JP2016025283A - タンデム型薄膜太陽電池 - Google Patents

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峻士 小原
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明伸 早川
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Abstract

【課題】広い波長域の光を利用でき、開放電圧及び光電変換効率が高く、耐久性に優れたタンデム型薄膜太陽電池を提供する。
【解決手段】一組の取り出し電極間に、第1の光電変換層と、第2の光電変換層と、前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層との間に配置された中間電極とを有し、前記第1の光電変換層は、硫化アンチモンを含む部位を有し、前記第2の光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位を有するタンデム型薄膜太陽電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、広い波長域の光を利用でき、開放電圧及び光電変換効率が高く、耐久性に優れたタンデム型薄膜太陽電池に関する。
従来から、複数種の半導体を積層し、この積層体の両面に電極(取り出し電極)を設けた光電変換素子が開発されている。また、このような積層体の代わりに、複数種の半導体を複合化した複合膜を用いることも検討されている。
このような光電変換素子では、各半導体がP型半導体又はN型半導体として働き、P型半導体又はN型半導体がそのバンドギャップに応じた波長域の光を吸収して光キャリア(電子−ホール対)が生成し、電子がN型半導体を、ホールがP型半導体を移動することで、電界が生じる。
現在、実用化されている光電変換素子の多くは、シリコン等の無機半導体を用いて製造される無機太陽電池である。しかしながら、無機太陽電池は製造にコストがかかるうえ大型化が困難である。また、無機太陽電池は形状追従性が低いこと等から利用範囲が限られてしまうこともある。このため、無機半導体の代わりに有機半導体を用いたり、無機半導体と有機半導体とを併用したりして製造される有機太陽電池が注目されている。
光電変換効率を高めるためには、開放電圧及び/又は短絡電流密度を高める必要がある。例えば、開放電圧は構成材料である半導体のバンドギャップにある程度依存しており、バンドギャップの広い半導体を用いることにより、開放電圧を高くすることができる。また、短絡電流密度を高める方法として、例えば、バンドギャップの狭い半導体を用いることによって光電変換に利用できる光の波長域を拡大する方法が検討されている。つまり、開放電圧の向上と短絡電流密度の向上とは、トレードオフの関係にあるといえる。
このような問題を解決する方法として、例えば、異なる波長域の光を吸収する複数の有機太陽電池セルを接続してタンデム型有機太陽電池とする方法が検討されている(例えば、特許文献1〜4)。
しかしながら、特許文献1〜4に記載のタンデム型有機太陽電池であっても未だ光電変換効率はかなり低く、実用化に耐えうる有機太陽電池の開発のためには更なる光電変換効率の改善が不可欠である。
特開2004−349657号公報 特開2013−161917号公報 特開2012−129278号公報 特開2014−49559号公報
本発明は、広い波長域の光を利用でき、開放電圧及び光電変換効率が高く、耐久性に優れたタンデム型薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
本発明は、一組の取り出し電極間に、第1の光電変換層と、第2の光電変換層と、前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層との間に配置された中間電極とを有し、前記第1の光電変換層は、硫化アンチモンを含む部位を有し、前記第2の光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位を有するタンデム型薄膜太陽電池である。
以下、本発明を詳述する。
本発明者らは、セレン化アンチモンはバンドギャップが狭く、より長波長の光を吸収できることに着目し、光電変換層にセレン化アンチモンを用いることにより、より長波長の光を吸収できる短絡電流密度の高い薄膜太陽電池が得られると考えた。しかしながら、一般にバンドギャップが狭いと得られる開放電圧が低くなることから、単にセレン化アンチモンを用いただけでは充分に高い光電変換効率を得ることは難しかった。
これに対して本発明者らは、薄膜太陽電池を、一組の取り出し電極間に、第1の光電変換層と、第2の光電変換層と、これらの光電変換層の間に配置された中間電極とを有するタンデム型薄膜太陽電池とし、第1の光電変換層及び第2の光電変換層にそれぞれ硫化アンチモン及びセレン化アンチモンを用いることにより、光電変換に利用できる光の波長域を拡大して短絡電流密度を高めるとともに開放電圧を高めることができ、高い光電変換効率が得られることを見出した。
また、本発明者らは、硫化アンチモン及びセレン化アンチモンはいずれも比較的低温での加熱により結晶化させることができるため、このようなタンデム型薄膜太陽電池においては他の構成材料の劣化を抑制することができ、耐久性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のタンデム型薄膜太陽電池は、一組の取り出し電極間に、第1の光電変換層と、第2の光電変換層と、上記第1の光電変換層と上記第2の光電変換層との間に配置された中間電極とを有する。
