JP2005126807A - 鉄を主成分とする合金の化学研磨剤及びこれを用いた鉄を主成分とする合金の表面処理法方法 - Google Patents

鉄を主成分とする合金の化学研磨剤及びこれを用いた鉄を主成分とする合金の表面処理法方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、緩慢な条件下でワーク表面に存する不動態化膜を取り除くことができるのであり、しかも、ワーク表面を過剰にエッチングすることなく、表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くことができる上、作業者が強酸性の蒸気に曝露されるといった健康上の問題を極力改善することができるだけでなく、使用後の廃液処理を簡便にすることができる、極めて高性能且つ安全な鉄を主成分とする合金の化学研磨剤及びこれを用いた鉄を主成分とする合金の表面処理法方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくともリン酸、硝酸及び硫酸を含み、この酸性水溶液全体におけるリン酸の濃度が20〜90重量%、硝酸の濃度が0.5〜9.9重量%、硫酸の濃度が1〜9.9重量%であることを特徴とする化学研磨剤を用いて、鉄を主成分とする合金の表面を処理する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ステンレス鋼や炭素鋼等の鉄を主成分とする合金に対する機械加工やプレス加工時において、ワークの表面やエッジに発生する微小な凸部又はバリ、或いは表面の不純物を選択的に除去するための鉄を主成分とする合金の化学研磨剤及びこれを用いた鉄を主成分とする合金の表面処理法方法に関する。
ステンレス鋼や炭素鋼等の鉄を主成分とする合金は、耐食性が高く、しかも加工・溶接性に優れているため、現在、種々の分野における医療用機械・器具、機械部品又は精密機械・器具等に広く使用されている。
そして、これら鉄を主成分とする合金は、機械加工やプレス加工等により、三次元形状や、曲面・止め穴・タップネジ等を有する複雑な形状の部品や製品等に加工されるが、必ずといっていいほど加工の際にワークの表面やエッジに微小な凸部及び微細なバリが発生する。
又、前記ワークには、加工時において、切削、塑性変形、磨耗などの影響を受けて変質層を生じることが多く、更に、切削油の油脂や金属粉が前記ワークの表面層やピットに入り込むため、ワーク内部に比べて不純物の多い表面層、即ちスクラッチ層が生じる。
そして、このような表面やエッジに微小な凸部及び微細なバリが発生したワークや、表面状態が不純となったワークは、特に医療用機械・器具の分野では生態親和性に影響を与えたり、又、精密機器の分野において、組み立ての妨げとなったり、誤作動や故障の原因となったりする上、装飾性の観点から行うメッキ、イオンプレーティングにおいても、又、表面硬化処理の観点から行う窒化処理等の表面処理においても、悪影響を及す。
ここで、前述の問題を解決し、ワークの状態を改善する手段としては、大きく分けて「物理的(機械的)研磨法」、「電解研磨法」及び「化学的研磨法」の3種の方法を挙げることができる。
これらのうち、物理的研磨法は、ワークにおける被研磨面の凸部を、切削、塑性変形、磨耗などの手段により除去して平滑面を得る方法であるが、材質の硬さ形状に大きく影響を受ける上、複雑な形状のワークは対処できないといった問題がある。
又、電解研磨法は、電気的エネルギーを用いた陽極電解により、ワーク表面の不純物を取り除く方法であるが、大容量の直流電源と設備が必要である上、ワークと対極の設定・設置や電化維持の電流・電圧、更には装置の維持管理など、一般的操作上の複雑さが伴う不便さがあり、しかも、被研磨面以外の箇所も溶解され、寸法精度が変化するといった問題がある。
一方、化学的研磨法は、高濃度の強酸性溶液の浴内にワークを浸漬し、ワークの表面やエッジに存する微小な凸部及び微細なバリを溶解除去したり、表面状態の不純物を取り除いたりする方法であり、簡易でしかも複雑な形状のワークにも対応できるといった利点から、現在、最も多く研究され、実用化されている段階ともいえる(例えば、特許文献1及び特許文献2更に特許文献3)。
特開平7−58063号公報 特開平8−330159号公報
しかしながら、この化学的研磨法は、高濃度の強酸性の処理溶液を用いるものであり、又、当該処理溶液を高温の条件下で使用することも普通であったため、作業環境を劣悪且つ危険な状態にするという問題がある上、作業者が酸性の蒸気に曝露されるといった健康上の問題もある。
更に、使用後の廃液処理の点においても問題があり、環境保護が重要となっている昨今では、使用が制限されるといった問題もある。
ここで、従来の化学的研磨法において、高濃度の強酸性の処理溶液を用い、更に高温の条件下で処理を行っていた理由は、鉄を主成分とする合金からなるワーク表面には保護被膜である不動態化膜が存在し、しかもこの不動態化膜は比較的高い耐食性があることから、低濃度の酸性溶液や低温条件下ではこの不動態化膜を溶解除去することができなかったためである。
