JPH11118758A - 排気ガスセンサ及び排気ガスセンサシステム - Google Patents

排気ガスセンサ及び排気ガスセンサシステム

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JPH11118758A
JPH11118758A JP9303389A JP30338997A JPH11118758A JP H11118758 A JPH11118758 A JP H11118758A JP 9303389 A JP9303389 A JP 9303389A JP 30338997 A JP30338997 A JP 30338997A JP H11118758 A JPH11118758 A JP H11118758A
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oxygen
exhaust gas
oxygen concentration
concentration cell
cell element
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JP9303389A
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English (en)
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Takaharu Inoue
隆治 井上
Shoji Kitanoya
昇治 北野谷
Masashi Kida
真史 喜田
Takafumi Oshima
崇文 大島
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Niterra Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 排気ガス中の酸素濃度が変化しても被検出成
分の濃度を高精度で検出でき、しかも低温作動が可能で
ある排気ガスセンサを提供する。 【解決手段】 排気ガスセンサ1は、酸素濃淡電池素子
4と酸素ポンプ素子3が互いに対向して配置され、酸素
濃淡電池素子4の両側の隙間15,16に排気ガスが導
入される。また、各電極11〜13の酸化触媒としての
活性が、酸素濃淡電池素子4の両側で被検出成分の酸化
による消費量に差が生ずるように調整される。また、酸
素濃淡電池素子4と酸素ポンプ素子3とを構成する酸素
イオン伝導性固体電解質として、酸素中でのバルク電気
比抵抗が、650℃において100Ω・cm以下となる
ものが使用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排気ガス中に含ま
れる被検出成分の検出を行うための排気ガスセンサ及び
それを用いた排気ガスセンサシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車等の排気ガスに含有される炭化水
素(以下、HCともいう)やCO、あるいは窒素酸化物
(以下、NOXともいう)等の被検出成分を検出するた
めのセンサとして、例えば抵抗型センサが知られてい
る。これは、検出素子としてSnO2等の酸化物半導体
が使用され、被検出成分の吸着に伴う酸化物半導体の抵
抗変化に基づき、該被検出成分の排気ガス中の含有量を
検出するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記抵抗型の排気ガス
センサにおいては、酸化物半導体による検出素子の出力
が、排気ガス中に含有される酸素濃度により変化する特
性を有している。そのため、同じ汚染物質濃度に対して
も、排気ガス中の酸素濃度により検出出力値が変動して
しまう問題がある。そこで、例えば特開平5−1807
94号公報等に開示されているように、固体電解質を用
いた酸素ポンプ素子により排気ガス中に酸素を送り込ん
でその濃度を高め、ガス中の酸素濃度の相対的な変動を
小さくすることにより検出精度を高める提案がなされて
いる。しかしながら、排気ガス中の酸素の濃度が大きく
変化した場合には、酸素ポンプ素子からの酸素導入によ
る相対濃度変動の抑制効果が不十分となり、満足な検出
精度が得られない欠点がある。
【0004】また、これとは別に上記従来の排気ガスセ
ンサにおいては、HC濃度を検出する場合、各種炭化水
素の合計濃度に関する情報は得られても、特定の炭化水
素成分(例えばメタン)を選択的に検出したり、あるい
は複数種類の成分の濃度を個別に検出したりすることが
できない問題があった。
【0005】本発明は、排気ガス中の酸素濃度が変化し
ても被検出成分の濃度を高精度で検出でき、しかも低温
作動が可能である排気ガスセンサ及びそれを用いた排気
ガスセンサシステムを提供することにある。また、さら
に進んでは、複数種類の被検出成分が存在する場合にお
いて、特定の炭化水素成分を選択的に検出したり、ある
いは互いに異なる成分ないし成分群の濃度に関する情報
を個別に得ることが可能な排気ガスセンサ及びそれを用
いた排気ガスセンサシステムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】本発明
は、排気ガス中に含まれる被検出成分の検出を行うため
のセンサに関するものであり、下記の構成を有すること
を前提とする。すなわち、該排気ガスセンサは、酸素イ
オン伝導性固体電解質(以下、単に固体電解質ともい
う)により構成され、その両面に電極が形成された酸素
濃淡電池素子と、酸素イオン伝導性固体電解質により構
成されて両面に電極が形成され、かつ酸素濃淡電池素子
との間において、被測定雰囲気からの排気ガスの流通が
許容された所定量の隙間が形成されるように、該酸素濃
淡電池素子に対向配置されるとともに、該酸素濃淡電池
素子に生ずる濃淡電池起電力の絶対値が減少する方向
に、上記隙間に酸素を汲み込み又は該隙間から酸素を汲
み出す酸素ポンプ素子と、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電
池素子との少なくとも一方を、予め定められたセンサ作
動温度に加熱する加熱素子とを備える。
【0007】そして、本発明の排気ガスセンサの第一
は、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子とを構成する酸
素イオン伝導性固体電解質として、酸素中でのバルク電
気比抵抗が、650℃において100Ω・cm以下とな
るものが使用されることを特徴とする。
【0008】本発明の排気ガスセンサの作動原理は、例
えば次のようなものである。すなわち、酸素ポンプ素子
の隙間側の電極を第一電極、酸素濃淡電池素子の隙間側
の電極を第二電極、酸素濃淡電池素子の反対空間側の電
極を第三電極として、隙間と反対空間とに導入された排
気ガス中の被検出成分は、少なくともそれら隙間と反対
空間との一方において、第一〜第三電極の少なくともい
ずれかを酸化触媒として排気ガス中の酸素と反応するこ
とにより消費される。第一〜第三電極の酸化触媒活性
は、例えば隙間と反対空間との間で酸素との反応による
被検出成分の消費量に差が生じるように調整しておく。
そして、酸素濃淡電池素子の濃淡電池起電力が、予め定
められた起電力目標値ECに到達したときの酸素ポンプ
素子に流れる電流値を、排気ガス中の被検出成分の濃度
を反映した情報(濃度検出情報)として取り出す。濃淡
電池起電力が起電力目標値ECに到達したときの酸素ポ
ンプ素子に流れる電流(以下、ポンプ電流という)は、
排気ガス中の被検出成分の濃度値をほぼ反映した値とな
り、これに基づいて上記被検出成分の濃度を検出するこ
とができる。また、上記ポンプ電流の値は、排気ガス中
の被検出成分の濃度が変化しない限り、排気ガス中の酸
素濃度の影響をほとんど受けず、また、被検出成分の濃
度変化に対するポンプ電流の値の変化もほぼ直線的とな
る。これにより、酸素濃度が所定の範囲で変化しても、
排気ガス中の被検出成分の濃度を精度よく検出すること
ができる。
【0009】ここで、被検出成分が、酸化反応に対する
活性、すなわち燃焼のしやすさに差を有する複数の可燃
ガス成分を含んでいる場合、燃焼の進行しやすい高温で
は多くの成分が一様に燃焼するため、特定の成分の濃度
を反映した情報はなかなか得ることができない。しかし
ながら、低温では、酸化反応に対する活性が小さい特定
成分(例えば可燃ガス成分がHCである場合のメタンな
ど)の燃焼が抑制される。このとき、使用される固体電
解質が該温度において十分な酸素イオン伝導性を有して
いれば、上記特定成分の燃焼が抑制される分だけ、濃度
検出出力は高温側でのそれとは異なったものとなり、こ
れを利用することで可燃ガス成分に対する一種の選択検
出機能をセンサに付与することが可能となる。
【0010】そして、上記本発明の第一の構成の排気ガ
スセンサでは、酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電池素子
を、酸素中でのバルク電気比抵抗が、650℃において
100Ω・cm以下となる低温作動型の固体電解質で構
成することにより、特定の可燃ガス成分に対する選択検
出機能が実現される。
【0011】上記特定成分の代表的なものとして、メタ
ンを例示することができる。すなわち、排気ガス中に含
有される多数のHC成分のうちメタンは最も燃焼しにく
く、特に650℃以下の低温では、メタン以外のHC成
分(いわゆる非メタンHC成分)との間で燃焼(酸化)
に対する活性に顕著な差が生じる。従って、本発明の排
気ガスセンサにより、メタンあるいは非メタンHC成分
の選択検出機能は特に容易に実現できる。例えば光化学
スモッグの要因となるHC成分は一般に非メタンHC成
分であるといわれており、排気ガス規制の対象ともなっ
ている。それ故、本発明の排気ガスセンサは、全HC成
分のうち、有害な非メタンHC成分の濃度情報を合理的
に得られる点でも有用なものとなる。
【0012】固体電解質の650℃におけるバルク電気
比抵抗が100Ω・cmを超えると、排気ガス中に通常
含まれる可燃ガス成分について、特定のもの(例えばメ
タン)の燃焼抑制が顕著となる低温(例えば500〜6
50℃)まで温度が低下した場合に、酸素イオン伝導性
が低くなり過ぎて所期の検出感度が得られなくなる。固
体電解質の650℃でのバルク電気比抵抗は、望ましく
は50Ω・cm以下で調整するのがよい。なお、固体電
解質のバルク電気比抵抗は、公知の交流インピーダンス
法により測定することができる。
【0013】具体例を挙げれば、メタンの検出感度があ
る限界温度以下でほぼゼロとなり、非メタンHC成分の
検出感度がゼロでない所定レベルを示す場合、センサの
作動設定温度を上記限界温度以下としたときの濃度検出
情報により、非メタンHC成分の濃度を知ることができ
る。
【0014】上記固体電解質は、その一般組成式におけ
る金属元素部分の組成がR1-xxGa1-yy(ただし、
Rはイオン価が3価の希土類金属元素、AはSr、C
a、Ba、Cd、Hg及びRaから選ばれる1種又は2
種以上からなる金属元素、BはMg、In、Al及びZ
nから選ばれる1種又は2種以上からなる金属元素、
0.05≦x≦0.25、0.1≦y≦0.35)で表
されるペロブスカイト型酸素イオン伝導性固体電解質
(以下、単にペロブスカイト型固体電解質という)を、
本発明に特に好適に使用することができる。
【0015】例えば、従来より広く使用されているCa
OあるいはY23で安定化したZrO2系固体電解質の
場合、酸素中での650℃のバルク電気比抵抗は130
Ω・cmと高く、特定の可燃ガス成分、例えばメタンの
燃焼が十分に抑制される650℃以下の低温では作動不
能であった。しかしながら、該ペロブスカイト型固体電
解質は、組成によっても異なるが、650℃のバルク電
気比抵抗が20〜30Ω・cmと低く、500℃でも6
0〜70Ω・cm程度の値を示す(参考文献:Ishihara
et.al., Journal of American Chemical Society, 116
(1994) P.3801- 3803, Figure 6)。従って、従来のZ
rO2系固体電解質では濃度検出出力がほとんど期待で
きなかった500〜650℃での低温域でも、十分なセ
ンサ出力を期待できる。
【0016】そして、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素
子とを構成する酸素イオン伝導性固体電解質を上記のよ
うな材質とすることで、それら素子が500〜650℃
での低温域でも作動可能となり、該温度域で燃焼が抑制
されるメタン等の特定の可燃ガス成分に対する選択検出
機能が実現される。
【0017】以下、本発明における上記ペロブスカイト
型固体電解質の組成の臨界的意味について説明する。該
ペロブスカイト型固体電解質は組成RGaO3を基本と
して、そのRの一部を金属元素Aにより、またGaの一
部を金属元素Bによりそれぞれ置換した組成を有してい
る。まず、イオン価が3価の希土類金属元素Rを置換す
る金属元素A(Sr、Ca、Ba、Cd、Hg及びRa
から選ばれる1種又は2種以上)は、いずれもイオン価
が希土類金属イオンよりも小さく、またペロブスカイト
型結晶構造が維持されるように、Rとのイオン半径差が
30%以内のものが選定されている。これにより、該金
属元素Aは、ペロブスカイト型結晶構造をベースとし
て、イオン伝導に寄与する酸素イオンを生成させ、イオ
ン伝導率を向上させる役割を果たしている。その置換比
率を表すxが0.05未満になると、イオン伝導に寄与
する酸素イオンが不足し、十分な酸素イオン伝導性が得
られなくなる。一方、xが0.25を超えるとRGaO
3単相ではなくなり、同様に酸素イオン伝導性が不十分
となる。なお、xは、より望ましくは0.1〜0.2の
範囲で調整するのがよい。
【0018】なお、希土類金属元素Rは、Laを主体に
構成した場合に、特に良好なイオン伝導性を得ることが
できる。なお、Rは全てをLaで構成してもよいが、イ
オン価が3価のものであればLa以外の希土類金属元素
Rを配合して用いてもよい。この場合、Laの一部をN
dにより置換すると、酸素イオンの輸率が向上してイオ
ン伝導性が高められることが知られており(参考文献:
Ishihara et.al., Solid State Ionics, 79 (1995) p.1
47 - 151)、センサの感度を向上できる。また、金属元
素Aは、固体電解質のイオン伝導性向上への効果が特に
大きいことから、Srを使用することが有効である(参
考文献:Ishihara et.al., Journal ofAmerican Chemic
al Society, 116 (1994) p.3801 - 3803)。
【0019】一方、Gaを置換する金属元素B(Mg、
In、Al及びZnから選ばれる1種又は2種以上)
は、いずれもイオン価がGaイオンよりも小さく、また
ペロブスカイト型結晶構造が維持されるように、Gaと
のイオン半径差が30%以内のものが選定されている。
これにより、該金属元素Bは、金属元素Aと同様に、ペ
ロブスカイト型結晶構造をベースとして、イオン伝導に
寄与する酸素イオンを生成させ、イオン伝導率を向上さ
せる役割を果たしている。その置換比率を表すyが0.
