JP2015221845A - 複合体の製造方法、及び複合体 - Google Patents

複合体の製造方法、及び複合体 Download PDF

Info

Publication number
JP2015221845A
JP2015221845A JP2014105984A JP2014105984A JP2015221845A JP 2015221845 A JP2015221845 A JP 2015221845A JP 2014105984 A JP2014105984 A JP 2014105984A JP 2014105984 A JP2014105984 A JP 2014105984A JP 2015221845 A JP2015221845 A JP 2015221845A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cellulose
composite
fine particles
metal fine
flat metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014105984A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6421455B2 (ja
JP2015221845A5 (ja
Inventor
佑美 林
Yumi Hayashi
佑美 林
拓也 磯貝
Takuya Isogai
拓也 磯貝
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toppan Inc
Original Assignee
Toppan Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toppan Printing Co Ltd filed Critical Toppan Printing Co Ltd
Priority to JP2014105984A priority Critical patent/JP6421455B2/ja
Publication of JP2015221845A publication Critical patent/JP2015221845A/ja
Publication of JP2015221845A5 publication Critical patent/JP2015221845A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6421455B2 publication Critical patent/JP6421455B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

【課題】機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学材料への適用可能性を有する、新規な平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を、分散液とした際に低粘度となるように、提供する。
【解決手段】(工程1)天然セルロースを、N−オキシル化合物を用いて35℃以上50℃以下の温度で酸化反応を行い、酸化セルロースを得る酸化工程と、(工程2)前記酸化セルロースを解繊して微細化セルロースの分散液を得る分散化工程と、(工程3)微細化工程により得られた微細化セルロース分散液中に金属塩を添加して還元することで、平板状金属微粒子を成長させるとともに、前記平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を形成する複合体形成工程とを含む、複合体の製造方法とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、平板状の金属微粒子と微細化されたセルロースとの複合体に関する。
ナノサイズの粒子(以下微粒子という)は、バルクには見られない性質を有する。例えば、粒子が小さくなると粒子の総表面積が大きくなるため、触媒性能が高くなる。粒子がナノサイズになると融点が低下するため、低温で焼成することが可能となる。更に、粒子の大きさにより光学特性にも大きな変化が起こる。屈折率が小さい酸化物などは、可視光の波長領域の1/10以下のサイズになると散乱が非常に小さくなり、液体などに均一に分散させると透明になる。金属微粒子の場合は、粒子中の自由電子の集団振動が特定の波長と共鳴して吸収し、様々な色調が現れる。これらの特徴により、微粒子は光学フィルター、色材、触媒、抗菌剤等にも利用できる。
例えば、特許文献1では、有機配位子により安定化され、所定の原子数で金原子を有する金属クラスター化合物を担体上に複数担持させた後処理することにより、金原子を複数個集合させてなるクラスターを、担体上に担持させてなる粒子径が10nm以下の金属クラスター触媒を開示している。この金属クラスター触媒は、高い触媒活性と選択性をもって化学反応を促進、制御することができる。特許文献2には、ポリオール法を用いた板状銀ナノ粒子の製造例が開示されている。
