部33aの貫通孔から突出した回転軸31の胴部31aにおける先端嵌合部31b側と反対側の端部には、前述の通り、キャップ部材31cが取り付けられている。そして、キャップ部材31cの円盤状端部31eは、回転軸31が回旋側フレーム32及び支持フレーム33から抜けて外れてしまうことを防止する抜け止め機構を構成している。尚、キャップ部材31cの円盤状端部31eとリング部材36との間の回転軸31の長手方向に沿った距離寸法は、回転軸貫通部32bの回転軸31の長手方向に沿った距離寸法と回転軸支持部33aの回転軸31の長手方向に沿った距離寸法との和よりも、大きくなるように設定されている。これにより、キャップ部材31cの円盤状端部31eは、大腿骨100の切除面100bに設置された切除方向ガイド部11から後述する前後位置調整機構30の前後移動フレーム40を取り外す際における術者による押圧操作用の部分としても構成されている。
スライド移動部材支持部33bは、後述するスライド移動部材34をスライド移動可能に支持する部分として設けられている。スライド移動部材支持部33bは、支持フレーム33において、回転軸支持部33a側から回転軸31に対して離間する方向に向かって延びる一対の壁部を有して構成されている。そして、スライド移動部材支持部33bにおける一対の壁部は、回転軸31を中心とする円周の直径方向と平行な方向に沿って、互いに平行に延びるように設けられている。
スライド移動部材支持部33bにおける一対の壁部の間には、後述するスライド移動部材34が、その一対の壁部に対して摺動自在な状態で配置されている。これにより、スライド移動部材34は、スライド移動部材支持部33bの一対の壁部の間において、回転軸31を中心とする円周の直径方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。
また、支持フレーム33には、スライド移動部材支持部33bの一対の壁部の内側に配置されたスライド支持軸38が取り付けられている。スライド支持軸38は、後述するスライド移動部材34を貫通するとともにスライド移動部材34をスライド移動自在に支持する細長い円柱状の部分を有する軸部材として設けられている。
スライド支持軸38は、その一方の端部において、支持フレーム33に固定されている。支持フレーム33における回転軸支持部33aとスライド移動部材支持部33bとの間の部分には、スライド支持軸38の端部が嵌合する嵌合穴33dと、ピン39が貫通して嵌合する貫通孔とが設けられている。また、スライド支持軸38の端部にも、ピン39が貫通して嵌合する貫通孔が設けられている。スライド支持軸38の端部が上記の嵌合穴33dに挿入されて嵌合した状態で、ピン39が支持フレーム33の貫通孔とスライド支持軸38の貫通孔とを貫通してそれらの貫通孔に嵌合することで、スライド支持軸38が支持フレーム33に固定されている。そして、スライド支持軸38は、支持フレーム33の内側において、スライド移動部材支持部33bにおける一対の壁部と平行に延びるように配置されている。
[スライド移動部材]
図1、図6乃至図10に示すスライド移動部材34は、支持フレーム33に対してスライド移動可能に支持されるとともに、回旋側フレーム32の一部を貫通して支持フレーム33側から反対側に向かって延びる部材として設けられている。スライド移動部材34には、スライダ部34a、当接部34b、回旋側フレーム貫通部34c、オネジ部分34dが設けられている。
スライダ部34a、当接部34b、回旋側フレーム貫通部34c、オネジ部分34dは、この順番で直列に並んで、一体に設けられている。スライダ部34a及び当接部34bは、回旋側フレーム32の揺動操作部32dに対して、支持フレーム33側に配置されている。スライド移動部材34は、回旋側フレーム貫通部34cにおいて、回旋側フレーム32の一部である揺動操作部32dを支持フレーム33側から反対側に向かって貫通している。オネジ部分34dは、揺動操作部32dに対して、支持フレーム33側と反対側に向かって突出した状態で配置されている。
スライダ部34aは、スライド移動部材34において、略四角形断面の筒状の部分として設けられ、支持フレーム33の内側に配置されている。より具体的には、スライダ部34aは、スライド移動部材支持部33bにおける一対の壁部の間に配置されている。また、スライダ部34aは、スライド移動部材34において、支持フレーム33に対してスライド移動する部分として設けられている。より具体的には、スライダ部34aは、互いに対向する一対の側壁において、スライド移動部材支持部33bの一対の壁部に対して、回転軸31を中心とする円周の直径方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。
当接部34bは、スライド移動部材34において、回旋側フレーム32に対して支持フレーム33側から当接可能な部分として設けられている。より具体的には、当接部34bは、スライダ部34aが回転軸31から離間する方向に向かって支持フレーム33に対してスライド移動した際に、回旋側フレーム32の揺動操作部32dに対して、支持フレーム33側から当接するように構成されている。
当接部34bにおける揺動操作部32dに当接する表面には、複数の噛み合い歯が設けられている。そして、揺動操作部32dにおける当接部34bに当接する部分にも、当接部34bの複数の噛み合い歯に噛み合う複数の噛み合い歯が設けられている。即ち、当接部34b及び揺動操作部32dには、互いに当接した際に互いに噛み合うように構成された複数の噛み合い歯が設けられている。これにより、回旋位置調整機構29は、当接部34b及び揺動操作部32dが当接した状態において、当接部34b及び揺動操作部32dの相対位置がずれてしまうことが防止されるように構成されている。
回旋側フレーム貫通部34cは、スライド移動部材34において、揺動操作部32dを貫通する部分として設けられている。回旋側フレーム貫通部34cは、揺動操作部32dに設けられた長孔32gの内側に配置されている。回旋側フレーム貫通部34cは、長孔32gに対して遊嵌状態で配置されている。尚、回旋側フレーム貫通部34cには、当接部34bに接続する部分の一部において、加工上の制約から生じる切欠き部が設けられている。
