JP2016007306A - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents

Abstract

【課題】飛距離が増大し、ソフトな打感が得られると共に、割れ耐久性の低下を防ぐことができるゴルフボールの提供。【解決手段】センターコア１ａに包囲層１ｂを被覆してなるコア１と、カバー３と、これらの間に配置される中間層２とを具備し、センターコア1ａ及び包囲層１ｂが弾性体からなり、センターコア1ａの半径ｒ（ｍｍ）が５≦ｒ≦１５を満し、コア１の断面硬度（ＪＩＳ−Ｃ硬度）が、（１）コア中心とコア中心から（ｒ−２）ｍｍ地点までの任意の２点の硬度差が２以下、（２）コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈr+1と、コア中心から（ｒ−１）ｍｍ地点の硬度Ｈr-1が、１０≦Ｈr+1−Ｈr-1≦３５、（３）コア表面から２ｍｍ地点の硬度ＨR-2と、コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈr+1とが、０≦ＨR-2−Ｈr+1≦７、及び（４）コア表面硬度（ＨR）とコア中心硬度（Ｈ0）との差が、２０≦ＨR−Ｈ0≦４０である。【選択図】図１

Description

本発明は、センターコアに包囲層を被覆したコアの周囲に、中間層及びカバーを形成したマルチピースソリッドゴルフボールに関する。

従来、飛距離を増大させ、かつ打感を良好なものにするために、ゴルフボールの構造を多層化する工夫がなされており、その後も低スピン化、高初速化、及び打感の更なる改良等を目的に、３層以上の層を有する多層構造のゴルフボールが種々提案されている。

そして、現在、プロゴルファーや上級のアマチュアゴルファーの間では、優れた飛び性能とコントロール性とを併せ持つボールとして、軟らかめのカバーと、該カバーよりも比較的硬めのアイオノマー素材で形成された中間層と、ゴム素材で形成された１層もしくは２層構造のソリッドコアとを具備するゴルフボールが広く使用されている。このようなボールは、軟らかめのカバーによってショートゲームでの高いコントロール性を発揮し、該カバーの内側に硬く高反発なアイオノマー素材の層を組み合わせることにより、ドライバーでのフルショット時の過度なスピンを抑制すると共に高い反発性を得ている。

上記のようなゴルフボールは、これまでにも様々なものが提案されており、例えば、米国特許第６０７１２０１号明細書、米国特許第６２５４４９５号明細書、米国特許第６２７１２９６号明細書、米国特許第６３９４９１２号明細書、米国特許第６４３１９９８号明細書、米国特許第６６０５００９号明細書、米国特許第６６８８９９１号明細書、米国特許第６７５６４３６号明細書、米国特許第６８２４４７７号明細書、米国特許第６８９４０９８号明細書、米国特許第６９３９９０７号明細書、米国特許第６９６２５３９号明細書、米国特許第６９８８９６２号明細書、米国特許第７０４１００９号明細書、米国特許第７１２５３４８号明細書、米国特許第７１５７５１２号明細書、米国特許第７２３００４５号明細書、米国特許第７２８５０５９号明細書、米国特許第７６４１５７１号明細書、米国特許第７６５２０８６号明細書、特開２０１２−４０３７６号公報、特開２０１２−４５３８２号公報、米国特許第７６４８４２７号明細書等を例示することができる。

このように、プロゴルファーや上級のアマチュアゴルファーの間では、自身の技術レベルに見合った性能を発揮できるゴルフボールに対する需要が大きい。従って、より多くのゴルファーが満足できる飛び性能、コントロール性、打感及び耐久性を兼ね備えたゴルフボールを開発することは、ゴルファーの裾野を広げるためには重要である。

更には、米国特許出願公開第２０１４／００１８１９１号明細書、米国特許出願公開第２０１４／０１０００５９号明細書、特開２０１３−２３０３６１号公報、特開２０１３−２３０３６２号公報、及び特開２０１３−２３０３６３号公報、特開２０１１−２１７８５７号公報、及び特開２０１１−１３６０２１号公報等には、マルチピースソリッドゴルフボールにおいて、コアの断面硬度分布を特定化した技術が種々提案されている。しかし、これらのゴルフボールの性能を更に改善すべく、コア硬度、中間層の厚さ、硬度、材料等を全体的で適正化した提案が求められる。

米国特許第６０７１２０１号明細書 米国特許第６２５４４９５号明細書 米国特許第６２７１２９６号明細書 米国特許第６３９４９１２号明細書 米国特許第６４３１９９８号明細書 米国特許第６６０５００９号明細書 米国特許第６６８８９９１号明細書 米国特許第６７５６４３６号明細書 米国特許第６８２４４７７号明細書 米国特許第６８９４０９８号明細書 米国特許第６９３９９０７号明細書 米国特許第６９６２５３９号明細書 米国特許第６９８８９６２号明細書 米国特許第７０４１００９号明細書 米国特許第７１２５３４８号明細書 米国特許第７１５７５１２号明細書 米国特許第７２３００４５号明細書 米国特許第７２８５０５９号明細書 米国特許第７６４１５７１号明細書 米国特許第７６５２０８６号明細書 特開２０１２−４０３７６号公報 特開２０１２−４５３８２号公報 米国特許第７６４８４２７号明細書 米国特許出願公開第２０１４／００１８１９１号明細書 米国特許出願公開第２０１４／０１０００５９号明細書 特開２０１３−２３０３６１号公報 特開２０１３−２３０３６２号公報 特開２０１３−２３０３６３号公報 特開２０１１−２１７８５７号公報 特開２０１１−１３６０２１号公報

本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、飛距離が増大し、ソフトな打感が得られると共に、割れ耐久性の低下を防ぐことができるマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。