1未満になると、イオン伝導に寄与する酸素イオンが不
足し、十分な酸素イオン伝導性が得られなくなる。一
方、yが0.35を超えるとRGaO3単相ではなくな
り、同様に酸素イオン伝導性が不十分となる。yは、よ
り望ましくは0.15〜0.3の範囲で調整するのがよ
い。また、金属元素Bは、固体電解質のイオン伝導性向
上への効果が特に大きいことから、Mgを使用すること
が有効である(引用文献:Ishihara et.al., Journal o
f American Chemical Society,116 (1994) p.3801 - 38
03、Figure 2.)。図23は、RをLa、AをSr、B
をMg、xを0.1とし、yを各種変化させたときの、
上記ペロブスカイト型固体電解質のイオン伝導率の変化
を表している。0.1≦y≦0.35の範囲で、酸素イ
オン伝導に基づく良好なイオン伝導率が得られているこ
とがわかる(引用文献:Ishihara et.al., Journal of
American Chemical Society, 116 (1994)p.3801 - 380
3、Figure 4.)。
【0020】なお、酸素成分を考慮に入れた上記固体電
解質の一般組成式は、R1-xxGa1-yy3-δで表す
ことができる。ここで、δの値は、金属元素Aならびに
金属元素Bの添加による酸素欠損の発生、及び固体電解
質の置かれる雰囲気中の酸素分圧等の影響を受けて変動
する。また、上記固体電解質の結晶構造はペロブスカイ
ト型であるが、組成によりその結晶対称性は影響を受
け、必ずしも理想的な立方晶系のペロブスカイト型構造
とはならない場合もある。
【0021】上記ペロブスカイト型固体電解質を使用す
る場合、加熱素子により酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電
池素子の設定温度を450〜550℃の範囲で調整する
ことにより、その時の濃度検出情報から非メタンHC成
分の濃度を精度よく知ることができる。これは、該ペロ
ブスカイト型固体電解質の使用により、上記温度範囲で
メタンに対する検出感度を十分小さくでき、かつ非メタ
ンHC成分の検出感度を一定以上に確保できるためであ
る。なお、設定温度が450℃未満になると、固体電解
質のバルク電気比抵抗が大きくなり過ぎて、所期のセン
サ感度が得られない場合がある。一方、設定温度が55
0℃を超えると、メタンに対する検出感度が高くなり過
ぎ、非メタンHC成分の検出に対する選択性が十分でな
くなる。なお、該設定温度は、望ましくは480〜52
0℃の範囲で調整するのがよい。
【0022】なお、酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電池素
子を構成する固体電解質としては、ZrO2−Sc23
系(例えばZrO2−7.5mol%Sc23)、Bi2
3−Y23系(例えばBi23−25mol%Y
23)、CeO2−Y23系(例えばCeO2−5mol
%Y23)等の酸素イオン伝導性固体電解質も使用可能
である。
【0023】次に、本発明の排気ガスセンサシステム
(以下、単にセンサシステムともいう)は、上記本発明
の排気ガスセンサと、酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電池
素子が、所定の設定温度に加熱されるように、加熱素子
の作動を制御する加熱制御手段と、互いに異なる2以上
の設定温度候補の中からいずれかを選択し、その選択さ
れた設定温度による加熱を加熱制御手段に対して指令す
る加熱制御指令手段とを備え、上記排気ガスセンサに対
し、排気ガス中に含まれる被検出成分について、設定温
度に応じて互いに異なる内容の濃度検出情報を出力させ
るようにしたことを特徴とする。
【0024】すなわち、上記センサシステムによれば、
これに組み込まれた本発明の排気ガスセンサが、その作
動温度(設定温度)により、特定成分の燃焼(酸化)の
度合いに差が生じるので、設定温度により互いに異なる
濃度検出出力が発生する。従って、これら各設定温度で
の濃度検出出力に基づいて、特定の炭化水素成分を選択
的に検出したり、あるいは互いに異なる成分ないし成分
群の濃度に関する情報を個別に得ることが可能となる。
【0025】具体的には、互いに異なる2以上の設定温
度のそれぞれにおいて得られた濃度検出情報に基づい
て、2以上の被検出成分のうちの特定のものの濃度に関
する情報を生成し、これを出力する特定成分検出情報生
成・出力手段を設けることができる。これにより、各設
定温度での濃度検出情報のみでは得ることができない特
定の被検出成分の濃度情報を、それら濃度検出情報の組
み合わせに基づいて得ることができ、ひいては検出可能
な被検出成分の種類を増やすことができる。
【0026】一方、本発明のセンサシステムは、上記排
気ガスセンサが出力する濃度検出情報が、第一の設定温
度において、2以上の被検出成分のうちの特定の1成分
を除いた残余の被検出成分の合計濃度を反映したものと
なり、第一の設定温度よりも高温の第二の設定温度にお
いては、特定の1成分を含めたすべての被検出成分の合
計濃度を反映したものとなるように構成することもでき
る。例えば、被検出成分のうちの上記特定の1成分をメ
タンとすることができ、それ以外の被検出成分は非メタ
ン炭化水素とすることができる。これによれば、全HC
成分のうち、光化学スモッグ等の要因となる非メタンH
C成分の濃度を特定できる利点が生ずる。
【0027】ここで、排気ガスセンサの、酸素濃淡電池
素子と酸素ポンプ素子とを前述のペロブスカイト型酸素
イオン伝導性固体電解質とする場合、第一の設定温度は
450〜550℃の範囲内で設定することができ、第二
の設定温度は600〜700℃の範囲内で設定すること
ができる。これにより、第一の設定温度では、メタンの
燃焼が顕著に抑制されることから、その濃度検出情報に
基づき、非メタンHC成分の濃度を精度よく知ることが
でき、また第二の設定温度ではメタンを含めた全HC成
分の燃焼が促進されるので、その濃度検出情報に基づ
き、全HC成分濃度を精度よく知ることができる。ま
た、必要に応じて、各設定温度で得られた濃度検出情報
の差に基づき、メタン濃度を精度よく知ることができ
る。
【0028】なお、本発明の請求項に記載した排気ガス
センサ及び排気ガスセンサシステムの構成には、次のよ
うな内容を適宜付け加えることができる。
【0029】本発明の排気ガスセンサは、酸素濃淡電池
素子と酸素ポンプ素子とが、第一電極と第二電極との間
に隙間を生じさせた状態で互いに積層された一体の焼成
体として構成することができる。この構成によれば、次
のような効果が達成される。 酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子とが焼成と同時に
一体化されるので、焼成後の組立工程を省略又は簡略化
でき、センサの製造効率が高められる。 例えば酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子とをそれぞ
れ別々に焼成し、該焼成後に貼合わせ等により一体化す
る構成の場合、素子の焼成時の変形等により隙間の形成
量を一定にすることが困難となり、センサ個体間で出力
レベルのばらつきを生ずる場合がある。しかしながら、
上記焼成により一体化する構成では、隙間の形成量を制
御しやすいので、そのような問題を生じにくい。 酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子とは、センサのコ
ンパクト化のため、薄板状(例えば、厚さ1mm以下、具
体的には0.2〜0.4mm)に形成した場合、焼成後の
貼合わせ等で一体化する構成では、機械的強度、例えば
耐衝撃性が不足して、素子に割れやクラックが生じやす
くなる場合がある。しかしながら、それらを焼成により
一体化することで素子が相互に補強し合い、機械的強度
を向上させることができる。
【0030】上述のような一体化構造は、例えば次のよ
うな製法により能率的に得ることができる。まず、酸素
濃淡電池素子となるべき第一のセラミック粉末成形体の
両面に、電極となるべき電極パターンを電極材料粉末ペ
ーストを用いて印刷形成し、また、酸素ポンプ素子とな
るべき第二のセラミック粉末成形体の両面にも同様に電
極パターンを印刷形成する。次に、それら第一及び第二
のセラミック粉末成形体を、第一電極及び第二電極とな
るべき電極パターン同士が互い対向し、かつその対向す
る電極パターンの間に隙間が形成されるように互いに積
層する。そして、その積層体を焼成することにより、互
いに一体化された酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子
とを得る。
【0031】酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との間
に形成される隙間の大きさは、例えば1mm以下に設定す
るのがよい。隙間の大きさが1mmを超えると、隙間によ
る新たな排気ガスの流入規制効果が小さくなり、センサ
の検出精度が低下する場合がある。また、第一電極の面
積Spと第二電極の面積Ssとの比をSp/Ssを1以上と
すれば、第二電極付近の酸素濃度を一定にすることがで
き、ひいてはセンサ出力の精度及び安定性を向上させる
ことができる。
【0032】さて、上記構成の排気ガスセンサにおいて
は、酸素濃淡電池素子の濃淡電池起電力の絶対値が10
mV以下に設定された起電力目標値ECに到達したとき
の、上記酸素ポンプ素子に流れる電流値を、排気ガス中
の被検出成分の濃度を反映した情報として取り出すこと
ができる。
【0033】一方、酸素を1体積%以上含有し、かつセ
ンサ作動温度において酸素と反応する成分を実質的に含
有しない試験ガスを上記隙間及び反対空間に導入したと
きの、酸素濃淡電池素子に生ずるオフセット起電力の絶
対値をEOS(単位:mV)とし、これに対応して起電力
目標値ECが(EOS−5)mV以上(EOS+5)mV以
下の範囲内で設定されるとともに、酸素濃淡電池素子の
濃淡電池起電力の絶対値が上記起電力目標値ECに到達
したときの酸素ポンプ素子に流れる電流値を、排気ガス
中の被検出成分の濃度を反映した情報として取り出すこ
ともできる。
【0034】例えば、酸素濃淡電池素子を挟んで隙間側
と反対空間側とで、酸素濃度が互いに等しくなるよう
に、酸素ポンプ素子による隙間への酸素の汲み込みない
しは汲み出しを行うようにすれば、それら両空間での被
検出成分の消費量の差に対し、ポンプ電流が直接的に対
応することになるから、被検出成分の濃度をさらに精度
よく検出することができ、また検出結果の解析も容易と
なる。この場合、酸素濃淡電池素子の両側の酸素濃度が
等しくなれば、濃淡電池起電力は理論上は0となるか
ら、酸素ポンプ素子は、該濃淡電池起電力が0となるよ
うに隙間に対する酸素の汲み込みないしは汲み出しを行
うこととなる。しかしながら、酸素濃淡電池素子の両側
の酸素濃度が等しくなっても、通常は、酸素濃淡電池素
子の起電力は0にはならず、一定のオフセット起電力が
残ることが多い。
【0035】本発明者らは、一般に使用されているほと
んどの酸素イオン伝導性固体電解質について、該固体電
解質により酸素濃淡電池素子を構成した場合のオフセッ
ト起電力の絶対値が10mV以下の範囲に収まっている
ことに着眼するとともに、本発明の排気ガスセンサの第
一の構成において、起電力目標値ECを10mV以下に
設定し、濃淡電池起電力の絶対値が該起電力目標値EC
に到達したときの酸素ポンプ素子に流れる電流値を検出
信号として採用することで、排気ガス中の被検出成分の
濃度を正確に検出できることを見い出したのである。な
お、測定雰囲気の酸素濃度範囲が判っている場合は、そ
の範囲の最大酸素濃度におけるオフセット起電力を起電
力目標値とするのが望ましい。
【0036】一方、本発明者らは鋭意検討の結果、次の
ことも見い出した。すなわち、酸素濃淡電池素子のオフ
セット起電力が、検出に係る排気ガス中の酸素濃度が低
くなるほど変動しやすくなり、一定以下の酸素濃度にお
けるオフセット起電力を基準として起電力目標値ECを
設定すると、センサ出力が排気ガス中の酸素濃度の影響
を受けやすくなる。そしてこれを解決するためには、酸
素を1体積%以上含有し、かつセンサ作動温度において
酸素と反応する成分を実質的に含有しない試験ガスを隙
間及び反対空間に導入したときの、酸素濃淡電池素子に
生ずるオフセット起電力の絶対値をEOS(単位:mV)
とし、これを基準として起電力目標値ECを(EOS−
5.0)mV以上(EOS+5.0)mV以下の範囲内で
設定することが有効となる。そして、起電力目標値EC
を上記範囲で設定することで、排気ガス中の酸素濃度の
影響を受けない、より安定したセンサ出力を得ることが
できる。この場合、起電力目標値ECは、なるべくEOS
に近い値として設定することが、センサの検出精度を高
める上で望ましい。なお、EOSを決定するための試験ガ
ス中の酸素濃度は、望ましくは10%以上のものを使用
するか、あるいは大気を使用するのがよい。また、起電
力目標値ECを、第一の構成と同様に10mV以下に設
定することにより、より安定で精度の高いセンサ出力を
得ることができる。
【0037】本発明の排気ガスセンサは、例えばガソリ
ンエンジンの酸化触媒コンバータ、あるいは三元触媒コ
ンバータの下流側に配置され、該コンバータ中の三元触
媒の劣化を検知するものとして構成することができる。
この場合、排気ガス中の酸素は、上流側の触媒において
COあるいはHCの酸化のためにかなりの部分が消費さ
れた状態で、排気ガスセンサに導入されることとなる。
この場合、検出に係る排気ガス中の酸素濃度は、おおむ
ね5000ppm以下のレベルとなっていることから、
排気ガスセンサとしては、酸素濃度が上述のように低い
領域で被検出成分を精度よく検出できるように構成する
ことが望ましい。そのためには、例えば酸素濃度が10
0ppmに対応するセンサ出力をQ100とし、1000
ppmに対応するセンサ出力をQ1000として、出力変化
率Δ(%)={|Q100−Q1000|/Q100}×100が
±30%以下、より望ましくは±10%以下となるよう
に、前述の起電力目標値ECを設定するのがよい。
【0038】次に、上記排気ガスセンサは、酸素濃淡電
池素子及び酸素ポンプ素子の少なくともいずれかに対
し、隙間とは反対側に加熱素子が積層され、それら酸素
濃淡電池素子と、酸素ポンプ素子と、加熱素子とが、互
いに積層された一体の焼成体として構成することができ
る。これにより、加熱素子も含めてセンサの組立工程を
簡略化でき、また、センサ全体をよりコンパクトに構成
できるほか、一体化された加熱素子による補強効果によ
り、センサ全体の機械的強度をさらに向上させることが
できる。
【0039】上記構成のセンサは、前述の方法におい
て、第一及び第二のセラミック粉末成形体の少なくとも
いずれかに対し、隙間とは反対側に加熱素子となるべき
第三のセラミック粉末成形体を積層し、その積層体を焼
成することにより、互いに一体化された酸素濃淡電池素
子、酸素ポンプ素子及び加熱素子を得るようにすること
で、能率的に製造することができる。
【0040】本発明の排気ガスセンサにおいて、前述の
隙間は、例えば酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との
積層体側縁に形成された連通部において外側空間と連通
するように構成することができる。これにより連通部か
ら上記隙間に対し、排気ガスをスムーズに導入すること
ができる。この場合、その連通部は、上記隙間と外側空
間との間で気体の流通を許容する多孔質セラミック体に
より構成することができる。こうすれば、排気ガス中に
含まれる煤や油滴等の汚れ粒子が隙間に侵入しにくくな
り、ひいては隙間に面している第一ないし第二電極の、
上記汚れ粒子の付着に伴う劣化を防止ないし抑制するこ
とができる。この場合、多孔質セラミック体による連通
部を形成する方法としては、前述の方法において第一及
び第二のセラミック粉末成形体の間に、該連通部となる
べき連通部パターンを、多孔質セラミック粉末(例えば
多孔質Al23粉末)又は焼成後に多孔質セラミック体
となる粉末混合物等からなるペーストを用いて印刷等に
より形成する形で挟み込み、これを一体焼成する方法を
例示することができる。
【0041】次に、上記隙間において酸素濃淡電池素子
と酸素ポンプ素子との間には、該隙間に対する気体の出
入りを妨げない状態で、該隙間の間隔を規定する支柱部
を形成することができる。例えば、酸素濃淡電池素子と
酸素ポンプ素子とを板状に形成する場合、前述の第一及
び第二のセラミック粉末成形体として、セラミック粉末
と有機バインダとを混練してシート状に成形した、いわ
ゆるセラミックグリーンシートが使用されることが多
い。この場合、隙間を形成した状態で積層されたセラミ
ックグリーンシートが焼成時に変形して隙間側に垂れ下
がり、最終的に形成される隙間の量がばらついたり、甚
だしい場合には隙間が潰れて上下の電極が接触してしま
ったりするトラブルが生ずる場合がある。そこで、上述
のように、隙間の間隔を規定する支柱部を酸素濃淡電池
素子と酸素ポンプ素子との間に形成しておけば、所期の
大きさの隙間を安定して形成することができ、ひいては
隙間量のばらつきに伴うセンサ個体間の出力ばらつきと
いった問題を生じにくくすることができる。
【0042】上記支柱部は、次のような方法により効率
的に形成することができる。すなわち、第一及び第二の
セラミック粉末成形体の少なくともいずれかに対し、上
記隙間に対応する領域内に、セラミック粉末を用いて支
柱部となるべき支柱部パターンを形成する。次いで、そ
れら第一及び第二のセラミック粉末成形体を、支柱部パ
ターンが形成された側において隙間が形成されるように
互いに積層する。そして、その積層体を焼成することに
より、酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子との間に、
上記支柱部パターンに基づく支柱部を形成する。支柱部
パターンは、セラミック粉末成形体(例えばセラミック
グリーンシート)の配置、あるいはセラミック粉末ペー
ストを用いたパターン印刷等により形成することができ
る。
【0043】支柱部は、具体的には、隙間の形成領域内
に散点状あるいは千鳥状に分散して形成したり、あるい
は酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との積層方向と交
差する向きにおいて、上記隙間を2以上の空間に仕切る
仕切り壁状に形成することができる。なお、支柱部の材
質としては、酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子と同
一材質のセラミック材料(すなわち、酸素イオン導電性
固体電解質セラミック)で構成しても、異なる材質のセ
ラミック材料(例えば、Al23(多孔質体を含む))
で構成してもいずれでもよいが、焼成により酸素濃淡電
池素子及び酸素ポンプ素子と一体化し得る材質のもので
構成することが特に好ましい。
【0044】次に、酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素
子は、それぞれ横長の板状に構成してこれを互いに対向
配置することができる。この場合、第一〜第三電極はそ
れら酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子の板面長手方
向における一方の端部側に形成することができる。ま
た、同じくその板面長手方向における他方の端部側にお
いてそれら酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子の間に
は、隙間の間隔とほぼ同厚さのスペーサ部を介挿し、該
スペーサ部と酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子とを
焼成により互いに一体化する構成とすることができる。
酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子との間にスペーサ
