以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、関節手術において用いられ、関節にて軟部組織により連結された第1の骨と第2の骨との連結状態の安定性を測定するための関節手術用測定器具として広く適用することができる。
(第1実施形態)
[関節手術用測定器具の概略]
図1は、本発明の第1実施形態に係る関節手術用測定器具1の使用形態を示す模式図である。図2は、関節手術用測定器具1の正面図である。図3は、関節手術用測定器具1の斜視図である。図4は、関節手術用測定器具1の斜視図であって、図3とは異なる方向から見た図である。図5は、関節手術用測定器具1の正面図であって、内部構造を破線で示す図である。
図1乃至図5に示す関節手術用測定器具1は、関節手術において用いられる。関節手術用測定器具1は、種々の関節手術において用いることができる。例えば、関節を人工関節に置換する人工関節置換術において、人工関節設置前の関節の安定性を確認するために関節手術用測定器具1を用いることができる。更に、人工関節を設置した後の関節の安定性を確認するためにも関節手術用測定器具1を用いることができる、また、人工関節への置換を行わない関節の手術においても関節手術用測定器具1を用いることができる。
また、関節手術用測定器具1は、例えば、膝関節手術、肘関節手術、足関節手術において、関節が伸展位及び屈曲位のいずれの角度の状態にある場合であっても、用いることができる。尚、本実施形態では、膝関節手術において用いられる形態のうち、膝関節が伸展位の状態にある場合に用いられる形態を例にとって関節手術用測定器具1を説明するが、膝関節が屈曲位の状態にある場合においても同様に関節手術用測定器具1を用いることができる。
関節手術用測定器具1は、例えば、膝関節手術において用いられ、膝関節にて靭帯等の軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性(動揺性)を測定するための器具として設けられている。脛骨101は、本実施形態における第1の骨を構成し、大腿骨102は、本実施形態における第2の骨を構成している。尚、図1の模式図では、脛骨101及び大腿骨102以外の人体組織の図示が省略されている。また、図1の模式図では、脛骨101及び大腿骨102については、膝関節及びその周辺の部分のみが図示されている。
関節手術用測定器具1は、ハウジング11、スライダ12、位置表示部(13a、13b)、駆動機構14、等を備えて構成されている。尚、図2においては、関節手術用測定器具1とともに用いられる固定ピン15も図示されている。尚、ハウジング11、スライダ12、駆動機構14は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
[ハウジング]
図6は、図2のA−A線矢視位置から見た断面を示す断面図である。図1乃至図6に示すハウジング11は、脛骨101に対して又は脛骨101に取り付けられたコンポーネントに対して固定可能に設けられる。本実施形態では、脛骨101に対して固定可能に設けられたハウジング11の形態を例示している。
ハウジング11は、ハウジング本体部21、第1骨接触部22、蓋部23を備えて構成されている。ハウジング本体部21及び第1骨接触部22は、例えば、金属製の板材を用いたプレス加工処理或いは絞り加工処理によって形成される。また、ハウジング本体部21及び第1骨接触部22は、複数の金属製部材を溶接によって接合する処理によって形成されてもよい。また、ハウジング本体部21及び第1骨接触部22は、金属製のインゴットを用いて削り出し加工を行う処理によって形成されてもよい。また、ハウジング本体部21及び第1骨接触部22は、上記の各処理が適宜組み合わされた処理によって、形成されてもよい。
ハウジング本体部21は、ハウジング11の本体部分として設けられている。そして、ハウジング本体部21には、後述するスライダ12がスライド移動自在に内側に配置される筒状の部分と、後述する駆動機構14のピニオン29が内側に配置されるピニオン配置部25とが設けられている。
ハウジング本体部21における上記の筒状の部分は、矩形の断面を形成する4つの壁部(24a、24b、24c、24d)を含んで構成されている。壁部24a及び壁部24cが互いに平行に延びるように設けられ、壁部24b及び壁部24dが互いに平行に延びるように設けられている。壁部24b及び壁部24dは、壁部24a及び壁部24cに対して、直交する方向に沿って延びるように設けられている。
また、壁部24aにはピニオン配置部25が設けられ、壁部24bには目盛窓26aが設けられ、壁部24dには目盛窓26bが設けられている。目盛窓(26a、26b)は、後述する位置表示部(13a、13b)の目盛部(31a、31b)の一部をハウジング本体部21の外部に露出させる開口窓として設けられている。各目盛窓(26a、26b)は、ハウジング本体部21の筒状の部分が筒状に延びる方向であって各壁部(24b、24d)の長手方向に沿って延びる長孔として設けられている。このため、各目盛窓(26a、26b)は、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動する方向に沿って延びる長孔として構成されている。
また、ハウジング本体部21の長手方向(筒状に延びる方向)における一方の端部には、外部に対して開口する開口21aが設けられている(図3乃至図5を参照)。後述するスライダ12は、ハウジング11に対して、ハウジング本体部21の開口21aから挿入され、スライド移動自在に配置される。尚、ハウジング本体部21における開口21aが設けられた一方の端部には、壁部24a側から壁部24c側に向かって斜めに延びる端面が設けられている。開口21aは、ハウジング本体部21の一方の端部における上記の斜めに延びる端面において広がるように開口している。
ハウジング本体部21のピニオン配置部25は、壁部24aから外側に向かって円筒状に盛り上がるように形成された部分として設けられている。ピニオン配置部25の内側には、後述する駆動機構14のピニオン29が配置されるスペースが設けられている。
第1骨接触部22は、第1の骨である脛骨101に対して接触して固定される部分として設けられている。そして、第1骨接触部22は、ハウジング本体部21から片持ち状に突出するように設けられている。第1骨接触部22は、ハウジング本体部21における開口21aが形成された一方の端部において、壁部24c側から片持ち状に突出するように設けられている。また、第1骨接触部22は、ハウジング本体部21から、ハウジング本体部21の長手方向に対して直交する方向に沿って、片持ち状に突出して延びている。尚、ハウジング11には、ハウジング本体部21における第1骨接触部22が突出する端部において、第1骨接触部22が突出する側と逆側の角部分に、緩やかに湾曲する曲面を有する第1湾曲部22dが設けられている。これにより、ハウジング11は、第1骨接触部22が脛骨101に固定されて後述するような脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の測定が行われる際に、ハウジング本体部21の端部の角部分が大腿骨102に対して干渉してしまうことが防止されるように構成されている。
また、第1骨接触部22は、脛骨101に対して接触する平坦な接触面22aが設けられている。更に、第1骨接触部22には、後述する固定ピン15が貫通するように挿通される複数(本実施形態では、2つ)貫通孔(22b、22c)が設けられている。貫通孔22bは、ハウジング本体部21の長手方向と平行な方向に沿って第1骨接触部22を貫通する孔として設けられている。貫通孔22cは、ハウジング本体部21の長手方向と平行な方向に対して斜めに延びる方向に沿って第1骨接触部22を貫通する孔として設けられている。
蓋部23は、中央に貫通孔としてのピニオン支持孔23aが設けられた円盤状の部材として設けられている。蓋部23は、ハウジング本体部21に取り付けられて固定される。尚、ハウジング本体部21におけるピニオン配置部25には、壁部24d側で開口する円形の孔25aが設けられている。そして、蓋部23は、孔25aに嵌め込まれることで、ハウジング本体部21に対して取り付けられる。尚、蓋部23の外周の縁部と、孔25aの内周の縁部とは、例えば、複数個所において溶接等の接合処理が行われることにより互いに固定されてもよい。
蓋部23の中央に設けられたピニオン支持孔23aは、後述するピニオン29を回転自在に支持する孔として設けられている。また、ピニオン配置部25における壁部24b側にも、貫通孔として設けられ、ピニオン29を回転自在に支持するピニオン支持孔25bが設けられている。
[スライダ]
図1乃至図6に示すスライダ12は、ハウジング11に対してスライド移動自在に設けられる。そして、スライダ12は、大腿骨102に対して又は大腿骨102に取り付けられたコンポーネントに対して、当接又は固定可能に設けられる。本実施形態では、大腿骨102に対して当接可能に設けられたスライダ12の形態を例示している。
スライダ12は、スライダ本体部27、第2骨接触部28を備えて構成されている。スライダ本体部27及び第2骨接触部28は、例えば、複数の金属製部材を溶接によって接合する処理によって形成される。また、スライダ本体部27及び第2骨接触部28は、プレス加工処理、或いは金属製のインゴットを用いて削り出し加工を行う処理によって形成されてもよい。また、スライダ本体部27及び第2骨接触部28は、上記の各処理が適宜組み合わされた処理によって、形成されてもよい。
スライダ本体部27は、スライダ12の本体部分として設けられ、例えば、略矩形断面で直線状に延びる細長い直方体状の部分として設けられている。スライダ本体部27は、ハウジング11のハウジング本体部21に対して、スライダ本体部27の長手方向に沿って、開口21aから挿入される。そして、スライダ本体部27は、ハウジング本体部21の内側で、ハウジング本体部21の長手方向に沿って、スライド移動自在に配置される。
スライダ本体部27には、スライダ本体部27の長手方向に沿って延びる3つの摺動面(27a、27b、27c)が設けられている。摺動面27a及び摺動面27cは、互いに平行に延びる面として構成されている。摺動面27bは、摺動面27a及び摺動面27cに直交する面として構成されている。ハウジング本体部21に対して、摺動面27aは、壁部24bの内側で摺動し、摺動面27bは、壁部24cの内側で摺動し、摺動面27cは、壁部24dの内側で摺動する。
第2骨接触部28は、第2の骨である大腿骨102に対して接触して当接する部分として設けられている。第2骨接触部28には、大腿骨102に対して接触する平坦な接触面28aが設けられている。そして、第2骨接触部28は、スライダ本体部27から片持ち状に突出するように設けられている。第2骨接触部28は、スライダ本体部27から、スライダ本体部27の長手方向に対して直交する方向に沿って、片持ち状に突出して延びている。
また、第2骨接触部28は、スライダ本体部27がハウジング本体部21に挿入された状態でハウジング本体部21から外部に露出するスライダ本体部27の端部において、片持ち状に突出するように設けられている。更に、第2骨接触部28は、スライダ本体部27がハウジング本体部21に挿入された状態で、ハウジング本体部21に対して、壁部24c側と反対側に向かって突出するように、配置される。尚、スライダ12には、スライダ本体部27における第2骨接触部28が突出する端部において、第2骨接触部28が突出する側と逆側の角部分に、緩やかに湾曲する曲面を有する第2湾曲部28bが設けられている。これにより、スライダ12は、第2骨接触部28が大腿骨102に当接して後述するような脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の測定が行われる際に、スライダ本体部27の端部の角部分が脛骨101に対して干渉してしまうことが防止されるように構成されている。
