JP2016000857A - ステンレス鋼の不動態化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境負荷が小さく、しかも耐孔食性に優れたステンレスの不動態化方法を得る。
【解決手段】上記電解研磨された被処理物を有機酸と過酸化水素を含む溶液に浸漬する。上記有機酸と過酸化水素を含む溶液への浸漬は、有機酸濃度0.5重量%以上、過酸化水素濃度0.98重量%以上、温度10℃以上、浸漬時間30分以上である。また、上記電解研磨に用いる電解液は、硫酸とリン酸の混合液であり、当該混合液が85重量%リン酸と98重量%硫酸を用いた場合、リン酸と硫酸の容量比が、50%〜90%:10%〜50%である。電解研磨の条件は、電流密度1A〜20A/dm、温度30℃〜80℃、時間30秒〜60分である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ステンレス鋼の不動態化方法に関し、特に環境を考慮したステンレス鋼の不動態化方法に関するものである。
ステンレス鋼の不動態化方法は、大きく分けて以下の3つの方法がある。
(1)硝酸その他の強力な酸化剤を含む溶液に浸漬する方法。
(2)酸素または、清浄な空気中における低温加熱による方法。
(3)酸化剤を含む溶液中における陽極分極による方法。
このうち、(1)の「強力な酸化剤を含む溶液に浸漬する方法」が一般的で、硝弗酸(約1重量%HF、30重量%HNO、残りHO)、あるいは10〜30重量%の硝酸などの酸化性の強い溶液にステンレス鋼を浸漬し、あるいは浸漬とともに電解処理するようにしている。
また、酸化性の強い溶液として、硝酸と塩酸の混合液を使用する方法が、特開昭52−106333号公報に開示されている。硝酸を5〜40重量%、塩酸を0.5〜2.0重量%含み、残り水およびインヒビタ0.1g〜10g/lよりなる溶液を、50〜70℃に加熱して30〜90秒ステンレス鋼を浸漬するようにしたものである。
ステンレス鋼表面に形成される不動態皮膜の構造はまだ充分には解明されていないが、本質的には、Cr2O3・nHOで表されるような、厚さが10〜30Åの均一で薄い化学的に安定な非晶質の酸化膜になっていると考えられている。硝弗酸や硝酸中での不動態化処理は、不動態皮膜中のCr元素の濃縮により、安定な不動態皮膜を形成させると考えられている。
特開昭52−106333号公報 特開2001−115271号公報 特開平11−293482号公報
これらの不動態化処理のうち弗化水素酸(HF)は労働安全衛生法施工令特定化学物質等第2種物質に指定されていること、および、硝酸との混合溶液においては窒素酸化物が発生するため、これらを用いない工程の開発が望まれていた。
更に、硝酸を使用した場合には、使用後の硝酸は苛性ソーダ等のアルカリ剤で中和してから廃棄する必要があり、この工程も省略することが望まれる。
特開2001−115271号公報には、不動態化の工程で環境負荷の小さい過酸化水素を使用する方法が開示されている。これによると、被加工物を有機酸で研磨した後、硝酸又は過酸化酸水素を含む酸化性溶剤の液に浸漬して不動態化するようになっている。しかしながら、有機酸での研磨効果は一般的に弱く、不動態化処理に硝酸を使用しない限り充分な強度の不動態皮膜を形成することはできない。当該公報の実施例では硝酸溶液での不動態化処理の結果しか開示されていないので、出願人がクエン酸を用いて研磨したステンレス鋼の試料に対する過酸化水素の不動態化処理について実験した結果を、別途比較例として示す。
不動態化処理に過酸化水素と他の強い酸性溶液(例えば硫酸)を混合して使用する技術が、例えば特開平11−293482号公報に開示されている。しかしながら上記したように、過酸化水素以外の強酸化性溶液を使用することは、後の処理に時間と費用を要するという欠点がある。
加えて、不動態皮膜は、不動態化処理そのものの方法はもちろん、不動態化処理の前段階での処理が不動態皮膜の特性に大きな影響を及ぼす点を考慮すると、不動態化処理を評価するとき、不動態化処理の各部にのみ注目するのではなく、全工程に注目する必要がある。
