以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における電動機駆動制御システムの構成を示すブロック図である。図2は、前記電動機駆動制御システムにおけるMPC制御部の構成を示すブロック図である。図3は、前記電動機駆動制御システムにおけるインバータ回路の構成を示す回路図である。図4は、前記電動機駆動制御システムにおける負荷トルク推定部の構成を示すブロック図である。図5は、前記インバータ回路で出力可能な電圧を示すベクトル図である。図6は、前記インバータ回路で出力可能な時系列な電圧パターンの一例を説明するための図である。図7は、負荷トルクを入力とし、回転速度予測の推定誤差を出力とする伝達関数のステップ応答を説明するための図である。図7の横軸は、経過時間であり、その縦軸は、回転速度の推定誤差である。
実施形態における電動機駆動制御システムは、電動機を、制御しつつ、駆動するシステムであり、インバータ回路の出力で駆動される電動機を制御する電動機駆動制御装置を備える。本実施形態では、電動機駆動制御システムSは、モデル予測制御を用いたベクトル制御によって、電動機を、制御しつつ、駆動する。このような電動機駆動制御システムSは、例えば、図1に示すように、電動機Mと、インバータ回路IVと、モデル予測制御部MCと、3相2相変換部CVと、負荷トルク推定部TEと、回転速度処理部RSCと、電流測定部CSと、回転角度測定部VSとを備える。
電動機Mは、インバータ回路IVに接続され、インバータ回路IVの交流出力で駆動される電動機である。例えば、電動機Mは、インバータ回路IVから出力されるU相、V相およびW相の三相交流電流で駆動される同期電動機、より具体的には、本実施形態では永久磁石式同期電動機(permanent magnet synchronous motor、PMSM)である。なお、電動機Mは、これに限定されるものではなく、例えば、誘導電動機(induction motor、IM)やSRモータ(Switched Reluctance motor、SRM)等の他の種類であっても良い。
インバータ回路IVは、モデル予測制御部MCに接続され、モデル予測制御部MCの制御に従って、直流電源Vdcの直流電力を、所定の周波数の交流電力へ変換する回路である。インバータ回路IVは、例えば、図3に示すように、直列に接続された2個のスイッチング素子Trを1組として、互いに並列に接続された3組Tr1、Tr4;Tr2、Tr5;Tr3、Tr6を備える。より具体的には、インバータ回路IVは、6個の第1ないし第6スイッチングTr1~Tr6を備える。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等の、オンオフするスイッチ機能を持つ電力用半導体素子である。第1ないし第3スイッチング素子Tr1~Tr3の各一方端子(例えば各コレクタ端子)は、それぞれ、直流電源Vdcの一方端子に接続される。第1スイッチング素子Tr1の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第4スイッチング素子Tr4の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。第2スイッチング素子Tr2の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第5スイッチング素子Tr5の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。第3スイッチング素子Tr3の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第6スイッチング素子Tr6の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。これら第4ないし第6スイッチング素子Tr4~Tr6の各他方端子(例えば各エミッタ端子)は、それぞれ、直流電源Vdcの他方端子に接続される。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6における、スイッチング素子Trをオンオフするための制御信号が入力される各制御端子(例えばゲート端子)は、モデル予測制御部MCに接続される。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6それぞれにおいて、その一方端子と他方端子との各間それぞれには、他方端子にアノード端子を接続した各ダイオードD1~D6が接続される。そして、第1スイッチング素子Tr1と第4スイッチング素子Tr4とを接続する第1接続点は、例えばU相の交流電流を出力し、電動機MのU相を接続する入力端子に接続される。第2スイッチング素子Tr2と第5スイッチング素子Tr5とを接続する第2接続点は、例えばV相の交流電流を出力し、電動機MのV相を接続する入力端子に接続される。第3スイッチング素子Tr3と第6スイッチング素子Tr6とを接続する第3接続点は、例えばW相の交流電流を出力し、電動機MのW相を接続する入力端子に接続される。このような構成のインバータ回路IVは、いわゆる2レベル3相インバータ回路であり、各組の一方のスイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3と他方のスイッチング素子Tr4、Tr5、Tr6とは、互いに逆のスイッチング態様(一方がオンの場合には他方がオフで、一方がオフの場合には他方がオンである態様)となるようにモデル予測制御部MCの制御に従って制御され、U相、V相およびW相の3相の交流電流を電動機Mへ出力する。