上記の構成により、関節手術用測定器具1においては、第1骨接触部22及び第2骨接触部28は、ハウジング11に対するスライダ12のスライド方向に対して交差する方向と平行な方向において、互いに逆向きに片持ち状に延びるように、設けられている。尚、本実施形態では、ハウジング11に対するスライダ12のスライド方向に対して直交する方向と平行な方向において、互いに逆向きに片持ち状に延びている第1骨接触部22及び第2骨接触部28の形態が例示されている。
[位置表示部]
図1乃至図6に示す位置表示部(13a、13b)は、ハウジング11に対するスライダ12の位置を表示する機構として設けられている。位置表示部13aは、ハウジング11の壁部24b及びスライダ12の摺動面27aに設けられている。位置表示部13bは、ハウジング11の壁部24d及びスライダ12の摺動面27cに設けられている。位置表示部13a及び位置表示部13bは、同様に構成されている。
位置表示部13aは、目盛部31aと読取位置指標部32aとを備えて構成されている。目盛部31aは、ハウジング11及びスライダ12の一方に設けられ、本実施形態では、スライダ12に設けられている。より具体的には、目盛部31aは、スライダ12の摺動面27aにおいて等間隔に刻印された目盛として構成されている。例えば、目盛部31aは、1mm間隔で摺動面27aに刻印された複数の溝状のしるしとして構成されている。尚、摺動面27aにおいては、目盛部31aにおける複数のしるしとともに、各しるし或いは一部のしるしに対応する数値が刻印されていてもよい。
読取位置指標部32aは、ハウジング11及びスライダ12の他方に設けられ、本実施形態では、ハウジング11に設けられている。読取位置指標部32aは、目盛部31aにおける読取位置を指標するしるしとして設けられている。より具体的には、読取位置指標部32aは、ハウジング本体部21の壁部24bにおける目盛窓26aの近傍において刻印された溝状のしるしとして構成されている。
ハウジング11に対してスライダ12がハウジング11の長手方向に沿ってスライド移動する際、目盛部31aの一部は、常時、目盛窓26aから露出している。そして、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動すると、目盛窓26a及び読取位置指標部32aに対して、目盛部31aにおける複数のしるしが相対変位することになる。このため、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動した際、そのスライド移動前後において、読取位置指標部32aの位置に対応する目盛部31aの位置が把握されることにより、ハウジング11に対するスライダ12の相対移動量が把握されることになる。
位置表示部13bは、目盛部31bと読取位置指標部32bとを備えて構成されている。目盛部31bは、スライダ12に設けられ、スライダ12の摺動面27cにおいて等間隔に刻印された目盛として構成されている。例えば、目盛部31bは、1mm間隔で摺動面27cに刻印された複数の溝状のしるしとして構成されている。
読取位置指標部32bは、ハウジング11に設けられ、目盛部31bにおける読取位置を指標するしるしとして設けられている。より具体的には、読取位置指標部32bは、ハウジング本体部21の壁部24dにおける目盛窓26bの近傍において刻印された溝状のしるしとして構成されている。
ハウジング11に対してスライダ12がハウジング11の長手方向に沿ってスライド移動する際、目盛部31bの一部は、常時、目盛窓26bから露出している。そして、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動すると、目盛窓26b及び読取位置指標部32bに対して、目盛部31bにおける複数のしるしが相対変位することになる。このため、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動した際、そのスライド移動前後において、読取位置指標部32bの位置に対応する目盛部31bの位置が把握されることにより、ハウジング11に対するスライダ12の相対移動量が把握されることになる。
[駆動機構]
図7は、関節手術用測定器具1の斜視図であって、一部の要素である蓋部23を除いた状態で示す図である。尚、図7は、図4と同じ方向から見た状態の関節手術用測定器具1を示す斜視図である。図1乃至図7に示す駆動機構14は、スライダ12をハウジング11に対してスライド移動するように駆動する機構として設けられている。
駆動機構14は、本実施形態では、ラックアンドピニオン機構として設けられ、ピニオン29及びラック30を備えて構成されている。ピニオン29は、外周に設けられた歯車を備えて構成され、外部からの回転方向の駆動力が入力される駆動力入力部として設けられている。ピニオン29は、その中央部分に軸部29aが設けられ(図3乃至図7を参照)、軸部29aの軸方向における中央部分の外周に歯車が設けられている。
ピニオン29は、ハウジング11に取り付けられる。そして、ピニオン29は、ハウジング本体部21のピニオン配置部25の内側に配置され、ハウジング11に対して回転自在に支持される。ピニオン29は、軸部29aの両端部でハウジング11に対して回転自在に支持される。具体的には、軸部29aの一方の端部がピニオン配置部25に設けられたピニオン支持孔25bに挿通され、軸部29aの一方の端部がピニオン配置部25に対して回転自在に支持される。そして、軸部29aの他方の端部が蓋部23に設けられたピニオン支持孔23aに挿通され、軸部29aの他方の端部が蓋部23に対して回転自在に支持される。上記構成により、ピニオン29は、ハウジング11に対して回転自在に支持されている。
尚、ピニオン29がハウジング11に取り付けられる際には、まず、ピニオン29は、軸部29aの一方の端部がピニオン支持孔25bに挿入された状態で、ピニオン配置部25の内側に配置される。そして、軸部29aの他方の端部がピニオン支持孔23aに挿入された状態となるように、蓋部23がハウジング本体部21に取り付けられて固定される。
図8は、図1の一部を拡大して示す図である。ピニオン29の軸部29aには、駆動機構14に入力される回転方向の駆動力を発生させるトルク発生装置としてのトルクドライバー103の先端のトルク入力軸103aに連結される連結用孔29bが設けられている(図3乃至図8を参照)。
連結用孔29bは、軸部29aを軸方向に貫通する多角形断面の孔として設けられている。そして、トルク入力軸103aの断面形状も、多角形断面に形成されている。連結用孔29bの内周の断面形状は、トルク入力軸103aの断面形状に対応した形状に形成されている。
トルクドライバー103の駆動力によって駆動機構14を作動させる際には、まず、連結用孔29bに対してトルクドライバー103の先端のトルク入力軸103aが挿入される。これにより、トルク入力軸103aが連結用孔29bに嵌合し、ピニオン29の連結用孔29bとトルクドライバー103のトルク入力軸103aとが、連結される。トルクドライバー103のトルク入力軸103aが挿入された状態でトルクドライバー103の操作が行われることで、トルク入力軸103aに連結されたピニオン29にトルクドライバー103からの回転駆動力が入力されることになる。
図2乃至図8に示すラック30は、スライダ12のスライダ本体部27に設けられ、ピニオン29の歯車に噛み合う直線状に配列された歯として設けられている。ラック30は、トルクドライバー103からピニオン29に入力された回転方向の駆動力を直線方向に変換し、スライダ12をハウジング11に対してスライド移動させるスライド駆動部として設けられている。
ラック30は、スライダ本体部27がハウジング本体部21の内側に配置された状態で、壁部24aに対向するように配置されている。また、ハウジング本体部21におけるピニオン配置部25の内側のスペースを区画する内周壁は、一部がハウジング本体部21の筒状の部分の内部におけるスライダ12が配置されるスペースに対して開口している。そして、ピニオン配置部25の内周壁に設けられた上記の開口を介して、ピニオン29の歯車とラック30の直線状の歯とが噛み合っている。
トルクドライバー103からの回転駆動力がピニオン29に入力されると、ハウジング11に回転自在に支持されたピニオン29が回転する。そして、ピニオン29の回転に伴って、ピニオン29に噛み合うラック30が、スライダ12とともに、ハウジング11の長手方向に沿って移動する。これにより、スライダ12がハウジング11に対してハウジング11の長手方向に沿ってスライド移動することになる。
尚、図9及び図10は、関節手術用測定器具1の斜視図であって、ハウジング11に対するスライダ12の位置が図3とは異なる状態を示す図である。図9は、スライダ12がハウジング11に対して、図3に示す状態からより突出するように移動した状態を示している。一方、図10は、スライダ12がハウジング11に対して、図3に示す状態からハウジング本体部21の内部の奥側に向かってより縮退するように移動した状態を示している。トルクドライバー103からの回転駆動力が入力されることで、図9及び図10に示すように、駆動機構14は、ピニオン29の回転方向に応じて、スライダ12を、ハウジング11に対して、縮退した状態と突出した状態との間において、スライド移動させることができるように構成されている。
[固定ピン]
図1、図2、図8に示す固定ピン15は、関節手術用測定器具1とともに用いられる。固定ピン15は、ハウジング11を第1の骨である脛骨101に固定するための固定用部材として用いられ、本実施形態では、複数(2つ)の固定ピン15が用いられる形態が例示されている。一方の固定ピン15は、ハウジング11の貫通孔22bに挿通された状態で、脛骨101に対して係合し、ハウジング11を脛骨101に対して固定する。他方の固定ピン15は、ハウジング11の貫通孔22cに挿通された状態で、脛骨101に対して係合し、ハウジング11を脛骨101に対して固定する。
各固定ピン15には、脛骨101に対して係合する係合部15aと、ハウジング11に対して係止するストッパ部15bとが設けられている。係合部15aは、ハウジング11の貫通孔(22b、22c)に挿通される直線状に延びる部分として設けられている。そして、係合部15aの先端部分は、脛骨101に突き刺さることで脛骨101に対して係合可能なように、尖った部分として設けられている。
ストッパ部15bは、直線状の係合部15aの軸部分に対して径方向にフランジ状に広がった部分として設けられている。ハウジング11の貫通孔(22b、22c)に係合部15aが挿通された際、固定ピン15は、ストッパ部15bにて、貫通孔(22b、22c)の縁部に当接する。これにより、固定ピン15は、ストッパ部15bにて、ハウジング11に対して係止される。
尚、本実施形態では、ハウジング11を脛骨101に固定するための固定用部材として、固定ピン15の形態を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、ハウジング11を脛骨101に固定するための固定用部材として、脛骨101に係合するオネジ部分を有する固定スクリューが用いられてもよい。
[関節手術用測定器具の作動]
