以下、図面を参照して、本発明のエアダンパの、第1実施形態について説明する。
このエアダンパ10は、相対的に開閉動作する一対の開閉部材間に配設されるもので、例えば、自動車のインストルメントパネルに設けられた収容部の開口部に、開閉可能に取付けられたグローブボックスやリッド等の、制動用として用いることができる。
図1に示すように、このエアダンパ10は、一端が閉塞され他端が開口したシリンダ20と、該シリンダ20内に摺動可能に挿入されたピストン30と、該ピストン30に連結されたロッド50と、ピストン30の外周に装着されるシールリング80と、シリンダ20の他端開口に装着されたキャップ60とから、主として構成されている。なお、前記シールリング80は、ピストン30に装着される前の外力のない状態では、円形状をなしている(図1では便宜上、シリンダ内に挿入された状態の形状を示している)。
図1及び図4に示すように、シリンダ20は、筒状に所定長さで伸びる壁部23を有しており、その一端が閉塞部21により閉塞され、他端には開口部22が設けられている。また、図5(b)に示すように、シリンダ20の壁部23の、軸方向に直交する断面は、長軸A及び短軸Bを有し、一方向に長く伸びる環状の断面形状をなしている。この実施形態では、壁部23には、長軸A方向に沿って直線状に伸び、互いに平行となるように配置された直線状壁部25,25を有しており、該直線状壁部25,25の両端部は、円弧状に屈曲した円弧状壁部26,26により連結されている。また、シリンダ20の開口部22側であって、直線状壁部25,25のほぼ中央には、長孔状の係合孔22aがそれぞれ形成されている(図1参照)。
なお、シリンダ20の閉塞部21の外面からは、取付孔27aを有する取付片27が延設されており、該取付片27を介してシリンダ20が、グローブボックスやリッド等の開閉機構に取付られるようになっている。
また、この実施形態では、シリンダ20の一端に閉塞部21が設けられているが、シリンダ20の一端を開口として、この一端開口に、シリンダ20と別体又は一体のキャップを装着することで、シリンダ20の一端開口を閉塞させてもよい。この場合、キャップ部材が「閉塞部」をなすこととなる。
なお、シリンダ20としては、長軸A及び短軸Bを有する断面形状、例えば、長方形状や楕円形状等としてもよく、特に限定はされない。
図1、図2及び図4に示すように、シリンダ20の軸方向他端側の開口部22に装着されるキャップ60は、シリンダ20の開口部22を覆うように、長軸A及び短軸Bを有する長板状をなし、その両端が円弧状に丸みを帯びた基部61を有している。この基部61には、前記ロッド50が移動可能に挿通される角形長孔状の挿通孔63が形成されている(図7参照)。更にこの基部61の裏側であって、その周縁部よりやや内側からは、シリンダ20の開口部22内に差し込まれる(図4参照)、長軸A及び短軸Bを有する断面形状を呈する(図示省略)細長円筒状をなした差込部65が延設されている。なお、差込部65の先端側は、段部を介してやや縮径した形状をなしている。
また、差込部65の短軸B方向両側面のほぼ中央部には、略コ字状をなしたスリット66が形成され、該スリット66を介して撓み可能な係止爪67,67がそれぞれ設けられている。すなわち、係止爪67,67は、シリンダ20の直線状壁部25,25に、整合する位置となるように配置されるようになっている。そして、これらの係止爪67,67が、前記シリンダ20の開口部22の係合孔22aにぞれぞれ係合することで、シリンダ20の開口部22にキャップ60が装着されるようになっている。
図2及び図4に示すように、この実施形態におけるスリット66は、差込部65の延出方向に沿って伸びる一対の横溝66aと、該一対の横溝66a,66aの基端部を連結する縦溝66bとからなり、それによって、係止爪67は、その一端が差込部65の先端側(シリンダへの挿入方向側)に連結され、他端が差込部65から分離した自由端をなしている。
また、図2、図4及び図6に示すように、各係止爪67は、キャップ60の差込部65に、前記スリット66を介して形成された、撓み可能な弾性壁部68を有しており、この弾性壁部68の表面側であって、係止爪67の自由端側には、シリンダ20の係合孔22aに係合する、係合突起69が突設されている。
なお、上記弾性壁部68の「表面側」とは、シリンダ20の内周面に、対向して配置される側の面(対向面)を意味している。すなわち、本発明では、シリンダ内にキャップの差込部が差し込まれることから、係止爪や弾性壁部の「表側」や「表面側」とは、シリンダの内周面との対向面側を意味し、係止爪や弾性壁部の「裏側」や「裏面側」とは、シリンダの内周面との対向面側とは、反対側を意味する。これは以下の説明においても同様である。
また、この差込部65の、シリンダ20への差込方向の先端面からは、凸部73が突設されている。
