以下、この発明に係る直流変換装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る直流変換装置を示す概略構成図である。図1において、この直流変換装置は、絶縁型のLLC共振コンバータである共振コンバータ回路14の前段に昇圧コンバータ回路13を設けた2段構成のコンバータである。昇圧コンバータ回路13および共振コンバータ回路14の動作は、制御部12によって制御される。
この直流変換装置は、入力電圧Viを昇圧コンバータ回路13によって任意の直流電圧に昇圧し、共振コンバータ回路14から出力電圧Voを出力する。ここで、この直流変換装置が電気自動車やハイブリッド自動車に適用された場合には、入力側に駆動用電池が接続され、出力側に補機用電池が接続される。
昇圧コンバータ回路13は、昇圧リアクトル1、ダイオード2、第1スイッチング素子である半導体スイッチング素子3および平滑コンデンサ4から構成されている。昇圧コンバータ回路13において、ダイオード2のアノード端子は昇圧リアクトル1に接続され、ダイオード2のカソード端子は、昇圧コンバータ回路13の出力部である平滑コンデンサ4に接続されている。
また、昇圧コンバータ回路13において、半導体スイッチング素子3は、ドレイン端子が昇圧リアクトル1とダイオード2との接続点に接続され、ソース端子が入力電圧Viの負側と平滑コンデンサ4の負極側との接続点に接続されている。ここで、制御部12は、半導体スイッチング素子3をオンオフ制御し、平滑コンデンサ4の電圧を任意の値に調整する。
共振コンバータ回路14は、昇圧コンバータ回路13の後段に接続されている。また、共振コンバータ回路14は、それぞれ第2スイッチング素子および第3スイッチング素子である半導体スイッチング素子5、6、共振コンデンサ7、並びにトランス9のリーケージインダクタンスで形成される共振リアクトル8を、1次巻線および2次巻線を有するトランス9の1次側に備え、整流回路であるダイオード10、11をトランス9の2次側に備えている。
共振コンバータ回路14において、半導体スイッチング素子5のドレイン端子は平滑コンデンサ4の正極側に接続され、半導体スイッチング素子6のソース端子は平滑コンデンサ4の負極側に接続されている。また、半導体スイッチング素子5のソース端子と半導体スイッチング素子6のドレイン端子とは、互いに接続されている。
また、共振コンバータ回路14において、共振コンデンサ7、共振リアクトル8およびトランス9は、半導体スイッチング素子5のソース端子と半導体スイッチング素子6のドレイン端子との接続点と、半導体スイッチング素子6のソース端子との間に直列に接続されている。
なお、図1の直流変換装置では、半導体スイッチング素子5のソース端子と半導体スイッチング素子6のドレイン端子との接続点から順に共振コンデンサ7、共振リアクトル8、トランス9の順に接続されているが、これに限定されず、共振コンデンサ7は、トランス9と半導体スイッチング素子6のソース端子との間に接続されてもよい。
また、共振コンバータ回路14において、トランス9の2次巻線は中間タップを有し、中間タップが出力電圧Voの負側に接続されている。また、トランス9の2次巻線の両端には、それぞれダイオード10、11のアノード端子が接続されている。また、ダイオード10のカソード端子とダイオード11のカソード端子とは、互いに接続されており、この接続点が出力電圧Voの正側に接続されている。
また、入力電圧Viの電圧値を検出するために、入力電圧Viと並列に入力電圧検出回路21が接続され、昇圧コンバータ回路13の出力電圧値を検出するために、平滑コンデンサ4と並列に平滑コンデンサ電圧検出回路22が接続され、出力電圧Voの電圧値を検出するために、出力電圧Voと並列に出力電圧検出回路23が接続されている。
ここで、制御部12は、制御線30a、30b、30cにより、半導体スイッチング素子3、5、6をそれぞれオンオフ制御するとともに、信号線31a、31b、31cにより、入力電圧検出回路21、平滑コンデンサ電圧検出回路22および出力電圧検出回路23からの電圧検出値をそれぞれ取得する。
以下、この発明の実施の形態1に係る直流変換装置の昇圧コンバータ回路13の動作原理について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る直流変換装置において、制御部12が昇圧コンバータ回路13の半導体スイッチング素子3をオンオフさせたときの電流経路を示す説明図である。
図2において、制御部12は、昇圧コンバータ回路13の半導体スイッチング素子3をオンオフさせることにより、昇圧コンバータ回路13の出力電圧を制御し、共振コンバータ回路14の出力電圧Voが目標値に近づくように調整する。
次に、この発明の実施の形態1に係る直流変換装置の共振コンバータ回路14の動作原理について説明する。制御部12は、共振コンバータ回路14の半導体スイッチング素子5、6をそれぞれオンオフ制御する。
具体的には、半導体スイッチング素子5、6は、デッドタイムを挟んでほぼ50%のデューティ比で、かつ共振コンデンサ7と共振リアクトル8とで構成される直列共振回路の直列共振周波数fsrの半周期にデッドタイムを加えた時間を半周期とするスイッチング周波数fswで交互にオンされる。
ここで、周波数とゲインとの関係について説明する。LLC共振コンバータである共振コンバータ回路14は、スイッチング周波数を制御し、直列共振回路のインピーダンスを調整することで、トランス9に印加される電圧を決定する。ここで、ゲインとは、LLC共振コンバータである共振コンバータ回路14の入出力電圧比のことである。
また、トランス9の励磁インダクタンスLmと共振リアクトル8のインダクタンスLrとによって決まるインダクタンス比Ln(=Lm/Lr)によって、同じ負荷状態におけるゲインの値が変わる。図3は、この発明の実施の形態1に係る直流変換装置において、共振コンバータ回路14のスイッチング周波数とゲインとの関係を示す説明図である。
図3において、Ln比が大きくなるほどゲインが変化しにくいことが分かる。つまり、図3より、LLC共振コンバータである共振コンバータ回路14の出力負荷が急激に変化し、例えば重負荷から軽負荷になっても、出力電圧の変動幅が小さい。そのため、共振リアクトル8にトランス9の漏れインダクタンスを用いることで、Ln比を大きくして、急激な負荷変動に対しても、安定した出力電圧Voを得ることができる。
以上から、一般的に、共振リアクトル8にトランス9のリーケージインダクタンスを用いる場合、リーケージインダクタンスとして励磁インダクタンスを用いると、Ln比が大きくなり、ゲインが変化しづらい。そのため、昇圧コンバータ回路13の出力電圧を調整し、平滑コンデンサ4の電圧とほぼ等しい共振コンバータ回路14の入力電圧を固定することで、一般的に、共振リアクトル8を外付け部品で使用する場合に生じる鉄損や銅損をなくし、高効率化を実現することができる。