図1に、本発明のタンデム型薄膜太陽電池の一例を模式的に示す。図1に示す本発明のタンデム型薄膜太陽電池1は、一組の取り出し電極2及び3の間に、第1の光電変換層4と、第2の光電変換層5と、第1の光電変換層4と第2の光電変換層5との間に配置された中間電極6とを有する。
なお、本明細書中、層とは、明確な境界を有する層だけではなく、含有元素が徐々に変化する濃度勾配のある層をも意味する。なお、層の元素分析は、例えば、タンデム型薄膜太陽電池の断面のFE−TEM/EDS線分析測定を行い、特定元素の元素分布を確認する等によって行うことができる。また、本明細書中、層とは、平坦な薄膜状の層だけではなく、他の層と一緒になって複雑に入り組んだ構造を形成しうる層をも意味する。
本発明のタンデム型薄膜太陽電池において、上記第1の光電変換層と、上記第2の光電変換層とは、中間電極を介して一組の取り出し電極間に配置されていればそれらの接続方法は特に限定されないが、直列接続されていることが好ましい。
なお、直列接続とは、一般に複数の光電変換層又は太陽電池セルの陰極側と陽極側とを接続する方法であり、この場合、一組の取り出し電極の一方は陰極、他方は陽極となり、中間電極は電荷再結合層として機能する。
上記一組の取り出し電極は、上記第1の光電変換層側又は上記第2の光電変換層側のいずれが陰極であっても陽極であってもよい。
上記陰極及び上記陽極の材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。陰極材料として、例えば、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/Al混合物、Al/LiF混合物等が挙げられる。陽極材料として、例えば、金等の金属、CuI、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム亜鉛酸化物)、FTO等の導電性透明材料、導電性透明ポリマー等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記一組の取り出し電極は、上記第1の光電変換層側又は上記第2の光電変換層側のいずれかが光入射側の透明電極であってもよいが、上記第1の光電変換層と上記第2の光電変換層とで得られる電流量は同量であることが好ましいため、上記第2の光電変換層よりも先に上記第1の光電変換層に光が入射することが好ましい。即ち、上記一組の取り出し電極のうち、少なくとも上記第1の光電変換層側の取り出し電極が透明電極であることが好ましい。
ただし、上記第2の光電変換層側の取り出し電極が透明電極であってもよい。上記第2の光電変換層側の取り出し電極から光が入射する場合は、上記第1の光電変換層にも光を充分に到達させる観点から、上記第2の光電変換層の厚みを調整することが好ましい。
上記第1の光電変換層は、硫化アンチモンを含む部位(以下、硫化アンチモン部位ともいう)を有し、上記第2の光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位(以下、セレン化アンチモン部位ともいう)を有する。
セレン化アンチモンはバンドギャップが狭く、より長波長の光を吸収することができる。このため、セレン化アンチモンを用いることにより、より長波長の光を吸収できる短絡電流密度の高いタンデム型薄膜太陽電池が得られる。また、一般にバンドギャップが狭いと得られる開放電圧が低くなるが、硫化アンチモン及びセレン化アンチモンを併用することにより、光電変換に利用できる光の波長域を拡大して短絡電流密度を高めるとともに開放電圧を高めることができ、高い光電変換効率を得ることができる。
また、硫化アンチモン及びセレン化アンチモンはいずれも比較的低温での加熱により結晶化させることができるため、本発明のタンデム型薄膜太陽電池においては他の構成材料の劣化を抑制することができ、耐久性が向上する。
上記硫化アンチモンは、アンチモン及び硫黄を含む錯体を前駆体として形成されてなることが好ましい。
このためには、上記硫化アンチモン部位を、アンチモン含有化合物と、硫黄含有化合物とを含有する硫化物形成用塗布液を用いた印刷法により形成することが好ましい。印刷法を採用することで、高い光電変換効率を発揮できるタンデム型薄膜太陽電池を大面積で簡易に形成することができる。印刷法として、例えば、スピンコート法、キャスト法等が挙げられ、印刷法を用いた方法としてロールtoロール法等が挙げられる。
上記アンチモン含有化合物として、例えば、アンチモンの金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。
上記アンチモンの金属塩として、例えば、アンチモンの塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、水酸化物、過酸化物等が挙げられる。また、上記アンチモンの金属塩には、その水和物も含まれる。
上記アンチモンの有機金属化合物として、例えば、アンチモンのカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、ポリカルボン酸の塩化合物が挙げられ、より具体的にはアンチモンの酢酸、ギ酸、プロピオン酸、オクチル酸、ステアリン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸等の塩化合物等が挙げられる。
上記硫化物形成用塗布液における上記アンチモン含有化合物の含有量は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が40重量%である。上記含有量が5重量%以上であれば、良質な硫化アンチモン部位を容易に形成することができる。上記含有量が40重量%以下であれば、安定な硫化物形成用塗布液を容易に得ることができる。