部を配置することにより、必要な隙間を容易に形成でき
る他、スペーサ部を一体化することで板状の酸素濃淡電
池素子及び酸素ポンプ素子を補強でき、ひいてはセンサ
の機械的強度を向上させることができる。
【0045】このような構成の排気ガスセンサは、下記
のような方法により効率的に製造することができる。す
なわち、前述の方法において、第一及び第二のセラミッ
ク粉末成形体を、それぞれ横長の板状に形成して互いに
対向配置し、電極パターンをそれら第一及び第二のセラ
ミック粉末成形体の板面長手方向における一方の端部側
に形成する。また、板面長手方向における他方の端部側
においてそれら第一及び第二のセラミック粉末成形体の
間に、スペーサ部となるべきスペーサ成形体を介挿す
る。そして、それらスペーサ成形体と第一及び第二のセ
ラミック粉末成形体との積層体を焼成することにより、
酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子とを、該スペーサ成
形体に基づくスペーサ部を介して互いに接合・一体化す
る。
【0046】この場合、該隙間には前述の支柱部を形成
すると、隙間寸法精度を向上させることができる。ま
た、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との間には、そ
の長手方向において隙間に関してスペーサ部と反対位置
に補助スペーサ部を介挿する構成とすることもできる。
こうすれば、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との隙
間形成部分が、その長手方向においてスペーサ部と補助
スペーサ部とにより両側で支持されるので、隙間部分に
おけるセンサの機械的強度を大幅に向上させることがで
きる。一方、隙間の周縁の一部、例えば酸素濃淡電池素
子と酸素ポンプ素子の板幅方向両側の側縁部に沿うよう
に、補強スペーサ部をそれら酸素濃淡電池素子と酸素ポ
ンプ素子との間に介挿し一体化する構成とすることによ
っても、同様に隙間部分におけるセンサの機械的強度を
向上させることができる。なお、該構成においてスペー
サ部、支柱部、補助スペーサ部あるいは補強スペーサ部
は、酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子と同一材質の
セラミックにより構成することができる。この場合、そ
れらと、酸素濃淡電池素子あるいは酸素ポンプ素子の少
なくとも一方との間には、酸素濃淡電池素子と酸素ポン
プ素子との間の電流漏洩を阻止する絶縁層を介挿するこ
とが望ましい。
【0047】一方、より簡便なセンサ構成としては、下
記のようなものを例示することができる。すなわち、酸
素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子を、それぞれ同様に
横長の板状に構成し互いに対向配置し、各電極をそれら
酸素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子の板面長手方向に
おける一方の端部側に形成する一方、上記隙間において
酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との間には、該隙間
に対する気体の出入りを妨げない状態で、該隙間の間隔
を規定する支柱部を形成する。さらに、上記隙間を除く
他の領域においてそれら酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ
素子とを絶縁層を介して互いに接合・一体化する。該構
成によれば、スペーサ部を用いることなく隙間を形成す
ることができるのでセンサをよりコンパクトに構成で
き、さらに、スペーサ部の作製とその積層配置の工程と
を省略できるので、センサの製造をより能率的に行うこ
とができる。
【0048】その具体的な製造方法として、下記のよう
なものを例示できる。該方法においては、第一及び第二
のセラミック粉末成形体は、それぞれ横長の板状に形成
されて互いに積層され、電極パターンはそれら第一及び
第二のセラミック粉末成形体の板面長手方向における一
方の端部側に形成される。そして、第一及び第二のセラ
ミック粉末成形体との間の上記隙間に予定された領域
に、セラミック粉末ペーストを用いて支柱部となるべき
支柱部パターンを形成し、その支柱部パターンと重なり
を生じない位置において同じく該隙間に予定された領域
に、焼成時に燃焼ないし分解する(あるいは燃焼ないし
分解して消失する)材質の粉末ペーストにより補助支持
パターンを形成する。さらに、上記隙間に予定された領
域を除く他の領域において第一及び第二のセラミック粉
末成形体との間には絶縁層パターンを形成する。そし
て、その積層体を焼成することにより、酸素濃淡電池素
子と酸素ポンプ素子との間に、隙間と上記支柱部パター
ンに基づく支柱部とを形成する一方、隙間を除く他の領
域においてそれら酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子と
を、絶縁層パターンに基づく絶縁層を介して互いに接合
する。なお、支柱部パターンあるいは補助支持パターン
は印刷により形成することができる。
【0049】支柱部パターンと補助支持パターンとを、
上述のように印刷等で相補的に形成することで、第一及
び第二のセラミック粉末成形体を積層した際に、補助支
持パターンによる補強効果に基づき、支柱部パターンが
両者の間で潰れることが防止ないし抑制される。そし
て、焼成により、補助支持パターンは燃焼ないし分解し
て消失するから、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子と
の間には一定量の隙間を精度よく、しかも極めて簡単に
形成することができる。また、第一及び第二のセラミッ
ク粉末成形体を例えばセラミックグリーンシートで形成
することで、絶縁層パターンが支柱部パターンよりもか
なり薄く形成されていたとしても、第一及び第二のセラ
ミック粉末成形体が少し橈むことで、両者は絶縁層パタ
ーンを介して密着でき、焼成により支障なく一体化する
ことができる。
【0050】なお、絶縁層パターンは、絶縁性セラミッ
ク粉末、例えばAl23粉末のペーストを用いて形成す
ることができる。この場合、支柱部パターンは、絶縁層
パターンよりも粒径の大きい絶縁性セラミック粉末、例
えばAl23多孔質粉末等のペーストを用いて形成する
ことで、積層時のパターンの潰れをより起こりにくくす
ることができる。一方、補助支持パターンは、例えば主
にカーボン粉末で構成されたペーストを用いて形成する
ことができる。
【0051】次に、上記排気ガスセンサにおいては、酸
素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子との間の隙間は、これ
をなるべく小さくして(望ましくは1mm以下)当該隙
間による新たな排気ガスの流入規制効果をなるべく高め
ることが、センサの検出精度を向上させる上で有利であ
る。逆に言えば、該隙間の寸法が大きすぎると、触媒活
性を有した電極上でのHCと酸素との反応が不安定化
し、酸素濃淡電池起電力が小さくなってセンサ出力が十
分に得られなくなることもありうる。この傾向は、測定
対象となる排気ガス中の酸素濃度の変動が大きかった
り、あるいはガス中の水蒸気濃度が高い場合に特に著し
くなる。また、酸素濃淡電池素子の第三電極の形成され
た側に、該酸素濃淡電池素子との間に所定の隙間(別の
隙間)を形成する隙間形成部材を配置する場合は、その
隙間の大きさも同様の理由によりなるべく小さくするこ
とが望ましい(望ましくは1mm以下)。
【0052】しかしながら、上記素子間の隙間量を小さ
くし過ぎると、今度は焼成により酸素ポンプ素子、酸素
濃淡電池素子あるいは隙間形成部材を製造した際に、焼
成時の僅かな変形が隙間形成量に大きな影響を及ぼし、
センサ個体間で出力のばらつきやすくなる問題が生ずる
こともある。そこで、これを解決するためには次のよう
なセンサ構造とすることが有効である。すなわち、酸素
ポンプ素子の隙間側の電極を第一電極、酸素濃淡電池素
子の隙間側の電極を第二電極、酸素濃淡電池素子の反対
空間側の電極を第三電極として、第二電極及び第三電極
の少なくともいずれかに対し、これと接するように測定
室を形成し、また、測定室の壁部を被測定雰囲気側から
測定室側へ貫くようにガス連通部を形成する。そして、
このガス連通部を、小孔、スリット、及び多孔質セラミ
ック又は多孔質金属により構成された多孔質連通部の少
なくともいずれかを含む拡散規制流通部として構成する
ようにする。
【0053】このようにすれば、隙間の大きさをある程
度以上に大きくした場合でも、排気ガスは拡散規制流通
部から拡散を規制されつつ測定室に流入し、また測定室
に導入された後は同じく拡散規制流通部により拡散を規
制されつつ被測定雰囲気中へ排出される。従って、一旦
導入された排気ガスの測定室内での滞留時間が長くな
り、その間に被検出雰囲気中の排気ガス組成(特に酸素
あるいは水蒸気量)が変化しても、測定室内のガスへの
影響が小さくなるので、安定で高いセンサ出力を得るこ
とができ、ひいてはセンサの検出精度を高めることがで
きる。
【0054】測定室及び拡散規制流通部の組は、酸素濃
淡電池素子の第二電極側に形成しても第三電極側に形成
してもいずれでもよいが、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電
池素子との隙間及び反対空間のうち、少なくともその触
媒活性の高くなる側、すなわち酸素とHCとの反応がよ
り活発に起こる側に上記組を形成することが、センサ出
力を図るうえで一層望ましく、該組を双方の側に形成す
ればさらによい。
【0055】次に、測定室及び拡散規制流通部の形成形
態であるが、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との間
の隙間側に形成する場合は、第二電極の周囲を取り囲む
ように壁部を形成し、その壁部内面と酸素濃淡電池素子
及び酸素ポンプ素子の各対向面とによって囲まれた空間
を測定室とすることができる。また、拡散規制流通部
は、壁部及び酸素濃淡電池素子の少なくともいずれかに
対しこれを被測定雰囲気側から測定室側へ貫通する形態
で形成され、それら被測定雰囲気と測定室とを互いに連
通させるスリット又は小孔とすることができる。なお、
上記隙間と被測定雰囲気との間で気体の流通を許容する
前述の多孔質セラミック体(あるいは多孔質金属体でも
よい)も、拡散規制流通部として機能しうる。
【0056】拡散規制流通部として上記スリットを形成
する場合、例えば酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子と
の間に、上記壁部の少なくとも一部を構成する壁部形成
体を配置し、その壁部形成体と酸素濃淡電池素子及び酸
素ポンプ素子の少なくともいずれかとの間に上記スリッ
トを、それら酸素濃淡電池素子ないし酸素ポンプ素子の
板面に沿う形態で形成することができる。これにより、
スリットを介して測定室内に排気ガスをスムーズにかつ
空間的な偏りを生ずることなく導入することができる。
【0057】次に、上記スリットの幅(間隔)をd、酸
素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子の対向方向における
測定室の寸法(以下、測定室の高さという)をhとした
場合、d/hは1/100〜1/4の範囲で調整するの
がよい。d/hが1/4を超えるとスリットにおける排
気ガスの拡散規制効果が不十分となり、センサ出力が十
分に得られなくなる場合がある。d/hが1/100未
満になると測定室へのガスの流入速度、あるいは測定室
からのガスの流出速度が小さくなり過ぎ、センサの検出
精度が却って低下してしまう場合がある。d/hは、よ
り望ましくは1/20〜1/8の範囲で設定するのがよ
い。なお、スリット内の空間体積Vに対するスリット内
周面の面積の比S/Vは、同様の理由により4〜10
0、望ましくは20〜50の範囲で調整するのがよい。
【0058】一方、スリット幅dの絶対値は、0.01
〜1.0mmの範囲で調整するのがよい。dが1.0m
mを超えると、スリットにおける排気ガスの拡散規制効
果が不十分となり、センサ出力が十分に得られなくなる
場合がある。一方、dが0.01mm未満になると測定
室へのガスの流入速度、あるいは測定室からのガスの流
出速度が小さくなり過ぎ、センサの検出精度が却って低
下してしまう場合がある。なお、dは、より望ましくは
0.02〜0.05mmの範囲で設定するのがよい。
【0059】スリットは、壁部形成体の厚さ方向(酸素
濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との積層方向)中間部に
形成する態様も可能であるが、壁部形成体と酸素濃淡電
池素子及び酸素ポンプ素子の少なくともいずれかとの間
に形成する構成がセンサの製造上より有利である。すな
わち、前者の場合は、壁部形成体となるべきセラミック
成形体(以下、壁部形成用成形体という)に予めスリッ
トとなるべき隙間を穿設しておくか、あるいは該セラミ
ック成形体を厚さ方向に隣接する2部分に形成し、それ
ら部分の間に隙間を生じさせた状態で焼成するなど、若
干の工数増加が不可避となる。一方、後者の場合は、壁
部形成用成形体と酸素濃淡電池素子ないし酸素ポンプ素
子となるべきセラミック成形体(以下、素子形成用成形
体という)との間に所定量の隙間を形成して焼成するの
みで、上記構造の排気ガスセンサを簡単に製造すること
ができる。
【0060】上記スリットは、例えばスリット形成が予
定された領域において壁部形成用成形体と素子形成用成
形体との間に、焼成により焼失する材料(例えばカーボ
ンペーストなど)で形成された層を挟み込み、その積層
体を焼成して該層を焼失させることにより形成すること
ができる。この場合、形成されるスリットの幅は、形成
する層の厚さに応じて自由に調整することができる。
【0061】次に、壁部形成体は、酸素ポンプ素子及び
酸素濃淡電池素子の少なくともいずれかと焼成により一
体化することができる。焼成によりこれらを一体化する
ことで、センサの機械的強度を向上させることができ
る。なお、壁部形成体と酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電
池素子のいずれか一方との間にのみスリットを形成する
場合には、スリットを形成しない側では壁部形成用成形
体と素子形成用成形体とをそれらの積層面のほぼ全面に
おいて一体化する一方、スリットの形成側においては、
上記シートを積層面に対し部分的に挟み込むことでスリ
ットを形成し、該シートを介在させない積層面領域で壁
部形成用成形体と素子形成用成形体とを一体化する構成
が可能である。この場合、壁部形成体酸素ポンプ素子な
いし酸素濃淡電池素子とは、スリットの形成側において
もスリット形成領域以外の部分で互いに一体化するの
で、センサの強度を一層高めることができる。
【0062】一方、スリットに代えて小孔により拡散規
制流通部を形成する場合には、該小孔を、例えば壁部形
成体に形成できる。この場合、排気ガスを測定室に対し
偏りなく流入させるには、複数の小孔を、例えば板状の
酸素ポンプ素子ないし酸素濃淡電池素子の板面方向に所
定の間隔で形成するのがよい。また、小孔は、酸素濃淡
電池素子を厚さ方向に貫く形で形成することもできる。
この場合、該小孔は複数のものを、第二電極ないし第三
電極の周縁に沿って所定の間隔で形成することが、偏り
のない排気ガスの流入状態を形成する上で望ましい。
【0063】次に、酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電池素
子は横長板状に形成でき、拡散規制流通部は、それら酸
素ポンプ素子及び酸素濃淡電池素子の板面幅方向両側に
形成されたスリットないし所定間隔で配列する複数の小
孔群とすることができる。こうすれば、上記スリットな
いし小孔群の一方のものから測定室内に流入した排気ガ
スは、他方のものから排出されるので、測定室内にスム
ーズな排気ガスの流れが形成され、ひいてはセンサ出力
の応答性を向上させることができる。
【0064】次に、上記排気ガスセンサにおいては、酸
素濃淡電池素子の隙間に面しているのとは反対側に測定
室を形成するようにしてもよい。すなわち、酸素濃淡電
池素子の上記反対側と対向して該酸素濃淡電池素子との
間に別の隙間を形成する前述の隙間形成部材を配置し、
その隙間形成部材と酸素濃淡電池素子との間に第三電極
の周囲を取り囲むように壁部を形成し、その壁部内面と
隙間形成部材及び酸素濃淡電池素子の各対向面とによっ
て囲まれた空間を測定室とする。
【0065】この場合も拡散規制流通部は、前述の酸素
ポンプ素子と酸素濃淡電池素子との間に測定室を形成す
る場合とほぼ同様の態様で形成できる。すなわち、該拡
散規制流通部は、壁部及び隙間形成部材の少なくともい
ずれかに対しこれを被測定雰囲気側から測定室側へ貫通
する形態で形成され、それら被測定雰囲気と測定室とを
互いに連通させるスリット又は小孔として構成できる。
また、隙間形成部材と酸素濃淡電池素子との間に、壁部
の少なくとも一部を構成する壁部形成体を配置でき、該
壁部形成体と隙間形成部材及び酸素濃淡電池素子の少な
くともいずれかとの間に上記スリットを、それら隙間形
成部材ないし酸素濃淡電池素子の板面に沿う形態で形成
することができる。
【0066】また、壁部形成体は、隙間形成部材及び酸
素濃淡電池素子の少なくともいずれかと焼成により一体
化することができる。さらに、隙間形成部材及び酸素濃
淡電池素子は横長板状に形成することができ、拡散規制
流通部は、それら隙間形成部材及び酸素濃淡電池素子の
板面幅方向両側に形成されたスリットとすることができ
る。
【0067】次に、酸素濃淡電池素子の両面に形成され
た第二及び第三電極は、被検出成分に対する酸化触媒活
性が互いに異なるものとして構成することができる。こ
れにより、前述の隙間と反対空間との間の被検出成分の
消費量の差が大きくなり、センサ出力レベルが高められ
て、被検出成分の検出感度を向上させることができる。
この場合、第二電極の上記酸化触媒活性が第三電極より
も大きくなるようにすれば、排気ガス中の被検出成分の
濃度に対するセンサ出力の直線性が高められ、ひいては
被検出成分の検出精度をさらに向上できる場合がある。
なお、該構成において酸素ポンプ素子は、酸素濃淡電池
素子に生ずる濃淡電池起電力の絶対値が減少するよう
に、隙間に酸素を汲み込むものとされる。ここで、第一
電極及び第二電極の双方について、被検出成分に対する
酸化触媒活性を第三電極よりも大きくすると、上記隙間
と反対空間との間の被検出成分の消費量の差がさらに大
きくなり、被検出成分の検出感度を高めることができ
る。
【0068】より具体的には、第二電極と第三電極と
は、次のように定義される被検出成分転換率ηの差が2
0%以上となるものを組み合わせて使用することが望ま
しい。すなわち、直径12mm×厚さ1mmの酸素イオン伝
導性固体電解質の円板上に、第二電極ないし第三電極と
同一の材質及び条件により直径8mmの円板状の多孔質電
極を形成した試料を、ガスの入口と出口とを有した筒状
体内に配置するとともにこれをセンサ作動温度に加熱
し、その状態で該筒状体に対し、酸素300ppmと被
検出成分350ppmと水蒸気3%とを含有し、残部が
アルゴンからなる試験ガスを入口から流速100ml/
分で導入して、これを出口から排出させたときの、排出
後の試験ガス中の被検出成分濃度をCs(単位:pp
m)として、上記被検出成分転換率η(%)を、次式: η={(350−Cs)/350}×100 ‥‥(1) により求める。
【0069】すなわち、試験ガス中に含まれる被検出成
分が、電極を酸化触媒として酸化され消費されると、排
出後の試験ガス中の被検出成分濃度Csは減少すること
から、上記被検出成分転換率ηは大きくなる。従って該
ηを、センサ中の各電極の被検出成分に対する酸化触媒
活性を表すパラメータ、ひいては隙間ないし反対空間に