しかしながら、一旦不動態化膜を破壊した後は、高濃度の強酸が被研磨面を過剰にエッチングしたりする場合があり、極小の製品や超高品質を要する製品には使用できないといった問題もあった。
ところで、最近、アルミニウムやその合金の表面化学処理研磨剤として、硝酸を含有することなく、タングステン化合物を配合し、しかもリン酸及び硫酸を配合して成るものが提案されている。
特開2002−285360公報
しかしながら、この従来の化学研磨剤においては、鉄を主成分とする合金の表面に存在する不動態化膜を除去し得るものではなく、しかも鉄を主成分とする合金に対する機械加工やプレス加工時などに当該鉄を主成分とする合金の表面やエッジ部に発生する微細な凸部又はバリ或いは表面の不純物を除去するためのものとは全く異なり、アルミニウムやその合金の表面に対する機械加工やプレス加工時において、ワークの表面やエッジに発生する微小な凸部又はバリ、或いは表面の不純物を選択的に除去するためのものではなく、アルミニウムやその合金の表面を平滑化すると共に、十分な光沢を付与するためのものである。
又、この従来の化学研磨剤において、硝酸を添加すると、アルミニウムやその合金の表面が当該硝酸によって酸化され、白色化(水酸化アルミニウムの皮膜が生成)し、むしろ光沢が失われ、商品価値が著しく低下するのである。
従って、この従来の化学研磨剤においては、本発明に係る化学研磨剤とは全く構成成分を異にし、その作用、効果を全く異にするものであり、従って、本発明の化学研磨剤とは全く異なるものである。
本発明者は、このような問題を解決すべく鋭意・検討を重ねた結果、リン酸の濃度が20〜90重量%、硝酸の濃度が0.5〜9.9重量%及び硫酸の濃度が1〜9.9重量%の酸性水溶液からなる化学研磨剤を用いれば、15〜30℃程度の温和な反応条件下で不動態化膜を破壊し、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純を取り除くことができるとの知見を得たのである。
即ち、本発明者は、リン酸、硝酸及び硫酸を必須構成成分とし、弱酸であるリン酸の割合を多くし、しかも強酸である硝酸や硫酸の配合割合をそれぞれ10重量%未満とすることにより、各構成成分が効率良く働き、10〜30℃程度の温和な反応条件下で不動態化膜を破壊し、しかも、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くことができるとの知見を得たのである。
又、本発明者は、弱酸であるリン酸の割合を多くし、強酸である硝酸や硫酸の配合割合をそれぞれ10重量%未満とすることにより、作業者が酸性の蒸気に曝露されるといった健康上の問題を極力改善し、更に、使用後の廃液処理を簡便にすることができるとの知見も得たのである。
更に、本発明者は、弱酸であるリン酸の割合を多くし、塩酸と硫酸の合計配合割合を10重量%未満とすることにより、作業者が強酸性の蒸気に曝露されるといった健康上の問題を極力改善することができる上、使用後の廃液処理を簡便にすることができるとの知見も得たのである。
本発明は、前記知見に基づき完成されたものであり、緩慢な条件下でワーク表面に存する不動態化膜を取り除くことができるのであり、しかも、ワーク表面を過剰にエッチングすることなく、表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くことができる上、作業者が強酸性の蒸気に曝露されるといった健康上の問題を極力改善することができるだけでなく、使用後の廃液処理を簡便にすることができる、極めて高性能且つ安全な鉄を主成分とする合金の化学研磨剤及びこれを用いた鉄を主成分とする合金の表面処理法方法を提供することを目的とする。
以上の課題を解決する手段である本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、鉄を主成分とする合金の表面を処理するための酸性水溶液であって、この酸性水溶液は、少なくともリン酸、硝酸及び硫酸を含み、当該酸性水溶液全体におけるリン酸の濃度が20〜90重量%、硝酸の濃度が0.5〜9.9重量%、硫酸の濃度が1〜9.9重量%であることを特徴とする、との技術的手段を採用したものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤が好適に適用される鉄を主成分とする合金としては、鉄(Fe)を主成分とし、目的に応じて、Ni、Cr、W、Cu、Co、C、Si、Mn又はMoなどの成分を1ないし複数種含有させた一般的に鉄を主成分とする合金と称されるものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えばフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、或いは炭素鋼等が挙げられる。