また、通常、LLC共振コンバータは、スイッチング周波数を制御してゲインを調整するので、例えば、共振コンデンサ7の選定においては、周波数毎に変化するtanδが高周波で悪化することに伴う発熱を考慮して、大型化するという問題があった。これに対して、スイッチング周波数を固定することで、共振コンデンサ7のリプル電流耐量を一意に決めることができ、この問題を解決することができる。
また、スイッチング周波数が固定されていることから、負荷状況によっては出力電圧Voが変化するが、制御部12が昇圧コンバータ回路13の出力電圧を調整することにより、出力電圧Voが目標値に近づくように制御する。すなわち、制御部12は、信号線31cを介して取得した出力電圧検出回路23の電圧値が目標値に近づくように、昇圧コンバータ回路13の電圧を調整する。
以下、昇圧コンバータ回路13の出力電圧の制御方法について説明する。まず、昇圧コンバータ回路13の出力部の平滑コンデンサ4の電圧をVc、トランス9の巻数比をN:1:1とすると、次式(1)が成り立つ。
式(1)において、出力電圧Voの目標値をVo *とすると、昇圧コンバータ回路13の出力部の平滑コンデンサ4の電圧の制御目標値Vc *は、次式(2)のようになる。
以上から、昇圧コンバータ回路13の出力部の平滑コンデンサ4の電圧Vcを、式(2)で求めた制御目標値Vc *に近づくように制御する。ここで、平滑コンデンサ電圧検出回路22によって取得した電圧値をVc_monとすると、平滑コンデンサ4の電圧Vcの制御目標値までの差分ΔVcは、次式(3)で表される。
また、平滑コンデンサ4の容量をCとすると、電圧ΔVcを増加または低下させるために必要な平滑コンデンサ4の充電電流値ΔIcは、オームの法則から次式(4)で表わされる。
以上から、昇圧リアクトル1に必要な電流値ΔILは、電力の関係から、次式(5)で表される。
ここで、インダクタンスの関係式である次式(6)より、昇圧リアクトル1にかかる電圧VLを求めることができる。この電圧VLは、誘導起電力に相当する。なお、式(6)において、VLは誘導起電力を示し、ILは電流を示し、Lはインダクタンスを示している。
次に、図2に示した各電流経路における電圧の関係式は、次式(7)で表すことができる。式(7)において、dutyは、スイッチングのデューティ比(0〜1)を示している。
また、昇圧コンバータ回路13は、半導体スイッチング素子3の前段にかかる電圧(=Vi−VL)をVcへ昇圧するよう動作するので、スイッチングのオフデューティをduty(OFF)(=1−duty)とすると、このときの昇圧比は、次式(8)により求められる。
すなわち、式(3)からスイッチング素子3をスイッチング動作させる際のオフデューティduty(OFF)を決定することにより、次式(9)で表されるように、オンデューティdutyを演算することができる。このオンデューティdutyで操作することで、昇圧リアクトル電流を制御する。
以上から、制御部12は、出力電圧Voが目標値Vo *に追従するように、半導体スイッチング素子3のデューティを制御し、平滑コンデンサ4の電圧とほぼ等しい昇圧コンバータ回路13の出力電圧を調整する。
上述した内容が、昇圧コンバータ回路13の出力電圧の制御方法である。実際には、共振コンバータ回路14の各回路素子の電圧降下や各電圧検出回路21〜23のセンサ誤差等により、昇圧コンバータ回路13の出力電圧を制御しても、共振コンバータ回路14の出力電圧Voが目標値Vo *よりも低くなるか、または高くなる場合がある。
このときは、出力電圧Voの目標値をVo *、出力電圧検出回路23によって取得した電圧値をVo_monとすると、次式(10)によって決まる出力電圧Voの目標値までの差分ΔVoに対して、比例ゲインや積分ゲインを加えたものを、昇圧コンバータ回路13の制御目標値Vc *に加えることで、最終的に共振コンバータ回路14の出力電圧Voが目標値Vo *となるように制御する。
次に、共振コンバータ回路14の基本的な動作について、波形を用いて説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係る直流変換装置において、共振コンバータ回路14の動作時における各電圧電流波形を示す説明図である。
図4において、横軸は時間軸を示している。また、図4の縦軸は、半導体スイッチング素子5、6のゲート・ソース間に印加されるゲート電圧Vgs5、Vgs6、半導体スイッチング素子5、6のドレイン・ソース間に印加される電圧Vds5、Vds6、トランス9の1次側に印加される電圧Vtr1、共振コンデンサ7や共振リアクトル8に流れる電流(以下、「共振電流」と称する)ILr、トランス9の励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流ILm、およびトランス2次側の整流用ダイオード10、11に流れる電流ID10、ID11の波形をそれぞれ示している。
また、図4において、時刻t2、t6は、半導体スイッチング素子5がターンオン、時刻t3、t7は、半導体スイッチング素子5がターンオフするタイミングを示している。また、時刻t1、t5は、半導体スイッチング素子6がターンオフ、時刻t4、t8は、半導体スイッチング素子6がターンオンするタイミングを示している。なお、半導体スイッチング素子5、6がそれぞれターンオフ、ターンオンする間には、デッドタイム(td)が設けられている。また、1次側に流れる電流は、共振コンデンサ7からトランス9に流れる方向を正としている。
図5(a)〜(d)は、この発明の実施の形態1に係る直流変換装置において、共振コンバータ回路14の半導体スイッチング素子5、6がオンオフしているときの電流経路を、図4の各時刻と対応して示す説明図である。
図5(a)に示した時刻t1〜t2において、半導体スイッチング素子6がターンオフした直後は、共振電流ILrは、トランス9(共振リアクトル8を含む)→共振コンデンサ7→半導体スイッチング素子5のボディダイオードの経路で流れる。
また、図5(b)に示した時刻t2〜t3において、半導体スイッチング素子5のボディダイオードには、直前まで電流が流れているので、ドレイン・ソース間電圧Vdsはゼロである。そのため、半導体スイッチング素子5は、ZVSが成立する。なお、図中の実線は時刻t2〜t3のときの電流経路であり、点線は直前まで流れていた共振電流ILrの電流経路である。
また、図5(c)に示した時刻t3〜t4において、半導体スイッチング素子5がターンオフした直後は、共振電流ILrは、共振コンデンサ7→トランス9(共振リアクトル8を含む)→半導体スイッチング素子6のボディダイオードの経路で流れる。