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、不動態化処理時に後処理の必要な強酸性の溶液を用いないステンレス鋼の不動態化処理を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、この発明は、まず、硫酸とリン酸の混合液中で被処理物を電解研磨し、その後有機酸と過酸化水素を含む溶液に所定の時間浸漬(無電解処理)処理することによって不動態膜を形成するようになっている。
上記の方法を採用することによって、形成された不動態皮膜は耐塩化物孔食性の指標である孔食電位において、従前の硝酸溶液で不動態化した場合と同等あるいはそれ以上の品質の膜を形成することができ、しかも、廃液を下水等に廃棄しても環境に負荷のかからない効果がある。
図1は各種表面研磨後の不動態化処理に各種の酸を使用したときのアノード分極曲線を示す図。 図2はリンゴ酸と過酸化水素を含む溶液への浸漬時間を変えたときのアノード分極曲線を示す図。 図3はリンゴ酸と過酸化水素を含む溶液への浸漬時間を変えたときのアノード分極曲線を示す図。 図4はリンゴ酸と過酸化水素を含む溶液の浴温度を変えたときのアノード分極曲線を示す図。 図5はリンゴ酸と過酸化水素を含む溶液の過酸化水素濃度を変えたときのアノード分極曲線を示す図。 図6はリンゴ酸と過酸化水素を含む溶液のリンゴ酸の濃度を変えたときのアノード分極曲線を示す図。 図7は孔食電位の測定時に使用するNaCl濃度を変えたときのアノード分極曲線を示す図。 図8は孔食電位測定前に溶存酸素を含むNaCl溶液への浸漬日数を変えたときのアノード分極曲線を示す図 図9はクエン酸による研磨及び硝酸処理と本発明との比較を示す図を示す図。
本発明は被処理物のステンレス鋼を電解研磨し、その後有機酸(例えばリンゴ酸)と過酸化水素を含む溶液に浸漬することによってステンレス鋼表面を不動態化するようにしている。
上記電解研磨は、硫酸とリン酸の混合溶液中で、被処理物を正極として行われる。前記混合溶液としては、85重量%のリン酸と、98重量%の硫酸を用いた場合リン酸と硫酸の容量比が、50〜90%:10〜50%のものを用いる。電解研磨条件は、電流密度1〜20A/dm2、温度30〜80℃、時間30秒〜60分である。
上記電解研磨処理において、リン酸の濃度が50%より小さいと光沢性が低下し、90%より多いとコスト高となる。
また、上記電解研磨処理は、温度30〜80℃の下で、電流密度1〜20A/dm2で、時間30秒〜60分で行われる。温度が30℃より低いと試料表面の鉄分の溶解速度が充分ではなく被処理物の表面を充分にクロムリッチにすることができない。また80℃より高いと雰囲気に硫酸臭が立ち込め、作業性に問題が生じる。電流密度が1A/dm2より小さいと、鉄分の溶出が充分でなく、また、20A/dm2より大きいと、電流密度の均一性が低下することで研磨状態の品質の低下を招く。
上記、温度、電流密度、電解処理時間の関係は、鉄分の溶出量が大きくなり過ぎない程度、また、少なすぎて後の無電解処理(不動態化処理)に支障を来たさないよう、相対的に決定される。
上記無電解処理に使用する溶液の濃度と温度、更に浸漬時間は、より優れた特性の不動態を形成するためには、下記の範囲で相対的に決定される。
すなわち、上記有機酸と過酸化水素の溶液中、有機酸の濃度は有機酸の種類を問わず0.5重量%以上である。0.5重量%より濃度が低いと酸化効果が充分ではなく、耐食性に優れた孔食電位の高い不動態皮膜を形成することはできない。有機酸の濃度の上限は限定されないが、10重量%より高くなると、溶液のエッチング作用が強くなり電解研磨の光沢が低下する恐れがあること、作業後の排水処理の必要性が生じることなどの難点が出てくる(表5参照)。
上記有機酸と過酸化水素を含む溶液中、過酸化水素の濃度は0.98重量%以上である。過酸化水素の濃度が0.98重量%以下になると、酸化能力が劣ることになる。過酸化水素の濃度の上限は限定されないが、7.0重量%以上になると、溶液のpHが低くなることで不働態化が不安定となるおそれがある(表4参照)。