電流測定部CSは、3相2相変換部CVに接続され、インバータ回路IVから電動機Mへ流れる電流、本実施形態では、U相電流、V相電流およびW相電流それぞれを測定し、その各測定結果を3相2相変換部CVへ出力する装置である。電流測定部CSは、例えば交流電流計を備えて構成される。
回転角度測定部VSは、3相2相変換部CVおよび回転速度処理部RSCそれぞれに接続され、電動機Mにおける磁極位置を角度で測定し、その測定結果(回転角度)を3相2相変換部CVおよび回転速度処理部RSCそれぞれに出力する装置である。回転角度測定部VSは、例えば、ロータリエンコーダ(パルスジェネレータ)や、ホールIC等を備えて構成される。なお、センサレスの場合には、回転角度測定部VSは、電動機Mのモデルを用いて電流および電圧から電動機Mの回転角度を求めても良い。
3相2相変換部CVは、モデル予測制御部MCに接続され、電流測定部CSから入力された測定結果(U相電流、V相電流およびW相電流)および回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)から、いわゆるクラーク(Clarke)変換およびパーク(Park)変換によって、励磁電流(d軸電流)idおよびトルク分電流(q軸電流)iqを求め、この求めたd軸電流idおよびq軸電流iqをモデル予測制御部MCへ出力するものである。
回転速度処理部RSCは、モデル予測制御部MCおよび負荷トルク推定部TEそれぞれに接続され、回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)から、電動機Mの回転速度ωmを求め、この求めた回転速度ωmを回転速度現在値ωmとしてモデル予測制御部MCおよび負荷トルク推定部TEそれぞれへ出力するものである。すなわち、回転速度処理部RSCは、回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)から、電動機Mの回転速度ωmを求め、この求めた回転速度ωmを回転速度現在値ωmとしてモデル予測制御部MCおよび負荷トルク推定部TEそれぞれへ出力する速度出力処理を実施する。例えば、回転角度測定部VSで測定された回転角度θeを時間微分して電動機Mの極対数pの逆数を乗じることによって回転速度ωmが求められる。
負荷トルク推定部TEは、モデル予測制御部MCに接続され、電動機Mに働く負荷トルクを推定するものである。すなわち、負荷トルク推定部TEは、電動機Mに働く負荷トルクを推定する負荷トルク推定処理を実施する。モデル予測制御では、その性質上、現時点における電動機Mの回転速度を過去に予測している。回転速度の予測値は、電動機Mに負荷トルクを加えた電圧方程式および運動方程式に基づいて導出される。ここで、仮に、予測された回転速度予測値と実測された回転速度現在値との間に誤差が生じている場合、電動機Mのモデルに含まれる誤差を無視すると、そこには、回転速度の予測に用いられた負荷トルクの推定値に誤差が含まれていると考えられる。この考えから、本実施形態では、負荷トルク推定部TEは、モデル予測制御部MCにおける後述の速度予測部13で過去に予測された現在の回転速度予測値に基づいて負荷トルクを推定する。より具体的には、負荷トルク推定部TEは、速度予測部13で過去に予測された現在の回転速度予測値と回転角度測定部VSで測定された回転角度から求めた回転速度現在値との差分に、予め設定された所定の係数を乗じた差分乗算値を、制御周期ごとに積算することで負荷トルクを推定する。
すなわち、モデル予測制御部MCが、予め設定された所定の制御周期ごとに繰り返し電動機Mをインバータ回路IVを介して制御する場合、k番目の制御における負荷トルク推定値を、上にハット(^)付きのTl(k)とし、電動機Mの慣性モーメントをJとし、k番目の制御(現在)における回転速度予測値を、上にハット(^)付きのω(k)とし、k番目の制御(現在)における回転速度現在値をω(k)とし、制御周期(モデル予測制御における繰り返し制御の時間間隔)をTsとし、前記所定の係数として、負荷トルクのゲイン(更新量を調整するための更新量調整ゲイン)をKとする場合に、負荷トルク推定値は、次式1で表される。