本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、センターコアに包囲層を被覆してなるコアと、表面に多数にディンプルを有するカバーと、これらの間に配置される少なくとも１層以上の中間層とを具備するマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記センターコア及び包囲層が弾性体からなり、該センターコアの半径ｒ（ｍｍ）が５≦ｒ≦１５を満たすと共に、コアの断面硬度（ＪＩＳ−Ｃ硬度）を下記の条件（１）〜（４）により特定化することにより、飛距離が増大し、ソフトな打感が得られると共に、割れ耐久性の低下を防ぐことができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
条件（１）：コア中心と、コア中心から（ｒ−２）ｍｍ地点までの任意の２点の硬度差が２以下であること
条件（２）：コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1と、コア中心から（ｒ−１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r-1が、１０≦Ｈ_r+1−Ｈ_r-1≦３５であること
条件（３）：コア表面から内側に２ｍｍ地点の硬度Ｈ_R-2と、コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1とが、０≦Ｈ_R-2−Ｈ_r+1≦７であること
条件（４）：コア表面硬度（Ｈ_R）とコア中心硬度（Ｈ₀）との差が、２０≦Ｈ_R−Ｈ₀≦４０であること

従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
〔１〕センターコアに包囲層を被覆してなるコアと、表面に多数のディンプルを有するカバーと、これらの間に配置される少なくとも１層以上の中間層とを具備するマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記センターコア及び包囲層が弾性体からなり、該センターコアの半径ｒ（ｍｍ）が５≦ｒ≦１５を満たすと共に、コアの断面硬度（ＪＩＳ−Ｃ硬度）が下記の条件（１）〜（４）を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
（１）コア中心と、コア中心から（ｒ−２）ｍｍ地点までの任意の２点の硬度差が２以下であること
（２）コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1と、コア中心から（ｒ−１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r-1が、１０≦Ｈ_r+1−Ｈ_r-1≦３５であること
（３）コア表面から内側に２ｍｍ地点の硬度Ｈ_R-2と、コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1とが、０≦Ｈ_R-2−Ｈ_r+1≦７であること
（４）コア表面硬度（Ｈ_R）とコア中心硬度（Ｈ₀）との差が、２０≦Ｈ_R−Ｈ₀≦４０
であること
〔２〕上記センターコアの主材料が熱可塑性エラストマーであり、上記包囲層の主材料がゴム組成物である〔１〕記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔３〕上記センターコアの主材料が熱可塑性ポリエステルエラストマー又は熱可塑性ポリウレタンエラストマーである〔２〕記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔４〕上記コア中心硬度（Ｈ₀）が、５０≦Ｈ₀≦７０を満たす〔１〕〜〔３〕のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔５〕上記中間層の厚さをＴ_i（ｍｍ）、その材料硬度をＨ_i（ショアＤ）としたとき、８０≦Ｔ_i×Ｈ_i≦２００を満たす〔１〕〜〔４〕のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔６〕中間層がＮ層の複数層からなり、第１中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i１，Ｈ_i１、第２中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i２，Ｈ_i２、第Ｎ番目の中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_iＮ，Ｈ_iＮとするとき、第１層から第Ｎ番目までの層における各層の厚さと材料硬度との積の総和について下記式を満たす〔１〕〜〔４〕のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
１００≦（Ｔ_i１×Ｈ_i１）＋（Ｔ_i２×Ｈ_i２）＋・・・・（Ｔ_iＮ×Ｈ_iＮ）≦１８０
〔７〕上記中間層の主材料が熱可塑性樹脂である〔１〕〜〔６〕のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔８〕上記中間層が多層からなり、このうち、少なくとも一組の隣り合う層が同種の熱可塑性樹脂からなる〔７〕記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔９〕中間層の主材料である熱可塑性樹脂がアイオノマーである〔７〕記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔１０〕上記カバーの主材料が熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である〔１〕〜〔９〕のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔１１〕上記カバーの主材料が、アイオノマー，ポリウレタン及びポリウレアの群から選ばれる〔１０〕記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔１２〕ボールの表面硬度（ＪＩＳ−Ｃ硬度）をＨ_bとするとき、６０≦Ｈ_b≦１００を満たす〔１〕〜〔１１〕のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。

本発明のマルチピースソリッドゴルフボールによれば、ドライバー（Ｗ＃１）でのフルショット時における優れた飛び性能と、ソフトな打感と、割れ耐久性の低下を防ぐことができる。

本発明のマルチピースソリッドゴルフボールの構造の一例を示す概略断面図である。 実施例のボール表面に形成されたディンプルの配列を表した平面図である。

以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、センターコアに包囲層を被覆してなるコアと、表面に多数にディンプルを有するカバーと、これらの間に配置される少なくとも１層以上の中間層とを具備してなる。図１に本発明のマルチピースソリッドゴルフボールの断面構造の一例を示す。ここに示されたゴルフボールＧは、センターコア１ａと、該センターコアを被覆する包囲層１ｂと、該包囲層を被覆する中間層２と、該中間層を被覆するカバー３とを有する４層構造を有する。なお、ボール表面には多数のディンプルＤを有する。以下、これらの各層について詳述する。

先ず、本発明におけるコアは、上述した通り、センターコア及び包囲層を有する。上記センターコアの半径ｒは、５ｍｍ以上、１５ｍｍ以下である。この半径ｒの下限値として、好ましくは８ｍｍ以上、より好ましくは１０ｍｍ以上であり、上限値として、好ましくは１４ｍｍ以下、より好ましくは１２ｍｍ以下である。該センターコアの半径が小さすぎると、フルショット時にスピン量が多くなりすぎて飛距離が出なくなることがある。一方、その半径が大きすぎると、繰り返し打撃時の耐久性が悪くなったり、打感が硬くなりすぎたり、ボール全体としての反発性が不足して飛距離が出なくなることがある。

上記センターコアの材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアＤ硬度で好ましくは１０以上、より好ましくは２０以上、更に好ましくは２７以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、ショアＤ硬度で好ましくは５０以下、より好ましくは４７以下、更に好ましくは４０以下とすることができる。上記材料硬度が低すぎると、反発性が低くなりすぎて飛距離が伸びなくなったり、打感が軟らかくなりすぎたり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。一方、上記材料硬度が高すぎると、スピン量が増えすぎて飛距離が伸びなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。