また、図5(d)で示した時刻t4〜t5において、半導体スイッチング素子6のボディダイオードには、直前まで電流が流れているので、ドレイン・ソース間電圧Vdsはゼロである。そのため、半導体スイッチング素子6は、ZVSが成立する。なお、図中の実線は時刻t4〜t5のときの電流経路であり、点線は直前まで流れていた共振電流ILrの電流経路である。
また、図5には示していないが、共振電流ILrと励磁電流ILmとの差分電流がトランス9の2次側に流れ、ILr>ILmの場合にダイオード10に電流ID10が流れ、ILm>ILrの場合にダイオード11に電流ID11が流れる。
この実施の形態1では、スイッチング周波数fswと、共振コンデンサ7と共振リアクトル8とで構成される直列共振回路の直列共振周波数fsrにデッドタイムを加えた周波数とが等しくなるように制御している。一般的に、スイッチング周波数fswと直列共振周波数fsrとが等しくなるように制御することが推奨されているが、実際には、デッドタイム分だけ先に半導体スイッチング素子がターンオフするので、ターンオフ損失が発生する。
そこで、この実施の形態1では、次式(11)で表されるように、スイッチング周波数の半周期と、直列共振周波数の半周期にデッドタイムを加えた時間とが等しくなるように、スイッチング周波数を決定する。これは、後述するが、2次側整流回路が同期整流の場合に最も効果を発揮する。
以下、対比のために、半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数fswを直列共振周波数fsrよりも十分に低くした場合の各電圧電流波形を図6に示し、半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数fswを直列共振周波数fsrよりも十分に高くした場合の各電圧電流波形を図7に示す。
以上が、制御部12による昇圧コンバータ回路13および共振コンバータ回路14の制御方法である。この実施の形態1で説明した直流変換装置は、共振コンバータ回路14がほぼ一定のゲインで出力できるように、昇圧コンバータ回路13により、入力電圧Viをあらかじめ定められた電圧まで昇圧させる。そのため、一般的に、昇圧率が小さい場合ほど効率がよくなる。
また、高効率化のために、制御部12は、入力電圧Viと昇圧コンバータ回路13が出力する電圧とが近く、入力電圧Viがあらかじめ定められた第1電圧よりも高い場合には、半導体スイッチング素子3のスイッチングを停止、すなわち、昇圧コンバータ回路13の昇圧動作を停止して、共振コンバータ回路14のみを動作させる。これにより、余計なスイッチング損失を防ぐことができ、高効率化を実現することができる。
また、制御部12は、入力電圧Viが第1電圧よりも高い第2電圧よりも高く、昇圧コンバータ回路13の出力電圧が制御目標値を超える場合には、昇圧コンバータ回路13は降圧できないので、半導体スイッチング素子3のスイッチングを停止、すなわち、昇圧コンバータ回路13の昇圧動作を停止する。
しかしながら、このままでは、共振コンバータ回路14の出力電圧Voも入力電圧Viに合わせて上昇するので、共振コンバータ回路14のゲインを下げる必要がある。そのため、制御部12は、半導体スイッチング素子5、6のオンオフ間に設けられているデッドタイムを増加させるように制御する。デッドタイムを増加させることにより、同じ周期において、トランス9による電力伝送の時間を短縮させることができ、出力電圧Voが低下する。
ここまで、この実施の形態1における直流変換装置の基本的な動作について説明した。次に、動作中の負荷変動時における制御方法について説明する。動作中の負荷電流が過電流閾値に達した場合、直流変換装置は、垂下特性等の保護動作(フェールセーフ)を行う必要がある。
この実施の形態1では、共振コンバータ回路14の出力電流値を取得する図示しないセンサ回路を備え、共振コンバータ回路14の出力部の電流値があらかじめ定められた値を超えた場合に、昇圧コンバータ回路13の出力電圧を低下させる。これにより、共振コンバータ回路14の出力電圧も低下する。
また、この実施の形態1における直流変換装置の保護動作としては、上述した方法の他に、共振コンバータ回路14の出力電圧Voを低下させる方法として、共振コンバータ回路14の出力部の電流値があらかじめ定められた値を超えた場合に、制御部12が、半導体スイッチング素子5、6のオンオフ間に設けられているデッドタイムを増加させるように制御する。これにより、共振コンバータ回路14の出力電圧Voを低下させてもよい。
以上のように、実施の形態1によれば、直流変換装置は、入力電圧を昇圧して直流電圧を出力する昇圧コンバータと、昇圧コンバータから出力された直流電圧を降圧して直流電圧を出力する絶縁型共振コンバータと、昇圧コンバータおよび絶縁型共振コンバータの動作を制御する制御部と、を備え、昇圧コンバータは、昇圧リアクトル、ダイオードおよびコンデンサと、昇圧リアクトルへの通電を制御する第1スイッチング素子と、を有し、絶縁型共振コンバータは、1次巻線および2次巻線を有するトランスと、トランスの1次側に接続された共振コンデンサおよび共振リアクトルと、共振コンデンサおよび共振リアクトルへの通電を制御する、互いに直列に接続された第2スイッチング素子および第3スイッチング素子と、トランスの2次側に接続された整流回路と、を有し、共振リアクトルは、トランスのリーケージインダクタンスで形成されるものである。
この発明に係る直流変換装置によれば、絶縁型共振コンバータは、1次巻線および2次巻線を有するトランスと、トランスの1次側に接続された共振コンデンサおよび共振リアクトルと、共振コンデンサおよび共振リアクトルへの通電を制御する、互いに直列に接続された第2スイッチング素子および第3スイッチング素子と、トランスの2次側に接続された整流回路とを有し、共振リアクトルは、トランスのリーケージインダクタンスで形成されている。
そのため、入力電圧範囲が広く、かつ負荷電流範囲が広い場合であっても、安定した電圧を高効率で出力することができる。
すなわち、LLC共振コンバータの特徴を活かすために、LLC共振コンバータの前段に昇圧コンバータを備えた回路構成とし、前段の昇圧コンバータをスイッチング制御することで、後段のコンバータへの入力電圧変動を制御できるので、入力電圧の範囲を大きく設定しても、LLC共振コンバータは、ゲイン一定で動作することができ、定常時での高効率な電圧変換を実現することができる。
また、LLC共振コンバータの共振リアクトルをトランスのリーケージインダクタンスとすることで、リアクトルを削減することができ、小型化、低コスト化を実現することができる。また、共振リアクトルにトランスのリーケージインダクタンスを使用することで、急激な負荷変動に対しても、安定した電圧を出力することができる。
