JP2015223023A - 同期モータの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】同期モータ5の駆動を制御するモータ制御装置101は、モータ5の電流、トルク又は回転数の状態に基づき、インバータ4のスイッチング状態を操作する瞬時電流制御器12と、インバータ4の同一スイッチング状態での複数のサンプル点で電流センサ6により検出された電流検出値を取得し、少なくとも当該電流検出値に基づき、モータ5のロータ位置を推定する位置推定部21と、を備える。位置推定前に電圧瞬時値及び電流瞬時値から基本波を抽出するためのフィルタを用いないため、フィルタによる応答の遅れが発生しない。したがって、位置センサレス制御において瞬時電流制御の高応答性を維持しつつ、好適に位置推定を行うことができる。
【選択図】図1
Description
この制御装置において相電流をdq軸電流に変換する座標変換部では、フィルタを用いてスイッチングリップルやノイズ成分を除去している。また、速度位相推定部では、ローパスフィルタを用いてインバータ出力周波数ω1から高周波成分を除去している。
瞬時電流制御では制御周期毎に検出した電流検出値に基づきインバータのスイッチングを直接制御するため、電圧基本波及び電流基本波は存在しない。一方、位置推定においては電圧基本波及び電流基本波が必要であるため、瞬時電流制御による電圧出力値及び電流検出値に対し、位置推定前にフィルタを作用させ、電圧基本波及び電流基本波を抽出することが必要となる。
このように位置推定のためにフィルタを設けると、瞬時電流制御の特徴である高応答性を実現することができなくなり、瞬時電流制御の利点が低下するという問題がある。
瞬時電流制御手段は、同期モータの電流、トルク又は回転数の状態に基づき、インバータのスイッチング状態を操作する。具体的には、例えば同期モータの電流指令値に対して設定された所定のヒステリシス領域の上下限と電流検出値とを比較するヒステリシス比較器の比較結果に応じて、インバータのスイッチング状態を操作するための各相スイッチング指令を出力する。要するに、電流フィードバック制御で広く行われているPWM制御のように、制御手段が出力した電圧指令値をPWMキャリアと比較しPWM信号を生成するというような複雑な処理を行うことなく、同期モータの挙動に応じて瞬時電流制御手段がインバータのスイッチングを「直接」演算する。
具体的には、位置推定手段は、瞬時電流制御手段が出力する各相スイッチング指令(電圧瞬時値)と、電流検出手段が検出した電流検出値(瞬時値)とからロータの位置を推定する。或いは、モデル予測制御の電流予測値と電流検出値とからロータの位置と速度を推定する。
本発明では、位置推定に基本波電圧及び基本波電流を用いないため、フィルタが不要となる。したがって、瞬時電流制御の高応答性を維持しつつ、好適に位置推定を行うことができる。
例えば、「最新のサンプル点である第2サンプル点」、又は、「最新のサンプル点である第2サンプル点と、当該第2サンプル点から1つ以上前のサンプル点である第1サンプル点との中間のタイミングである中間点」を基準時とすることができる。
制御対象である同期モータは、例えば突極性を有するIPMSM(埋込永久磁石式同期モータ)等である。この同期モータには、レゾルバ等の位置センサが設けられておらず、本発明の同期モータの制御装置は、「位置センサレス制御」によって同期モータを制御する。また、本発明の同期モータの制御装置は、高応答性を確保するため、PWM制御等ではなく、「瞬時電流制御」により同期モータを制御することを特徴とする。
第1及び第2実施形態は、各制御装置の全体構成を順に説明した後、特徴的な構成及び作用効果についてまとめて説明する。
第1実施形態の同期モータの制御装置の構成について、図1、図2を参照して説明する。図1に示すように、「同期モータの制御装置」としてのモータ制御装置101は、インバータ4のスイッチング状態を操作することで、同期モータ(以下、適宜「モータ」という。)5の駆動を制御する。
インバータ4からモータ5への電流経路には、「電流検出手段」としての電流センサ6が設けられており、モータ制御装置101は、電流センサ6で検出された三相電流Iu、Iv、Iwを取得する。ここで、三相に設けられた電流センサ6で三相の電流値を検出してもよく、或いは、任意の二相に設けられた電流センサ6で二相の電流値を検出し、他の一相の電流値をキルヒホッフの法則により算出してもよい。
以下、三相電流検出値、及び、各相スイッチング指令の記号について、相毎に区別せず三相をまとめて扱うときは、「三相電流検出値Iuvw」、「各相スイッチング指令SW_uvw」のように省略して記載する。