オネジ部分34dは、スライド移動部材34において、回旋側フレーム32の揺動操作部32dから突出した先端側の部分として設けられている。そして、オネジ部分34dの外周には、後述するナット部材35に螺合するネジ山が形成されている。尚、オネジ部分34dには、周方向における一部において、加工上の制約から生じる切欠き部が設けられている。
尚、当接部34b、回旋側フレーム貫通部34c、及びオネジ部分34dには、貫通孔が設けられている。そして、支持フレーム33に一方の端部が固定されたスライド支持軸38は、スライダ部34aの内側と、当接部34b、回旋側フレーム貫通部34c、及びオネジ部分34dにおける上記の貫通孔と、を貫通するように配置されている。スライド支持軸38は、当接部34b、回旋側フレーム貫通部34c、及びオネジ部分34dに対して、軸方向に摺動自在に挿通されている。これにより、支持フレーム33に対してスライド移動自在に支持されるスライド移動部材34は、スライド支持軸38に対してもスライド移動自在に支持されている。
[ナット部材]
図1、図6乃至図10に示すナット部材35は、内周にメネジ部分35aが設けられたリング状の部材として設けられている。そして、ナット部材35は、内周のメネジ部分35aにおいて、スライド移動部材34のオネジ部分34dに螺合するように構成されている。ナット部材35は、回旋側フレーム32の揺動操作部32dに対して当接部34b側とは反対側に配置され、揺動操作部32dから突出したオネジ部分34dに螺合している。
また、ナット部材35には、その外周部分において、回転操作部35bが設けられている。回転操作部35bは、ナット部材35をオネジ部分34dに対して回転させる操作を術者が行う際に術者によって把持される部分として設けられている。回転操作部35bが回転操作されることで、スライド移動部材34のオネジ部分34dに螺合しているナット部材35のオネジ部分34dに対する螺合位置が変位することになる。
ナット部材35のオネジ部分34dに対する螺合位置がより当接部34b側に変位するように、ナット部材35の操作が行われることで、ナット部材35がオネジ部分34dに対して締め込まれる操作が行われることになる。そして、ナット部材35がオネジ部分34dに対して締め込まれることで、当接部34bとナット部材35との間で回旋側フレーム32の一部である揺動操作部32dが挟み込まれることになる。このとき、当接部34bの複数の噛み合い歯が揺動操作部32dの複数の噛み合い歯に噛み合うとともに、ナット部材35の揺動操作部32d側の端部が揺動操作部32dに押し当てられることになる。これにより、当接部34bとナット部材35との間で揺動操作部32dが挟み込まれて位置決めされる。そして、回旋側フレーム32の支持フレーム33に対する回転軸31を中心とする回転方向の変位が規制されることになる。
また、ナット部材35には、揺動操作部32d側と反対側の端部において、メネジ部分35aの直径よりも大きい寸法で段状に広がるとともに外部に対して開口するように形成された凹部35cが設けられている。そして、スライド支持軸38における支持フレーム33に固定される側の端部と反対側の端部には、フランジ状に広がったフランジ状部38aが設けられている。フランジ状部38aは、凹部35cに嵌まり込んで係合可能な大きさに形成されている。
ナット部材35が過度に緩められるように操作された場合、フランジ状部38aに対してナット部材35が凹部35cにて当接することになる。これにより、ナット部材35のオネジ部分34dに対する螺合位置が当接部34bから大きく離間するように変位することが規制され、ナット部材35のスライド支持軸38からの脱落が防止される。
[前後位置調整機構の概略]
図1、図6乃至図10に示す前後位置調整機構30は、切除方向ガイド部11が取り付けられるとともに、大腿骨100の遠位側の端部100aの切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置を調整するための機構として設けられている。上記の前後位置は、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の患者の人体の前後方向における位置として構成される。また、前後位置調整機構30は、回旋位置調整機構29に対して切除方向ガイド部11を患者の人体の前後方向に移動させることで、切除面100bに対して切除方向ガイド部11を患者の人体の前後方向に移動させるように構成されている。以下、前後位置調整機構30に関し、切除面100bに対して人体の前後方向に移動させるための具体的な構成について説明する。
図1、図6乃至図10に示すように、前後位置調整機構30は、前後移動フレーム40、前後調整オネジ部材41、等を備えて構成されている。
[前後移動フレーム]
図1、図6乃至図10に示す前後移動フレーム40は、切除方向ガイド部11が取り付けられて切除方向ガイド部11とともに回旋側フレーム32に対して患者の人体の前後方向に移動するフレームとして設けられている。前後移動フレーム40は、ネジ軸螺合部40a、取付穴嵌合部40b、ガイドレール40c、等を備えて構成されている。ネジ軸螺合部40a、取付穴嵌合部40b、ガイドレール40cは、一体に設けられている。
ネジ軸螺合部40aは、前後移動フレーム40において、略直方体状の外形を有する部分として設けられ、後述の前後調整オネジ部材41のネジ軸部41aに対して螺合するメネジ部分が設けられている。ネジ軸螺合部40aのメネジ部分は、上記のネジ軸部41aに螺合するメネジ孔として設けられている。ネジ軸螺合部40aのメネジ部分は、ネジ軸螺合部40aにおいて貫通形成されており、上記のネジ軸部41aが螺合した状態で貫通して配置されている。
取付穴嵌合部40bは、ネジ軸螺合部40aから片持ち状に短く突出した嵌合用軸部として設けられている。そして、取付穴嵌合部40bは、切除方向ガイド部11の取付穴23に対して嵌合する部分として設けられている。取付穴嵌合部40bが取付穴23に嵌合することで、切除方向ガイド部11が前後位置調整機構30において本体部13に対して取り付けられる。
尚、取付穴嵌合部40bには、先端側に向かって角柱状の部分から円柱状の部分へと段状に断面積が小さくなる部分が設けられている。そして、取付穴嵌合部40bに嵌合する取付穴23は、取付穴嵌合部40bの外形に対応して孔の奥側に向かって穴の断面積が小さくなる部分が設けられている(図9、図10を参照)。これにより、取付穴嵌合部40bは、取付穴23に対して、寸法及び断面形状の異なる2つの領域において2段階に嵌合し、強固に嵌合可能に構成されている。