なお、上記実施の形態1では、図1に示したように、トランス9の2次巻線の中間タップが出力電圧Voの負側に接続され、トランス9の2次巻線の両側には、それぞれダイオード10、11のアノード端子が接続されていた。しかしながら、これに限定されず、図8に示されるように、中間タップが出力電圧Voの正側に接続され、トランス9の2次巻線の両端に、それぞれダイオード10、11のカソード端子が接続されていてもよい。
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る直流変換装置は、上記実施の形態1で説明した直流変換装置と同じ回路構成を有している。この実施の形態2では、トランス9のリーケージインダクタンスで形成される共振リアクトル8のインダクタンスLrが大きく、トランス9の励磁インダクタンスLmが小さいことによって、Ln比(=Lm/Lr)が小さくなった場合について説明する。
図3に示されるように、Ln比が小さくなると、共振コンバータ回路14のゲイン特性が、周波数によってある程度変動する。このとき、制御部12は、上記実施の形態1とは異なる方法で、各半導体スイッチング素子を制御し、LLC共振コンバータである共振コンバータ回路14のゲインを調整する。
上記実施の形態1で示した共振コンバータ回路14は、Ln比が大きいので、半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数を増減してもゲインの変化幅は小さい。そこで、制御部12は、デッドタイムを増減することで、トランス9への電圧印加時間を調整してゲインを調整した。これに対して、この実施の形態2では、Ln比がそれほど高くないので、制御部12は、スイッチング周波数を増減させることにより、共振コンバータ回路14のゲインを調整する。
また、高効率化のために、制御部12は、上記実施の形態1と同様に、入力電圧Viと昇圧コンバータ回路13が出力する電圧とが近く、あらかじめ定められた範囲内にある場合には、半導体スイッチング素子3のスイッチングを停止、すなわち、昇圧コンバータ回路13の昇圧動作を停止して、共振コンバータ回路14のみを動作させる。これにより、余計なスイッチング損失を防ぐことができ、高効率化を実現することができる。
また、制御部12は、入力電圧Viが高く、昇圧コンバータ回路13の出力電圧が制御目標値を超える場合には、昇圧コンバータ回路13は降圧できないので、半導体スイッチング素子3のスイッチングを停止、すなわち、昇圧コンバータ回路13の昇圧動作を停止する。
しかしながら、このままでは、共振コンバータ回路14の出力電圧Voも入力電圧Viに合わせて上昇するので、共振コンバータ回路14のゲインを下げる必要がある。そのため、制御部12は、半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数を増加させて、共振コンバータ回路14の出力電圧Voを低下させる。
ここまで、この実施の形態2における直流変換装置の基本的な動作について説明した。次に、動作中の負荷変動時における制御方法について説明する。動作中の負荷電流が過電流閾値に達した場合、直流変換装置は、垂下特性等の保護動作(フェールセーフ)を行う必要がある。
この実施の形態2では、共振コンバータ回路14の出力電流値を取得する図示しないセンサ回路を備え、共振コンバータ回路14の出力部の電流値があらかじめ定められた値を超えた場合に、制御部12が、半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数を増加させて、共振コンバータ回路14の出力電圧Voを低下させる。
なお、上記実施の形態2では、共振コンバータ回路14のスイッチング周波数を固定とし、平滑コンデンサ4の電圧とほぼ等しい昇圧コンバータ回路13の出力電圧を制御することで、共振コンバータ回路14の出力電圧Voを調整するように、制御部12が各スイッチング素子のオンオフ制御を行うと説明した。
しかしながら、この制御を行うためにマイコンが高価となる場合には、昇圧コンバータ回路13と共振コンバータ回路14とをそれぞれ別々に動作させるような安価なICを2つ使用し、1つのICが、昇圧コンバータ回路13の出力電圧を一定となるように制御し、もう1つのICが、共振コンバータ回路14のスイッチング周波数を制御することで、共振コンバータ回路14の出力電圧Voを調整してもよい。
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る直流変換装置は、上記実施の形態1で説明した直流変換装置と同じ回路構成を有している。この実施の形態3では、制御部12が半導体スイッチング素子3と半導体スイッチング素子6とのオンまたはオフタイミングを同期させることで、平滑コンデンサ4に流れる電流量を減らすことができる。
図9(a)、(b)は、この発明の実施の形態3に係る直流変換装置において、制御部が昇圧コンバータ回路および共振コンバータ回路の半導体スイッチング素子をオンオフさせたときの電流経路を示す説明図である。図9(a)、(b)では、半導体スイッチング素子3と半導体スイッチング素子6とのスイッチングタイミングが完全に同期している。
図9(a)に示したように、半導体スイッチング素子3と半導体スイッチング素子6とがオンしている場合には、昇圧コンバータ回路13において、入力電圧Viによる入力電流は、昇圧リアクトル1→半導体スイッチング素子3の経路で流れる。また、共振コンバータ回路14の共振電流は、半導体スイッチング素子6→トランス9(共振リアクトル8を含む)→共振コンデンサ7の経路で流れる。このとき、平滑コンデンサ4には、電流が流れない。
一方、図9(b)に示したように、半導体スイッチング素子3と半導体スイッチング素子6とがターンオフし、半導体スイッチング素子6と対となる半導体スイッチング素子5がオンしている場合には、入力電流は、昇圧リアクトル1→ダイオード2の経路で流れ、平滑コンデンサ4に向かう。また、共振電流は、平滑コンデンサ4から、半導体スイッチング素子5→共振コンデンサ7→トランス9(共振リアクトル8を含む)の経路で流れる。このとき、入力電流と共振電流とが等しければ、図9(b)に示されるように、平滑コンデンサ4には、電流が流れないか、または流れにくくなる。
これにより、平滑コンデンサ4のリプル電流を低減することができる。すなわち、制御部12が、半導体スイッチング素子3と半導体スイッチング素子6とのオンオフのタイミングを同期させて制御することで、平滑コンデンサ4のリプル電流を低減できる。そのため、直流変換装置の小型化および長寿命化を実現することができる。
実施の形態4.