一方、近年、化石資源の枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料である天然高分子を用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。また、環境負荷の観点から、低エネルギーで形状の制御されたナノサイズの粒子を製造することが求められている。しかし、特許文献1は、環境調和型材料について特筆していない。
例えば、生分解性を有する環境に優しい天然高分子材料としては、セルロース等の植物材料が知られている。植物や木材の主成分であるセルロースは、地球上に最も大量に蓄積された天然高分子材料がある。木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になって高結晶性でナノメートルオーダーの繊維径をもつ微細繊維(ミクロフィブリル)を形成しており、さらに多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。
このセルロース繊維を、繊維径がナノメートルオーダーになるまで微細化(ナノファイバー化)して、すなわちセルロースナノファイバーとして、利用する方法が知られる。N−オキシル化合物を酸化触媒として、セルロースの水酸基の一部がカルボキシ基およびアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基に酸化された、最大繊維径1000nm以下かつ数平均繊維径が2〜150nmである、セルロースI型結晶構造を有する微細化セルロースとして、セルロースシングルナノファイバー(以下CSNF)が知られる(例えば、特許文献3参照)。CSNFを用いた例として、特許文献4には微細化セルロースに金属微粒子を担持させた複合体およびその用途が開示されている。
通常、CSNFは、N−オキシル化合物を酸化触媒としてパルプを酸化し、機械的な素処理によって解繊することで製造できる。しかし、CSNFは高アスペクト比であり、解繊が進行する際に分散液が著しく増粘し、解繊に用いた機器の構造によっては機器が停止・破損する恐れがある。このため通常機械解繊処理する際の濃度は1%程度までしか上げられず、生産性が良好でない。また、高粘度なCSNFは取り扱いが難しく、塗液として用いる際も作業性に乏しい。
このような理由から、高粘度なCSNFを用いる場合は、低濃度で用いる必要がある。しかし、この場合、複合組成物や積層体形成用組成物として用いるには溶媒過多となって作業効率の低下や乾燥エネルギーの増加といった問題が生じ、経済性を損なってしまう。
CSNF濃度を高くしても高粘度とならず、流動性が良好なCSNF分散液の製造法として以下の特許が開示されている。特許文献5には原料パルプを予め酸処理した後TEMPOを行うことによって低粘度のCSNF分散液を製造する方法が開示されている。特許文献6には原料パルプを予め酵素処理した後TEMPOを行うことによって低粘度のCSNF分散液を製造する方法が開示されている。特許文献7にはTEMPO処理後のパルプをさらにアルカリ処理したのち機械解繊することで低粘度のCSNF分散液を製造する方法が開示されている。特許文献8にはTEMPO処理後のパルプをさらに過酸化水素およびオゾンで処理したのち機械解繊することで低粘度のCSNF分散液を製造する方法が開示されている。
しかしながら、前項の特許群に記載の手法はどれもN−オキシル化合物を触媒とした酸化以外に新たな工程を設けるものである。したがって、新たな洗浄工程や廃液処理工程を設ける必要が生じるため、経済性を損なってしまう。
国際公開第2013/137323号 特開2009−144188号公報 特開2008−1728号公報 国際公開第2010/095574号 特開2010−243014号公報 特開2009−298972号公報 特開2012−214717号公報 特開2010−235681号公報
特許文献2に記載のポリオール法を用いて板状銀ナノ粒子を製造するには、有機溶媒系で高温の反応を必要とし、反応時間も長いことから環境への負荷が大きくなってしまうという問題があった。また、近赤外線吸収材料として用いるにはアスペクト比を増大させる必要があるが、その結果粒子サイズが増大してしまい、銀ナノ粒子自体が沈降しやすくなるという本質的な問題があった。
また、特許文献4には微細化セルロースに金属微粒子を担持させた複合体およびその用途が開示されているが、金属ナノ粒子の形状の制御の可能性や、機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学材料への適用可能性については、何ら開示も示唆もされていないのが実情であった。