次に、関節手術用測定器具1の作動について説明する。関節手術用測定器具1は、膝関節手術において、膝関節近傍の皮膚の一部が切開されて膝関節の一部を外部に露出させた状態で用いられる。図8に示すように、まず、ハウジング11の第1骨接触部22が、脛骨101の近位側の端部に対して、患者の前面側から当接した状態となるように、関節手術用測定器具1が配置される。
上記の状態で、各固定ピン15が、ハウジング11の各貫通孔(22b、22c)に挿通され、脛骨101に対して打込まれる。そして、各固定ピン15は、ハウジング11に係止された状態で、脛骨101に対してそれぞれ突き刺さって係合した状態となる。これにより、ハウジング11が、第1骨接触部22にて、脛骨101に対して固定される。
尚、固定ピン15は、複数(本実施形態では、2つ)設けられているため、ハウジング11を脛骨101に対して複数の固定箇所にて安定して固定することができる。また、ハウジング11に設けられた2つの貫通孔(22b、22c)は、互いに平行でない方向に延びるように設けられている。このため、貫通孔(22b、22c)に挿入された2つの固定ピン15は、脛骨101に対して、互いに平行でない方向に沿って突き刺さって係合する。これにより、ハウジング11を脛骨101に対して更に安定して固定することができる。
ハウジング11が脛骨101に固定されると、次いで、トルクドライバー103のトルク入力軸103aがピニオン29の連結用孔29bに連結される。そして、関節手術を行う術者は、トルクドライバー103を操作してピニオン29に回転駆動力を入力して駆動機構14を作動させ、スライダ12が大腿骨102の遠位部側の端部に接触する位置まで、スライダ12をハウジング11に対してスライド移動させる。このとき、スライダ12は、第2骨接触部28にて、大腿骨102の遠位側の端部に対して、患者の前面側で接触する。そして、スライダ12を大腿骨102の端部に接触する位置まで移動させる上記の操作においては、脛骨101に対して大腿骨101を相対移動させてしまわない程度の状態で第2骨接触部28を大腿骨102の端部に対して軽く接触させ、スライダ12のハウジング11に対する移動を一旦停止させる。
上記のように、スライダ12が大腿骨102の端部の前面側に軽く接触した状態において、術者により、位置表示部13aによって、スライダ12のハウジング11に対する位置が読み取られる。即ち、目盛部31aにおいて読取位置指標部32aによって指標されるしるしの位置が読み取られる。
尚、図8に基づく上記の説明においては、トルクドライバー103のトルク入力軸103aが、ピニオン29の連結用孔29bに対して、ハウジング11の壁部24b側から挿入された場合を例にとって説明している。更に、上記の説明においては、位置表示部13aを用いてスライダ12のハウジング11に対する位置が読み取られる形態を例にとって説明している。しかし、この通りでなくてもよい。トルク入力軸103aが、ピニオン29の連結用孔29bに対して、ハウジング11の壁部24d側(即ち、蓋部23側)から挿入される形態が実施されてもよい。また、位置表示部13bを用いてスライダ12のハウジング11に対する位置が読み取られる形態が実施されてもよい。
前述のように、スライダ12が大腿骨102の端部の前面側に軽く接触した状態におけるスライダ12のハウジング11に対する位置が読み取られると、次いで、術者により、更に、トルクドライバー103の操作が行われる。即ち、術者は、トルクドライバー103を操作してピニオン29に回転駆動力を入力して駆動機構14を作動させ、スライダ12をハウジング11に対して更にスライド移動させる。
上記のようにトルクドライバー103の操作が行われる際、ハウジング11の第1骨接触部22は、脛骨101の近位側の端部の前面側で固定され、スライダ12の第2骨接触部28は、大腿骨102の遠位側の端部の前面側で当接している。そして、ハウジング11及びスライダ12は、ハウジング本体部21及びスライダ本体部27の長手方向が患者の前後方向に沿って延びた状態で、配置されている。
上記により、トルクドライバー103の操作が行われて駆動機構14が作動すると、駆動機構14は、スライダ12を、ハウジング11に対して、患者の前後方向に沿ってスライド移動させるように、駆動する。より具体的には、駆動機構14は、スライダ12を、ハウジング11に対して、患者の前面側から後面側に向かう方向に沿って、スライド移動させるように、駆動する。これにより、関節手術用測定器具1は、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動することで、第1の骨である脛骨101に対して第2の骨である大腿骨102を脛骨101と大腿骨102との間の関節面(101a、102a)に沿って前後方向に相対移動させるように構成されている。尚、関節面101aは、脛骨101の近位側の端部の関節面であり、関節面102aは、大腿骨102の遠位側の端部の関節面である。
術者は、関節手術用測定器具1を用いて、上記のように、脛骨101の端部に対して大腿骨102の端部を関節面に沿って前後方向に相対移動させ、靭帯等の軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性を確認する。そして、術者は、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の確認のために必要な程度、脛骨101に対して大腿骨102を移動させると、トルクドライバー103の操作を停止する。そして、その状態において、術者により、位置表示部13aによって、スライダ12のハウジング11に対する位置が読み取られる。即ち、目盛部31aにおいて読取位置指標部32aによって指標されるしるしの位置が読み取られる。
上記のように、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の確認が行われる際には、まず、スライダ12が大腿骨102の端部の前面側に軽く接触した状態におけるスライダ12のハウジング11に対する位置が読み取られる。次いで、関節手術用測定器具1によって、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の確認のために必要な程度、脛骨101に対して大腿骨102を移動させた状態で、スライダ12のハウジング11に対する位置が読み取られる。そして、最初に読み取られたスライダ12のハウジング11に対する位置と後に読み取られたスライダ12のハウジング11に対する位置との差分として、脛骨101に対して大腿骨101が関節面(101a、102a)に沿って相対移動した際の相対移動量が測定される。これにより、関節手術用測定器具1においては、位置表示部13aにて表示されるハウジング11に対するスライダ12の位置に基づいて、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性が測定される。
また、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の確認のために必要な程度、脛骨101に対して大腿骨102を移動させた状態においては、トルクドライバー103におけるトルク表示部103bにより、トルクドライバー103によって入力しているトルクの大きさが表示される。このように、トルクドライバー103が用いられることで、トルクドライバー103によって入力されるトルクも測定される。
[関節手術用測定器具の効果]
以上説明したように、本実施形態によると、ハウジング11が脛骨101に固定される。一方、スライダ12が、大腿骨102に対して当接した状態に配置される。この状態で、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動するように、関節手術用測定器具1の操作が行われる。これにより、脛骨101に対する大腿骨102の関節面(101a、102a)に沿った相対移動が行われる。そして、脛骨101に対して大腿骨102が関節面(101a、102a)に沿って相対移動した際の相対移動量が、位置表示部(13a、13b)にて表示されるハウジング11に対するスライダ12の位置に基づいて、測定される。このように、この関節手術用測定器具1によると、関節にて軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102とをそれらの骨の間の関節面(101a、102a)に沿って相対移動させ、その関節面(101a、102a)に沿った方向における相対移動量として、それらの骨の連結状態の安定性が測定される。即ち、この関節手術用測定器具1によると、脛骨101と大腿骨102とが離間する方向以外の方向にそれらの骨同士を相対移動させ、それらの骨の連結状態の安定性を測定することができる。
以上のように、本実施形態によると、関節にて軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102とが離間する方向以外の方向にそれらの骨同士を相対移動させ、それらの骨の連結状態の安定性を測定できる、関節手術用測定器具1を提供できる。
また、本実施形態によると、第1骨接触部22及び第2骨接触部28が、ハウジング11に対するスライダ12のスライド方向に対して交差する方向と平行な方向において、互いに逆向きに片持ち状に延びている。このため、ハウジング11に対してスライダ12がスライド移動することで脛骨101に対して大腿骨102を関節面(101a、102a)に沿って相対移動させる機構を、ハウジング11及びスライダ12のそれぞれから片持ち状に突出する第1及び第2骨接触部(22、28)を備える簡素な構造で実現することができる。
また、本実施形態によると、ハウジング11及びスライダ12において、一方に目盛部(31a、31b)が設けられて他方に読取位置指標部(32a、32b)が設けられた簡素な構造により、ハウジング11に対するスライダ12の位置を表示する位置表示部(13a、13b)を実現することができる。
また、本実施形態によると、駆動機構14を介してスライダ12をハウジング11に対してスライド移動させるため、ハウジング11に対してスライダ12を滑らかに且つ正確に相対移動させることができる。このため、脛骨101に対して大腿骨102を関節面(101a、102a)に沿って滑らかに且つ正確に相対移動させることができる。
また、本実施形態によると、外部からの回転方向の駆動力が入力されると、その回転方向の駆動力が直線方向の駆動力に変換され、スライダ12がハウジング11に対してスライド移動することになる。このため、回転方向の駆動力を発生させるトルクドライバー103を用いて、ハウジング11に対してスライダ12を滑らかに且つ正確に相対移動させることができる。更に、トルクドライバー103を用いることができるため、トルクドライバー103によって入力するトルクをトルクドライバー103にて測定することができる。これにより、脛骨101と大腿骨102とが離間する方向以外の方向におけるそれらの骨の連結状態の安定性の測定に関し、それらの骨を連結する軟部組織によって生じる緊張力についても容易に測定することができる。
また、本実施形態によると、ハウジング11に第1湾曲部22dが設けられているため、ハウジング11における第1骨接触部22の突出側と逆側の角部分と大腿骨102とが接触して干渉してしまうことを防止することができる。また、スライダ12に第2湾曲部28bが設けられているため、スライダ12における第2骨接触部28の突出側と逆側の角部分と脛骨101とが接触して干渉してしまうことを防止することができる。よって、関節手術用測定器具1によって脛骨101に対して大腿骨102を関節面(101a、102a)に沿って相対移動させる際に、或いは、脛骨101の端部及び大腿骨102の端部にて構成される膝関節の近傍に関節手術用測定器具1を配置した状態でその膝関節の角度を変える際に、脛骨101及び大腿骨102と関節手術用測定器具1との間で術者が意図しないような接触による干渉が発生してしまうことを防止することができる。