おける被検出成分の消費量を反映したパラメータとして
用いることができる。そして、第二電極と第三電極との
間で、上記ηの値の差を20%以上とすることにより、
隙間と反対空間との間の被検出成分の消費量の差が大き
くなり、センサ出力レベルが高められて、被検出成分の
検出感度を向上させることができる。例えば第二電極を
第三電極よりも酸化触媒活性の高いものとして構成する
場合は、第二電極を、その被検出成分転換率ηが第三電
極のそれよりも20%以上高くなるように構成するのが
よい。なお、ηの値の差はより望ましくは30%以上と
するのがよい。
【0070】ここで、電極の上記ηの値はセンサ作動温
度に応じて変化する。そして、センサ作動温度は、上記
ηの差が20%以上、望ましくは30%以上となるよう
に設定するのが望ましいといえる。この場合、印加電圧
を一定とした場合の酸素ポンプ素子のポンプ電流値がな
るべく高くなるように、センサ作動温度を設定すれば、
被検出成分の検出感度はさらに向上する。
【0071】次に、被検出成分が例えばCOあるいはH
Cの場合、上記第一〜第三電極のうち、酸素との反応に
対する触媒活性が高くなるべきものは、Pt、Pd及び
Rhのいずれかを主体とする金属(単体又は合金)又
は、Pt−Rh系合金、Rh−Pd系合金、Pd−Ag
系合金等(以下、本明細書においては、これらを高活性
金属グループという)で構成することができる。また、
逆に触媒活性が低くなるべきものは、Au、Ni及びA
gのいずれかを主体とする金属(単体又は合金)、Pt
−Pd系合金、Pt−Au系合金,Pt−Ni系合金、
Pt−Ag系合金、Ag−Pd系合金、Au−Pd系合
金等(以下、本明細書において、これらを低活性金属グ
ループという)により構成することができる。いずれの
金属も、前述の素子を構成する固体電解質へ酸素を注入
するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から
酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆
的な触媒機能(以下、酸素解離触媒機能という)は高い
が、炭化水素系の被検出成分と酸素との反応に対する触
媒活性については、前者のグループと後者グループとの
間では大きな差がある。そして、例えば第一電極と第二
電極とをPt、Pd及びRhのいずれかを主体とする金
属等の高活性金属グループに属するもので構成し、第三
電極をAu、Ni及びAgのいずれかを主体とする金属
等の低活性金属グループに属するものにより構成すれ
ば、前述の隙間と反対空間との間の被検出成分の消費量
の差が大きくなり、センサ出力レベルが高められて被検
出成分の検出感度を向上させることができる。上記被検
出成分と酸素との反応に対する触媒活性については、P
t又はPdとAuとの間の差が特に著しく、これらを主
体とする金属を電極材料として採用することは、上述の
効果を高める上でさらに望ましいといえる。
【0072】被検出成分が例えばメタンである場合、例
えば上記材質の電極の組合せにより、その検出感度と選
択性が特に向上する場合がある。とりわけ、酸化触媒活
性の高い側の電極をPt又はPdを主体とする金属で構
成し、同じく低い側の電極をAuを主体とする金属で構
成した場合には、メタン検出に対する選択性を著しく向
上させることができる。
【0073】なお、被検出成分に対する酸化触媒活性の
小さい電極を構成する場合、その少なくとも排気ガスと
の接触表面を含んだ部分を、被検出成分と酸素との反応
に対して触媒不活性な材料で構成することができる。こ
の場合、電極の全体を上記触媒不活性な材料で構成でき
ることはもちろんであるが、排気ガスとの接触部におい
て、その表層部のみを触媒不活性な材料で構成するよう
にしてもよく、例えば触媒活性な材料で本体部を形成
し、その表面に触媒不活性な材料によりコーティングを
施して電極を得るようにしてもよい。触媒不活性な材料
としては、例えば、前述のAu、Ni及びAgのいずれ
かを主体とする金属等の低活性金属グループに属するも
の、あるいはSnO2、ZnO、In23、WO3、Bi
23等の酸化物を例示することができる。
【0074】次に、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子
との間に形成される隙間には、金属メッシュ又は多孔質
金属で構成されたガス保持部材を介挿してもよい。この
ようにすると、該ガス保持部材が上記隙間形成のための
スペーサとして機能し、隙間の寸法精度を高めることが
できる。なお、上記ガス保持部材をメッシュで構成する
場合、その網目の形成密度が100〜500メッシュの
ものを使用することが望ましい。
【0075】また、酸素濃淡電池素子の第三電極の形成
された側に、該酸素濃淡電池素子との間に所定の隙間を
形成する隙間形成部材を配置することができる。こうす
れば、前述のオフセット起電力の絶対値が小さくなり、
またその変動が少なくなって、センサの検出精度が高め
られる場合がある。この場合、隙間形成部材は、酸素濃
淡電池素子をセンサ作動温度に加熱するための板状の加
熱素子とすることができる。こうすれば、加熱素子が隙
間形成部材を兼ねることになり、センサをコンパクトに
構成できる。
【0076】また、本発明の排気ガスセンサシステムを
用いて、下記のような排気ガスセンサシステムを構成す
ることができる。すなわち、該センサシステムは、本発
明の排気ガスセンサと、酸素濃淡電池素子に発生する濃
淡電池起電力を検出する起電力検出手段と、その検出さ
れた濃淡電池起電力の絶対値が減少する方向において、
該酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子との間の隙間に酸
素を汲み込み、又は該隙間から酸素が汲み出されるよう
に、酸素ポンプ素子に印加される電圧を調整するポンプ
素子電圧調整手段と、濃淡電池起電力の絶対値が上記起
電力目標値ECに到達したときの、酸素ポンプ素子を流
れる電流値又は該電流値を反映した情報を、被検出成分
の濃度を反映した情報として出力する出力手段とを備え
る。
【0077】この場合、酸素濃淡電池素子の温度が予め
定められた温度目標値に近づくように、加熱素子の発熱
を制御する加熱制御手段を設けることができる。すなわ
ち、上記センサシステムにおいては、酸素濃淡電池素子
に生ずる濃淡電池起電力を参照し酸素ポンプ素子の作動
が制御されるのであるが、該濃淡電池起電力は素子の温
度によって変化するため、同一の被検出成分の濃度が同
一であっても酸素濃淡電池素子の温度が変化すると、濃
淡電池起電力、ひいては濃度検出情報となるポンプ電流
の値が変動して測定誤差の増加につながる。しかしなが
ら、上述のような加熱制御手段を設けることにより、酸
素濃淡電池素子の温度が予め定められた温度目標値に近
づくように加熱素子の発熱が制御されるので、上記素子
の温度変化に基づく被検出成分の測定誤差を小さくする
ことができ、測定精度を高めることができる。
【0078】加熱制御手段は、酸素濃淡電池素子の温度
を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の温度検出
結果に基づいて、酸素濃淡電池素子の温度が温度目標値
に近づくように、加熱素子の通電を制御する通電制御手
段とを備えたものとして構成できる。これにより、仮に
酸素濃淡電池素子の温度が、排気ガス温度の急変等によ
り一時的に変化することがあっても、検出された温度の
情報に基づいてポンプ電流情報が補正されるので、被検
出成分の検出精度を良好に維持することができる。この
場合、酸素濃淡電池素子の温度は、サーミスタや熱電対
など、別途設けられた温度センサを用いて測定してもよ
いが、該濃淡電池素子の内部抵抗の値が温度によって変
化するので、これを利用して温度を測定するようにすれ
ば温度センサを設ける必要がなくなり、ひいては測定系
の構成を単純化できる利点がある。
【0079】この場合、上記センサシステムには、温度
検出手段が検出する温度の情報とポンプ電流情報とに基
づいて、温度補償された被検出成分濃度情報を生成する
被検出成分濃度情報補正手段と、その生成された被検出
成分濃度情報を補正測定結果として出力する補正測定結
果出力手段とを設けることができる。
【0080】具体的には、被検出成分濃度情報補正手段
は、温度目標値からの温度偏差と、ポンプ電流情報に対
する補正量(ポンプ電流補正量)との関係を与える温度
偏差−ポンプ電流補正量関係情報を補正参照情報として
記憶する補正参照情報記憶手段と、温度検出手段が検出
する温度と温度目標値との差に対応するポンプ電流補正
量を、補正参照情報を参照して決定するポンプ電流補正
量決定手段と、その決定されたポンプ電流補正量に基づ
いて、測定されたポンプ電流情報を補正する演算を行う
補正演算手段とを備えるものとして構成できる。これに
よれば、目標温度からの温度偏差をポンプ電流補正量に
換算する形で上記ポンプ電流情報を補正できるから、補
正処理のアルゴリズムを簡略化でき、ひいては被検出成
分濃度測定結果の補正出力の応答性を高めることができ
る。
【0081】この場合、被検出成分濃度情報補正手段に
は、上記ポンプ電流情報を被検出成分濃度情報へ変換す
るポンプ電流情報−被検出成分濃度情報変換手段を設け
ることができ、補正測定結果出力手段はその変換された
被検出成分濃度情報を、温度補償された被検出成分濃度
情報として出力するものとすることができる。また、ポ
ンプ電流情報−被検出成分濃度情報変換手段は、具体的
にはポンプ電流値と被検出成分濃度との関係を示すポン
プ電流値−被検出成分濃度関係情報を記憶する記憶手段
と、その記憶されたポンプ電流値−被検出成分濃度関係
情報を参照して、補正後のポンプ電流情報が示す被検出
成分濃度を算出する被検出成分濃度算出手段とを含むも
のとして構成することができ、補正測定結果出力手段は
その算出結果を出力するものとして構成することができ
る。一方、その補正されたポンプ電流情報をそのまま外
部に出力するようにしてもよい。
【0082】一方、被検出成分濃度情報補正手段は、ポ
ンプ電流値と被検出成分濃度値との関係を、各種温度毎
に示すポンプ電流情報−被検出成分濃度関係情報を補正
参照情報として記憶する補正参照情報記憶手段と、温度
検出手段が検出する温度の情報と測定されたポンプ電流
情報とに基づいて、上記補正参照情報を参照することに
より、当該温度とポンプ電流値に対応する被検出成分濃
度値を、温度補償された被検出成分濃度情報として生成
する補正濃度情報生成手段とを備えたものとして構成す
ることもできる。この構成によれば、各温度毎のポンプ
電流情報−被検出成分濃度関係情報を用意する必要はあ
るが、検出温度からポンプ電流補正量を算出することな
く、測定された温度とポンプ電流とに対応する被検出成
分濃度を直接的に決定することができ、被検出成分濃度
出力における応答性をさらに高めることができる。
【0083】次に、温度検出手段は、酸素濃淡電池素子
の内部抵抗を測定する内部抵抗測定手段と、その測定さ
れた内部抵抗値に基づいて酸素濃淡電池素子の温度の情
報を生成する温度情報生成手段と、その生成された温度
の情報を出力する温度情報出力手段とを備えるものとし
て構成できる。前述の通り、該構成によれば温度センサ
等を別途設ける必要がなくなり、装置構成を単純化でき
る利点がある。
【0084】内部抵抗測定手段は、具体的には、酸素濃
淡電池素子に対し一定の内部抵抗検出電流を通電する内
部抵抗検出電流通電手段と、該内部抵抗検出電流を通電
したときに酸素濃淡電池素子に印加される電圧を反映し
た情報(電圧情報)を検出する電圧情報検出手段とを備
え、その検出された電圧情報に基づいて酸素濃淡電池素
子の内部抵抗値を測定するものとすることができる。こ
れによれば、定電流通電時の印加電圧から酸素濃淡電池
素子の内部抵抗を簡単に測定することができる。
【0085】ここで、酸素濃淡電池素子の両側において
酸素濃度に差が生じている場合は、酸素濃淡電池素子に
は濃淡電池起電力が生じ、検出された電圧情報にその濃
淡電池起電力の情報が含まれないし重畳されて誤差の原
因となる場合がある。この場合、酸素濃淡電池素子の内
部抵抗の測定に当たっては、内部抵抗検出電流を一定以
上に大きく設定することで酸素濃淡電池素子に印加され
る電圧を高め、濃淡電池起電力の影響を相対的に小さく
することが内部抵抗測定の精度を高める上で有効であ
る。一方、重畳されるか、ないしは含まれる濃淡電池起
電力の影響を除去ないし低減するためには、次のような
方式も有効である。すなわち、内部抵抗測定手段に、酸
素濃淡電池素子に内部抵抗検出電流を通じない状態で、
該酸素濃淡電池素子の濃淡電池起電力を測定する濃淡電
池起電力測定手段と、該測定された濃淡電池起電力の情
報に基づいて、検出された電圧情報の内容を補正する電
圧情報補正手段とを設ける。具体的には、濃淡電池起電
力測定手段による濃淡電池起電力の測定結果を、電圧情
報の検出結果から減ずることにより、濃淡電池起電力成
分の影響を効果的に除去することができる。
【0086】次に、酸素濃淡電池素子に内部抵抗測定用
電流を通電すると、酸素濃淡電池素子内においてその通
電と逆方向に酸素が輸送され(すなわち、酸素ポンプと
なる)、酸素濃淡電池素子両側の酸素濃度に変化を生ず
る。その結果、排気ガスセンサによる被検出成分濃度の
測定に復帰した際に、その酸素濃度の変化が被検出成分
濃度の測定精度に対する誤差の要因ともなりうる。ま
た、酸素濃淡電池素子の内部抵抗値が高い場合には、酸
素濃淡電池素子内の酸素イオンが移動しにくくなって、
電流通電に伴い分極を生ずることもある。そこで、修正
電流通電手段により、酸素濃淡電池素子に対し内部抵抗
検出電流を通電してその内部抵抗を測定した後、該酸素
濃淡電池素子に対し、内部抵抗検出電流と逆方向に修正
電流を通電するようにすれば、その通電により上記とは
逆向きに酸素が輸送されるので、変化した酸素濃度が内
部抵抗測定前の状態に近づいて、復帰後の被検出成分濃
度の測定精度が高められるとともに、酸素濃淡電池素子
の分極状態も解消することができる。この場合、修正電
流の大きさ及び通電時間は、内部抵抗検出電流通電時に
輸送されると考えられる酸素量とほぼ同量の酸素が、該
修正電流の通電により逆輸送されるように設定するのが
よく、例えば内部抵抗検出電流とほぼ大きさが同じ電流
を、該内部抵抗検出電流とほぼ同時間通電するのがよ
い。
【0087】次に、酸素濃淡電池素子の濃淡電池起電力
を所定の制御基準値と比較し、該濃淡電池起電力と起電
力目標値ECとの差に応じたポンプ電流を酸素ポンプ素
子に向けて出力するポンプ電流制御手段を設けることが
できる。これにより、濃淡電池起電力が起電力目標値E
Cに近づくようにポンプ電流値が制御されることとな
る。ここで、内部抵抗測定手段は、ポンプ電流制御手段
による酸素ポンプ素子へのポンプ電流の出力を、予め定
められたタイミングで遮断するポンプ電流遮断手段を備
えるとともに、内部抵抗検出電流通電手段は、ポンプ電
流の出力が遮断された状態で酸素濃淡電池素子に対し内
部抵抗検出電流を通電するものとして構成することがで
きる。これにより、内部抵抗検出電流とポンプ電流との
干渉が防止され、酸素濃淡電池素子の内部抵抗を精度よ
く検出することができる。
【0088】この場合、ポンプ電流の出力を長時間に亙
って遮断すると、濃淡電池起電力が起電力目標値ECか
ら外れて不安定化し、排気ガス中の被検出成分の検出と
いう本発明の装置の本来の目的に支障をきたすこともあ
りうる。そこで、内部抵抗測定手段においてポンプ電流
遮断手段は、ポンプ電流制御手段によるポンプ電流の出
力を所定の時間間隔で周期的に遮断するものとし、それ
によって該内部抵抗測定手段は、その周期的なポンプ電
流出力の遮断に対応して酸素濃淡電池素子の内部抵抗を
周期的に測定するものとして構成することができる。こ
れにより、ポンプ電流の出力を長時間連続的に中断する
ことなく、内部抵抗測定の頻度を高めることができ、ひ
いては被検出成分の濃度測定結果に対する温度補償をよ
り高精度で行うことが可能になるとともに、該内部抵抗
値を温度情報として用いる加熱制御手段の、加熱素子に
対する温度制御の精度を高めることができる。
【0089】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に示す実施例を参照して説明する。図1は、本発明の一
実施例としての排気ガスセンサ1を示している。すなわ
ち、排気ガスセンサ1は、それぞれ横長板状に形成され
た第一のヒータ2(加熱素子)、酸素ポンプ素子3、酸
素濃淡電池素子4及び第二のヒータ5(加熱素子)がこ
の順序で積層されたものとして構成されている。酸素ポ
ンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4は、650℃におけ
るバルク電気比抵抗が100Ω・cm以下の、酸素イオ
ン伝導性を有する固体電解質により構成される。また、
一方、第一及び第二のヒータ2,5は、公知のセラミッ
クヒータで構成される。
【0090】本実施例では、上記固体電解質として、そ
の金属元素部分の一般組成がR1-xxGa1-yy(ただ
し、Rはイオン価が3価の希土類金属元素、AはSr、
Ca、Ba、Cd、Hg及びRaから選ばれる1種又は
2種以上からなる金属元素、BはMg、In、Al及び
Znから選ばれる1種又は2種以上からなる金属元素、
0.05≦x≦0.25、0.1≦y≦0.35)で表
されるペロブスカイト型酸素イオン伝導性固体電解質
(以下、単にぺロブスカイト型固定電解質ともいう)が
使用されている。
【0091】上記ペロブスカイト型固体電解質は、組成
によっても異なるが、650℃のバルク電気比抵抗が2
0〜30Ω・cmと低く、500℃でも60〜70Ω・
cm程度の値を示す。従って、従来のZrO2系固体電
解質では濃度検出出力がほとんど期待できなかった50
0〜650℃での低温域でも、十分なセンサ出力を期待
できる。
【0092】また、上記ペロブスカイト型固体電解質を
使用すれば、ヒータ2,5により酸素ポンプ素子3及び
酸素濃淡電池素子4の設定温度を450〜550℃(望
ましくは480〜520℃)の範囲で調整することによ
り、その時の濃度検出情報から非メタンHC成分の濃度
を精度よく知ることができる。これは、該ペロブスカイ
ト型固体電解質の使用により、上記温度範囲でメタンに
対する検出感度を十分小さくでき、かつ非メタンHC成
分の検出感度を一定以上に確保できるためである。
【0093】なお、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池
素子4を構成する固体電解質としては、ZrO2−Sc2
3系(例えばZrO2−7.5mol%Sc23)、B
23−Y23系(例えばBi23−25mol%Y2
3)、CeO2−Y23系(例えばCeO2−5mol
%Y23)等の酸素イオン伝導性固体電解質も使用可能
である。
【0094】酸素ポンプ素子3は横長板状に形成され、
その長手方向における一方の端部寄りにおいてその両面
に、酸素分子解離能を有した多孔質電極10,11が形
成されている。また、酸素濃淡電池素子4(温度検出手
段としても機能する)には、上記酸素ポンプ素子3の電
極10,11に対応する位置においてその両面に、同様
の多孔質電極12,13が形成されている。そして、上
記電極10〜13の形成部分を除いて、酸素ポンプ素子
3と酸素濃淡電池素子4との間には、それら素子と同一
材質の固体電解質セラミックにより構成された板状のス
ペーサ部200が介挿されており、Al23等で構成さ
れた絶縁層201,202を介してその両面が、酸素ポ
ンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4と焼成により一体化
されている。これにより、酸素ポンプ素子3の電極11
と酸素濃淡電池素子4の電極12との間には隙間15が
形成されることなる。また、その隙間15において、酸
素濃淡電池素子4と酸素ポンプ素子3との間には、その
板幅方向両側の側縁部に沿うように、スペーサ部200
と一体の細長い補強スペーサ部203が介挿・一体化さ
れている。そして、該隙間15は、酸素濃淡電池素子4