図10は、この発明の実施の形態4に係る直流変換装置を示す概略構成図である。この発明の実施の形態4に係る直流変換装置は、昇圧コンバータ回路13と共振コンバータ回路14とを備え、制御部12による各スイッチング素子のオンオフ制御は、上記実施の形態1と同じである。
図10において、共振コンバータ回路14は、互いに直列に接続された2個のトランス9−a、9−bから構成されている。トランス9−a、9−bの2次巻線の中間タップは、それぞれ出力電圧Voの負側に接続されている。また、トランス9−a、9−bの2次巻線の両端には、それぞれダイオード10−a、11−a、10−b、11−bのアノード端子が接続されている。また、各ダイオードのカソード端子は、出力電圧Voの正側に接続されている。これにより、トランス9−a、9−bに流れる電流は分散され、発熱が分散されるので、冷却構造の簡素化を図ることができる。
また、それぞれトランス9−a、9−bのリーケージインダクタンスで形成される共振リアクトル8−a、8−bと、共振コンデンサ7とで決まる直列共振周波数について、直列共振周波数を決めるインダクタンス値は、共振リアクトル8−aと8−bとの各インダクタンスの合成値なので、インダクタンス値も分散することができる。
これにより、トランス9−a、9−bの高周波抵抗を下げることができ、トランス9−a、9−bの2次側に発生するサージ電圧(=L×di/dt)を抑制することができ、また、ダイオード10−a、10−b、11−a、11−bとして、低耐圧素子が使用することができる。また、電流を分散させることで、バスバーや基板パターンで発生する導通損失(=I2×R)を大幅に抑制することができる。そのため、大電力を取り扱う直流変換装置において、トランス9を複数使用することにより、冷却構造を簡素化するとともに、全体的な小型化を実現することができる。
なお、上記実施の形態4では、図10に示したように、トランス9−a、9−bの2次巻線の中間タップが出力電圧Voの負側に接続され、トランス9−a、9−bの2次巻線の両端には、それぞれダイオード10−a、11−a、10−b、11−bのアノード端子が接続されていた。しかしながら、これに限定されず、図11に示されるように、中間タップが出力電圧Voの正側に接続され、トランス9−a、9−bの2次巻線の両端に、それぞれダイオード10−a、11−a、10−b、11−bのカソード端子が接続されていてもよい。
実施の形態5.
図12は、この発明の実施の形態5に係る直流変換装置を示す概略構成図である。図12において、この直流変換装置は、昇圧コンバータ回路13と共振コンバータ回路14とを備え、昇圧コンバータ回路13は、上記実施の形態1と同じ回路構成である。一方、共振コンバータ回路14のトランス9の2次側整流回路は、半導体スイッチング素子10、11を用いた同期整流の回路構成を有している。
これにより、軽負荷動作時における直流変換装置の変換効率を高めることができる。これは、ダイオード整流回路では、ダイオードに流れる電流が小さくてもVf分の損失が発生している(W=Vf×Io)のに対して、同期整流回路では、MOSFETの損失が電流の2乗に比例するので(W=Ron×Io 2)、導通損失を抑制することができるためである。
次に、この実施の形態5における共振コンバータ回路14の基本的な動作について、波形を用いて説明する。図13は、この発明の実施の形態5に係る直流変換装置において、共振コンバータ回路14の動作時における各電圧電流波形を示す説明図である。
図13において、縦軸は、半導体スイッチング素子5、6のゲート・ソース間に印加されるゲート電圧Vgs5、Vgs6、半導体スイッチング素子5、6のドレイン・ソース間に印加される電圧Vds5、Vds6、トランス9の1次側に印加される電圧Vtr1、共振コンデンサ7や共振リアクトル8に流れる共振電流ILr、トランス9の励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流ILm、半導体スイッチング素子10、11のゲート・ソース間に印加されるゲート電圧Vgs10、Vgs11、および半導体スイッチング素子10、11に流れる電流ID10、ID11の波形をそれぞれ示している。なお、1次側に流れる電流は、共振コンデンサ7からトランス9に流れる方向を正としている。
ここで、制御部12は、半導体スイッチング素子5と半導体スイッチング素子10とのオンオフ制御の同期をとっており、半導体スイッチング素子6と半導体スイッチング素子11とのオンオフ制御の同期をとっている。また、この実施の形態5では、上述したように、スイッチング周波数fswの半周期(Tsw/2)と、共振コンデンサ7と共振リアクトル8とで構成される直列共振回路の直列共振周波数fsrの半周期(Tsr/2)にデッドタイムを加えた時間とが等しくなるように制御している。
一般的に、スイッチング周波数fswと直列共振周波数fsrとが等しくなるように制御することが推奨されているが、実際には、デッドタイム分だけ先に半導体スイッチング素子がターンオフするので、ターンオフ損失が発生する。これは、効率が悪化する原因となる。
そこで、この実施の形態5の共振コンバータ回路14では、制御部12がデットタイムを考慮したスイッチング周波数とすることにより、2次側整流回路の半導体スイッチング素子10、11をほぼ0Aでターンオフすることができ、ターンオフ損失を低減できるだけでなく、ターンオフ時に発生するサージを抑制できるので、サージ抑制スナバ回路を削減することができる。
また、図13に示されるように、導体スイッチング素子10、11のボディダイオードには、直前まで電流が流れているので、ドレイン・ソース間電圧Vdsはゼロである。そのため、半導体スイッチング素子10、11は、ZVSが成立する。
次に、この実施の形態5における直流変換装置において、負荷電圧が増加した場合の制御部12の保護動作について説明する。この実施の形態5における直流変換装置では、共振コンバータ回路14が同期整流の回路構成を有している。そのため、出力電圧Voの電圧が増加した場合に、半導体スイッチング素子10、11のスイッチングよってトランス9の1次側に発生する電圧が昇圧コンバータ回路13の出力電圧より大きくなるので、出力側から入力側に電流が流れる逆流現象が発生する。
そこで、この逆流現象を防止するために、制御部12は、負荷電圧が増加した場合、すなわち、共振コンバータ回路14の出力電圧があらかじめ定められた値を超えた場合に、昇圧コンバータ回路13の出力電力が増加するように制御する。これにより、出力電圧Vo側から入力電圧Vi側に電流が逆流することを防止することができる。
なお、上記実施の形態5では、図12に示したように、トランス9の2次巻線の中間タップが出力電圧Voの負側に接続され、トランス9の2次巻線の両端には、それぞれ半導体スイッチング素子(MOSFET)のソース端子が接続されていた。しかしながら、これに限定されず、図14に示されるように、中間タップが出力電圧Voの正側に接続され、トランス9の2次巻線の両端に、それぞれ半導体スイッチング素子(MOSFET)のドレイン端子が接続されていてもよい。
実施の形態6.