上記有機酸と過酸化水素を含む溶液への浸漬時間は、有機酸+過酸化水素の各成分の濃度が最も低い溶液(有機酸0.5重量%、過酸化水素0.98重量%)で30分以上である。30分より短いと優れた不動態皮膜を形成するに至らない。浸漬時間の上限はないが、例えば5時間といった長時間になると、作業性および、コストの面での障害が生じることになる(表2参照)。
<実施例1>(研磨方法)
まず、ステンレス鋼を不動態化するについて、その前処理として、電解研磨をすることが有効である。このことを立証するアノード分極曲線を図1に示す。電流が立ち上がっている電位が孔食電位である。また、以下のすべての実験において(図1〜図9)、5サンプルの平均値を示している。
ステンレス鋼(SUS304、以下すべて同じ)をバフ研磨(No.400)の後に8重量%のリンゴ酸に25℃で2時間浸漬して、不動態化処理した試料1は0mV近辺の孔食電位でしかない。また、電解研磨のみの試料2も200mV近辺の孔食電位でしかない。更に、バフ研磨(No.400)の後8重量%のリンゴ酸と0.98重量%の過酸化水素を含む溶液に25℃で2時間浸漬した試料3は、400mV以下の孔食電位でしかない。電解研磨後8重量%のリンゴ酸に25℃で2時間浸漬した試料4は400mVを少し越えた孔食電位でしかない。電解研磨後0.98%重量%の過酸化水素の溶液に25℃で2時間浸漬した試料5は、850mV付近の孔食電位であった。
これらに対して電解研磨後、8重量%のリンゴ酸と0.98重量%の過酸化水素を含む溶液に25℃で2時間浸漬した試料6(本願発明)は1000mVを超える孔食電位を示した。
以上のことより、前処理としての研磨の種類は電解研磨が重要であり、その後の無電解処理液として、リンゴ酸のみ(試料4)、あるいは過酸化水素のみ(試料5)では不十分であり、リンゴ酸に少なくとも0.98重量%の過酸化水素を添加した溶液を用いるのが最適であることが理解できる。
なお、上記の電解研磨はすべてバフ研磨(♯400)後に85重量%のリン酸と、98重量%の硫酸を用いてリン酸と硫酸の容量比が、75%:25%である電解浴で、温度45℃、電圧8Vで6分間行われている。また、孔食電位は、25℃で3.5重量%の脱気NaCl溶液中で測定されている。
上記の実験例はリンゴ酸以外の他の有機酸を使用することについての可能性をも類推させることになり、以下に示す実施例でそのことが実証されている。
<実施例2>(無電解処理の時間)
次に、無電解処理(リンゴ酸と過酸化水素を含む溶液への浸漬)時間を確認する実験をし、図2にそのアノード分極曲線を示す。
ステンレス鋼を上記試料6と同様の条件でバフ研磨と電解研磨をし、8重量%のリンゴ酸と0.98重量%過酸化水素を含む溶液に25℃で、0.5時間、1時間、2時間浸漬した試料についての孔食電位は、いづれも1100mV程度で差異はないが、電解研磨のみの試料の孔食電位は200mVと低いことが理解できる。
表1はリンゴ酸以外の有機酸でも良好な結果が得られることを示している。すなわち、8重量%の有機酸(クエン酸、グルコノラクトン、酒石酸)に0.98重量%の過酸化水素を含む溶液に25℃で、時間を変えて、試料6と同じ条件で前処理(バフ研磨+電解研磨)した試料を浸漬したときの各試料の孔食電位を測定した結果を示すものである。いずれの有機酸でも0.5時間以上の浸漬時間で1000mV以上の孔食電位を得ることができる。
更に、図3は前記前処理(バフ研磨+電解研磨)後の試料を過酸化水素0.98重量%でリンゴ酸の濃度を0.5重量%とした溶液に25℃で、0.5時間、1時間、2時間、浸漬した試料についてのアノード分極曲線を示すものである。いずれも孔食電位は1100mV前後を示し、実用には充分であることが理解できる。
表2はリンゴ酸を含む有機酸について、前記前処理(バフ研磨、電解研磨)後の試料を過酸化水素0.98重量%で有機酸の濃度を0.5重量%とした溶液に、25℃で、0.5時間、1時間、2時間、浸漬した試料についての孔食電位を示すものである。いづれも1100mV前後の値を示しており、実用には充分といえる。