ガイドレール40cは、ネジ軸螺合部40aの表面から突起状に出っ張るとともにレール状に延びる部分として設けられている。ガイドレール40cは、ネジ軸螺合部40aのメネジ部分がネジ軸螺合部40aを貫通する方向と平行な方向に沿ってレール状に延びるように設けられている。このため、ガイドレール40cがレール状に延びる方向は、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の端部100aに配置された状態で、人体の前後方向と平行な方向に沿って配置される。
また、ガイドレール40cは、回旋側フレーム32の前後位置調整機構支持部32aにおいてスリット状に設けられたガイド溝32hに対して、スライド移動自在に支持されている(図1、図6を参照)。ガイドレール40cがガイド溝32hに対してスライド移動自在に嵌まり込んで支持されていることで、前後移動フレーム40は、回旋側フレーム32に対して人体の前後方向にスライド移動可能に支持されている。
尚、前後移動フレーム40は、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の端部100aに配置された状態で、回転軸31に対して患者の人体の前方側に配置される。一方、回旋側フレーム32は、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の端部100aに配置された状態で、回転軸31に対して人体の後方側に配置される部分を有するように構成されている。より具体的には、回旋側フレーム32は、回転軸31に対して人体の後方側に配置される部分として、連結部32c及び揺動操作部32dを有している。
[前後調整オネジ部材]
前後調整オネジ部材41は、術者によって回転操作が行われることで、回旋側フレーム32に対して前後移動フレーム40を患者の人体の前後方向に移動させるように駆動する部材として設けられている。前後調整オネジ部材41には、ネジ軸部41a、ヘッド部41bが設けられている。
ネジ軸部41aは、外周にネジ山が形成され、前後移動フレーム40のネジ軸螺合部40aに設けられたメネジ部分に螺合している。即ち、前後調整オネジ部材41は、ネジ軸部41aにおいて、前後移動フレーム40のメネジ部分に対して螺合している。また、ネジ軸部41aは、ネジ軸螺合部40aに螺合した状態でネジ軸螺合部40aを貫通しており、ネジ軸部41aの先端側の端部は、回旋側フレーム32の前後位置調整機構支持部32aの内側に配置されている。
ネジ軸部41aの先端側の端部には、ネジ軸部41aの周方向に沿って延びるとともに凹み形成された周方向溝41cが設けられている(図7乃至図10を参照)。また、回旋側フレーム32の前後位置調整機構支持部32aにおける互いに対向する一対の壁部のそれぞれには貫通孔が設けられ、これらの貫通穴には、円柱状のピン42の両端部のそれぞれが貫通した状態で嵌合している。そして、前後位置調整機構支持部32aにおける一対の壁部に両端部が嵌合したピン42の中途部分は、前後位置調整機構支持部32aの内側において、ネジ軸部41aの周方向溝41cに対して摺動自在な状態で嵌まり込んでいる。この構成により、前後調整オネジ部材41は、回旋側フレーム32に対して人体の前後方向の移動が規制された状態で回転可能に支持されている。
尚、ネジ軸部41aの先端側の部分には、ネジ山は形成されていない。そして、前後位置調整機構支持部32aの内側においてネジ軸部41aのネジ山に対向する部分には、ネジ山と接触しないようにするための空隙が設けられている。これにより、前後調整オネジ部材41は、前後移動フレーム40に対しては螺合しながら回転する一方で、回旋側フレーム32に対しては、人体の前後方向の移動が規制された状態で空回りしながら回転するように構成されている。
ヘッド部41bは、前後調整オネジ部材41を前後移動フレーム40に対して回転させる操作を術者が行う際に術者によって把持される部分として設けられている。ヘッド部41bは、ネジ軸部41aに対して、周方向溝41cが形成された先端側の端部とは反対側の端部に一体に設けられている。ヘッド部41bは、術者が把持して回転操作し易いように、ネジ軸部41aよりも径寸法が大きくなるように設けられ、更に、術者の指に嵌まり込み易い凹凸形状が設けられている。
[前後位置表示部]
前後位置表示部43は、回旋側フレーム32に対する前後移動フレーム40の人体の前後方向における位置を表示することで、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置を表示する機構として設けられている。前後位置表示部43は、回旋側フレーム32及び前後移動フレーム40に設けられ、目盛部43aと読取位置指標部43bとを備えて構成されている。
目盛部43aは、回旋側フレーム32の前後位置調整機構支持部32aに設けられている。より具体的には、目盛部43aは、前後位置調整機構支持部32aの表面において、ガイド溝32hに沿って等間隔に刻印された目盛として構成されている。例えば、目盛部43aは、所定間隔でガイド溝32hに沿って前後位置調整機構支持部32aの表面に刻印された複数の溝状のしるしとして構成されている。尚、前後位置調整機構支持部32aの表面においては、目盛部43aにおける複数のしるしとともに、各しるし或いは一部のしるしに対応する数値が刻印されていてもよい。
読取位置指標部43bは、前後移動フレーム40のガイドレール40cに設けられている。読取位置指標部43bは、目盛部43aにおける読取位置を指標するしるしとして設けられている。より具体的には、読取位置指標部43bは、ガイドレール40cに刻印された溝状のしるしとして構成されている。
前後移動フレーム40が回旋側フレーム32に対して患者の人体の前後方向に沿ってスライド移動すると、目盛部43aに対して読取位置指標部43bが相対変位することになる。そして、回旋側フレーム32に対して前後移動フレーム40がスライド移動した後、読取位置指標部43bの位置に対応する目盛部43aの位置が術者によって読み取られて把握される。これにより、回旋側フレーム32に対する前後移動フレーム40の人体の前後方向の位置が把握され、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置が把握されることになる。