図15は、この発明の実施の形態6に係る直流変換装置を示す概略構成図である。図15において、この直流変換装置は、図12に示した直流変換装置に加えて、トランス9の2次巻線に流れる電流値を取得する出力電流検出回路24を有している。
上記実施の形態1〜5に示した制御方法により、入力電圧範囲が広い場合であっても、安定した電圧を高効率で出力することができる。しかしながら、経年変化による劣化や温度変化により、共振コンデンサ7の容量や、トランス9のリーケージインダクタンスである共振リアクトル8のインダクタンスが変化し、直列共振周波数fsrは変化する。
そのため、図13に示した動作波形は、図16のように変化する。図16は、この発明の実施の形態6に係る直流変換装置において、経年変化による劣化や温度変化により、直列共振周波数が変化した場合の各電圧電流波形を示す説明図であり、半導体スイッチング素子10、11のゲート・ソース間に印加されるゲート電圧Vgs10、Vgs11、および半導体スイッチング素子10、11に流れる電流ID10、ID11の波形を示している。
図16は、例えば共振コンデンサ7の容量の低下、共振リアクトル8のインダクタンスの低下、またはその両方により、直列共振周波数fsrが増加した場合を示している。図16のID10、ID11より、同期整流においては、直列共振周波数fsrが増加すると、共振電流が反転、すなわちドレインからソースに流れることが分かる。これにより、ターンオフ時では、スイッチング損失が発生するだけでなく、サージが増大する。
そこで、この実施の形態6では、制御部12が、半導体スイッチング素子10、11のオンオフタイミングを半導体スイッチング素子5、6のオンオフタイミングとそれぞれ同期させるだけでなく、出力電流検出回路24で検出された電流値が0Aをクロスした瞬間に、半導体スイッチング素子10または半導体スイッチング素子11をターンオフするように制御する。
これにより、半導体スイッチング素子10、11は、0Aでターンオフできるので、スイッチング損失が発生せず、サージも抑制することができる。図16に示した動作波形に対して、上述した制御を適用した場合の動作波形を図17に示す。図17は、この発明の実施の形態6に係る直流変換装置において、共振コンバータ回路の動作時における各電圧電流波形を示す説明図である。
図17において、実線は、この実施の形態6において、制御部12が、出力電流検出回路24で検出された電流値が0Aをクロスしたタイミングで、半導体スイッチング素子10、11をターンオフした場合の動作波形を示している。一方、図17において、点線は、図16に示した動作波形である。
なお、上記実施の形態6では、出力電流検出回路24の電流値をモニタして、制御部12が半導体スイッチング素子10、11をターンオフすると説明した。しかしながら、これに限定されず、例えばコンパレータを用いて、出力電流検出回路24の電流値が正→負に変換された瞬間に、半導体スイッチング素子10、11をターンオフするようにハードウェアで制御してもよい。
また、上記実施の形態6では、半導体スイッチング素子10、11に流れる電流をモニタするために、出力電流検出回路24である電流センサをトランス9の2次側に配置した。しかしながら、これに限定されず、例えばトランス9の1次側に電流センサを配置し、トランス1次側に流れる共振電流から、トランス9の2次側電流を推定してもよい。
また、上記実施の形態6では、図15に示したように、トランス9の2次巻線の中間タップが出力電圧Voの負側に接続され、トランス9の2次巻線の両端には、それぞれ半導体スイッチング素子(MOSFET)のソース端子が接続されていた。しかしながら、これに限定されず、例えば、中間タップが出力電圧Voの正側に接続され、トランス9の2次巻線の両端に、それぞれ半導体スイッチング素子(MOSFET)のドレイン端子が接続されていてもよい。
また、上記実施の形態6では、トランス9の2次巻線の中間タップの位置に出力電流検出回路24を設けた。しかしながら、これに限定されず、半導体スイッチング素子10、11と直列に、それぞれ電流センサを設けてもよい。
また、上記実施の形態6では、トランス9が1個で構成されていた。しかしながら、これに限定されず、上述した実施の形態4のように、複数個のトランス9を用いてもよく、電力に応じて適切なサイズや冷却能力を実現することができる。
実施の形態7.