(第2実施形態)
[関節手術用測定器具の概略]
次に、本発明の第2実施形態に係る関節手術用測定器具2について説明する。図11は、本発明の第2実施形態に係る関節手術用測定器具2の使用形態を示す模式図である。図12は、図11に示す関節手術用測定器具2等を膝関節の側方から見た状態を示す模式図である。図13は、関節手術用測定器具2の他の使用形態を示す模式図である。
図11乃至図13に示す関節手術用測定器具2は、第1実施形態の関節手術用測定器具1と同様に、種々の関節手術において用いることができ、関節が伸展位及び屈曲位のいずれの角度の状態にある場合であっても、用いることができる。尚、本実施形態では、膝関節が人工膝関節に置換される人工膝関節置換術において関節手術用測定器具2が用いられる形態を例にとって説明する。また、本実施形態では、膝関節が屈曲位の状態にある場合に用いられる形態を例にとって説明するが、膝関節が伸展位の状態にある場合においても関節手術用測定器具2を用いることができる。
関節手術用測定器具2は、例えば、人工膝関節置換術において用いられ、膝関節にて靭帯等の軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性(動揺性)を測定するための器具として設けられている。脛骨101は、本実施形態における第1の骨を構成し、大腿骨102は、本実施形態における第2の骨を構成している。尚、図11乃至図13の模式図では、脛骨101及び大腿骨102以外の人体組織の図示が省略されている。また、図11乃至図13の模式図では、脛骨101及び大腿骨102については、膝関節及びその周辺の部分のみが図示されている。
図11及び図12においては、第1の骨である脛骨101及び第2の骨である大腿骨102に対して、コンポーネントがそれぞれ取り付けられた状態が図示されている。具体的には、図11及び図12においては、脛骨101に対しては、本実施形態のコンポーネントとしての脛骨トレートライアル104及び脛骨インサートトライアル105が取り付けられている。そして、大腿骨102に対しては、本実施形態のコンポーネントとしての大腿骨トライアル106が取り付けられている。一方、図13においては、脛骨101及び大腿骨102のいずれに対しても、コンポーネントが取り付けられていない状態が図示されている。関節手術用測定器具2は、脛骨101及び大腿骨102に対してコンポーネントが取り付けられた状態及び取り付けられていない状態のいずれの状態においても、使用することができる。
図11乃至図13に示す関節手術用測定器具2は、ハウジング41、スライダ42、位置表示部(43a、43b)、駆動機構44、等を備えて構成されている。尚、図11乃至図13においては、関節手術用測定器具2とともに用いられるスライダ固定ピン45、屈曲位保持ピン46、ハウジング固定ピン47も図示されている。尚、ハウジング41、スライダ42、駆動機構44等の関節手術用測定器具2の構成要素は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
[コンポーネント]
ここで、第1の骨である脛骨101及び第2の骨である大腿骨102に対して取り付けられるコンポーネントとしての脛骨トレートライアル104、脛骨インサートトライアル105、及び大腿骨トライアル106について説明する。
脛骨トレートライアル104及び脛骨インサートトライアル105は、人工膝関節の脛骨側のインプラント(図示省略)と略同様の形状に形成されている。脛骨トレートライアル104は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。脛骨インサートトライアル105は、例えば、樹脂材料で形成されている。
脛骨トレートライアル104及び脛骨インサートトライアル105は、人工膝関節置換術中において、脛骨101に脛骨側のインプラントが取り付けられる前に、脛骨101に対して一時的に設置される。術者は、人工膝関節置換術中に、脛骨トレートライアル104及び脛骨インサートトライアル105を脛骨101に一時的に設置することで、脛骨側のインプラントの設置状態をその設置前に事前に確認する。
尚、脛骨トレートライアル104は、脛骨101の近位側の端部に設置される。脛骨101の近位側の端部には、脛骨101の骨軸に略垂直な面に沿って切除されることで形成される切除面101bが設けられる。そして、脛骨トレートライアル104は、切除面101bに固定され、脛骨101の近位側の端部に設置される。そして、脛骨インサートトライアル105は、脛骨101に設置された脛骨トレートライアル104に対して、固定されて設置される。また、脛骨インサートトライアル105における脛骨トレートライアル104に設置される側と反対側の表面(即ち、近位側の表面)には、大腿骨トライアル106に対して摺動可能な関節面105aが設けられている。
大腿骨トライアル106は、人工膝関節の大腿骨側のインプラント(図示省略)と略同様の形状に形成されている。大腿骨トライアル106は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。そして、大腿骨トライアル106は、人工膝関節置換術中において、大腿骨102に大腿骨側のインプラントが取り付けられる前に、大腿骨102に対して一時的に設置される。術者は、人工膝関節置換術中に、大腿骨トライアル106を大腿骨102に一時的に設置することで、大腿骨側のインプラントの設置状態をその設置前に事前に確認する。
尚、大腿骨トライアル106は、大腿骨102の遠位側の端部に設置される。大腿骨102の遠位側の端部には、大腿骨102の端部の一部が切除されることで形成された角度の異なる5つの切除面102bが設けられる。そして、大腿骨トライアル106は、切除面102bに固定され、大腿骨102の遠位側の端部に設置される。また、大腿骨トライアル106における大腿骨102に設置される側と反対側の表面(即ち、遠位側の表面)には、脛骨インサートトライアル105に対して摺動可能な関節面106aが設けられている。
[ハウジング]
次に、関節手術用測定器具2の各構成について説明する。まず、ハウジング41について説明する。図14は、関節手術用測定器具2の平面図である。図15は、図14のB−B線矢視位置から見た断面を示す断面図である。図16は、関節手術用測定器具2及び脛骨トレートライアル104を示す平面図である。図17は、関節手術用測定器具2、脛骨トレートライアル104、脛骨インサートトライアル105、及び大腿骨トライアル106を示す側面図である。図18は、図17のC−C線矢視位置から見た断面を示す断面図である。
図11乃至図18に示すハウジング41は、脛骨101に対して又は脛骨101に取り付けられたコンポーネントである脛骨トレートライアル104に対して固定可能に設けられる。尚、図11及び図12においては、脛骨トレートライアル104に対して固定されたハウジング41が図示されている。一方、図13においては、脛骨101に対して固定されたハウジング41が図示されている。
ハウジング41は、ハウジング本体部51、コンポーネント固定部52、蓋部53、骨固定用ブロック54、等を備えて構成されている。ハウジング本体部51は、ハウジング11の本体部分として設けられ、後述するスライダ42をスライド移動自在に支持する部分として設けられている。そして、ハウジング本体部51には、後述するスライダ42がスライド移動自在に内側に配置されるケース状の部分、後述する駆動機構44のピニオン65が内側に配置されるピニオン配置部55、連結支持部56、等が設けられている。
ハウジング本体部51における上記のケース状の部分は、矩形の断面を形成する4つの壁部(51a、51b、51c、51d)を含んで構成されている。壁部51a及び壁部51cが互いに平行に延びるように設けられ、壁部51b及び壁部51dが互いに平行に延びるように設けられている。壁部51b及び壁部51dは、壁部51a及び壁部51cに対して、直交する方向に沿って延びるように設けられている。尚、壁部51bは、ハウジング本体部51のケース状の部分の全長に亘ってスリット状に延びる開口57aによって、2つのより小さな壁部に分割されている。
また、壁部51aにはピニオン配置部55が設けられ、壁部51bには上記のスリット状の開口57aが設けられ、壁部51dには窓状の開口57bが設けられている。開口(57a、57b)は、後述する位置表示部(43a、43b)の目盛部(63a、63b)の全部又は一部をハウジング本体部51の外部に露出させる開口として設けられている。開口57aは、ハウジング本体部51のケース状の部分が長く延びる方向であって壁部51bの長手方向に沿って延びるスリット状の開口として設けられている。そして、開口57bは、ハウジング本体部51のケース状の部分が長く延びる方向であって壁部51dの長手方向に沿って延びる長孔状の開口として設けられている。このため、各開口(57a、57b)は、ハウジング41に対してスライダ42がスライド移動する方向に沿って延びるスリット又は長孔として構成されている。
また、ハウジング本体部51の長手方向における一方の端部には、外部に対して開口する開口51eが設けられている(図15及び図17を参照)。後述するスライダ42は、ハウジング41に対して、ハウジング本体部51の開口51eから挿入され、スライド移動自在に配置される。
ハウジング本体部51のピニオン配置部55は、壁部51aから外側に向かって円筒状に盛り上がるように形成された部分として設けられている。ピニオン配置部55の内側には、後述する駆動機構44のピニオン65が配置されるスペースが設けられている。
連結支持部56は、ハウジング本体部51のケース状の部分から片持ち状に延びる柱状の部分として設けられている。連結支持部56は、ハウジング本体部51のケース状の部分における一方の端部において、ハウジング本体部51のケース状の部分の長手方向に対して垂直な方向に沿って片持ち状に延びるように設けられている。また、連結支持部56は、後述するコンポーネント固定部52が着脱可能に取り付けられて連結され、コンポーネント固定部52をハウジング本体部51に対して支持する部分として設けられている。更に、連結支持部56は、後述する骨固定用ブロック54も着脱可能に取り付けられて連結され、骨固定用ブロック54をハウジング本体部51に対して支持する部分としても設けられている。
蓋部53は、中央に貫通孔としてのピニオン支持孔53aが設けられた円盤状の部材として設けられている(図11及び図13を参照)。蓋部53は、ハウジング本体部51に取り付けられて固定される。尚、ハウジング本体部51におけるピニオン配置部55には、壁部51d側で開口する円形の孔55aが設けられている(図11及び図13を参照)。そして、蓋部53は、孔55aに嵌め込まれることで、ハウジング本体部51に対して取り付けられる。尚、蓋部53の外周の縁部と、孔55aの内周の縁部とは、例えば、複数個所において溶接等の接合処理が行われることにより互いに固定されてもよい。
蓋部53の中央に設けられたピニオン支持孔53aは、後述するピニオン65を回転自在に支持する孔として設けられている。また、ピニオン配置部55における壁部51b側にも、貫通孔として設けられ、ピニオン65を回転自在に支持するピニオン支持孔55bが設けられている(図12及び図17を参照)。