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学材料への適用可能性を有する、新規な平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を、分散液とした際に低粘度となるように、提供することを課題とする。
本発明の一態様は、(工程1)天然セルロースを、N−オキシル化合物を用いて35℃以上50℃以下の温度で酸化反応を行い、酸化セルロースを得る酸化工程と、(工程2)前記酸化セルロースを解繊して微細化セルロースの分散液を得る分散化工程と、(工程3)微細化工程により得られた微細化セルロース分散液中に金属塩を添加して還元することで、平板状金属微粒子を成長させるとともに、前記平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を形成する複合体形成工程とを含む、複合体の製造方法である。
また、本発明の一態様は、上述の方法により製造された、複合体である。
また、本発明の一態様は、平板状金属微粒子と少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化され、平板状金属微粒子は、少なくとも1種類以上の金属又はそれらの化合物であり、前記微細化セルロースのそれぞれは、少なくとも一部又は全部が前記平板状金属微粒子の内部に取り込まれるとともに、残部が当該平板状金属微粒子の表面に露出した複合体であって、
前記複合体を含有する分散液を、
金属微粒子の濃度が2.5×10−4mol/lになるように調整し、
光路長1cmにおいて分散媒をリファレンスとしたときに、
500nm以上2500nm以下の波長領域に透過率が極小となる極小波長を有し、
かつ前記極小波長における透過率が30%以下であることを特徴とする複合体である。
本発明により、微細化セルロースのそれぞれが、少なくとも一部又は全部が平板状金属微粒子の内部に取り込まれるとともに、残部が平板状金属微粒子の表面に露出する構成を有し、機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学材料への適用可能性を有する、新規な平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を、分散液とした際に低粘度となるように、提供することが出来る。
本発明を適用した一実施形態である複合体の製造方法の、工程の一部を説明するための模式図である。 本発明を適用した一実施形態である複合体の一例を示す模式図である。 本発明の複合体を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察結果を示しており、(a)はSEM画像であり、(B)は、(A)の模式図である。 本発明の複合体を走査透過型電子顕微鏡(STEM)により拡大して観察した結果を示しており、(A)はSTEM画像であり、(B)は、(A)の模式図である。 本発明の複合体を走査型電子顕微鏡(SEM)により拡大して観察した結果を示しており、(A)はSEM画像であり、(B)は、(A)の模式図である。 本発明の複合体を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって断面方向から観察した結果を示す図(TEM画像)である。
本発明において得られる複合体は、
(工程1)天然セルロースを原料とし、N−オキシル化合物を用いて35℃以上50℃以下の温度で酸化反応を行い、酸化セルロースを得る、酸化工程と、
(工程2)前記酸化セルロースを軽微な機械処理によって解繊して微細化セルロースの水分散液を得る、分散化工程と、
(工程3)微細化工程により得られた微細化セルロース分散液中に金属イオンを含有させ、還元することで、平板状金属微粒子を成長させるとともに、前記平板状金属微粒子と微細化セルロースとを複合化する、複合体形成工程と、を含む方法で製造される。
(工程1)により天然セルロースは結晶表面のセルロース分子鎖が持つグルコピラノース単位の第6位の一級水酸基が高い選択性で酸化され、アルデヒド基を経てカルボキシ基に変換される。
このように結晶表面に導入されたカルボキシ基を有する酸化セルロースを(工程2)にて機械処理によって微細化すると、微細化セルロース間に静電的な反発力が働くため、水性媒体中でミクロフィブリル単位(短軸径約3nm)にまで分散したCSNFを得ることができる。
続いて、(工程3)では、結晶表面に規則正しく導入されたカルボキシ基を有する微細化セルロースの分散液に金属塩を添加し、カルボキシ基に金属イオンが配位し、還元すると、微細化セルロースが金属微粒子と相互作用して金属微粒子の形態や凝集に影響を及ぼし、形状やサイズの制御された複合体が得られると考えられる。
特に、(工程1)にてN−オキシル化合物を用いて35℃以上50以下の温度で酸化反応を行うことで、工程を増やすことなく、結晶構造を維持したまま低粘度なCSNFを得ることができる。低粘度なCSNFを用いることで、(工程3)にてより高い濃度のCSNFを用いて複合体を形成でき、また作業性が良いため生産性が向上する。また、低粘度なCSNFを用いることで安定的に生産性よく複合体を製造できる。