[回旋位置表示部]
回旋位置表示部44は、スライド移動部材34に対する回旋側フレーム32の位置を表示することで、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置を表示する機構として設けられている。回旋位置表示部44は、スライド移動部材34及び回旋側フレーム32に設けられ、目盛部44aと読取位置指標部44bとを備えて構成されている。
目盛部44aは、スライド移動部材34の当接部34bに設けられている。より具体的には、目盛部44aは、当接部34bの表面において、回転軸31を中心とする円周の円弧方向に沿って等間隔に刻印された目盛として構成されている。例えば、目盛部44aは、所定間隔で上記の円弧方向に沿って当接部34の表面に刻印された複数の溝状のしるしとして構成されている。尚、当接部34bの表面においては、目盛部44aにおける複数のしるしとともに、各しるし或いは一部のしるしに対応する数値が刻印されていてもよい。
読取位置指標部44bは、回旋側フレーム32の揺動操作部32dに設けられている。読取位置指標部44bは、目盛部44aにおける読取位置を指標するしるしとして設けられている。より具体的には、読取位置指標部44bは、揺動操作部32dに刻印された溝状のしるしとして構成されている。
回旋側フレーム32が支持フレーム33及びスライド移動部材34に対して回転軸31を中心として揺動すると、目盛部44aに対して読取位置指標部44bが相対変位することになる。そして、回旋側フレーム32が支持フレーム33及びスライド移動部材34に対して回転軸31を中心として揺動した後、読取位置指標部44bの位置に対応する目盛部44aの位置が術者によって読み取られて把握される。これにより、支持フレーム33及びスライド移動部材34に対する回旋側フレーム32の回旋方向の角度位置が把握され、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置が把握されることになる。
[人工膝関節置換術用手術器具の作動]
次に、人工膝関節置換術用手術器具1の作動について説明する。人工膝関節置換術用手術器具1は、前述のように、膝関節を人工膝関節に置換する人工膝関節置換術において、人工膝関節の大腿骨コンポーネントを大腿骨100に設置するために大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)を大腿骨100の遠位側の端部100aに形成する際に用いられる。
人工膝関節置換術において、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)を大腿骨100の端部100aに形成する際には、まず、大腿骨100の遠位側の端部100aが一部切除される。これにより、大腿骨100の遠位側の端部100aにおいて、大腿骨100の軸方向に対して略垂直に広がる切除面100bが形成される(図5を参照)。
大腿骨100の切除面100bが形成されると、次いで、図5に示すように、大腿骨100の端部100aに両顆接触固定部12が設置される。両顆接触固定部12は、一対の顆接触部(28a、28b)において、大腿骨100の端部100aの両顆(102a、102b)に対して患者の人体の後方側で接触するように配置される。そして、固定ピン15が、固定ピン孔26dを貫通して固定ピン孔26dに嵌合するとともに大腿骨100に打ち込まれることにより、両顆接触固定部12が大腿骨100の端部100aに固定される。
図11は、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の端部100aに設置された状態を示す図であって切除面100bに垂直な方向から見た図である。大腿骨100の端部100aに両顆接触固定部12が固定されると、次いで、図11に示すように、両顆接触固定部12に加え、切除方向ガイド部11及び本体部13が大腿骨100の端部100aに設置される。
切除方向ガイド部11及び本体部13が大腿骨100の端部100aに設置される際には、まず、本体部13に対して切除方向ガイド部11が取り付けられる。このとき、切除方向ガイド部11の取付穴23に対して、本体部13における前後位置調整機構30の前後移動フレーム40の取付穴嵌合部40bが挿入されて嵌合する。これにより、切除方向ガイド部11が、本体部13に対して、前後位置調整機構30において取り付けられる。
切除方向ガイド部11が本体部13に取り付けられると、次いで、切除方向ガイド部11が取り付けられた本体部13が、大腿骨100の端部100aに固定された両顆接触固定部12に対して取り付けられる。このとき、両顆接触固定部12の嵌合穴27aに対して、本体部13における回旋位置調整機構29の回転軸31の先端嵌合部31bが挿入されて嵌合する。これにより、切除方向ガイド部11が取り付けられた本体部13に、大腿骨100の端部100aに固定された両顆接触固定部12が取り付けられる。
上述のように大腿骨100の端部100aに人工膝関節置換術用手術器具1が設置されると、次いで、術者が、回旋位置調整機構29及び前後位置調整機構30を操作することで、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置を所望の位置に調整する。尚、回旋位置調整機構29は、前述した構成により、両顆接触固定部12に対して切除方向ガイド部11を回転軸31を中心として揺動させることで、切除面100bに対して切除方向ガイド部11を回旋させる。そして、前後位置調整機構30は、前述した構成により、両顆接触固定部12に対して切除方向ガイド部11を患者の人体の前後方向に移動させることで、切除面100bに対して切除方向ガイド部11を患者の人体の前後方向に移動させる。
術者は、まず、回旋位置調整機構29を操作し、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置を調整する。このとき、術者は、例えば、支持フレーム33を一方の手で把持し、他方の手で回旋側フレーム32の一対の把持用壁部(32f、32f)を把持する。そして、術者は、支持フレーム33に対して回旋側フレーム32を回転軸31を中心として揺動させる。このとき、前後位置調整機構30とともに切除方向ガイド部11が揺動し、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋動作が行われ、回旋位置が調整される。尚、この状態では、ナット部材35は、スライド移動部材34のオネジ部分34dに対して締め込まれておらず、緩められている。
