本発明は、ガスセンサ素子、及び、これを備えたガスセンサに関する。
従来、自動車エンジンなどの内燃機関の排気通路に取り付けられ、排気ガス(測定対象ガス)中の酸素濃度やNOx濃度を検知するガスセンサが知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1,2には、このガスセンサを構成するガスセンサ素子として、板状の固体電解質体が複数積層されてなるガスセンサ素子が記載されている。このガスセンサ素子は、固体電解質体の表面側または裏面側に設けられた電極と、固体電解質体の表面側または裏面側に設けられ、上記電極に接続されたリードとを備えている。
特許文献1,2では、酸素ポンプ性能を確保するために、電極を多孔質に形成しており、その結果、電極は、ガス透過性及び透水性を有することとなる。一方、電気導通性を向上させるためには、単位面積当たりの充填度合を高くすることが好ましく、そのために、リードを緻密に形成している。その結果、リードは、非ガス透過性及び非透水性を有することとなる。
特許第4165652号公報
特開2010−122187号公報
ところで、特許文献1の図3,4には、電極として、ガスセンサ素子の外部と連通する内部空間に露出する空間露出部、を有する第1電極が記載されている。さらに、リードとして、上記第1電極と接続する第1リードが記載されている。この第1リードは、内部空間内にて第1電極に重なりあうようにして接続している。ところが、第1電極及び第1リードが、上述したような、透水性の電極と非透水性のリードとの組み合わせの場合には、次のような不具合が発生する虞があった。つまり、第1電極のうち、第1リード部に重なる部位(以下、第1接続部)において、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する虞がある。
一方、上述の問題を考慮し、電極の一部を内部空間に露出しない位置まで延ばすことで、第1接続部を、内部空間に露出しない位置に配置することが考えられる。これにより、「第1接続部が内部空間に配置されることで酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
ところが、第1接続部を上記内部空間に露出しない位置に配置したとしても、次のような不具合が発生する虞がある。例えば、冬季には、ガスセンサ素子の表面が結露することがある。この結露により生じた水(結露水)が、ガスセンサ素子の内部空間内に浸入し、さらに、空間露出部を通じて透水性の第1電極内に浸入することがある。第1電極内に浸入した水は、第1リードと接続する第1接続部に達するが、第1リードは非透水性であるため、第1リード内に浸入することができず、その結果、第1接続部に留まることがある。第1接続部に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第1接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、第1接続部を挟む層間にクラックが発生する虞があった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、透水性の電極及びこれに接続された非透水性のリードとを備えるガスセンサ素子において、電極の酸素ポンプ性能を低下させることなく、透水性の電極内に水が浸入しこれが凍結するような場合でも、自身にクラックが発生するのを防止できるガスセンサ素子、及びこれを備えたガスセンサを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、板状の固体電解質体が複数積層されてなるガスセンサ素子であって、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられた電極と、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられ、上記電極に接続されたリードと、を備え、上記電極は、上記ガスセンサ素子の外部と連通する上記ガスセンサ素子の内部空間に露出する空間露出部を有する、透水性の第1電極、を含み、上記リードは、上記第1電極と接続する非透水性の第1リードを含み、上記第1電極は、上記内部空間に露出しない位置に配置され、上記第1リードと接続する第1接続部であって、当該第1電極の中で上記内部空間から最も離れた位置に配置された第1接続部を含み、上記第1接続部全体が、上記内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に位置してなるガスセンサ素子である。
上述のガスセンサ素子は、ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間に露出する空間露出部を有する透水性の第1電極を有すると共に、第1電極と接続する非透水性の第1リードを有している。このうち、第1電極は、上記内部空間に露出しない位置に配置され、上記第1リードと接続する第1接続部を含む(従って、第1電極は、内部空間に露出する空間露出部と内部空間に露出しない第1接続部とを有する)。この第1接続部は、第1リードと内部空間の外側で接続するために、第1電極が延ばされて形成されるため、第1電極のうちで、上記内部空間から最も離れた位置に配置されている。
このような構成のガスセンサ素子では、従来、第1接続部内に水が浸入し、これが凍結するような場合に、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、ガスセンサ素子の内部空間内に浸入し、さらに、空間露出部を通じて第1電極内に浸入することがある。第1電極内に浸入した水は、第1リードと接続する第1接続部に達するが、第1リードは非透水性であるため、第1接続部に留まることがある。そして、第1接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第1接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第1接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、上述のガスセンサ素子では、第1接続部全体を、上記内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。これにより、第1接続部内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。その理由は、次のように考えている。
第1接続部内に水が留まった状態で、この水が凍結し始めると、第1接続部内の微細空孔が次第に小さくなってゆく(氷によって塞がれてゆく)ので、第1接続部内に留まっている水は、第1リードとは反対側(すなわち、水が浸入できるスペースのある内部空間側)に移動してゆく。このとき、第1接続部全体を、上記内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に配置しておく(すなわち、第1接続部のうち内部空間から最も離れている箇所から内部空間までの距離を1.0mm以内と短くしておく)ことにより、第1接続部内に留まっていた水の多くを、第1接続部内で凍結する前に、内部空間にまで移動させる(逃がす)ことができる。その後、内部空間内において多くの水が凍結して膨張しても、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力が発生することはない。その結果、ガスセンサ
素子にクラックが発生するのを防止することができる。
なお、「ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間」には、ガスセンサの外部と直接(介在物がない状態で)連通する内部空間や、多孔質体を通じて外部と連通する(ガス透過可能及び透水可能に連通する)内部空間も含まれる。このうち、多孔質体を通じて外部と連通する内部空間には、1つの多孔質体を通じて外部と連通する内部空間に限らず、複数の多孔質体を通じて外部と連通する(ガス透過可能及び透水可能に連通する)内部空間も含まれる。
その上、上述のガスセンサ素子では、第1電極が、上記内部空間に露出しない位置にて、第1リードと接続している。このため、前述の特許文献1(特許第4165652号公報)と異なり、「第1接続部が内部空間に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
さらに、上記のガスセンサ素子であって、前記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第1絶縁層を有し、前記第1電極の一部と前記第1リードは、上記第1絶縁層上に形成されてなり、上記第1電極の前記空間露出部は、上記第1絶縁層を上記固体電解質体の積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部を有し、上記第1電極の前記第1接続部は、上記第1絶縁層上において、上記第1リードと接続してなるガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子では、第1電極の空間露出部(ガスセンサ素子の内部空間に露出する部位)は、第1絶縁層の貫通孔を通じて、固体電解質体と接触する電解質体接触部を有している。一方、第1リードは、第1絶縁層上に形成している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。また、第1電極の第1接続部は、第1絶縁層上において、第1リードと接続している。従って、上述のガスセンサ素子では、第1電極の第1接続部を、内部空間に露出しない位置に配置すると共に、固体電解質体と接触させないようにしている。
これにより、上述のガスセンサでは、第1電極の電解質体接触部のみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。なお、リードは、第1電極とは電気特性が異なるため、リードやこれと接続した第1接続部の一部が固体電解質と接触する構成とした場合は、ガス濃度を精度良く検知することができないことがある。
さらに、上記いずれかのガスセンサ素子であって、前記電極は、ガス透過性及び透水性を有し、上記ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体、と接触する多孔質体接触部を有する透水性の第2電極を含み、前記リードは、上記第2電極と接続する非透水性の第2リードを含み、上記第2電極は、前記固体電解質体の積層方向に直交する平面方向について上記多孔質体から離れた位置で、上記第2リードと接続する第2接続部であって、当該第2電極の中で上記多孔質体から最も離れた位置に配置された第2接続部を含み、上記第2接続部全体が、上記多孔質体からの距離が1.0mm以内の領域内に位置してなるガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子は、ガス透過性及び透水性を有し、ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体を有している。さらに、この多孔質体と接触する多孔質体接触部を有する透水性の第2電極を有すると共に、第2電極と接続する非透水性の第2リードを有している。このうち、第2電極は、多孔質体から平面方向に離れた位置で、第2リードと接続す
る第2接続部を有している(従って、第2電極は、多孔質体と接触する多孔質体接触部
と、多孔質体と接触しない第2接続部とを有している)。この第2接続部は、第2リードと多孔質体から離れた位置で接続するために、第2電極が延ばされて形成されるため、第2電極のうちで、上記多孔質体から最も離れた位置に配置されている。
このような構成を有するガスセンサ素子でも、従来、第2接続部内に水が浸入し、これが凍結するような場合に、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、多孔質体を通じて、これに接触する第2電極内に浸入することがある。第2電極内に浸入した水は、第2リードと接続する第2接続部に達するが、第2リードは非透水性であるため、第2接続部に留まることがある。そして、第2接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第2接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第2接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、上述のガスセンサ素子では、第2接続部全体を、多孔質体からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。これにより、第2接続部内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。その理由は、次のように考えている。
第2接続部内に水が留まった状態で、この水が凍結し始めると、第2接続部内の微細空孔が次第に小さくなってゆく(氷によって塞がれてゆく)ので、第2接続部内に留まっている水は、第2リードとは反対側(すなわち、水が浸入できるスペースのある多孔質体側)に移動してゆく。このとき、第2接続部全体を、上記多孔質体からの距離が1.0mm以内の領域内に配置しておく(すなわち、第2接続部のうち多孔質体から最も離れている箇所から多孔質体までの距離を1.0mm以内と短くしておく)ことにより、第2接続部内に留まっていた水の多くを、第2接続部内で凍結する前に、多孔質体にまで移動させる(逃がす)ことができる。その後、多孔質体内において多くの水が凍結して膨張しても、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力が発生することはない。多孔質体は外部に露出しているので、仮に、多孔質体内が水で満たされていたとしても、凍結の際、その水を外部に逃がすことができるので、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力が発生することはない。従って、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。
その上、第2電極は、多孔質体から平面方向に離れた位置で、第2リードと接続している。このため、「第2接続部が多孔質体と重なる位置に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
さらに、上記のガスセンサ素子であって、前記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第2絶縁層を有し、前記第2電極の一部と前記第2リードは、上記第2絶縁層上に形成されてなり、上記第2電極の前記多孔質体接触部は、上記第2絶縁層を前記積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部を有し、上記第2電極の前記第2接続部は、上記第2絶縁層上において、上記第2リードと接続してなるガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子では、第2電極の多孔質体接触部(多孔質体と接触する部位)は、第2絶縁層の貫通孔を通じて、固体電解質体と接触する電解質体接触部を有している。一方、第2リードは、第2絶縁層上に形成している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。また、第2電極の第2接続部は、第2絶縁層上において、第2リードと接続している。従って、上述のガスセンサ素子では、第2電極の第2接続部を、多孔質体から平面方向に離れた位置に配置しつつ、固体電解質体と接触させないようにしている。
これにより、上述のガスセンサでは、第2電極の電解質体接触部のみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。なお、リードは、第2電極とは電気特性が異なるため、リードやこれと接続した第2接続部の一部が固体電解質と接触する構成とした場合は、ガス濃度を精度良く検知することができないことがある。
本発明の他の態様は、板状の固体電解質体が複数積層されてなるガスセンサ素子であって、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられた電極と、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられ、上記電極に接続されたリードと、を備え、上記電極は、上記ガスセンサ素子の外部と連通する上記ガスセンサ素子の内部空間内に配置された透水性の第3電極を含み、上記リードは、上記第3電極と接続する非透水性の第3リードを含み、上記ガスセンサ素子は、上記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第3絶縁層を有し、上記第3電極の一部と上記第3リードは、上記第3絶縁層上に形成されてなり、上記第3電極は、上記第3絶縁層を上記固体電解質体の積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部と、上記内部空間内で且つ上記第3絶縁層上において、上記第3リードと接続する第3接続部と、を有するガスセンサ素子である。