鉄を主成分とする合金の具体例としては、例えば74Fe−20Cr−4.5Al−0.5Ti−0.5Y23、25.5Ni−15Cr−1.3Mo−54Fe−2.15Ti−0.3V、54.0Ni−18.0Cr−3.0Mo−18.5Fe−0.9Ti−0.5Al−5.1(Nb+Ta)又は72.5Ni−15.5Cr−7Fe−2.3Ti−0.9Al−1.0(Nb+Ta)等が挙げられるのであり、これらの合金は、例えば航空機エンジン、自動車など内燃機関排気バルブ、産業用タービン用各種部品(ブレード・シャフト・アフターバーナー・スプリング・特に耐熱ファスナー)、航空機、ガスタービン、ロケット、人工衛星、宇宙船の部品、原子炉部品、核燃料スペーサー・スプリング、熱間押出し工具等が挙げられる。
そして、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、このような鉄を主成分とする合金を加工した際に、ワーク表面やエッジに発生する微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くための酸性水溶液であって、この酸性水溶液は、少なくともリン酸、硝酸及び硫酸を含み、当該酸性水溶液全体におけるリン酸の濃度が20〜90重量%、硝酸の濃度が0.5〜9.9重量%、硫酸の濃度が1〜9.9重量%であることを特徴とする。
即ち、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、「リン酸」、「硝酸」及び「硫酸」を必須成分とするものであり、これら三成分の配合割合を調整することにより、各成分が効果的に働き、温和な状況下でワーク表面に存する不動態化膜を取り除くことができるのであり、しかも、ワーク表面を過剰にエッチングすることなく、表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くことができるのである。
つまり、本発明に係る化学研磨剤において、当該化学研磨剤が鉄を主成分とする合金の表面に接触すると、当該鉄を主成分とする合金の表面上には電位差が生じ、その結果、鉄を主成分とする合金の表面がエッチングされる。
そして、本発明に係る化学研磨剤において、鉄を主成分とする合金が当該化学研磨剤によってエッチングされるときに発生する熱エネルギーは、平坦な部分においては放散し易いが、微小な凸部や微細なバリにおいては熱エネルギーがこもり易くなるため、当該部分において溶解能が増し、集中的にエッチングされることになる。
又、本発明に係る化学研磨剤において、当該化学研磨剤が鉄を主成分とする合金の表面に接触する際に起こる反応は、水素イオンの電子受容による水素ガスの発生反応であり、この水素ガスが気泡となって鉄を主成分とする合金の表面に発生すると、当該化学研磨剤と鉄を主成分とする合金との間に絶縁被膜となって介在することになる。
そして、この水素ガスの気泡は、平坦な部分においては吸着力が大きく働くことから長く留まり、絶縁被膜として作用するが、微小な凸部や微細なバリにおいては吸着力が小さく極短時間しか前記気泡が留まらないから、当該微小な凸部や微細なバリが化学研磨剤と接触し易くなる結果、当該部分が更に集中的にエッチングされることになる。
即ち、本発明に係る化学研磨剤において、過剰なエッチングを抑え、研磨したい箇所を集中的にエッチングするためには、水素ガスの気泡を金属表面の平坦な箇所に長く留まらせる必要があり、平坦な箇所の吸着力を大きくするために、この化学研磨剤にある程度の粘性を付与する必要がある。
又、鉄を主成分とする合金の表面が化学研磨剤中の無機酸によってエッチングされることにより当該化学研磨剤中の無機酸は酸性度が失われることにより酸性が中和されることによって反応生成物である金属水酸化物が粘性のある泥状物に変化する。この時の金属水酸化物からなる粘性の泥状物は、ある程度の僅かな層厚と粘性の膜で前記合金表面を覆うことになる。また、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤中においてそのリン酸により粘性の向上を図ることによって合金表面に止まり易い状態にすることで、凹部は厚く平坦部は薄く、このため、突出した微小な凸部やバリはこの金属水酸化物である粘性泥状物の膜から突出することによって更に一層のエッチングがなされることになる。
このように、大部分の平坦な部分が前記金属水酸化物からなる粘性の泥状物に覆われることによって、電気抵抗が小さい凸部に集中しその部分のみが優先的に溶解することで一層の平坦化が実現する。この粘性の泥状物中には細かい水素ガス気泡が存在するが、このようにガス気泡を細かくする働きをするのが界面活性剤であり、この細かいガス気泡は反応が進行するに連れて粘性の泥状物中に多くなりやがて浮力が増し合金表面から離脱することになる。
この点につき、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、リン酸を必須構成成分として比較的多量に配合することにより、当該化学研磨剤に粘性を付与しているのである。
又、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、弱酸であるリン酸の危険性は比較的小さく、本発明においては、化学研磨剤におけるリン酸の配合割合を高くすることで、安全性を高めることができるのである。