また、本発明によって製造される複合体は、平板状の金属微粒子と少なくとも1つ以上の微細化セルロースとが複合化され、平板状金属微粒子は、少なくとも1種類以上の金属又はそれらの化合物であり、微細化セルロースのそれぞれは、少なくとも一部又は全部が平板状金属微粒子の内部に取り込まれるとともに、残部が平板状金属微粒子の表面に露出している。
本発明によって、環境調和型材料を用い、環境負荷が低く、また簡便な操作で、低エネルギー、低コストで、煩雑な工程を含まずに、分散性が良好な形状やサイズが制御された複合体を製造できる。
金属微粒子表面の自由電子は、光等の外部電場により集団的に振動を起こすことがある(表面プラズモン)。電子は電荷を持った粒子であるため、電子が振動を起こすと周囲に電場を発生する。金属微粒子では、自由電子の振動を起こすことにより生じる電場と外部電場が(光等)共鳴する現象が起きる(表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR))。この表面プラズモン共鳴により、特定の波長域の光の吸収が起こる。この光吸収波長域は、ロッド状であれば長軸/短軸のアスペクト比に依存し、平板状であれば長径/厚みのアスペクト比に依存する。アスペクト比が高いほど長波長領域に吸収を有するため、サイズや形状を制御することにより特定の波長を吸収することができる。
本発明によって製造される複合体においても平板状金属微粒子の形状やサイズを制御することで、特定の波長領域に吸収を有し、光学フィルター、遮熱フィルム、色材等に応用できる。また、複合体を形成する金属微粒子の特性によって、触媒、抗菌剤等にも利用できる。
(工程1;酸化工程)
本発明において原料として用いる天然セルロースとしては、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプ、具体的には漂白及び未漂白クラフト木材パルプ、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプ等をはじめ、古紙、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、綿セルロース、麻セルロース並びにこれらの混合物を用いることができ、これらを物理的、化学的処理した物質の何れを用いてもよい。材料調達の容易さおよび価格の面から各種木材パルプを原料とすることが好ましい。
本発明において得られる微細化セルロースは前記木質材料由来の天然セルロースを原料とし、(A)N−オキシル化合物を用いて酸化反応を行い、酸化セルロースを得る工程(以下必要に応じて「酸化工程」と称する)と、(B)前記酸化セルロースを解繊して微細化セルロースの分散液を得る工程(以下必要に応じて「分散化工程」と称する)によって製造される。この際、反応系内の温度を35℃以上50℃以下の範囲に維持したまま(A)前記N−オキシル化合物を用いた酸化反応を行うことで、低粘度の微細化セルロースの分散液を得ることが可能となる。
なお、酸化セルロースに導入するカルボキシ基の含有量としては、、該微細化セルロースの乾燥重量1g当たり0.1mmol以上3.0mmol以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5mmol以上2.0mmol以下である。カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると分散性が悪く、0.1mmol/g以上であると、カルボキシ基による静電反発により分散安定性が良好となる。3.0mmol/g以下であると、微細化セルロースの結晶構造が充分に保持され、金属微粒子の形状制御性能が良好である。
N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いたセルロースの酸化手法は、水系の比較的温和な条件で、可能な限りセルロースの結晶構造を保ちながら、アルコール性一級炭素を選択的に酸化することが可能である。前記N−オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。その中でも、TEMPOが好ましい。N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01〜5.0質量%程度である。
N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N−オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、該オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。前記共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。前記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜200質量%程度である。