より具体的には、本実施形態では、負荷トルク推定部TEは、上記式1から、例えば、図4に示すように、減算部31と、ローパスフィルタ部32と、パラメータ演算部33と、ゲイン演算部34とを備える。
減算部31は、回転速度処理部RSCおよびモデル予測制御部MCそれぞれに接続され、モデル予測制御部MCの速度予測部13で過去、例えば制御周期の1つ前に求められた現在の回転速度予測値(上にハット(^)付きのω(k))と回転速度処理部RSCで求められた現在の回転速度現在値ω(k)との差分を求め、この求めた差分をローパスフィルタ部32へ出力するものである。
ローパスフィルタ部32は、減算部31から出力された前記差分に含まれる、例えばノイズ等に起因する高周波成分を除去し、この高周波成分を除去した前記差分をパラメータ演算部33へ出力するものである。ローパスフィルタ部32は、例えば、次式2で表される2次のデジタルローパスフィルタF(z)を備えて構成される。ここで、a0、a1、a2、b0、b1、およびb2は、フィルタ係数であり、ローパスフィルタ部32の仕様等に応じて適宜に設定される。なお、デジタルローパスフィルタF(z)は、2次に限定されるものではなく、1次や3次以上あっても良い。また、前記差分に含まれる高周波成分が無視できる場合には、ローパスフィルタ部32は、省略されても良い。
パラメータ演算部33は、ローパスフィルタ部32の出力(前記高周波成分を除去した前記差分)に、式1におけるパラメータ(-J/Ts)を乗算し、この乗算結果をゲイン演算部34へ出力するものである。
ゲイン演算部34は、モデル予測制御部MCに接続され、パラメータ演算部33の出力(パラメータ(-J/Ts)を乗算した前記差分)に、負荷トルクのゲインKを乗算し、この乗算結果をモデル予測制御部MCへ出力するものである。
このゲインKは、回転速度予測値と回転速度現在値との間の差異に振動成分が生じて回転速度予測値が発散しないように、適切に設定されなければならない。このため、本実施形態では、例えば、負荷トルクを入力とし、速度予測部13の推定誤差を出力とする伝達関数が安定性を満足する範囲内に、前記所定の係数としてのゲインKが、設定される。より具体的には、回転速度予測値と回転速度現在値とは、それぞれ、次式3および次式4に従う。ここで、Bは、電動機Mにおける回転体の摩擦係数であり、Te(k)は、電動機Mにおける実際の出力トルクであり、Tl(k)は、電動機Mに働く実際の負荷トルクであり、上にハット(^)付きのTe(k)は、電動機Mにおける実際の出力トルクの推定値であり、上にハット(^)付きのTl(k)は、電動機Mに働く実際の負荷トルクの推定値であり、△Tl(k)は、制御周期ごとに負荷トルク推定値をインクリメント(またはデクリメント)するための負荷トルク更新量、すなわち、k番目の制御で、(k-1)番目の制御における負荷トルク推定値に積算される前記差分であり、次式5で表される。なお、上にハット(^)付きのω(k|k-1)は、(k-1)番目の制御(過去)で求められたk番目の制御(現在)における回転速度予測値である。
式5から、現在の制御で求められる、過去に予測された現在の回転速度予測値と回転速度現在値との差分に基づき更新量を求めて制御周期ごとに積算することで、負荷トルクが、推定されている。
これら式1ないし式5から、前記伝達関数H(z)は、次式6となる。
この式6から、ゲインKが負荷トルクと回転速度推定誤差との間における応答特性に寄与していることが分かる。負荷トルクが加わった際に、式5に基づく更新量で負荷トルク推定値が更新されることによってモデル予測制御における回転速度推定誤差の推移が図7に示されている。ゲインKの大きさによってステップ応答の過渡特性が異なっている。式6で表される伝達関数H(z)が安定となるためには、式6で表される伝達関数H(z)の全ての極piで、その大きさが1以内となる必要がある。すなわち、pi=ci+di(式6では極数i=1、2、3、4)、|ci+jdi|<1である。ここで、jは、虚数単位である(j2=-1)。このようなゲインKは、ユーザによって予め求められて負荷トルク推定部TEのゲイン演算部34に設定されて良く、あるいは、負荷トルク推定部TEは、前記負荷トルクを入力とし、前記速度予測部の推定誤差を出力とする伝達関数が安定性を満足する範囲内に前記所定の係数を設定する係数設定部(不図示)をさらに備え、後述のフローチャートに従って前記係数設定部によって求められても良い。
モデル予測制御部MCは、モデル予測制御を用いたベクトル制御によって、電動機Mをインバータ回路IVを介して駆動制御するものである。モデル予測制御部MCは、より具体的には、例えば、図2に示すように、制御部11と、電圧パターン生成部12と、速度予測部13と、電圧パターン選択部14と、インバータ制御部15とを備える。
制御部11は、電動機駆動制御システムSの各部を当該各部の機能に応じて制御し、電動機駆動制御システムS全体の制御を司るものである。
