JP2016015408A - 薄膜太陽電池 - Google Patents

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Shunji Ohara
峻士 小原
明伸 早川
Akinobu Hayakawa
明伸 早川
麻由美 堀木
Mayumi HORIKI
麻由美 堀木
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Abstract

【課題】光電変換効率、特に近赤外領域の光の光電変換効率が高く、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高く、耐久性に優れた薄膜太陽電池を提供する。
【解決手段】陰極7と、陽極3と、前記陰極と前記陽極との間に配置された光電変換層とを有し、前記光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位5と、重量平均分子量5000以上の有機半導体を含む部位4とを有する薄膜太陽電池1。
【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換効率、特に近赤外領域の光の光電変換効率が高く、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高く、耐久性に優れた薄膜太陽電池に関する。
従来から、複数種の半導体を積層し、この積層体の両面に電極を設けた光電変換素子が開発されている。また、このような積層体の代わりに、複数種の半導体を複合化した複合膜を用いることも検討されている。このような光電変換素子では、各半導体がP型半導体又はN型半導体として働き、光励起によりP型半導体又はN型半導体で光キャリア(電子−ホール対)が生成し、電子がN型半導体を、ホールがP型半導体を移動することで、電界が生じる。
現在、実用化されている光電変換素子の多くは、シリコン等の無機半導体を用いて製造される無機太陽電池である。しかしながら、無機太陽電池は製造にコストがかかるうえ大型化が困難である。また、無機太陽電池は形状追従性が低いこと等から利用範囲が限られてしまうこともあり、無機半導体の代わりに有機半導体を用いて製造される有機太陽電池が注目されている。
有機太陽電池においては、ほとんどの場合フラーレンが用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、フラーレンを用いて製造される有機太陽電池において、その劣化の原因はフラーレンであることが知られており(例えば、非特許文献1参照)、フラーレンよりも耐久性の高い材料を選択することが求められている。
また、有機半導体と無機半導体とを併用した有機太陽電池も検討されており、無機半導体として、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等が用いられている。このような有機太陽電池として、例えば、特許文献2には、有機電子供与体と化合物半導体結晶とを含有する活性層を二つの電極の間に設けた有機太陽電池が記載されている。しかしながら、酸化亜鉛、酸化チタン等を用いても、充分な耐久性は得られず、また、フラーレンを用いた場合と比べて光電変換効率が低下するという問題もある。
特開2006−344794号公報 特許第4120362号公報
Reese et al.,Adv.Funct.Mater.,20,3476−3483(2010)
本発明は、光電変換効率、特に近赤外領域の光の光電変換効率が高く、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高く、耐久性に優れた薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
本発明は、陰極と、陽極と、前記陰極と前記陽極との間に配置された光電変換層とを有し、前記光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位と、重量平均分子量5000以上の有機半導体を含む部位とを有する薄膜太陽電池である。
以下、本発明を詳述する。
本発明者は、薄膜太陽電池の光電変換層を、セレン化アンチモンを含む部位と、有機半導体を含む部位とを有するものとすることにより、光電変換効率、特に近赤外領域の光の光電変換効率が高く、耐久性に優れた薄膜太陽電池が得られることを見出した。
更に、本発明者は、有機半導体を含む部位に比較的重量平均分子量の大きい有機半導体を用いることにより、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高くなる理由としては、例えば、次の点が考えられる。即ち、通常、セレン化アンチモン等の無機半導体を結晶化させるために加熱焼成を行うと、無機半導体に収縮等に伴ったクラックが発生し、薄膜太陽電池のショートにつながる恐れがある。仮にこのようなクラックが発生した場合であっても、比較的重量平均分子量の大きい有機半導体を用いることにより、無機半導体のクラック部位を有機半導体が被膜として覆うことで、薄膜太陽電池におけるショートの発生を抑制することができる。これにより、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高くなると考えられる。