上記硫黄含有化合物として、例えば、チオ尿素、チオ尿素の誘導体、チオアセトアミド、チオアセトアミドの誘導体、ジチオカルバミン酸塩(Dithiocarbamate)、キサントゲン酸塩(Xanthate)、ジチオリン酸塩(Dithiophosphate)、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩等が挙げられる。これらの硫黄含有化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記チオ尿素の誘導体として、例えば、1−アセチル−2−チオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジエチル−2−チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N−メチルチオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素等が挙げられる。上記ジチオカルバミン酸塩として、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸カリウム等が挙げられる。上記キサントゲン酸塩として、例えば、エチルキサントゲン酸ナトリウム(sodium ethyl xanthate)、エチルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム等が挙げられる。上記チオ硫酸塩として、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等が挙げられる。上記チオシアン酸塩として、例えば、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム等が挙げられる。
上記硫化物形成用塗布液における上記硫黄含有化合物の含有量は、上記アンチモン含有化合物のモル数に対して、1〜30倍が好ましく、2〜20倍がより好ましい。上記含有量が1倍以上であれば、量論比の硫化アンチモン部位が得られやすくなる。上記含有量が30倍以下であれば、硫化物形成用塗布液の安定性がより向上する。
上記硫化物形成用塗布液における上記アンチモン及び硫黄を含む錯体は、赤外吸収スペクトルにて、アンチモン−硫黄間の結合に由来する吸収ピークを測定することで確認することができる。硫黄は化学結合に関与していない孤立電子対を有するため、アンチモンの空の電子軌道(d軌道又はf軌道)との間に配位結合を形成しやすい。このような錯体が形成されることで、硫化物形成用塗布液の安定性が向上し、その結果、均一な良質の硫化アンチモン部位が形成されるだけではなく、その電気的な特性及び半導体特性も向上する。
上記錯体としては、例えば、アンチモン−チオ尿素錯体、アンチモン−チオ硫酸錯体、アンチモン−チオシアン酸錯体、アンチモン−ジチオカルバミン酸錯体、アンチモン−キサントゲン酸錯体等が挙げられる。
上記硫化物形成用塗布液は、更に、有機溶媒を含有することが好ましい。
上記有機溶媒を適宜選択することで、上述したような錯体を形成させやすくすることができる。上記有機溶媒は特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、n−プロパノール、クロロホルム、クロロベンゼン、ピリジン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、メタノール、エタノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましく、電気的な特性及び半導体特性のより優れた硫化アンチモン部位が形成されることから、N,N−ジメチルホルムアミドがより好ましい。
また、上記硫化物形成用塗布液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、水等の非有機溶媒成分を更に含有してもよい。
上記硫化アンチモン部位は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、硫化アンチモンに加えて他の元素を含有していてもよい。上記他の元素は特に限定されないが、周期表の第4周期、第5周期及び第6周期に属する元素が好ましく、具体的には例えば、インジウム、ガリウム、スズ、カドミウム、銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、銀、チタン、バナジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、鉄、コバルト等が挙げられる。これらの他の元素は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、電子の移動度が高くなることから、インジウム、ガリウム、スズ、カドミウム、亜鉛、銅が好ましい。
上記他の元素の含有量は、上記硫化アンチモン部位中の好ましい上限が50重量%である。上記含有量が50重量%以下であると、上記硫化アンチモン部位と有機半導体との相性の低下を抑制することができ、光電変換効率が高くなる。
上記硫化アンチモン部位は、結晶性半導体であることが好ましい。上記硫化アンチモン部位が結晶性半導体であることにより、電子の移動度が高くなり、光電変換効率が高くなる。
なお、結晶性半導体とは、X線回折測定等で測定し、散乱ピークが検出できる半導体を意味する。