この発明の実施の形態7に係る直流変換装置は、上記実施の形態6で説明した直流変換装置と同じ回路構成を有している。この実施の形態7では、上記実施の形態6と同様に、経年変化による劣化や温度変化により、共振コンデンサ7の容量や、トランス9のリーケージインダクタンスである共振リアクトル8のインダクタンスが変化し、直列共振周波数fsrが変化した場合に、半導体スイッチング素子10、11のターンオフ時に発生するスイッチング損失の発生およびサージの増大に対する課題を対象とする。
上記実施の形態6では、出力電流検出回路24で検出された電流値が0Aをクロスした瞬間に、半導体スイッチング素子10、11がターンオフするように制御したが、この実施の形態7では、共振コンバータ回路14の半導体スイッチング素子10、11のスイッチング周波数を増減することで、半導体スイッチング素子10、11が0A付近でターンオフするように制御する。
ここで、直列共振周波数fsrが変化することによって、直流変換装置の動作波形は、図16に示されたように変化する。制御部12は、半導体スイッチング素子10、11がターンオフするタイミングで出力電流検出回路24の値を取得する。このとき、制御部12は、取得された電流値が0Aからあらかじめ定められた範囲を逸脱している場合に、スイッチング周波数を増減させる。
例えば、図16に示された電流波形の場合には、制御部12は、スイッチング周波数を増加させる。これにより、スイッチング周波数fswが直列共振周波数fsrに近づくので、0A付近で半導体スイッチング素子10、11をターンオフすることができる。また、反対に、半導体スイッチング素子10、11の電流が0Aに達する前にターンオフした場合には、制御部12は、スイッチング周波数を低下させる。これにより、上記実施の形態6と同様の効果を得ることができる。
なお、上記実施の形態7では、半導体スイッチング素子10、11のスイッチング損失を低減させ、サージを抑制するために、出力電流検出回路24を設け、スイッチング周波数を増減させることにより、半導体スイッチング素子10、11が0A付近でオフするような回路とした。
しかしながら、これに限定されず、例えば、直流変換装置が内部に図示しない温度センサを備え、制御部12が、温度変化によって変化する直列共振周波数fsrの値を関数として記憶しておき、温度センサのモニタ値によって、スイッチング周波数fswを変化させてもよい。
実施の形態8.
一般的に、一定のスイッチング周波数でスイッチング制御を行う場合には、一定の周波数に起因した高いスイッチングノイズが発生することがあり、そのときには、ノイズ発生源として、他の電子機器に対し、誤動作や機能停止等といった弊害を招く恐れがある。
上記各実施の形態1〜7で示した直流変換装置では、コンバータを2段構成としているので、一般的に、昇圧コンバータ回路13および共振コンバータ回路14のスイッチングに起因するノイズについて、1段構成のコンバータ回路と比べて、より考慮する必要がある。
実際に、こういったスイッチングノイズについて、特に各国の規格に一定の整合性を持たせる必要があることから、国際規格CISPRが各分野の電子機器や自動車のEMC(Electromagnetic Compatibility)規格を制定、発行している。
このようなスイッチングノイズを抑制するために、一般的には、スナバ回路やノイズフィルタ等の部品やノイズ対策部品を備えることも考えられるが、コストアップや装置の大型化が避けられない。そこで、この実施の形態8では、制御部12が電力変換中の共振コンバータ回路14のスイッチング周波数を変化させ続けることで、スイッチングノイズのスペクトル拡散を図り、所望の帯域におけるスイッチングノイズのピーク値を低減する。
一般的に、LLC共振コンバータは、スイッチング周波数が変動するとゲインも変化することから、スイッチング周波数を変化させながらスイッチングノイズのスペクトル拡散を図ると、併せて出力電圧Voも変化する。しかしながら、この実施の形態8における直流変換装置の共振コンバータ回路14は、共振リアクトル8にトランス9の漏れインダクタンスを使用しているので、図3に示されるように、周波数を変動させてもゲイン特性は一定である。そのため、制御部12は、半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数を変化させても、共振コンバータ回路14は、一定の電圧を出力することができる。
一方、スイッチング周波数を変化させることによるスイッチングノイズのスペクトル拡散効果は、非特許文献1に示されている。すなわち、次式(12)で示されるように、スイッチング周波数が繰り返し性をもって変化する際の、繰り返し周波数fmが低いほど、また、スイッチング周波数を変化させる際の最大周波数と最小周波数との差Δfが大きいほど、スペクトル拡散指数βが大きく、好適にスイッチングノイズのピーク値が低減される。
上述したノイズスペクトルの拡散方法について、図18を用いて説明する。図18は、この発明の実施の形態8に係る直流変換装置におけるノイズスペクトルの拡散方法を示す説明図であり、制御部12が、共振コンバータ回路14の半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数を、時間によって変化させている様子を示している。図18において、制御部12は、一定の周期Tmの間に周波数をf1(第1スイッチング周波数)〜f2(第2スイッチング周波数)まで変化させている。また、上述した繰り返し周波数fmは1/Tmであり、Δfはf2−f1である。
すなわち、式(12)より、好適なスイッチングノイズのピーク値低減効果を得るためには、周波数変換の周期Tmが大きく、つまり繰り返し周波数fmが小さく、スイッチング周波数の変化幅Δfが大きいほどよいことがわかる。
ここで、スイッチング周波数を変化させることによるスペクトル拡散効果は、上記式(12)で表されたスペクトル拡散指数βの値によって確認することができる。図19(a)〜(c)は、この発明の実施の形態8に係る直流変換装置において、スペクトル拡散指数βの変化によるスペクトル拡散効果を示す説明図である。
図19(a)は、β=0の場合を示し、図19(b)は、β=1の場合を示し、図19(c)は、β=5の場合を示している。図19から、スイッチング周波数を一定値fcとしてスイッチング制御する場合に比べて、スペクトル拡散指数βを大きくするほど、本来のノイズピークが低減し、広帯域にスペクトルを拡散することができることが分かる。
すなわち、処理負荷の増加を最低限に抑えるために、スイッチング周波数の最大周波数と最小周波数との差Δfを制限した場合に、スペクトル拡散指数βを大きくするためには、繰り返し周波数fmを小さくする必要がある。
しかしながら、上述したEMC規格では、装置が発生させるノイズをスペクトルアナライザで測定する際のRBW(Resolution Band Width:分解能帯域幅)が規定されている。また、非特許文献1によれば、スイッチングノイズのスペクトルは、繰り返し周波数fm毎にピークをもって分散する。
そのため、スペクトルアナライザでスイッチングノイズのスペクトルを測定した場合に、上述したスペクトル拡散効果を得るためには、繰り返し周波数fmを、スペクトルアナライザのRBW以上の値に設定する必要がある。