上記センターコアは弾性体からなり、特に、反発性が高く、優れた飛び性能を得る観点から、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、オレフィン系、スチレン系よりなる群から選択される１種又は２種以上の熱可塑性エラストマーを主材として形成されることが好ましい。上記の熱可塑性エラストマーは、市販品を使用することができ、具体的には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして「ハイトレル」（東レ・デュポン社製）、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとして「ペバックス」（東レ社製）、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとして「パンデックス」（ディーアイシーバイエルポリマー社製）、オレフィン系熱可塑性エラストマーとして「サントプレーン」（モンサント社製）、スチレン系熱可塑性エラストマーとして「タフテック」（旭化成工業社製）等を挙げることができる。

本発明では、成形性と反発性の観点から、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが好ましく、その中でも特にポリエーテルエステルエラストマーを好適に使用することができる。上記ポリエーテルエステルエラストマーの市販品としては、東レ・デュポン社製の「ハイトレル３０４６」、「ハイトレル４０４７」等を例示することができる。また、本発明では、熱可塑性ポリウレタンエラストマーも好適に用いることができ、市販品として、ディーアイシーバイエルポリマー社製の「パンデックス」等を採用することができる。

また、上記センターコアには比重の調整及び耐久性を上げる観点から、充填剤を添加することができる。更に、このセンターコア形成用の材料には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。

上記センターコアの比重は、特に制限されるものではないが、好ましくは０．９０超、より好ましくは１．００以上、更に好ましくは１．０５以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは１．３０未満、より好ましくは１．２５以下、更に好ましくは１．２０以下とすることができる。上記の比重が大きすぎると、センターコアの反発性が低くなり、飛距離が出なくなることがある。一方、上記の比重が小さすぎると、反発性が低くなったり、繰り返し打撃時の耐久性が悪くなることがある。

上記センターコアを成形する方法としては、特に制限されるものではないが、射出成形法等の公知の方法を用いることができ、センターコア成形用金型のキャビティ内に所定の材料を射出する方法を好適に採用できる。

次に、包囲層について説明する。上記包囲層は上記センターコアの周囲に形成される層である。

上記包囲層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは３ｍｍ以上、より好ましくは４ｍｍ以上、更に好ましくは５ｍｍ以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは１０ｍｍ以下、より好ましくは９ｍｍ以下、更に好ましくは８ｍｍ以下とすることができる。上記の包囲層が薄すぎると、反発性が低くなり飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。一方、包囲層が厚すぎると、フルショット時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなったり、フルショット時の打感が硬くなりすぎることがある。

また、上記のセンターコア及び包囲層を形成したコア全体の直径は、特に制限されるものではないが、好ましくは３０ｍｍ以上、より好ましくは３４ｍｍ以上、更に好ましくは３５ｍｍ以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは４０ｍｍ以下、より好ましくは３９ｍｍ以下とすることができる。コア全体の直径が上記の範囲を外れるとフルショット時にスピンがかかりすぎて飛距離が出なくなることがある。

上記の包囲層は弾性体からなり、特に、ゴム組成物を用いて形成されることが好適に採用される。本発明における包囲層としては、特に、反発性が高く、優れた飛び性能を得る観点から、後述するポリブタジエンを基材ゴムとするゴム組成物を用いて形成することが好ましい。

上記ポリブタジエンは、特に制限されるものではないが、そのポリマー鎖中に、シス−１，４−結合を９０質量％以上、より好ましくは９５質量％以上有するものであることが推奨される。分子中の結合に占めるシス−１，４−結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。

上記ポリブタジエンは、特に制限されるものではないが、反発性を向上させる観点から、基材ゴム中に７０質量％以上含有することが好ましく、より好ましくは８０質量％以上、更に好ましくは９０質量％以上含有することが推奨される。

なお、上記ポリブタジエン以外のゴムを本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。具体例としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。これらは１種を単独で又は２種以上を組み合わせて使用することができる。

上記の基材ゴムに対して、後述する共架橋剤、有機過酸化物、老化防止剤、不活性充填剤及び有機硫黄化合物等の添加剤を適宜配合することができる。

共架橋剤としては、例えば不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。

不飽和カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸及びメタクリル酸を好適に使用し得る。

また、不飽和カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば上記の不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等を例示することができ、特にアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。

上記共架橋剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記基材ゴム１００質量部に対し、１０質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは２０質量部以上、更に好ましくは３０質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、好ましくは６０質量部以下、より好ましくは５０質量部以下、更に好ましくは４５質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると、打感が硬くなりすぎる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。

有機過酸化物としては市販品を用いることができ、例えば、「パークミルＤ」、「パーヘキサＣ−４０」、「パーヘキサ３Ｍ」（日油社製）、「Ｌｕｐｅｒｃｏ ２３１ＸＬ」（アトケム社製）等を好適に用いることができる。これらは１種を単独で用いても、２種以上を併用してもよい。

上記有機過酸化物の配合量は、特に制限されるものではないが、上記基材ゴム１００質量部に対し、好ましくは０．１質量部以上、より好ましくは０．３質量部以上、更に好ましくは０．５質量部以上、最も好ましくは０．７質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、好ましくは５質量部以下、より好ましくは４質量部以下、更に好ましくは３質量部以下、最も好ましくは２質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な打感、耐久性及び反発性を得ることができない場合がある。

老化防止剤としては市販品を用いることができ、例えば、「ノクラックＮＳ−６」、「ノクラックＮＳ−３０」（大内新興化学工業社製）、「ヨシノックス４２５」（吉富製薬社製）等が挙げられる。これらは１種を単独で用いてもよいし、２種以上を併用してもよい。

上記老化防止剤の配合量は、０超とすることができ、好ましくは上記基材ゴム１００質量部に対して０．０５質量部以上、より好ましくは０．１質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは３質量部以下、より好ましくは２質量部以下、更に好ましくは１質量部以下、最も好ましくは０．５質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な反発性、耐久性を得ることができない場合がある。