術者は、支持フレーム33に対して回旋側フレーム32を回転軸31を中心として所望の位置まで揺動させると、回旋側フレーム32を揺動させる動作を停止する。そして、術者は、支持フレーム33と回旋側フレーム32との相対位置関係を維持しながら、ナット部材35をスライド移動部材34のオネジ部分34dに対して締め込むように回転操作する。これにより、スライド移動部材34が支持フレーム33側からナット部材35側に向かってスライド移動し、当接部34bとナット部材35との間で回旋側フレーム32の揺動操作部32dが挟み込まれる。この結果、回旋側フレーム32の支持フレーム33に対する回転軸31を中心とする回転方向の位置が固定される。
上述した回旋位置調整機構29の操作によって、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置の調整作業が一旦終了すると、術者は、読取位置指標部44bの位置に対応する目盛部44aの位置を読み取る。これにより、術者は、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置を把握する。
上記のように、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置の調整作業が一旦終了すると、術者は、前後位置調整機構30を操作し、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置を調整する。このとき、術者は、前後調整オネジ部材41のヘッド部41bを所望の方向に回転させる操作を行い、前後調整オネジ部材41を前後移動フレーム40及び回旋側フレーム32に対して相対回転させる。
上記の操作により、前後移動フレーム40が、回旋側フレーム32の前後位置調整機構支持部32aに対して、人体の前方側又は後方側に向かってスライド移動する。即ち、前後調整オネジ部材41のヘッド部41bの回転方向に伴って、人体の前後方向における術者が所望する方向に向かって、前後移動フレーム40が前後位置調整機構支持部32aに対してスライド移動する。術者は、前後移動フレーム40を回旋側フレーム32に対して人体の前後方向に所望の移動量だけ移動させると、ヘッド部41bの回転操作を停止し、前後移動フレーム40の回旋側フレーム32に対する移動を停止させる。
尚、前後調整オネジ部材41の回転操作が停止されても、前後調整オネジ部材41と前後移動フレーム40のネジ軸螺合部40aとは、螺合した状態のままである。このため、術者が、前後移動フレーム40の回旋側フレーム32に対する位置を所望の位置で停止させると、その位置は変化せずに維持されることになる。そして、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置も、術者の所望の位置に維持されることになる。
上述した前後位置調整機構30の操作によって、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置の調整作業が一旦終了すると、術者は、読取位置指標部43bの位置に対応する目盛部43aの位置を読み取る。これにより、術者は、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置を把握する。
図12は、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の遠位側の端部100aに設置された状態をスリットゲージ103とともに示す斜視図である。前述のように、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置の調整作業が一旦終了すると、その状態のまま、術者は、スリットゲージ103を用い、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)が形成される面の位置を確認する。
スリットゲージ103には、複数のゲージ部103a及びスリット挿入部103bが設けられている。ゲージ部103aは、水平な面に沿って湾曲しながら片持ち状に延びる部分として設けられている。スリット部103bは、ゲージ部103aが湾曲して延びる上記の水平な面と同一の面に沿って短く突出して延びる部分として設けられ、切除方向ガイド部11のスリット(22a、22b、22c、22d)に挿入される部分として設けられている。
切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置の調整作業が一旦終了すると、その状態のまま、術者は、スリット挿入部103bをスリット(22a、22b、22c、22d)のいずれかに挿入する。そして、術者は、大腿骨100の端部100aの周囲で湾曲して延びるように配置されるゲージ部103aの位置を確認する。これにより、術者は、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)が形成される面の位置が所望の位置であるか否かを確認する。尚、図12では、スリット挿入部103bがスリット22aに挿入された状態が例示されている。
大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)が形成される面の位置が所望の位置であれば、切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置の調整は完了する。大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)が形成される面の位置が所望の位置でなければ、術者は、再度、回旋位置調整機構29及び前後位置調整機構30を操作し、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置を所望の位置に調整する。