上述のガスセンサ素子では、ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間内に配置された透水性の第3電極を有している。すなわち、第3電極は、その全体が上記内部空間内に配置されている(第3電極の表面または裏面の全体が内部空間に露出している)。また、上記内部空間内で第3電極の第3接続部と接続する非透水性の第3リードを有している。
このような構成とすることで、第3電極内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。第3接続部を含む第3電極の全体が内部空間内に配置されているため、第3接続部を含む第3電極内に留まった水を内部空間内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
その上、第3電極の第3接続部は、第3絶縁層上において、第3リードと接続している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。従って、第3接続部が内部空間に配置されていても、第3接続部が第3電極の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(第3電極の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。
さらに、上記のガスセンサ素子であって、前記電極は、ガス透過性及び透水性を有し、上記ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体、と接触する透水性の第4電極であって、その全体が、前記固体電解質体の積層方向について上記多孔質体に対向する位置に配置された第4電極を含み、前記リードは、上記第4電極と接続する非透水性の第4リードを含み、上記ガスセンサ素子は、上記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第4絶縁層を有し、上記第4電極の一部と上記第4リードは、上記第4絶縁層上に形成されてなり、上記第4電極は、上記第4絶縁層を上記積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部と、上記積層方向について上記多孔質体と対向する位置で、且つ、上記第4絶縁層上において、上記第4リードと接続する第4接続部と、を有するガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子は、ガス透過性及び透水性を有し、ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体を有している。さらに、多孔質体と接触する透水性の第4電極であって、その全体が、固体電解質体の積層方向(厚み方向)について多孔質体に対向する位置に配置された第4電極を有している。ここで、「第4電極の全体が多孔質体に対向する」とは、多孔質体の全体が多孔質体に接触しつつ対向する場合の他、第4電極の一部がリードを挟んで多孔質体に対向すると共に、その他の部位が多孔質体に接触する形態で、透水性電極の全体が多孔質体に対向する場合も含む。また、上述のガスセンサ素子では、上記積層方向について上記多孔質体と対向する位置で、第4電極の第4接続部と接続する第4リードを有する。
このような構成とすることで、第4電極内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。第4接続部を含む第4電極の全体が多孔質体に対向して配置され、第4電極の全体またはリードと接触した部位のみを除いた第4電極の大部分が多孔質体に接触しているため、第4電極内に留まった水の多くを多孔質体の空孔内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
その上、第4電極の第4接続部は、第4絶縁層上において、第4リードと接続している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。従って、第4接続部が多孔質体と重なる位置(積層方向に対向する位置)に配置されていても、第4接続部が第4電極の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(第4電極の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。
さらに、上記いずれかのガスセンサ素子であって、前記ガスセンサ素子は、測定対象ガスに含まれるNOxの濃度を検出するガスセンサ素子であり、前記第1リードまたは前記第3リードとして、NOx濃度に応じた電流が流れるリードを備えるガスセンサ素子とすると良い。
測定対象ガス(例えば、内燃機関の排ガス)に含まれるNOxの濃度を精度良く検知するためには、NOx濃度に応じた電流が流れるリードを緻密に形成する必要がある。緻密に形成したリードは、非透水性になる。このため、従来、NOx濃度に応じた電流が流れるリードと電極と接続した場合、前述のように、電極内に水が浸入し、この水が凍結するような場合には、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。
しかしながら、上述のガスセンサ素子では、第1リードまたは第3リードとして、NOx濃度に応じた電流が流れるリードを備えている。前述のように、第1リードと接続する第1電極の第1接続部全体を、内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。第3リードと接続する第3電極の第3接続部については、内部空間内に配置している。これにより、第1(第3)電極内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。
また、本発明の他の態様は、上記いずれかのガスセンサ素子を備えるガスセンサである。
このガスセンサは、前述のいずれかのガスセンサ素子を有している。このため、このガスセンサでは、電極の酸素ポンプ性能を低下させることなく、透水性の電極内に水が浸入しこれが凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができ、測定対象ガスを適切に検知することができる。
実施形態及び変形形態にかかるガスセンサの断面図である。
実施形態及び変形形態にかかるガスセンサ素子の斜視図である。
図2のB−B断面図である。
ガスセンサ素子を構成する各層を示す斜視図である。
図4のE部の拡大図である。
図4のF部の拡大図である。
Ip2−電極の接続部の位置を示す図であり、図3のC矢視図である。
Ip1+電極の接続部の位置を示す図であり、図3のG矢視図である。
距離D1,D2とクラック発生率との相関図である。
変形形態にかかるガスセンサ素子について、Ip2−電極の接続部の位置 を示す図である。
変形形態にかかるガスセンサ素子について、Ip1+電極の接続部の位置 を示す図である。
(実施形態)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態にかかるガスセンサ1の縦断面図(軸線AXに沿って切断した断面図)である。図2は、実施形態にかかるガスセンサ素子10の斜視図である。図3は、図2のB−B断面図であり、ガスセンサ素子10の内部構造を示している。図4は、ガスセンサ素子10を構成する各層を示す斜視図であり、積層方向(図4において上下方向)について積層順に並べて示している。図5は、図4のE部の拡大図であり、図6は、図4のF部の拡大図である。
ガスセンサ1は、測定対象ガスである排ガス中の特定ガス(NOx)の濃度を検出可能なガスセンサ素子10を備え、内燃機関の排気管(図示なし)に装着されて使用されるNOxセンサである(図1参照)。このガスセンサ1は、排気管に固定するためのネジ部21が外表面の所定位置に形成された筒状の主体金具20を備える。ガスセンサ素子10は、軸線AX方向に延びる細長板状をなし、主体金具20の内側に保持されている(図1、図2参照)。
さらに詳しくは、ガスセンサ1は、ガスセンサ素子10の後端部10k(図1において上端の部位)が挿入される挿入孔62を有する保持部材60と、この保持部材60の内側に保持された6個の端子部材とを備える。なお、図1では、6個の端子部材のうち2個の端子部材(具体的には、端子部材75,76)のみを図示している。
ガスセンサ素子10の後端部10k(図2において右端部)には、平面視矩形状の電極端子部が合計6個形成されている。詳細には、ガスセンサ素子10の第1面10aに、電極端子部13,14,15が形成され、第2面10bに、電極端子部16,17,18が形成されている。電極端子部13〜18には、それぞれ、前述の端子部材が弾性的に当接して電気的に接続している(図1参照)。具体的には、各々の端子部材の先端側に位置する素子当接部が、電極端子部13〜18のいずれかに弾性的に当接する。例えば、電極端子部14には、端子部材75の素子当接部75bが弾性的に当接して電気的に接続している。また、電極端子部17には、端子部材76の素子当接部76bが弾性的に当接して電気的に接続している(図1参照)。
さらに、6個の端子部材(端子部材75,76など)には、それぞれ、異なるリード線71が電気的に接続されている。具体的には、端子部材の後端部に位置するリード線把持部によって、リード線71の芯線が把持されることで、端子部材にリード線71が電気的に接続される。例えば、図1に示すように、端子部材75のリード線把持部77によって、リード線71の芯線が把持されることで、端子部材75にリード線71が電気的に接続される。また、端子部材76のリード線把持部78によって、他のリード線71の芯線
が把持されることで、端子部材76に他のリード線71が電気的に接続される。
主体金具20は、軸線AX方向に貫通する貫通孔23を有する筒状部材である。この主体金具20は、径方向内側に突出する形態で貫通孔23の一部を構成する棚部25を有している。主体金具20は、ガスセンサ素子10の先端部10sを自身の先端側外部(図1において下方)に突出させると共に、ガスセンサ素子10の後端部10kを自身の後端側外部(図1において上方)に突出させた状態で、ガスセンサ素子10を貫通孔23内に保持している。
また、主体金具20の貫通孔23の内部には、環状のセラミックホルダ42、滑石粉末を環状に充填してなる2つの滑石リング43,44、及びセラミックスリーブ45が配置されている。詳細には、ガスセンサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で、セラミックホルダ42、滑石リング43,44、及びセラミックスリーブ45が、この順に、主体金具20の軸線方向先端側(図1において下端側)から軸線方向後端側(図1において上端側)にわたって重ねて配置されている。
また、セラミックホルダ42と主体金具20の棚部25との間には、金属カップ41が配置されている。また、セラミックスリーブ45と主体金具20のカシメ部22との間には、加締リング46が配置されている。なお、主体金具20のカシメ部22が、加締リング46を介してセラミックスリーブ45を先端側に押し付けるように、加締められている。
主体金具20の先端部20bには、ガスセンサ素子10の先端部10sを覆うように、複数の孔を有する金属製(具体的にはステンレス)の外部プロテクタ31及び内部プロテクタ32が、溶接によって取り付けられている。一方、主体金具20の後端部には、外筒51が溶接によって取り付けられている。外筒51は、軸線AX方向に延びる筒状をなし、ガスセンサ素子10を包囲している。
保持部材60は、絶縁性材料(具体的にはアルミナ)からなり、軸線AX方向に貫通する挿入孔62を有する筒状部材である。挿入孔62内には、前述した6個の端子部材(端子部材75,76など)が配置されている(図1参照)。保持部材60の後端部には、径方向外側に突出する鍔部65が形成されている。保持部材60は、鍔部65が内部支持部材53に当接する態様で、内部支持部材53に保持されている。なお、内部支持部材53は、外筒51のうち径方向内側に向けて加締められた加締部51gにより、外筒51に保持されている。
保持部材60の後端面61上には、絶縁部材90が配置されている。絶縁部材90は、電気絶縁性材料(具体的にはアルミナ)からなり、円筒状をなす。この絶縁部材90には、軸線AX方向に貫通する貫通孔91が合計6個形成されている。この貫通孔91には、前述した端子部材のリード線把持部(リード線把持部77,78など)が配置されている。
また、外筒51のうち軸線方向後端部(図1において上端部)に位置する後端開口部51cの径方向内側には、フッ素ゴムからなる弾性シール部材73が配置されている(図1参照)。この弾性シール部材73には、軸線AX方向に延びる円筒状の挿通孔73cが、合計6個形成されている。各々の挿通孔73cは、弾性シール部材73の挿通孔面73b(円筒状の内壁面)によって構成されている。各々の挿通孔73cには、リード線71が1本ずつ挿通されている。各々のリード線71は、弾性シール部材73の挿通孔73cを通じて、ガスセンサ1の外部に延出している。弾性シール部材73は、外筒51の後端開口部51cを径方向内側に加締めることで径方向に弾性圧縮変形し、これにより、挿通孔面73bとリード線71の外周面71bとを密着させて、挿通孔面73bとリード線71の外周面71bとの間を水密に封止している。
一方、ガスセンサ素子10は、図3に示すように、板状の固体電解質体111、121、131と、これらの間に配置された絶縁体140、145とを備え、これらが積層方向(図3において上下方向)に積層された構造を有する。さらに、ガスセンサ素子10には、固体電解質体131の裏面131c側(図3において下面側)に、ヒータ161が積層されている。このヒータ161は、アルミナを主体とする板状の絶縁体162、163と、その間に埋設されたヒータパターン164(Ptを主体としている)とを備えている(図3,6参照)。ヒータパターン164は、曲線状の発熱部164dと、発熱部164dの両端にそれぞれ接続される直線状の第1リード部164b及び第2リード部164cとを備える。第1リード部164bは電極端子部16に電気的に接続され、第2リード部164cは電極端子部18に電気的に接続されている(図6参照)。
固体電解質体111、121、131は、固体電解質であるジルコニアからなり、酸素イオン伝導性を有する。固体電解質体111の表面111b側(図3において上面側)には、多孔質のIp1+電極112が設けられている。また、固体電解質体111の裏面111c側(図3において下面側)には、多孔質のIp1−電極113が設けられている。Ip1+電極112及びIp1−電極113は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されており、ガス透過性及び透水性を有している。
なお、本実施形態では、次のようにして、Ip1+電極112及びIp1−電極113を形成している。具体的には、まず、100重量部のPt粉末と14重量部のセラミック粉末と10重量部の有機バインダー(例えば、エチルセルロース)を混合し、この混合物に対し所定量の溶媒を加えて、電極用ペーストを作製する。次いで、この電極用ペーストを固体電解質体111の表面111b側及び裏面111c側に塗工する。その後、加熱により有機バインダを消失させて、多孔質の電極112、113が形成される。
図5に示すように、Ip1+電極112の接続部112dには、Ip1+リード116が接続されている。このIp1+リード116は、電極端子部13に電気的に接続されている。また、Ip1−電極113の接続部113dには、Ip1−リード117が接続されている。このIp1−リード117は、電極端子部15に電気的に接続されている。Ip1+リード116及びIp1−リード117は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Ip1+電極112及びIp1−電極113と異なり、緻密に形成されている。このため、Ip1+リード116及びIp1−リード117は、非透水性を有している。
なお、本実施形態では、次のようにして、Ip1+リード116及びIp1−リード117を形成している。具体的には、まず、100重量部のPt粉末と18重量部のセラミック粉末と5重量部の有機バインダー(例えば、エチルセルロース)を混合し、この混合物に対し所定量の溶媒を加えて、リード用ペーストを作製する。次いで、このリード用ペーストを固体電解質体111の表面111b側及び裏面111c側に塗工する。その後、加熱により有機バインダを消失させて、リード116、117が形成される。
ところで、リード用ペーストは、前述の電極用ペーストに比べて、有機バインダーの添加量を少量(約半分の量)にしている。このように、加熱により消失して内部空孔を形成する有機バインダの添加量を少量とすることで、内部空孔の少ない緻密なリード116、117が形成される。