ところで、本発明に係る化学研磨剤において、リン酸の配合割合を、酸性水溶液全体に対して20重量%未満とすると、水溶液の粘性が不十分であり十分な効果を得ることができないのであり、一方、リン酸の配合割合が水溶液全体に対して90重量%を超えると、効果に限界が生じ、意味が無いだけでなく、他の成分との均衡、調整が悪くなる上、不経済となるので好ましくない。
このため、本発明においては、リン酸の配合割合を、酸性水溶液全体に対して20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%程度に調整することが好ましい。
つまり、本発明においては、硝酸の配合割合を酸性水溶液全体に対して0.5〜9.9重量%の範囲に調整し、又、硫酸の配合割合を酸性水溶液全体に対して1〜9.9重量%と著しく少なくすることができるのであり、そして、特に、硫酸と塩酸の合計量が化学研磨剤全体に対して10重量%未満とすることによって、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤はいわゆる毒物及び劇物取締法の対象ではなくなり、運搬や保存について各種法的な規制を受けることなく、簡便に取り扱うことができるのである。
そして、本発明においては、前記のリン酸、硝酸及び硫酸を前記特定範囲の濃度に調整することによって、ワーク(鉄を主成分とする合金)における研磨したい箇所を集中的にエッチングすることができるのであり、これにより、緩慢な条件下でワーク表面に存する不動態化膜を取り除くことができる上、ワーク表面を過剰にエッチングすることなく、表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くことができるのである。
しかしながら、鉄を主成分とする合金のうちニッケルを含まないもの、例えばフェライト系ステンレス鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼等に対しては、前記のリン酸、硝酸及び硫酸を特定の濃度に配合した3成分系の本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤により、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を好適に取り除くことができるが、ニッケルを含む鉄を主成分とする合金、例えばオーステナイト系ステンレス鋼等については、リン酸、硝酸及び硫酸の3成分系の化学研磨剤では、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を十分に取り除くことができない場合がある。
そのため、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、前記のリン酸、硝酸及び硫酸に加えて、更に塩酸を加えることが好ましく、このように、塩酸を加えて、4成分系の化学研磨剤とすることにより、オーステナイト系ステンレス鋼等のニッケルを含む鉄を主成分とする合金に対しても、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を好適に取り除くことができるのである。
なお、更に加える塩酸の濃度としては、前記本発明に係る化学研磨剤において、その酸性水溶液全体に対して0.1〜9.9重量%程度の配合割合が好ましく、塩酸の濃度が水溶液全体に対して0.1重量%未満では、少なすぎて所要の効果を得ることができないのであり、一方、塩酸の濃度が、前記酸性水溶液全体に対して9.9重量%を超えると、多すぎて安全性や取扱性更に作業環境が悪化するので、いずれの場合も好ましくない。
更に塩酸の濃度と硫酸の濃度の合計を酸性水溶液全体に対して9.9重量%以下とすることにより、本発明に係る化学研磨剤においては、毒物及び劇物取締法の対象ではなくなり、運搬や保存について各種規制を受けることなく、簡易に取り扱うことができるため一層好ましい。
前述のように、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、リン酸、硝酸及び硫酸を必須構成成分として、特定の濃度範囲で配合してなり、又、用途によっては適宜少量の塩酸を配合してなるものであるが、所望によりその他の成分、例えば、有機酸、重金属イオン、金属酸化物、界面活性剤或いは溶解促進剤などを適宜配合してその化学研磨速度を向上させても良いのである。
前記有機酸としては、ワーク表面が過剰にエッチングされることをより一層防止するために添加されるものであり、不動態化膜が破壊されたワーク表面を速やかに保護する作用を有するものであれば特に限定されるものではないが、一般的にはカルボキシル基(−COOH)を有する有機酸が好ましく、具体的には、ポリオキシモノカルボン酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、シュウ酸及びコハク酸等を挙げることができる。