電圧パターン生成部12は、インバータ回路IVで出力可能な時系列な電圧パターンを、互いに異なるように複数、生成するものである。すなわち、電圧パターン生成部12は、インバータ回路IVで出力可能な時系列な電圧パターンを、互いに異なるように複数、生成する電圧パターン生成処理を実施する。インバータ回路IVは、本実施形態では、上述のように、2レベル3相インバータであるので、第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6のスイッチング態様に応じて、図5に示すように、23=8通りの電圧を出力できる。なお、電圧ベクトルV0は、第1ないし第3スイッチング素子Tr1~Tr3がオフであって第4ないし第6スイッチング素子Tr4~Tr6がオンであり、電動機Mに給電されない場合(V0=(0、0、0))である。電圧ベクトルV7は、第1ないし第3スイッチング素子Tr1~Tr3がオンであって第4ないし第6スイッチング素子Tr4~Tr6がオフであり、電動機Mに給電されない場合(V7=(0、0、0))である。時系列な電圧パターンは、予測する制御周期数である予測ホライズン、および、制御入力である電圧を可変とする制御周期数である制御ホライズンによって決定される。このため、モデル予測制御部MCには、予め予測ホライズンの数値および制御ホライズンの数値が、モデル予測制御の仕様等に応じて適宜に予め設定され、電圧パターン生成部12は、インバータ回路IVで出力可能な電圧(上述では8通り)、予測ホライズンの数値および制御ホライズンの数値に応じて互いに異なる複数の時系列な電圧パターンを生成する。図6には、一例として、予測ホライズンが2であり、制御ホライズンが1である場合のインバータ回路IVで出力可能な全ての時系列な電圧パターンが樹形図で図示されている。図6では、現在のN番目の制御における電圧に対し、予測ホライズンが2であるので、次の(N+1)番目の制御における電圧と、さらに次の(N+2)番目の制御における電圧とが予測され、制御ホライズンが1であるので、インバータ回路IVで出力可能な全ての時系列な電圧パターンは、現在のN番目の制御における電圧から、次の(N+1)番目の制御では、8通りの電圧V0~V8に分岐し、さらに次の(N+2)番目の制御では、各電圧V0~V8から、それぞれ当該電圧V0~V8に維持された8組の時系列な電圧パターンである。なお、他の一例として、予測ホライズンが2であり、制御ホライズンが2である場合、現在のN番目の制御における電圧に対し、予測ホライズンが2であるので、次の(N+1)番目の制御における電圧と、さらに次の(N+2)番目の制御における電圧とが予測され、制御ホライズンが2であるので、インバータ回路IVで出力可能な全ての時系列な電圧パターンは、(N+1)番目の制御および(N+2)番目の制御それぞれで8通りの電圧V0~V8に分岐し、64組の時系列な電圧パターンである。
速度予測部13は、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、負荷トルク推定部TEで推定された負荷トルクが電動機Mに働いている場合であって、当該時系列な電圧パターンが電動機Mに入力された場合における電動機Mの回転速度を回転速度予測値として予測するものである。すなわち、速度予測部13は、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、負荷トルク推定部TEで推定された負荷トルクが電動機Mに働いている場合であって、当該時系列な電圧パターンが電動機Mに入力された場合における電動機Mの回転速度を回転速度予測値として予測する速度予測処理を実施する。より具体的には、速度予測部13は、次式7によってd軸電流idを求め、次式8によってq軸電流iqを求める。そして、速度予測部13は、次式9によって電動機Mの出力トルクTeを求め、次式10によって回転速度予測値(上にハット(^)付きのωm)を求める。ここで、id(k)は、k番目の制御におけるd軸電流であり、iq(k)は、k番目の制御におけるq軸電流であり、Ldは、d軸インダクタンスであり、Lqは、q軸インダクタンスである。なお、本実施形態では、電動機Mが永久磁石式同期電動機であるので、Ld=Lq=Lとなる。Rは、電動機Mの巻線抵抗であり、ωe(k)は、k番目の制御における電動機Mの電気角速度であり、vd(k)は、k番目の制御におけるd軸電圧であり、vq(k)は、k番目の制御におけるq軸電圧であり、Ψは、電動機Mにおける永久磁石の鎖交磁束であり、Dは、電動機Mにおける回転子の動摩擦抵抗である。
上述の例では、予測ホライズンが2であるので、速度予測部13は、8組の時系列な電圧パターンそれぞれについて、現在のk番目の制御に対し、2制御周期先までの、dq軸での電流予測値[idq(k+1)、idq(k+2)]および回転速度予測値[上にハット(^)付きのω(k+1)、上にハット(^)付きのω(k+2)]を求める。なお、電流ベクトルidq(k)は、[id(k)、iq(k)]Tである(idq(k)=[id(k)、iq(k)]T)。