また、Ip1+電極112及びIp1+リード116の表面側(図3〜図5において上面側)には、アルミナ等からなる保護層115が積層されている。この保護層115のうちIp1+電極112と積層方向に対向する位置には、ガスセンサ素子10の外部に露出する第1多孔質体114(特許請求の範囲の多孔質体に相当する)が設けられている。この第1多孔質体114は、ガス透過性及び透水性を有し、Ip1+電極112の一部と接触している。Ip1+電極112のうち第1多孔質体114と接触する部位を、多孔質体接触部112bとする。
固体電解質体111及び電極112、113は、Ip1セル110(第1ポンプセル)を構成する(図3参照)。このIp1セル110は、電極112、113間に流すポンプ電流Ip1に応じて、電極112の接する雰囲気(ガスセンサ素子10の外部の雰囲気)と電極113の接する雰囲気(後述する第1測定室150内の雰囲気)との間で酸素の汲み出し及び汲み入れ(いわゆる酸素ポンピング)を行う。
固体電解質体121は、絶縁体140を挟んで、固体電解質体111と積層方向に対向するように配置されている。固体電解質体121の表面121b側(図3において上面側)には、多孔質のVs−電極122が設けられている。また、固体電解質体121の裏面121c側(図3において下面側)には、多孔質のVs+電極123が設けられている。Vs−電極122及びVs+電極123は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されており、ガス透過性及び透水性を有している。
図5に示すように、Vs−電極122の接続部122dには、Vs−リード126が接続されている。このVs−リード126は、電極端子部15に電気的に接続されている。このVs−リード126は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Vs−電極122と異なり、緻密に形成されている。このため、Vs−リード126は、非透水性を有している。一方、図5,6に示すように、Vs+電極123の接続部123dには、Vs+リード127が接続されている。このVs+リード127は、電極端子部14に電気的に接続されている。このVs+リード127は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Vs+電極123と同時に形成されるため、多孔質に形成されている。このため、Vs+リード127は、ガス透過性及び透水性を有している。
固体電解質体111と固体電解質体121との間には、ガスセンサ素子の内部空間としての第1測定室150が形成されている(図3参照)。この第1測定室150は、排気通路内を流通する排ガスが、ガスセンサ素子10内に最初に導入される内部空間であり、ガス透過性及び透水性を有する第2多孔質体151を通じてガスセンサ素子10の外部と連通している。第2多孔質体151は、ガスセンサ素子10の外部との仕切りとして、第1測定室150の側方に設けられており、第1測定室150内への排ガスの単位時間あたりの流通量を制限する(図2、図5参照)。
第1測定室150の後端側(図3において右側)には、第1測定室150と後述する第2測定室160との間の仕切りとして、排ガスの単位時間あたりの流通量を制限する第3多孔質体152が設けられている。
固体電解質体121及び電極122、123は、Vsセル120を構成する(図3参照)。このVsセル120は、主として、固体電解質体121により隔てられた雰囲気(電極122の接する第1測定室150内の雰囲気と、電極123の接する基準酸素室170内の雰囲気)間の酸素分圧差に応じて起電力を発生する。
固体電解質体131は、絶縁体145を挟んで、固体電解質体121と積層方向に対向するように配置されている。固体電解質体131の表面131b側(図3において上面側)には、多孔質のIp2+電極132と多孔質のIp2−電極133が設けられてい
る。Ip2+電極132及びIp2−電極133は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されており、ガス透過性及び透水性を有している。
図6に示すように、Ip2+電極132には、Ip2+リード136が接続されている。このIp2+リード136は、電極端子部17に電気的に接続されている。このIp2+リード136は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Ip2+電極132と同時に形成されるため、多孔質に形成されている。このため、Ip2+リード136は、ガス透過性及び透水性を有している。一方、Ip2−電極133の接続部133dには、Ip2−リード137が接続されている。このIp2−リード137は、電極端子部15に電気的に接続されている。このIp2−リード137は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Ip2−電極133と異なり、緻密に形成されている。このため、Ip2−リード137は、非透水性を有している。
Ip2+電極132とVs+電極123との間には、孤立した小空間としての基準酸素室170が形成されている(図3参照)。この基準酸素室170は、絶縁体145に形成されている開口部145bにより構成されている。なお、基準酸素室170内のうちIp2+電極132側には、セラミックス製の多孔質体が配置されている。
また、Ip2−電極133と積層方向に対向する位置には、ガスセンサ素子の内部空間としての第2測定室160が形成されている。この第2測定室160は、絶縁体145を積層方向に貫通する開口部145cと、固体電解質体121を積層方向に貫通する開口部125と、絶縁体140を積層方向に貫通する開口部141とにより構成されている。
第1測定室150と第2測定室160とは、ガス透過性及び透水性を有する第3多孔質体152を通じて連通している。従って、第2測定室160は、第2多孔質体151、第1測定室150、及び第3多孔質体152を通じて、ガスセンサ素子10の外部と連通している。
なお、本実施形態では、第1測定室150と第2測定室160とが、特許請求の範囲に記載の「ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間」に相当する。
固体電解質体131及び電極132、133は、NOx濃度を検知するためのIp2セル130(第2ポンプセル)を構成する。このIp2セル130は、第2測定室160内で分解されたNOx由来の酸素(酸素イオン)を、固体電解質体131を通じて、基準酸素室170に移動させる。このとき、電極132に接続されたリード136及び電極133に接続されたリード137には、第2測定室160内に導入された排ガス(測定対象ガス)に含まれるNOxの濃度に応じた電流が流れる。
なお、本実施形態では、固体電解質体111の表面111b上に、アルミナ絶縁層118が形成されている。さらに、Ip1+電極112の一部及びIp1+リード116は、アルミナ絶縁層118上に形成されている。さらに、Ip1+電極112の多孔質体接触部112bは、アルミナ絶縁層118を積層方向に貫通する貫通孔118bを通じて、固体電解質体111と接触する電解質体接触部112cを有する。
さらに、固体電解質体111の裏面111c上には、アルミナ絶縁層119が形成されている。さらに、Ip1−電極113の一部及びIp1−リード117は、アルミナ絶縁層119上に形成されている。さらに、Ip1−電極113のうち第1測定室150(内部空間)に露出する空間露出部113bは、アルミナ絶縁層119を積層方向に貫通する貫通孔119bを通じて、固体電解質体111と接触する電解質体接触部113cを有する。
さらに、本実施形態では、固体電解質体121の表面121b上に、アルミナ絶縁層128が形成されている。さらに、Vs−電極122の一部及びVs−リード126は、アルミナ絶縁層128上に形成されている。さらに、Vs−電極122のうち第1測定室150(内部空間)に露出する空間露出部122bは、アルミナ絶縁層128を積層方向に貫通する貫通孔128bを通じて、固体電解質体121と接触する電解質体接触部122cを有する。
さらに、固体電解質体121の裏面121c上には、アルミナ絶縁層129が形成されている。さらに、Vs+電極123の一部及びVs+リード127は、アルミナ絶縁層129上に形成されている。さらに、Vs+電極123は、アルミナ絶縁層129を積層方向に貫通する貫通孔129bを通じて、固体電解質体121と接触する電解質体接触部123cを有する。
さらに、本実施形態では、固体電解質体131の表面131b上に、アルミナ絶縁層138が形成されている。さらに、Ip2+電極132の一部及びIp2+リード136は、アルミナ絶縁層138上に形成されている。さらに、Ip2−電極133の一部及びIp2−リード137も、アルミナ絶縁層138上に形成されている。電極132は、アルミナ絶縁層138を積層方向に貫通する貫通孔138bを通じて、固体電解質体131と接触する電解質体接触部132cを有する。また、電極133のうち第2測定室160(内部空間)に露出する空間露出部133bは、アルミナ絶縁層138を積層方向に貫通する貫通孔138cを通じて、固体電解質体131と接触する電解質体接触部133cを有する。
このような構成とすることで、電極112、113、122、123、132、133のうち電解質体接触部112c、113c、122c、123c、132c、133cのみを、実際に感応部として機能させることができ、測定対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。なお、リード116、117、126、137は、電極112、113、122、133とは電気特性が異なるため、リードやこれと接続した接続部の一部が固体電解質と接触する構成とした場合は、接触させない本実施形態と比べて、ガス濃度の検知精度が劣ることになる。
なお、本実施形態では、Ip1−電極113、Vs−電極122、及び、Ip2−電極133が、特許請求の範囲に記載の「第1電極」に相当する。さらに、Ip1−リード117、Vs−リード126、及び、Ip2−リード137が、特許請求の範囲に記載の「第1リード」に相当する。また、Ip1+電極112が、特許請求の範囲に記載の「第2電極」に相当する。さらに、Ip1+リード116が、特許請求の範囲に記載の「第2リード」に相当する。
また、Ip1+電極112(第2電極)の接続部112dは、積層方向に直交する平面方向(図3、図5において左右方向)について第1多孔質体114から離れた位置に配置されており、Ip1+リード116(第2リード)と接続している。しかも、この接続部112dは、Ip1+電極112のうちで第1多孔質体114から最も離れた位置に配置されている。
さらに、Ip1−電極113(第1電極)の接続部113dは、第1測定室150(内部空間)に露出しない位置に配置され、第1測定室150の外側でIp1−リード117と接続している。しかも、この接続部113dは、Ip1−電極113のうちで第1測定室150から最も離れた位置に配置されている。同様に、Vs−電極122の接続部122dも、第1測定室150(内部空間)に露出しない位置に配置され、第1測定室150の外側でVs−リード126と接続している。しかも、この接続部122dは、Vs−電極122のうちで第1測定室150から最も離れた位置に配置されている。
また、Ip2−電極133の接続部133dは、第2測定室160(内部空間)に露出しない位置に配置され、第2測定室160の外側でIp2−リード137と接続している。しかも、この接続部133dは、Ip2−電極133のうちで第2測定室160から最も離れた位置に配置されている。
なお、本実施形態では、Ip1+電極112の接続部112dが、特許請求の範囲に記載の「第2接続部」に相当する。また、Ip1−電極113の接続部113d、Vs−電極122の接続部122d、及び、Ip2−電極133の接続部133dが、特許請求の範囲に記載の「第1接続部」に相当する。
上述のように、本実施形態では、接続部113d、122d、133d(第1接続部)が、第1測定室150、第2測定室160(内部空間)に露出しない位置で、Ip1−リード117、Vs−リード126、Ip2−リード137(第1リード)と接続している。これにより、前述の特許文献1(特許第4165652号公報)と異なり、「第1接続部が内部空間に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
さらに、接続部112d(第2接続部)が、第1多孔質体114から平面方向(図3、図5において左右方向)に離れた位置で、Ip1+リード116(第2リード)と接続している。これにより、「第2接続部が多孔質体と重なる位置に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
ここで、本実施形態のガスセンサ1によるNOx濃度検知について、簡単に説明する。
ガスセンサ素子10の固体電解質体111、121、131は、ヒータパターン164の昇温に伴い加熱され、活性化する。これにより、Ip1セル110、Vsセル120、及びIp2セル130が動作するようになる。
排気通路(図示なし)内を流通する排ガス(測定対象ガス)は、第2多孔質体151による流通量の制限を受けつつ第1測定室150内に導入される。このとき、Vsセル120には、電極123側から電極122側へ微弱な電流Icpが流されている。このため、排ガス中の酸素は、負極側となる第1測定室150内の電極122から電子を受け取ることができ、酸素イオンとなって固体電解質体121内を流れ、基準酸素室170内に移動する。つまり、電極122、123間で電流Icpが流されることによって、第1測定室150内の酸素が基準酸素室170内に送り込まれる。
第1測定室150内に導入された排ガスの酸素濃度が所定値より薄い場合、電極112側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、ガスセンサ素子10の外部から第1測定室150内へ酸素の汲み入れを行う。一方、第1測定室150内に導入された排ガスの酸素濃度が所定値より濃い場合、電極113側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、第1測定室150内からガスセンサ素子10外部へ酸素の汲み出しを行う。
このように、第1測定室150において酸素濃度が調整された排ガスは、第3多孔質体152を通じて、第2測定室160内に導入される。第2測定室160内で電極133と接触した排ガス中のNOxは、電極132、133間に電圧Vp2を印加されることで、電極133上で窒素と酸素に分解(還元)され、分解された酸素は、酸素イオンとなって固体電解質体131内を流れ、基準酸素室170内に移動する。このとき、第1測定室150で汲み残された残留酸素も同様に、Ip2セル130によって基準酸素室170内に移動する。これにより、Ip2セル130には、NOx由来の電流及び残留酸素由来の電流が流れる。
ここで、第1測定室150で汲み残された残留酸素の濃度は、上記のように所定値に調整されているため、その残留酸素由来の電流は略一定とみなすことができ、NOx由来の電流の変動に対し影響は小さく、Ip2セル130を流れる電流は、NOx濃度に比例することとなる。従って、Ip2セル130を流れる電流Ip2を検出し、その電流値に基づいて、排ガス中のNOx濃度を検知することができる。
ところで、従来のガスセンサ素子では、第1電極(例えば、Ip1−電極113)内に水が浸入し、これが凍結するような場合に、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、第2多孔質体151を通じてガスセンサ素子の内部空間内に浸入し、さらに、第1電極内に浸入することがある。第1電極内に浸入した水は、第1リード(例えば、Ip1−リード117)と接続する第1接続部(例えば、接続部113d)に達するが、第1リードは非透水性であるため、第1接続部に留まることがある。第1接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第1接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第1接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、本実施形態のガスセンサ素子10では、第1接続部(具体的には、接続部113d、122d、133d)の全体を、内部空間(第1測定室150または第2測定室160)からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。例えば、図7に示すように、接続部133d(第1接続部)の全体を、第2測定室160(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域A1(図7において二点鎖線K1で囲まれた領域)の内側に配置している。これと同様に、接続部113d、122dについても、その全体を、第1測定室150(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域の内側に配置している。