逆dq変換部11は、位置推定部21が推定したロータ位置(電気角)θを用いてdq軸電流指令値Id*、Iq*を三相電流指令値Iu*、Iv*、Iw*(以下、三相をまとめて扱うときは「三相電流指令値Iuvw*」と記す。)に変換する。
この制御方式は、特許文献1に開示された「瞬時電流値制御」に相当する。本明細書では、この制御方式を「ヒステリシス比較式瞬時電流制御」という。
図2に示すように、位置推定部21は、各相スイッチング指令SW_uvw(電圧瞬時値)とインバータの電源電圧(図示せず)を用いてdq変換するdq変換部17、三相電流検出値Iuvw(電流瞬時値)をdq変換するdq変換部18、及び、dq変換された電圧値及び電流値に基づいて、ロータ位置θを推定演算する位置推定演算部22を有している。位置推定演算の詳細は後述する。
推定された位置θは、位置推定部21内部のdq変換部17、18の他、位置推定部21外の逆dq変換部11(図1参照)に出力される。
第2実施形態の同期モータの制御装置の構成について、図3を参照して説明する。第2実施形態のモータ制御装置102は、例えば下記の非特許文献等に開示された「直接トルク制御」を実行するものである。
L.Tang, L.Zhong, M.F.Rahman and Y.Hu, / "A novel direct torque control for interior permanent-magnet synchronous drive with low ripple in torque and flux - A speed-sensorless approach," (「トルクリップル及び磁束の低いIPMSM駆動のための新しい直接トルク制御−速度センサレスアプローチ」), IEEE Transactions on Industry Applications.vol.39,no6,pp/1748,2003 p1748
瞬時電流制御器13は、トルク用ヒステリシス比較器131、磁束用ヒステリシス比較器132、及び、スイッチングテーブル14を含む。
同様に、磁束用ヒステリシス比較器132は、磁束指令値λ*に対して設定された所定のヒステリシス領域の上下限と磁束推定値λ_estとを比較し、磁束指令値λ*及び磁束推定値λ_estのいずれが大きいかの比較結果を出力する。
直接トルク制御では、瞬時電流制御器13が生成した各相スイッチング指令SW_uvwによりインバータ4のスイッチング状態を直接操作することで、トルク指令値trq*及び磁束指令値λ*に応じたトルクが出力され、磁束が発生するように、モータ5の駆動が制御される。
上術のとおり、「ヒステリシス比較式瞬時電流制御」を実行する第1実施形態のモータ制御装置101、及び、「直接トルク制御」を実行する第2実施形態のモータ制御装置102は、共通の位置推定部21を備えている。以下、2つの実施形態に共通の位置推定部21による位置推定演算について説明する。この部分の説明で「本実施形態」とは、第1及び第2実施形態を意味する。
まず、図13に示す従来技術のモータ制御装置107の構成について、図1に示す本実施形態のモータ制御装置101の構成と異なる点を説明する。従来技術のモータ制御装置107では、PI制御器等の電流制御器32は、電流指令値Id*、Iq*と、フィードバックされたdq軸電流Id、Iqとの電流偏差ΔId、ΔIqを0にするように、dq軸電圧指令値Vd*、Vq*を生成する。
図13に戻り、取得された三相電流Iu、Iv、Iwは、dq変換部18でdq軸電流Id、Iqに変換される。そして、フィルタ36を通過することで高周波成分が除去され、電流基本波(フーリエ級数展開の一次成分)に対応するdq軸電流が抽出される。
位置推定部25は、電流制御器32が出力した電圧基本波、及び、検出された電流基本波に基づき、ロータ位置θを推定する。位置推定部25が推定した位置θは、逆dq変換部33及びdq変換部18に入力され、変換演算に用いられる。
図4に示すように、瞬時電流制御は、制御周期毎に検出した電流検出値に基づきインバータ4の出力電圧(インバータのスイッチング)を直接操作するものであり、基本波電圧は存在しない(仮想線で示すのは、存在しないことを意味する)。また、電流は、制御周期毎に出力電圧の切替タイミングと同期して検出される。
R:電機子抵抗
p:微分演算子
Ld、Lq:d軸インダクタンス、q軸インダクタンス
ω:電気角速度
φ:永久磁石の電機子鎖交磁束
Δθ:回転座標系の実軸(dq軸)と推定軸(γδ軸)との位置誤差(軸ずれ角)
図13に示す、PWM制御に位置センサレス制御を適用した従来技術のモータ制御装置107では、上述のように電流制御器32により基本波電圧の電圧指令値が生成される。また、電流センサ6が検出した相電流は、切替タイミングの中心で取得され、dq変換部18でdq変換される。そして、フィルタ36を通過することで高周波成分が除去され、電流基本波に対応するdq軸電流が抽出される。位置推定部25は、電圧基本波及び電流基本波に基づいて位置推定を行う。