また、上記硫化アンチモン部位の結晶性の指標として、結晶化度を用いることもできる。上記硫化アンチモン部位の結晶化度は、好ましい下限が30%である。上記結晶化度が30%以上であると、電子の移動度が高くなり、光電変換効率が高くなる。上記結晶化度のより好ましい下限は50%、更に好ましい下限は70%である。
なお、結晶化度は、X線回折測定等により検出された結晶質由来の散乱ピークと、非晶質部由来のハローとをフィッティングにより分離し、それぞれの強度積分を求めて、全体のうちの結晶質部分の比を算出することにより求めることができる。
上記硫化アンチモン部位の結晶化度を高める方法として、例えば、上記硫化アンチモン部位に対して、熱アニール、レーザー又はフラッシュランプ等の強度の強い光の照射、エキシマ光照射、プラズマ照射等を行う方法が挙げられる。なかでも、上記硫化アンチモン部位の酸化を低減できることから、強度の強い光の照射、プラズマ照射等を行う方法が好ましい。
上記セレン化アンチモンは、アンチモン及びセレンを含む錯体を前駆体として形成されてなることが好ましい。
このためには、上述した硫化アンチモン部位の場合と同様に、上記セレン化アンチモン部位を、アンチモン含有化合物と、セレン含有化合物とを含有するセレン化物形成用塗布液を用いた印刷法により形成することが好ましい。なお、上記アンチモン含有化合物及びその含有量としては、上述した硫化物形成用塗布液の場合と同様のものを用いることができる。
上記セレン含有化合物として、例えば、セレノ尿素、セレノ尿素の誘導体、セレノアセトアミド、セレノアセトアミドの誘導体、ジセレノカルバミン酸塩、セレノ硫酸塩、セレノシアン酸塩、セレン化水素、塩化セレン、臭化セレン、ヨウ化セレン、セレノフェノール、亜セレン酸等が挙げられる。これらのセレン含有化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記セレノ尿素の誘導体として、例えば、1−アセチル−2−セレノ尿素、エチレンセレノ尿素、1,3−ジエチル−2−セレノ尿素、1,3−ジメチルセレノ尿素、テトラメチルセレノ尿素、N−メチルセレノ尿素、1−フェニル−2−セレノ尿素等が挙げられる。上記ジセレノカルバミン酸塩として、例えば、ジメチルジセレノカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジセレノカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジセレノカルバミン酸カリウム、ジエチルジセレノカルバミン酸カリウム等が挙げられる。上記セレノ硫酸塩として、例えば、セレノ硫酸ナトリウム、セレノ硫酸カリウム、セレノ硫酸アンモニウム等が挙げられる。上記セレノシアン酸塩として、例えば、セレノシアン酸カリウム、セレノシアン酸アンモニウム等が挙げられる。
上記セレン化物形成用塗布液における上記セレン含有化合物の含有量は、上記アンチモン含有化合物のモル数に対して、1〜30倍が好ましく、2〜20倍がより好ましい。上記含有量が1倍以上であれば、量論比のセレン化アンチモン部位が得られやすくなる。上記含有量が30倍以下であれば、セレン化物形成用塗布液の安定性がより向上する。
上記セレン化物形成用塗布液における上記アンチモン及びセレンを含む錯体は、赤外吸収スペクトルにて、アンチモン−セレン間の結合に由来する吸収ピークを測定することで確認することができる。セレンは化学結合に関与していない孤立電子対を有するため、アンチモンの空の電子軌道(d軌道又はf軌道)との間に配位結合を形成しやすい。このような錯体が形成されることで、セレン化物形成用塗布液の安定性が向上し、その結果、均一な良質のセレン化アンチモン部位が形成されるだけではなく、その電気的な特性及び半導体特性も向上する。
上記錯体としては、例えば、アンチモン−セレノ尿素錯体、アンチモン−セレノアセトアミド錯体、アンチモン−ジメチルセレノ尿素錯体等が挙げられる。
上記セレン化物形成用塗布液は、上述した硫化物形成用塗布液の場合と同様に、更に、有機溶媒を含有することが好ましく、水等の非有機溶媒成分を更に含有してもよい。
上記セレン化アンチモン部位は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上述した硫化アンチモン部位の場合と同様に、セレン化アンチモンに加えて他の元素を含有していてもよい。
上記セレン化アンチモン部位は、上述した硫化アンチモン部位の場合と同様に、結晶性半導体であることが好ましい。上記セレン化アンチモン部位の結晶化度を高める方法としても上述した硫化アンチモン部位の場合と同様の方法を用いることができる。
上記第1の光電変換層及び/又は上記第2の光電変換層は、有機半導体を含む部位(以下、有機半導体部位ともいう)を有することが好ましい。
上記有機半導体を用いることにより、本発明のタンデム型薄膜太陽電池は、耐衝撃性、フレキシビリティ等にも優れたものとなる。また、上記硫化アンチモン部位及び上記セレン化アンチモン部位は上記有機半導体のエネルギーギャップとの相性が良いため、上記硫化アンチモン部位及び/又は上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを組み合わせて用いることにより、本発明のタンデム型薄膜太陽電池は電荷分離効率が極めて高くなり、光電変換効率が高くなる。また、N型半導体とP型半導体とがいずれも無機半導体である場合はこれらの固溶体が界面で析出する可能性があるのに対し、上記硫化アンチモン部位及び/又は上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを組み合わせて用いた場合には固溶体の析出がなく、高温時においても高い安定性を得ることができる。