これらの有機酸の添加量としては、対象物であるワークの素材や無機酸の組成等によって適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、一般的には、前記酸性水溶液全体に対して、0.01〜20.0重量%程度とするのが好ましく、更に、1〜10重量%程度とするのが一層好ましい。
有機酸の添加量が、酸性水溶液全体に対して0.01重量%未満では、ワーク表面を保護する作用、効果が不十分で、所要の抑制効果が得られないため好ましくなく、一方、添加量が、酸性水溶液全体に対して20.0重量%を超えると、効果に限界が生じ、意味が無いだけでなく、他の成分との均衡、調整が悪くなる上、不経済となるので好ましくない。
ところで、これらの有機酸は、所望により、一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良いのである。
前記重金属イオンや金属酸化物は、本発明の化学研磨剤にワーク(鉄を主成分とする合金)を浸漬した際に、当該ワーク(鉄を主成分とする合金)表面にその重金属を析出させ、この重金属とワーク(鉄を主成分とする合金)との関係において、いわゆる「ガルバニ電池」を起こさせ、鉄を主成分とする合金表面の不動態化膜を構成する金属酸化物などを還元、除去させるために添加されるものである。
鉄を主成分とする合金は不動態化し易く、しかも不動態化することによって非常に優れた耐食性を発現するが、この不動態化膜(酸化皮膜)が無い状態では当該合金が活性な状態にある結果、ごく僅かな酸性物質に対しても速やかに反応する原理を利用して、安全な酸組成物を用いることで、過剰エッチングを起こさずに微細な凸部やバリを選択的に溶解除去できることを実現したのである。
即ち、重金属イオンや金属酸化物から生成した重金属イオンの作用により、一旦不動態化膜が破壊されれば、その内部にある金属表面は速やかに低濃度の強酸と反応することができるのであり、従って、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤において、重金属イオン(フッ化物等の重金属塩やアンモニウム塩)や金属酸化物を添加することにより、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物などを一層速やかに取り除くことができるのである。
本発明で用いられる重金属イオン及び/又は金属酸化物としては、本発明の化学研磨剤にワーク(鉄を主成分とする合金)を浸漬した際に、当該ワーク表面に重金属を析出させて、いわゆる「ガルバニ電池」を起こさせ、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を一層速やかに取り除くことができるものであれば、特に限定されるものではないが、特に、温度25℃における標準電極電位が−0.15以上のものが好ましく、一般的に、この重金属イオンとしては、錫イオン、鉛イオン、銅イオン、モリブデン酸イオン又はマンガン酸イオン等から選ばれた少なくとも1種以上を挙げることができる。
ところで、本発明において、酸性水溶液中で重金属イオンを発生する化合物としては、当該酸性水溶液中で重金属イオンを発生する化合物であれば特に限定されるものではないが、特に、例えばフッ化物等の重金属塩やアンモニウム塩、更に重金属の酸化物等が挙げられるのであり、又、この化合物は一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良いのであり、更に、この化合物の添加量としては、対象物であるワークの素材や無機酸の濃度更に界面活性剤の添加等によって適宜決定されるものであり、特に制限されるものではないが、一般的には、酸性水溶液全体に対して、0.01〜7.5重量%程度が好ましく、更に、0.05〜5重量%程度が一層好ましい。
本発明において、酸性水溶液中で重金属イオンを発生する化合物の添加量が酸性水溶液全体に対して、0.01重量%未満では、重金属の析出量が不十分で所要の効果が得られないため好ましくなく、一方、7.5重量%を超えると、効果に限界が生じるので意味が無いだけでなく、廃液の処理、調整が困難になる上、不経済となるので好ましくない。
前記界面活性剤は、ワークの細部にわたり前記化学研磨剤を浸透、な染ませ、均一な処理を実現させたり、光沢性を出すために添加されるものであり、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤のいずれも用いることができる。
具体的には、アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩型、アルキルベンゼンスルホン酸塩型、アルキル硫酸エステル塩型、直鎖二級スルホン酸塩型、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩型、POEアルキル又はアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩型、及びPOEアルキル又はアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩型等を挙げることができる。