すなわち、図2に示すように、差込部65の長軸A方向の両端部から、略U字枠状をなした凸部73,73がそれぞれ突設されており、各凸部73の外周面に、シリンダ20への挿入方向に向けて次第に幅狭となるように、差込部65の短軸B方向の両側面に、第1テーパ面75がそれぞれ形成されている。また、差込部65の長軸A方向一端側の凸部73の、長軸A方向他端側の面に、長軸A方向他端側に向けて次第に低くなる第2テーパ面77が形成され、同差込部65の長軸A方向他端側の凸部73の、長軸A方向一端側の面には、長軸A方向一端側に向けて次第に低くなる第2テーパ面77が形成されている。更に、前記第1テーパ面75は、各凸部73の、第2テーパ面77が形成された面であって、その短軸B方向の側面に至るまで形成されている。この実施形態では、両凸部73,73の対向する内面に、第2テーパ面77がそれぞれ形成されている。
上記構造をなしたシリンダ20内に摺動可能に挿入されるピストン30は、図2、図3及び図5に示すように、一端が底部により閉塞され、他端が開口した筒状をなしていると共に、その外周にシールリング80が装着されている。
この実施形態のピストン30は、上記シリンダ20の形状に適合して、長軸A及び短軸Bを有する断面形状をなしている(図5(a)参照)。また、ピストン30の長軸Aに沿った両側面は、シリンダ20の直線状壁部25に適合するように、互いに平行に直線状に伸びる直線状壁面33,33をなしている(図3(a)及び図5(b)参照)。
また、ピストン30の底部の長軸A方向の一端部には、細孔状のオリフィス32が貫通して形成されている(図3(c)参照)。
そして、シリンダ20内にピストン30が挿入されることにより、シリンダ20内には、壁部23、閉塞部21及びピストン30で囲まれた内部空間S1(図7及び図8参照)が形成されるが、このオリフィス32が、シリンダ20の内部空間S1を外部(ここではピストン30とキャップ60との間の、外部連通空間S2)に連通させる本発明における「流通路」の一つをなしている。なお、シリンダ20の閉塞部をキャップ部材とした場合には、該キャップ部材にオリフィスを設けることができ、この場合、上記「外部」とは、シリンダ20の外部を意味する。
この実施形態では、ピストン30が制動方向(シリンダ20の閉塞部21から離れる方向)に摺動すると、内部空間S1が減圧されて、ピストン30が制動方向とは反対方向(シリンダ20の閉塞部21に近づく方向)に引張られることで、ピストン30に制動力が付与されるようになっている。その際に、空気が、オリフィス32を介して外部連通空間S2から内部空間S1へと流れ込むことで(図7(b)の矢印参照)、ピストン30に付与される制動力が調整されるようになっている。
また、ピストン30の軸方向基端側であって、長軸A方向両端部の外周からは、フランジ状をなしたリング保持壁35,35が突設されている。更にピストン30の軸方向先端寄りであって、前記リング保持壁35から所定間隔離れた位置からは、フランジ状をなしたリング保持壁36がピストン全周に亘って突設されている。
図3(a)に示すように、ピストン30の先端側のリング保持壁36の内側面は、シールリング80が密接したときに、ピストン30とシリンダ20との隙間をシールするシール面39(図3(a)参照)をなしている。また、リング保持壁36,35の間の直線状壁面33に位置する部分には、シールリング80がシール面39から離れたとき、シールリング80の内周を通って、ピストン30とシリンダ20とで囲まれた内部空間S1を外部に連通させる溝部41が形成されている。
この実施形態では、ロッド50の長手方向に沿って、リブを介して、3つの溝部41が平行に設けられている。この溝部41は、シリンダ20の内部空間S1を外部(外部連通空間S2)に連通させる本発明における「流通路」の一つをなしている。
また、リング保持壁35、35の直線状壁面33を通る部分は、リブが消失して間隙35aをなしている。そして、リング保持壁35,36がシールリング80の外径にほぼ適合する間隔で形成されていることから、リング保持壁35,36の間に、シールリング80を配置することで、シールリング80は、ピストン30の直線状壁面33の両端部において、ピストン30の軸方向への移動が規制されるが(図7及び図8参照)、リング保持壁35,35の間隙35aの部分では、シールリング80は、間隙35aからはみ出すように、ピストン30の軸方向に移動可能とされ、溝部41を通る流路を開閉するように構成されている(図8(a),(b)参照)。
そして、図7(a),(b)に示すように、このエアダンパ10においては、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21から離れる方向に摺動すると、ピストン30のシール面39側にシールリング80が移動して、溝部41がシールリング80によって閉塞されるため、オリフィス32のみが流通路となる。その結果、シリンダ20の内部空間S1が減圧され、ピストン30に制動力が付与されるようになっている(図7(b),(c)参照)。