及び酸素ポンプ素子3の端面において、両補強スペーサ
部203の間に開口する開口部204を連通部として、
外側空間と連通することにより、排気ガスが出入り可能
になっている。
【0095】一方、第一のヒータ2と酸素ポンプ素子3
との間、及び酸素濃淡電池素子4と第二のヒータ5との
間には、それぞれガラスあるいはセメント等で構成され
たスペーサ6及び8(図2)が介挿されており、各素子
間には所定量の隙間14及び16がそれぞれ形成されて
いる。なお、隙間15は、請求項でいう酸素ポンプ素子
と酸素濃淡電池素子との間の隙間に、また隙間16は同
じく反対空間に相当する。また、第二のヒータ5は、隙
間形成部材の役割を果たしている。
【0096】図2は、排気ガスセンサ1の内部構造を示
すために、スペーサ部200と補助スペーサ部203と
を省略して描いた図である。酸素ポンプ素子3の各多孔
質電極10,11からは、該素子3の長手方向に沿って
排気ガスセンサ1の取付基端側に向けて延びる電極リー
ド部10a,11aがそれぞれ一体に形成されており、
該基端側において酸素ポンプ素子3には接続端子10
b,11bの一端が埋設されている。そして、例えば、
接続端子10b,11bは、図2(b)に示すように、
孔内に金属ペーストを充填し焼結することにより形成さ
れた導通部10fにより、電極リード部10a,11a
の末端に対して電気的に接続されている。また、酸素濃
淡電池素子4の各多孔質電極12,13にも同様に電極
リード部12a及び13aが一体に形成されており、そ
れぞれ接続端子12b,13bが取り付けられている。
【0097】図3(a)は、排気ガスセンサ1の全体の
構成例を、また(b)はその内部構造を示している。す
なわち、排気ガスセンサ1の要部は、図1及び図2に示
した第一のヒータ2、酸素ポンプ素子3、酸素濃淡電池
素子4及び第二のヒータ5からなる積層体31であり、
角型の貫通孔30aを有するセラミックストッパ30
が、積層体31に対し外側から嵌着されている。上記積
層体31は、一端側が開放し、貫通孔32aが形成され
た底部32bを他端側に有するセラミック碍管32の内
側に、各電極10〜13の形成された端部(以下、検出
端部という)31aが貫通孔32aから突出するように
配置されるとともに、該碍管32と積層体31との間に
はガラスGが充填されいる。なお、セラミックストッパ
30は、その端面が碍管32の底部32bの内面と当接
することにより、積層体31の碍管32からの突出量を
規定する役割も果たしている。
【0098】また、碍管32の外側は、金属製の外筒3
3と、かしめ結合部34aにより該外筒33と一体化さ
れた主体金具34とにより覆われている。主体金具34
の外周面には、センサ1を排気管等の図示しない取付部
に取り付けるための雄ねじ部34bが形成されるととも
に、その先端側に形成された開口部34cおいて、前述
の積層体31の検出端部31aを突出させている。ま
た、主体金具34の開口部34cの周縁には円環状のプ
ロテクタ取付スリーブ34dが一体的に形成されてい
る。そして、検出端部31aを覆うとともに、該検出端
部31aへの排気ガスの流通を許容する多数の貫通孔3
5aを有した円筒状のプロテクタ35が、上記プロテク
タ取付スリーブ34dに対し外側から嵌着され、さらに
スポット溶接等により接合され一体化されている。一
方、碍管32の中間部において主体金具34との間に形
成される空間には、そのかしめ結合部34aに近い側
に、かしめ時の加工力を受けとめるためのかしめ金具3
6が配置され、さらに残余の空間には充填材80が充填
されている。
【0099】一方、積層体31を構成する各素子2〜5
の接続端子(図1等)には、リード線37が溶接等によ
り接合されており、その末端側が碍管32及び外筒33
の端部から外側に延出している。なお、リード線37の
中間部はゴム等の弾性材料で構成されたシール部材38
により覆われており、そのさらに外側には金属製の保護
外筒39がはめ込まれている。そして、該保護外筒39
の端縁側が外筒33に対してかしめにより一体化されて
いる。
【0100】上記排気ガスセンサ1は、例えば排気管に
設けられた取付部に対し、プロテクタ35側が該排気管
内に位置するように取り付けられる。図4に示すよう
に、この状態で酸素ポンプ素子3には、多孔質電極1
0,11の一方が正、他方が負となるように前述のリー
ド線37(図3)を介して電圧が印加される。そして、
極性が正となる多孔質電極においては、これと接する排
気ガス中の酸素分子が該電極上で解離され、上記印加さ
れた電圧が駆動力となって解離された酸素がイオンの形
で素子3内に送り込まれる。また、上記電圧印加により
素子3内を輸送される酸素イオンは、極性が負となる多
孔質電極上で電子を受け取り、さらに酸素分子に再結合
して雰囲気中に放出される。
【0101】また、酸素濃淡電池素子4においては、多
孔質電極12,13には電圧が印加されず、それら電極
12,13とそれぞれ接する排気ガス中の酸素分子が該
電極12,13上で解離され、それぞれ酸素イオンの形
で素子4内に拡散する。そして、電極12側と13側と
で酸素濃度に差がある場合には、素子4内に酸素イオン
の濃度勾配が生じ、その濃度勾配に応じた濃淡電池起電
力が両電極12,13間に生ずることとなる。なお、以
下においては、酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4
との間に形成されている隙間15に関し、酸素ポンプ素
子3の該隙間15に面さない多孔質電極10を外側電
極、同じく隙間15に面する多孔質電極11を第一電
極、隙間15に面する酸素濃淡電池素子4の多孔質電極
12を第二電極、同じく隙間15に面さない多孔質電極
13を第三電極と呼ぶことにする。
【0102】一方、上記多孔質電極10〜13のうち、
少なくとも一部のものは、上述の酸素分子の解離ないし
再結合を行う役割のほかに、これと接する排気ガス中の
炭化水素系の被検出成分と酸素との結合反応、すなわち
被検出成分の燃焼反応を促進する酸化触媒としても機能
する。そして、本発明の排気ガスセンサでは、上記4つ
の電極10〜13のうち、第一電極11、第二電極12
及び第三電極13の3つのものについて、被検出成分に
対する酸化触媒活性が、酸素濃淡電池素子4の両側(す
なわち隙間15側と隙間16側)において酸素との反応
による被検出成分の消費量に差が生じるように調整され
る。
【0103】具体的には、図4において、第一電極11
と第二電極12とが例えば炭化水素に対する酸化触媒活
性が高いPt多孔質電極により、また、第三電極13が
該酸化触媒活性が低いAu(あるいはPt−0.1〜3
重量%Au)多孔質電極によりそれぞれ構成される。な
お、隙間15及び隙間16の大きさはそれぞれ1mm以下
の範囲で調整される。一方、第一電極11の面積Spは
第二電極12の面積SSと等しいか、それよりも大きく
設定される。
【0104】以下、酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素
子4とを一体焼成する方法について、図5を参照して説
明する。すなわち、一体焼成体を形成するための未焼成
組立体310は、酸素ポンプ素子3を形成するための第
一部分211(第一のセラミック粉末成形体に相当す
る)、酸素濃淡電池素子4を形成するための第二部分2
12(第二のセラミック粉末成形体に相当する)、及び
隙間15を形成するための第三部分213から成り立っ
ている。まず、第一部分211は、固体電解質原料粉末
を有機バインダとともに混練した生素地を用いて形成さ
れた、酸素ポンプ素子3の本体となるべきグリーンシー
ト220を含んでいる。そのグリーンシート220の両
面の、電極10,11(図2等)の形成が予定された部
分を除く領域に、リード部10a,11aと酸素ポンプ
素子3との間を絶縁するための絶縁コート(絶縁層パタ
ーン)221及び222がAl23ペースト等を用いて
形成される。それら絶縁コート221及び222を形成
した後、電極10,11及びリード部10a,11aを
形成するための電極パターン223及び224がPtペ
ースト等により印刷形成される。また外側電極10とな
る側の電極パターン223の上には保護用のオーバーコ
ート225がAl23ペースト等により形成される。
【0105】一方、第二部分212も同様に、酸素濃淡
電池素子4の本体となるべきグリーンシート230の両
面に、絶縁コート(絶縁層パターン)231及び232
が形成される。ここで、絶縁コート231側には、電極
12とそのリード部12aを形成するための電極パター
ン233が形成されるが、Auで構成される電極13
(第三電極)は融点が低く固体電解質との一体焼成が不
可能なため、絶縁コート232側には、リード部13a
を形成するための電極リード部パターン234のみが形
成され、その上にAl23ペーストにより保護用のオー
バーコートが施される。
【0106】次に、第三部分213は、スペーサ部20
0となるべき部分200a(スペーサ成形体)と、補強
スペーサ部203となるべき部分203aとが一体に形
成されたグリーンシート240を主体に構成され、その
両面には貼合わせコート241と242とがそれぞれA
23ペースト等を用いて形成されている。これら貼合
わせコート241及び242は、前述の絶縁コート22
2及び231とともに、焼成によりそれぞれ絶縁層20
1及び202となり、スペーサ部200及び補強スペー
サ部203と、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池素子
4とを互いに接合する役割を果たす。
【0107】第一部分211と第三部分213とは互い
に積層され、両者の間にはリード部10a及び11aの
末端部に対応して、端子10b及び11b(図2)を形
成するためのPt−Rh合金線243a,243bの一
方の端部側がそれぞれ挟み込まれる。なお、グリーンシ
ート220のリード部10aの末端に対応する位置には
貫通孔220aが孔設されており、リード部10aのパ
ターンを形成する際にペーストがここに充填され、図2
(b)に示すように、焼成によりその充填されたペース
トが焼結されて導通部10fとなり、端子10b(Pt
−Rh合金線243b)とリード部10aとが導通する
ようになっている。一方、リード部11aのパターン
と、Pt−Rh合金線243aとは、グリーンシート2
20及び240の間で挟み付けられて直接接触する。
【0108】また、第二部分212も第三部分213に
対し第一部分211とは反対側から積層され、リード部
12a及び13aの末端部に対応して、端子12b及び
13b(図2)を形成するためのPt−Rh合金線24
4a,244bの一方の端部側がそれぞれ挟み込まれ、
未焼成組立体310が完成する。なお、グリーンシート
230のリード部13aの末端に対応する位置には、第
一部分211の貫通孔220aと同様に貫通孔230a
が孔設されており、ここに充填されたペーストに基づく
導通部により、端子13bとリード部13aとが導通す
るようになっている。また、リード部12aのパターン
と、端子12bとなるPt−Rh合金線244aとは、
グリーンシート240及び230の間で挟み付けられて
直接接触する。
【0109】そして、上記未焼成組立体310を焼成す
ることにより、図1及び図2に示す酸素ポンプ素子3
と、第三電極13が未形成の状態の酸素濃淡電池素子4
との一体焼成物が得られる。そして、図5に示すよう
に、Au粉末ペーストを用いてパターン245を酸素濃
淡電池素子4の対応する位置にペースト印刷し、さらに
固体電解質の焼成温度より低い温度(例えば850〜1
000℃)で焼き付けて二次メタライズ処理することに
より、第三電極13が形成されて排気ガスセンサの要部
が完成する。なお、前述のPt−Au合金により、第三
電極13を形成する場合は、素子と同時焼成による形成
も可能である。
【0110】排気ガスセンサ1の作動原理の概要は以下
の通りである。図4に示すように、排気ガスセンサ1を
排気管に取り付け、酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素
子4との間の隙間15と、酸素濃淡電池素子4とヒータ
5との間の隙間16(反対空間)とに、それぞれ炭化水
素系の被検出成分と酸素とを含有する排気ガスが導入さ
れると、隙間15側に位置する電極11,12がいずれ
もPtで形成されており、隙間16側に位置する電極1
3がAuで構成されていることから、該排気ガス中の被
検出成分の酸化による消費量は、隙間15側において隙
間16側よりも大きくなる。そして、被検出成分の消費
量の大きい側においては、排気ガスEG中の酸素の消費
量も大きくなることから、隙間16内の酸素濃度は隙間
15内のそれよりも高くなり、酸素濃淡電池素子4には
隙間16側を正とする濃淡電池起電力が生ずる。
【0111】そして、上記濃淡電池起電力の絶対値が例
えば10mV以下の一定値となるように、酸素ポンプ素
子3により隙間14側から隙間15側へ酸素を汲み込む
と、該酸素ポンプ素子3を流れる電流(以下、酸素ポン
プ電流あるいはポンプ電流という)は、被検出成分の酸
化に消費された酸素量を反映した値となる。また、排気
ガスEG中の被検出成分の濃度が高くなると、その酸化
により消費される酸素量は増大し、結果としてポンプ電
流も大きくなる。従って、ポンプ電流を測定することに
より、排気ガスEG中の被検出成分の濃度を知ることが
できる。
【0112】また、上記排気ガスセンサ1では、酸素ポ
ンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4が前述のペロブスカ
イト型固体電解質で構成されていることから、ヒータ
2,5による加熱温度(設定温度)を450〜550℃
(望ましくは480〜520℃)の第一設定温度、例え
ば500℃とすることによりメタンの検出感度をほぼゼ
ロとできる。従って、その時の酸素ポンプ電流値(濃度
検出情報)から非メタンHC成分の濃度を精度よく知る
ことができる。一方、温度を600〜700℃(望まし
くは630〜670℃)の第二設定温度、例えば650
℃とすることにより、その時の酸素ポンプ電流値(濃度
検出情報)から全HC成分の濃度を精度よく知ることが
できる。そして、両者の差からメタンの濃度を精度よく
知ることができる。
【0113】次に、上記排気ガスセンサ1においては、
図6に示すように、隙間15において酸素濃淡電池素子
4と酸素ポンプ素子3との間に、該隙間15に対する気
体の出入りを妨げない状態で該隙間15の間隔を規定す
る支柱部210を形成することができる。図6に示す例
においては、支柱部210は、酸素ポンプ素子3及び酸
素濃淡電池素子4と同材質の固体電解質セラミックによ
り、隙間15をその長手方向中間位置で2部分に仕切る
仕切壁状に形成されている。また、隙間15に関してス
ペーサ部200と反対側には補助スペーサ部215が介
挿・一体化されている。そして、隙間15は、酸素ポン
プ素子3と酸素濃淡電池素子4との積層体の幅方向両側
面において、支柱部210の両側に形成された開口部2
04を連通部として外側空間と連通することにより、排
気ガスが出入り可能となる。
【0114】この支柱部210は、図7に示す未焼成組
立体310の焼成により、酸素ポンプ素子3及び酸素濃
淡電池素子4と一体形成することができる。図7の未焼
成組立体310は、第三部分213を除いて図5に示す
ものと全く同一に構成されている。そして、その第三部
分213においては、スペーサ部200を形成するため
のスペーサ成形体200aと、隙間15に予定された空
間を挟んでこれと反対側に配置された補助スペーサ部2
15を形成するための補助スペーサ成形体215aと、
さらに両者の間に配置された支柱部パターンとしての支
柱部成形体210aとがグリーンシート240を用いて
形成され、それらの両側に前述の第一部分211と第二
部分212とが積層される。
【0115】そして、これを焼成することにより、酸素
濃淡電池素子4と酸素ポンプ素子3との間に、上記支柱
部成形体210aに基づく支柱部210が形成される。
焼成時に上記支柱部成形体210aを介挿することによ
り、隙間を形成した状態で積層されたグリーンシート2
40が焼成時に変形して隙間側に垂れ下がることが防止
され、所期の大きさの隙間15を安定して形成すること
ができる。なお、図6に示す例では、支柱部210は、
電極11及び12を幅方向に横切るように形成されてい
たが、これを図8に示すように電極11及び12と干渉
しない位置に形成するようにしてもよい。同図において
は、支柱部210は、酸素濃淡電池素子4及び酸素ポン
プ素子3の幅方向両側おいて、それらの長手方向に沿う
ように、それぞれ複数のものが所定の間隔で配置されて
いる。一方、隙間15の、酸素濃淡電池素子4と酸素ポ
ンプ素子3との長手方向おける長さがそれほど大きくな
い場合には、図9に示すように支柱部210を省略する
構成とすることも可能である。
【0116】また、酸素濃淡電池素子4及び酸素ポンプ
素子3に対し、第一及び第二のヒータ2及び5の少なく
ともいずれかを、焼成により一体化する構成としてもよ
い。図10はその一例を示しており、酸素ポンプ素子3
に対し、隙間15とは反対側に第一のヒータ2が積層さ
れ、酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4と第一のヒ
ータ2とが、互いに積層された一体の焼成体として構成
されている。なお、第二のヒータ5は省略されている。
ここで、第一のヒータ2と外側電極10との間には隙間
14が形成されており、その隙間14以外の領域におい
て第一のヒータ2と酸素ポンプ素子3とはAl23等で
構成された絶縁層2cを介して接合されている。
【0117】上記センサ構造は、図11に示すように、
基本的には図7に示す未焼成組立体において、その第一
部分211に対し、第三部分213とは反対側から第一
のヒータ2となるべき第四部分(第三のセラミック粉末
成形体)214を積層し、その積層体として得られる未
焼成組立体310を焼成することにより得られる。以
下、図7との相違点について説明すれば、第一部分21
1から図7のオーバーコート225を省略し、その電極
パターン223に対しこれに近い側から、ヒータ通電用
の端子2a,2b(図10)となるPt−Rh合金線2
57a,257b、貼合わせコート256(Al23
ースト等による)、隙間形成用補助支持パターン255
(カーボンペースト等による)、オーバーコート254
(Al23ペースト等による)、ヒータパターン253
(Ptペースト等による)、絶縁コート252(Al2
3ペースト等による)、グリーンシート251(ヒー
タ本体となる)、及びオーバーコート250(Al23
ペースト等による)がこの順序で積層されて第四部分2
14が形成される。なお、支柱部210は、図9の構成
と同様に省略されている。ここで、隙間形成用補助支持
パターン255は、電極パターン223に対し外側電極
10に対応する領域に選択的に形成され、焼成時に消失
して、図10に示すように、グリーンシート251に基
づくヒータ本体2と酸素ポンプ素子3との間に隙間14
を形成することとなる。
【0118】次に、図12は、より簡便な構成として
の、スペーサ部を使用しない排気ガスセンサの構成例を
示している。すなわち、該排気ガスセンサ1において
は、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4は、それ
ぞれ横長の板状に構成されて互いに対向配置され、各電
極10〜13はそれら酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電
池素子4の板面長手方向における一方の端部側に形成さ
れている。そして、隙間15において酸素ポンプ素子3
及び酸素濃淡電池素子4との間には支柱部210が形成
される一方、隙間15を除く領域において酸素ポンプ素
子3と酸素濃淡電池素子4とは、支柱部210の高さよ
りも厚さが小さい絶縁層260を介して互いに接合・一
体化されている。なお、第一及び第二のヒータ2及び5
は少なくともいずれかが設けられるが、図12はこれを