本発明の薄膜太陽電池は、陰極と、陽極と、上記陰極と上記陽極との間に配置された光電変換層とを有する。
なお、本明細書中、層とは、明確な境界を有する層だけではなく、含有元素が徐々に変化する濃度勾配のある層をも意味する。なお、層の元素分析は、例えば、薄膜太陽電池の断面のFE−TEM/EDS線分析測定を行い、特定元素の元素分布を確認する等によって行うことができる。また、本明細書中、層とは、平坦な薄膜状の層だけではなく、他の層と一緒になって複雑に入り組んだ構造を形成しうる層をも意味する。
上記陰極及び上記陽極の材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。陰極材料として、例えば、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/Al混合物、Al/LiF混合物等が挙げられる。陽極材料として、例えば、金等の金属、CuI、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム亜鉛酸化物)等の導電性透明材料、導電性透明ポリマー等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位(以下、セレン化アンチモン部位ともいう)と、重量平均分子量5000以上の有機半導体を含む部位(以下、有機半導体部位ともいう)とを有する。
上記光電変換層に上記セレン化アンチモンを用いることにより、本発明の薄膜太陽電池を耐久性に優れたものとすることができる。
また、近年、光電変換層に金属硫化物(例えば、硫化錫、硫化アンチモン)を用いることが検討されているが、このような金属硫化物又は従来の金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化チタン)と比較して上記セレン化アンチモンはバンドギャップが狭く、より長波長の光を吸収できる。このため、上記光電変換層に上記セレン化アンチモンを用いることにより、本発明の薄膜太陽電池の短絡電流密度、特に近赤外領域の光に対する短絡電流密度をより優れたものとすることができ、光電変換効率を高めることができる。上記セレン化アンチモンの代わりに金属硫化物を用いた場合にはこのような光電変換効率を得ることができず、更に、硫化錫を用いた場合は元素拡散が激しく、薄膜太陽電池の作製直後は光電変換を行うことができたとしても、すぐに劣化してしまう。
また、上記有機半導体を用いることにより、本発明の薄膜太陽電池は、耐衝撃性、フレキシビリティ等にも優れたものとなる。更に、上記有機半導体を重量平均分子量5000以上のものとすることにより、本発明の薄膜太陽電池は、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高くなる。薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高くなる理由としては、例えば、次の点が考えられる。即ち、通常、セレン化アンチモン等の無機半導体を結晶化させるために加熱焼成を行うと、無機半導体に収縮等に伴ったクラックが発生し、薄膜太陽電池のショートにつながる恐れがある。仮にこのようなクラックが発生した場合であっても、上記有機半導体を重量平均分子量5000以上のものとすることにより、無機半導体のクラック部位を有機半導体が被膜として覆うことで、薄膜太陽電池におけるショートの発生を抑制することができる。これにより、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高くなると考えられる。
また、上記セレン化アンチモンは上記有機半導体のエネルギーギャップとの相性が良いため、上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを組み合わせて用いることにより、本発明の薄膜太陽電池は電荷分離効率が極めて高くなり、光電変換効率が高くなる。また、上記有機半導体の代わりに無機半導体を用いた場合はこれらの固溶体が界面で析出する可能性があり、安定性に欠けるため耐久性が低下するのに対し、本発明の薄膜太陽電池においては固溶体の析出がなく、高温時においても高い安定性を得ることができる。
上記セレン化アンチモンは、アンチモンと、アンチモン以外の元素(例えば、他の周期律表第15族元素)とを同一の分子に含有する複合セレン化物であってもよい。
上記セレン化アンチモンは、アンチモン及びセレンを含む錯体を前駆体として形成されてなることが好ましい。
このためには、上記セレン化アンチモン部位を、アンチモン含有化合物と、セレン含有化合物とを含有する半導体形成用塗布液を用いた印刷法により形成することが好ましい。印刷法を採用することで、高い光電変換効率を発揮できる薄膜太陽電池を大面積で簡易に形成することができる。印刷法として、例えば、スピンコート法、キャスト法等が挙げられ、印刷法を用いた方法としてロールtoロール法等が挙げられる。