コンポーネント固定部52及び骨固定用ブロック54は、連結支持部56に対して、択一的に取り付けられる。即ち、コンポーネント固定部52が連結支持部56に取り付けられる際には、骨固定用ブロック54は連結支持部56に対しては取り付けられない。そして、骨固定用ブロック54が連結支持部56に取り付けられる際には、コンポーネント固定部52は連結支持部56に対しては取り付けられない。
コンポーネント固定部52は、ハウジング本体部51に対して連結支持部56において着脱可能に取り付けられるとともに、脛骨101に取り付けられた脛骨トレートライアル104に対して固定可能に設けられる。そして、コンポーネント固定部52には、連結位置調整部58と、固定操作部59とが設けられている。
連結位置調整部58は、コンポーネント固定部52において、ハウジング本体部51に対して連結支持部56において着脱可能に取り付けられる部分として設けられている。固定操作部59は、コンポーネント固定部52において、術者の操作に基づいて、脛骨トレートライアル104に対して固定される部分として設けられている。連結位置調整部58の基部58aと固定操作部59の基部59aとは、一体に設けられている。
連結位置調整部58には、基部58a、位置決め部材58b、バネ58cが設けられている。基部58aは、角筒状の部分として構成され、連結支持部56が内側に挿入される。また、基部58aには、位置決め部材58bが挿入される開口58dが設けられている。位置決め部材58bは、基部58aの開口58dから基部58aの内側の空間に挿入される。基部58aの内側に挿入された位置決め部材58bは、その一方の端部が、基部58aから突出した状態で、基部58aに対して配置される(図11、図12、図14乃至図18を参照)。
位置決め部材58bは、コンポーネント固定部52のハウジング本体部51に対する位置を位置決めするための部材として設けられている。より具体的には、位置決め部材58bは、コンポーネント固定部52の連結支持部56に対する連結支持部56の長手方向における位置を位置決めするための部材として設けられている。
また、位置決め部材58bは、角筒状の部分と円柱状の部分とが一体化された形状に形成されている。位置決め部材58bは、角筒状の部分が、基部58aの開口58dから基部58aの内側の空間に挿入される。そして、位置決め部材58bの角筒状の部分が基部58aの内側の空間に挿入された状態で、位置決め部材58bの円柱状の部分が、基部58aから突出した状態で配置される(図11、図12、図14乃至図18を参照)。位置決め部材58bの円柱状の部分は、術者が、コンポーネント固定部52を連結支持部56に対して相対変位させて位置決めする際に、術者によって押圧操作される部分として設けられている。
また、位置決め部材58bの角筒状の部分の内側の四角断面の貫通孔58eには、連結支持部56が挿通される。連結支持部56は、基部58aの内側を貫通するとともに、位置決め部材58bの内側の貫通孔58eも遊嵌状態で貫通している。即ち、連結支持部56は、基部58aの内側に開口58dから挿入された位置決め部材58bの内側の貫通孔58eを貫通した状態で配置される(図15及び図18を参照)。
また、位置決め部材58bにおける四角断面の貫通孔58eの4つの内壁面のうちの1つには、小さな突起状の部分と小さな溝状の部分とが繰り返して形成されている凹凸歯58fが設けられている(図15を参照)。凹凸歯58fは、貫通孔58eの4つの内壁面のうち、基部58aから外部に突出した位置決め部材58bの円柱状の部分から最も離れた内壁面に設けられている。即ち、凹凸歯58fは、貫通孔58aの4つの内壁面のうち、基部58aの開口58dから最も奥側に離れて配置される内壁面に設けられている。
位置決め部材58bの凹凸歯58fは、貫通孔58eを遊嵌状態で貫通する連結支持部56の外周のうちの1つの面に設けられた凹凸歯56aに対して噛み合って係合可能なように設けられている。凹凸歯56aは、連結支持部56の外周のうち、位置決め部材58bの凹凸歯58fに対向する1つの面に設けられている。そして、凹凸歯56aは、凹凸歯58fと同様に、小さな突起状の部分と小さな溝状の部分とが繰り返して形成されている。
バネ58cは、基部58aの内側に配置されている。バネ58cは、基部58aの開口58dから最も奥側に配置され、基部58aの開口58dから最も奥側の内壁面に当接している。バネ58cは、本実施形態では、中心部分が湾曲して盛り上がった板バネとして設けられている。即ち、板バネ58cは、湾曲して盛り上がった中央部分の盛り上がり量が小さくなるように弾性変形することで、バネとして作用するように構成されている。
基部58aの内側においては、バネ58cの中央部分の湾曲して盛り上がった部分に対して、位置決め部材58bにおける円柱状の部分とは反対側の端部が当接している。即ち、バネ58cに対しては、位置決め部材58bにおいて基部58aの内側の最も奥側に配置された端部が当接している。バネ58cは、基部58aの内側において、基部58aに対して位置決め部材58bを基部58aの開口58d側に向かって付勢している。即ち、バネ58cは、基部58aの内側から位置決め部材58bを外側に突出させる方向に向かって付勢している。
また、基部58aの壁部のうちの1つには、内側に向かって短く片持ち状に突出する脱落防止ピン58gが設けられている(図18を参照)。脱落防止ピン58gは、基部58aの壁部の1つに対して、例えば、溶接により固定されている。脱落防止ピン58gは、位置決め部材58aに貫通形成されたピン貫通孔58hを遊嵌状態で貫通している。更に、ピン貫通孔58hを貫通する脱落防止ピン58gの先端部は、連結支持部56に設けられたレール溝56bに対してスライド移動自在に嵌まり込んでいる。レール溝56bは、連結支持部56において、その長手方向に沿って延びるように形成されている。ピン貫通孔58hを貫通する脱落防止ピン58gの先端部がレール溝56bに嵌まり込んでいることにより、位置決め部材58bが基部58aから脱落して落下してしまうことが防止されている。
術者は、連結位置調整部58を連結支持部56に取り付ける際には、まず、基部58aから突出している位置決め部材58bの円柱状の部分を基部58a側に向かって押圧する。これにより、位置決め部材58aが、バネ58cの付勢力に抗して、基部58aの開口58dから奥側に向かって変位する。このとき、脱落防止ピン58gのピン貫通孔58h内での位置も相対変位する。
上記の状態で、連結支持部56が、基部58aの内側に挿入される。このとき、連結支持部56は、位置決め部材58bの貫通孔58eにも挿入される。更に、連結支持部56のレール溝56bに対して脱落防止ピン58gの先端部がスライド移動自在に嵌め込まれる。この状態で、術者は、連結支持部56の長手方向における所望の位置まで、連結位置調整部58を連結支持部56に対して相対変位させる。尚、連結位置調整部58の基部58aと固定操作部59の基部59aとは、一体に設けられており、連結位置調整部58とともに固定操作部59も連結支持部56に対して相対変位する。即ち、コンポーネント固定部52が、一体で、連結支持部56に対して相対変位する。
そして、術者は、連結位置調整部58が所望の位置に達すると、位置決め部材58bの円柱状の部分の押圧操作を解除する。これにより、バネ58cの付勢力によって、位置決め部材58bが基部58aの内側から開口58d側に向かって付勢される。そして、位置決め部材58bの凹凸歯58fが連結位置調整部56の凹凸歯56aに噛み合い、凹凸歯58fと凹凸歯56aとが係合する。これにより、連結位置調整部58の連結支持部56に対する位置が位置決めされる。即ち、コンポーネント固定部52のハウジング本体部51に対する位置が位置決めされる。
尚、連結位置調整部58の連結支持部56に対する位置を所望の位置に位置決めする上記の操作は、膝関節手術中においても適宜行われる。術者は、連結位置調整部58が連結支持部56に取り付けられた後においても、必要に応じて、上記と同様の操作を行い、連結位置調整部58の連結支持部56に対する位置を調整する。例えば、コンポーネント固定部52が固定操作部59に固定された後、上記と同様の操作を行い、連結位置調整部58の連結支持部56に対する位置を調整する。
固定操作部59は、術者の操作に基づいて、脛骨トレートライアル104に対して固定される部分として設けられている。固定操作部59が脛骨トレートライアル104に固定されることで、固定操作部59を含むコンポーネント固定部52と、コンポーネント固定部52が取り付けられたハウジング本体部51とが、脛骨トレートライアル104に固定される。即ち、固定操作部59が脛骨トレートライアル104に固定されることで、ハウジング41が脛骨トレートライアル104に固定される。
固定操作部59には、基部59a、固定軸部材59b、凸部59cが設けられている(図11、図12、図14乃至図18を参照)。基部59aは、角柱状に延びた後に略直角に屈曲して延びる略L字状の形状に形成されている。基部59aは、連結位置調整部58の基部58aと一体に形成されている。
基部59aにおける角柱状に延びる部分は、基部58aに位置決め部材58bが挿入されている方向と平行な方向に沿って延びるように設けられている。また、基部59aにおける角柱状に延びる部分には、後述する固定軸部材59bの軸部59fが螺合して貫通する貫通孔59dが設けられている(図18を参照)。
固定軸部材59bは、ハンドル部59eと軸部59fとを備えて構成されている。ハンドル部59eは、固定操作部59が脛骨トレートライアル104に固定される際に術者によって把持されて回転操作が行われる部分として設けられている。
軸部59fは、ハンドル部59eに一体に結合して設けられ、ハンドル部59eから直線状に延びるネジ軸部分として設けられている。軸部59fの外周には、オネジ部が形成されている。軸部59fは、基部59aに設けられた貫通孔59dに対して螺合して貫通した状態で配置される。尚、貫通孔59dの内周には、軸部59fのオネジ部に螺合するメネジ部が設けられている。軸部59fの先端側の端部は、半球状に形成されている。そして、軸部59fの先端側の端部は、脛骨トレートライアル104に設けられた嵌合穴104aに嵌り込むように構成されている(図18を参照)。
凸部59cは、基部59aに一体に設けられている。凸部59cは、基部59aにおける角柱状に延びる部分から略直角に屈曲して延びる部分から突出した部分として設けられている。凸部59cは、基部59aから外側に向かって広がるように突出し、凸部59cの先端部分には平坦な端面が形成されている(図18を参照)。このため、凸部59cと基部59aとの間には、鋭角に凹んだ領域が形成されている。
凸部59cは、脛骨トレートライアル104に設けられた凹部104bに対して嵌まり込むように構成されている(図18を参照)。凹部104bは、凸部59cの外形形状に対応した内面を有するように凹んだ溝状の部分として形成されている。凹部104bの一部は、凸部59cと基部59aとの間で形成された鋭角に凹んだ領域に嵌まり込むように鋭角に突出する部分を区画している。このため、溝状に設けられた凹部104bの断面形状は、脛骨トレートライアル104が設置された脛骨101の骨軸方向に対して略垂直な方向の断面において、入口側が狭く、奥側に向かって広がった形状に形成されている。
固定操作部59が脛骨トレートライアル104に固定される際には、まず、脛骨トレートライアル104が設置された脛骨101の骨軸方向に対して略平行な方向に沿って、凸部59cが凹部104bに嵌め込まれる。このとき、固定軸部材59bの軸部59fの先端側の端部は、基部59aから突出しておらず、基部59aの貫通孔59d内に位置している。