このようにフィルタ35、36を用いることで応答が遅れることとなり、瞬時電流制御の特徴である高応答性を実現することができなくなる。したがって、PWM制御に代えて瞬時電流制御を採用するメリットが滅失されることとなる。
第1サンプル点t1からのロータの回転により、微小時間t後の電圧v’は、dq座標のベクトルで表すと、数式5のようになる。数式5の第2項において「t=Δt」を代入した値が図7の電圧誤差Err_vに相当する。
そこで本実施形態の位置推定部21は、第2サンプル点t2を超えた時点で位置推定演算を開始するものとすると、位置推定演算の開始時に、上述の誤差を補償するための「誤差補償処理」を実行する。この誤差補償処理は、位置推定に用いる電圧値、電流値、又は電流微分値について、同一スイッチング状態での複数のサンプル点で取得した電圧出力値及び電流検出値に基づき、所定の基準時の電圧出力値もしくは電流検出値を補正し、又は電流微分値を算出するものである。
なお、本実施形態では位置推定部21が誤差補償処理を含めて実行するものとするが、他の実施形態では誤差補償処理を専門に実行する機能部を別に設けてもよい。
第2サンプル点t2の電圧出力値vt2は、第1サンプル点t1の電圧出力値vt1に基づき補正することができる。
また、第2サンプル点t2の電流微分値pit2は、第1サンプル点t1の電圧出力値vt1、並びに、第2サンプル点t2の電流検出値it2と第1サンプル点t1の電流検出値it1との差分及び経過時間Δtに基づき算出することができる。
この場合、第1サンプル点t1から中間点tcまでの時間は、(Δt/2)であるので、数式7においてt=(Δt/2)を代入して実際値を計算し、実線との差分から誤差補償処理の計算式を導出する。その結果、表2の右欄に示すように、中間点tcの電圧出力値vtcは、第1サンプル点t1の電圧出力値vt1に基づき補正することができる。
さらに、中間点tcの電流微分値pitcは、第2サンプル点t2の電流検出値it2と第1サンプル点t1の電流検出値it1との差分及び経過時間Δtに基づき算出することができる。
本発明の第3実施形態の同期モータの制御装置について、図9〜図12を参照して説明する。第3実施形態では、瞬時電流制御の一つである「モデル予測制御」を行う。
図9に示すように、第3実施形態のモータ制御装置103は、「瞬時電流制御手段」としてのモデル予測制御器16、電流センサ6が検出した三相電流検出値をdq変換するdq変換部18、及び、「位置推定手段」としての位置推定部23等を有している。
この種のモデル予測制御は、例えば「モデル予測制御に基づくPMSM高速駆動時の電流制御系に関する検討 平成18年電気学会全国大会 4−111」に開示されている。
そして、「予測時点1」に達したら、次に「予測時点2」の電流を予測演算するというように、予測演算と選択とを繰り返す。
また、モデル予測制御によって予測した次のサンプル点での電流予測値と、現在の電流検出値(電流瞬時値)との差分から位置θと速度ωを推定するため、位置推定部23でのモデル演算が一切不要となる。したがって、位置推定部23の演算負荷を大幅に低減することができる。
さらに、第1実施形態で説明した誤差補償処理は、第3実施形態にも適用可能である。第3実施形態では、特に数式13のiγ(t+1)、iδ(t+1)について、第2サンプル点t2の電流値の補正を適用することが好ましい。
(ア)上記実施形態では、瞬時電流制御の具体例として、ヒステリシス比較式瞬時電流制御、直接トルク制御、及び、モデル予測制御を例示しているが、これ以外の瞬時電流制御を採用してもよい。
また、上記実施形態では、位置推定において拡張誘起電圧モデルを用いているが、拡張誘起電圧モデルを用いなくてもよい。
つまり、3つ以上のサンプル点で電流検出値を取得する場合において、そのうち任意の2つのサンプル点の値を用いた算出構成が本発明の誤差補償処理の要件を充足する場合は、本発明の技術的範囲に含まれると解釈する。
12、13・・・瞬時電流制御器(瞬時電流制御手段)、
16・・・モデル予測制御器(瞬時電流制御手段)、
21、23・・・位置推定部(位置推定手段)、
4 ・・・インバータ、
5 ・・・同期モータ、
6 ・・・電流センサ(電流検出手段)。
Claims (15)
- インバータ(4)の複数のスイッチング素子のスイッチング状態を操作することで多相交流電力を出力し同期モータ(5)の駆動を制御する制御装置であって、
前記同期モータの電流、トルク又は回転数の状態に基づき、前記インバータのスイッチング状態を操作する瞬時電流制御手段(12、13、16)と、