上記アンチモン含有化合物として、例えば、アンチモンの金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。
上記アンチモンの金属塩として、例えば、アンチモンの塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、水酸化物、過酸化物等が挙げられる。また、上記アンチモンの金属塩には、その水和物も含まれる。
上記アンチモンの有機金属化合物として、例えば、アンチモンのカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、ポリカルボン酸の塩化合物が挙げられ、より具体的には、アンチモンの酢酸、ギ酸、プロピオン酸、オクチル酸、ステアリン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸等の塩化合物等が挙げられる。
上記半導体形成用塗布液における上記アンチモン含有化合物の含有量は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が30重量%である。上記含有量が5重量%以上であれば、良質なセレン化アンチモン部位を容易に形成することができる。上記含有量が30重量%以下であれば、安定な半導体形成用塗布液を容易に得ることができる。
上記セレン含有化合物として、例えば、セレノ尿素、セレノ尿素の誘導体、セレノアセトアミド、セレノアセトアミドの誘導体、ジセレノカルバミン酸塩、セレノ硫酸塩、セレノシアン酸塩、セレン化水素、塩化セレン、臭化セレン、ヨウ化セレン、セレノフェノール、亜セレン酸等が挙げられる。これらのセレン含有化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記セレノ尿素の誘導体として、例えば、1−アセチル−2−セレノ尿素、エチレンセレノ尿素、1,3−ジエチルー2−セレノ尿素、1,3−ジメチルセレノ尿素、テトラメチルセレノ尿素、N−メチルセレノ尿素、1−フェニルー2−セレノ尿素等が挙げられる。上記ジセレノカルバミン酸塩として、例えば、ジメチルジセレノカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジセレノカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジセレノカルバミン酸カリウム、ジエチルジセレノカルバミン酸カリウム等が挙げられる。上記セレノ硫酸塩として、例えば、セレノ硫酸ナトリウム、セレノ硫酸カリウム、セレノ硫酸アンモニウム等が挙げられる。上記セレノシアン酸塩として、例えば、セレノシアン酸カリウム、セレノシアン酸アンモニウム等が挙げられる。
上記半導体形成用塗布液における上記セレン含有化合物の含有量は、上記アンチモン含有化合物のモル数に対して、1〜30倍が好ましく、2〜20倍がより好ましい。上記含有量が1倍以上であれば、量論比のセレン化アンチモンが得られやすくなる。上記含有量が30倍以下であれば、半導体形成用塗布液の安定性がより向上する。
上記半導体形成用塗布液における上記アンチモン及びセレンを含む錯体は、赤外吸収スペクトルにて、アンチモン−セレン間の結合に由来する吸収ピークを測定することで確認することができる。また、溶液の色の変化で確認することもできる。セレンは化学結合に関与していない孤立電子対を有するため、アンチモンの空の電子軌道(d軌道又はf軌道)との間に配位結合を形成しやすい。このような錯体が形成されることで、半導体形成用塗布液の安定性が向上し、その結果、均一な良質のセレン化アンチモン部位が形成されるだけではなく、その電気的な特性及び半導体特性も向上する。
上記錯体としては、例えば、アンチモン−セレノ尿素錯体、アンチモン−セレノアセトアミド錯体、アンチモン―ジメチルセレノ尿素錯体等が挙げられる。
上記半導体形成用塗布液は、更に、有機溶媒を含有することが好ましい。
上記有機溶媒を適宜選択することで、上述したような錯体を形成させやすくすることができる。上記有機溶媒は特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、n−プロパノール、クロロホルム、クロロベンゼン、ピリジン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、メタノール、エタノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましく、電気的な特性及び半導体特性のより優れたセレン化アンチモン部位が形成されることから、N,N−ジメチルホルムアミドがより好ましい。
また、上記半導体形成用塗布液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、水等の非有機溶媒成分を更に含有してもよい。