省略して描いている。
【0119】隙間15は、酸素ポンプ素子3及び酸素濃
淡電池素子4の積層体の幅方向両側面部に開放して、排
気ガスが出入り可能な連通部261が形成されている。
なお、各電極10〜13の端子10b,11b,13b
は、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4の長手方
向における端面側において、基端側が両者の間に挟み込
まれる形で突出している。なお、電極10及び13に対
する端子10b及び13bの接続形態は、図2(b)に
示すものと同様である。また、電極11及び12は後述
する通り共通接地されるため、端子11bが両電極1
1,12の間で共有され、図2の構成における端子12
bが省略されている。また、支柱部210は、図12
(c)に示すように、方形断面のものが散点状あるいは
千鳥状に形成されているが、これを同図(d)に示すよ
うに円形断面に形成したり、あるいは同図(e)に示す
ように、長さの異なる方形断面のものを混在させた形で
構成してもよい。
【0120】上記センサ構造の製造方法について図13
を用いて説明する。この場合も基本的には、前述の第一
部分211と第二部分212とを含む未焼成組立体31
0の焼成により製造される。しかしながら、図1等に示
すセンサ構造とは、下記のような製法上の違いを有す
る。まず、スペーサ部を形成するためのグリーンシート
を含む第三部分が省略され、代わって第一部分211と
第二部分212との各々の対向面において隙間15に予
定された領域に、セラミック粉末ペースト(例えば多孔
質Al23粉末ペースト)を用いて、支柱部210とな
るべき支柱部パターン266a及び266bが形成され
る。また、その支柱部パターン266a及び266bと
重なりを生じない位置において同じく該隙間15に予定
された領域に、焼成時に燃焼ないし分解する材質の粉末
ペースト(例えばカーボンペースト)により補助支持パ
ターン267a及び267bが形成される。さらに、上
記隙間15に予定された領域を除く他の領域には、絶縁
層パターンとしての貼合わせコート269がAl23
末ペースト等により支柱部パターン266a及び266
bの合計の高さよりも小さい厚さで形成される。
【0121】上記未焼成組立体310を焼成することに
より、図15に示すように、酸素濃淡電池素子4と酸素
ポンプ素子3との間においては、補助支持パターン26
7a及び267bが消失するとともに、上記支柱部パタ
ーン266a,266bが焼成により一体化して支柱部
210が形成され、該支柱部210により大きさが規定
された形で隙間15が形成される。一方、隙間15を除
く他の領域においてそれら酸素濃淡電池素子4と酸素ポ
ンプ素子3とは、貼合わせコート269に基づく絶縁層
260を介して互いに接合される。
【0122】ここで、図14に示すように、支柱部パタ
ーン266a,266bと、補助支持パターン267
a,267bとは平面をほぼ埋め尽くすように相補的に
形成され、第一部分211と第二部分212とを積層し
た際に、補助支持パターン267a,267bによる補
強効果に基づき、支柱部パターン266a,266bが
両者の間で潰れることが防止ないし抑制される。また、
第一部分211と第二部分212とは、その要部がグリ
ーンシート220及び230で形成されているため、図
15(a)に誇張して示すように、貼合わせコート26
9が266a,266bの合計厚さよりもかなり薄く形
成されていたとしても、グリーンシート220及び23
0が少し橈むことで、両者は貼合わせコート269を介
して密着でき、焼成により支障なく一体化することがで
きる。
【0123】図16は、図13に示したものと類似の製
法により得られるセンサ構造の変形例を示している。該
構成においては、隙間15の連通部が開放部ではなく、
多孔質Al23焼成体により多孔質セラミック体270
として構成されている。また、支柱部210は形成され
ていない。
【0124】上記構造の製造方法について、図13との
相違点を中心に図17を用いて説明する。まず、図13
の支柱部パターン266a,266bに代えて、多孔質
セラミック体270を形成するための連通部パターン2
71aと271bとが多孔質Al23粉末ペーストによ
り形成され、隙間形成部には図13と同様にカーボンペ
ーストによる隙間形成用補助支持パターン272a及び
272bが形成される。これを焼成することにより、連
通部パターン271aと271bとは一体化して多孔質
セラミック体270となり、隙間形成用補助支持パター
ン272a及び272bは消失して隙間15を形成す
る。
【0125】以下、上記排気ガスセンサを使用したセン
サシステムについて説明する。図18は、排気ガスセン
サ1を用いたセンサシステムの一例の電気的構成を示す
ブロック図である。すなわち、該センサシステム50
は、上記排気ガスセンサ1と、マイクロプロセッサ51
と、それら排気ガスセンサ1とマイクロプロセッサ51
とを接続する周辺回路50aとから構成されている。な
お、マイクロプロセッサ51のCPU53は、ROM5
5に格納された制御プログラム55aにより、被検出成
分濃度情報補正手段、通電制御手段、ポンプ電流補正量
決定手段、補正演算手段、補正濃度情報生成手段、内部
抵抗測定手段、温度情報生成手段、濃淡電池起電力測定
手段、電圧情報補正手段及び加熱制御指令手段の主体を
なす。
【0126】排気ガスセンサ1の酸素濃淡電池素子4の
第二電極12は接地される一方、第三電極13はスイッ
チ機構、例えばCMOS−IC等で構成された両極性型
アナログスイッチ回路60のスイッチSw1を介して反
転増幅用のオペアンプ61(ポンプ電流制御手段)の負
端子側に接続されている。一方、オペアンプ61の正端
子側には起電力目標値ECを与えるための電源回路65
が接続されている。該電源回路65は、起電力目標値E
Cの設定値を一定の範囲で変更可能に構成されている。
例えば図に示す例においては、3つの固定抵抗66a〜
66cと1つの可変抵抗66dを各辺に備えるブリッジ
回路66と、これに接続された電源67とを含んで構成
されている。可変抵抗66dの抵抗レンジをRmin〜Rm
axとして、Rmin<Re<Rmaxとなるある抵抗値Reにお
いてブリッジが平衡し、オペアンプ61の端子への出力
電圧が0となるように、固定抵抗66a〜66cの各抵
抗値が調整されている。そして、可変抵抗66dの抵抗
値をReからそれぞれRmin又はRmax側にずらせること
により、起電力目標値ECは0Vを挟んでそれぞれ正負
両側に一定の範囲で変更可能となる。
【0127】次に、オペアンプ61は、周辺の抵抗器6
1a〜61dとともに差動増幅器を構成し、その出力側
は電流検出用の抵抗器62を介して酸素ポンプ素子3の
外側電極10に接続されている。一方、酸素ポンプ素子
3の第一電極11側は、酸素濃淡電池素子4の第二電極
12と共通接地されている。これにより、オペアンプ6
1は、酸素濃淡電池素子4の濃淡電池起電力Emと、起
電力目標値ECとの差電圧Em−ECを反転増幅して酸素
ポンプ素子3の第一電極11側に印加することとなる。
なお、抵抗器61a及び61bの電気抵抗値をそれぞれ
R1及びR2とすれば、オペアンプ61の電圧ゲインはA
1=R1/R2である。
【0128】ここで、図19に示すように、Em>ECで
あればEm−EC>0であるから、オペアンプ61の出力
電圧−A1(Em−EC)は負となり、酸素ポンプ素子3
には第一電極11側が負となるように電圧が印加され、
酸素ポンプ素子3には隙間15に酸素を汲み込む方向に
ポンプ電流Ipが流れる。このポンプ電流Ipは、電流検
出用抵抗器62(抵抗値R3)の両端電圧差の形で、周
辺の抵抗器64a〜64dとともに差動増幅器を構成す
るオペアンプ64により電圧信号として取り出され、さ
らに図18に示すように、ダイポーラ型のA/D変換器
70でデジタル化されてマイクロプロセッサ51に入力
される。なお、64a,64bは、オペアンプ64のゲ
イン調整用抵抗器(それぞれ抵抗値R5、R6)である。
【0129】次に、酸素濃淡電池素子4の第三電極13
側には、アナログスイッチ回路60のSw2及びSw3を
介して、電流値ICで極性が互いに異なる定電流電源回
路73と74とがそれぞれ接続されている。また、上記
第三電極13側の電圧信号VSは、ダイポーラ型のA/
D変換器71でデジタル変換されてマイクロプロセッサ
51に入力されるようになっている。なお、アナログス
イッチ回路60の各スイッチSw1〜Sw3は、マイクロ
プロセッサ51からの制御信号を受けてオン・オフす
る。
【0130】また、排気ガスセンサ1の第一及び第二の
ヒータ2及び5は、例えば共通のヒータ通電回路72を
介してマイクロプロセッサ51に接続されている。図2
0(a)にヒータ通電回路72の一例を示している。該
ヒータ通電回路72は、マイクロプロセッサ51から与
えられるヒータ制御値をアナログ変換するD/A変換器
80と、これに接続された電流増幅用のトランジスタ8
2とを備え、このトランジスタ82にヒータ2及び5が
接続されている。トランジスタ82は能動領域で作動
し、与えられるヒータ制御値に応じてヒータ2,5の通
電電流を増加させる。
【0131】一方、図20(b)は、PWM(pulse wi
dth modulation)制御方式を採用したヒータ通電回路7
2の例を示すものである。この回路72の主体をなすの
はPWM制御回路85であり、設定温度に応じてマイク
ロプロセッサ51から与えられるヒータ制御値をアナロ
グ変換するD/A変換器86と、三角波(あるいはのこ
ぎり波)発生回路87と、それらD/A変換器86及び
三角波発生回路87からの出力がそれぞれ入力される単
電源オペアンプ88とを含んで構成されている。単電源
オペアンプ88は、ヒータ制御値と三角波入力値との大
小関係に応じてゼロ及びゼロでない所定電圧Vのいずれ
かを出力するコンパレータとして作動する(本実施例で
は、三角波入力値が大きい場合に+V、ヒータ制御値が
大きい場合にゼロが出力されるものとする)。以下、オ
ペアンプ88をコンパレータ88と呼ぶ。
【0132】また、図20(c)は、三角波発生回路8
7の一例を示すものであり、その要部はコンパレータと
して機能するオペアンプ89と、オペアンプ98と抵抗
器97及びコンデンサ99とからなる積分回路100と
からなる。オペアンプ89は、図中A点とB点の電圧加
算値が正であるか負であるかに応じて、それぞれ正負の
最大電圧を出力する。そして、このオペアンプ89の出
力電圧は、ダイオード群92〜95とツェナーダイオー
ド96により、0Vに対する正負の電圧が一定値VZDの
方形波となり、これが積分回路100によって0Vに対
する正負の最大振幅がVZDの三角波に変換される。な
お、三角波の周期λ(図21)は、積分回路100の抵
抗器97の抵抗値とコンデンサ99の容量に応じて調整
できる。発生した三角波は、オペアンプ101により所
定の振幅に増幅されて図20(b)のコンパレータ88
に出力される。
【0133】図21は、PWM制御回路85の作動説明
図であり、コンパレータ88の入力において、ヒータ制
御電圧値Viが三角波入力Vtよりも小さくなっている期
間においてはコンパレータ88の出力は+Vとなり、そ
うでない場合は0となる。これにより、コンパレータ8
8はデューティ比が{(Vi+Vmax)/2Vmax}×λ
(ただし、−Vmax≦Vi≦+Vmax、Vmaxは三角波入力
の最大振幅)のPWM波を出力することとなる。このP
WM波出力により図20(b)のトランジスタ82が高
速でスイッチングされ、ヒータ2,5は上記デューティ
比により断続的に通電される。そして、このデューティ
比がヒータ制御電圧値Viに応じて変化することによ
り、ヒータ2,5の発熱が調整される。
【0134】次に、図18に示すようにマイクロプロセ
ッサ51は、周辺回路50aとの間の出入力インターフ
ェースとなるI/Oポート52と、これに接続されたC
PU53、RAM54、ROM55及びクロック回路5
6等により構成されている。そのRAM54には、CP
U53のワークエリア54aと、後述する処理において
取り込まれる各種測定値のデータ、あるいは後述する制
御処理の過程で生ずる各種カウンタ値を格納するための
測定値メモリエリア54bが形成されている。また、R
OM55には、センサシステム50の被検出成分の出力
値決定の演算とその出力制御を司る制御プログラム55
aと、該制御プログラム55aが使用する補正参照情報
55b(内容については後述する)が格納されている。
また、CPU53は、クロック回路56が発する一定周
期のクロックパルスのカウントにより、後述の処理にお
いて使用される時間計測のためのタイマー機能を実現す
る。
【0135】以下、センサシステム50の作動につい
て、マイクロプロセッサ51のCPU53からみた処理
の流れにより説明する。図29〜図31はそのフローチ
ャートを示している。まず、図29のS0において、排
気ガスセンサ1の活性化処理を行う。活性化処理の目的
は、ヒータ2,5の通電を開始し、酸素ポンプ素子3と
酸素濃淡電池素子4とを所定の作動温度に安定化させる
ことにある。そして、素子温度の検出は、酸素濃淡電池
素子4の内部抵抗を測定し、その内部抵抗値RVSが図2
4(a)に示すように一定の温度依存性を示すことを利
用して行う。なお、図18に示すようにCPU53は、
ヒータ通電回路72(加熱制御手段)に対し、第二設定
温度(例えば650℃)を制御目標値として指令する
(すなわち、加熱制御指令手段として機能している)。
【0136】その処理の詳細を図30に示している。す
なわちS101において、ヒータ通電回路に制御値Vi
として所期設定値Vh0を設定する。このとき、アナログ
スッチ回路60のSw1〜Sw3は全てオフとし、オペア
ンプ61も非作動状態とする。この状態で、S102で
ヒータ通電回路72に対し、ヒータ制御電圧値Viの初
期設定値Vh0を出力することでヒータの通電が開始され
る。そして、S103において通電開始から一定時間t
0が経過したら、温度制御処理に入る。まずS104
で、図18のアナログスイッチ回路60のSw2をオン
とし、S105で活性化判断カウンタ値Nをクリアす
る。
【0137】次いで、S106に進み、酸素濃淡電池素
子4の第三電極13側の電圧VSの値をA/D変換器7
1(図18)を介して取り込み、S107でそのVSの
値から酸素濃淡電池素子4の内部抵抗をRVSを算出す
る。すなわち、Sw1がオフであり、オペアンプ61も
非作動であるから、定電流電源73(電流Ic:内部抵
抗検出用電流)の作動により酸素濃淡電池素子4に対し
図22に示す通電経路が形成される。ここで、酸素濃淡
電池素子4の第二電極12側が接地されていることか
ら、第三電極13側の電圧VSは、酸素濃淡電池素子4
の内部抵抗をRVSとして、 VS=IC・RVS‥‥‥(1) で表される。また、VSは酸素濃淡電池素子4に印加さ
れる電圧情報としての意味を持ち、内部抵抗値RVSは、 RVS=(VS/IC)‥‥‥(2) で求めることができる。なお、厳密には電圧VSには酸
素濃淡電池素子4の濃淡電池起電力Emが重畳されてい
るのであるが、本活性化処理においては電流Icが十分
大きく、濃淡電池起電力Emは酸素濃淡電池素子4にか
かる分圧に比べて無視できるものとして、その補正は行
っていない。ただし、後述する方法により補正を行って
もよい。
【0138】次に、図24(a)に示すように、RVSの
値は酸素濃淡電池素子4の素子温度Tと一定の関係を有
しており、該関係を補正参照情報55bとしてROM5
5(図18)に記憶しておけば、RVSの値から素子温度
Tを決定することができる(なお、RVSの値そのものを
温度情報として使用することもできる)。本実施例で
は、説明をわかりやすくするために、図24(b)に示
すように、各種内部抵抗RVSの値と素子温度Tの値とを
互いに対応付けて示すマップ301がROM55に記憶
されており、このマップ301を参照して補間法により
RVSに対応する温度Tを求めるようにしている(図3
0:S107)。なお、算出された内部抵抗RVSの値
は、図18の測定値メモリエリア54bに格納され、新
たな内部抵抗RVSの検出・算出が行われた場合は上書き
更新される。
【0139】この決定された素子温度Tが、上限値Tma
x、下限値Tminの設定温度範囲(こ前述の第二設定温度
を中心とする)に入っているか否かがS108、S11
0で判断される。素子温度Tが上限値Tmaxよりも大き
くなっている場合は、ヒータ制御電圧値Viが一定の値
ΔViだけ減少してヒータ2,5の発熱が抑制され、逆
に下限値Tminを下回っている場合にはヒータ制御電圧
値ViがΔViだけ増加してヒータ2,5の発熱が促進さ
れる(S109,S111)。また、Tmin≦T≦Tmax
であればViは現状の値が維持され、活性化判断カウン
タ値Nをインクリメントする(S112,S113)。
【0140】そして、活性化判断カウンタ値Nの値が、
例えば設定値NSに到達するまで、上記S106〜S1
13の処理を一定の時間間隔taで繰返し(S114,
S115)、NがNSに到達すれば、素子温度Tはほぼ
上記設定温度範囲内に維持されたものとみなし、図18
においてアナログスイッチ回路60のSw2をオフ、S
w1をオンとし、さらにオペアンプ61を作動状態とし
て所定時間twだけウォームアップした後、活性化処理
が終了する(S116,S117)。
【0141】図29に戻り、活性化処理S0が終了する
とS1に進み、酸素ポンプ素子3のポンプ電流Ipの検
出を開始する(設定温度は第二設定温度(S1))。こ
の状態では、アナログスイッチ回路60は、Sw1のみ
がオンとなっているから、通電経路は図19に示す通り
となる。この状態におけるセンサ1の作動について以下
に説明する。
【0142】そして、センサ1が排気ガスと接触するに
伴い、隙間15内では被検出成分としてのメタン等の炭
化水素(以下、HCと記す)と酸素とが反応すること
で、酸素濃度が減少し、酸素濃淡電池素子4には第三電
極13側を正とする濃淡電池起電力Emが発生する。こ
こで、オペアンプ61に入力される起電力目標値ECが
例えば0であるとすれば、Em−EC>0であるから、オ
ペアンプ61の出力電圧−A1(Em−EC)は負とな
り、酸素ポンプ素子3には第一電極11側が負となるよ
うに電圧が印加され、酸素ポンプ素子3には隙間15に
酸素を汲み込む方向にポンプ電流Ipが流れる。する
と、酸素ポンプ素子3による隙間15への酸素の汲み込
みが進み、濃淡電池起電力Emは次第に小さくなるか
ら、酸素ポンプ電流Ipは小さくなる方向に制御され
る。その結果、最終的には濃淡電池起電力Emはほぼ0
に近づくように酸素ポンプ電流が制御され、そのときの
酸素ポンプ電流Ipの平衡値から被検出成分の濃度を知
ることができる。ポンプ電流Iの信号は、前述の通りオ
ペアンプ64により電流検出用抵抗器62の両端電圧の
差を取ることで電圧信号に変換され、A/D変換器70
でデジタル化されてマイクロプロセッサ51に入力され
る。しかしながら、起電力目標値ECは実際には必ずし
も0に設定されるとは限らない。その理由について以下
に説明する。
【0143】まず、濃淡電池起電力が0であるというこ
とは、理論上は酸素濃淡電池素子4の両側(すなわち、
隙間15及び16)の酸素濃度が等しくなっていること
を意味する。このことは、ポンプ電流が隙間15と16
とにおける被検出成分の消費量の差に直接的に対応して
いることも意味するから、被検出成分の濃度を精度よく
検出でき、また検出結果の解析も容易になる。しかしな
がら通常は、隙間15及び16の酸素濃度が等しくなっ
ても、酸素濃淡電池素子4の起電力は実際には0にはな
らず、一定のオフセット起電力が残ることが多い。この
場合は、上記オフセット起電力に対応する起電力目標値
ECを10mV以下の範囲で設定し、濃淡電池起電力の
絶対値が該起電力目標値ECに到達したときの酸素ポン
プ素子3に流れる電流値を検出信号として採用すること
で、排気ガス中の被検出成分の濃度をより正確に検出で
きる。
【0144】また、酸素濃淡電池素子4のオフセット起
電力は、検出に係る排気ガス中の酸素濃度が低くなるほ