上記の状態で、術者は、ハンドル部59eを回転操作し、固定軸部材59bを基部59aから突出させる。即ち、ハンドル部59eとともに軸部59fが回転し、軸部59fのオネジ部の貫通孔59dのメネジ部に対する螺合位置が変化し、軸部59fの先端側の端部が基部59aから突出する。基部59aから突出した軸部59fの先端側の端部は、脛骨トレートライアル104の嵌合穴104aに嵌合する。術者は、軸部59fの先端側の端部が脛骨トレートライアル104の嵌合穴104aに嵌合すると、ハンドル部59eの回転操作を停止する。
上記のように、凸部59cが凹部104bに嵌め込まれ、軸部59fの先端側の端部が嵌合穴104aに嵌合した状態になると、固定操作部59の脛骨トレートライアル104への固定が完了する。このように、固定操作部59が脛骨トレートライアル104に固定されることで、ハウジング41が脛骨トレートライアル104に固定されることになる。
骨固定用ブロック54は、図13に示すように、脛骨101及び大腿骨102に対してコンポーネントが取り付けられていない状態で関節手術用測定器具2が用いられる際に、連結支持部56に取り付けられる。骨固定用ブロック54は、略直方体状の部材として設けられ、連結支持部56に取り付けられ、連結支持部56と脛骨101との間に配置される。骨固定用ブロック54は、連結支持部56と脛骨101との間の距離を所定距離に保つために、連結支持部56に取り付けられる。骨固定用ブロック54によって連結支持部56と脛骨101との間の距離が所定距離に保たれることで、スライダ42のハウジング41に対する移動範囲を十分に確保することができる。
骨固定用ブロック54には、ハウジング固定ピン47が挿通される複数の貫通孔が設けられている。一方、連結支持部56にも、複数のピン挿入孔56cが貫通形成されている(図13及び図15を参照)。骨固定用ブロック54に設けられた複数の貫通孔と、連結支持部56の複数のピン挿入孔56cとは、それぞれ位置及び孔の径が対応するように、設けられている。
骨固定用ブロック54が連結支持部56に取り付けられる際には、ハウジング固定ピン47が、連結支持部56のピン挿入孔56cを貫通するとともに骨固定用ブロック54の貫通孔を貫通するように、両方の孔に挿入される。そして、連結支持部56のピン挿入孔56cと骨固定用ブロック54の貫通孔とを貫通したハウジング固定ピン47は、脛骨101に対して刺し込まれて係合する。これにより、骨固定用ブロック54が連結支持部56に取り付けられた状態で、連結支持部56及び骨固定用ブロック54が脛骨101に固定される。即ち、ハウジング41が脛骨101に固定されることになる。
[スライダ]
図11乃至図17に示すスライダ42は、ハウジング41に対してスライド移動自在に設けられる。そして、スライダ42は、大腿骨102に対して又は大腿骨102に取り付けられたコンポーネントである大腿骨トライアル106に対して、当接又は固定可能に設けられる。尚、図11及び図12においては、大腿骨トライアル106に対して固定されたスライダ42が図示されている。一方、図13においては、大腿骨102に対して固定されたスライダ42が図示されている。
スライダ42は、スライダ本体部60、パドル部61、大腿骨側固定部62を備えて構成されている。スライダ本体部60は、スライダ42の本体部分として設けられ、ハウジング41のハウジング本体部51に対してスライド移動可能に支持される部分として設けられている。スライダ本体部60は、例えば、略矩形断面で直線状に延びる細長い直方体状の部分を主要部とする形状に形成されている。スライダ本体部60は、ハウジング41のハウジング本体部51に対して、スライダ本体部60の長手方向に沿って、開口51eから挿入される。そして、スライダ本体部60は、ハウジング本体部51のケース状の部分の内側で、ハウジング本体部51の長手方向に沿って、スライド移動自在に配置される。
スライダ本体部60には、スライダ本体部60の長手方向に沿って延びる3つの摺動面(60a、60b、60c)が設けられている(図11乃至図13、図15、図17を参照)。摺動面60a及び摺動面60cは、互いに平行に延びる面として構成されている。摺動面60bは、摺動面60a及び摺動面60cに直交する面として構成されている。ハウジング本体部51に対して、摺動面60aは、壁部51bの内側で摺動し、摺動面60bは、壁部51cの内側で摺動し、摺動面60cは、壁部51dの内側で摺動する。
パドル部61は、スライダ本体部60と一体に設けられ、スライダ本体部60の一方の端部から片持ち状に延びるように設けられている。尚、スライダ本体部60の一方の端部は、ハウジング本体部51のケース状の部分の端部の開口51eから突出するように設けられている。そして、パドル部61は、スライダ本体部60の一方の端部から、スライダ本体部60の長手方向に対して直交する方向に沿って細長く平板状に延びるように、設けられている。尚、パドル部61は、関節手術用測定器具2が膝関節に設置された状態で、脛骨101の骨軸方向と略平行な方向に沿って延びるように、スライダ本体部60から突出して延びている。
また、パドル部61には、複数のピン挿入孔61aが貫通形成されている(図11、図13、図15を参照)。ピン挿入孔61aは、パドル部61の長手方向に対して直交する方向に沿って延びる長孔として設けられている。このため、関節手術用測定器具2が膝関節に設置された状態においては、ピン挿入孔61aは、患者の人体の左右方向に沿って延びる長孔となる(図11及び図13を参照)。
パドル部61のピン挿入孔61aには、大腿骨トライアル106を貫通して大腿骨102に刺し込まれた屈曲位保持ピン46が遊嵌状態で挿入される。即ち、屈曲位保持ピン46は、一方の端部が、大腿骨トライアル106を貫通して大腿骨102に刺し込まれて係合し、他方の端部が、ピン挿入孔61aに挿入される。
尚、屈曲位保持ピン46は、膝関節を屈曲位の状態のままに維持して脛骨101及び大腿骨102の相対位置を保持するために用いられる。図11に示すように、大腿骨102に刺し込まれた屈曲位保持ピン46がピン挿入孔61aに挿入された状態では、脛骨101に対する大腿骨102の屈曲角度が変化しようとすると、屈曲位保持ピン46の動きが、ピン挿入孔61aの縁部分によって規制されることになる。これにより、膝関節が屈曲位の状態のままで脛骨101及び大腿骨102の相対位置が保持されることになる。
大腿骨側固定部62は、パドル部61に取り付けられるとともに、大腿骨102に対して又は大腿骨102に取り付けられたコンポーネントである大腿骨トライアル106に対して固定される部分として設けられている。大腿骨側固定部62においてパドル部61に取り付けられる部分には、四角断面のパドル部嵌合孔62aが設けられている。パドル部嵌合孔62aに対してパドル部61におけるスライダ本体部42側と反対側の端部が嵌合することで、大腿骨側固定部62がパドル部61に取り付けられる。
大腿骨側固定部62において大腿骨102又は大腿骨トライアル106に固定される部分には、長孔状のピン挿入孔62bが設けられている。大腿骨側固定部62は、ピン挿入孔62bに挿入されるスライダ固定ピン45を介して、大腿骨102に対して又は大腿骨トライアル106に対して固定される。尚、ピン挿入孔62bは、図11及び図13に示すように、関節手術用測定器具2が膝関節に設置された状態において、患者の人体の左右方向に沿って延びる長孔として、設けられている。
尚、図11及び図12に示す形態においては、ピン挿入孔62bを貫通するスライダ固定ピン45は、大腿骨トライアル106に設けられた貫通孔106bに挿入され、更に、大腿骨102に刺し込まれて係合している。このため、大腿骨側固定部62は、スライダ固定ピン45を介して、大腿骨トライアル106及び大腿骨102に固定されている。これにより、スライダ42が、大腿骨トライアル106及び大腿骨102に固定されている。
一方、図13に示す形態においては、ピン挿入孔62bを貫通するスライダ固定ピン45は、大腿骨102に刺し込まれて係合している。このため、大腿骨側固定部62は、スライダ固定ピン45を介して、大腿骨102に固定されている。これにより、スライダ42が、大腿骨102に固定されている。
尚、図11乃至図13においては、ピン挿入孔62bに挿入された複数のスライダ固定ピン45が大腿骨トライアル106又は大腿骨102に固定された形態を例示しているが、この通りでなくてもよい。ピン挿入孔62bに挿入された1つのスライダ固定ピン45が大腿骨トライアル106又は大腿骨102に固定される形態が実施されてもよい。複数のスライダ固定ピン45によって固定される場合は、脛骨101に対する大腿骨102の脛骨101の骨軸回りでの揺動動作が規制されることになる。一方、1つのスライダ固定ピン45によって固定される場合は、脛骨101に対する大腿骨102の脛骨101の骨軸回りでの揺動動作が許容され易くなる。固定のために使用するスライダ固定ピン45の数については、関節手術中の必要に応じて、術者が、適宜選択することができる。
[位置表示部]
図11乃至図13、図17に示す位置表示部(43a、43b)は、ハウジング41に対するスライダ42の位置を表示する機構として設けられている。位置表示部43aは、ハウジング41におけるハウジング本体部51の壁部51b及びスライダ42におけるスライダ本体部60の摺動面60aに設けられている。位置表示部43bは、ハウジング41におけるハウジング本体部51の壁部51d及びスライダ42におけるスライダ本体部60の摺動面60cに設けられている。位置表示部43a及び位置表示部43bは、同様に構成されている。
位置表示部43aは、目盛部63aと読取位置指標部64aとを備えて構成されている。目盛部63aは、ハウジング41及びスライダ42の一方に設けられ、本実施形態では、スライダ42に設けられている。より具体的には、目盛部63aは、スライダ42のスライダ本体部60の摺動面60aにおいて等間隔に刻印された目盛として構成されている。例えば、目盛部63aは、1mm間隔で摺動面60aに刻印された複数の溝状のしるしとして構成されている。尚、摺動面60aにおいては、目盛部63aにおける複数のしるしとともに、一部のしるしに対応する数値が刻印されている。
読取位置指標部64aは、ハウジング41及びスライダ42の他方に設けられ、本実施形態では、ハウジング41に設けられている。読取位置指標部64aは、目盛部63aにおける読取位置を指標するしるしとして設けられている。より具体的には、読取位置指標部64aは、ハウジング本体部51の壁部51bにおける開口57aの近傍において刻印された溝状のしるしとして構成されている。
ハウジング41に対してスライダ42がハウジング41におけるハウジング本体部51の長手方向に沿ってスライド移動する際、目盛部63aは、常時、開口57aから露出している。そして、ハウジング41に対してスライダ42がスライド移動すると、開口57a及び読取位置指標部64aに対して、目盛部63aにおける複数のしるしが相対変位することになる。このため、ハウジング41に対してスライダ42がスライド移動した際、そのスライド移動前後において、読取位置指標部64aの位置に対応する目盛部63aの位置が把握されることにより、ハウジング41に対するスライダ42の相対移動量が把握されることになる。
位置表示部43bは、目盛部63bと読取位置指標部64bとを備えて構成されている。目盛部63bは、スライダ42に設けられ、スライダ42におけるスライダ本体部60の摺動面60cにおいて等間隔に刻印された目盛として構成されている。例えば、目盛部63bは、1mm間隔で摺動面60cに刻印された複数の溝状のしるしとして構成されている。