上記セレン化アンチモン部位は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記セレン化アンチモンに加えて他の元素を含有していてもよい。上記他の元素は特に限定されず、例えば、インジウム、ガリウム、スズ、カドミウム、銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、銀、チタン、バナジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、鉄、コバルト、ランタン等が挙げられる。これらの他の元素は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、電子の移動度が高くなることから、インジウム、ガリウム、スズ、カドミウム、亜鉛、銅、ランタンが好ましい。
上記他の元素の含有量は、上記セレン化アンチモン部位中の好ましい上限が50重量%である。上記含有量が50重量%以下であると、上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体との相性の低下を抑制することができ、光電変換効率が高くなる。
上記セレン化アンチモン部位は、結晶性半導体であることが好ましい。上記セレン化アンチモン部位が結晶性半導体であることにより、電子の移動度が高くなり、光電変換効率が高くなる。
なお、結晶性半導体とは、X線回折測定等で測定し、散乱ピークが検出できる半導体を意味する。
また、上記セレン化アンチモン部位の結晶性の指標として、結晶化度を用いることもできる。上記セレン化アンチモン部位の結晶化度は、好ましい下限が30%である。上記結晶化度が30%以上であると、電子の移動度が高くなり、光電変換効率が高くなる。上記結晶化度のより好ましい下限は50%、更に好ましい下限は70%である。
なお、結晶化度は、X線回折測定等により検出された結晶質由来の散乱ピークと、非晶質部由来のハローとをフィッティングにより分離し、それぞれの強度積分を求めて、全体のうちの結晶質部分の比を算出することにより求めることができる。
上記セレン化アンチモン部位の結晶化度を高める方法として、例えば、上記セレン化アンチモン部位に対して、熱アニール、レーザー又はフラッシュランプ等の強度の強い光の照射、エキシマ光照射、プラズマ照射等を行う方法が挙げられる。なかでも、上記セレン化アンチモンの酸化を低減できることから、強度の強い光の照射、プラズマ照射等を行う方法が好ましい。
上記有機半導体は、重量平均分子量5000以上であれば、オリゴマー又はポリマーであってもよい。
上記重量平均分子量は、1万以上が好ましく、2万以上がより好ましい。上記重量平均分子量の上限は特に限定されないが、入手可能なポリマーの重量平均分子量を考慮すると、好ましい上限は25万であり、より好ましい上限は20万である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(例えば東ソー社製、HLC−8020)を用いて、標準ポリスチレンを基準にして算出することができる。
上記有機半導体は、波長700nm以下に光吸収のピークを有することが好ましい。このような有機半導体は、その光吸収スペクトルがセレン化アンチモンの光吸収(例えば、波長700nm以上の光の吸収)を阻害するものではなく、結果として薄膜太陽電池の光電変換効率が高くなる。なお、有機半導体の光吸収のピークは、分光光度計(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)を用いて吸光度を求めることにより測定することができる。
上記有機半導体は特に限定されないが、上記範囲の重量平均分子量を有し、かつ、上記範囲の波長に光吸収のピークを有する場合が多く、光電変換効率が高くなることから、ポリチオフェン骨格、ポリトリフェニルアミン骨格、ポリパラフェニレンビニレン骨格、ポリアセチレン骨格、ポリピロール骨格及びポリアニリン骨格からなる群から選択される少なくとも1種の骨格を有することが好ましい。なかでも、ポリチオフェン骨格及び/又はポリトリフェニルアミン骨格を有することがより好ましい。
ただし、これらの骨格に限定されず、上記有機半導体は、シクロペンタジチオフェン骨格、フルオレン骨格、スピロビフルオレン骨格、フタロシアニン骨格、ペンタセン骨格、ポルフィリン骨格(例えば、ベンゾポルフィリン骨格)、ナフタロシアニン骨格等の骨格を有していてもよい。
上記ポリチオフェン骨格を有する有機半導体として、具体的には例えば、P3HT(ポリチオフェン骨格、重量平均分子量8万、光吸収のピーク530nm、Aldrich社製)、P3CT(ポリチオフェン骨格、重量平均分子量2万、光吸収のピーク470nm、1−material社製)、PCPDTBT(ポリチオフェン骨格、重量平均分子量7000〜2万、光吸収のピーク730nm、Aldrich社製)等が挙げられる。
上記ポリトリフェニルアミン骨格を有する有機半導体として、具体的には例えば、Poly−TPD(ポリトリフェニルアミン骨格、重量平均分子量1万、光吸収のピーク350nm、1−material社製)等が挙げられる。
上記ポリパラフェニレンビニレン骨格を有する有機半導体として、具体的には例えば、MDMO−PPV(ポリパラフェニレンビニレン骨格、重量平均分子量12万、光吸収のピーク485nm、Aldrich社製)、MEH−PPV(ポリパラフェニレンビニレン骨格、重量平均分子量4万、光吸収のピーク493nm、Aldrich社製)等が挙げられる。