電圧パターン選択部14は、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンの中から、速度予測部13で予測された電動機Mの各回転速度予測値の中で最も高い評価の回転速度予測値に対応する時系列な電圧パターンを選択するものである。すなわち、電圧パターン選択部14は、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンの中から、速度予測部13で予測された電動機Mの各回転速度予測値の中で最も高い評価の回転速度予測値に対応する時系列な電圧パターンを選択する電圧パターン選択処理を実施する。より具体的には、電圧パターン選択部14は、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、速度予測部13で予測された電動機Mの電流予測値および回転速度予測値を、例えば次式11の評価式gに用いることによって、前記時系列な電圧パターン定量的に評価し、前記複数の時系列な電圧パターンの中から、最も高い評価の電流予測値および回転速度予測値に対応する時系列な電圧パターンを選択する。式11の評価式gでは、評価値が小さいほど、評価が高い。したがって、前記複数の時系列な電圧パターンの中から、最も小さい評価値を与える電流予測値および回転速度予測値に対応する時系列な電圧パターンが最適な時系列な電圧パターンとして選択される。なお、モデル予測制御部MCには、外部から制御目標の回転速度ωm
*が入力され、設定される。
上記式11の評価式gは、速度制御の上で重要となることから、速度偏差を第1項とし、永久磁石式同期電動機の場合、無駄な給電を防止するために、トルクの発生に寄与しないd軸電流idを0に保持することが重要であることから、電流偏差を第2項とし、これら第1項および第2項を係数a、bで線形結合することで構成されている。したがって、第1項と第2項とにおける相対的な重要度に応じて係数a、bが予め適宜に決定される。言い換えれば、係数a、bで第1項と第2項とにおける相対的な重要度が調整できる。すなわち、電動機Mの制御で、速度偏差が電流偏差より相対的に重要である場合には、評価式g中の第1項と係数aを乗じた値が、第2項と係数bを乗じた値よりも十分大きい値となるよう係数a、係数bを設定し、逆に、電動機Mの制御で、電流偏差が速度偏差より相対的に重要である場合には、評価式g中の第2項と係数bを乗じた値が、第1項と係数aを乗じた値よりも十分大きい値となるよう係数a、係数bを設定する。
インバータ制御部15は、電圧パターン選択部14で選択された時系列な電圧パターンに基づいて、インバータ回路IVを制御するものである。すなわち、インバータ制御部15は、電圧パターン選択部14で選択された時系列な電圧パターンに基づいて、インバータ回路IVを制御するインバータ制御処理を実施する。より具体的には、インバータ制御部15は、現在、k番目の制御である場合に、電圧パターン選択部14で選択された時系列な電圧パターンにおける次回の(k+1)番目の制御での電圧を目標電圧として、この目標電圧に対応する目標のU相電流、V相電流およびW相電流をインバータ回路IVから出力するように、インバータ回路IVにおける第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6の各制御端子へ制御信号を出力する。
そして、制御部11は、前記速度出力処理、前記負荷トルク推定処理、前記電圧パターン生成処理、前記速度予測処理、前記電圧パターン選択処理およびインバータ制御処理を、回転速度処理部RSC、負荷トルク推定部TE、電圧パターン生成部12、速度予測部13、電圧パターン選択部14およびインバータ制御部15に、所定の制御周期で繰り返し実施させる。
このようなモデル予測制御部MC、3相2相変換部CV、負荷トルク推定部TEおよび回転速度処理部RSCは、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよびその周辺回路を備えて構成されるマイクロプロセッサで構成可能であり、モデル予測制御部MCにおける制御部11、電圧パターン生成部12、速度予測部13、電圧パターン選択部14およびインバータ制御部、3相2相変換部CV、負荷トルク推定部TEにおける減算部31、ローパスフィルタ部32、パラメータ演算部33およびゲイン演算部34、ならびに、回転速度処理部RSCは、所定のプログラムの実行により、前記CPUに機能的に構成される。
本実施形態では、回転角度測定部VSおよび回転速度処理部RSCが、電動機の回転速度を回転速度現在値として求める速度出力部の一例に相当し、モデル予測制御部MC、電流測定部CS、回転角度測定部VS、3相2相変換部CV、負荷トルク推定部TEおよび回転速度処理部RSCが、インバータ回路の出力で駆動される電動機を制御する電動機駆動制御部の一例に相当する。