一方、カチオン界面活性剤としては、アルキルピコリニウムクロライド型、アルキルトリエチルアンモニウムクロライド型及びその他の第4級アンモニウム塩型等を挙げることができる。
又、ノニオン界面活性剤としては、POEアルキルフェニルエーテル型ノニオン、POEアルキルエーテル型ノニオン、POEポリオキシプロピレンブロックポリマー型ノニオン、POEグリコールアルキルエステル型ノニオン、ソルビタン脂肪酸エステル型ノニオン及びショ糖脂肪酸エステル型ノニオン等を挙げることができる。
更に、両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン型、アルキルアミノカルボン酸型及びアルキルイミダゾリン型等を挙げることができる。
加えて、非イオン界面活性剤としては、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、エチレングリコール及びグリセリン等を挙げることができる
これらの界面活性剤の添加量としては、対象物であるワークの素材や無機酸の濃度等によって適宜決定されるものであり、特に制限されるものではないが、一般的には、酸性水溶液全体に対して、0.005〜10重量%程度が好ましく、特に、0.05〜5重量%程度が一層好ましく、0.1〜3重量%程度が特に好ましい。
界面活性剤の添加量が酸性水溶液全体に対して、0.005重量%未満では界面活性剤の添加量が少な過ぎて所要の添加効果が得られないため好ましくなく、一方、10重量%を超えると、効果に限界が生じるので意味が無いだけでなく、廃液が発泡しその処理、調整が困難になる上、不経済となるので好ましくない。
ところで、前記界面活性剤は、一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良いのである。
前記溶解促進剤としては、特に鉄を主成分とする合金中のニッケルの溶解を促進するものであり、具体的に例えば、チオホルムアミド、チオアセトアミド、チオプロピオンアミド、チオベンズアミド、チオニコチンアミド、チオアセトアニリド、チオベンズアニリド、チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、1,3−ジエチルチオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、チオカルバジド、チオセミカルバジド、4,4−ジメチル−3−チオセミカルバジド、2−メルカプトイミダゾリン、2−チオウラシル、2−チオヒダントイン、3−チオラウゾール、2−チオウラミル、4−チオウラミル、チオペンタール、2−チオバルビツール酸、チオシアヌル酸、2−メルカプトキノリン、チオクマゾン、チオクモチアゾン、チオサッカリン又は2−メルカプトベンズイミダゾール等のチオアミド化合物を挙げることができる。
これら溶解促進剤の添加量としては、対象物であるワークの素材や無機酸の濃度等によって適宜決定されるものであり、特に制限されるものではないが、一般的には、酸性水溶液全体に対して、0.005〜5重量%程度が好ましく、特に、0.1〜3重量%程度が一層好ましい。
溶解促進剤の添加量が酸性水溶液全体に対して、0.005重量%未満では溶解促進剤の添加量が少な過ぎて所要の溶解促進効果が得られないため好ましくなく、一方、5重量%を超えると、溶解促進効果に限界が生じるので意味が無いだけでなく、不経済となるので好ましくない。
ところで、これらの溶解促進剤は、一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良いのである。
又、本発明に係る鉄を主成分とする合金の表面処理方法としては、前記本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤を用いて、鉄を主成分とする合金の表面に存在する不動態化膜を除去するとともに、鉄を主成分とする合金に対する機械加工やプレス加工時などに当該鉄を主成分とする合金の表面やエッジ部に発生する微細な凸部又はバリ或いは表面の不純物を除去することを特徴とするものである。
即ち、従来の化学的研磨法では、高濃度の酸性溶液を比較的高温度、例えば60〜100℃程度に加熱して使用するものが多く、作業環境を著しく劣悪且つ危険な状態にするという問題がある上、作業者が強酸性の蒸気に曝露され、呼吸器系疾病等、健康上の問題があった。
又、従来の化学的研磨法では、使用後の廃液処理の点において問題があり、環境保護が重要となっている昨今では、環境保護技術(いわゆるエコ・テク)の開発が至極要請され、強酸の使用が制限されている(公害防止取締法、毒物及び劇物取締法、環境計量法等)。
この点につき、本発明の鉄を主成分とする合金の表面処理方法においては、前記本発明の化学研磨剤を用いるものであることから、特に、30℃程度以上と加熱する必要がなく、緩慢な条件下で作業することができるのである。