上記フルオレン骨格を有する有機半導体として、具体的には例えば、F8TBT(フルオレン骨格、重量平均分子量20万、光吸収のピーク500nm、住友化学社製)等が挙げられる。
上記光電変換層は、上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを有していればよく、薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層と薄膜状の有機半導体部位からなる層とを積層した積層体であってもよいし、上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜であってもよい。製法が簡便である点では積層体が好ましく、上記有機半導体部位の電荷分離効率を向上させることができる点では複合膜が好ましい。
上記光電変換層が積層体である場合、上記セレン化アンチモン部位からなる層の厚みは、好ましい下限が20nm、好ましい上限が3000nmである。上記厚みが20nm以上であると、より充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが3000nm以下であると、電荷分離できない領域の発生を抑制することができ、光電変換効率の低下を防ぐことができる。上記セレン化アンチモン部位からなる層の厚みのより好ましい下限は30nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は500nmである。
上記光電変換層が積層体である場合、上記有機半導体部位からなる層の厚みは、好ましい下限が5nm、好ましい上限が300nmである。上記厚みが5nm以上であると、より充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが300nm以下であると、電荷分離できない領域の発生を抑制することができ、光電変換効率の低下を防ぐことができる。上記有機半導体部位からなる層の厚みのより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は200nmであり、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は150nmである。
上記光電変換層が上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合、上記複合膜の厚みの好ましい下限は30nm、好ましい上限は3000nmである。上記厚みが30nm以上であれば、充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが3000nm以下であれば、電荷が電極に到達しやすくなるため、光電変換効率が高くなる。上記厚みのより好ましい下限は40nm、より好ましい上限は2000nmであり、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は1000nmである。
上記光電変換層が上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合には、上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位との比率が非常に重要である。上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位との比率は、1:9〜9:1(体積比)であることが好ましい。上記比率が上記範囲内であると、ホール又は電子が電極まで到達しやすくなり、そのため光電変換効率の向上につながる。上記比率は、2:8〜8:2(体積比)であることがより好ましい。
本発明の薄膜太陽電池においては、上記陰極と上記光電変換層との間に、電子輸送層が配置されてもよい。
上記電子輸送層の材料は特に限定されず、例えば、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、N型金属酸化物、N型金属硫化物、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、シアノ基含有ポリフェニレンビニレン、ホウ素含有ポリマー、バソキュプロイン、バソフェナントレン、ヒドロキシキノリナトアルミニウム、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸化合物、ペリレン誘導体、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、フルオロ基含有フタロシアニン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、硫化スズ、硫化インジウム、硫化亜鉛等が挙げられる。