前記N−オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。該化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。該化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜50質量%程度である。
前記酸化反応時の反応系のpHは、9〜11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率よく進めることができる。前記pH領域の範囲外となると、N−オキシル化合物による酸化効率が大幅に低下することが知られている。前記酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9〜11に保つことが好ましい。反応系のpHを9〜11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
前記酸化反応の反応温度は、30〜50℃が好ましく、35〜50℃がより好ましい。該温度領域で前記酸化反応を行うことが本発明のポイントとなる。通常のN−オキシルによる酸化反応自体は4℃〜30℃の領域でも十分に進行するが、驚くべきことに、該35〜50℃の温度領域で酸化反応を行うと、セルロース繊維の結晶構造が維持されたまま得られる微微細化セルロースの分散液が低粘度化することが判明した。これはセルロースミクロフィブリルの長軸方向に周期的に非晶領域が存在するため、N−オキシルによる酸化反応が該非晶領域に進行し、さらに生成したグルクロン酸ユニットが該反応温度領域においてpH9〜11の条件下で不安定であるため分解されてしまい、その結果短繊維化が進行するためであると考えられる。なお、50℃を超えると副反応により次亜塩素酸ナトリウムが自己分解するため酸化反応自体が停止してしまう。
前記酸化処理における酸化の程度は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定できるが、少なくとも酸化反応の際に用いる水酸化ナトリウムの添加量が原料となる天然セルロースの乾燥重量当たり1.0mmol/g以上5.0mmol/g以下であることが好ましい。1.0mmol/g以下では導入されるカルボキシ基量が少なくなってしまい、CSNFとして分散するために必要なミクロフィブリル間の十分な静電反発力が得られない。5.0mmol/g以上となると、非晶領域以外の分解が進行し、ミクロフィブリル表面構造が失われる上、酸化処理前後の収率が著しく低下してしまう。
前記N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系に第一級アルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは前記の範囲内に保つことが好ましい。添加する第一級アルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量の第一級アルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては蒸留水が好ましい。
(工程2;分散化工程)
微細化工程は、前記酸化セルロースを軽微な機械処理によって解繊して微細化セルロースの分散液を得る工程である。
微細化セルロースの分散液を得る方法としてはまず、セルロースに水性媒体を加えて懸濁させる。水性媒体としては、前記と同様のものが挙げられ、水が特に好ましい。必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロースの分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、前記酸化工程の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。続いて該懸濁液に物理的解繊処理を施して、微細化セルロースの分散液を得る。
物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を例えば前記TEMPO酸化セルロースに行うことで、懸濁液中のセルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCSNFの分散液を得ることができる。
なお微細化セルロースの数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細化セルロース繊維の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
上記のようにして得られた微細化セルロースは、結晶構造が維持されているため、安定的に複合体を製造できる。
また、微細化セルロースを含む分散液は低粘度であるため、作業性がよく、高濃度の状態でも流動性が良好であるため、微細化セルロースを高濃度で用いることができ、複合体の生産性が向上する。