これにより、Ip2−電極133(第1電極)内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子10にクラックが発生するのを防止することができる。Ip1−電極113、Vs−電極122内に水が浸入した場合も、同様である。これらのことは、後述する凍結試験の結果より明らかである。なお、クラック発生を防止できる理由は、次のように考えている。
例えば、Ip2−電極133の接続部133d内に水が留まった状態で、この水が凍結し始めると、接続部133d内の微細空孔が次第に小さくなってゆく(氷によって塞がれてゆく)ので、接続部133d内に留まっている水は、Ip2−リード137(第1リード)とは反対側(すなわち、水が浸入できるスペースのある第2測定室160側、図7において左側)に移動してゆく。このとき、接続部133d全体を、第2測定室160からの距離が1.0mm以内の領域A1内に配置しておく(すなわち、接続部133dのうち第2測定室160から最も離れた箇所から第2測定室160までの距離D1を1.0mm以内と短くしておく)ことにより、接続部133d内に留まっていた水の多くを、接続部133d内で凍結する前に、第2測定室160にまで移動させる(逃がす)ことができる。その後、第2測定室160内において多くの水が凍結して膨張しても、ガスセンサ素子10の層間を引き離す応力が発生することはない。その結果、ガスセンサ素子10にクラックが発生するのを防止することができる。Ip1−電極113の接続部113d及びVs−電極122の接続部122d内に溜まった水が凍結する場合も、同様であると考えている。
また、従来のガスセンサ素子では、第2電極(Ip1+電極112)内に水が浸入し、これが凍結するような場合にも、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、第1多孔質体114を通じて、これに接触する第2電極内に浸入することがある。第2電極内に浸入した水は、第2リード(Ip1+リード116)と接続する第2接続部(接続部112d)に達するが、第2リードは非透水性であるため、第2接続部に留まることがある。第2接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第2接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第2接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、本実施形態のガスセンサ素子10では、図8に示すように、接続部112d(第2接続部)の全体を、第1多孔質体114からの距離が1.0mm以内の領域A2(図8において二点鎖線K2で囲まれた領域)内に配置している。換言すれば、接続部112d(第2接続部)のうち第1多孔質体114から最も離れている箇所から第1多孔質体114までの距離D2を、1.0mm以内としている。これにより、Ip1+電極112(第2電極)内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子10にクラックが発生するのを防止することができる。このことは、後述する凍結試験の結果より明らかである。従って、このようなガスセンサ素子10を備えるガスセンサ1では、透水性の電極内に水が浸入しこれが凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができ、測定対象ガスを適切に検知することができる。
(凍結試験)
次に、ガスセンサ素子に対し行った凍結試験について説明する。
具体的には、第1接続部(接続部113d、122d、または、接続部133d)のうち内部空間(第1測定室150または第2測定室160)から最も離れている箇所から内部空間までの距離D1、及び、第2接続部(接続部112d)のうち第2多孔質体から最も離れている箇所から第2多孔質体までの距離D2を異ならせたガスセンサ素子(以下、試験素子ともいう)を、20個作製した。距離D1,D2は、それぞれの接続部について、0〜2.0mmの範囲で、0.2mm間隔で異ならせている。
次いで、作製した試験素子を用いて凍結試験を行った。具体的には、まず、試験素子の先端部(第2多孔質体151及び第1多孔質体114を含む端部)を水没させ、この状態で24時間放置する。これにより、第2多孔質体151及び第1多孔質体114を通じて、試験素子内(電極112,113,122,133内)に水を浸入させる。次いで、試験素子を水中から取り出し、試験素子の表面に付着している水を拭き取る。次に、試験素子を、−20℃に槽内温度を設定した恒温槽内に配置し、2分間放置する。これにより、試験素子内に浸入した水を凍結させる。その後、試験素子を恒温槽内から取り出し、室温で1分間放置する。この恒温槽内放置と室温放置とを10回繰り返し行った後、試験素子の表面にレッド液を塗布する。塗布後、一定時間経過した後、試験素子の表面を拭き取る。拭き取った後の試験素子表面の外観チェックにより、クラック発生の有無を確認した。
具体的には、クラックが発生している箇所では、レッド液がその内部に浸透するため、試験素子の表面を拭き取った後も、レッド液が残存することになる。従って、第1接続部(接続部113d、122d、または、接続部133d)及び第2接続部(接続部112d)を挟んだ層間にクラックが発生している場合は、当該層間にレッド液が残存することになる。このような考えに基づいて、クラック発生の有無を判断した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、距離D1を1.0mm以下とした場合は、ガスセンサ素子にクラックは発生しなかった。同様に、距離D2を1.0mm以下とした場合も、ガスセンサ素子にクラックは発生しなかった。
一方、距離D1を1.0mmより大きくした場合は、ガスセンサ素子にクラックが発生した。具体的には、距離D1を1.2mmとした場合は、クラックの発生率が15%となった。すなわち、20個の試験素子のうち3個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を1.4mmとした場合は、クラックの発生率が25%となった。すなわち、20個の試験素子のうち5個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を1.6mmとした場合は、クラックの発生率が50%となった。すなわち、20個の試験素子のうち10個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を1.8mmとした場合は、クラックの発生率が85%となった。すなわち、20個の試験素子のうち17個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を2.0mmとした場合は、クラックの発生率が100%となった。すなわち、20個の試験素子の全てにおいて、クラックが発生した。
また、距離D2を1.0mmより大きくした場合も、ガスセンサ素子にクラックが発生した。クラックの発生率は、距離D1に対する発生率と同等であった(図9参照)。
以上の結果より、接続部113d、122d(第1接続部)の全体を、第1測定室150(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域内に配置することで、電極113,122の内部に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、接続部113d、122dを挟む層間においてクラックが発生することを防止できるといえる。さらに、接続部133d(第1接続部)の全体を、第2測定室160(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域内に配置することで、電極133の内部に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、接続部133dを挟む層間においてクラックが発生することを防止できるといえる。さらに、接続部112d(第2接続部)の全体を、第1多孔質体114からの距離が1.0mm以内の領域内に配置することで、電極112の内部に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、接続部112dを挟む層間においてクラックが発生することを防止できるといえる。
(変形形態)
次に、本発明の変形形態について説明する。変形形態のガスセンサ201は、実施形態のガスセンサ1と比較してガスセンサ素子のみが異なり、その他の部位については同様である(図1参照)。従って、ここでは、実施形態と異なる点について説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
実施形態のガスセンサ素子10では、図7に示すように、Ip2−電極133の接続部133d(第1接続部)の全体を、第2測定室160(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域A1(図7において二点鎖線K1で囲まれた領域)の内側に配置した。
これに対し、本変形形態のガスセンサ素子210では、図10に示すように、Ip2−電極233を、第2測定室260(内部空間)内に配置している。すなわち、接続部233dを含めてIp2−電極233の全体を、第2測定室260(内部空間)内に配置している。これにより、接続部233dを含めたIp2−電極233の全体を、第2測定室260(内部空間)内に露出させている。また、Ip2−リード237は、第2測定室260(内部空間)内で、Ip2−電極233の接続部233dと接続している。
このような構成とすることで、Ip2−電極233内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。接続部233dを含むIp2−電極233(第3電極)の全体が第2測定室260(内部空間)内に配置されているため、接続部233d(第3接続部)を含むIp2−電極233内に留まった水を第2測定室260内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
また、Ip2−電極233は、アルミナ絶縁層238の貫通孔238cを通じて、アルミナ絶縁層238が形成されている固体電解質体131と接触する電解質体接触部233cを有している(図10参照)。一方、Ip2−リード237は、アルミナ絶縁層238上に形成している(これにより、固体電解質体131と接触させないようにしている)。また、Ip2−電極233の接続部233dは、アルミナ絶縁層238上において、Ip2−リード237と接続している(これにより、固体電解質体131と接触させないようにしている)。これにより、接続部233dが第2測定室260(内部空間)内に配置されていても、接続部233dがIp2−電極233の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(Ip2−電極233の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。しかも、Ip2−電極233の電解質体接触部233cのみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。
なお、本変形形態では、Ip2−電極233が、特許請求の範囲に記載の「第3電極」に相当する。また、接続部233dが、特許請求の範囲に記載の「第3接続部」に相当する。また、Ip2−リード237が、特許請求の範囲に記載の「第3リード」に相当する。また、アルミナ絶縁層238が、特許請求の範囲に記載の「第3絶縁層」に相当する。また、電解質体接触部233cが、特許請求の範囲に記載の「第3電解質体接触部」に相当する。
また、Ip1−電極及びVs−電極についても、Ip2−電極233と同様に、リードとの接続部を含めた全体を、第1測定室(内部空間)内に配置することで、クラックの発生を抑制することができる。
また、実施形態のガスセンサ素子10では、図8に示すように、Ip1+電極112の接続部112d(第2接続部)の全体を、第1多孔質体114からの距離が1.0mm以内の領域A2(図8において二点鎖線K2で囲まれた領域)内に配置した。
これに対し、本変形形態のガスセンサ素子210では、図11に示すように、Ip1+電極212を、第1多孔質体214と接触させて、その全体を、固体電解質体の積層方向(厚み方向、図11において紙面に直交する方向)について第1多孔質体214に対向する位置に配置している。詳細には、Ip1+電極212の一部がIp1+リード216を挟んで第1多孔質体214に対向すると共に、その他の部位(リード216が積層方向に存在していない部位)が第1多孔質体214に接触する形態で、Ip1+電極212の全体が第1多孔質体214に対向している。なお、Ip1+リード216は、上記積層方向について第1多孔質体214と対向する位置で、Ip1+電極212の接続部212dと接続している。
このような構成とすることで、Ip1+電極212内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。接続部212dを含むIp1+電極212の全体が第1多孔質体214に対向して配置され、Ip1+電極212のうちIp1+リード216と接触した部位のみを除いた電極212の大部分が第1多孔質体214に接触しているため、Ip1+電極212内に留まった水の多くを第1多孔質体214の空孔内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
また、Ip1+電極212は、アルミナ絶縁層218の貫通孔218bを通じて、アルミナ絶縁層218が形成されている固体電解質体111と接触する電解質体接触部212cを有している(図11参照)。一方、Ip1+リード216は、アルミナ絶縁層218上に形成している(これにより、固体電解質体111と接触させないようにしている)。また、Ip1+電極212の接続部212dは、アルミナ絶縁層218上において、Ip1+リード216と接続している(これにより、固体電解質体111と接触させないようにしている)。このようにすることで、接続部212d(第4接続部)が第1多孔質体214と重なる位置(積層方向に対向する位置)に配置されていても、接続部212dがIp1+電極212(第4電極)の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(Ip1+電極212の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。しかも、Ip1+電極212の電解質体接触部212cのみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。
なお、本変形形態では、Ip1+電極212が、特許請求の範囲に記載の「第4電極」に相当する。また、接続部212dが、特許請求の範囲に記載の「第4接続部」に相当する。また、Ip1+リード216が、特許請求の範囲に記載の「第4リード」に相当する。また、アルミナ絶縁層218が、特許請求の範囲に記載の「第4絶縁層」に相当する。また、電解質体接触部212cが、特許請求の範囲に記載の「第4電解質体接触部」に相当する。
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態及び変形形態では、ガスセンサ素子として、NOx濃度を検知することが可能なガスセンサ素子(NOxセンサ素子)を例示した。しかしながら、本発明は、NOxセンサ素子に限らず、NOx以外のガスを検知することが可能なガスセンサ素子(例えば、酸素を検知する酸素センサ素子など)にも適用することができる。
また、変形形態では、Ip1+電極212の一部がIp1+リード216を挟んで第1多孔質体214に対向すると共に、その他の部位(リード216が積層方向に存在していない部位)が第1多孔質体214に接触する形態で、Ip1+電極212の全体が第1多孔質体214に対向するようにした。しかしながら、Ip1+電極212とIp1+リード216との積層方向位置を反対(上下反対)にして、Ip1+電極212の全体が第1多孔質体214に接触するようにしても良い。
1,201 ガスセンサ
10,210 ガスセンサ素子
111,121,131 固体電解質体
111b,121b,131b 固体電解質体の表面
111c,121c,131c 固体電解質体の裏面
112 Ip1+電極(第2電極)
112b 多孔質体接触部
112c 電解質体接触部
112d 接続部(第2接続部)
113 Ip1−電極(第1電極)
113b,122b,133b 空間露出部
113c,122c,133c 電解質体接触部
113d,122d,133d 接続部(第1接続部)
114 第1多孔質体
116 Ip1+リード(第2リード)
117 Ip1−リード(第1リード)
118 アルミナ絶縁層(第2絶縁層)
118b,119b,128b,138c 貫通孔
119,128,138 アルミナ絶縁層(第1絶縁層)
122 Vs−電極(第1電極)
123 Vs+電極
126 Vs−リード(第1リード)
127 Vs+リード
132 Ip2+電極
133 Ip2−電極(第1電極)
136 Ip2+リード
137 Ip2−リード(第1リード)
150 第1測定室(内部空間)