次に、本実施形態の動作について説明する。図8は、前記電動機駆動制御システムにおける動作を示すフローチャートである。図9は、負荷トルクの更新量を調整するためのゲインを求めるためのフローチャートである。図10は、速度制御のシミュレーション結果を示す図である。
まず、負荷トルクのゲインKの設定について説明する。この負荷トルクのゲインKの設定では、図9において、前記ゲインKが適当な値に初期設定される(S31)。次に、式6の伝達関数H(z)における極piが求められる(S32、上述の例では、i=1、2、3、4)。次に、全ての極piで、その大きさが1以内であるか否かが判定される(S33)。
この判定の結果、全ての極piで、その大きさが1以内である場合(Yes)には、次に、処理S34が実施され、少なくとも1つの極piで、その大きさが1以内ではない場合(No)には、次に、処理S36が実施される。
この処理S36では、前記ゲインKが、予め設定された所定値△K1だけ減算され(K←K-△K1)、処理が処理S32に戻される。
一方、前記処理S34では、式6の伝達関数H(z)におけるステップ応答の収束時間が、予め設定された所定値Tco以内か否かが判定される。前記所定値Tcoは、当該電動機駆動制御システムSの仕様で許容される応答時間等に応じて適宜に設定される。
この判定の結果、前記収束時間が前記所定値Tco以内である(Yes)には、次に、処理S35が実施され、前記収束時間が前記所定値Tco以内ではない(No)には、次に、処理S37が実施される。
この処理S37では、前記ゲインKが、予め設定された所定値△K2だけ加算され(K←K+△K2)、処理が処理S32に戻される。なお、前記所定値△K1と前記所定値△K2とは、同値でも異値でも良い。
一方、前記処理S35では、式6の伝達関数H(z)におけるステップ応答のオーバーシュート量(減衰振動におけるオーバーシュートの最大振幅幅)およびアンダーシュート量(前記減衰振動におけるアンダーシュートの最大振幅幅)が、予め設定された所定値OU以内か否かが判定される。前記所定値OUは、当該電動機駆動制御システムSの仕様で許容される減衰振動幅等に応じて適宜に設定される。
この判定の結果、前記オーバーシュート量およびアンダーシュート量が前記所定値OU以内である(Yes)には、このときの値で前記ゲインKが決定され、処理が終了され、前記オーバーシュート量およびアンダーシュート量が前記所定値OU以内ではない(No)には、次に、処理S36が実施された後に、処理が処理S32に戻される。
このような負荷トルクの更新量を調整するためのゲインKの設定処理は、例えばユーザによって実施され、電動機駆動制御システムSに設定されて良く、あるいは、前記CUPに機能的に構成される前記係数設定部(不図示)によって自動的に実行され、電動機駆動制御システムSに設定されて良い。
次に、モデル予測制御による電動機駆動制御システムSの動作について説明する。このような電動機駆動制御システムSでは、電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。そして、例えば、プログラムの実行によって、前記CPUには、モデル予測制御部MC、3相2相変換部CV、負荷トルク推定部TEおよび回転速度処理部RSCが機能的に構成され、モデル予測制御部MCには、制御部11、電圧パターン生成部12、速度予測部13、電圧パターン選択部14およびインバータ制御部15が機能的に構成され、負荷トルク推定部TEには、減算部31、ローパスフィルタ部32、パラメータ演算部33およびゲイン演算部34が機能的に構成される。
そして、図8に示す処理S11ないし処理S17の各処理が、電動機Mの駆動が停止されるまで、制御部11によって所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。
図8において、まず、今回(k番目)において、電流測定部CSによって測定された各相の電流値が取得され、回転角度測定部VSによって測定された回転角度の値が取得される(S11)。電流測定部CSは、この取得した各相の電流値を、3相2相変換部CVへ出力し、回転角度測定部VSは、この取得した回転角度値を、3相2相変換部CVおよび回転速度処理部RSCそれぞれへ出力する。
続いて、3相2相変換部CVは、処理S11で取得された各相の電流値および回転角度値から、d軸電流idおよびq軸電流iqを求め、この求めたd軸電流idおよびq軸電流iqをモデル予測制御部MCへ出力し、回転速度処理部RSCは、処理S11で取得された各相の電流値および回転角度値から、回転速度ωmを求め、この求めた回転速度ωmを、回転速度現在値ωm(=ω(k))としてモデル予測制御部MCおよび負荷トルク推定部TEそれぞれへ出力する(S12、速度出力処理)。