一方、図8(a),(b)に示すように、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21に近接する方向に摺動すると、シールリング80のリング保持壁35により保持されていない間隙35aからはみ出すように湾曲変形して(図8(b)参照)、直線状壁面33のシール面39から溝部41へと移動して、シールリング80の内周に溝部41を介してシリンダ内に連通する流路が形成され(図6参照)、それによって流通路が広がり、該流通路を通って、シリンダ20の内部空間S1内の空気が外部連通空間S2に排気されるため(図8(b)参照)、ピストン30に付与された制動力が解除されるようになっている。
このように、この実施形態においては、ピストン30、ピストン30に設けたオリフィス32及び溝部41、シールリング80が、本発明における「制動力付与手段」をなしている。
なお、この実施形態とは逆に、ピストンがシリンダの閉塞部に近接する方向に摺動したときに、流通路を狭めて制動力を付与させ、離反する方向に摺動したときに、流通路を広げて制動力を解除するようにしてもよい。
そして、このエアダンパ10においては、ロッド50がシリンダ20の他端開口から最大限引き出されたときに、キャップ60に当接してロッド50のそれ以上の引き出しを規制するストッパ部が設けられている。
この実施形態では、図3及び図4に示すように、前記ピストン30の軸方向基端部が、ストッパ部40をなしており、該ストッパ部40が、ロッド50がシリンダ20の他端の開口部22から最大限引き出されたときに、キャップ60の一対の凸部73,73の先端面にそれぞれ当接して、ロッド50のそれ以上の引き出しが規制されるようになっている(図4(b)及び図7(c)参照)
なお、この実施形態では、ピストン30の軸方向基端側にリング保持壁35が設けられていて、それよりも更に基端側のピストン基端部がストッパ部40をなしているが、例えば、ピストン30の軸方向基端周縁から、その基端面と面一となるようにリング保持壁35を突設させて、該リング保持壁35をストッパ部としてもよく、ロッド50が最大限引き出されたときにキャップ60に当接して、それ以上の引き出しが規制される構造であればよい。また、この実施形態ではピストン30に、本発明に係る「ストッパ部」を設けたが、ピストン30から延出されるロッド50に設けてもよい。
図1に示すように、ピストン30の、シリンダ20の閉塞部21側の先端面であって、その長軸A方向の両端部から、略U字枠状をなした凸部43,43がそれぞれ突設されている。また、各凸部43の外周面に、シリンダ20へのピストン挿入方向に向けて次第に幅狭となるように、ピストン30の短軸B方向の両側面に、第1テーパ面45がそれぞれ形成されている。
更に、ピストン30の長軸A方向一端側の凸部43の、長軸A方向他端側の面には、長軸A方向他端側に向けて次第に低くなる第2テーパ面47が形成され、同ピストン30の長軸A方向他端側の凸部43の、長軸A方向一端側の面には、長軸A方向一端側に向けて次第に低くなる第2テーパ面47が形成されている。また、前記第1テーパ面45は、各凸部43の、第2テーパ面47が形成された面であって、その短軸B方向の側面に至るまで形成されている。
図1及び図3に示すように、上記ピストン30の基端側には、シリンダ20の開口部22から延出されるロッド50が連結されている。このロッド50は、シリンダ20及びピストン30の断面形状に対応して一方向に長い断面形状をなしていると共に、その先端部には取付部51が設けられており、図示しないグローブボックスやリッド等の開閉機構に取付けられるようになっている。
また、ロッド50の両側面(シリンダ20の直線状壁部25,25に配置される面)には、所定深さの凹部53が軸方向に沿って形成されており、シリンダ20内でピストン30及びロッド50が移動するときに、シリンダ20内の空気が流通可能になっている。
そして、このエアダンパ10においては、前記ピストン30に設けたストッパ部40が、キャップ60に当接して、ロッド50のそれ以上の引き出しが規制されたときに(図4(b)及び図7(c)参照)、図6及び図12に示すように、キャップ60の係止爪67の裏側に位置して、係止爪67のシリンダ内方への撓みを規制する、リブ55が設けられている。
この実施形態では、ロッド50の基端側(ピストン30との連結側)であって、その両側面に、ロッド50の長手方向に沿って伸びる、複数のリブ55が所定間隔をあけて突設されている。ここでは、ロッド50の基端側の各側面に2つずつ、合わせて4つのリブ55が設けられているが、該リブ55は1つでも3つ以上でもよく、特に限定はない。
また、各リブ55の先端には、ロッド先端側に向けて高さが次第に低くなるテーパ面55aが形成されており、シリンダ20の他端開口からロッド50が引き出されて、キャップ60の係止爪67の裏側にリブ55が配置されるときに、テーパ面55aが係止爪67の裏側に当接して、該係止爪67の裏側にリブ55が潜り込むようにガイドするため、係止爪67の裏側にリブ55をスムーズに配置可能となっている。