前記インバータの同一スイッチング状態での複数のサンプル点で電流検出手段(6)により検出された電流検出値を取得し、少なくとも当該電流検出値に基づき、前記同期モータのロータ位置を推定する位置推定手段(21、23)と、
を備えることを特徴とする同期モータの制御装置(101、102、103)。 - 前記瞬時電流制御手段(16)は、
前記インバータの各相のスイッチング状態の組合せパターンについて予測時点の電流を予測し、電流予測値が電流指令値に最も近くなるスイッチングパターンを選択するモデル予測制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の同期モータの制御装置(103)。 - 前記位置推定手段(23)は、
前記モデル予測制御での予測電流値と電流検出値との電流誤差により位置推定することを特徴とする請求項2に記載の同期モータの制御装置。 - 前記位置推定手段は、
回転座標系のdq軸に対応する制御上の推定軸であるγδ軸における前記電流誤差について、前記電流誤差のγ軸成分又はδ軸成分に基づき、前記同期モータのロータの位置又は速度を推定することを特徴とする請求項3に記載の同期モータの制御装置。 - 前記瞬時電流制御手段(12、13)は、
前記同期モータの通電に係る電流、又はトルク及び磁束について、指令値に対して設定された所定のヒステリシス領域の上下限と検出値もしくは推定値とを比較するヒステリシス比較器(12、131、132)を有し、前記ヒステリシス比較器の比較結果に応じて、前記インバータのスイッチング状態を操作するための各相スイッチング指令を出力し、
前記位置推定手段(21)は、
前記瞬時電流制御手段が生成した前記各相スイッチング指令と、前記電流検出手段が検出した電流検出値とから位置推定することを特徴とする請求項1に記載の同期モータの制御装置(101、102)。 - 前記位置推定手段は、電圧方程式についての拡張誘起電圧モデルを用いて位置推定することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の同期モータの制御装置。
- 前記位置推定手段による位置推定に用いる電圧値、電流値、又は電流微分値について、
前記インバータの同一スイッチング状態での複数のサンプル点で取得した電圧出力値又は電流検出値のうち少なくとも1つに基づき、そのスイッチング状態における所定の基準時の電圧出力値又は電流検出値を補正し又は電流微分値を算出する誤差補償処理を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の同期モータの制御装置。 - 最新のサンプル点である第2サンプル点(t2)を前記基準時として前記誤差補償処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の同期モータの制御装置。
- 前記第2サンプル点から1つ以上前のサンプル点である第1サンプル点(t1)の電圧出力値に基づき前記第2サンプル点の電圧出力値を補正することを特徴とする請求項8に記載の同期モータの制御装置。
- 前記第2サンプル点から1つ以上前のサンプル点である第1サンプル点(t1)の電圧検出値、並びに、前記第2サンプル点の電流検出値と前記第1サンプル点の電流検出値との差分及び経過時間(Δt)に基づき、前記第2サンプル点の電流微分値を算出することを特徴とする請求項8又は9に記載の同期モータの制御装置。
- 最新のサンプル点である第2サンプル点(t2)と、当該第2サンプル点から1つ以上前のサンプル点である第1サンプル点(t1)との中間のタイミングである中間点(tc)を前記基準時として前記誤差補償処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の同期モータの制御装置。
- 前記第1サンプル点の電圧出力値に基づき、前記中間点の電圧出力値を補正することを特徴とする請求項11に記載の同期モータの制御装置。
- 前記第1サンプル点の電流検出値、及び前記第1サンプル点の電圧出力値に基づき、前記中間点の電流値を補正することを特徴とする請求項11又は12に記載の同期モータの制御装置。
- 前記第2サンプル点の電流検出値と前記第1サンプル点の電流検出値との差分及び経過時間(Δt)に基づき、前記中間点の電流微分値を算出することを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の同期モータの制御装置。
- 前記位置推定手段は、前記中間点の位置及び速度に基づき前記第2サンプル点の位置を推定することを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の同期モータの制御装置。
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