上記電子輸送層は、薄膜状の電子輸送層のみからなっていてもよいが、多孔質状の電子輸送層を含むことが好ましい。特に、上記光電変換層が上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合、より複雑な複合膜(より複雑に入り組んだ構造)が得られ、光電変換効率が高くなることから、多孔質状の電子輸送層上に上記光電変換層が成膜されていることが好ましい。
上記電子輸送層の厚みは、好ましい下限が1nm、好ましい上限が2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分にホールをブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、電子輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記電子輸送層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
本発明の薄膜太陽電池においては、上記陽極と上記光電変換層との間に、ホール輸送層が配置されていてもよい。
上記ホール輸送層の材料は特に限定されず、例えば、P型導電性高分子、P型低分子有機半導体、P型金属酸化物、P型金属硫化物、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンのポリスチレンスルホン酸付加物、カルボキシル基含有ポリチオフェン、フタロシアニン、ポルフィリン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化スズ、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化銅、硫化スズ等、フルオロ基含有ホスホン酸、カルボニル基含有ホスホン酸等が挙げられる。
上記ホール輸送層の厚みは、好ましい下限は1nm、好ましい上限は2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分に電子をブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、ホール輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
本発明の薄膜太陽電池は、更に、基板等を有していてもよい。上記基板は特に限定されず、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等の透明ガラス基板、セラミック基板、透明プラスチック基板等が挙げられる。
光電変換層が薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層と薄膜状の有機半導体部位からなる層とを積層した積層体である場合の本発明の薄膜太陽電池の一例を図1に模式的に示す。図1に示す薄膜太陽電池1においては、基板2、透明電極(陽極)3、薄膜状の有機半導体部位からなる層4、薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層5、電子輸送層6、電極(陰極)7がこの順で積層されている。
光電変換層がセレン化アンチモン部位と有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合の本発明の薄膜太陽電池の一例を図2に模式的に示す。図2に示す薄膜太陽電池8においては、基板9、透明電極(陽極)10、ホール輸送層11、有機半導体部位12とセレン化アンチモン部位13との複合膜14、電子輸送層15、電極(陰極)16がこの順で積層されている。
本発明の薄膜太陽電池を製造する方法は特に限定されず、例えば、基板上に電極(陽極)、光電変換層、電極(陰極)をこの順で形成する方法が挙げられる。また、基板上に電極(陰極)、光電変換層、電極(陽極)をこの順で形成してもよい。
上記光電変換層を形成する方法は特に限定されず、真空蒸着法、スパッタ法、気相反応法(CVD)、電気化学沈積法等であってもよいが、上述したようなアンチモン含有化合物と、セレン含有化合物とを含有する半導体形成用塗布液、及び/又は、上記有機半導体を含有する塗布液を用いた印刷法が好ましい。
印刷法を採用することで、高い光電変換効率を発揮できる薄膜太陽電池を大面積で簡易に形成することができる。印刷法として、例えば、スピンコート法、キャスト法等が挙げられ、印刷法を用いた方法としてロールtoロール法等が挙げられる。
上記光電変換層を形成する方法として、より具体的には、例えば、上記光電変換層が薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層と薄膜状の有機半導体部位からなる層とを積層した積層体である場合には、上記半導体形成用塗布液を用いてスピンコート法等の印刷法により薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層を成膜し、この薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層の上にスピンコート法等の印刷法により薄膜状の有機半導体部位からなる層を成膜することが好ましい。また、逆に薄膜状の有機半導体部位からなる層の上に薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層を成膜してもよい。