なお、前記複数のリブ55は、シリンダ20の直線状壁部25,25に、整合する位置となるように配置されるようになっている。
上記のリブ55が、ストッパ部40がキャップ60に当接しているときに、係止爪67の裏側に位置して、係止爪67のシリンダ内方への撓みを規制する、本発明における「撓み規制部」をなしている。なお、撓み規制部としては、上記実施形態のように、リブ状ではなく、ロッド50の側面から所定高さで隆起した形状や、凸形状、突条等をなしていてもよく、特に限定はされない。
次に、上記構成からなるエアダンパ10の作用効果について説明する。
このエアダンパ10においては、シリンダ20の壁部23が、長軸A及び短軸Bを有する断面形状をなしているので、シリンダ20の射出成形時において、ヒケ等の影響によって、図9に示すように、シリンダ20の長軸A方向に沿って配置された対向する壁部、すなわち、直線状壁部25,25の中央部分がシリンダ内側に湾曲して、シリンダ20の開口部22が幅狭となってしまい、シリンダ20内にピストン30を挿入できず、また、シリンダ20の開口部22にキャップ60を装着できないことがあった。
このような場合でも、シリンダ20内にピストン30を挿入できると共に、シリンダ20の開口部22にキャップ60を装着させることができる。すなわち、シールリング80を装着したピストン30を、その先端側からシリンダ20の開口部22に挿入していくと、ピストン30の先端面からは、第1テーパ面45及び第2テーパ面47を有する凸部43,43が突設されているので、上記のようにシリンダ20の開口部22が狭められていても、各凸部43が開口部22内に先に挿入され、その第1テーパ面45が、開口部22の長軸A方向の端部内周に当接してガイドされると共に、第2テーパ面47が、開口部22の幅狭部分Hの内周に当接してガイドされながら、凸部43,43が押し込まれていく(図9参照)。そして、ピストン30を更に押し込んでいくと、開口部22の幅狭部分Hを押し広げるので(図10及び図11参照)、シリンダ20内にピストン30を挿入することができる。
その後、ピストン30に連結されたロッド50の先端部を、キャップ60の挿通孔63に挿通させつつ、シリンダ20の開口部22に向けてキャップ60を押し込んでいくと、上記ピストン30と同様に、キャップ60の差込部65の先端面から突出した凸部73,73が、開口部22内に先に挿入されて、第1テーパ面45が、開口部22の長軸A方向の端部内周に当接してガイドされると共に、第2テーパ面47が、開口部22の幅狭部分Hの内周に当接してガイドされながら、凸部43,43が押し込まれていく。それと共に、各係止爪67の係合突起69が、シリンダ20の内周に押圧されて、係止爪67,67の弾性壁部68,68が、撓みながら押し込まれていく。更にキャップ60を押し込んでいくと、開口部22の幅狭部分Hを押し広げて、シリンダ20内に差込部65が挿入されると共に、各係止爪67の係合突起69が、シリンダ20の開口部22の係合孔22aに至ると、係止爪67,67の弾性壁部68,68が弾性復帰して、その係合突起69,69が係合孔22a,22aに係合して、開口部22にキャップ60を装着することができる。
上記のようにして、シリンダ20内にピストン30及びロッド50が挿入されて、その開口部22にキャップ60が装着されたエアダンパ10は、例えば、シリンダ20の取付片27及びロッド50の取付部51を介して、図示しないグローブボックスの側部に取付けることができる。
このとき、このエアダンパ10によれば、図5(b)に示すように、シリンダ20の壁部23の、軸方向に直交する断面は、長軸A及び短軸Bを有する断面形状をなしているので、シリンダ20の内部空間S1の容積を確保しつつ、シリンダ20の幅方向の寸法を小さくすることができ、取付スペースに余裕がなくても取付けることができ、利便性を向上させることができる。
そして、図示しないグローブボックスに対してリッドが閉じた状態、すなわち、図7(a)に示すように、シリンダ20の閉塞部21にピストン30が押付けられて、ロッド50がキャップ60の挿通孔63から引き込まれた状態で、リッドが開くと、図7(b)に示すように、ロッド50が挿通孔63から引き出されて、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21から離れる方向に摺動する。すると、ピストン30のシール面39側にシールリング80が移動して、シールリング80とピストン30との隙間が閉塞されて流通路が狭められるので、シリンダ20の内部空間S1が減圧され、オリフィス32を通じて外部連通空間S2から内部空間S1に空気が移動し(図7(b)矢印参照)、ピストン30に制動力が付与されて、リッドを緩やかに開くことができる(図7(c)参照)。