又、本発明の鉄を主成分とする合金の表面処理方法においては、鉄を主成分とする合金を加工したワークを前記本発明の化学研磨剤に浸漬させるだけのものであるから、ワークの大きさ、形状、数量、硬さには制約がなく、しかも一度に大量のワークを処理することができるため、ワーク間の表面状態の仕上がりが一定のものとなるのである。
なお、ワークを前記本発明の化学研磨剤に浸漬させる浸漬時間としては、化学研磨剤に配合された無機酸や重金属イオン及び又は金属酸化物の種類や組成、濃度或いは、ワークの材質、組成、寸法、更にバリの大きさ等に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、一般的には、30秒から1時間程度の範囲から適宜選択されるものであり、場合によってはこの範囲を超える浸漬時間もとり得る。
又、本発明方法においては、事前にワークに対し前処理を施すことを制限するものではなく、本発明の化学研磨剤に浸漬する前にワーク表面に存する油膜や汚れ等を水酸化ナトリウムや希塩酸等を用いて脱脂洗浄等を行うことにより、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリの除去処理が一層円滑に行えたり、更に鉄を主成分とする合金表面の不純物を一層容易に取り除くことができるのである。
本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、鉄を主成分とする合金の表面を処理するための酸性水溶液であって、この酸性水溶液は、少なくともリン酸、硝酸及び硫酸を含み、当該酸性水溶液全体におけるリン酸の濃度が20〜90重量%、硝酸の濃度が0.5〜9.9重量%、硫酸の濃度が1〜9.9重量%であることを特徴とする化学研磨剤であり、このように構成することにより、10〜30℃程度の緩慢な反応条件下で不動態化膜を破壊し、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリの除去処理が行えたり、更に鉄を主成分とする合金表面の不純物を取り除くことができるなどの効果を奏するのである。
即ち、本発明に係る鉄を主成分とする合金の化学研磨剤においては、リン酸、硝酸及び硫酸を必須構成成分とし、安全性が高く、しかも弱酸であるリン酸の割合を多くし、強酸である硝酸や硫酸の配合割合をそれぞれ10重量%未満とし、しかもこの化学研磨剤に塩酸を添加する場合、硫酸と塩酸の和が10重量%未満であることにより、各構成成分が相乗的に効率良く作用し合う結果、10〜30℃程度の緩慢な反応条件下で不動態化膜を破壊し、ワーク表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くことができるなどの効果を奏するのである。
又、本発明に係る鉄を主成分とする合金の表面処理方法においては、前記本発明の化学研磨剤を用いるものであることから、特に過剰に加温する必要がなく、緩慢な条件下で作業することができる上、作業環境の改善等、安全性はもとより処理後の廃液処理の観点からも有益であるなどの効果を奏するのである。
更に、本発明に係る鉄を主成分とする合金の表面処理方法においては、鉄を主成分とする合金を加工したワークを前記本発明の化学研磨剤に浸漬させるだけのものであることから、ワークの大きさ、形状、数量、硬さには制約がなく、しかも一度に大量のワークを処理することができるため、ワークの表面状態の仕上がりが一定のものになるといった利点も有するなどの効果を奏するのである。
以下、本発明の化学研磨剤及び鉄を主成分とする合金の表面処理方法の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
リン酸74.76重量%、硝酸2.0重量%、硫酸2.5重量%、界面活性剤として非イオン系界面活性剤0.1重量%及び水20.64重量%を加えて均一に混合することにより、本発明の化学研磨剤を得た。
リン酸35.0重量%、硝酸3.1重量%、硫酸7.9重量%及び塩酸2.0重量%に、有機酸としてクエン酸3.0重量%、界面活性剤として非イオン系界面活性剤0.5重量%、溶解促進剤としてチオ尿素0.3重量%を加え、これに更に硝酸マンガン0.1重量%を加え、更に、水48.1重量%を加えることにより、本発明の化学研磨剤を得た。
<テストピース>
フェライト・マルテンサイト系ステンレス(Fe合金鋼400番台)及びオーステナイト系ステンレス(Fe合金鋼300番台)の2種の鉄を主成分とする合金を選択し、それぞれを、直径3.95mm、長さ17.8mm、内径1.2mmのパイプ形状に加工したものをテストピースとして用いた。
なお、このテストピースには、いずれも切断加工時に内径の切り口に0.05〜0.1mm程度の微小バリが発生しており、又、面粗さは異なる5点間の平均でRa0.41〜0.43、Ry2.96〜3.66であった。
まず、フェライト・マルテンサイト系ステンレスを加工したテストピースを前記実施例1及び実施例2の化学研磨剤(25℃)に浸漬したところ、浸漬後15秒後に反応が始まり、5分後にはバリが選択的に反応していることが目視的に確認され、10分経過後には、バリは完全に除去されていた。