また、例えば、上記光電変換層が上記セレン化アンチモン部位と上記有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合には、上記半導体形成用塗布液と上記有機半導体とを混合した混合液を用いてスピンコート法等の印刷法により複合膜を成膜することが好ましい。
本発明の薄膜太陽電池は、光電変換効率、特に近赤外領域の光の光電変換効率が硬く、薄膜太陽電池セル間の性能安定性が高く、耐久性に優れたものである。
光電変換効率の評価方法は特に限定されず、例えば、外部量子収率(IPCE)測定が挙げられる。上記IPCE測定では、照射光量に対して得られる電子数から単色光あたりの光電変換効率を求めることができる。特に波長800〜1000nmにおけるIPCE測定を行うことにより、近赤外領域の光の光電変換効率を求めることができる。
本発明によれば、光電変換効率、特に近赤外領域の光の光電変換効率が高く、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高く、耐久性に優れた薄膜太陽電池を提供することができる。
光電変換層が薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層と薄膜状の有機半導体部位からなる層とを積層した積層体である場合の本発明の薄膜太陽電池の一例を、模式的に示す断面図である。 光電変換層がセレン化アンチモン部位と有機半導体部位とを複合化した複合膜である場合の本発明の薄膜太陽電池の一例を、模式的に示す断面図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(電子輸送層用チタン含有塗布液の作製)
チタン粉末10mmolを精秤し、ビーカーに入れ、過酸化水素水40gを加え、更にアンモニア水10gを加えた。これを2時間水冷した後、L−乳酸30mmolを添加し、80℃に設定したホットプレートで一日加温し、そこへ蒸留水10mLを添加し、電子輸送層用チタン含有塗布液を作製した。
(半導体形成用塗布液の作製)
窒素雰囲気下において、N,N−ジメチルホルムアミド100重量部に、塩化アンチモン(III)20重量部を添加した後、攪拌することによって溶解した。得られた塩化アンチモン溶液を、セレノ尿素17重量部を秤量したサンプル管に徐々に添加した。その際、溶液は混合前の無色透明から黄色透明に変わった。また、溶液について赤外吸収スペクトルを測定することにより、錯体形成を確認した。添加終了後に更に30分間攪拌することによって、塩化アンチモンとセレノ尿素とを含有する半導体形成用塗布液を作製した。
(有機半導体を含有する塗布液の作製)
トルエンを溶媒として、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリチオフェン骨格、重量平均分子量8万、光吸収のピーク530nm、Aldrich社製)を添加し、80℃に加熱することによって完全に溶解させ、1重量%塗布液を作製した。
(薄膜太陽電池の作製)
FTOガラス基板上に、電子輸送層用チタン含有塗布液を回転数1500rpmの条件でスピンコート法により塗布した。塗布後、大気中550℃で10分間焼成し、電子輸送層を形成した。
得られた電子輸送層上に、半導体形成用塗布液を回転数1500rpmの条件でスピンコート法により塗布した。塗布後、サンプルを真空炉に入れ、真空に引きながら260℃で10分間焼成し、セレン化アンチモン薄膜(薄膜状のセレン化アンチモン部位)を形成した。真空炉から取出したセレン化アンチモン薄膜は黒色であった。真空炉から取出した後、得られたセレン化アンチモン薄膜の上に、有機半導体を含有する塗布液を回転数4000rpmの条件でスピンコート法により塗布し、有機半導体薄膜(薄膜状の有機半導体部位)を100nmの厚みに形成した。その後、有機半導体薄膜の上にホール輸送層としてポリエチレンジオキサイドチオフェン:ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)をスピンコート法により100nmの厚みに成膜した。次いで、ホール輸送層の上に厚み80nmの金電極を真空蒸着法により成膜することによって薄膜太陽電池を作製した。
(実施例2、3)
P3HTの代わりに下記に示す有機半導体を表1に示すように用いたこと以外は実施例1と同様にして、薄膜太陽電池を得た。
・Poly−TPD(Poly[N,N’−bis(4−butylphenyl)−N,N’−bis(phenyl)−benzizine]、ポリトリフェニルアミン骨格、重量平均分子量1万、光吸収のピーク350nm、1−material社製)
・PCPDTBT(Poly[2,6−(4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiophene)−alt−4,7(2,1,3−benzothiadiazole)]、ポリチオフェン骨格、重量平均分子量2万、光吸収のピーク730nm、Aldrich社製)