上記有機半導体は特に限定されず、例えば、チオフェン骨格、スピロビフルオレン骨格、フタロシアニン骨格、ペンタセン骨格、ペリレン骨格、ポルフィリン骨格(例えば、ベンゾポルフィリン骨格)、ナフタロシアニン骨格、トリフェニルアミン骨格等の骨格を有する化合物が挙げられる。なかでも、ホール輸送性が高く、耐久性にも優れることから、チオフェン骨格、スピロビフルオレン骨格、フタロシアニン骨格、ペンタセン骨格、ペリレン骨格及びポルフィリン骨格からなる群から選択される少なくとも1種の骨格を有する化合物が好ましい。
上記第1の光電変換層は、上記有機半導体部位を有する場合、薄膜状の硫化アンチモン部位からなる層と薄膜状の有機半導体部位からなる層とを積層した積層体であってもよいし、上記硫化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜であってもよい。
上記第2の光電変換層は、上記有機半導体部位を有する場合、薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層と薄膜状の有機半導体部位からなる層とを積層した積層体であってもよいし、上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜であってもよい。
製法が簡便である点では積層体が好ましく、上記有機半導体部位の電荷分離効率を向上させることができる点では複合膜が好ましい。
上記第1の光電変換層又は上記第2の光電変換層が積層体である場合、上記硫化アンチモン部位又は上記セレン化アンチモン部位からなる層の厚みは、好ましい下限が20nm、好ましい上限が3000nmである。上記厚みが20nm以上であると、より充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが3000nm以下であると、電荷分離できない領域の発生を抑制することができ、光電変換効率の低下を防ぐことができる。上記厚みのより好ましい下限は30nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は500nmである。
上記第1の光電変換層又は上記第2の光電変換層が積層体である場合、上記有機半導体部位からなる層の厚みは、好ましい下限が5nm、好ましい上限が300nmである。上記厚みが5nm以上であると、より充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが300nm以下であると、電荷分離できない領域の発生を抑制することができ、光電変換効率の低下を防ぐことができる。上記厚みのより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は200nmであり、更に好ましい下限は100nmである。
上記第1の光電変換層又は上記第2の光電変換層が積層体である場合、上記各積層体の合計厚みの好ましい下限は50nm、好ましい上限は3000nmである。上記合計厚みが50nm以上であると、より充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記合計厚みが3000nm以下であると、いずれの光電変換層にも光を充分に到達させることができ、光電変換効率が高くなる。上記合計厚みのより好ましい下限は80nm、より好ましい上限は2000nmであり、更に好ましい下限は100nm、更に好ましい上限は1000nmである。
なかでも、上記第2の光電変換層側の取り出し電極が透明電極である場合、上記第1の光電変換層にも光を充分に到達させる観点から、上記第2の光電変換層の積層体の合計厚みの好ましい下限は50nm、好ましい上限は700nmであり、より好ましい下限は70nm、より好ましい上限は500nmである。
上記第1の光電変換層又は上記第2の光電変換層が上記硫化アンチモン部位又は上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合、上記各複合膜の合計厚みの好ましい下限は50nm、好ましい上限は3000nmである。上記合計厚みが50nm以上であれば、充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記合計厚みが3000nm以下であれば、いずれの光電変換層にも光を充分に到達させることができ、光電変換効率が高くなる。上記合計厚みのより好ましい下限は70nm、より好ましい上限は2000nmであり、更に好ましい下限は100nm、更に好ましい上限は1500nmである。
上記第1の光電変換層又は上記第2の光電変換層が上記硫化アンチモン部位又は上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合には、上記硫化アンチモン部位又は上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位との比率が非常に重要である。上記硫化アンチモン部位又は上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位との比率は、1:9〜9:1(体積比)であることが好ましい。上記比率が上記範囲内であると、ホール又は電子が電極まで到達しやすくなり、そのため光電変換効率の向上につながる。上記比率は、2:8〜8:2(体積比)であることがより好ましい。
上記中間電極は特に限定されず、例えば、一方の光電変換層側から入射した光を他方の光電変換層に届かせる必要があるため透明度が高いこと、電荷再結合層として機能する場合には導電性を有すること、上記第1の光電変換層及び上記第2の光電変換層に対してキャリア障壁とならないこと(オーミック接合であること)等が必要機能として挙げられる。