図13は、人工膝関節置換術用手術器具1が大腿骨100の端部100aに設置された状態であって切除方向ガイド部11が大腿骨100の端部100aに固定された状態を示す斜視図である。切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置の調整が完了すると、図13に示すように、固定ピン14が、固定ピン孔24を貫通して固定ピン孔24に嵌合した状態で大腿骨100に打ち込まれる。これにより、切除方向ガイド部11が大腿骨100の端部100aに固定され、切除方向ガイド部11が、回旋位置及び前後位置の調整が完了した状態で、切除面100bに設置される。
切除方向ガイド部11が切除面100bに設置されると、次いで、大腿骨100に固定された切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12から本体部13が取り外される。図14は、図13に示す状態において、本体部13が切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12から取り外され、大腿骨100の端部100aに切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12のみが固定された状態を示す斜視図である。
切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12から本体部13が取り外される場合は、術者は、回旋側フレーム32及び支持フレーム33を引き寄せるようにしながら、回転軸31のキャップ部材31cの円盤状端部31eを押圧する操作を行う。前述のように、円盤状端部31eとリング部材36との間の回転軸31の長手方向に沿った距離寸法は、回転軸貫通部32b及び回転軸支持部33aの両者の回転軸31の長手方向に沿った距離寸法の和よりも、大きくなるように設定されている。このため、上記の操作により、回旋側フレーム32とともに前後移動フレーム40もキャップ部材31c側に引き寄せられる。これにより、前後移動フレーム40の取付穴嵌合部40bが、大腿骨100の端部100aに固定された切除方向ガイド部11の取付穴23から抜き出される。この結果、まず、本体部13の前後位置調整機構30が、切除方向ガイド部11から取り外される。
前後位置調整機構30が切除方向ガイド部11から取り外されると、次いで、術者は、本体部13の全体を大腿骨100の端部100aから離間させる方向に移動させる。これにより、回転軸31の先端嵌合部31bが、両顆接触固定部12の回転軸取付部27の嵌合穴27aから抜き出される。この結果、本体部13の回旋位置調整機構29が、両顆接触固定部12から取り外される。
上記の操作により、まず、前後位置調整機構30が切除方向ガイド部11から取り外され、次いで、回旋位置調整機構29が両顆接触固定部12から取り外される。これにより、本体部13と切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12との接続を順番に容易に解除することができる。即ち、大腿骨100に固定された切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12から本体部13を容易に取り外すことができる。
大腿骨100に固定された切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12から本体部13が取り外されると、次いで、切除方向ガイド部11の各スリット(22a、22b、22c、22d)のそれぞれに対して骨切除器具(図示省略)のカッター刃が挿入される。そして、各スリット(22a、22b、22c、22d)によって切除方向がガイドされながら、骨切除器具のカッター刃による大腿骨100の端部100aの切除が行われる。
図15は、大腿骨100の端部100aの切除面100bに対して交差する複数の方向に沿って大腿骨100を切除する作業が行われた状態の大腿骨100の端部100aを切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12とともに示す斜視図である。図3及び図15に示すように、各スリット(22a、22b、22c、22d)によって切除方向がガイドされながら骨切除器具による大腿骨100の端部100aの切除が行われると、大腿骨100の端部100aには、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)が形成される。
大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)の形成が完了すると、切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12が大腿骨100の端部100aから取り外される。即ち、固定ピン14が大腿骨100から引き抜かれ、切除方向ガイド部11が大腿骨100から取り外される。そして、固定ピン15が大腿骨100から引き抜かれ、両顆接触固定部12が大腿骨100から取り外される。切除方向ガイド部11及び両顆接触固定部12が大腿骨100の端部100aから取り外されると、大腿骨コンポーネント設置用面(101a、101b、101c、101d)と嵌合するように、大腿骨コンポーネント(図示省略)が大腿骨100の端部100aに設置されて固定される。
[人工膝関節置換術用手術器具の効果]
以上説明したように、人工膝関節置換術用手術器具1によると、切除方向ガイド部11が取り付けられる本体部13には、回旋位置調整機構29と前後位置調整機構30とが設けられている。そして、人工膝関節置換術を行う術者は、回旋位置調整機構29を操作することで、切除面100bが配置される平面に垂直な軸線Lを中心として前後位置調整機構30とともに切除方向ガイド部11を揺動させる。これにより、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋動作が行われ、回旋位置が調整される。更に、術者は、前後位置調整機構30を操作することで、回旋位置調整機構29に対して切除方向ガイド部11を人体の前後方向に移動させる。これにより、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の人体の前後方向の移動動作が行われ、前後位置が調整される。よって、術者は、本体部13に取り付けられた切除方向ガイド部11を切除面100bに対して配置した後、本体部13を操作することで、容易に、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置を調整することができる。従って、人工膝関節置換術用手術器具1によると、従来技術のように手術作業の複雑化と手術時間の増大を招いてしまうことがなく、手術作業をより容易に行うことができ、手術時間の短縮を図ることができる。