(比較例1)
P3HTからなる有機半導体薄膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、薄膜太陽電池を得た。
(比較例2、3)
P3HTの代わりに下記に示す半導体を表2に示すように用いたこと以外は実施例1と同様にして、薄膜太陽電池を得た。
・CuPC(銅フタロシアニン、フタロシアニン骨格、分子量576、光吸収のピーク850nm、和光純薬工業社製)
・spiro−TAD(2,2’,7,7’−Tetrakis(N,N−diphenylamino)−9,9−spirobifluorene、トリフェニルアミン骨格及びスピロビフルオレン骨格、分子量985、光吸収のピーク400nm以下、Luminescence Technology社製)
(比較例4)
得られたセレン化アンチモン薄膜の上に、有機半導体を含有する塗布液を塗布する代わりに酸化モリブデン薄膜を真空蒸着法により80nmの厚みに形成したこと以外は実施例1と同様にして、薄膜太陽電池を得た。
<評価>
実施例及び比較例で得られた薄膜太陽電池について、以下の評価を行った。
(1)耐久性
薄膜太陽電池の電極間に、電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、100mW/cmの強度のソーラーシミュレータ(山下電装社製)を用いて800nmでの薄膜太陽電池の光電変換効率を測定した。得られた光電変換効率を初期値とした。
次いで、薄膜太陽電池をガラス封止し、温度60℃、湿度35%の状態で60mW/cmの光を一週間照射した(耐候試験)。耐候試験前後の光電変換効率を上記と同様にして測定し、初期値を1.00としたときの耐候試験後の相対変換効率を求めた。下記に示す基準で判定を行った。
○:相対変換効率が0.8以上であった
×:相対変換効率が0.8未満であった
(2)電流値
薄膜太陽電池の電極間に、電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、100mW/cmの強度のソーラーシミュレータ(山下電装社製)を用いて800nmでの薄膜太陽電池のIPCEを測定した。下記に示す基準で判定を行った。
○:800nmにおけるIPCEが20%以上であった
△:800nmにおけるIPCEが20%未満、10%以上であった
×:800nmにおけるIPCEが10%未満であった
(3)薄膜太陽電池セル間での性能安定性(光電変換効率のばらつき)
実施例及び比較例における薄膜太陽電池の作製方法と同じ方法で、評価用セルをそれぞれ4個ずつ作製した。4個の評価用セルの光電変換効率を上記(1)と同様にしてそれぞれ測定した。
○:光電変換効率の最大値と最小値との差が、最大値の20%以下であった
×:光電変換効率の最大値と最小値との差が、最大値の20%より大きかった
Figure 2016015408
Figure 2016015408
本発明によれば、光電変換効率、特に近赤外領域の光の光電変換効率が高く、薄膜太陽電池セル間での性能安定性が高く、耐久性に優れた薄膜太陽電池を提供することができる。
1 薄膜太陽電池
2 基板
3 透明電極(陽極)
4 薄膜状の有機半導体部位からなる層
5 薄膜状のセレン化アンチモン部位からなる層
6 電子輸送層
7 電極(陰極)
8 薄膜太陽電池
9 基板
10 透明電極(陽極)
11 ホール輸送層
12 有機半導体部位
13 セレン化アンチモン部位
14 複合膜
15 電子輸送層
16 電極(陰極)

Claims (6)

  1. 陰極と、陽極と、前記陰極と前記陽極との間に配置された光電変換層とを有し、
    前記光電変換層は、セレン化アンチモンを含む部位と、重量平均分子量5000以上の有機半導体を含む部位とを有する
    ことを特徴とする薄膜太陽電池。
  2. セレン化アンチモンは、アンチモン及びセレンを含む錯体を前駆体として形成されてなることを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池。
  3. 有機半導体は、波長700nm以下に光吸収のピークを有することを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜太陽電池。
  4. 有機半導体は、ポリチオフェン骨格、ポリトリフェニルアミン骨格、ポリパラフェニレンビニレン骨格、ポリアセチレン骨格、ポリピロール骨格及びポリアニリン骨格からなる群から選択される少なくとも1種の骨格を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の薄膜太陽電池。
  5. 陰極と光電変換層との間に、電子輸送層を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の薄膜太陽電池。
  6. 光電変換層と陽極との間に、ホール輸送層を有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の薄膜太陽電池。
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