上記中間電極として、具体的には例えば、金、銀、アルミニウム等の金属極薄膜、FTO、GZO、AZO、ITO等の透明電極、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物等が挙げられる。なかでも、透明度が高いことから、透明電極又は金属酸化物が好ましい。
また、上記第1の光電変換層と、上記第2の光電変換層とが直列接続されている場合、上記中間電極の構造は、一方の光電変換層の陰極側に配置された電子輸送層と、他方の光電変換層の陽極側に配置されたホール輸送層とを、透明層を介して接続した3層構造(即ち、電子輸送層と透明層とホール輸送層との3層構造)であってもよい。
上記中間電極の厚みは、好ましい下限が10nm、好ましい上限が200nmである。上記厚みが10nm以上であると、上記中間電極にピンホール、クラック等が生じることによる機能低下を抑制することができる。上記厚みが200nm以下であると、上記中間電極の電気抵抗が小さくなり、また、透過率を低く抑えることができる。上記厚みのより好ましい下限は15nm、より好ましい上限は170nmである。
本発明のタンデム型薄膜太陽電池においては、上記第1の光電変換層及び/又は上記第2の光電変換層の陰極側に、電子輸送層が配置されてもよい。
上記電子輸送層の材料は特に限定されず、例えば、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、N型金属酸化物、N型金属硫化物、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、シアノ基含有ポリフェニレンビニレン、ホウ素含有ポリマー、バソキュプロイン、バソフェナントレン、ヒドロキシキノリナトアルミニウム、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸化合物、ペリレン誘導体、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、フルオロ基含有フタロシアニン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、硫化スズ、硫化インジウム、硫化亜鉛等が挙げられる。
上記電子輸送層は、薄膜状の電子輸送層のみからなっていてもよいが、多孔質状の電子輸送層を含むことが好ましい。特に、上記第1の光電変換層及び/又は上記第2の光電変換層が複合膜である場合、より複雑な複合膜(より複雑に入り組んだ構造)が得られ、光電変換効率が高くなることから、多孔質状の電子輸送層上に上記第1の光電変換層及び/又は上記第2の光電変換層が成膜されていることが好ましい。
上記電子輸送層の厚みは、好ましい下限が1nm、好ましい上限が2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分にホールをブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、電子輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記電子輸送層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
本発明のタンデム型薄膜太陽電池においては、上記第1の光電変換層及び/又は上記第2の光電変換層の陽極側に、ホール輸送層が配置されていてもよい。
上記ホール輸送層の材料は特に限定されず、例えば、P型導電性高分子、P型低分子有機半導体、P型金属酸化物、P型金属硫化物、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンのポリスチレンスルホン酸付加物、カルボキシル基含有ポリチオフェン、フタロシアニン、ポルフィリン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化スズ、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化銅、硫化スズ等、フルオロ基含有ホスホン酸、カルボニル基含有ホスホン酸等が挙げられる。
上記ホール輸送層の厚みは、好ましい下限は1nm、好ましい上限は2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分に電子をブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、ホール輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
本発明のタンデム型薄膜太陽電池は、更に、基板等を有していてもよい。上記基板は特に限定されず、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等の透明ガラス基板、セラミック基板、透明プラスチック基板等が挙げられる。
本発明のタンデム型薄膜太陽電池を製造する方法は特に限定されず、例えば、基板上に取り出し電極(第1の光電変換層側)、第1の光電変換層、中間層、第2の光電変換層、取り出し電極(第2の光電変換層側)をこの順で形成する方法が挙げられる。また、基板上に取り出し電極(第2の光電変換層側)、第2の光電変換層、中間層、第1の光電変換層、取り出し電極(第1の光電変換層側)をこの順で形成してもよい。