読取位置指標部64bは、ハウジング41に設けられ、目盛部63bにおける読取位置を指標するしるしとして設けられている。より具体的には、読取位置指標部64bは、ハウジング本体部51の壁部51dにおける開口57bの近傍において刻印された溝状のしるしとして構成されている。
ハウジング41に対してスライダ42がハウジング41におけるハウジング本体部51の長手方向に沿ってスライド移動する際、目盛部63bの一部は、常時、開口57bから露出している。そして、ハウジング41に対してスライダ42がスライド移動すると、開口57b及び読取位置指標部64bに対して、目盛部63bにおける複数のしるしが相対変位することになる。このため、ハウジング41に対してスライダ42がスライド移動した際、そのスライド移動前後において、読取位置指標部64bの位置に対応する目盛部63bの位置が把握されることにより、ハウジング41に対するスライダ42の相対移動量が把握されることになる。
[駆動機構]
図11乃至図17に示す駆動機構44は、スライダ42をハウジング41に対してスライド移動するように駆動する機構として設けられている。駆動機構44は、本実施形態では、ラックアンドピニオン機構として設けられ、ピニオン65及びラック66を備えて構成されている。ピニオン65は、外周に設けられた歯車を備えて構成され、外部からの回転方向の駆動力が入力される駆動力入力部として設けられている。ピニオン65は、その中央部分に軸部65aが設けられ、軸部65aの軸方向における中央部分の外周に歯車が設けられている。
ピニオン65は、ハウジング41に取り付けられる。そして、ピニオン65は、ハウジング本体部51のピニオン配置部55の内側に配置され、ハウジング41に対して回転自在に支持される。ピニオン65は、軸部65aの両端部でハウジング41に対して回転自在に支持される。具体的には、軸部65aの一方の端部がピニオン配置部55に設けられたピニオン支持孔55bに挿通され、軸部65aの一方の端部がピニオン配置部55に対して回転自在に支持される。そして、軸部65aの他方の端部が蓋部53に設けられたピニオン支持孔53aに挿通され、軸部65aの他方の端部が蓋部53に対して回転自在に支持される。上記構成により、ピニオン65は、ハウジング41に対して回転自在に支持されている。
尚、ピニオン65がハウジング41に取り付けられる際には、まず、ピニオン65は、軸部65aの一方の端部がピニオン支持孔55bに挿入された状態で、ピニオン配置部55の内側に配置される。そして、軸部65aの他方の端部がピニオン支持孔53aに挿入された状態となるように、蓋部53がハウジング本体部51に取り付けられて固定される。
図19は、関節手術用測定器具2の使用形態を示す模式図である。図19においては、関節手術用測定器具2とともに使用される機器の例示であるトルクドライバー103が図示されている。トルクドライバー103は、駆動機構44に入力される回転方向の駆動力を発生させるトルク発生装置として用いられる。
ピニオン65の軸部65aには、トルクドライバー103の先端のトルク入力軸103aに連結される連結用孔65bが設けられている(図11乃至図13、図15、図17、図19を参照)。連結用孔65bは、軸部65aを軸方向に貫通する多角形断面の孔として設けられている。そして、トルク入力軸103aの断面形状も、多角形断面に形成されている。連結用孔65bの内周の断面形状は、トルク入力軸103aの断面形状に対応した形状に形成されている。
トルクドライバー103の駆動力によって駆動機構44を作動させる際には、まず、連結用孔65bに対してトルクドライバー103の先端のトルク入力軸103aが挿入される。これにより、トルク入力軸103aが連結用孔65bに嵌合し、ピニオン65の連結用孔65bとトルクドライバー103のトルク入力軸103aとが、連結される。トルクドライバー103のトルク入力軸103aが挿入された状態でトルクドライバー103の操作が行われることで、トルク入力軸103aに連結されたピニオン65にトルクドライバー103からの回転駆動力が入力されることになる。
図14乃至図16に示すラック66は、スライダ42のスライダ本体部60に設けられ、ピニオン65の歯車に噛み合う直線状に配列された歯として設けられている。ラック66は、トルクドライバー103からピニオン65に入力された回転方向の駆動力を直線方向に変換し、スライダ42をハウジング41に対してスライド移動させるスライド駆動部として設けられている。
ラック66は、スライダ本体部60がハウジング本体部51の内側に配置された状態で、壁部51aに対向するように配置されている。また、ハウジング本体部51におけるピニオン配置部55の内側のスペースを区画する内周壁は、一部がハウジング本体部51のケース状の部分の内部におけるスライダ42が配置されるスペースに対して開口している。そして、ピニオン配置部55の内周壁に設けられた上記の開口を介して、ピニオン65の歯車とラック66の直線状の歯とが噛み合っている。
トルクドライバー103からの回転駆動力がピニオン65に入力されると、ハウジング41に回転自在に支持されたピニオン65が回転する。そして、ピニオン65の回転に伴って、ピニオン65に噛み合うラック66が、スライダ42とともに、ハウジング41におけるハウジング本体部51の長手方向に沿って移動する。これにより、スライダ42がハウジング41に対してハウジング41におけるハウジング本体部51の長手方向に沿ってスライド移動することになる。そして、トルクドライバー103からの回転駆動力が入力されることで、駆動機構44は、ピニオン65の回転方向に応じて、スライダ42を、ハウジング41に対して、より縮退した状態とより突出した状態との間において、スライド移動させることができるように構成されている。
[関節手術用測定器具の作動]
次に、関節手術用測定器具2の作動について説明する。関節手術用測定器具2は、膝関節手術において用いられる。膝関節手術においては、まず、膝関節近傍の皮膚の一部が切開されて膝関節の一部が外部に露出される。
そして、図11及び図12に示す使用形態の場合においては、脛骨101の近位側の端部に切除面101bが形成され、大腿骨102の遠位側の端部に切除面102bが形成される。切除面(101b、102b)が形成された後、脛骨101の近位側の端部には、脛骨トレートライアル104及び脛骨インサートトライアル105が設置され、大腿骨102の遠位側の端部には、大腿骨トライアル106が設置される。この状態で、図11及び図12に示すように、関節手術用測定器具2が用いられる。
一方、図13に示す使用形態の場合においては、脛骨101の近位側の端部及び大腿骨102の遠位側の端部の切除が行われていない状態で、関節手術用測定器具2が用いられる。そして、図13に示すように、脛骨101及び大腿骨102に対して、脛骨トレートライアル104、脛骨インサートトライアル105、及び大腿骨トライアル106が設置されていない状態で、関節手術用測定器具2が用いられる。
尚、関節手術用測定器具2の作動についての以下の説明においては、図11及び図12に示す使用形態を中心に説明する。
脛骨101及び大腿骨102に対して上記の各トライアル(104、105、106)が設置された状態で、コンポーネント固定部52がハウジング本体部51に取り付けられた状態の関節手術用測定器具2が用いられる。関節手術用測定器具2が用いられる際には、まず、コンポーネント固定部52の固定操作部59が脛骨トレートライアル104に固定される。
固定操作部59の脛骨トレートライアル104への固定の際には、前述の通り、固定操作部59の凸部59cが脛骨トレートライアル104の凹部104bに嵌め込まれる。そして、凸部59cが凹部104bに嵌め込まれた状態で、ハンドル部59eの回転操作が行われ、固定軸部材59bの軸部59fが基部59aから突出する。そして、前述の通り、基部59aから突出した軸部59fの先端側の端部が、脛骨トレートライアル104の嵌合穴104aに嵌合する。これにより、コンポーネント固定部52の脛骨トレートライアル104への固定作業が完了する。
コンポーネント固定部52が脛骨トレートライアル104へ固定されると、次いで、前述のように、連結位置調整部58の操作が行われ、コンポーネント固定部52に対するハウジング本体部51の相対位置が調整される。より具体的には、位置決め部材58bの円柱状の部分の押圧操作が行われ、バネ58cの付勢力に抗して、凹凸歯58fと凹凸歯56aとの噛み合いが解除される。これにより、凹凸歯58fと凹凸歯56aとの係合が外れることになる。この状態で、連結支持部56の連結位置調整部58に対する位置が術者の所望の位置まで相対変位するように変更される。そして、連結支持部56が術者の所望の位置まで相対変位すると、位置決め部材58bの円柱状の部分の押圧操作が解除される。これにより、バネ58cの付勢力によって、凹凸歯58fと凹凸歯56aとが噛み合って係合し、連結位置調整部58に対する連結支持部56の位置が位置決めされる。即ち、コンポーネント固定部52に対するハウジング本体部51の位置が位置決めされる。
コンポーネント固定部52に対するハウジング本体部51の位置の位置決めが完了すると、術者は、スライダ42をハウジング41に対してハウジング41から突出する方向に向かってスライド移動させる。術者は、パドル部61が大腿骨トライアル106の関節面106aに軽く接触する位置まで、スライダ42をハウジング41に対してスライド移動させる。そして、パドル部61が関節面106aに軽く接触すると、術者は、スライダ42のハウジング41に対するスライド移動を停止させる。
尚、コンポーネント固定部52が脛骨トレートライアル104に固定される前に、屈曲位保持ピン46が、大腿骨トライアル106を貫通して大腿骨102に刺し込まれる作業が行われる。そして、上記のように、術者が、スライダ42のハウジング41に対するスライド移動を停止させた状態では、屈曲位保持ピン46の大腿骨トライアル106から突出した端部が、パドル部61のピン挿入孔61aに遊嵌状態で挿入される。
術者は、上記のように、パドル部61が大腿骨トライアル106に接触する位置までスライダ42を移動させると、次いで、スライダ固定ピン45を大腿骨側固定部62のピン挿入孔62aに挿入する。そして、術者は、スライダ固定ピン45を、大腿骨トライアル106の貫通孔106bに挿入し、更に、大腿骨102に刺し込んで係合させる。これにより、スライダ42が、大腿骨トライアル106及び大腿骨102に固定される。
上記のように、パドル部61が大腿骨トライアル106の関節面106aに軽く接触しているとともにスライダ42が大腿骨トライアル106及び大腿骨102に固定された状態において、スライダ42のハウジング41に対する位置が読み取られる。即ち、術者により、位置表示部43a又は位置表示部43bによって、スライダ42のハウジング41に対する位置が読み取られる。より具体的には、目盛部63a又は目盛部63bにおいて読取位置指標部64a又は読取位置指標部64bによって指標されるしるしの位置が読み取られる。
上記の状態において、スライダ42のハウジング41に対する位置が読み取られると、次いで、トルクドライバー103のトルク入力軸103aがピニオン65の連結用孔65bに連結される(図19を参照)。そして、術者は、トルクドライバー103を操作してピニオン65に回転駆動力を入力して駆動機構44を作動させ、スライダ42をハウジング41に対してスライド移動させる。