また、孔食電位の測定条件は実施例1と同じである。
Figure 2016000857
Figure 2016000857
<実施例3>(無電解処理の温度)
図4は8重量%リンゴ酸と0.98重量%過酸化水素を含む溶液に2時間浸漬した無電解処理の温度条件を見出すためのアノード分極曲線を示すものである。5℃での孔食電位は、試料によるバラツキが多少見られるが970mVであり、実用的には充分であるといえる。15℃を超えると孔食電位が1000mVを超えるようになり試料間のバラツキも少なく充分といえる。
表3はリンゴ酸を含む他の有機酸(クエン酸、グルコノラクトン、酒石酸)での上記同様の実験の結果の孔食電位を示すものである。5℃では上記リンゴ酸の場合と同様,試料間のバラツキはあるものの、充分実用に耐える孔食電位を示している。いずれの有機酸も5℃でも孔食電位は1000mV前後を示し、更に15℃以上で1000mVを超え、バラツキもなく充分に実用に耐える値を得た。前処理としてのバフ研磨と電解研磨は実施例1の試料6と同様の条件であり、孔食電位の測定条件も実施例1と同じである。
Figure 2016000857
<実施例4>(過酸化水素濃度)
図5は、無電解処理に使用するリンゴ酸と過酸化水素を含む溶液における過酸化水素の濃度を0.98重量%〜7.0重量%の間で変えたときの各試料の孔食電位を示すものである。過酸化水素を添加しない場合は、図1の試料4、あるいは図5(リンゴ酸8wt%)に示すように480mV程度の孔食電位しか示さないが、過酸化水素の僅かな添加によって、孔食電位は飛躍的に高くなることが理解できる。過酸化水素の濃度が高いほど孔食電位も高いとは言えるが、過酸化水素の濃度の変化に対して孔食電位が際立って変化するわけではなく、過酸化水素の割合を過剰に増やす必要はないといえる。尚、リンゴ酸の濃度は8重量%であり処理温度は25℃、浸漬時間は2時間である。
表4は、リンゴ酸を含む、他の有機酸(クエン酸、グルコノラクトン、酒石酸)の孔食電位を纏めたものであり、リンゴ酸と同様の効果を得ることができた。
前処理としてのバフ研磨と電解研磨は実施例1の試料6と同様の条件であり、孔食電位の測定条件も実施例1と同じである。
Figure 2016000857
<実施例5>(有機酸の量)
図1の試料6は、リンゴ酸が8重量%の1種類のアノード分極曲線しか示されていない。そこで、リンゴ酸の量の下限を見極めるため、リンゴ酸の量を変化させた場合のアノード分極曲線を図6に示す。リンゴ酸の量が0.5重量%でも孔食電位は1100mV近くを呈している。リンゴ酸の上限は特に限定されないが、量が多いと廃液処理上の問題が生じることになる。
表5は、リンゴ酸を含む他の有機酸(クエン酸、グルコノラクトン、酒石酸)の孔食電位を纏めたものであり、リンゴ酸と同様、いずれの有機酸も下限は0.5重量%であることが理解できる。
前処理としてのバフ研磨と電解研磨は実施例1の試料6と同様の条件であり、孔食電位の測定条件も実施例1と同じである。
Figure 2016000857
<硝酸処理との比較1>(塩分濃度)
図7は、硝酸溶液で無電解処理した試料と、有機酸としてリンゴ酸を用いたときの本願発明にかかる試料との濃度の異なるNaCl溶液中でのアノード分極曲線を示すものであり、図7(a)は硝酸処理の試料、図7(b)は本願発明に係る試料で、NaCl濃度は図中に記しているように3.5重量%から飽和濃度までの溶液である。硝酸処理は30重量%の硝酸に25℃、2時間浸漬した試料を用いた。本願発明の試料は8重量%のリンゴ酸と0.98重量%の過酸化水素を含む溶液に25℃で2時間浸漬した試料を用いた。
硝酸処理の試料では、NaCl濃度が20重量%を超えると孔食電位が800mVを下回り、25%あるいは飽和濃度になると300mV以下に下がっている。これに対して、本願発明品は飽和濃度になっても1000mV以上の孔食電位を維持しており、本願発明の優位性が証明されている。
表6はリンゴ酸以外の有機酸(クエン酸、グルコノラクトン、酒石酸)での孔食電位をリンゴ酸とともに、纏めたものであり、いずれもリンゴ酸と同様、硝酸による無電解処理より優れた効果を得ることができた。