一方、作業者が、エアダンパ10をグローブボックスに取付ける際に、シリンダ20からロッド50を最大限引き出してしまうことがある。この際に、ピストン30が、シリンダ20の閉塞部21から最大限離れて、シリンダ20の開口部22からロッド50が最大限引き出されると、ピストン30の軸方向基端部に設けたストッパ部40が、キャップ60の一対の凸部73,73の先端面にそれぞれ当接して、ロッド50のそれ以上の引き出しが規制される(図4(b)及び図7(c)参照)。このとき、図6及び図12に示すように、リブ55のテーパ面55aが係止爪67の裏側に当接し、該テーパ面55aを介して係止爪67の裏側にリブ55が潜り込むようにガイドされながら、係止爪67の裏側に位置する。
このように、撓み可能な係止爪67の裏側にリブ55が位置することによって、シリンダ20の開口部22の係合孔22aに係合した、キャップ60の係止爪67が、シリンダ内方へ撓むことを規制することができるので、作業者が無理にロッド50を引張って、ピストン30がキャップ60に当接して、シリンダ開口部からキャップ60が抜け外れる方向に力が作用しても、キャップ60がシリンダ20の開口部22から抜け外れてしまうことを確実に防止することができる。また、キャップ60の抜け外れが防止されるので、シリンダ20に対するキャップ60の保持力を増大させるべく、係止爪67の、前記係合孔22aに対するラップ代(重なり量)を増大させる必要がなく、シリンダ20に対するキャップ60の挿入抵抗を小さくして、取付け作業性を維持することができる。
また、この実施形態においては、キャップ60の係止爪67は、その一端が差込部65の先端側に連結され、他端が差込部65から分離した自由端をなしているので、上記のように、シリンダ20の開口部22からロッド50を最大限に引き出すとき、キャップ60の差込部65の先端側に連結された係止爪67の一端側から、その裏側にリブ55が入り込むため、リブ55が係止爪67に引っ掛かってしまうことを防止でき、ロッド50の摺動操作をスムーズにすることができる。
更にこの実施形態においては、次のような作用効果を奏する。すなわち、この実施形態においては、シリンダ20やピストン30が、長軸A及び短軸Bを有する断面形状をなしているので、円形断面のシリンダ及びピストンを有するエアダンパ(後述する図14及び図15の実施形態参照)と比べて、シリンダ20の開口部22からロッド50が引き出されるときに、図13に示すように、長軸A方向にロッド50が傾きやすい傾向にあった。
しかしながら、この実施形態のエアダンパ10においては、図4、図6及び図12に示すように、シリンダ20の、長軸A側の直線状壁部25に係合孔22aを設けたので、図13に示すように、ロッド50が長軸A方向に傾いて引き出されて、ピストン30のストッパ部40の長手方向一端部のみが、キャップ60の一方の凸部73に当接して、ロッド50のそれ以上の引き出しが規制された状態においても、係止爪67の裏側に、リブ55を確実に位置させることができ、その結果、係止爪67の撓みが防止されて、係合孔22aとの係合力を保持でき、キャップ60のシリンダ20の開口部22からの抜け外れをより確実に防止することができる。
一方、図示しないグローブボックスに対してリッドを閉じる場合、すなわち、図8(a),(b)に示すように、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21に近接する方向に摺動すると、シールリング80のリング保持壁35により保持されていない中間部分が、リング保持壁35,35の間隙35aに入り込むように湾曲変形する(図8(b)参照)。すると、直線状壁面33のシール面39から溝部41へと移動し、シールリング80の内周に溝部41を介してシリンダ内に連通する流路が形成されて(図6参照)、それによって流通路が広がるので、この流通路を通って、シリンダ20の内部空間S1内の空気が外部連通空間S2に排気され、ピストン30に付与された制動力が解除されて、リッドを迅速に閉じることができる(図8(c)参照)。
このように、このエアダンパ10によれば、ピストン30が制動力を受ける方向に移動するときには、シールリング80が直線状壁面33のシール面39に移動するので、シールリング80とピストン30との隙間が閉塞されて流通路が狭められ、ピストン30に制動力を付与することができる。また、ピストン30が制動力を解除される方向に移動するときには、シールリング80が溝部41側に移動して、シールリング80の内周に、溝部41を介してシリンダ内に連通する流路が形成され、それによって流通路が広がるので、ピストンにかかる制動力を解除することができる。
図14及び図15には、本発明のエアダンパの、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のエアダンパ10aは、主として、シリンダ20a、ピストン30a及びキャップ60aの外部形状が前記実施形態のものと異なっている。