そして、このテストピースを化学研磨剤から引上げ、十分に洗浄後、表面荒さ計(ミツトヨ社製 サーフテストSJ−301)を用いて表面粗さを計測したところ、その面粗さは平均でRa0.45〜0.54、Ry3.04〜4.36と殆ど面粗さに影響は見られず、指で触れても処理前のテストピースとの差が確認できず、過剰なエッチングが行われていないことが確認された。
次に、オーステナイト系ステンレスを加工したテストピースを前記実施例1及び実施例2の化学研磨剤(25℃)に浸漬したところ、実施例1の化学研磨剤においては、浸漬後30分経過後にいたっても反応は開始することなく、バリはそのままの状態で残存していた。
一方、実施例2の化学研磨剤においては、浸漬後30秒後に反応が始まり、15分後にはバリが選択的に反応していることが目視的に確認され、30分経過後には、バリは完全に除去されていた。
そして、このテストピースを実施例2の化学研磨剤から引上げ、十分に洗浄後、表面荒さ計を用いて表面粗さを計測したところ、その面粗さは平均でRa0.40〜0.53、Ry3.06〜4.33と殆ど面粗さに影響は見られず、指で触れても処理前のテストピースとの差が確認できず、過剰なエッチングが行われていないことが確認された。
この結果より、ニッケルを含まない鉄を主成分とする合金に対しては、本発明の3成分系の化学研磨剤を用いて、温和な状況下でワーク表面に存する不動態化膜を取り除くことができる上、しかも、ワーク表面を過剰にエッチングすることなく、表面やエッジに発生した微小の凸部や微細なバリ或いは表面状態の不純物を取り除くことができることが確認された。
又、ニッケルを含む鉄を主成分とする合金に対しては、塩酸を添加することにより表面処理を行えることが確認された。
[アルミニウム板との比較実験例]
ところで、アルミサッシ用のアルミニウム板を用い、このアルミニウム板をプレス加工によってその表面やエッジ部に発生する微細な凸部又はバリを発生させたものを実施例1及び実施例2の化学研磨剤(25℃)に浸漬したところ、実施例1及び実施例2共に、浸漬後1〜2分後には、その表面が硝酸によって酸化され、白色化(水酸化アルミニウムの皮膜が生成)し、むしろ光沢が失われ、商品価値が著しく低下することが確認された。
又、このアルミニウム板を実施例1及び実施例2の化学研磨剤に浸漬して20分経過後当該化学研磨剤から引上げ、十分に洗浄後、その表面を目視したところ、目視でも当該表面が著しく荒れ、表面が著しく粗面になっており、又、指で触れてもその表面荒れ状態が明らかに確認できるのであり、この点からも商品価値が著しく低下しており、しかも微細な凸部又はバリはそのまま残存していることが確認された。
従って、この従来の化学研磨剤においては、本発明に係る化学研磨剤とは全く構成成分を異にし、その作用、効果を全く異にするものであり、従って、本発明の化学研磨剤とは全く異なるものである。

Claims (8)

  1. 鉄を主成分とする合金の表面を処理するための酸性水溶液であって、この酸性水溶液は、少なくともリン酸、硝酸及び硫酸を含み、当該酸性水溶液全体におけるリン酸の濃度が20〜90重量%、硝酸の濃度が0.5〜9.9重量%、硫酸の濃度が1〜9.9重量%であることを特徴とする鉄を主成分とする合金の化学研磨剤。
  2. 更に塩酸が酸性水溶液全体に対して0.1〜9.9重量%配合されてなり、且つ硫酸と塩酸の和が10重量%未満である請求項1に記載の鉄を主成分とする合金の化学研磨剤。
  3. 更に有機酸が酸性水溶液全体に対して0.01〜20.0重量%配合されてなる請求項1又は2に記載の鉄を主成分とする合金の化学研磨剤。
  4. 更に重金属イオン及び/又は金属酸化物が配合されてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の鉄を主成分とする合金の化学研磨剤。
  5. 重金属イオンが、錫イオン、鉛イオン、銅イオン、モリブデン酸イオン又はマンガン酸イオンから選ばれた少なくとも1種以上である請求項4に記載の鉄を主成分とする合金の化学研磨剤。
  6. 酸性水溶液中で重金属イオンを発生する化合物がアンモニウム塩又はフッ化物である請求項4又は5に記載の鉄を主成分とする合金の化学研磨剤。
  7. 更に抑制剤、界面活性剤及び溶解促進剤から選ばれた少なくとも1種以上が加えられてなる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の鉄を主成分とする合金の化学研磨剤。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化学研磨剤を用いて、鉄を主成分とする合金の表面に存在する不動態化膜を除去するとともに、鉄を主成分とする合金に対する機械加工やプレス加工時などに当該鉄を主成分とする合金の表面やエッジ部に発生する微細な凸部又はバリ或いは表面の不純物を除去することを特徴とする鉄を主成分とする合金の表面処理方法。
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