以上のように、本実施形態によると、人工膝関節置換術において、手術作業をより容易に行うことができ、手術時間の短縮を図ることができる、人工膝関節置換術用手術器具1を提供できる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、切除面100bが配置される平面に垂直な軸線Lに沿って配置される回転軸31が回旋位置調整機構29に設けられ、回旋位置調整機構29は、その回転軸31を中心として切除方向ガイド部11を揺動させる。このため、切除面100bが配置される平面に垂直な軸線Lに沿って配置される回転中心Lを中心とする切除方向ガイド部11の揺動動作をより容易に行うことができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、大腿骨100の遠位側の端部100aの両顆(102a、102b)に対して人体の後方側で接触して大腿骨100に固定される両顆接触固定部12が更に設けられる。そして、回旋位置調整機構29は、両顆接触固定部12に対して切除方向ガイド部11を回転軸31を中心として揺動させ、前後位置調整機構30は、両顆接触固定部12に対して切除方向ガイド部11を人体の前後方向に移動させる。このため、術者は、大腿骨100の遠位側の端部100aの両顆(102a、102b)の後方側の部分を結ぶ線を基準として、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置を調整する場合、両顆接触固定部12を基準として、切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置を調整することができる。よって、人工膝関節置換術用手術器具1によると、手術作業を更に容易に行うことができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、両顆接触固定部12が回転軸31の先端に取り付けられる。このため、両顆接触固定部12に対して切除方向ガイド部11を回転軸31を中心として揺動させる回旋位置調整機構29において、切除方向ガイド部11と両顆接触固定部12とを接近して配置することができる。これにより、回旋位置調整機構29を備える人工膝関節置換術用手術器具1をより小型化してコンパクトに構成することができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、回転軸31を中心として揺動する回旋側フレーム32に対して、前後移動フレーム40が切除方向ガイド部11とともに前後に移動する。このため、回旋側フレーム32及び前後移動フレーム40の2つのフレームが設けられた簡素な構造によって、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置及び前後位置を調整する構成の基本構造を容易に実現することができる。よって、回旋位置調整機構29及び前後位置調整機構30を備える人工膝関節置換術用手術器具1の構造をより簡素化することができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、前後調整オネジ部材41は、前後移動フレーム40のメネジ部分に螺合した状態で、回旋側フレーム32に対して、前後方向の位置が変化せずに回転する。そして、前後移動フレーム40は、回旋側フレーム32に対して前後方向にスライド移動可能に支持されている。このため、前後移動フレーム40のメネジ部分に螺合しながら前後調整オネジ部材41が回転すると、前後移動フレーム40が回旋側フレーム32に対して前後方向に移動することになる。よって、人工膝関節置換術用手術器具1によると、前後調整オネジ部材41と前後移動フレーム40のメネジ部分とを設けた簡素な機構によって、回旋側フレーム32に対して前後移動フレーム40を前後方向に駆動する構成を容易に実現することができる。また、前後調整オネジ部材41とメネジ部分とは、螺合しながら互いの相対位置を変化させる。このため、術者は、前後調整オネジ部材41を所望量回転させることにより、前後調整オネジ部材41とメネジ部分との相対位置を、段階的な位置ではなく、任意の位置に容易に設定することができる。これにより、術者は、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置をより細かく調整することができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、回転軸31を中心として前後移動フレーム40が前方側で回旋側フレーム32の一部が後方側に配置され、それらが回転軸31を介して前後方向に分かれて配置される。このため、切除面100bが配置される平面に垂直な軸線Lの方向と平行な方向において、前後移動フレーム40と回旋側フレーム32の一部とが重なって配置されることを抑制できる。これにより、回旋位置調整機構29及び前後位置調整機構30を備える人工膝関節置換術用手術器具1の操作性をより向上させることができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、回旋側フレーム32及び前後移動フレーム40に前後位置表示部43が設けられているため、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の前後位置を容易に把握することができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、回旋側フレーム32及び支持フレーム33を貫通して支持フレーム33に支持される回転軸31に対し、支持フレーム33は相対回転せず、回旋側フレーム32が相対回転する。このため、支持フレーム33に対して回旋側フレーム32を揺動させることで、回旋側フレーム32及び前後移動フレーム40とともに、切除方向ガイド部11を回転軸31を中心として容易に揺動させることができる。