そのため、この発明の実施の形態8に係る直流変換装置の共振コンバータ回路14において、制御部12は、半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数の繰り返し周波数fmを、スペクトルアナライザのRBW以上の値に設定する。
また、上記式(12)より、スイッチング周波数の変化幅Δfはが大きいほど、ノイズ拡散効果がある。そのため、f1は小さく、f2は大きくする必要がある。しかしながら、一般的に、これらの値は、ハードウェアの要素で決まる。
すなわち、f2は大きいほどよいが、一般的には、これらを制御するマイコンやICのスペックで決まる。一方、f1は小さいほどよいが、f1が小さいほど、トランス9の電圧印加時間が大きくなり、磁束飽和が起こってしまう。なお、磁束飽和が起こると、トランス9に流れる電流が急激に増加する。また、この急激な電流増加は、ノイズが増加する原因となる。そのため、トランス9の磁束飽和が起こらないように、周波数変化パターンの最小周波数を設定する必要がある。
ここで、スイッチング周波数とトランス9の磁束密度の変化ΔBは、次式(13)で与えられる。なお、式(13)において、Vはトランス9の1次側端子間電圧を示し、dtは電圧印加時間(スイッチング周波数fswに反比例)を示し、Nはトランス1次側巻数を示し、Aeはトランスコアの有効断面積を示し、dはスイッチングのオン比を示し、fswはスイッチング周波数を示している。
また、トランス9の磁束密度の変化ΔBは、トランス9の飽和磁束密度Bsによって規定した値以下となる必要があり、この実施の形態8の共振コンバータ回路14では、ΔB≦2Bsを満たす必要がある。すなわち、ΔB≦2Bsを満たすスイッチング周波数fswを周波数変化パターンの最小周波数とする。これにより、トランス9の磁束飽和に起因するノイズの発生を抑制することができ、所望の帯域におけるスイッチングノイズのピーク値を低減することができる。
なお、上記実施の形態8で説明したノイズスペクトルの拡散方法について、図18を参照して説明したが、制御部12のマイコンやICによっては、図18のようにスイッチング周波数をスイープさせる機能を有していない場合がある。この場合には、制御部12は、スイッチング周波数としていくつかのパターンf(1)、f(2)・・・f(k)を用意し、スイッチング周波数を順次切り替えていくことで同様の効果を得ることができる。
以下、図20を参照しながら、この場合における制御方法について説明する。図20は、この発明の実施の形態8に係る直流変換装置におけるノイズスペクトルの拡散方法の別の例を示す説明図であり、制御部12が制御する半導体スイッチング素子5、6のスイッチング周波数を示している。
この実施の形態8においては、図20に示されるように、制御部12は、一定の周期Tmの間に、周波数値f(1)からk回目に出力する周波数値f(k)までのスイッチング周波数を、f(1)→f(2)→・・・・・→f(k)の順に出力するとき、このf(1)からf(k)までの周波数値を、f(1)≦f(2)≦・・・≦f(k)またはf(1)≧f(2)≧・・・≧f(k)が満たされるように設定する。
また、制御部12は、f(1)からf(k)までのスイッチング周波数でスイッチング制御するときの合計時間(1/f(1))+(1/f(2))+・・・・・+(1/f(k))が、演算周期Tcと一致するように、f(1)からf(k)までの周波数値を設定する。
なお、上記実施の形態8では、半導体スイッチング素子5、6の制御方法について説明したが、ここで、共振コンバータ回路14の2次側整流回路は、ダイオード整流方式であっても同期整流方式であってもよく、また、トランス9は、上述した実施の形態4のように、複数であってもよい。
また、上記各実施の形態1〜8では、半導体スイッチング素子がMOSETとした。しかしながら、これに限定されず、半導体スイッチング素子は、例えば、IGBTであってもよい。
また、上記各実施の形態1〜8では、トランス2次側の整流回路後段から出力電圧Voまでの間に平滑用のコンデンサが並列接続されていない。しかしながら、これに限定されず、例えば、フィルムコンデンサやアルミ電解コンデンサ等のコンデンサが、整流回路後段に接続されてもよく、また、共振コンバータ回路14の出力部に鉛バッテリ等の大きな容量成分となるものが接続されている場合には、コンデンサを接続しなくてもよい。
また、上記各実施の形態1〜8では、共振コンバータ回路14は、半導体スイッチング素子を2つ用いたハーフブリッジ構成とした。しかしながら、これに限定されず、共振コンバータ回路14は、例えばフルブリッジ構成であってもよい。
また、上記各実施の形態1〜8において、直流変換装置に使用する半導体スイッチング素子は、シリコン(Si)半導体からなる半導体スイッチング素子に限定されず、例えば、半導体スイッチング素子は、Si半導体よりもバンドギャップが広い非Si半導体材料からなるものであってもよい。なお、非Si半導体材料であるワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、またはダイヤモンドがある。
ここで、ワイドバンドギャップ半導体からなる半導体スイッチング素子は、Si半導体では、ユニポーラ動作が困難な高電圧領域で使用することができ、スイッチング時に発生するスイッチング損失を大きく低減するとともに、電力損失を大きく低減することができる。また、電力損失が小さく、耐熱性も高いので、冷却部を備えてパワーモジュールを構成した場合には、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化が可能であり、半導体モジュールの一層の小型化を実現することができる。
また、ワイドバンドギャップ半導体からなる半導体スイッチング素子は、高周波スイッチング動作に適しており、高周波化の要求が大きいコンバータ回路に適用すると、スイッチング周波数の高周波化によって、コンバータ回路に接続されるリアクトルやコンデンサ等を小型化することができる。よって、上記各実施の形態1〜8における半導体スイッチング素子は、炭化珪素等ワイドギャップ半導体からなる半導体スイッチング素子となる場合にも、同様の効果を得ることができる。
この発明に係る直流変換装置は、入力電圧を昇圧して直流電圧を出力する昇圧コンバータと、昇圧コンバータから出力された直流電圧を降圧して直流電圧を出力する絶縁型共振コンバータと、昇圧コンバータおよび絶縁型共振コンバータの動作を制御する制御部と、を備え、昇圧コンバータは、昇圧リアクトル、ダイオードおよびコンデンサと、昇圧リアクトルへの通電を制御する第1スイッチング素子と、を有し、絶縁型共振コンバータは、1次巻線および2次巻線を有するトランスと、トランスの1次側に接続された共振コンデンサおよび共振リアクトルと、共振コンデンサおよび共振リアクトルへの通電を制御する、互いに直列に接続された第2スイッチング素子および第3スイッチング素子と、トランスの2次側に接続された整流回路と、を有し、共振リアクトルは、トランスのリーケージインダクタンスで形成され、制御部は、スイッチング周波数の半周期と、共振コンデンサと共振リアクトルとで構成される直列共振回路の直列共振周波数の半周期に、デッドタイムを加えた時間とが等しくなるように制御するものである。