続いて、負荷トルク推定部TEは、モデル予測制御部MCの速度予測部13で過去に予測された現在の回転速度予測値(上にハット付きのωm=上にハット付きのω(k))に基づいて負荷トルクを推定する(S13、負荷トルク推定処理)。本実施形態では、負荷トルク推定部TEは、減算部31によって、制御周期の1つ前に処理S15で求められた現在の回転速度予測値(上にハット付きのω(k))と処理S12で回転速度処理部RSCによって求められた現在の回転速度現在値ω(k)との差分を求め、この求めた差分を、ローパスフィルタ部32でフィルタリング(濾波)し、このフィルタリングした前記差分に、パラメータ演算部33によって、パラメータ(-J/Ts)を乗算し、このパラメータ(-J/Ts)を乗算した前記差分、上述のように設定された負荷トルクの更新量を調整するためのゲインKを乗算し、この乗算結果をモデル予測制御部MCへ出力する。
続いて、モデル予測制御部MCは、電圧パターン生成部12によって、予め設定された予測ホライズンの値および制御ホライズンの値に応じて、インバータ回路IVで出力可能な時系列な電圧パターンを、互いに異なるように複数、生成する(S14、電圧パターン生成処理)。
続いて、モデル予測制御部MCは、速度予測部13によって、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、負荷トルク推定部TEで推定された負荷トルクが電動機Mに働いている場合であって、当該時系列な電圧パターンが電動機Mに入力された場合における電動機Mの回転速度を回転速度予測値として予測する(S15、速度予測処理)。より具体的には、速度予測部13は、次式7によってd軸電流idを求め、次式8によってq軸電流iqを求め、次式9によって電動機Mの出力トルクTeを求め、次式10によって回転速度予測値(上にハット付きのωm)を求める。上述の例では、速度予測部13は、8組の時系列な電圧パターンそれぞれについて、現在のk番目の制御に対し、2制御周期先までの、dq軸での電流予測値[idq(k+1)、idq(k+2)]および回転速度予測値[上にハット(^)付きのω(k+1)、上にハット(^)付きのω(k+2)]を求める。
続いて、モデル予測制御部MCは、電圧パターン選択部14によって、式11の評価式gを用いることで、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンの中から、処理S15で速度予測部13によって予測された電動機Mの各回転速度予測値の中で最も高い評価の回転速度予測値に対応する時系列な電圧パターンを選択する(S16、電圧パターン選択処理)。
続いて、モデル予測制御部MCは、インバータ制御部15によって、インバータ回路IVにおける第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6の各制御端子へ制御信号を出力することで、電圧パターン選択部14で選択された時系列な電圧パターンに基づいて、インバータ回路IVを制御して電動機Mを駆動する(S17、インバータ制御処理)。
このように電動機Mが、目標速度ωm
*となるように、モデル予測制御で制御され、駆動される。
シミュレーション(数値実験)によって、本実施形態における電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法の効果が検証された。その一実施例の速度制御のシミュレーション結果がその比較例と共に図10に示されている。図10Aは、本実施形態における電動機駆動制御システムSによる速度制御のシミュレーション結果を示し、図10Bは、比較例による速度制御のシミュレーション結果を示す。図10Aおよび図10Bにおける各横軸は、経過時間であり、それら各縦軸は、回転速度である。
比較例では、負荷トルクは、推定されず、負荷トルクの項は0とした。比較例では、図10Bに示すように、負荷トルクが印加されると、回転速度は、目標速度より低下してしまうが、本実施形態では、図10Aに示すように、負荷トルクが印加されても、回転速度は、略目標速度となっている。したがって、本実施形態では、負荷トルクが適切に推定されており、回転速度を予測する式10に用いることで、回転速度予測値がより精度高く予測できている。この結果、本実施形態では、適切な時系列な電圧パターンが選択でき、回転速度が目標速度の追従できている。
以上説明したように、本実施形態における電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法は、負荷トルクの推定に、過去に予測された現在の回転速度予測値を用いるので、従来のカルマンフィルタを用いる場合に較べてより少ない情報処理量で負荷トルクを推定でき、負荷トルクが働く使用条件でも、モデル予測制御で電動機を駆動制御できる。このため、演算処理能力の比較的低い、安価な演算処理装置でモデル予測制御を実現する場合でも、上記電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法は、略リアルタイムで電動機を駆動制御できる。