すなわち、このエアダンパ10aのシリンダ20は、円形断面を有する円筒状をなしており、これに対応してピストン30aが円柱状をなし、更にキャップ60aは、その基部61が円板状をなし、差込部65が円筒状をなしている。
また、ロッド50の基端側両側面には、ピストン30aの基端側に設けられた円形フランジ状のストッパ部40が、キャップ60の円筒状をなした差込部65の先端面に当接して、ロッド50のそれ以上の引き出しが規制されたときに、キャップ60aの係止爪67の裏側に配置されて、係止爪67のシリンダ内方への撓みを規制するリブ55が設けられている(図14及び図15参照)。
よって、このエアダンパ10aにおいても、キャップ60がシリンダ20の開口部22から抜け外れてしまうことを確実に防止することができると共に、係止爪67の、係合孔22aに対するラップ代を増大させる必要がなく、シリンダ20に対するキャップ60の挿入抵抗を小さくして、取付け作業性を維持することができる。
図16〜20には、本発明のエアダンパの、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のエアダンパ10bは、主として、キャップ60の係止爪67及びロッド50の構造が前記実施形態と異なっている。
図16及び図18に示すように、この実施形態における一対の係止爪67,67は、前記実施形態と同様に、キャップ60の差込部65に、スリット66を介して撓み可能な弾性壁部68が形成されており、この弾性壁部68の表面側であって、係止爪67の自由端側に、シリンダ20の係合孔22aに係合する係合突起69がそれぞれ突設されている。
また、図18に示すように、各係止爪67の弾性壁部68の、係合突起69よりも自由端側の表面68aは、自由端側に向けて次第に高さが低くなるテーパ面状をなしている。
そして、各係止爪67の裏側には、張出部70がそれぞれ設けられている。ここでは、図16及び図18に示すように、係止爪67を構成する弾性壁部68の裏面側であって、その自由端に張出部70が突設されている。
この実施形態の張出部70は、その断面形状が円弧状に丸みを帯びた凸状をなしているが、例えば、台形状に隆起した形状であったり、係止爪の基端側から、キャップ内径側に向けて、徐々にせり出すような形状であったりしてもよく、その形状には特に限定はなく、また、弾性壁部68の基端寄りの位置に設けたりしてもよく、形成位置も特に限定はされない。
すなわち、この張出部としては、係止爪の裏側であって、キャップの内周面よりも、キャップ内径側へ突出する部分があればよい。
なお、この張出部70は、図20(a)に示す、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21に当接した状態や、図18及び図20(b)に示す、後述するロッド50の拡開部57が張出部70に位置していない状態においては、ロッド50の凹部53上に位置しており、係止爪67が、撓んでいない自由状態に保持されるようになっている。
一方、ロッド50の、キャップ60の係止爪67,67と対向する面側には、拡開部57,57が形成されている。
すなわち、図17〜19に示すように、ロッド50の両側面(シリンダ20の直線状壁部25,25側で、かつ、キャップ60の係止爪67、67と対向する面側)であって、ピストン30との連結部分の近傍に、拡開部57,57がそれぞれ設けられている。
図17に示すように、この実施形態の拡開部57は、ロッド50の両側面に設けた凹部53,53の底面から、所定高さで隆起した形状をなしており、ピストン30との連結部分から、ロッド先端に向けて所定長さで延設されている。また、各拡開部57の先端側は、ロッド先端に向けた次第に高さが低くなるテーパ面57aが設けられている。
なお、この拡開部57としては、例えば、ロッド凹部から突設した薄肉のリブ状をなしていてもよく、その形状は特に限定されない。
そして、このエアダンパ10bにおいては、係止爪67の張出部70と、ロッド50の拡開部57とが、以下のような関係となるように構成されている。
すなわち、図20(a)に示すように、少なくともピストン30がシリンダ20の閉塞部21に当接した状態では、ロッド50の拡開部57,57は、係止爪67,67の張出部70,70には位置しないようになっている。
この状態から、図20(b)に示すように、ピストン30が、シリンダ20の閉塞部21から所定距離だけ離れる方向に摺動すると、ロッド50の凹部53上に、係止爪67の張出部70が位置した状態が保持されつつ、ピストン30が摺動する(図18参照)。
そして、図20(c)に示すように、ピストン30が、シリンダ20の閉塞部21から所定距離以上離れる方向に移動すると、拡開部57のテーパ面57aが、各係止爪67の張出部70に当接して徐々に押圧しつつ、係止爪67を外方(シリンダ20の内周面側に近接する方向)に向けて撓ませる。更に、ピストン30が摺動すると、拡開部57,57が張出部70,70を押圧しつつ、拡開部57,57の上に係止爪67が乗り上がるように移動して、係止爪67,67を外方に向けて拡開させる(図17及び図19参照)。