151 第2多孔質体
160 第2測定室(内部空間)
212 Ip1+電極(第4電極)
212c 電解質体接触部(第4電解質体接触部)
212d 接続部(第4接続部)
216 Ip1+リード(第4リード)
218 アルミナ絶縁層(第4絶縁層)
233 Ip2−電極(第3電極)
233c 電解質体接触部(第3電解質体接触部)
233d 接続部(第3接続部)
237 Ip2−リード(第3リード)
238 アルミナ絶縁層(第3絶縁層)
本発明は、ガスセンサ素子、及び、これを備えたガスセンサに関する。
従来、自動車エンジンなどの内燃機関の排気通路に取り付けられ、排気ガス(測定対象ガス)中の酸素濃度やNOx濃度を検知するガスセンサが知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1,2には、このガスセンサを構成するガスセンサ素子として、板状の固体電解質体が複数積層されてなるガスセンサ素子が記載されている。このガスセンサ素子は、固体電解質体の表面側または裏面側に設けられた電極と、固体電解質体の表面側または裏面側に設けられ、上記電極に接続されたリードとを備えている。
特許文献1,2では、酸素ポンプ性能を確保するために、電極を多孔質に形成しており、その結果、電極は、ガス透過性及び透水性を有することとなる。一方、電気導通性を向上させるためには、単位面積当たりの充填度合を高くすることが好ましく、そのために、リードを緻密に形成している。その結果、リードは、非ガス透過性及び非透水性を有することとなる。
特許第4165652号公報
特開2010−122187号公報
ところで、特許文献1の図3,4には、電極として、ガスセンサ素子の外部と連通する内部空間に露出する空間露出部、を有する第1電極が記載されている。さらに、リードとして、上記第1電極と接続する第1リードが記載されている。この第1リードは、内部空間内にて第1電極に重なりあうようにして接続している。ところが、第1電極及び第1リードが、上述したような、透水性の電極と非透水性のリードとの組み合わせの場合には、次のような不具合が発生する虞があった。つまり、第1電極のうち、第1リード部に重なる部位(以下、第1接続部)において、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する虞がある。
一方、上述の問題を考慮し、電極の一部を内部空間に露出しない位置まで延ばすことで、第1接続部を、内部空間に露出しない位置に配置することが考えられる。これにより、「第1接続部が内部空間に配置されることで酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
ところが、第1接続部を上記内部空間に露出しない位置に配置したとしても、次のような不具合が発生する虞がある。例えば、冬季には、ガスセンサ素子の表面が結露することがある。この結露により生じた水(結露水)が、ガスセンサ素子の内部空間内に浸入し、さらに、空間露出部を通じて透水性の第1電極内に浸入することがある。第1電極内に浸入した水は、第1リードと接続する第1接続部に達するが、第1リードは非透水性であるため、第1リード内に浸入することができず、その結果、第1接続部に留まることがある。第1接続部に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第1接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、第1接続部を挟む層間にクラックが発生する虞があった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、透水性の電極及びこれに接続された非透水性のリードとを備えるガスセンサ素子において、電極の酸素ポンプ性能を低下させることなく、透水性の電極内に水が浸入しこれが凍結するような場合でも、自身にクラックが発生するのを防止できるガスセンサ素子、及びこれを備えたガスセンサを提供することを目的とする。
板状の固体電解質体が複数積層されてなるガスセンサ素子であって、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられた電極と、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられ、上記電極に接続されたリードと、を備え、上記電極は、上記ガスセンサ素子の外部と連通する上記ガスセンサ素子の内部空間に露出する空間露出部を有する、透水性の第1電極、を含み、上記リードは、上記第1電極と接続する非透水性の第1リードを含み、上記第1電極は、上記内部空間に露出しない位置に配置され且つ上記第1リードと接続する第1接続部であって、当該第1電極の中で上記内部空間から最も離れた位置に配置された部位を有する第1接続部を含み、上記第1接続部全体が、上記内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に位置してなるガスセンサ素子が好ましい。
上述のガスセンサ素子は、ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間に露出する空間露出部を有する透水性の第1電極を有すると共に、第1電極と接続する非透水性の第1リードを有している。このうち、第1電極は、上記内部空間に露出しない位置に配置され且つ上記第1リードと接続する第1接続部を含む(従って、第1電極は、内部空間に露出する空間露出部と内部空間に露出しない第1接続部とを有する)。この第1接続部は、第1リードと内部空間の外側で接続するために、第1電極が延ばされて形成されるため、第1電極のうちで、上記内部空間から最も離れた位置に配置された部位を有する。
このような構成のガスセンサ素子では、従来、第1接続部内に水が浸入し、これが凍結するような場合に、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、ガスセンサ素子の内部空間内に浸入し、さらに、空間露出部を通じて第1電極内に浸入することがある。第1電極内に浸入した水は、第1リードと接続する第1接続部に達するが、第1リードは非透水性であるため、第1接続部に留まることがある。そして、第1接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第1接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第1接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、上述のガスセンサ素子では、第1接続部全体を、上記内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。これにより、第1接続部内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。その理由は、次のように考えている。
第1接続部内に水が留まった状態で、この水が凍結し始めると、第1接続部内の微細空孔が次第に小さくなってゆく(氷によって塞がれてゆく)ので、第1接続部内に留まっている水は、第1リードとは反対側(すなわち、水が浸入できるスペースのある内部空間側)に移動してゆく。このとき、第1接続部全体を、上記内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に配置しておく(すなわち、第1接続部のうち内部空間から最も離れている箇所から内部空間までの距離を1.0mm以内と短くしておく)ことにより、第1接続部内に留まっていた水の多くを、第1接続部内で凍結する前に、内部空間にまで移動させる(逃がす)ことができる。その後、内部空間内において多くの水が凍結して膨張しても、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力が発生することはない。その結果、ガスセンサ
素子にクラックが発生するのを防止することができる。
なお、「ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間」には、ガスセンサの外部と直接(介在物がない状態で)連通する内部空間や、多孔質体を通じて外部と連通する(ガス透過可能及び透水可能に連通する)内部空間も含まれる。このうち、多孔質体を通じて外部と連通する内部空間には、1つの多孔質体を通じて外部と連通する内部空間に限らず、複数の多孔質体を通じて外部と連通する(ガス透過可能及び透水可能に連通する)内部空間も含まれる。
その上、上述のガスセンサ素子では、第1電極が、上記内部空間に露出しない位置にて、第1リードと接続している。このため、前述の特許文献1(特許第4165652号公報)と異なり、「第1接続部が内部空間に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
さらに、上記のガスセンサ素子であって、前記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第1絶縁層を有し、前記第1電極の一部と前記第1リードは、上記第1絶縁層上に形成されてなり、上記第1電極の前記空間露出部は、上記第1絶縁層を上記固体電解質体の積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部を有し、上記第1電極の前記第1接続部は、上記第1絶縁層上において、上記第1リードと接続してなるガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子では、第1電極の空間露出部(ガスセンサ素子の内部空間に露出する部位)は、第1絶縁層の貫通孔を通じて、固体電解質体と接触する電解質体接触部を有している。一方、第1リードは、第1絶縁層上に形成している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。また、第1電極の第1接続部は、第1絶縁層上において、第1リードと接続している。従って、上述のガスセンサ素子では、第1電極の第1接続部を、内部空間に露出しない位置に配置すると共に、固体電解質体と接触させないようにしている。
これにより、上述のガスセンサでは、第1電極の電解質体接触部のみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。なお、リードは、第1電極とは電気特性が異なるため、リードやこれと接続した第1接続部の一部が固体電解質と接触する構成とした場合は、ガス濃度を精度良く検知することができないことがある。
さらに、上記いずれかのガスセンサ素子であって、前記電極は、ガス透過性及び透水性を有し、上記ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体、と接触する多孔質体接触部を有する透水性の第2電極を含み、前記リードは、上記第2電極と接続する非透水性の第2リードを含み、上記第2電極は、前記固体電解質体の積層方向に直交する平面方向について上記多孔質体から離れた位置で、上記第2リードと接続する第2接続部であって、当該第2電極の中で上記多孔質体から最も離れた位置に配置された部位を有する第2接続部を含み、上記第2接続部全体が、上記多孔質体からの距離が1.0mm以内の領域内に位置してなるガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子は、ガス透過性及び透水性を有し、ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体を有している。さらに、この多孔質体と接触する多孔質体接触部を有する透水性の第2電極を有すると共に、第2電極と接続する非透水性の第2リードを有している。このうち、第2電極は、多孔質体から平面方向に離れた位置で、第2リードと接続す
る第2接続部を有している(従って、第2電極は、多孔質体と接触する多孔質体接触部
と、多孔質体と接触しない第2接続部とを有している)。この第2接続部は、第2リードと多孔質体から離れた位置で接続するために、第2電極が延ばされて形成されるため、第2電極のうちで、上記多孔質体から最も離れた位置に配置された部位を有する。
このような構成を有するガスセンサ素子でも、従来、第2接続部内に水が浸入し、これが凍結するような場合に、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、多孔質体を通じて、これに接触する第2電極内に浸入することがある。第2電極内に浸入した水は、第2リードと接続する第2接続部に達するが、第2リードは非透水性であるため、第2接続部に留まることがある。そして、第2接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第2接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第2接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、上述のガスセンサ素子では、第2接続部全体を、多孔質体からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。これにより、第2接続部内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。その理由は、次のように考えている。
第2接続部内に水が留まった状態で、この水が凍結し始めると、第2接続部内の微細空孔が次第に小さくなってゆく(氷によって塞がれてゆく)ので、第2接続部内に留まっている水は、第2リードとは反対側(すなわち、水が浸入できるスペースのある多孔質体側)に移動してゆく。このとき、第2接続部全体を、上記多孔質体からの距離が1.0mm以内の領域内に配置しておく(すなわち、第2接続部のうち多孔質体から最も離れている箇所から多孔質体までの距離を1.0mm以内と短くしておく)ことにより、第2接続部内に留まっていた水の多くを、第2接続部内で凍結する前に、多孔質体にまで移動させる(逃がす)ことができる。その後、多孔質体内において多くの水が凍結して膨張しても、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力が発生することはない。多孔質体は外部に露出しているので、仮に、多孔質体内が水で満たされていたとしても、凍結の際、その水を外部に逃がすことができるので、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力が発生することはない。従って、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。
その上、第2電極は、多孔質体から平面方向に離れた位置で、第2リードと接続している。このため、「第2接続部が多孔質体と重なる位置に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
さらに、上記のガスセンサ素子であって、前記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第2絶縁層を有し、前記第2電極の一部と前記第2リードは、上記第2絶縁層上に形成されてなり、上記第2電極の前記多孔質体接触部は、上記第2絶縁層を前記積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部を有し、上記第2電極の前記第2接続部は、上記第2絶縁層上において、上記第2リードと接続してなるガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子では、第2電極の多孔質体接触部(多孔質体と接触する部位)は、第2絶縁層の貫通孔を通じて、固体電解質体と接触する電解質体接触部を有している。一方、第2リードは、第2絶縁層上に形成している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。また、第2電極の第2接続部は、第2絶縁層上において、第2リードと接続している。従って、上述のガスセンサ素子では、第2電極の第2接続部を、多孔質体から平面方向に離れた位置に配置しつつ、固体電解質体と接触させないようにしている。
これにより、上述のガスセンサでは、第2電極の電解質体接触部のみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。なお、リードは、第2電極とは電気特性が異なるため、リードやこれと接続した第2接続部の一部が固体電解質と接触する構成とした場合は、ガス濃度を精度良く検知することができないことがある。
本発明の一態様は、板状の固体電解質体が複数積層されてなるガスセンサ素子であって、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられた電極と、上記固体電解質体の表面側または裏面側に設けられ、上記電極に接続されたリードと、を備え、上記電極は、上記ガスセンサ素子の外部と連通する上記ガスセンサ素子の内部空間内に配置された透水性の第3電極を含み、上記リードは、上記第3電極と接続する非透水性の第3リードを含み、上記ガスセンサ素子は、上記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第3絶縁層を有し、上記第3電極の一部と上記第3リードは、上記第3絶縁層上に形成されてなり、上記第3電極は、上記第3絶縁層を上記固体電解質体の積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部と、上記内部空間内で且つ上記第3絶縁層上において、上記第3リードと接続する第3接続部と、を有するガスセンサ素子である。