上記電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法は、速度予測部13で過去に予測された現在の回転速度予測値と回転速度現在値との差分に、所定の係数を乗じた差分乗算値を、制御周期ごとに積算することで負荷トルクを推定するので、簡便に、より少ない情報処理量で負荷トルクを推定でき、モデル予測制御で電動機Mを駆動制御できる。
上記電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法は、図9を用いて説明したように、制御系が安定するように負荷トルクの更新量を調整するためのゲインKを適切に設定できる。このため、不適切な前記ゲインKによって駆動の際に生じる発振や不安定化が事前に回避できる。
なお、上述の実施形態では、電圧パターン選択部14は、例えば式11に示すように、制御目標の回転速度ωm
*を含む評価関数の評価式gを用いることによって前記評価を行い、モデル予測制御部MCには、制御目標の回転速度ωm
*が外部から入力され設定されたが、これに限定されるものではなく、例えば、電動機駆動制御システムSおよび電動機駆動制御装置は、現在以前の実績値に基づいて将来の制御目標の回転速度を予測する制御目標予測部をさらに備えても良い。このような制御目標予測部16は、例えば、図2に破線で示すように、モデル予測制御部MCにさらに備えられ、例えば前記CPUに機能的に構成される。制御目標の回転速度ωm
*が、例えば固定値(一定値)であったり、例えば操作スイッチでオペレータによって指示入力された所定値であったりする場合、上述の実施形態でも対処可能であるが、制御目標の回転速度ωm
*が、変化するようにオペレータによって指示入力された可変値である場合、制御目標の回転速度ωm
*の変化を検知してからこれに対応することになるので、応答遅れが生じる虞がある。このような電動機駆動制御システムSおよび電動機駆動制御装置は、前記制御目標予測部をさらに備えるので、制御目標の回転速度が変化する場合でも、前記応答遅れを低減でき、より適切に制御できる。
この制御目標予測部16は、例えば、現在以前の実績値における変化量に基づいて将来の制御目標の回転速度を予測するものである(第1変形形態)。
図11は、前記電動機駆動制御システムの第1変形形態を説明するための図である。図11の横軸は、前記所定の制御周期で繰り返し制御される制御回数を示し、k番目が現在の制御回数である。図11の縦軸は、制御目標の回転速度ωm
*である。黒丸(●)は、現在以前の実績値である制御目標の回転速度ωm
*を示し(ここではk番目および(k-1)番目の各制御における制御目標の各回転速度ωm
*(k)、ωm
*(k-1))、白丸(○)は、将来における制御目標の各回転速度ωm
*を示す(ここでは(k+1)番目および(k+2)番目の各制御における制御目標の各回転速度ωm
*(k+1)、ωm
*(k+2))。
この制御目標予測部16では、現在以前の実績値である制御目標の回転速度ωm
*(k)、ωm
*(k-1)、・・・は、将来の制御目標の回転速度ωm
*を演算するために必要なデータ分だけ少なくとも記憶される。そして、制御目標予測部16は、現在以前の実績値である制御目標の回転速度ωm
*(k)、ωm
*(k-1)、・・・から、1制御回数当たりの、制御目標の回転速度ωm
*における変化量を求め、この求めた変化量だけ制御目標の回転速度ωm
*を変化させることで、将来における制御目標の各回転速度ωm
*を求める。より具体的には、例えば、図11に示すように、現在以前の実績値における変化量は、一定値であり、将来もこの一定値で、将来における制御目標の各回転速度ωm
*も変化する場合、制御目標予測部16は、次式12によって将来における制御目標の各回転速度ωm
*を求める。
電圧パターン選択部14は、上述のように式11の評価式gを用いて評価する場合、前記式12で求めたωm
*を用いる。
あるいは、例えば、制御目標予測部16は、現在以前の実績値を外挿することによって将来の制御目標の回転速度を予測するものである(第2変形形態)。より具体的には、制御目標予測部16は、例えば、次式13で示すラグランジュ外挿を用いることによって、将来における制御目標の各回転速度ωm
*を求める。
ここで、Nは、次数を示す。例えば、次数が2であり、2制御周期先まで予測する場合、前記式13を用いることによって、次式14-1、14-2のように、(k+1)番目および(k+2)番目における制御目標の各回転速度ωm
*(k+1)、ωm
*(k+2)が求められる。なお、次数Nは、2に限定されるものではなく、前記CPUの演算能力に応じて適宜に設定されてよい。
電圧パターン選択部14は、上述のように式11の評価式gを用いて評価する場合、前記式13で求めたωm
*を用いる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。