上記のようにトルクドライバー103の操作が行われる際、ハウジング41のコンポーネント固定部52は、脛骨トレートライアル104に固定され、スライダ42の大腿骨側固定部62は、大腿骨トライアル106に固定されている。そして、ハウジング41及びスライダ42は、ハウジング本体部51のケース状の部分及びスライダ本体部60の長手方向が患者の前後方向に沿って延びた状態で、配置されている。
上記により、トルクドライバー103の操作が行われて駆動機構44が作動すると、駆動機構44は、スライダ42を、ハウジング41に対して、患者の前後方向に沿ってスライド移動させるように、駆動する。このとき、術者は、例えば、スライダ42をハウジング41に対して患者の後面側から前面側に向かう方向に沿ってスライド移動させるように、トルクドライバー103からの回転駆動力をピニオン65に入力する。これにより、関節手術用測定器具2は、ハウジング41に対してスライダ42がスライド移動することで、第1の骨である脛骨101に対して第2の骨である大腿骨102を脛骨101と大腿骨102との間の関節面(105a、106a)に沿って前後方向に相対移動させるように構成されている。尚、前述の通り、関節面105aは、脛骨101の近位側の端部に設置された脛骨インサートトライアル105の関節面であり、関節面106aは、大腿骨102の遠位側の端部に設置された大腿骨トライアル106の関節面である。
術者は、関節手術用測定器具2を用いて、上記のように、脛骨101の端部に対して大腿骨102の端部を関節面に沿って前後方向に相対移動させ、靭帯等の軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性を確認する。そして、術者は、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の確認のために必要な程度、脛骨101に対して大腿骨102を移動させると、トルクドライバー103の操作を停止する。より具体的には、術者は、所望する所定の大きさのトルクが作用した時点で、トルクドライバー103の操作を停止する。
術者は、トルクドライバー103の操作を停止すると、位置表示部43a又は位置表示部43bによって、スライダ42のハウジング41に対する位置を読み取る。即ち、術者は、目盛部63a又は目盛部63bにおいて読取位置指標部64a又は読取位置指標部64bによって指標されるしるしの位置を読み取る。
上記のように、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性の確認が行われる際には、まず、スライダ42のパドル部61が大腿骨トライアル106に軽く接触した状態におけるスライダ42のハウジング41に対する位置が読み取られる。次いで、術者は、所望する所定の大きさのトルクが作用するまでトルクドライバー103を操作し、スライダ42をハウジング41に対してスライド移動させ、脛骨101に対して大腿骨102を移動させる。この状態で、スライダ42のハウジング41に対する位置が読み取られる。そして、最初に読み取られたスライダ42のハウジング41に対する位置と後に読み取られたスライダ42のハウジング41に対する位置との差分として、脛骨101に対して大腿骨101が関節面(105a、106a)に沿って相対移動した際の相対移動量が測定される。これにより、関節手術用測定器具2においては、位置表示部43a又は位置表示部43bにて表示されるハウジング41に対するスライダ42の位置に基づいて、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性が測定される。
尚、図13に示す使用形態の場合は、ハウジング本体部51に対してコンポーネント固定部52ではなく骨固定用ブロック54が取り付けられる。ハウジング本体部51及び骨固定用ブロック54は、ハウジング固定ピン47を介して脛骨101に固定される。一方、スライダ41は、パドル部61が大腿骨102の端部の前面側に軽く接触した状態で、スライダ固定ピン45を介して大腿骨102に固定される。そして、上述した使用形態(図11及び図12に示す使用形態)の場合と同様の操作が行われ、位置表示部43a又は位置表示部43bにて表示されるハウジング41に対するスライダ42の位置に基づいて、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性が測定される。
[関節手術用測定器具の効果]
以上説明したように、本実施形態によると、ハウジング41が脛骨101又は脛骨101に取り付けられた脛骨トレートライアル104に固定される。一方、スライダ42が、大腿骨102又は大腿骨102に取り付けられた大腿骨トライアル106に対して固定される。この状態で、ハウジング41に対してスライダ42がスライド移動するように、関節手術用測定器具2の操作が行われる。これにより、関節面(105a、106a)又は関節面(101a、102a)に沿った脛骨101に対する大腿骨102の相対移動が行われる。そして、脛骨101に対して大腿骨102が関節面(105a、106a)又は関節面(101a、102a)に沿って相対移動した際の相対移動量が、位置表示部(43a、43b)にて表示されるハウジング41に対するスライダ42の位置に基づいて、測定される。このように、この関節手術用測定器具2によると、関節にて軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102とをそれらの骨の間の関節面(105a、106a)又は関節面(101a、102a)に沿って相対移動させ、その関節面(105a、106a)又は関節面(101a、102a)に沿った方向における相対移動量として、それらの骨の連結状態の安定性が測定される。即ち、この関節手術用測定器具2によると、脛骨101と大腿骨102とが離間する方向以外の方向にそれらの骨同士を相対移動させ、それらの骨の連結状態の安定性を測定することができる。
以上のように、本実施形態によると、関節にて軟部組織により連結された脛骨101と大腿骨102とが離間する方向以外の方向にそれらの骨同士を相対移動させ、それらの骨の連結状態の安定性を測定できる、関節手術用測定器具2を提供できる。
また、本実施形態によると、脛骨101にコンポーネント(脛骨トレートライアル104、脛骨インサートトライアル105)が取り付けられた状態及び取り付けられていない状態のいずれにおいても、関節手術用測定器具2を用いて、脛骨101と大腿骨102との連結状態の安定性を測定することができる。即ち、脛骨101にコンポーネントが取り付けられた状態では、ハウジング本体部51にコンポーネント固定部52を取り付けて、関節手術用測定器具2を用いることができる。一方、脛骨101にコンポーネントが取り付けられていない状態では、ハウジング本体部51からコンポーネント固定部52を取り外し、骨固定用ブロック54をハウジング本体部51に取り付け、関節手術用測定器具2を用いることができる。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)前述の第1及び第2実施形態では、関節手術用測定器具が膝関節手術において用いられる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。肘関節手術或いは足関節手術において用いられる関節手術用測定器具が実施されてもよい。
(2)前述の第1実施形態では、第1の骨に対して固定可能なハウジングの形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第2実施形態に例示するように、第1の骨に対して取り付けられたコンポーネントに対して固定可能なハウジングの形態が実施されてもよい。第1実施形態の変形例として、第1骨接触部が上記のコンポーネントに対して固定される形態が実施されてもよい。
(3)前述の第1実施形態では、第2の骨に対して当接可能なスライダの形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第2実施形態に例示するように、第2の骨に対して固定可能なスライダの形態が実施されてもよい。第1実施形態の変形例として、第2骨接触部が第2の骨に対して固定される形態が実施されてもよい。また、第1実施形態の変形例として、第2の骨に対して取り付けられたコンポーネントに対して当接又は固定可能なスライダの形態が実施されてもよい。この場合、第2骨接触部が上記コンポーネントに対して当接する又は固定される形態が実施されてもよい。
(4)前述の第1及び第2実施形態では、目盛部がスライダに設けられ、読取位置指標部がハウジングに設けられた位置表示部の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。目盛部がハウジングに設けられ、読取位置指標部がスライダに設けられた位置表示部の形態が実施されてもよい。
(5)前述の第1及び第2実施形態では、トルクドライバーによって、第1の骨と第2の骨とを連結する軟部組織によって生じる緊張力が測定される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。関節手術用測定器具に内蔵されたバネ或いはロードセルによって、第1の骨と第2の骨とを連結する軟部組織によって生じる緊張力が測定される形態が実施されてもよい。
(6)前述の第1実施形態では、ハウジングに第1湾曲部が設けられ、スライダに第2湾曲部が設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ハウジングに第1湾曲部ではなく第1面取り部が設けられ、スライダに第2湾曲部ではなく第2面取り部が設けられた関節手術用測定器具が実施されてもよい。即ち、ハウジングには、ハウジングの本体部分における第1骨接触部が突出する端部において、第1骨接触部が突出する側と逆側の角部分に、第1面取り部が設けられ、スライダには、スライダの本体部分における第2骨接触部が突出する端部において、第2骨接触部が突出する側と逆側の角部分に、第2面取り部が設けられた形態が実施されてもよい。
上記の変形例によると、ハウジングに第1面取り部が設けられているため、ハウジングにおける第1骨接触部の突出側と逆側の角部分と第2の骨とが接触して干渉してしまうことを防止することができる。また、スライダに第2面取り部が設けられているため、スライダにおける第2骨接触部の突出側と逆側の角部分と第1の骨とが接触して干渉してしまうことを防止することができる。よって、関節手術用測定器具によって第1の骨に対して第2の骨を関節面に沿って相対移動させる際に、或いは、第1の骨の端部及び第2の骨の端部にて構成される関節の近傍に関節手術用測定器具を配置した状態でその関節の角度を変える際に、第1及び第2の骨と関節手術用測定器具との間で術者が意図しないような接触による干渉が発生してしまうことを防止することができる。
(7)前述の第2実施形態では、コンポーネント固定部が取り外されたハウジング本体部に対して骨固定用ブロックが取り付けられ、ハウジングが第1の骨に固定される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。骨固定用ブロックが備えられておらず、ハウジング本体部が直接に第1の骨に固定される形態が実施されてもよい。この場合、スライダがハウジングに対して移動可能な範囲をより広く確保するため、ハウジング本体部の形状を変更してもよい。より具体的には、スライダの動きがハウジング本体部の端部の形状によって規制され難いように、ハウジング本体部の端部の一部を除去するようハウジング本体部の形状を変更してもよい。