上記第1の光電変換層及び上記第2の光電変換層を形成する方法は特に限定されず、真空蒸着法、スパッタ法、気相反応法(CVD)、電気化学沈積法等であってもよいが、上述したような硫化物形成用塗布液若しくはセレン化物形成用塗布液、及び/又は、上記有機半導体を含有する塗布液を用いた印刷法が好ましい。
上記第1の光電変換層及び上記第2の光電変換層を形成する方法として、より具体的には、例えば、上記第1の光電変換層が薄膜状の硫化アンチモン部位からなる層と薄膜状の有機半導体部位からなる層とを積層した積層体である場合には、上記硫化物形成用塗布液を用いてスピンコート法等の印刷法により薄膜状の硫化アンチモン部位からなる層を成膜し、この薄膜状の硫化アンチモン部位からなる層の上にスピンコート法等の印刷法により薄膜状の有機半導体部位からなる層を成膜することが好ましい。また、逆に薄膜状の有機半導体部位からなる層の上に薄膜状の硫化アンチモン部位からなる層を成膜してもよい。
また、例えば、上記光電変換層が上記硫化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合には、上記硫化物形成用塗布液と上記有機半導体とを混合した混合液を用いてスピンコート法等の印刷法により複合膜を成膜することが好ましい。
本発明によれば、広い波長域の光を利用でき、開放電圧及び光電変換効率が高く、耐久性に優れたタンデム型薄膜太陽電池を提供することができる。
本発明のタンデム型薄膜太陽電池の一例を模式的に示す断面図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(電子輸送層用チタン含有塗布液の作製)
チタン粉末10mmolを精秤し、ビーカーに入れ、過酸化水素水40gを加え、更にアンモニア水10gを加えた。これを2時間水冷した後、L−乳酸30mmolを添加し、80℃に設定したホットプレートで一日加温し、そこへ蒸留水10mLを添加し、電子輸送層用チタン含有塗布液を作製した。
(硫化物形成用塗布液の作製)
窒素雰囲気下において、N,N−ジメチルホルムアミド100重量部に、塩化アンチモン(III)20重量部を添加した後、攪拌することによって溶解した。得られた塩化アンチモン溶液を、N,N−ジメチルホルムアミド100重量部にチオ尿素20重量部を溶解させたチオ尿素溶液を入れたサンプル管に徐々に添加した。その際、溶液は混合前の無色透明から黄色透明に変わった。また、溶液について赤外吸収スペクトルを測定することにより、錯体形成を確認した。添加終了後に更に30分間攪拌することによって、塩化アンチモンとチオ尿素とを含有する硫化物形成用塗布液を作製した。
(セレン化物形成用塗布液の作製)
窒素雰囲気下において、N,N−ジメチルホルムアミド100重量部に、塩化アンチモン(III)20重量部を添加した後、攪拌することによって溶解した。得られた塩化アンチモン溶液を、セレノ尿素17重量部を秤量したサンプル管に徐々に添加した。その際、溶液は混合前の無色透明から黄色透明に変わった。また、溶液について赤外吸収スペクトルを測定することにより、錯体形成を確認した。添加終了後に更に30分間攪拌することによって、塩化アンチモンとセレノ尿素とを含有するセレン化物形成用塗布液を作製した。
(タンデム型薄膜太陽電池の作製)
FTOガラス基板上に、電子輸送層用チタン含有塗布液を回転数1500rpmの条件でスピンコート法により塗布した。塗布後、大気中550℃で10分間焼成し、電子輸送層を形成した。
得られた電子輸送層上に、硫化物形成用塗布液を回転数1500rpmの条件でスピンコート法により塗布した。塗布後、サンプルを真空炉に入れ、真空に引きながら260℃で10分間焼成し、硫化アンチモン薄膜(薄膜状の硫化アンチモン部位)を100nmの厚みに形成した。真空炉から取出した硫化アンチモン薄膜は黒色であった。真空炉から取出した後、得られた硫化アンチモン薄膜の上に、有機半導体としてポリエチレンジオキサイドチオフェン:ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)をスピンコート法により100nmの厚みに形成し、有機半導体薄膜(薄膜状の有機半導体部位)を形成した。これにより、硫化アンチモン薄膜と有機半導体薄膜とからなる第1の光電変換層(合計厚み200nm)を得た。
次いで、第1の光電変換層の上にスパッタ法を用いて酸化亜鉛を150nmの厚みに成膜し、中間電極を形成した。
得られた中間電極上に、セレン化物形成用塗布液を回転数1500rpmの条件でスピンコート法により塗布した。塗布後、サンプルを真空炉に入れ、真空に引きながら260℃で10分間焼成し、セレン化アンチモン薄膜(薄膜状のセレン化アンチモン部位)を100nmの厚みに形成した。真空炉から取出したセレン化アンチモン薄膜は黒色であった。真空炉から取出した後、得られたセレン化アンチモン薄膜の上に、有機半導体としてP3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))をスピンコート法により100nmの厚みに成膜し、有機半導体薄膜(薄膜状の有機半導体部位)を形成した。これにより、セレン化アンチモン薄膜と有機半導体薄膜とからなる第2の光電変換層(合計厚み200nm)を得た。
次いで、第2の光電変換層の上に厚み80nmの金電極を真空蒸着法により成膜することによって、第1の光電変換層と第2の光電変換層とが直列接続されているタンデム型薄膜太陽電池を作製した。
(実施例2〜11)
表1に示すように電極材料又は光電変換層の厚みを変更したこと以外は実施例1と同様にして、タンデム型薄膜太陽電池を作製した。
(比較例1)