不活性充填剤としては、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは１種を単独で用いてもよいし、２種以上を併用してもよい。

上記不活性充填剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記基材ゴム１００質量部に対し、好ましくは１質量部以上、より好ましくは５質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、好ましくは５０質量部以下、より好ましくは４０質量部以下、更に好ましくは３０質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正な重量とならなかったり、好適な反発性を得ることができない場合がある。

更に、上記ゴム組成物には、ゴルフボールの反発性を向上させるため、有機硫黄化合物を配合することが好ましい。該有機硫黄化合物としては、ゴルフボールの反発性を向上させ得るものであれば特に制限されないが、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩等を好適に用いることができる。より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ペンタフルオロチオフェノールの亜鉛塩、ペンタブロモチオフェノールの亜鉛塩、パラクロロチオフェノールの亜鉛塩、硫黄数が２〜４のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等を挙げることができる。本発明では、これらの中でも特にペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩やジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。

上記有機硫黄化合物の配合量は、特に制限されるものではないが、上記基材ゴム１００質量部に対し、好ましくは０．０５質量部以上、より好ましくは０．１質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、好ましくは５質量部以下、より好ましくは３質量部以下、更に好ましくは２．５質量部以下とすることができる。配合量が少なすぎると、十分な反発性向上の効果を得ることができない場合がある。配合量が多すぎると、反発性（特に、Ｗ♯１による打撃時）の向上効果が頭打ちとなるため、それ以上の効果が期待できなくなり、更には、コアが軟らかくなりすぎたり、打感が悪くなる場合がある。

上記包囲層の比重は、特に制限されるものではないが、１．３５以下とすることが好ましく、より好ましくは１．３０以下、更に好ましくは１．２５以下とすることができる。一方、上記比重の下限も特に制限されないが、好ましくは１．０以上とすることができ、より好ましくは１．１０以上、更に好ましくは１．１５以上とすることができる。上記の比重が大きすぎると、反発性が低くなり飛距離が出なくなることがある。一方、上記の比重が小さすぎると、狙いの硬さにするのが困難になったり、また、反発性が低くなり飛距離が出なくなることがある。

上記包囲層を形成する方法としては、公知の方法を採用し得、特に制限されるものではないが、以下の方法を好適に採用し得る。まず、所定の金型に包囲層形成用材料を入れ、一次加硫（半加硫）して一対の半球殼状のハーフカップを作製する。次いで、予め作製したセンターコアを前記で作製したハーフカップで包んだ状態で二次加硫（全加硫）を行う。即ち、加硫工程を２段階に分けた方法を好適に採用し得る。また、センターコアの周囲に包囲層形成用材料を射出して成形する方法も好適に採用できる。

ここで、本発明におけるコアの硬度分布について以下に説明する。
本発明では、コア（即ち、センターコア＋包囲層）において、コアの断面硬度（ＪＩＳ−Ｃ硬度）が条件（１）〜（４）を満たすことを要する。

条件（１）は、コア中心と、コア中心から（ｒ−２）ｍｍ地点までの任意の２点の硬度差がＪＩＳ−Ｃ硬度で２以下である。この条件（１）に設定したコアにおいては、コア中心付近の硬度傾斜がほぼ平らな状態となり、フルショット時に低スピン効果を十分に奏し、ソフトな打感及び割れ耐久性も良好に得られるものである。上記硬度差は、好ましくはＪＩＳ−Ｃ硬度で１．５以下であり、より好ましくは１以下である。この条件の硬度差の上限値を超えると、十分な低スピン効果が得られず所望の飛距離が出ないおそれがある。

ここで、コア中心硬度（Ｈ₀）については、特に制限されるものではないが、ＪＩＳ−Ｃ硬度で好ましくは５０以上、より好ましくは５２以上、更に好ましくは５５以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、ＪＩＳ−Ｃ硬度で７０以下、好ましくは６８以下、より好ましくは６５以下とすることができる。上記中心硬度が低すぎると、反発性が低くなりすぎて飛距離が伸びなくなったり、打感が軟らかくなりすぎたり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。一方、上記中心硬度が高すぎると、スピン量が増えすぎて飛距離が伸びなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。

条件（２）は、コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1と、コア中心から（ｒ−１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r-1が、１０≦Ｈ_r+1−Ｈ_r-1≦３５である。この条件（２）に設定したコアにおいては、センターコアと包囲層との境界で急に硬度が上がることになり、フルショット時に低スピン効果を十分に奏し、ソフトな打感及び割れ耐久性も良好に得られるものである。Ｈ_r+1−Ｈ_r-1の値の下限値は、ＪＩＳ−Ｃで、好ましくは１２以上であり、より好ましくは１５以上であり、上限値として、好ましくは３０以下、さらに好ましくは２５以下である。この条件の硬度差の下限値を下回ると、十分な低スピン効果が得られず、所望の飛距離が得られないおそれがあり、上限値を超えると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなるおそれがある。

条件（３）は、コア表面から内側に２ｍｍ地点の硬度Ｈ_R-2と、コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1とが、０≦Ｈ_R-2−Ｈ_r+1≦７である。この条件（３）に設定したコアにおいては、包囲層の部位の硬度傾斜は比較的緩やかなものとなり、フルショット時に低スピン効果を十分に奏し、ソフトな打感及び割れ耐久性も良好に得られるものである。Ｈ_R-2−Ｈ_r+1の値の下限値は、ＪＩＳ−Ｃで、好ましくは１以上であり、より好ましくは１．５以上であり、上限値として、好ましくは５以下、さらに好ましくは３以下である。この条件の硬度差の上限値を超えると、十分な低スピン効果が得られなかったり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が得られないおそれがある。