このように、このエアダンパ10bにおいては、ピストン30が、シリンダ20の閉塞部21に当接した状態では、拡開部57は係止爪67の張出部70には位置せず、ピストン30が、シリンダ20の閉塞部21から所定距離以上離れる方向に摺動すると、拡開部57が張出部70を押圧して、係止爪67を拡開させるように構成されている。
なお、この実施形態においては、ピストン30との連結部分の近傍に、ロッド50の拡開部57を設けたが、この拡開部57の形成位置は、任意の位置とすることができる。例えば、拡開部57を、ロッド50の先端側に近い位置まで延ばせば、拡開部57と係止爪67の張出部70とが接触する位置を、キャップ60に近づけることができる。この場合には、拡開部57が張出部70を押圧して、係止爪67を拡開させるために必要な、ピストン30の、シリンダ20の閉塞部21からの所定距離を短くすることができる。
また、この実施形態においては、図18に示すように、ロッド50の拡開部57が、係止爪67の張出部70に位置していない状態で、弾性壁部68の自由端側の表面68aと、シリンダ20の内周面との間に、空隙Cが形成されている。
更に図19に示すように、ロッド50の拡開部57によって、張出部70が押圧され、係止爪67が拡開された状態では、前記空隙Cは幅狭になるものの、弾性壁部68の表面68aがシリンダ20の内周面には当接せず、空隙Cの所定幅は維持されるように構成されている。
なお、この実施形態においては、拡開部57が係止爪67の張出部70に位置していない状態(図18参照)から、拡開部57で張出部70が押圧され、係止爪67が拡開された状態(図19参照)に至るまで、弾性壁部68の一端側(固定端側)の表面と、シリンダ20の内周面との間にも、所定隙間が設けられている。
そして、この実施形態においては、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21に当接した状態から(図20(a)参照)、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21から離れる方向に摺動し(図20(b)参照)、更に、ピストン30が、シリンダ20の閉塞部21から所定距離以上離れる方向に摺動すると(図20(c)参照)、図17及び図19に示すように、ロッド50の拡開部57,57が、係止爪裏側の張出部70,70を押圧して、係止爪67,67を外方(シリンダ20の内周面側)に向けて拡開させる。その結果、係止爪67の係合突起69が、シリンダ20の係合孔22aに入り込む量(ラップ代)を、図18に示すような係合爪67が拡開されていない場合に比べて、増大させることができ、キャップ60がシリンダ20の開口部22から抜け外れてしまうことを、より確実に防止することができる。
また、ロッド50の拡開部57が、係止爪裏側の張出部70を押圧して、係止爪67を外方に撓ませて拡開させながら、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21から離れる方向に摺動するため、係止爪67の弾性復帰力(拡開前の形状に戻ろうとする反力)によって、係止爪67の張出部70とロッド50の拡開部57との間に摩擦力が生じることとなり、流通路を狭めることによる制動力付与手段に加えて、ピストン30に制動力を付与することができる。
ところで、このエアダンパにおいては、キャップ60の差込部65を、シリンダ20の開口部22に差し込むと、係止爪67の弾性壁部68が撓み、係合突起69が、シリンダ20の係合孔22aに至ると、弾性壁部68が弾性復帰して、係合突起69が係合孔22aに係合することで、シリンダ20の開口部22にキャップ60が取付けられるようになっているが、シリンダ20の開口部22に対して、キャップ60の差込部65が斜めに差し込まれたり、或いは、寸法精度が低かったりする場合には、係止爪67の弾性壁部68がうまく弾性復帰せずに、係合突起69が係合孔22aにしっかりと係合しないおそれがあった。
この実施形態においては、キャップ60をシリンダ20の開口部22に差し込むと、ロッド50の拡開部57によって、係止爪67を確実に拡開させて、その係合突起69をシリンダ20の係合孔22aにしっかりと入り込ませて係合させることができるので、キャップ60の、シリンダ20の開口部22に対する装着不良を確実に防止することができる。