上述のガスセンサ素子では、ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間内に配置された透水性の第3電極を有している。すなわち、第3電極は、その全体が上記内部空間内に配置されている(第3電極の表面または裏面の全体が内部空間に露出している)。また、上記内部空間内で第3電極の第3接続部と接続する非透水性の第3リードを有している。
このような構成とすることで、第3電極内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。第3接続部を含む第3電極の全体が内部空間内に配置されているため、第3接続部を含む第3電極内に留まった水を内部空間内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
その上、第3電極の第3接続部は、第3絶縁層上において、第3リードと接続している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。従って、第3接続部が内部空間に配置されていても、第3接続部が第3電極の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(第3電極の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。
さらに、上記のガスセンサ素子であって、前記電極は、ガス透過性及び透水性を有し、上記ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体、と接触する透水性の第4電極であって、その全体が、前記固体電解質体の積層方向について上記多孔質体に対向する位置に配置された第4電極を含み、前記リードは、上記第4電極と接続する非透水性の第4リードを含み、上記ガスセンサ素子は、上記固体電解質体の表面上または裏面上に形成された第4絶縁層を有し、上記第4電極の一部と上記第4リードは、上記第4絶縁層上に形成されてなり、上記第4電極は、上記第4絶縁層を上記積層方向に貫通する貫通孔を通じて、上記固体電解質体と接触する電解質体接触部と、上記積層方向について上記多孔質体と対向する位置で、且つ、上記第4絶縁層上において、上記第4リードと接続する第4接続部と、を有するガスセンサ素子とすると良い。
上述のガスセンサ素子は、ガス透過性及び透水性を有し、ガスセンサ素子の外部に露出する多孔質体を有している。さらに、多孔質体と接触する透水性の第4電極であって、その全体が、固体電解質体の積層方向(厚み方向)について多孔質体に対向する位置に配置された第4電極を有している。ここで、「第4電極の全体が多孔質体に対向する」とは、多孔質体の全体が多孔質体に接触しつつ対向する場合の他、第4電極の一部がリードを挟んで多孔質体に対向すると共に、その他の部位が多孔質体に接触する形態で、透水性電極の全体が多孔質体に対向する場合も含む。また、上述のガスセンサ素子では、上記積層方向について上記多孔質体と対向する位置で、第4電極の第4接続部と接続する第4リードを有する。
このような構成とすることで、第4電極内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。第4接続部を含む第4電極の全体が多孔質体に対向して配置され、第4電極の全体またはリードと接触した部位のみを除いた第4電極の大部分が多孔質体に接触しているため、第4電極内に留まった水の多くを多孔質体の空孔内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
その上、第4電極の第4接続部は、第4絶縁層上において、第4リードと接続している(これにより、固体電解質体と接触させないようにしている)。従って、第4接続部が多孔質体と重なる位置(積層方向に対向する位置)に配置されていても、第4接続部が第4電極の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(第4電極の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。
さらに、上記いずれかのガスセンサ素子であって、前記ガスセンサ素子は、測定対象ガスに含まれるNOxの濃度を検出するガスセンサ素子であり、前記第1リードまたは前記第3リードとして、NOx濃度に応じた電流が流れるリードを備えるガスセンサ素子とすると良い。
測定対象ガス(例えば、内燃機関の排ガス)に含まれるNOxの濃度を精度良く検知するためには、NOx濃度に応じた電流が流れるリードを緻密に形成する必要がある。緻密に形成したリードは、非透水性になる。このため、従来、NOx濃度に応じた電流が流れるリードと電極と接続した場合、前述のように、電極内に水が浸入し、この水が凍結するような場合には、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。
しかしながら、上述のガスセンサ素子では、第1リードまたは第3リードとして、NOx濃度に応じた電流が流れるリードを備えている。前述のように、第1リードと接続する第1電極の第1接続部全体を、内部空間からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。第3リードと接続する第3電極の第3接続部については、内部空間内に配置している。これにより、第1(第3)電極内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。
また、本発明の他の態様は、上記いずれかのガスセンサ素子を備えるガスセンサである。
このガスセンサは、前述のいずれかのガスセンサ素子を有している。このため、このガスセンサでは、電極の酸素ポンプ性能を低下させることなく、透水性の電極内に水が浸入しこれが凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができ、測定対象ガスを適切に検知することができる。
参考形態及び実施形態にかかるガスセンサの断面図である。
参考形態及び実施形態にかかるガスセンサ素子の斜視図である。
図2のB−B断面図である。
ガスセンサ素子を構成する各層を示す斜視図である。
図4のE部の拡大図である。
図4のF部の拡大図である。
Ip2−電極の接続部の位置を示す図であり、図3のC矢視図である。
Ip1+電極の接続部の位置を示す図であり、図3のG矢視図である。
距離D1,D2とクラック発生率との相関図である。
実施形態にかかるガスセンサ素子について、Ip2−電極の接続部の位置 を示す図である。
実施形態にかかるガスセンサ素子について、Ip1+電極の接続部の位置 を示す図である。
(参考形態)
まず、参考形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、参考形態にかかるガスセンサ1の縦断面図(軸線AXに沿って切断した断面図)である。図2は、参考形態にかかるガスセンサ素子10の斜視図である。図3は、図2のB−B断面図であり、ガスセンサ素子10の内部構造を示している。図4は、ガスセンサ素子10を構成する各層を示す斜視図であり、積層方向(図4において上下方向)について積層順に並べて示している。図5は、図4のE部の拡大図であり、図6は、図4のF部の拡大図である。
ガスセンサ1は、測定対象ガスである排ガス中の特定ガス(NOx)の濃度を検出可能なガスセンサ素子10を備え、内燃機関の排気管(図示なし)に装着されて使用されるNOxセンサである(図1参照)。このガスセンサ1は、排気管に固定するためのネジ部21が外表面の所定位置に形成された筒状の主体金具20を備える。ガスセンサ素子10は、軸線AX方向に延びる細長板状をなし、主体金具20の内側に保持されている(図1、図2参照)。
さらに詳しくは、ガスセンサ1は、ガスセンサ素子10の後端部10k(図1において上端の部位)が挿入される挿入孔62を有する保持部材60と、この保持部材60の内側に保持された6個の端子部材とを備える。なお、図1では、6個の端子部材のうち2個の端子部材(具体的には、端子部材75,76)のみを図示している。
ガスセンサ素子10の後端部10k(図2において右端部)には、平面視矩形状の電極端子部が合計6個形成されている。詳細には、ガスセンサ素子10の第1面10aに、電極端子部13,14,15が形成され、第2面10bに、電極端子部16,17,18が形成されている。電極端子部13〜18には、それぞれ、前述の端子部材が弾性的に当接して電気的に接続している(図1参照)。具体的には、各々の端子部材の先端側に位置する素子当接部が、電極端子部13〜18のいずれかに弾性的に当接する。例えば、電極端子部14には、端子部材75の素子当接部75bが弾性的に当接して電気的に接続している。また、電極端子部17には、端子部材76の素子当接部76bが弾性的に当接して電気的に接続している(図1参照)。
さらに、6個の端子部材(端子部材75,76など)には、それぞれ、異なるリード線71が電気的に接続されている。具体的には、端子部材の後端部に位置するリード線把持部によって、リード線71の芯線が把持されることで、端子部材にリード線71が電気的に接続される。例えば、図1に示すように、端子部材75のリード線把持部77によって、リード線71の芯線が把持されることで、端子部材75にリード線71が電気的に接続される。また、端子部材76のリード線把持部78によって、他のリード線71の芯線
が把持されることで、端子部材76に他のリード線71が電気的に接続される。
主体金具20は、軸線AX方向に貫通する貫通孔23を有する筒状部材である。この主体金具20は、径方向内側に突出する形態で貫通孔23の一部を構成する棚部25を有している。主体金具20は、ガスセンサ素子10の先端部10sを自身の先端側外部(図1において下方)に突出させると共に、ガスセンサ素子10の後端部10kを自身の後端側外部(図1において上方)に突出させた状態で、ガスセンサ素子10を貫通孔23内に保持している。
また、主体金具20の貫通孔23の内部には、環状のセラミックホルダ42、滑石粉末を環状に充填してなる2つの滑石リング43,44、及びセラミックスリーブ45が配置されている。詳細には、ガスセンサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で、セラミックホルダ42、滑石リング43,44、及びセラミックスリーブ45が、この順に、主体金具20の軸線方向先端側(図1において下端側)から軸線方向後端側(図1において上端側)にわたって重ねて配置されている。
また、セラミックホルダ42と主体金具20の棚部25との間には、金属カップ41が配置されている。また、セラミックスリーブ45と主体金具20のカシメ部22との間には、加締リング46が配置されている。なお、主体金具20のカシメ部22が、加締リング46を介してセラミックスリーブ45を先端側に押し付けるように、加締められている。
主体金具20の先端部20bには、ガスセンサ素子10の先端部10sを覆うように、複数の孔を有する金属製(具体的にはステンレス)の外部プロテクタ31及び内部プロテクタ32が、溶接によって取り付けられている。一方、主体金具20の後端部には、外筒51が溶接によって取り付けられている。外筒51は、軸線AX方向に延びる筒状をなし、ガスセンサ素子10を包囲している。
保持部材60は、絶縁性材料(具体的にはアルミナ)からなり、軸線AX方向に貫通する挿入孔62を有する筒状部材である。挿入孔62内には、前述した6個の端子部材(端子部材75,76など)が配置されている(図1参照)。保持部材60の後端部には、径方向外側に突出する鍔部65が形成されている。保持部材60は、鍔部65が内部支持部材53に当接する態様で、内部支持部材53に保持されている。なお、内部支持部材53は、外筒51のうち径方向内側に向けて加締められた加締部51gにより、外筒51に保持されている。
保持部材60の後端面61上には、絶縁部材90が配置されている。絶縁部材90は、電気絶縁性材料(具体的にはアルミナ)からなり、円筒状をなす。この絶縁部材90には、軸線AX方向に貫通する貫通孔91が合計6個形成されている。この貫通孔91には、前述した端子部材のリード線把持部(リード線把持部77,78など)が配置されている。
また、外筒51のうち軸線方向後端部(図1において上端部)に位置する後端開口部51cの径方向内側には、フッ素ゴムからなる弾性シール部材73が配置されている(図1参照)。この弾性シール部材73には、軸線AX方向に延びる円筒状の挿通孔73cが、合計6個形成されている。各々の挿通孔73cは、弾性シール部材73の挿通孔面73b(円筒状の内壁面)によって構成されている。各々の挿通孔73cには、リード線71が1本ずつ挿通されている。各々のリード線71は、弾性シール部材73の挿通孔73cを通じて、ガスセンサ1の外部に延出している。弾性シール部材73は、外筒51の後端開口部51cを径方向内側に加締めることで径方向に弾性圧縮変形し、これにより、挿通孔面73bとリード線71の外周面71bとを密着させて、挿通孔面73bとリード線71の外周面71bとの間を水密に封止している。
一方、ガスセンサ素子10は、図3に示すように、板状の固体電解質体111、121、131と、これらの間に配置された絶縁体140、145とを備え、これらが積層方向(図3において上下方向)に積層された構造を有する。さらに、ガスセンサ素子10には、固体電解質体131の裏面131c側(図3において下面側)に、ヒータ161が積層されている。このヒータ161は、アルミナを主体とする板状の絶縁体162、163と、その間に埋設されたヒータパターン164(Ptを主体としている)とを備えている(図3,6参照)。ヒータパターン164は、曲線状の発熱部164dと、発熱部164dの両端にそれぞれ接続される直線状の第1リード部164b及び第2リード部164cとを備える。第1リード部164bは電極端子部16に電気的に接続され、第2リード部164cは電極端子部18に電気的に接続されている(図6参照)。
固体電解質体111、121、131は、固体電解質であるジルコニアからなり、酸素イオン伝導性を有する。固体電解質体111の表面111b側(図3において上面側)には、多孔質のIp1+電極112が設けられている。また、固体電解質体111の裏面111c側(図3において下面側)には、多孔質のIp1−電極113が設けられている。Ip1+電極112及びIp1−電極113は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されており、ガス透過性及び透水性を有している。
なお、本参考形態では、次のようにして、Ip1+電極112及びIp1−電極113を形成している。具体的には、まず、100重量部のPt粉末と14重量部のセラミック粉末と10重量部の有機バインダー(例えば、エチルセルロース)を混合し、この混合物に対し所定量の溶媒を加えて、電極用ペーストを作製する。次いで、この電極用ペーストを固体電解質体111の表面111b側及び裏面111c側に塗工する。その後、加熱により有機バインダを消失させて、多孔質の電極112、113が形成される。
図5に示すように、Ip1+電極112の接続部112dには、Ip1+リード116が接続されている。このIp1+リード116は、電極端子部13に電気的に接続されている。また、Ip1−電極113の接続部113dには、Ip1−リード117が接続されている。このIp1−リード117は、電極端子部15に電気的に接続されている。Ip1+リード116及びIp1−リード117は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Ip1+電極112及びIp1−電極113と異なり、緻密に形成されている。このため、Ip1+リード116及びIp1−リード117は、非透水性を有している。
なお、本参考形態では、次のようにして、Ip1+リード116及びIp1−リード117を形成している。具体的には、まず、100重量部のPt粉末と18重量部のセラミック粉末と5重量部の有機バインダー(例えば、エチルセルロース)を混合し、この混合物に対し所定量の溶媒を加えて、リード用ペーストを作製する。次いで、このリード用ペーストを固体電解質体111の表面111b側及び裏面111c側に塗工する。その後、加熱により有機バインダを消失させて、リード116、117が形成される。
ところで、リード用ペーストは、前述の電極用ペーストに比べて、有機バインダーの添加量を少量(約半分の量)にしている。このように、加熱により消失して内部空孔を形成する有機バインダの添加量を少量とすることで、内部空孔の少ない緻密なリード116、117が形成される。