条件（４）は、コア表面硬度（Ｈ_R）とコア中心硬度（Ｈ₀）との差が、２０≦Ｈ_R−Ｈ₀≦４０である。この条件（４）に設定したコアにおいては、コア全体の硬度差が十分に大きいものとなり、フルショット時に低スピン効果を十分に奏し、ソフトな打感及び割れ耐久性も良好に得られるものである。Ｈ_R−Ｈ₀の値の下限値は、ＪＩＳ−Ｃで、好ましくは２２以上であり、より好ましくは２５以上であり、上限値として、好ましくは３５以下、さらに好ましくは３０以下である。この条件の硬度差の上限値を超えると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、十分な初速が出ず所望の飛距離が出ないおそれがある。

コア表面硬度（Ｈ_R）は、特に制限されるものではないが、ＪＩＳ−Ｃ硬度で、好ましくは７０以上、より好ましくは７５以上、更に好ましくは８０以上とすることができる。また、該表面硬度の上限も特に制限されないが、ＪＩＳ−Ｃ硬度で好ましくは９５以下、より好ましくは９０以下、更に好ましく８８以下とすることができる。上記表面硬度が低すぎると、反発性が低くなったり、フルショット時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記表面硬度が高すぎると、打感が硬くなりすぎたり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。

以下、中間層について詳述する。
中間層の厚さ（複数層の場合は各層の厚さ）は特に制限されるものではないが、後述するカバーよりも厚く形成することが推奨される。より具体的には、０．５ｍｍ以上とすることが好ましく、より好ましくは０．８ｍｍ以上、更に好ましくは１．０ｍｍ以上とすることが推奨される。また、その上限値も特に制限されないが、好ましくは２．５ｍｍ以下、より好ましくは２．０ｍｍ以下、更に好ましくは１．５ｍｍ以下とすることができる。中間層の厚さが、上記範囲よりも厚くなったり、後述するカバーの厚さより薄くなったりした場合、ドライバー（Ｗ＃１）でのフルショット時に、低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。また、中間層の厚さが薄すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性や低温時の耐久性が悪くなることがある。

中間層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアＤ硬度で好ましくは４０以上、より好ましくは４５以上、更に好ましくは５０以上とすることができる。また、該材料硬度の上限も特に制限されないが、ショアＤ硬度で好ましくは７０以下とすることができ、より好ましくは６８以下、更に好ましくは６５以下とすることができる。中間層の硬度が低すぎると、フルショット時にスピンがかかりすぎて飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度が高すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、パターやショートアプローチ実施時の打感が硬くなりすぎることがある。

本発明では、中間層の厚さをＴ_i（ｍｍ）、その材料硬度をＨ_i（ショアＤ）としたとき、８０≦Ｔ_i×Ｈ_i≦２００を満たすことが好適である。Ｔ_i×Ｈ_iは、中間層の剛性指数（ｍｍ・ショアＤ）を示すものであり、上記範囲を満たす中間層を用いると、高い反発性を確保し、フルショットのスピンを低減することができ、飛距離が良好に得られると共に、繰り返し打撃時の割れ耐久性も優れ、過酷な使用条件においても耐え得るボールを提供することができる。Ｔ_i×Ｈ_iの値の下限値としては、より好ましくは１００以上であり、更に好ましくは１２０以上である。また、Ｔ_i×Ｈ_iの値の上限値として、より好ましくは１８０以下であり、更に好ましくは１７０以下である。

また、中間層が２層以上に形成される場合、第１中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i１，Ｈ_i１、第２中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i２，Ｈ_i２とし、第Ｎ番目の中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_iＮ，Ｈ_iＮとしたとき、第１層から第Ｎ番目までの層における各層の厚さと材料硬度との積の総和〔（Ｔ_i１×Ｈ_i１）＋（Ｔ_i２×Ｈ_i２）＋・・・・（Ｔ_iＮ×Ｈ_iＮ）〕について下記式
１００≦（Ｔ_i１×Ｈ_i１）＋（Ｔ_i２×Ｈ_i２）＋・・・・（Ｔ_iＮ×Ｈ_iＮ）≦１８０を満たすことが好適である。

上記中間層を形成する材料には、特に制限されるものではないが、各種の熱可塑性樹脂を使用することが好適であり、より好適な材料は、アイオノマー樹脂を使用することである。アイオノマー樹脂としては、市販品を使用することができ、具体的には、ハイミラン１６０５、ハイミラン１６０１及びＡＭ７３１８（いずれも三井デュポンポリケミカル社製）、サーリン８１２０（Ｄｕｐｏｎｔ社製）等のナトリウム中和型アイオノマー樹脂やハイミラン１５５７、ハイミラン１７０６及びＡＭ７３１７（いずれも三井デュポンポリケミカル社製）等の亜鉛中和型アイオノマー樹脂、Ｄｕｐｏｎｔ社製の商品名「ＨＰＦ １０００」「ＨＰＦ ２０００」、「ＨＰＦ ＡＤ１０２７」、実験用「ＨＰＦ ＳＥＰ１２６４−３」等を挙げることができる。これらは１種を単独で又は２種以上併用することができる。

上記のアイオノマー樹脂は、１種を単独で又は２種以上を組み合わせて使用することができる。本発明では、反発性を向上させる観点から、特にＺｎ中和型アイオノマー樹脂とＮａ中和型アイオノマー樹脂とを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、Ｚｎ中和型アイオノマー樹脂及びＮａ中和型アイオノマー樹脂の配合比は、特に制限されるものではないが、質量比で通常２５：７５〜７５：２５、好ましくは３５：６５〜６５：３５、更に好ましくは４５：５５〜５５：４５とすることができる。この配合比が、上記の範囲から外れた場合、反発性が低くなりすぎて所望の飛び性能が得られなかったり、常温での繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、更に低温（零下）での割れ耐久性が悪くなることがある。

なお、上記中間層が多層からなる場合、このうち、少なくとも一組の隣り合う層が同種の熱可塑性樹脂からなることが好適であり、特に上述したアイオノマー樹脂から採用することが好適である。