よって、回旋側フレーム32及び支持フレーム33を回転軸31が貫通する簡素な構造によって、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置を容易に調整可能な構成を実現することができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、ナット部材35がオネジ部分34dに対して締め込まれていない状態では、当接部34bとナット部材35との間で回旋側フレーム32が挟み込まれておらず、回旋側フレーム32の支持フレーム33に対する自由な回転が許容される。このため、支持フレーム33に対して回旋側フレーム32を揺動させて切除方向ガイド部11の回旋位置を容易に調整することができる。一方、ナット部材35がオネジ部分34dに対して締め込まれると、スライド移動部材34が支持フレーム33側からナット部材35側に向かってスライド移動し、当接部34bとナット部材35との間で回旋側フレーム32が挟み込まれる。これにより、回旋側フレーム32の支持フレーム33に対する回転軸31を中心とする回転方向の位置が固定される。よって、術者は、支持フレーム33に対して回旋側フレーム32を揺動させて切除方向ガイド部11の回旋位置を調整した後、ナット部材35を締め込むことで、支持フレーム33に対して回旋側フレーム32の位置を容易に固定することができる。即ち、術者は、回旋側フレーム32を揺動させた後にナット部材35を締め込むだけで、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の所望の回旋位置での位置決めを容易に行うことができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によると、スライド移動部材34及び回旋側フレーム32に回旋位置表示部44が設けられているため、切除面100bに対する切除方向ガイド部11の回旋位置を容易に把握することができる。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)前述の実施形態では、4つの大腿骨コンポーネント設置用面を形成するためのスリットが設けられた切除方向ガイド部の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。3つ以下又は5つ以上の大腿骨コンポーネント設置用面を形成するためのスリットが設けられた切除方向ガイド部の形態が実施されてもよい
(2)前述の実施形態では、両顆接触固定部が設けられた人工膝関節置換術用手術器具を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、両顆接触固定部が設けられていない人工膝関節置換術用手術器具が実施されてもよい。
(3)前述の実施形態では、前後移動フレーム及び前後調整オネジ部材が設けられた前後位置調整機構を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、前後移動フレーム及び前後調整オネジ部材とは異なる構造を有する前後位置調整機構が実施されてもよい。
(5)前述の実施形態では、回転軸、回旋側フレーム、支持フレーム、スライド移動部材、ナット部材が設けられた回旋位置調整機構を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、回転軸、回旋側フレーム、支持フレーム、スライド移動部材、ナット部材とは異なる構造を有する回旋位置調整機構が実施されてもよい。また、回転軸が設けられていない人工膝関節置換術用手術器具として、例えば、図16に示す変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具が実施されてもよい。
図16は、変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具1aを示す斜視図である。人工膝関節置換術用手術器具1aは、前述の実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1と同様に構成され、切除方向ガイド部11a、両顆接触固定部、及び本体部13aを備えて構成されている。尚、図16では、人工膝関節置換術用手術器具1aの両顆接触固定部の図示が省略されている。切除方向ガイド部11aは、前述の実施形態の切除方向ガイド部11と同様に構成され、人工膝関節置換術用手術器具1aの両顆接触固定部は、前述の実施形態の両顆接触固定部12と同様に構成され、本体部13aは、前述の実施形態の本体部13と同様に構成される。そして、本体部13aは、前述の実施形態の回旋位置調整機構29と同様に構成される回旋位置調整機構29aと、前述の実施形態の前後位置調整機構30と同様に構成される前後位置調整機構30aとを備えて構成されている。しかし、回旋位置調整機構29aには、前述の実施形態における回転軸31が設けられておらず、回転中心部材45が設けられている点において、人工膝関節置換術用手術器具1aは、人工膝関節置換術用手術器具1とは異なっている。
図17は、人工膝関節置換術用手術器具1aとともに用いられる回転中心ピン46が大腿骨100の遠位側の端部100aに設置された状態を示す斜視図である。回転中心ピン46は、切除面100bが配置される平面に垂直な軸線Lに沿って配置された状態で、大腿骨100に対して打ち込まれて設置される細長い円柱状のピン部材として設けられている。そして、図16に示すように、回旋位置調整機構29aの回転中心部材45には、回転中心ピン46が挿入される回転中心ピン用孔45aが貫通孔として設けられている。回転中心ピン46が挿入される回転中心部材45は、回転中心ピン46の軸周りで回転中心ピン46に対して摺動して相対回転自在なように、設けられている。これにより、回旋位置調整機構29aは、軸線Lに沿って配置される回転中心Lを中心として前後位置調整機構30aとともに切除方向ガイド部11aを揺動させる。即ち、回旋位置調整機構29aは、回転中心Lと同軸に配置される回転中心ピン46を中心として前後位置調整機構30aとともに切除方向ガイド部11aを揺動させることで、切除面100bに対して切除方向ガイド部11aを回旋させるように構成されている。
以上説明した変形例のように、回旋位置調整機構に回転軸が設けられておらず、切除面に設置された回転中心ピンを中心として切除方向ガイド部を揺動させる回旋位置調整機構が設けられた人工膝関節置換術用手術器具が実施されてもよい。