また、Ip1+電極112及びIp1+リード116の表面側(図3〜図5において上面側)には、アルミナ等からなる保護層115が積層されている。この保護層115のうちIp1+電極112と積層方向に対向する位置には、ガスセンサ素子10の外部に露出する第1多孔質体114(多孔質体に相当する)が設けられている。この第1多孔質体114は、ガス透過性及び透水性を有し、Ip1+電極112の一部と接触している。Ip1+電極112のうち第1多孔質体114と接触する部位を、多孔質体接触部112bとする。
固体電解質体111及び電極112、113は、Ip1セル110(第1ポンプセル)を構成する(図3参照)。このIp1セル110は、電極112、113間に流すポンプ電流Ip1に応じて、電極112の接する雰囲気(ガスセンサ素子10の外部の雰囲気)と電極113の接する雰囲気(後述する第1測定室150内の雰囲気)との間で酸素の汲み出し及び汲み入れ(いわゆる酸素ポンピング)を行う。
固体電解質体121は、絶縁体140を挟んで、固体電解質体111と積層方向に対向するように配置されている。固体電解質体121の表面121b側(図3において上面側)には、多孔質のVs−電極122が設けられている。また、固体電解質体121の裏面121c側(図3において下面側)には、多孔質のVs+電極123が設けられている。Vs−電極122及びVs+電極123は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されており、ガス透過性及び透水性を有している。
図5に示すように、Vs−電極122の接続部122dには、Vs−リード126が接続されている。このVs−リード126は、電極端子部15に電気的に接続されている。このVs−リード126は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Vs−電極122と異なり、緻密に形成されている。このため、Vs−リード126は、非透水性を有している。一方、図5,6に示すように、Vs+電極123の接続部123dには、Vs+リード127が接続されている。このVs+リード127は、電極端子部14に電気的に接続されている。このVs+リード127は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Vs+電極123と同時に形成されるため、多孔質に形成されている。このため、Vs+リード127は、ガス透過性及び透水性を有している。
固体電解質体111と固体電解質体121との間には、ガスセンサ素子の内部空間としての第1測定室150が形成されている(図3参照)。この第1測定室150は、排気通路内を流通する排ガスが、ガスセンサ素子10内に最初に導入される内部空間であり、ガス透過性及び透水性を有する第2多孔質体151を通じてガスセンサ素子10の外部と連通している。第2多孔質体151は、ガスセンサ素子10の外部との仕切りとして、第1測定室150の側方に設けられており、第1測定室150内への排ガスの単位時間あたりの流通量を制限する(図2、図5参照)。
第1測定室150の後端側(図3において右側)には、第1測定室150と後述する第2測定室160との間の仕切りとして、排ガスの単位時間あたりの流通量を制限する第3多孔質体152が設けられている。
固体電解質体121及び電極122、123は、Vsセル120を構成する(図3参照)。このVsセル120は、主として、固体電解質体121により隔てられた雰囲気(電極122の接する第1測定室150内の雰囲気と、電極123の接する基準酸素室170内の雰囲気)間の酸素分圧差に応じて起電力を発生する。
固体電解質体131は、絶縁体145を挟んで、固体電解質体121と積層方向に対向するように配置されている。固体電解質体131の表面131b側(図3において上面側)には、多孔質のIp2+電極132と多孔質のIp2−電極133が設けられてい
る。Ip2+電極132及びIp2−電極133は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されており、ガス透過性及び透水性を有している。
図6に示すように、Ip2+電極132には、Ip2+リード136が接続されている。このIp2+リード136は、電極端子部17に電気的に接続されている。このIp2+リード136は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Ip2+電極132と同時に形成されるため、多孔質に形成されている。このため、Ip2+リード136は、ガス透過性及び透水性を有している。一方、Ip2−電極133の接続部133dには、Ip2−リード137が接続されている。このIp2−リード137は、電極端子部15に電気的に接続されている。このIp2−リード137は、Pt粉末とセラミック粉末とを含むサーメットにより形成されているが、Ip2−電極133と異なり、緻密に形成されている。このため、Ip2−リード137は、非透水性を有している。
Ip2+電極132とVs+電極123との間には、孤立した小空間としての基準酸素室170が形成されている(図3参照)。この基準酸素室170は、絶縁体145に形成されている開口部145bにより構成されている。なお、基準酸素室170内のうちIp2+電極132側には、セラミックス製の多孔質体が配置されている。
また、Ip2−電極133と積層方向に対向する位置には、ガスセンサ素子の内部空間としての第2測定室160が形成されている。この第2測定室160は、絶縁体145を積層方向に貫通する開口部145cと、固体電解質体121を積層方向に貫通する開口部125と、絶縁体140を積層方向に貫通する開口部141とにより構成されている。
第1測定室150と第2測定室160とは、ガス透過性及び透水性を有する第3多孔質体152を通じて連通している。従って、第2測定室160は、第2多孔質体151、第1測定室150、及び第3多孔質体152を通じて、ガスセンサ素子10の外部と連通している。
なお、本参考形態では、第1測定室150と第2測定室160とが、「ガスセンサ素子の外部と連通するガスセンサ素子の内部空間」に相当する。
固体電解質体131及び電極132、133は、NOx濃度を検知するためのIp2セル130(第2ポンプセル)を構成する。このIp2セル130は、第2測定室160内で分解されたNOx由来の酸素(酸素イオン)を、固体電解質体131を通じて、基準酸素室170に移動させる。このとき、電極132に接続されたリード136及び電極133に接続されたリード137には、第2測定室160内に導入された排ガス(測定対象ガス)に含まれるNOxの濃度に応じた電流が流れる。
なお、本参考形態では、固体電解質体111の表面111b上に、アルミナ絶縁層118が形成されている。さらに、Ip1+電極112の一部及びIp1+リード116は、アルミナ絶縁層118上に形成されている。さらに、Ip1+電極112の多孔質体接触部112bは、アルミナ絶縁層118を積層方向に貫通する貫通孔118bを通じて、固体電解質体111と接触する電解質体接触部112cを有する。
さらに、固体電解質体111の裏面111c上には、アルミナ絶縁層119が形成されている。さらに、Ip1−電極113の一部及びIp1−リード117は、アルミナ絶縁層119上に形成されている。さらに、Ip1−電極113のうち第1測定室150(内部空間)に露出する空間露出部113bは、アルミナ絶縁層119を積層方向に貫通する貫通孔119bを通じて、固体電解質体111と接触する電解質体接触部113cを有する。
さらに、本参考形態では、固体電解質体121の表面121b上に、アルミナ絶縁層128が形成されている。さらに、Vs−電極122の一部及びVs−リード126は、アルミナ絶縁層128上に形成されている。さらに、Vs−電極122のうち第1測定室150(内部空間)に露出する空間露出部122bは、アルミナ絶縁層128を積層方向に貫通する貫通孔128bを通じて、固体電解質体121と接触する電解質体接触部122cを有する。
さらに、固体電解質体121の裏面121c上には、アルミナ絶縁層129が形成されている。さらに、Vs+電極123の一部及びVs+リード127は、アルミナ絶縁層129上に形成されている。さらに、Vs+電極123は、アルミナ絶縁層129を積層方向に貫通する貫通孔129bを通じて、固体電解質体121と接触する電解質体接触部123cを有する。
さらに、本参考形態では、固体電解質体131の表面131b上に、アルミナ絶縁層138が形成されている。さらに、Ip2+電極132の一部及びIp2+リード136は、アルミナ絶縁層138上に形成されている。さらに、Ip2−電極133の一部及びIp2−リード137も、アルミナ絶縁層138上に形成されている。電極132は、アルミナ絶縁層138を積層方向に貫通する貫通孔138bを通じて、固体電解質体131と接触する電解質体接触部132cを有する。また、電極133のうち第2測定室160(内部空間)に露出する空間露出部133bは、アルミナ絶縁層138を積層方向に貫通する貫通孔138cを通じて、固体電解質体131と接触する電解質体接触部133cを有する。
このような構成とすることで、電極112、113、122、123、132、133のうち電解質体接触部112c、113c、122c、123c、132c、133cのみを、実際に感応部として機能させることができ、測定対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。なお、リード116、117、126、137は、電極112、113、122、133とは電気特性が異なるため、リードやこれと接続した接続部の一部が固体電解質と接触する構成とした場合は、接触させない本参考形態と比べて、ガス濃度の検知精度が劣ることになる。
なお、本参考形態では、Ip1−電極113、Vs−電極122、及び、Ip2−電極133が、「第1電極」に相当する。さらに、Ip1−リード117、Vs−リード126、及び、Ip2−リード137が、「第1リード」に相当する。また、Ip1+電極112が、「第2電極」に相当する。さらに、Ip1+リード116が、「第2リード」に相当する。
また、Ip1+電極112(第2電極)の接続部112dは、積層方向に直交する平面方向(図3、図5において左右方向)について第1多孔質体114から離れた位置に配置されており、Ip1+リード116(第2リード)と接続している。しかも、この接続部112dは、Ip1+電極112のうちで第1多孔質体114から最も離れた位置に配置された部位を有する。
さらに、Ip1−電極113(第1電極)の接続部113dは、第1測定室150(内部空間)に露出しない位置に配置され、第1測定室150の外側でIp1−リード117と接続している。しかも、この接続部113dは、Ip1−電極113のうちで第1測定室150から最も離れた位置に配置された部位を有する。同様に、Vs−電極122の接続部122dも、第1測定室150(内部空間)に露出しない位置に配置され、第1測定室150の外側でVs−リード126と接続している。しかも、この接続部122dは、Vs−電極122のうちで第1測定室150から最も離れた位置に配置された部位を有する。
また、Ip2−電極133の接続部133dは、第2測定室160(内部空間)に露出しない位置に配置され、第2測定室160の外側でIp2−リード137と接続している。しかも、この接続部133dは、Ip2−電極133のうちで第2測定室160から最も離れた位置に配置された部位を有する。
なお、本参考形態では、Ip1+電極112の接続部112dが、「第2接続部」に相当する。また、Ip1−電極113の接続部113d、Vs−電極122の接続部122d、及び、Ip2−電極133の接続部133dが、「第1接続部」に相当する。
上述のように、本参考形態では、接続部113d、122d、133d(第1接続部)が、第1測定室150、第2測定室160(内部空間)に露出しない位置で、Ip1−リード117、Vs−リード126、Ip2−リード137(第1リード)と接続している。これにより、前述の特許文献1(特許第4165652号公報)と異なり、「第1接続部が内部空間に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
さらに、接続部112d(第2接続部)が、第1多孔質体114から平面方向(図3、図5において左右方向)に離れた位置で、Ip1+リード116(第2リード)と接続している。これにより、「第2接続部が多孔質体と重なる位置に配置されることで、酸素ポンプ性能が低下し、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下する」ことを抑制できる。
ここで、本参考形態のガスセンサ1によるNOx濃度検知について、簡単に説明する。
ガスセンサ素子10の固体電解質体111、121、131は、ヒータパターン164の昇温に伴い加熱され、活性化する。これにより、Ip1セル110、Vsセル120、及びIp2セル130が動作するようになる。
排気通路(図示なし)内を流通する排ガス(測定対象ガス)は、第2多孔質体151による流通量の制限を受けつつ第1測定室150内に導入される。このとき、Vsセル120には、電極123側から電極122側へ微弱な電流Icpが流されている。このため、排ガス中の酸素は、負極側となる第1測定室150内の電極122から電子を受け取ることができ、酸素イオンとなって固体電解質体121内を流れ、基準酸素室170内に移動する。つまり、電極122、123間で電流Icpが流されることによって、第1測定室150内の酸素が基準酸素室170内に送り込まれる。
第1測定室150内に導入された排ガスの酸素濃度が所定値より薄い場合、電極112側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、ガスセンサ素子10の外部から第1測定室150内へ酸素の汲み入れを行う。一方、第1測定室150内に導入された排ガスの酸素濃度が所定値より濃い場合、電極113側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、第1測定室150内からガスセンサ素子10外部へ酸素の汲み出しを行う。
このように、第1測定室150において酸素濃度が調整された排ガスは、第3多孔質体152を通じて、第2測定室160内に導入される。第2測定室160内で電極133と接触した排ガス中のNOxは、電極132、133間に電圧Vp2を印加されることで、電極133上で窒素と酸素に分解(還元)され、分解された酸素は、酸素イオンとなって固体電解質体131内を流れ、基準酸素室170内に移動する。このとき、第1測定室150で汲み残された残留酸素も同様に、Ip2セル130によって基準酸素室170内に移動する。これにより、Ip2セル130には、NOx由来の電流及び残留酸素由来の電流が流れる。
ここで、第1測定室150で汲み残された残留酸素の濃度は、上記のように所定値に調整されているため、その残留酸素由来の電流は略一定とみなすことができ、NOx由来の電流の変動に対し影響は小さく、Ip2セル130を流れる電流は、NOx濃度に比例することとなる。従って、Ip2セル130を流れる電流Ip2を検出し、その電流値に基づいて、排ガス中のNOx濃度を検知することができる。
ところで、従来のガスセンサ素子では、第1電極(例えば、Ip1−電極113)内に水が浸入し、これが凍結するような場合に、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、第2多孔質体151を通じてガスセンサ素子の内部空間内に浸入し、さらに、第1電極内に浸入することがある。第1電極内に浸入した水は、第1リード(例えば、Ip1−リード117)と接続する第1接続部(例えば、接続部113d)に達するが、第1リードは非透水性であるため、第1接続部に留まることがある。第1接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第1接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第1接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、本参考形態のガスセンサ素子10では、第1接続部(具体的には、接続部113d、122d、133d)の全体を、内部空間(第1測定室150または第2測定室160)からの距離が1.0mm以内の領域内に配置している。例えば、図7に示すように、接続部133d(第1接続部)の全体を、第2測定室160(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域A1(図7において二点鎖線K1で囲まれた領域)の内側に配置している。これと同様に、接続部113d、122dについても、その全体を、第1測定室150(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域の内側に配置している。
これにより、Ip2−電極133(第1電極)内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子10にクラックが発生するのを防止することができる。Ip1−電極113、Vs−電極122内に水が浸入した場合も、同様である。これらのことは、後述する凍結試験の結果より明らかである。なお、クラック発生を防止できる理由は、次のように考えている。