更に、この中間層形成用の材料には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。

上記中間層の比重は、特に制限されるものではないが、１．２０未満とすることが好ましく、より好ましくは１．１以下、更に好ましくは１．００以下とすることができる。一方、上記比重の下限は、好ましくは０．８０以上とすることができ、より好ましくは０．９０以上とすることができる。中間層の比重が、上記の範囲を逸脱すると反発性が低くなり、飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。

上記中間層を形成する方法は、特に制限されるものではないが、公知の方法を採用し得、例えば、上記包囲層の周囲に中間層形成用材料を射出して成形する方法や、予め中間層形成用材料で一対の半球殼状のハーフカップを作製し、これらハーフカップで中間製品（ここでは、センターコアの周囲に包囲層が形成された球体）を包み、１４０〜１８０℃で２〜１０分間加圧加熱成形する方法等を採用することができる。

次に、カバーについて説明する。
上記カバーの表面硬度（本発明ではボールの表面硬度）Ｈ_bは、ＪＩＳ−Ｃ硬度で、好ましくは６０以上、より好ましくは７０以上、更に好ましくは７５以上とすることができる。また、該表面硬度の上限は、特に制限されないが、ＪＩＳ−Ｃ硬度で、好ましくは１００以下、より好ましくは９５以下、更に好ましくは９０以下とすることができる。カバーの表面硬度が低すぎると、フルショット時にスピンがかかりすぎて飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度が高すぎると、アプローチショットでスピンがかからずにプロゴルファーや上級のアマチュアゴルファーでもコントロール性が不足することがある。

カバーの厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは０．３ｍｍ以上、より好ましくは０．５ｍｍ以上、更に好ましくは０．７ｍｍ以上とすることができる。また、その上限値も特に制限されないが、好ましくは１．５ｍｍ以下、より好ましくは１．２ｍｍ以下、更に好ましくは１．０ｍｍ以下とすることができる。カバーが厚すぎると、ドライバー（Ｗ＃１）打撃時に反発性が足りなくなったり、スピン量が多くなったりし、その結果として飛距離が伸びなくなる場合がある。逆に、カバーが薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなったり、プロゴルファーや上級のアマチュアゴルファーでもコントロール性が不足する場合がある。

上記カバーは、特に制限されるものではなく、公知の各種の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を主材料とすることができ、特に、アイオノマー，ポリウレタン及びポリウレアの群から選ばれるものが好適である。

なお、上述した樹脂配合物、即ち、カバー形成用材料には、必要に応じて、顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、離型剤、可塑剤、無機充填剤（酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等）等の各種添加剤を配合することができる。

上記カバー形成用材料の２１０℃におけるメルトフローレート（ＭＦＲ）は、特に制限はないが、流動性及び生産性を高める点から、５ｇ／１０ｍｉｎ以上であることが好ましく、より好ましくは２０ｇ／１０ｍｉｎ以上、更に好ましくは５０ｇ／１０ｍｉｎ以上である。該材料のメルトフローレートの数値が小さいと流動性が低下してしまい、射出成形時に偏芯の原因となるだけでなく、カバーの厚みの設計自由度が低くなるおそれがある。なお、上記のメルトフローレートの測定値は、ＪＩＳ Ｋ ７２１０−１９９９に準拠した測定値である。

上記カバーを成形する方法としては、例えば、射出成形機に上記のカバー形成用材料を供給し、上記中間層の周囲に溶融した材料を射出する方法を採用することができる。この場合、成形温度は熱可塑性ポリウレタン等の種類によって異なるが、通常１５０〜２５０℃の範囲である。

また、上記カバーを形成する際、特に制限されるものではないが、上記中間層との密着性を高めるために上記中間層（即ち、中間層形成後の球体）の表面に対して予め研磨処理を施したり、プラズマ、コロナ処理等を施すこともできる。更には、研磨処理後の中間層表面にプライマー（接着剤）を塗布する、もしくはカバー形成用材料中に密着強化剤を添加しておくことが好ましい。

本発明のゴルフボールにおいては、更に空力特性を高めて飛距離を増大させるために、通常のゴルフボールと同様にボール（カバー）の表面に多数のディンプルを形成することができる。この場合、ボール表面に形成されるディンプルの個数については、特に制限はないが、好ましくは２８０個以上、より好ましくは３００個以上、更に好ましくは３２０個以上である。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは４００個以下、より好ましくは３８０個以下、更に好ましくは３６０個以下とすることができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり飛距離が出なくなることがある。一方、ディンプルの個数が上記範囲より少なくなると、ボールの弾道が高くなり飛距離が伸びなくなる場合がある。

一方、ディンプルの幾何学的配列としては、８面体、２０面体等が採用でき、更に、ディンプルの形状は、円形のほか、スクウェア型、ヘキサゴン型、ペンタゴン型、トライアングル型等の各種多角形、デュードロップ形、楕円形等の中から１種又は２種以上を適宜選択して使用することができる。ディンプルの直径（多角形においては対角長）は、特に制限されるものではないが、２．５〜６．５ｍｍとすることが好ましい。また、ディンプルの深さについても、特に制限されるものではないが、０．０８〜０．３０ｍｍとすることが好ましい。

また、ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値Ｖ₀は、特に制限されるものではないが、本発明においては０．３５〜０．８０とすることができる。

ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率ＳＲは、特に制限されるものではないが、空気抵抗を低減する観点から６０〜９５％とすることが好ましい。なお、このＳＲは、形成するディンプルの個数を増やすほか、直径の異なる複数種のディンプルを混在させたり、隣接ディンプル間距離（土手幅）が実質的に０になるような形状とすることにより高めることができる。

ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率ＶＲは、特に制限されるものではないが、本発明においては０．６〜１％とすることができる。

本発明においては、上記のＶ₀、ＳＲ及びＶＲを上記範囲とすることにより、空気抵抗を低減すると共に、良好な飛距離が得られる弾道になりやすく、飛び性能を向上させることができる。