ど変動しやすくなり、一定以下の酸素濃度におけるオフ
セット起電力を基準として起電力目標値ECを設定する
と、センサ出力が排気ガス中の酸素濃度の影響を受けや
すくなる。そこで、酸素を例えば1体積%以上(望まし
くは10体積%以上)含有し、かつセンサ作動温度にお
いて酸素と反応する成分を実質的に含有しない試験ガス
を、隙間15及び16にそれぞれ導入したときのオフセ
ット起電力の絶対値をEOS(単位:mV)とし、これを
基準として起電力目標値ECを(EOS−5)mV以上
(EOS+5)mV以下の範囲内で設定することが有効で
ある。
【0145】この起電力目標値ECの変更・調整は、前
述の通り電源回路65の可変抵抗66dの調整により行
うことができる。なお、酸素濃淡電池素子4のオフセッ
ト起電力は、酸素濃淡電池素子4毎に互いに異なる値と
はなっても、同一の酸素濃淡電池素子4においては比較
的長期に亙って安定した値を示し続けることが多い。そ
こで、可変抵抗66dは、例えば装置50の出荷時等に
おいて、使用されている酸素濃淡電池素子4の固有のオ
フセット起電力に対応して一旦抵抗値を調整してしてし
まえば、後は変更の必要性がなくなることも十分に考え
られる。この場合は、可変抵抗66dを半固定抵抗器に
より構成しておけば便利である。
【0146】さて、図29に戻り、ポンプ電流Ipの値
が検出されたら(S2)、このポンプ電流Ipに対応す
る被検出成分の濃度を決定する。しかしながら、素子温
度Tが排気ガス温等により一定の範囲で変動するからポ
ンプ電流Ipの値もこれに対応して変化する。そこで、
以下のようにして補正を行う。まず、S3で酸素濃淡電
池素子4の内部抵抗値RVSの測定を行ない、対応する温
度Tを前述のマップ301(図24)を参照して決定す
る(図29:S3)。そして、ポンプ電流Ipの値に対
する各温度毎のポンプ電流補正量ΔIpは、例えば図2
5(b)に示すような形で実験的に決定することが可能
であるから、各ΔIpの値と素子温度Tの値とを互いに
対応付けて示すマップ302をこれに基づいて作成し、
これをROM55(補正参照情報記憶手段)に記憶して
おけば、各ポンプ電流補正量ΔIpはこのマップ302
(温度偏差−ポンプ電流補正量関係情報)を参照して補
間法によりに決定することができる(S4)。なお、図
28(a)に示すように、内部抵抗値RVSとポンプ電流
補正量ΔIpとを直接対応させたマップ302aを記憶
しておき、内部抵抗値RVSの値から直接補正量ΔIpを
決定するようにしてもよい。
【0147】図31は、内部抵抗処理の詳細を示してい
る。まず、S201において、図18のアナログスイッ
チ回路60のSw1をオンしたままの状態で、酸素濃淡
電池素子4の第三電極13側の電圧信号VSを読み込
み、これを検出値VS1としてRAM54(図18)の測
定値メモリエリア54bに格納する。この電圧信号VS
は、オペアンプ61に入力される濃淡電池起電力Emに
対応する値となる。次いで、S202で、Sw1をオフ
とし、代わってSw2をオンとする。すると、通電経路
は図22に示す状態となり、酸素濃淡電池素子4に内部
抵抗検出用の定電流ICが通電される。そして、定電流
ICの通電開始から一定時間t1だけ経過後に電圧信号V
Sを読み込み、これを検出値VS2としてRAM54の測
定値メモリエリア54bに格納する(S203,S20
4)。前述の通りこのときの電圧信号VSは、酸素濃淡
電池素子4の内部抵抗を反映したものとなるが、ここに
は該酸素濃淡電池素子4の濃淡電池起電力Emが重畳な
いし含まれた形になっている。そこで、VS2とVS1との
差をとることにより、濃淡電池起電力Em成分の影響を
取り除くことができる(S209)。
【0148】ここで、定電流ICの通電開始から一定時
間t1だけ経過後にVSを測定しているのは次の理由によ
る。すなわち、酸素濃淡電池素子4に定電流ICを通電
すると、酸素濃淡電池素子4内においてその通電と逆方
向(すなわち隙間16側から15側へ向かう方向)に酸
素が輸送され、酸素濃淡電池素子4両側の酸素濃度に変
化を生ずる。その結果、図23に示すように、濃淡電池
起電力EmひいてはVSの値も電流ICの通電継続に伴い
変化する。ここで、内部抵抗測定の精度を確保するため
には、通電により不可避的に生ずるVSの変化を常にほ
ぼ一定のものとすることが大切である。そして、内部抵
抗測定用電流として一定の電流ICが使用されるわけで
あるから、VS測定までの通電時間が常にt1となるよう
に制御すれば、それによる酸素輸送量すなわち酸素濃淡
電池素子4両側の酸素濃度変化もほぼ一定となり、濃淡
電池起電力EmひいてはVSの変化をほぼ一定とすること
ができる。なお、アナログスイッチ回路60のスイッチ
ング速度が十分速く、通電経路切替え後の電流レベルの
安定化も十分速い場合には、定電流ICの通電開始直後
にVSを測定するようにしてもよい。
【0149】次に、定電流ICの通電により、酸素濃淡
電池素子4両側の酸素濃度変化が生ずることにより、別
の問題として、排気ガスセンサ1が炭化水素濃度の測定
に復帰した際に、その酸素濃度の変化が被検出成分濃度
の測定精度に影響を及ぼす場合がある。また、酸素濃淡
電池素子4の内部抵抗値が高い場合には、酸素濃淡電池
素子4内の酸素イオンが移動しにくくなって、電流通電
に伴い分極を生ずることもある。この問題を解決するた
めに、本実施例では次のような方式を採用している。す
なわち、図31のS205〜S208において、VSの
検出後さらに一定時間t2が経過後にSw2をオフとして
定電流ICの通電が終了する一方、代わってSw3をオン
とすることにより、極性が逆の定電流電源74(修正電
流通電手段)によりICとは逆方向で大きさが同じ修正
電流IAを、ICの合計通電時間t1+t2にほぼ等しい時
間t3だけ通電し、その後Sw3をオフとする。これによ
り、酸素濃淡電池素子4において上記とは逆向きにほぼ
同量の酸素が輸送され、IC通電により隙間16側から
隙間15側汲み込んだ酸素がいわば汲み戻される形とな
り、変化した酸素濃度が内部抵抗測定前の状態に近づけ
ることができる。なお、酸素濃淡電池素子4の内部抵抗
測定用の電流ICの通電時間を十分短くできる場合な
ど、酸素濃淡電池素子4両側の酸素濃度変化に及ぼす影
響が小さいと判断できる場合には、図32に示すよう
に、修正電流IAを発生するための定電流電源74を省
略することも可能である(なお、これに対応してアナロ
グスイッチ回路60も、スイッチチャンネル数の少ない
ものを用いればよい)。
【0150】図31に戻り、修正電流IAの通電が終了
すれば、前述の通りS209でVS2とVS1との差ΔVS
を算出し、そのΔVSをVSとみなすことで前述の(2)式
によりRVSを算出する。以下、RVSから素子温度Tを決
定し、それに基づいてヒータ制御電圧値Viを決定する
S210〜S215に至る処理は、図30のセンサ活性
化処理のS107〜S112に至る処理とほぼ同一であ
るので、説明を省略する。その後、S216で時間t4
だけ待機した後、S217でSw1をオンとし、内部抵
抗測定処理は終了する。これにより、ヒータ2,5によ
り酸素濃淡電池素子4の温度が設定値に精度よく保持さ
れ、排気ガス中の炭化物濃度の測定精度が向上する。ま
た、図25に示すように、自動車エンジン等において急
加減速を行った場合に排気ガス温度が急激に変化し、こ
れに対応して酸素濃淡電池素子4の温度Tが急激に変化
した場合でも、酸素ポンプ電流Ipの温度変化分を補正
することにより、素子温度Tの復帰を待たなくても、比
較的精度の高いHC濃度の測定を続行することが可能と
なる。
【0151】なお、定電流発生回路を図18に示す73
と74との2台を用いる代わりに、図示しない極性切替
え回路を用いて1台のものを随時極性を切り替えて使用
するようにしてもよい。また、マイクロプロセッサ51
側から指令された電流値及び極性により、その内容に応
じた電流を発生できる回路を用いてもよい。その一例を
図33に示している。すなわち、該構成では、定電流発
生回路73,74に代えて電圧・電流変換回路189が
用いられている。
【0152】この回路189においては、マイクロプロ
セッサ51からの電流指示電圧ViがD/A変換器(ダ
イポーラ型のもの)190を介してオペアンプ191に
入力されるとともに、オペアンプ191の出力側には電
流検出用の抵抗器195が接続され、さらに該オペアン
プ191の出力による抵抗器195での電圧降下がボル
テージホロワ192を介してフィードバックされるよう
になっている。これにより、抵抗器195での電圧降下
すなわち電流値IOは、接続される負荷に関係なく、入
力電圧Viに応じた一定値に保持される。なお、図にお
いて抵抗器193及び194の抵抗値をそれぞれRf、
Rkとし、抵抗器195の抵抗値をRSとすれば、 IO=(Vi×Rf)/(Rk×RS)‥‥‥(3) となる。この場合、所定の電流指示電圧Viにより内部
抵抗測定用の電流ICを発生させるとともに、修正電流
は、電圧Viとは逆極性の電流指示電圧Vi’を与えるこ
とにより、電流ICとは逆方向の電流として発生させる
こともできる。また、発生させるべき電流レベル及び通
電時間も、マイクロプロセッサ51側からの電流指示電
圧値及びその出力時間を変更することにより、自由に設
定することができる。
【0153】図29に戻り、次いでS5に進み、ポンプ
電流補正量ΔIpを実測されたポンプ電流Ipに加算して
これを補正するとともに、その補正後のポンプ電流I
p’に対応する被検出成分濃度としての炭化水素濃度CH
CBを決定する。この場合、高温側の第二設定温度である
から、CHCBはメタンを含めた全HC濃度に対応する。
各種ポンプ電流Ip’の値に対する炭化水素濃度CHCBの
値は、例えば図26に示すような、ポンプ電流Ip’と
炭化水素濃度CHCBとの関係を与えるマップ304(R
OM55に記憶されている(ただし、第一設定温度での
作動の説明に援用するため、HC濃度を単にCHCと記し
ている))を参照して、補間法により決定することがで
きる。こうして、炭化水素濃度CHCBが決定されれば、
S6において、これを温度補償された濃度検出値として
出力する。
【0154】なお、図28(b)に示すように、素子温
度Tの各種値毎に、ポンプ電流Ipと炭化水素濃度CHC
とを互いに対応付けて示した二次元的なマップ302b
(ポンプ電流情報−被検出成分濃度関係情報)により、
検出されたポンプ電流Ipの値と素子温度Tの値との組
に対応する炭化水素濃度CHCの値を、二次元補間により
直接的に決定するようにしてもよい。また、あるいは上
述の方法により温度補償を行ったポンプ電流Ipの値を
そのまま出力するようにしてもよい。
【0155】次いで図29のS7に進み、設定温度を第
一設定温度(例えば500℃)に設定する。そしてS8
に進み、以降S12まで第一設定温度と同様の処理が行
なわれる。すなわち、S8で酸素ポンプ素子3のポンプ
電流Ip”の検出を開始し、S9で酸素濃淡電池素子4
の第一設定温度での内部抵抗値RVS’を再測定し、さら
にS10でIp”の補正量を算出する。そして、S11
で補正されたIp”からCH濃度出力値CHCAを算出し、
S12でこれを出力する。この場合、低温側の第二設定
温度であり、ポンプ電流Ip”にはメタン検出の成分が
ほとんど含まれていないことから、CHCAは非メタンH
C濃度に対応する。そして、S13では、CHCB−CHCA
によりメタン濃度CHCCを算出し、S14でこれを出力
する。なお、ポンプ電流のHC濃度依存性が第一設定温
度と第二設定温度とで一般には異なるので、図27〜図
29と同様の各マップは、第一設定温度用にも別途記憶
しておく。以降はS1に戻って以下の処理が繰り返され
る。
【0156】なお、排気ガス中の非メタンHC成分は、
エンジンの温度が低い始動直後に比較的濃度が高くな
り、エンジン温度が十分上昇すると濃度レベルはかなり
低くなる。従って、非メタンHC成分濃度であるCHCC
の測定は、例えばエンジン始動後の一定時間に限って行
なうようにしてもよい。この場合、エンジン温度が低け
れば、排気ガス温度も概して低いので、高温側の第二設
定温度から低温側の第一設定温度に切り替えた際に、排
気ガスセンサ1が排気ガスにより冷却され、速やかに設
定温度の変更を行なうことが可能となる。また、上記一
定時間経過後は、図29のS7〜S14の第一設定温度
での測定処理を省略することができる。この場合、全H
C濃度に絞った測定が行なわれることとなる。
【0157】一方、メタン濃度の特定を行なう必要がな
い場合には、図29においてCHCCの算出・出力を行な
うS13とS14とのステップを省略してもよい。
【0158】以下、本発明の装置に使用される排気ガス
センサについて、各種可能な変形態様を例示する。
【0159】まず、酸素ポンプ素子3の外側電極側は、
排気ガス雰囲気から隔離して、ここに大気を導入するよ
うにしてもよい。また、酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電
池素子4の各電極10〜13の材質の組合せは、酸素濃
淡電池素子4の両側で、被検出成分の酸化による消費量
に差が生ずるものであれば、図34(a)に示す上述の
組合せ以外にも各種採用することができる。図34
(b)においては、酸素ポンプ素子3の外側電極10を
酸化触媒活性の低いAu多孔質電極で構成した例であ
る。また、(c)及び(e)は、隙間15に面する第一
電極11及び第二電極12の一方をAu多孔質電極で構
成した例である。また、(d)は、第一電極11及び第
二電極12をいずれも酸化触媒活性の低いAu多孔質電
極で構成し、第三電極13を酸化触媒活性の高いPt多
孔質電極で構成した例である。この場合、被検出成分の
消費量は隙間16側において15側よりも高くなり、酸
素ポンプ素子3は隙間15から酸素を汲み出すように作
動することとなる。(f)は、該構成で第一電極11を
Au多孔質電極で置き換えた例である。
【0160】一方、酸化触媒活性の低い電極は、図35
(a)に示すように、Pt、Rh、Pd、Ir等、高活
性金属グループに属するもので多孔質電極の本体部10
1を形成しておき、その排気ガスとの接触表面側に、触
媒不活性な材料(例えば、Au又はAgを主体とする金
属などの低活性金属グループに属するもの、あるいはS
nO2、ZnO、In23、WO3、Bi23等の酸化
物)によるコーティング102を施して最終的な電極と
してもよい。
【0161】この場合、上記コーティング102は、例
えば図35(b)に示すように、上記触媒不活性な材料
粒子を含んだペーストを本体部101上に塗付して再焼
成する方法により形成したり、あるいは同図(c)に示
すように、真空蒸着やスパッタリング等の気相製膜法に
より形成することができる。なお、上記図35(b)な
いし(c)に示すように、多孔質に形成された本体部1
01には、多数の空隙Pが入り組んで形成されているた
め、コーティング102がそのような空隙Pの内面奥深
くにまで必ずしも形成されない場合もありうるが、被検
出成分と酸素との反応に対する触媒活性を十分に小さく
できるのであれば、そのような未コーティング部が形成
されていても差し支えない。
【0162】また、図36に示すように、酸素ポンプ素
子3と酸素濃淡電池素子4との間に形成される隙間15
には、金属メッシュ又は多孔質金属(例えばPt製のも
の)で構成されたガス保持部材160を介挿することが
できる。なお、上記ガス保持部材160を金属メッシュ
で構成する場合、その網目の形成密度が100〜500
メッシュのものを使用することが望ましい。
【0163】次に、図1等に示した排気ガスセンサ1に
おいては、酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4との
間の隙間15は、これをなるべく小さくして(望ましく
は1mm以下)当該隙間15による新たな排気ガスの流
入規制効果をなるべく高めることが、センサ1の検出精
度を向上させる上で有利である。逆に言えば、該隙間1
5の寸法が大きすぎると、触媒活性を有した電極(本実
施例では第二電極11及び第三電極12)上でのHCと
酸素との反応が不安定化し、酸素濃淡電池起電力が小さ
くなってセンサ出力が十分に得られなくなることもあり
うる。しかしながら、上記素子3,4間の隙間15の量
を小さくし過ぎると、今度は焼成により酸素ポンプ素子
3及び酸素濃淡電池素子4を製造した際に、焼成時の僅
かな変形が隙間15の形成量に大きな影響を及ぼし、セ
ンサ個体間での出力のばらつきが生じやすくなる場合が
ある。以下、これを解決するために有効なセンサ構造に
ついて説明する(なお、既に説明したセンサ構造と共通
の部分については同一の符号を付してその詳細な説明は
省略する)。
【0164】すなわち、図37(a)〜(c)に示す排
気ガスセンサ400においては、酸素濃淡電池素子4と
酸素ポンプ素子3との間に、壁部形成体としてのスペー
サ部401が介挿され、そのスペーサ部401の電極1
1及び12に対応する位置には、厚さ方向にこれを貫通
する窓部401aが形成されている。スペーサ部401
は該窓部401aにより、電極11,12の周囲を取り
囲む壁部401bを形成する。そして、その壁部401
bの内面と酸素濃淡電池素子4及び酸素ポンプ素子3の
各対向面とによって囲まれた空間が測定室403(隙間
15)とされている。そして、上記測定室403に対応
する位置において壁部401bと酸素ポンプ素子3との
間には、該酸素ポンプ素子3の幅方向両側においてそれ
ぞれ測定室403と外側の被検出雰囲気とを連通させる
拡散流通規制部としてのスリット402が形成されてい
る。
【0165】図37(c)に示すように、該スリット4
02は、第二電極12の幅方向両側において壁部401
bの酸素ポンプ素子3との積層面側部分を一定厚さ切り
欠いた形態で形成されており、同図(a)に示すよう
に、電極12の対応する縁に沿って酸素ポンプ素子3の
長手方向に延びている。また、その幅dは測定室403
の高さhよりも小さく設定されており、具体的にはd/
hが1/100〜1/4、より望ましくは1/20〜1
/8の範囲で設定されている。また、スリット幅dの絶
対値は、0.01〜1.0mm、より望ましくは0.0
2〜0.05mmの範囲で設定されている。さらに、ス
リット402内の空間体積Vに対するスリット内周面の
面積の比S/Vは4〜100、望ましくは20〜50の
範囲で調整されている。なお、該スリット402は、同
様の形態で壁部401bと酸素濃淡電池素子4との間に
形成してもよい。
【0166】なお、スペーサ部401(壁部401b)
は、酸素濃淡電池素子4に対してはその積層面のほぼ全
面において、また、酸素ポンプ素子3に対しては、上記
スリット402の形成領域を除いて同様にその積層面の
ほぼ全面において、それぞれ焼成により一体化されてい
る。また、第一のヒータ2及び第二のヒータ5は、スペ
ーサ6及び8を介して酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電
池素子4に対しそれぞれ積層されている。
【0167】上記排気ガスセンサ400の要部をなす酸
素ポンプ素子3、スペーサ部401及び酸素濃淡電池素
子4の一体積層体は、例えば図5等に示すのと同様の方
法により、それぞれ上記各部3,401,4となるべき
セラミックグリーンシート(成形体)を積層して焼成す
ることにより製造することができる。このとき、酸素ポ
ンプ素子3となるべきグリーンシート(セラミック成形
体)と、スペーサ部となるべきグリーンシートとの間に
おいてスリット402の形成が予定された領域に、焼成
温度で焼失する材料(例えばカーボンペーストなど)で
形成された所定厚さの層を挟みこんでおけば、焼成時に
この層が焼失して上記スリット402を簡単に形成する
ことができる。
【0168】このようにすれば、測定室403の高さh
(すなわち隙間15の大きさ)をある程度以上に大きく
した場合でも、排気ガスはスリット402において拡散
を規制されつつ測定室403に流入し、また測定室40
3に導入された後は同じくスリット402を通って拡散
を規制されつつ被測定雰囲気中へ排出される。従って、