例えば、Ip2−電極133の接続部133d内に水が留まった状態で、この水が凍結し始めると、接続部133d内の微細空孔が次第に小さくなってゆく(氷によって塞がれてゆく)ので、接続部133d内に留まっている水は、Ip2−リード137(第1リード)とは反対側(すなわち、水が浸入できるスペースのある第2測定室160側、図7において左側)に移動してゆく。このとき、接続部133d全体を、第2測定室160からの距離が1.0mm以内の領域A1内に配置しておく(すなわち、接続部133dのうち第2測定室160から最も離れた箇所から第2測定室160までの距離D1を1.0mm以内と短くしておく)ことにより、接続部133d内に留まっていた水の多くを、接続部133d内で凍結する前に、第2測定室160にまで移動させる(逃がす)ことができる。その後、第2測定室160内において多くの水が凍結して膨張しても、ガスセンサ素子10の層間を引き離す応力が発生することはない。その結果、ガスセンサ素子10にクラックが発生するのを防止することができる。Ip1−電極113の接続部113d及びVs−電極122の接続部122d内に溜まった水が凍結する場合も、同様であると考えている。
また、従来のガスセンサ素子では、第2電極(Ip1+電極112)内に水が浸入し、これが凍結するような場合にも、ガスセンサ素子にクラックが発生する虞があった。具体的には、例えば、ガスセンサ素子の表面に生じた結露水が、第1多孔質体114を通じて、これに接触する第2電極内に浸入することがある。第2電極内に浸入した水は、第2リード(Ip1+リード116)と接続する第2接続部(接続部112d)に達するが、第2リードは非透水性であるため、第2接続部に留まることがある。第2接続部内に結露水が留まった状態で、この結露水が凍結することで体積膨張すると、第2接続部を挟む層間を引き離す方向に応力が発生し、これにより、ガスセンサ素子の層間(第2接続部を挟む層間)にクラックが発生する虞があった。
これに対し、本参考形態のガスセンサ素子10では、図8に示すように、接続部112d(第2接続部)の全体を、第1多孔質体114からの距離が1.0mm以内の領域A2(図8において二点鎖線K2で囲まれた領域)内に配置している。換言すれば、接続部112d(第2接続部)のうち第1多孔質体114から最も離れている箇所から第1多孔質体114までの距離D2を、1.0mm以内としている。これにより、Ip1+電極112(第2電極)内に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子10にクラックが発生するのを防止することができる。このことは、後述する凍結試験の結果より明らかである。従って、このようなガスセンサ素子10を備えるガスセンサ1では、透水性の電極内に水が浸入しこれが凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができ、測定対象ガスを適切に検知することができる。
(凍結試験)
次に、ガスセンサ素子に対し行った凍結試験について説明する。
具体的には、第1接続部(接続部113d、122d、または、接続部133d)のうち内部空間(第1測定室150または第2測定室160)から最も離れている箇所から内部空間までの距離D1、及び、第2接続部(接続部112d)のうち第2多孔質体から最も離れている箇所から第2多孔質体までの距離D2を異ならせたガスセンサ素子(以下、試験素子ともいう)を、20個作製した。距離D1,D2は、それぞれの接続部について、0〜2.0mmの範囲で、0.2mm間隔で異ならせている。
次いで、作製した試験素子を用いて凍結試験を行った。具体的には、まず、試験素子の先端部(第2多孔質体151及び第1多孔質体114を含む端部)を水没させ、この状態で24時間放置する。これにより、第2多孔質体151及び第1多孔質体114を通じて、試験素子内(電極112,113,122,133内)に水を浸入させる。次いで、試験素子を水中から取り出し、試験素子の表面に付着している水を拭き取る。次に、試験素子を、−20℃に槽内温度を設定した恒温槽内に配置し、2分間放置する。これにより、試験素子内に浸入した水を凍結させる。その後、試験素子を恒温槽内から取り出し、室温で1分間放置する。この恒温槽内放置と室温放置とを10回繰り返し行った後、試験素子の表面にレッド液を塗布する。塗布後、一定時間経過した後、試験素子の表面を拭き取る。拭き取った後の試験素子表面の外観チェックにより、クラック発生の有無を確認した。
具体的には、クラックが発生している箇所では、レッド液がその内部に浸透するため、試験素子の表面を拭き取った後も、レッド液が残存することになる。従って、第1接続部(接続部113d、122d、または、接続部133d)及び第2接続部(接続部112d)を挟んだ層間にクラックが発生している場合は、当該層間にレッド液が残存することになる。このような考えに基づいて、クラック発生の有無を判断した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、距離D1を1.0mm以下とした場合は、ガスセンサ素子にクラックは発生しなかった。同様に、距離D2を1.0mm以下とした場合も、ガスセンサ素子にクラックは発生しなかった。
一方、距離D1を1.0mmより大きくした場合は、ガスセンサ素子にクラックが発生した。具体的には、距離D1を1.2mmとした場合は、クラックの発生率が15%となった。すなわち、20個の試験素子のうち3個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を1.4mmとした場合は、クラックの発生率が25%となった。すなわち、20個の試験素子のうち5個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を1.6mmとした場合は、クラックの発生率が50%となった。すなわち、20個の試験素子のうち10個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を1.8mmとした場合は、クラックの発生率が85%となった。すなわち、20個の試験素子のうち17個の試験素子において、クラックが発生した。また、距離D1を2.0mmとした場合は、クラックの発生率が100%となった。すなわち、20個の試験素子の全てにおいて、クラックが発生した。
また、距離D2を1.0mmより大きくした場合も、ガスセンサ素子にクラックが発生した。クラックの発生率は、距離D1に対する発生率と同等であった(図9参照)。
以上の結果より、接続部113d、122d(第1接続部)の全体を、第1測定室150(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域内に配置することで、電極113,122の内部に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、接続部113d、122dを挟む層間においてクラックが発生することを防止できるといえる。さらに、接続部133d(第1接続部)の全体を、第2測定室160(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域内に配置することで、電極133の内部に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、接続部133dを挟む層間においてクラックが発生することを防止できるといえる。さらに、接続部112d(第2接続部)の全体を、第1多孔質体114からの距離が1.0mm以内の領域内に配置することで、電極112の内部に水が浸入し、この水が凍結するような場合でも、接続部112dを挟む層間においてクラックが発生することを防止できるといえる。
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について説明する。実施形態のガスセンサ201は、参考形態のガスセンサ1と比較してガスセンサ素子のみが異なり、その他の部位については同様である(図1参照)。従って、ここでは、参考形態と異なる点について説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
参考形態のガスセンサ素子10では、図7に示すように、Ip2−電極133の接続部133d(第1接続部)の全体を、第2測定室160(内部空間)からの距離が1.0mm以内の領域A1(図7において二点鎖線K1で囲まれた領域)の内側に配置した。
これに対し、本実施形態のガスセンサ素子210では、図10に示すように、Ip2−電極233を、第2測定室260(内部空間)内に配置している。すなわち、接続部233dを含めてIp2−電極233の全体を、第2測定室260(内部空間)内に配置している。これにより、接続部233dを含めたIp2−電極233の全体を、第2測定室260(内部空間)内に露出させている。また、Ip2−リード237は、第2測定室260(内部空間)内で、Ip2−電極233の接続部233dと接続している。
このような構成とすることで、Ip2−電極233内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。接続部233dを含むIp2−電極233(第3電極)の全体が第2測定室260(内部空間)内に配置されているため、接続部233d(第3接続部)を含むIp2−電極233内に留まった水を第2測定室260内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
また、Ip2−電極233は、アルミナ絶縁層238の貫通孔238cを通じて、アルミナ絶縁層238が形成されている固体電解質体131と接触する電解質体接触部233cを有している(図10参照)。一方、Ip2−リード237は、アルミナ絶縁層238上に形成している(これにより、固体電解質体131と接触させないようにしている)。また、Ip2−電極233の接続部233dは、アルミナ絶縁層238上において、Ip2−リード237と接続している(これにより、固体電解質体131と接触させないようにしている)。これにより、接続部233dが第2測定室260(内部空間)内に配置されていても、接続部233dがIp2−電極233の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(Ip2−電極233の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。しかも、Ip2−電極233の電解質体接触部233cのみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。
なお、本実施形態では、Ip2−電極233が、特許請求の範囲に記載の「第3電極」に相当する。また、接続部233dが、特許請求の範囲に記載の「第3接続部」に相当する。また、Ip2−リード237が、特許請求の範囲に記載の「第3リード」に相当する。また、アルミナ絶縁層238が、特許請求の範囲に記載の「第3絶縁層」に相当する。また、電解質体接触部233cが、特許請求の範囲に記載の「第3電解質体接触部」に相当する。
また、Ip1−電極及びVs−電極についても、Ip2−電極233と同様に、リードとの接続部を含めた全体を、第1測定室(内部空間)内に配置することで、クラックの発生を抑制することができる。
また、参考形態のガスセンサ素子10では、図8に示すように、Ip1+電極112の接続部112d(第2接続部)の全体を、第1多孔質体114からの距離が1.0mm以内の領域A2(図8において二点鎖線K2で囲まれた領域)内に配置した。
これに対し、本実施形態のガスセンサ素子210では、図11に示すように、Ip1+電極212を、第1多孔質体214と接触させて、その全体を、固体電解質体の積層方向(厚み方向、図11において紙面に直交する方向)について第1多孔質体214に対向する位置に配置している。詳細には、Ip1+電極212の一部がIp1+リード216を挟んで第1多孔質体214に対向すると共に、その他の部位(リード216が積層方向に存在していない部位)が第1多孔質体214に接触する形態で、Ip1+電極212の全体が第1多孔質体214に対向している。なお、Ip1+リード216は、上記積層方向について第1多孔質体214と対向する位置で、Ip1+電極212の接続部212dと接続している。
このような構成とすることで、Ip1+電極212内に浸入した水が凍結するような場合でも、ガスセンサ素子にクラックが発生するのを防止することができる。接続部212dを含むIp1+電極212の全体が第1多孔質体214に対向して配置され、Ip1+電極212のうちIp1+リード216と接触した部位のみを除いた電極212の大部分が第1多孔質体214に接触しているため、Ip1+電極212内に留まった水の多くを第1多孔質体214の空孔内において凍結(膨張)させることができ、その結果、ガスセンサ素子の層間を引き離す応力の発生を抑制することができるからである。
また、Ip1+電極212は、アルミナ絶縁層218の貫通孔218bを通じて、アルミナ絶縁層218が形成されている固体電解質体111と接触する電解質体接触部212cを有している(図11参照)。一方、Ip1+リード216は、アルミナ絶縁層218上に形成している(これにより、固体電解質体111と接触させないようにしている)。また、Ip1+電極212の接続部212dは、アルミナ絶縁層218上において、Ip1+リード216と接続している(これにより、固体電解質体111と接触させないようにしている)。このようにすることで、接続部212d(第4接続部)が第1多孔質体214と重なる位置(積層方向に対向する位置)に配置されていても、接続部212dがIp1+電極212(第4電極)の酸素ポンプ性能に影響を及ぼすことがない(Ip1+電極212の酸素ポンプ性能を低下させることがない)。このため、測定対象ガス中の酸素濃度やNOx濃度を検知する検知精度が低下することを抑制できる。しかも、Ip1+電極212の電解質体接触部212cのみを、実際に感応部として機能させることができ、検知対象であるガス濃度を精度良く検知することが可能となる。
なお、本実施形態では、Ip1+電極212が、特許請求の範囲に記載の「第4電極」に相当する。また、接続部212dが、特許請求の範囲に記載の「第4接続部」に相当する。また、Ip1+リード216が、特許請求の範囲に記載の「第4リード」に相当する。また、アルミナ絶縁層218が、特許請求の範囲に記載の「第4絶縁層」に相当する。また、電解質体接触部212cが、特許請求の範囲に記載の「第4電解質体接触部」に相当する。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、ガスセンサ素子として、NOx濃度を検知することが可能なガスセンサ素子(NOxセンサ素子)を例示した。しかしながら、本発明は、NOxセンサ素子に限らず、NOx以外のガスを検知することが可能なガスセンサ素子(例えば、酸素を検知する酸素センサ素子など)にも適用することができる。
また、実施形態では、Ip1+電極212の一部がIp1+リード216を挟んで第1多孔質体214に対向すると共に、その他の部位(リード216が積層方向に存在していない部位)が第1多孔質体214に接触する形態で、Ip1+電極212の全体が第1多孔質体214に対向するようにした。しかしながら、Ip1+電極212とIp1+リード216との積層方向位置を反対(上下反対)にして、Ip1+電極212の全体が第1多孔質体214に接触するようにしても良い。
1,201 ガスセンサ
10,210 ガスセンサ素子
111,121,131 固体電解質体
111b,121b,131b 固体電解質体の表面
111c,121c,131c 固体電解質体の裏面
112 Ip1+電極(第2電極)
112b 多孔質体接触部
112c 電解質体接触部
112d 接続部(第2接続部)
113 Ip1−電極(第1電極)
113b,122b,133b 空間露出部
113c,122c,133c 電解質体接触部
113d,122d,133d 接続部(第1接続部)
114 第1多孔質体
116 Ip1+リード(第2リード)
117 Ip1−リード(第1リード)
118 アルミナ絶縁層(第2絶縁層)
118b,119b,128b,138c 貫通孔
119,128,138 アルミナ絶縁層(第1絶縁層)
122 Vs−電極(第1電極)
123 Vs+電極
126 Vs−リード(第1リード)
127 Vs+リード
132 Ip2+電極
133 Ip2−電極(第1電極)
136 Ip2+リード
137 Ip2−リード(第1リード)
150 第1測定室(内部空間)
151 第2多孔質体
160 第2測定室(内部空間)
212 Ip1+電極(第4電極)
212c 電解質体接触部(第4電解質体接触部)
212d 接続部(第4接続部)
216 Ip1+リード(第4リード)
218 アルミナ絶縁層(第4絶縁層)
233 Ip2−電極(第3電極)
233c 電解質体接触部(第3電解質体接触部)
233d 接続部(第3接続部)
237 Ip2−リード(第3リード)
238 アルミナ絶縁層(第3絶縁層)