上述した各層を形成して得られるゴルフボールの直径は、ゴルフボールの規格に対応するべく、４２．６７ｍｍ以上であることが好ましい。また、その上限値は、特に制限されるものではないが、４４ｍｍ以下とすることが好ましく、より好ましくは４３．８ｍｍ以下、更に好ましくは４３．５ｍｍ以下、最も好ましくは４３ｍｍ以下とすることができる。一方、その重量も、特に制限されるものではないが、同様の理由により４５．０〜４５．９３ｇの範囲とすることが好適である。

なお、本発明では、ゴルフボールのデザイン性や耐久性を向上させるために、ボール（カバー）の表面に下地処理、スタンプ、塗装等の種々の処理を行うことは任意である。

以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。

〔実施例１〜４、比較例１〜５〕
表１および表２に本実施例で用いる材料を示す。表１はゴム組成物を示し、表２は樹脂組成物を示す。これらの表から選ばれる材料を用いてセンターコアを形成した。なお、実施例１〜４、比較例３，４では射出成形法により、比較例１，２及び５ではゴム組成物を調製した後、１５５℃，１５分間の条件で加硫成形することによりセンターコアを形成した。

次に、上記表１に示したゴム組成物を用いて包囲層を形成した。実施例１〜４、比較例１、３〜５では混練ロールを用いてゴム組成物を調製した後、３５℃、３分間で一次加硫（半加硫）して一対の半球殼状のハーフカップを作製した。次いで、得られたハーフカップで上記のセンターコアを包み、金型内で１５５℃、１４分間の条件にて二次加硫（全加硫）することにより包囲層を形成した。なお、比較例２は単層のコアの例であるため、包囲層は形成されていない。

表１に記載したゴム組成物の詳細は下記の通りである。
ポリブタジエンゴム Ａ：ＪＳＲ社製「ＢＲ０１」
ポリブタジエンゴム Ｂ：ＪＳＲ社製「ＢＲ５１」
アクリル酸亜鉛：日本蒸留工業社製
有機過酸化物 Ａ：日油社製「パーヘキサＣ−４０」、１，１−ビス（ｔ−ブチルペルオキシ）シクロヘキサンとシリカとの混合物
有機過酸化物 Ｂ：日油社製「パークミルＤ」、ジクミルパーオキサイド
老化防止剤：大内新興化学工業社製「ノクラック２００」、２，６−ジ−ｔ−ブチル−４−メチルフェノール
酸化亜鉛：堺化学工業社製
硫酸バリウム：堺化学工業株式会社「沈降性硫酸バリウム１００」

表２に記載した樹脂組成物の詳細は下記の通りである。
ハイトレル：東レデュポン社製の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー
ハイミラン：三井デュポンポリケミカル社製のアイオノマー
ＨＰＦ１０００：デュポン社製のアイオノマー
T-8290、T-8283： DIC Bayer Polymer社製の商品名「パンデックス」、MDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン
ポリエチレンワックス：商品名「サンワックス１６１Ｐ」（三洋化成社製）
イソシアネート化合物：４，４'−ジフェニルメタンジイソシアネート

上記で形成した包囲層の周囲に、表２のＮｏ．４、Ｎｏ．５の樹脂材料を用いて射出成形法により中間層を形成した。実施例２，３及び比較例１〜５については、順次、樹脂材料の射出成形を２回行い、包囲層の周囲に内外の２層の中間層を形成した。上記で形成した中間層の周囲に、Ｎｏ．６の樹脂材料を用いて射出成形法によりカバーを形成し、２層構造のコアの周囲に、単層又は２層の中間層及びカバーを備えた４層又は５層構造のマルチピースソリッドゴルフボールを得た。この際、得られた全てボールの表面には、カバーの形成と同時に図２に示した態様のディンプルが形成された。このディンプルの詳細については表３に示した。また、作製したゴルフボールの詳細については表４に示した。

ディンプルの定義
直径： ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
深さ： ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
Ｖ₀ ： ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値
ＳＲ： ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率
ＶＲ： ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率

得られたゴルフボールについて、以下の項目について測定した。その詳細を表４に示す。
〈１〉コアの中心硬度
コアを半分に（中心を通るように）切断して得た断面の中心にＪＩＳ−Ｃ硬度（ＪＩＳ Ｋ ６３０１準拠）の針を垂直に押し当てて測定した。上記の硬度は、いずれも２３℃に温度調整した後の測定値である。
〈２〉コアの各硬度分布
コアを半分に（中心を通るように）切断して得た断面の各測定点にＪＩＳ−Ｃ硬度（ＪＩＳ Ｋ ６３０１準拠）の針を垂直に押し当てて測定した。上記の硬度は、いずれも２３℃に温度調整した後の測定値である。
〈３〉コア（包囲層）、中間層及びカバーの表面硬度
測定対象となる層が形成された段階の中間製品又はボールの表面に対して、ＪＩＳ−Ｃ硬度（ＪＩＳ Ｋ ６３０１準拠）の針を垂直に押し当てて測定した。なお、ボール（カバー）の表面硬度は、ボール表面においてディンプルが形成されない陸部における測定値である。
〈４〉樹脂材料の硬度
各樹脂材料を厚さ２ｍｍのシート状に成形し、２３℃で２週間保存後、厚さ６ｍｍ以上になるように重ねて、ＡＳＴＭ Ｄ２２４０−９５規格に準拠したタイプＤデュロメータを用いて測定した。
〈５〉中間層の剛性指数
剛性指数は、中間層厚さＴｉ（ｍｍ）×中間層硬度Ｈｉ（ショアＤ）の値を意味する。内側中間層及び外側中間層の二層がある場合、内側中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i１，Ｈ_i１、外側中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i２，Ｈ_i２とするとき、（Ｔ_i１×Ｈ_i１）＋（Ｔ_i２×Ｈ_i２）の値を意味する。

そして、上記表４に基づく実施例１〜４、比較例１〜５のゴルフボールについて、以下の項目に従って飛び性能、アプローチ性能及び割れ耐久性を測定及び評価し、その結果を表５に示す。