一旦導入された排気ガスの測定室403内での滞留時間
が長くなり、その間に被検出雰囲気中の排気ガス組成
(特に酸素あるいは水蒸気量)が変化しても、測定室内
のガスへの影響が小さくなるので、センサ400の出力
が向上し、ひいてはセンサ400の検出精度を高めるこ
とができる。また、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池
素子4とは、スペーサ部401を介して一体化されてい
るから、センサ400の機械的強度が高められている。
【0169】なお、同様の構成の測定室は、酸素濃淡電
池素子4の第三電極13側にも形成することができる。
図38は、その一例を示している。すなわち、同図のセ
ンサ400においては、窓部404aを有した第二電極
12側と同様のスペーサ部404を介して、隙間形成部
材としての隙間形成用セラミック板406が一体化され
ており、そのスペーサ部404による壁部404bの内
面と、酸素濃淡電池素子4及び隙間形成用セラミック板
406の各対向面とによって測定室407が形成されて
いる。また、この測定室407に対応する位置において
壁部404bと酸素濃淡電池素子4との間には、第二電
極12側と同様のスリット405が形成されている。ま
た、第二ヒータ5は隙間形成用セラミック板406に積
層されている。該構成により、さらに安定で高出力のセ
ンサを実現できる。
【0170】なお、スリットに代えて小孔により拡散規
制流通部を構成することもできる。例えば、図43に示
す例おいては、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池素子
4の板面方向において壁部401bを貫く小孔410
が、第一及び第二電極11,12の周方向に沿って所定
の間隔で複数形成されている。一方、図44に示す例に
おいては、酸素濃淡電池素子4を厚さ方向に貫く小孔4
10が、第三電極13の周縁に沿って所定の間隔で複数
形成されている。
【0171】次に、図39に示す構成においては、酸素
濃淡電池素子4に上記スペーサ部401が焼成により一
体化される一方、酸素ポンプ素子3は一体化せずに分離
して構成した例を示す。この場合、スリット402は、
酸素ポンプ素子3の板面と壁部401bの対向面との間
に形成されることとなる。また、第一のヒータ2、酸素
ポンプ素子3、酸素濃淡電池素子4及び第二のヒータ5
がスペーサ6〜8を介して積層されて積層体31が形成
されるとともに、角型の貫通孔30aを有するセラミッ
クストッパ30が、積層体31に対し外側から嵌着され
ている。なお、図40に示すように、スペーサ7はスペ
ーサ部401と酸素ポンプ素子3との間に介挿され、両
者の間に所定の大きさのスリット402を形成する役割
を果たす。
【0172】上記排気ガスセンサ400の組み立ては、
例えば以下のようにして行うことができる。すなわち、
図40(a)に示すように、素子2〜5をスペーサ6〜
8を介して積層して積層体31を作り、(b)に示すよ
うにこれにセラミックストッパ30を嵌着する。続い
て、(c)に示すように、素子2〜5の各接続端子に例
えばステンレス鋼製のリード線37を溶接により接合
し、さらに(d)に示すように、該積層体31を碍管3
2内に挿入し、その内側にガラス粉末を充填した後、こ
れを所定の炉で900〜1000℃に加熱してガラス粉
末を溶融させ、碍管32と積層体31との間をガラスシ
ールする。
【0173】そして、図41(a)に示すように、積層
体31が一体化された碍管32を主体金具34内に配置
し、また、碍管32と主体金具34との間にかしめ金具
36を挿入し、さらに碍管32の主体金具34からの露
出部分に外筒33を被せ、次いで主体金具34を外筒3
3に向けて加熱しながらかしめることにより、かしめ結
合部34aが形成され、主体金具34と外筒33とが一
体化される。続いて、同図(b)に示すように、シール
部材38と保護外筒39とが一体化された別のリード線
群37aを、それぞれ対応するリード線37に溶接する
(以下、一体化された両リード線に改めて符号37を付
与する)。そして、シール部材38と保護外筒39とを
リード線37上を滑らせてその末端部を外筒33内に挿
入し、両者の間をかしめることにより図41(c)に示
す状態となり、さらにプロテクタ35を主体金具34に
対して溶接により取付ければ、図41(d)に示すよう
に、排気センサ400の組み立てが完了する。
【0174】なお、この場合も図42に示すように、第
三電極13側にも測定室407を形成する構成が可能で
ある。すなわち、同図のセンサ400においては、酸素
濃淡電池素子4の第三電極13側に測定室407を形成
するためのスペーサ部404が一体化され、そのスペー
サ部404による壁部404bの内面と、酸素濃淡電池
素子4及び第二のヒータ5の各対向面とによって測定室
407が形成されている。また、スペーサ部404と第
二のヒータ5との間には、第二電極12側と同様のスリ
ット405が形成されている。該構成では、第二のヒー
タ5が隙間形成部材の役割を果たしている。
【0175】
【実施例】図37に示す排気ガスセンサ400を次のよ
うにして作製した。まず、La23、SrO、Ga
23、MgOを所定量秤量し、有機溶媒を適量加えてボ
ールミルにより混合した。次いで、これを乾燥し、10
00℃にて大気中で6時間仮焼した。この仮焼により得
られた粉末に分散剤と有機溶媒を加えてボールミルによ
り再粉砕し、得られた粉末にさらにバインダーと有機溶
剤を加えて混練した後、これをドクターブレード法によ
りグリーンシートとした。そして、排気ガスセンサ40
0の要部をなす酸素ポンプ素子3、スペーサ部401及
び酸素濃淡電池素子4の一体積層体を、図5を用いて既
に説明したのと同様の方法により、それぞれ上記各部
3,401,4となるべきグリーンシート(成形体)を
積層して焼成することにより製造した。
【0176】なお、焼成温度は1500℃とし、外側電
極10、第一電極11及び第二電極12をPt多孔質電
極により、第三電極13をPt−Au多孔質電極(Au
含有量:1重量%)により形成した。また、隙間14の
高さを0.06mm、隙間15(すなわち測定室403)
の高さhを0.4mm、スリット402の幅dを0.1m
m、隙間16の高さを0.07mmとした。そして、上記
各部3,401,4の一体積層焼成体を、図40及び図
41に示すようにして組み立てることにより、排気ガス
センサ400とした。
【0177】また、グリーンシートを焼成して得られる
固体電解質の組成をICP法により分析したところ、そ
の金属元素部分の組成は、原子比でLa0.9Sr0.1Ga
0.8Mg0.2であることがわかった。また、固体電解質の
結晶構造をX線回折により分析し、ペロブスカイト型構
造を有していることを確認した。
【0178】次に、上記排気ガスセンサ400を用い
て、その設定温度(保持温度)を400〜850℃の範
囲で変化させながら、酸素100ppm、炭酸ガス10
%、HC300ppm、水蒸気10%、残部窒素からな
る試験ガス中でのセンサ出力(ポンプ電流値)を測定し
た。なお、HCとしては、メタン(CH4)と、エタン
(C26)、プロパン(C38)及びプロピレン(C3
6)の各種非メタンHCとを個別に使用した。結果を
図45に示す。すなわち、上記排気ガスセンサ400に
おいては、各種非メタンHCに対するセンサ出力は、温
度変化によりそれほど大きく変動していないが、メタン
(CH4)に対するセンサ出力は、温度上昇とともに大
きく増加する一方、500℃以下の低温ではそのセンサ
出力(検出感度)はほぼゼロとなっており、メタンの選
択検出性に優れていることがわかる。
【0179】次に、図46は、設定温度(保持温度)を
650℃(第二設定温度に相当)に固定する一方、試験
ガス中のHC濃度を各種変化させて同様を実験を行なっ
た場合の結果を示している。すなわち、いずれのHC成
分についてもHC濃度増加に伴い、センサ出力はほぼ直
線的に増加している。これは、該温度にて、そのセンサ
出力から全HC濃度を精度よく測定できることを示して
いる。また、図47は、設定温度(保持温度)を500
℃(第一設定温度に相当)として、同様の実験を行なっ
た場合の結果を示している。該温度では、メタンに対す
るセンサ出力が濃度によらずほぼゼロとなっており、非
メタンHCのトータル濃度を検出できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の排気ガスセンサの一例の要部を示す平
面図、側面図及びそのA−A断面図。
【図2】その詳細な構造を示す説明図。
【図3】その組立構造の一例を示す説明図。
【図4】上記センサの作動説明図。
【図5】図1の排気ガスセンサの製造方法を示す分解斜
視図。
【図6】図1の排気ガスセンサの第一の変形例を示す平
面図、側面図及びそのA−A断面図とB−B断面図。
【図7】図6の排気ガスセンサの製造方法を示す分解斜
視図。
【図8】図1の排気ガスセンサの第二の変形例を示す平
面図、側面図及びそのA−A断面図とB−B断面図。
【図9】同じく第三の変形例を示す平面図、側面図及び
そのA−A断面図とB−B断面図。
【図10】同じく第四の変形例を示す平面図、側面図及
びそのA−A断面図。
【図11】図10の排気ガスセンサの製造方法を示す分
解斜視図。
【図12】図1の排気ガスセンサの第五の変形例を示す
平面図、側面図、B−B断面図、及びその支柱部のいく
つかの変形例を示す断面図。
【図13】図12の排気ガスセンサの製造方法を示す分
解斜視図。
【図14】その支柱部パターンと補助支持パターンの配
置関係を模式的に示す説明図。
【図15】補助支持パターンの作用説明図。
【図16】図1の排気ガスセンサの第六の変形例を示す
平面図、側面図及びA−A断面図。
【図17】図16の排気ガスセンサの製造方法を示す分
解斜視図。
【図18】上記センサを用いた本発明の測定装置の一例
の電気的構成を示すブロック図。
【図19】その炭化水素濃度測定モードにおける回路作
動系統を示すブロック図。
【図20】ヒータ通電回路のいくつかの例を示すブロッ
ク図。
【図21】ヒータのPWM制御の説明図。
【図22】酸素濃淡電池素子の内部抵抗測定時の回路作
動系統を示すブロック図。
【図23】金属元素部分の組成が、La0.9Sr0.1Ga
1-yMgyで表されるペロブスカイト型固体電解質の、y
とイオン伝導率との関係を示すグラフ。
【図24】素子温度と酸素濃淡電池素子の内部抵抗との
関係の一例を示すグラフ、及び酸素濃淡電池素子の内部
抵抗と素子温度の関係を示すマップの概念図。
【図25】エンジン急加速あるいは急減速に伴うポンプ
電流変化の測定例を示すプロファイル、素子温度と補正
ポンプ電流値との関係の一例を示すグラフ、及び素子温
度と補正ポンプ電流値との関係を示すマップの概念図。
【図26】ポンプ電流値とHC濃度との関係を示すマッ
プの概念図。
【図27】酸素濃淡電池素子の内部抵抗値とヒータ制御
電圧との関係を示すマップの概念図。
【図28】酸素濃淡電池素子の内部抵抗値と補正ポンプ
電流値との関係を示すマップの概念図、及び素子温度と
ポンプ電流値とHC濃度との関係を示す二次元マップの
概念図。
【図29】図18の装置におけるマイクロプロセッサ側
の制御の流れを示すフローチャート。
【図30】そのセンサ活性化処理の詳細を示すフローチ
ャート。
【図31】同じく内部抵抗測定処理の詳細を示すフロー
チャート。
【図32】図18の装置において、修正電流通電用の電
源を省略した場合のブロック図。
【図33】図18の装置において、内部抵抗測定用及び
修正電流通電用の定電流電源を、電圧−電流変換回路に
置き換えた例を示すブロック図。
【図34】排気ガスセンサの電極構成のいくつかの変形
例を示す模式図。
【図35】コーティングにより触媒不活性な電極を作成
する方法の説明図。
【図36】酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子との間に
ガス保持部材を介挿した例を示す模式図。
【図37】測定室にスリットを介して排気ガスを導入す
るようにした構造のセンサの一例を示す平面図、側面図
及びそのA−A断面図。
【図38】その第一の変形例を示す平面図、側面図及び
そのA−A断面図。
【図39】同じく第二の変形例を示す平面図、側面図及
びそのA−A断面図。
【図40】センサの組立方法の一例を示す工程説明図。
【図41】図40に続く工程説明図。
【図42】図38のセンサの第三の変形例を示す平面
図、側面図及びそのA−A断面図。
【図43】測定室に小孔を介して排気ガスを導入するよ
うにした構造のセンサの一例を示す部分平面図、及びそ
のB−B断面図。
【図44】その変形例を示す部分平面図及び底面図。
【図45】実施例における排気ガスセンサ出力の、設定
温度依存性を各種HCについて示すグラフ。
【図46】実施例における排気ガスセンサ出力の、各種
HCについての濃度依存性を示すグラフ(設定温度65
0℃)。
【図47】実施例における排気ガスセンサ出力の、各種
HCについての濃度依存性を示すグラフ(設定温度50
0℃)。
【符号の説明】
1,400 排気ガスセンサ 2 第一のヒータ(加熱素子) 3 酸素ポンプ素子 4 酸素濃淡電池素子 5 第二のヒータ(加熱素子、隙間形成部材) 11 第一電極 12 第二電極 13 第三電極 15 隙間 16 隙間(反対空間) 50 センサシステム 50a 周辺回路 51 マイクロプロセッサ 53 CPU(被検出成分濃度情報補正手段、通電制御
手段、ポンプ電流補正量決定手段、補正演算手段、補正
濃度情報生成手段、内部抵抗測定手段、温度情報生成手
段、濃淡電池起電力測定手段、電圧情報補正手段、加熱
制御指令手段) 55 ROM(補正参照情報記憶手段) 55a 補正参照情報 61 オペアンプ(ポンプ電流制御手段) 72 ヒータ通電回路(加熱制御手段) 74 定電流電源(修正電流通電手段) 200 スペーサ部 201,202 絶縁層 204 開口部 210 支柱部 211 第一部分(第一の粉末成形体) 212 第二部分(第二の粉末成形体) 213 第三部分 240 グリーンシート(スペーサ成形体) 241,242 貼合わせコート(絶縁パターン) 266a,266b 支柱部パターン 302 マップ(温度偏差−ポンプ電流補正量関係情
報) 302b マップ(ポンプ電流情報−被検出成分濃度関
係情報) 401,404 スペーサ部(壁部形成体) 401b,404b 壁部 402,405 スリット(拡散規制流通部) 403,407 測定室 410 小孔(拡散規制流通部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大島 崇文 愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日 本特殊陶業株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 排気ガス中に含まれる被検出成分の検出
    を行うためのガスセンサであって、 酸素イオン伝導性固体電解質により構成され、その両面
    に電極が形成された酸素濃淡電池素子と、 酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電
    極が形成され、かつ前記酸素濃淡電池素子との間に、被
    測定雰囲気からの排気ガスの流通が許容された所定量の
    隙間が形成されるように、該酸素濃淡電池素子に対向配
    置されるとともに、該酸素濃淡電池素子に生ずる濃淡電
    池起電力の絶対値が減少する方向に、前記隙間に酸素を
    汲み込み又は該隙間から酸素を汲み出す酸素ポンプ素子
    と、 前記酸素ポンプ素子と前記酸素濃淡電池素子との少なく
    とも一方を、予め定められたセンサ作動温度に加熱する
    加熱素子とを備え、 前記酸素濃淡電池素子と前記酸素ポンプ素子とを構成す
    る前記酸素イオン伝導性固体電解質として、酸素中での
    バルク電気比抵抗が、650℃において100Ω・cm
    以下となるのものが使用されていることを特徴とする排
    気ガスセンサ。
  2. 【請求項2】 前記酸素濃淡電池素子と前記酸素ポンプ
    素子とを構成する前記酸素イオン伝導性固体電解質が、
    その一般組成式における金属元素部分の組成がR1-xx
    Ga1-yy(ただし、Rはイオン価が3価の希土類金属
    元素、AはSr、Ca、Ba、Cd、Hg及びRaから
    選ばれる1種又は2種以上からなる金属元素、BはM
    g、In、Al及びZnから選ばれる1種又は2種以上
    からなる金属元素、0.05≦x≦0.25、0.1≦
    y≦0.35)で表されるペロブスカイト型酸素イオン
    伝導性固体電解質である請求項1に記載の排気ガスセン
    サ。
  3. 【請求項3】 前記加熱素子は、前記酸素ポンプ素子及
    び前記酸素濃淡電池素子の設定温度を450〜900℃
    の範囲で調整するものである請求項1又は2に記載の排
    気ガスセンサ。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の排
    気ガスセンサと、 前記酸素ポンプ素子及び前記酸素濃淡電池素子が、所定
    の設定温度に加熱されるように、前記加熱素子の作動を
    制御する加熱制御手段と、 互いに異なる2以上の設定温度候補の中からいずれかを
    選択し、その選択された設定温度による加熱を前記加熱
    制御手段に対して指令する加熱制御指令手段とを備え、 前記排気ガスセンサに対し、前記排気ガス中に含まれる
    被検出成分について、前記設定温度に応じて互いに異な
    る内容の濃度検出情報を出力させるようにしたことを特
    徴とする排気ガスセンサシステム。
  5. 【請求項5】 前記排気ガス中に2以上の被検出成分が
    含まれている場合に、互いに異なる2以上の設定温度の
    それぞれにおいて得られた濃度検出情報に基づいて、前
    記2以上の被検出成分のうちの特定のものの濃度に関す
    る情報を生成し、これを出力する特定成分検出情報生成
    ・出力手段が設けられている請求項4記載の排気ガスセ
    ンサシステム。
  6. 【請求項6】 前記排気ガスセンサが出力する濃度検出
    情報は、第一の設定温度において、前記2以上の被検出
    成分のうちの特定の1成分を除いた残余の被検出成分の
    合計濃度を反映したものとなり、前記第一の設定温度よ
    りも高温の第二の設定温度においては、前記特定の1成
    分を含めたすべての前記被検出成分の合計濃度を反映し
    たものとなる請求項4又は5に記載の排気ガスセンサシ
    ステム。
  7. 【請求項7】 前記被検出成分のうちの前記特定の1成
    分はメタンであり、それ以外の被検出成分は非メタン炭
    化水素である請求項5又は6に記載の排気ガスセンサシ
    ステム。
  8. 【請求項8】 前記排気ガスセンサの、前記酸素濃淡電
    池素子と前記酸素ポンプ素子とを構成する前記酸素イオ
    ン伝導性固体電解質が、その一般組成式における金属元
    素部分の組成がR1-xxGa1-yy(ただし、Rはイオ
    ン価が3価の希土類金属元素、AはSr、Ca、Ba、
    Cd、Hg及びRaから選ばれる1種又は2種以上から
    なる金属元素、BはMg、In、Al及びZnから選ば
    れる1種又は2種以上からなる金属元素、0.05≦x
    ≦0.25、0.1≦y≦0.35)で表されるペロブ
    スカイト型酸素イオン伝導性固体電解質とされ、 前記第一の設定温度が450〜550℃の範囲内で設定
    され、前記第二の設定温度が600〜700℃の範囲内
    で設定される請求項6又は7記載の排気ガスセンサシス
    テム。
JP9303389A 1997-10-17 1997-10-17 排気ガスセンサ及び排気ガスセンサシステム Pending JPH11118758A (ja)

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