また、この実施形態においては、図18に示すように、ロッド50の拡開部57が、係止爪67の張出部70に位置していない状態で、弾性壁部68の表面68aとシリンダ20の内周面との間に、空隙Cが形成されている。そのため、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21から離れる方向に摺動した後、ロッド50の拡開部57が係止爪裏側の張出部70を押圧して、係止爪67を拡開させる前に、係止爪67の弾性壁部68の表面が、シリンダ20の内周面に当接せず、それらによる摩擦力が生じないため、ピストン30をスムーズに摺動させることができる。
更に、この実施形態においては、係止爪67の弾性壁部68の表面68aとシリンダ20の内周面との間に形成された空隙Cは、ロッド50の拡開部57によって、係止爪67が拡開される前の状態(図18参照)、及び、係止爪67が拡開された状態においても(図19参照)、所定幅は維持されるように構成されているので、流通路を狭めることによる制動力付与手段以外には、係止爪67の弾性復帰力によってのみ、ピストン30に制動力を付与することができ、また、その制動力も調整しやすくすることができる(弾性壁部68の表面68aがシリンダ20の内周面に当接すると、その部分で摩擦力が生じ、ピストン30の制動力を調整しにくくなる)。
また、この実施形態においては、図18に示すように、張出部70は、係止爪67が撓む際の基点となる先端側とは反対側であって、撓みやすい自由端側の裏側に形成されているので、ピストン30が摺動して、ロッド50の拡開部57が張出部70を押圧して係止爪67を拡開させる際に、係止爪67を拡開させやすくすることができ、また、係止爪67の自由端側は、係止爪67の弾性復帰力も作用しやすいので、ピストン30の制動力をより高めることができる。
図21には、本発明のエアダンパの、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
図21に示すように、この実施形態のエアダンパ10cは、第1実施形態及び第3実施形態と同様に、シリンダ20は、長軸及び短軸を有する断面形状をなし、長軸方向に沿って伸びる直線状壁部25に係合孔22aが形成されている。
また、係止爪67を構成する弾性壁部68の自由端側の表面68bは、前記第3実施形態とは異なり、平坦な面となっている。そして、ロッド50の拡開部57が、係止爪67の張出部70に位置していない状態で、弾性壁部68の自由端側の表面68bと、シリンダ20の内周面とが当接するように構成されている。
更に、この実施形態においては、図21に示すように、シリンダ20の内周面の、係止爪67の弾性壁部68との当接部28の板厚は、該当接部68以外の内周面の板厚よりも薄く形成されている。なお、このシリンダ20の当接部28の薄肉構造については、長軸及び短軸を有する断面形状を有するシリンダに限定されるものではない。
この実施形態においては、次のような作用効果を奏する。
すなわち、シリンダ20の壁部が、長軸及び短軸を有する断面形状をなしてる場合、長軸側の直線状壁部25が、成形条件等の影響によって変形しやすくなるため(図9等参照)、シリンダ20の閉塞部21とピストン30とで囲まれる内部空間S1にバラツキが生じやすく、円形断面のシリンダを有するものと比べて、ピストン30の制動力が低くなりやすい傾向にあった。
これに対して、この実施形態のエアダンパ10cにおいては、ロッド50の拡開部57が、係止爪67の張出部70に位置していない状態で、弾性壁部68の表面68bとシリンダ20の内周面とが当接しているので、シリンダ20の直線状壁部25が変形しても、係止爪67の弾性壁部68の表面68bとシリンダ20の内周面とが当接することによる摩擦力が発生するため、ピストン30の制動力を高めることができる。
また、図21に示すように、シリンダ20の内周面の、係止爪67の弾性壁部68との当接部28の板厚は、該当接部68以外の内周面の板厚よりも薄く形成されているので、弾性壁部68の表面68bとシリンダ内周面との間の摩擦力により生じるピストン30の制動力を、高くなりすぎず適度なものとすることができる。
図22には、本発明のエアダンパの、第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
図22に示すように、この実施形態のエアダンパ10dは、第3実施形態及び第4実施形態とは、係止爪を押し広げる拡開部の構造が異なっている。
すなわち、このエアダンパ10dの拡開部58は、ロッド50の両側面(シリンダ20の直線状壁部25,25側で、かつ、キャップ60の係止爪67、67が形成された面側)において、ロッド50の軸方向に沿って所定長さで伸びるリブ状をなしている。更にこの拡開部58の外面側には、その軸方向に沿って凹部及び凸部が交互に連続的に形成されてなる凹凸部58aが設けられている。
そして、ピストン30がシリンダ20の閉塞部21から離れる方向又は近接する方向に摺動する際に、凹凸部58aの複数の凹部に、係止爪裏側の張出部70に間欠的に嵌合するようになっている。したがって、シリンダ20の閉塞部21から、ピストン30がどの程度の距離、摺動したかどうかについて、クリック感を伴って把握することができる。