微細化セルロースを低粘度化する方法は、特許文献5から特許文献8に記載であるが、いずれもTEMPO酸化以外に新たな工程を設けるものであり、それに伴う新たな洗浄工程や廃液処理工程を設ける必要が生じるため、結局のところ経済性を損なってしまう。本発明では、新たにTEMPO酸化以外の工程を設けずに、低粘度で、結晶構造が維持された微細化セルロースを得られる。
得られた分散液は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いることができる。前記微細化セルロースの分散液は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、特に限定されず、用途に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉等が挙げられる。
(微細化セルロース)
本発明の(工程1)と(工程2)を含有する方法で得られた微細化セルロースについて説明する。(工程1)、(工程2)にて得られた微細化セルロースを用いることで、環境負荷が低く、また簡便な操作で、低エネルギー、低コストで形状やサイズが制御された複合体を製造することができる。また、本発明により製造された複合体は、溶媒への分散性が良好である。
複合体は、微細化セルロースの分散液中に、金属イオン源である金属塩を添加し、還元析出させることで複合体を製造できる。還元されて生成する金属原子またはクラスターと微細化セルロースが相互作用を及ぼすことで複合体が生成すると考えられる。
サイズや形状を均一にするために、微細化セルロースは繊維状であることが好ましく、短軸径が均一であるCSNFは、複合体のサイズや形状の制御に好適である。また、CSNFは、繊維表面に規則的にカルボキシ基を有する。このカルボキシ基は、複合体を製造する際、金属イオンが配位して複合体生成の起点となると考えられるため、CSNFは複合体製造に好適である。
(工程1)と(工程2)とを含有する方法により、微細化セルロースは以下の粘度特性を有することが好ましい。微細化セルロースの0.5質量%分散液(25℃)が、せん断速度が1s−1のときに30mPa・s以上2000mPa・s以下であり、せん断速度が100s−1のときに20mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。
より好ましくは、0.5質量%分散液の粘度(25℃)が、せん断速度が1s−1のときに100mPa・s以上1000mPa・s以下であり、せん断速度が10s−1のときに30mPa・s以上80mPa・s以下であることが好ましい。
微細化セルロースの粘度特性が上記の範囲であると、低粘度化されているために高濃度で用いることができ、複合体を生産性よく製造することができる。また、粘度特性がこの範囲であれば、結晶構造や表面構造を維持し、金属との複合化の起点となるカルボキシ基を規則的に有するため、安定的に形状の制御された複合体を製造できる。
また、得られる複合体の形状やサイズは、微細化セルロースの長軸の径により影響を受ける。(工程1)、(工程2)を経て、繊維を短繊維化することで、複合体の形成に適した長軸径を有する微細化セルロースを得ることができる。
一般に、短軸や長軸の径を求める場合、透過型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡により軸径を測定し、平均値を得る方法が知られる。しかし、上記の方法は煩雑な作業を必要とする。粘度特性は長軸径や短軸径の軸径を反映し、より簡便に評価できる。このため、粘度特性を制御することで、複合体の形成に適した微細化セルロースを得ることができる。
同様に、微細化セルロース1.0質量%分散液(25℃)の粘度特性を、各周波数ωが10−1から102の範囲で評価できる。貯蔵弾性率をG’とし、損失弾性率をG’’とすると、G’>G’’であり、G’とG’’が共に100Pa以上102Pa以下であることが好ましい。更に、Large Amplitude Oscillatory Shear(LAOS)にて、微細化セルロース1.0質量%の分散液(25℃)の弾性応力(Elastic Stress)の最大値が0.5Pa以上、粘性応力(Viscous Stress)の最大値が4Pa以上であることが好ましい。
微細化セルロースの短軸の数平均短軸径が1nm以上50nm以下で、長軸の数平均長軸径は0.1μm以上10μm以下の繊維であることが好ましい。より好ましくは短軸の数平均短軸径は1nm以上10nm以下で、長軸の数平均長軸径は0.2μm以上2μm以下である。複合体の製造においては、短軸の数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース構造をとることが出来ず、複合体の製造において、安定的に複合体のサイズや形状を制御するのが難しくなる。一方、50nmを超えると、粘度が高くなり操作性が悪くなり、低濃度条件で複合体を製造するため複合体の生産性が悪くなる。