真空蒸着法により硫化インジウム薄膜を100nmの厚みに形成することで、硫化インジウム薄膜と有機半導体薄膜とからなる第1の光電変換層(合計厚み200nm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、タンデム型薄膜太陽電池を作製した。
(比較例2)
真空蒸着法により硫化モリブデン薄膜を100nmの厚みに形成することで、硫化モリブデン薄膜と有機半導体薄膜とからなる第1の光電変換層(合計厚み200nm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、タンデム型薄膜太陽電池を作製した。
(比較例3)
真空蒸着法によりセレン化カドミウム薄膜を100nmの厚みに形成することで、セレン化カドミウム薄膜と有機半導体薄膜とからなる第1の光電変換層(合計厚み200nm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、タンデム型薄膜太陽電池を作製した。
(比較例4)
真空蒸着法により硫化スズ薄膜を100nmの厚みに形成することで、硫化スズ薄膜と有機半導体薄膜とからなる第2の光電変換層(合計厚み200nm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、タンデム型薄膜太陽電池を作製した。
(比較例5)
真空蒸着法によりによりセレン化インジウム薄膜を100nmの厚みに形成することで、セレン化インジウム薄膜と有機半導体薄膜とからなる第2の光電変換層(合計厚み200nm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、タンデム型薄膜太陽電池を作製した。
(比較例6)
真空蒸着法により硫化ビスマス薄膜を100nmの厚みに形成することで、硫化ビスマス薄膜と有機半導体薄膜とからなる第2の光電変換層(合計厚み200nm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、タンデム型薄膜太陽電池を作製した。
<評価>
実施例及び比較例で得られたタンデム型薄膜太陽電池について、以下の評価を行った。結果を表1及び2に示した。
(1)開放電圧及び光電変換効率
タンデム型薄膜太陽電池の電極間に、電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、100mW/cmの強度のソーラーシミュレータ(山下電装社製)を用いてタンデム型薄膜太陽電池の開放電圧及び光電変換効率を測定した。
光電変換効率については下記に示す基準で判定を行った。
◎:光電変換効率8%以上
○:光電変換効率8%未満、5%以上
△:光電変換効率5%未満、3%以上
×:光電変換効率3%未満
(2)耐久性
タンデム型薄膜太陽電池をガラス封止し、温度60℃、湿度35%の状態で60mW/cmの光を1週間照射した(耐候試験)。耐候試験前後の光電変換効率を上記と同様にして測定し、初期の光電変換効率(初期値)を1.00としたときの耐候試験後の相対変換効率を求めた。下記に示す基準で判定を行った。なお、初期の光電変換効率(初期値)がほぼ0であったタンデム型薄膜太陽電池については耐久性の評価は行わなかった。
○:相対変換効率が0.8以上
×:相対変換効率が0.8未満
−:初期の発電がないため、測定不能
Figure 2016025283
Figure 2016025283
本発明によれば、広い波長域の光を利用でき、開放電圧及び光電変換効率が高く、耐久性に優れたタンデム型薄膜太陽電池を提供することができる。
1 本発明のタンデム型薄膜太陽電池
2 取り出し電極(第1の光電変換層側)
3 取り出し電極(第2の光電変換層側)
4 第1の光電変換層
5 第2の光電変換層
6 中間電極

Claims (6)

  1. 一組の取り出し電極間に、第1の光電変換層と、第2の光電変換層と、前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層との間に配置された中間電極とを有し、
    前記第1の光電変換層は、硫化アンチモンを含む部位を有し、
    前記第2の光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位を有する
    ことを特徴とするタンデム型薄膜太陽電池。
  2. 第1の光電変換層と、第2の光電変換層とが直列接続されていることを特徴とする請求項1記載のタンデム型薄膜太陽電池。
  3. 一組の取り出し電極のうち、少なくとも第1の光電変換層側の取り出し電極が透明電極であることを特徴とする請求項1又は2記載のタンデム型薄膜太陽電池。
  4. 硫化アンチモンは、アンチモン及び硫黄を含む錯体を前駆体として形成されてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のタンデム型薄膜太陽電池。
  5. セレン化アンチモンは、アンチモン及びセレンを含む錯体を前駆体として形成されてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のタンデム型薄膜太陽電池。
  6. 第1の光電変換層及び/又は第2の光電変換層は、有機半導体を含む部位を有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のタンデム型薄膜太陽電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115188838A (zh) * 2022-06-28 2022-10-14 华中科技大学 一种硒化镉/晶硅串联集成太阳能电池及其制备方法

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