飛び性能
ゴルフ打撃ロボットにドライバー（Ｗ＃１）を取り付けて、ヘッドスピード４５ｍ／ｓで打撃した時のスピン量、キャリー及びトータル飛距離を測定した。クラブはブリヂストンスポーツ社製「ＴｏｕｒＳｔａｇｅ Ｘ−Ｄｒｉｖｅ ７０７（２０１２モデル）」（ロフト９．５°）を使用した。なお、表中の判定基準は以下の通りである。
○：トータル飛距離２３０ｍ以上
×：トータル飛距離２３０ｍ未満
アプローチスピン性能
ゴルフ打撃ロボットにサンドウェッジ（ＳＷ）を取り付けて、ヘッドスピード２０ｍ／ｓで打撃した時のスピン量を測定した。クラブはブリヂストン社製「ＴｏｕｒＳｔａｇｅ Ｘ−ＷＥＤＧＥ」（ロフト５６°）を使用した。なお、表中の判定基準は以下の通りである。
○：アプローチスピン量６０００ｒｐｍ以上
×：アプローチスピン量６０００ｒｐｍ未満
割れ耐久性
ゴルフ打撃ロボットにドライバー（Ｗ＃１）を取り付けて、ヘッドスピード４５ｍ／ｓにて繰り返し打撃し、ボールが割れ始めた回数を調べた。クラブはブリヂストン社製「ＴｏｕｒＳｔａｇｅ Ｘ−Ｄｒｉｖｅ ７０７（２０１２モデル）」（ロフト９．５°）を使用した。表５には、各実施例及び比較例において、実施例１のボールが割れ始めた回数の平均値（ｎ＝５）を１００（基準値）とした場合の指数を求め、下記基準にて評価した結果を示した。
○：９０以上
△：８０以上９０未満
×：８０未満

表５の結果から、下記の通り比較例は実施例よりも劣ることが確認できる。
比較例１は、コア中心と、コア中心から（ｒ−２）ｍｍ地点までの硬度差が大きく、その結果、ドライバー（Ｗ＃１）でのスピン量が多く、飛距離が出ない。
比較例２は、コアがゴム組成物からなる単層であり、その結果、ドライバー（Ｗ＃１）でのスピン量が多く、飛距離が出ない。
比較例３は、コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1と、コア中心から（ｒ−１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r-1の硬度差（Ｈ_r+1−Ｈ_r-1）の値が大きくなり、その結果、繰り返し打撃時の割れ耐久性が劣る。
比較例４は、コア表面硬度（Ｈ_R）とコア中心硬度（Ｈ₀）との硬度差（Ｈ_R−Ｈ₀）の値が小さく、その結果、ドライバー（Ｗ＃１）でのスピン量が多く、飛距離が出ない。
比較例５は、コア中心と、コア中心から（ｒ−２）ｍｍ地点までの硬度差が大きく、その結果、ドライバー（Ｗ＃１）でのスピン量が多く、飛距離が出ない。

１ コア
１ａ センターコア
１ｂ 包囲層
２ 中間層
３ カバー
Ｇ ゴルフボール
Ｄ ディンプル

Claims (12)

1. センターコアに包囲層を被覆してなるコアと、表面に多数のディンプルを有するカバーと、これらの間に配置される少なくとも１層以上の中間層とを具備するマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記センターコア及び包囲層が弾性体からなり、該センターコアの半径ｒ（ｍｍ）が５≦ｒ≦１５を満たすと共に、コアの断面硬度（ＪＩＳ−Ｃ硬度）が下記の条件（１）〜（４）を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
   （１）コア中心と、コア中心から（ｒ−２）ｍｍ地点までの任意の２点の硬度差が２以下であること
   （２）コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1と、コア中心から（ｒ−１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r-1が、１０≦Ｈ_r+1−Ｈ_r-1≦３５であること
   （３）コア表面から内側に２ｍｍ地点の硬度Ｈ_R-2と、コア中心から（ｒ＋１）ｍｍ地点の硬度Ｈ_r+1とが、０≦Ｈ_R-2−Ｈ_r+1≦７であること
   （４）コア表面硬度（Ｈ_R）とコア中心硬度（Ｈ₀）との差が、２０≦Ｈ_R−Ｈ₀≦４０
   であること
2. 上記センターコアの主材料が熱可塑性エラストマーであり、上記包囲層の主材料がゴム組成物である請求項１記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
3. 上記センターコアの主材料が熱可塑性ポリエステルエラストマー又は熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項２記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4. 上記コア中心硬度（Ｈ₀）が、５０≦Ｈ₀≦７０を満たす請求項１〜３のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
5. 上記中間層の厚さをＴ_i（ｍｍ）、その材料硬度をＨ_i（ショアＤ）としたとき、８０≦Ｔ_i×Ｈ_i≦２００を満たす請求項１〜４のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
6. 中間層がＮ層の複数層からなり、第１中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i１，Ｈ_i１、第２中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_i２，Ｈ_i２、第Ｎ番目の中間層の厚さ及び材料硬度をそれぞれＴ_iＮ，Ｈ_iＮとするとき、第１層から第Ｎ番目までの層における各層の厚さと材料硬度との積の総和について下記式を満たす請求項１〜４のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
   １００≦（Ｔ_i１×Ｈ_i１）＋（Ｔ_i２×Ｈ_i２）＋・・・・（Ｔ_iＮ×Ｈ_iＮ）≦１８０
7. 上記中間層の主材料が熱可塑性樹脂である請求項１〜６のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
8. 上記中間層が多層からなり、このうち、少なくとも一組の隣り合う層が同種の熱可塑性樹脂からなる請求項７記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9. 中間層の主材料である熱可塑性樹脂がアイオノマーである請求項７記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10. 上記カバーの主材料が熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である請求項１〜９のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
11. 上記カバーの主材料が、アイオノマー，ポリウレタン及びポリウレアの群から選ばれる請求項１０記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
12. ボールの表面硬度（ＪＩＳ−Ｃ硬度）をＨ_bとするとき、６０≦Ｈ_b≦１００を満たす請求項１〜１１のいずれか１項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。

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