前記細セルロース繊維の結晶化度が70%以上であることが好ましい。結晶化度が70%未満であると剛直な微細化セルロース構造をとることができず、安定的に複合体を製造することができなくなる。
前記微細化セルロース中のカルボキシ基の含有量は、該微細化セルロースの乾燥重量1g当たり0.1mmol以上3.0mmol以下の範囲内である。0.5mmol以上2.0mmol以下であることがより好ましい。カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると分散性が悪く、0.1mmol/g以上であると、カルボキシ基による静電反発により分散安定性が良好となる。3.0mmol/g以下であると、微細化セルロースの結晶構造が充分に保持され、形状制御性能が良好である。
セルロース繊維がミクロフィブリル単位まで分散すると、660nmの光線透過率が高くなる。前記微細化セルロースが、固形分濃度1%の分散体において、光路長1cm、波長が660nmの光線透過率が分散媒をリファレンスとして80%以上であることが好ましい。
(工程3;複合体形成工程)
複合体形成工程は、微細化工程により得られた微細化セルロース分散液に、金属塩を添加して還元析出させることで複合体を形成する。金属表面と溶媒は、強い親和力は無く、そのままでは粒子は凝集沈殿してしまう。微細化セルロースの存在により金属微粒子の特徴が大きく変化する。
微細化セルロースの存在下で前駆体金属イオンを還元すると金属原子が生成し、核発生、成長を経て金属微粒子が生成する。この過程で金属微粒子と微細化セルロースが相互作用し、金属微粒子の形態や凝集に影響を及ぼし、形状やサイズの制御された複合体が得られると考えられる。前駆体金属イオンは微細化セルロースのカルボキシ基に配位し、還元析出することで、カルボキシ基を起点に相互作用を及ぼすと考えられる。
例えば、球状の銀微粒子は通常400 nm付近に吸収を有するが、銀と微細化セルロースとを含有する複合体は、その異方性により、500nm以上の波長領域に吸収を有する。
複合体の形成は、例えば以下のように行うことができる。まず、金属イオンを含有する溶液(金属イオン含有溶液)を調液し、微細化セルロース分散液を攪拌しながら、前記金属イオン含有溶液を少しずつ添加することにより、微細化セルロース分散液と金属イオン含有溶液との混合溶液を得る。
次に、前記混合溶液中の金属イオンを還元して平板状金属微粒子を成長させるとともに、平板状金属微粒子と微細化セルロースとを複合化する。
ここで、図1は、本発明を適用した一実施形態である複合体の製造方法の、工程の一部を説明するための模式図である。
本実施形態の製造方法の複合体形成工程では、特に限定されないが、先ず、混合溶液中への還元剤の添加により、微細化セルロース12に設けたカルボキシ基を起点に金属の析出が開始する。そして、析出した金属は金属微粒子の一次粒子11aを形成する(図1中の左図を参照)。さらに反応が進むと、これらの一次粒子11a同士が凝集して、平板状の金属微粒子(すなわち、平板状金属微粒子)11を形成する。この際、微細化セルロース12の一部12aが巻き込まれるとともに残部12bが露出した状態で複合化する(図1中の右図を参照)。
以上の工程により、本実施形態の平板状金属微粒子11と微細化セルロース12との複合体1を得ることができる。
微細化セルロースの分散に用いる溶媒は、微細化セルロースが充分に分散または溶解するものであれば、特に限定されない。環境への負荷の面から水を用いることが好ましい。微細化セルロースを用いる場合は、分散性の観点から水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒については特に制限は無いが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましい。
複合体形成工程における微細化セルロース分散液のpH、温度は特に限定しない。微細セルロース分散液の濃度は特に限定しないが、0.1%以上50%未満が好ましい。0.1%未満では複合体の形状制御効果が不十分となり、50%以上では粘度が上昇し、均一な反応が難しくなる。微細化セルロース分散液に添加する前駆体金属イオンの濃度も限定しない。前駆体金属イオン濃度、微細化セルロース濃度は生成する複合体の光学特性に影響を与える。複合体の光学特性は、その形状により変化する。複合体の具体的な作製法については実施例にて詳細を記した。
金属イオン含有溶液は、特に限定されないが、金属または合金、金属塩、金属酸化物、金属複酸化物などを水などの溶媒に溶解させて調液する。金属塩としては、例えば、硝酸銀、塩化銀、酸化銀、硫酸銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀等の銀塩、塩化金酸、塩化金ナトリウム、塩化金カリウム等の金塩、塩化白金、酸化白金等白金塩等が挙げられる。金属塩は単独で用いても良く、複数種を併用しても良い。