Figure 2016000857
<硝酸処理との比較2>(塩水浸漬時間)
図8は、硝酸溶液で無電解処理した試料と本願発明にかかる試料とを孔食電位測定前に空気を通気した3.5重量%NaCl溶液中に異なる時間(日数)保持し、その後脱気した3.5重量%NaCl溶液中で孔食電位を測定したときのアノード分極曲線を示すものである。図8(a)は硝酸処理の試料、図8(b)は有機酸としてリンゴ酸を用いた場合の本願発明に係る試料である。硝酸での処理条件、及び本願発明での処理条件は図7の場合と同じである。孔食電位の測定前の3.5重量%の通気NaCl溶液中での保持日数により孔食電位が低下すれば、不動態皮膜が劣化したことを意味する。
しかし、硝酸処理の試料および本願発明の試料とも100日を経過しても1000mV以上の孔食電位を維持しており、処理皮膜の劣化は認められない。したがって両者の処理効果は同等であるが、硝酸のような強酸を使用しない点で本願発明の試料の優位性が立証できることになる。
表7はリンゴ酸以外の有機酸(クエン酸、グルコノラクトン、酒石酸)についての実験をリンゴ酸とともに、纏めたものであり、いずれもリンゴ酸と同様の効果を得ることができた。
Figure 2016000857
<従来技術との比較>
ここで本願発明と関連する従来の処理技術であるクエン酸で研磨後、過酸化水素に浸漬する不動態化処理と本願発明の処理との違いについて確認した実験を図9に示す。
バフ研磨(♯400)したステンレス鋼素材を45℃の20重量%クエン酸に30分浸漬して表面を研磨し、更に45℃の4.0重量%過酸化水素に1時間浸漬した試料と、実施例1と同じ条件で電解研磨し、8重量%リンゴ酸と0.98重量%過酸化水素を含む溶液で無電解処理(25℃、2時間)した試料を3.5重量%のNaCl溶液中でアノード分極したときの孔食電位の比較を図9に示す。
クエン酸処理の試料はせいぜい300mVの孔食電位であるのに対して、本願発明に掛かる試料は1000mV以上の孔食電位を示した。加えて実施例1と同じ条件で電解研磨し、30重量%の硝酸で無電解処理した試料についても同様に実験したが、本願発明の試料と孔食電位の値は同等である。したがって、両者の皮膜の性能はほぼ同等と考えられるが、硝酸が強酸であり危険かつ廃液処理が必要という観点からは本願発明の優位性が強調できることになる。
従って、単純に不動態化処理(無電解処理)にクエン酸などの有機酸を用いるというだけの発想では充分ではなく、その前処理に電解研磨を用いるということ、およびリンゴ酸などの有機酸に若干の過酸化水素を添加することが極めて重要であることが理解できる。
以上説明したように、本発明は不動態化処理に廃棄処理が不要なリンゴ酸を含む有機酸と過酸化水素を用いることができるので、環境保全の観点、コスト低減の観点からの利点が大きく、産業上の利用可能性は極めて大きい。

Claims (3)

  1. 被処理物を電解研磨するステップ
    上記電解研磨された被処理物を有機酸と過酸化水素を含む溶液に浸漬するステップ
    を備えたことを特徴とするステンレス鋼の不動態化方法
  2. 上記電解研磨に用いる電解液が、硫酸とリン酸の混合液であり、当該混合液が85重量%のリン酸と98重量%の硫酸を用いたとき、リン酸と硫酸の容量比が、50%〜90%:10%〜50%の溶液の場合、電解研磨条件が電流密度1A〜20A/dm2、温度30℃〜80℃、時間30秒〜60分である請求項1に記載のステンレス鋼の不動態化方法
  3. 上記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、グルコノラクトン、酒石酸の内の1種であって、有機酸と過酸化水素を含む溶液が有機酸0.5重量%以上、過酸化水素0.98重量%以上、温度5℃以上、当該溶液への浸漬時間30分以上である請求項2に記載のステンレス鋼の不動態化方法。
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