分散液中の金属イオン量は、特に限定されないが、微細化セルロース表面にカルボキシ基が存在する場合、カルボキシ基量未満となるように調製することが好ましい。分散液中の金属イオン量が微細化セルロース表面に存在するカルボキシ基量を上回ってしまうと微細化セルロースが凝集する場合がある。
金属イオンを還元させる方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、還元剤、紫外線、電子線等を用いることができる。金属イオンの還元に用いる還元剤は、公知の還元剤を用いることができる。例えば、金属ヒドリド系、ボロヒドリド系、ボラン系、シラン系、ヒドラジン及びヒドラジド系の還元剤が挙げられる。一般に、液相還元法では、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、ヒドラジン等が用いられる。還元剤の添加量は特に限定されないが、金属イオン濃度と同等以上となるように調整することが好ましい。混合溶液中の還元剤濃度が金属イオン濃度以下であると、未還元の金属イオンが混合溶液中に残存してしまうためである。
(複合体)
本発明を適用した一実施形態である複合体について説明する。
図2は、本発明を適用した一実施形態である複合体の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、本実施形態の複合体1は、平板状の金属微粒子(平板状金属微粒子)11と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロース12とが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロース12について少なくとも一部(一部分)又は全部が平板状金属微粒子11の内部に取り込まれており、残部が平板状金属微粒子11の表面に露出するように複合化されたものである。
より具体的には、図3、図4、図5に示すように、それぞれの微細化セルロース12は、平板状金属微粒子11の内部に取り込まれている部分12aと、平板状金属微粒子11の表面に露出している部分12bとから構成されている。そして、この取り込まれている部分3aの存在により、平板状金属微粒子11とそれぞれの微細化セルロース12とが不可分の状態となっている。即ち、平板状金属微粒子11と微細化セルロース12とは、微細化セルロース12の少なくとも一部分(すなわち、部分12a)が平板状金属微粒子11の内部に取り込まれることにより、少なくとも一部同士が物理的に結合することにより、不可分の状態にあることが好ましい。
ここで、本実施形態の複合体1について、微細化セルロース12の少なくとも一部分(すなわち、部分12a)が平板状金属微粒子11の内部に取り込まれる、とは、後述する製造方法においても説明するが、平板状金属微粒子11の成長段階において、金属微粒子ユニットの粒界に沿って、微細化セルロースが挟み込まれている状態と同義である。
また、本実施形態の複合体1において、「不可分」の状態とは、例えば、遠心分離機等の物理的方法によって、平板状金属微粒子11と微細化セルロース12とに分離することが不可能であることをいう。
なお、本実施形態の複合体1は、構成する全ての微細化セルロース3について、全部分(全体)が平板状金属微粒子11の内部に取り込まれており、平板状金属微粒子11の表面に露出している部分が存在しない構成についても、取り込まれている部分12aの存在を確認できる限り権利範囲に含むものとする。
複合体の観察は以下の方法で行うことができる。複合体を高速冷却遠心機等により精製し、シリコンウェハ板上にキャストし、白金蒸着処理を施した後、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−4800)を用いて垂直方向から観察することで、図3、図5のように平板状金属微粒子11と表面に露出した微細化セルロース12bを観察することができる。また、図4のように走査透過型電子顕微鏡にて観察することで、平板状金属微粒子11の内部に取り込まれた微細化セルロース12aを確認することができる。また、複合体をシリコンウェハ板上キャストし、非蒸着のまま走査型電子顕微鏡観察を行った後、エネルギー分散型X線分析による元素マッピングを行い、金属と微細化セルロースによる炭素の検出により複合化を確認できる。
一般に、金属表面と溶媒は、強い親和力は無く、そのままでは粒子は凝集沈殿してしまう。しかし、本発明の製造方法では、金属イオンと微細化セルロースの存在下で還元することにより、金属原子が生成し、核発生、成長を経て金属微粒子が生成する。この過程で金属微粒子と微細化セルロース繊維が相互作用し、金属微粒子の形態や凝集に影響を及ぼし、形状やサイズの制御された複合体が得られると考えられる。
このようにして得られた複合体において、前記微細化セルロース12のそれぞれは、少なくとも一部又は全部が前記平板状金属微粒子11の内部に取り込まれるとともに、残部が当該平板状金属微粒子11の表面に露出する。本発明の複合体は、分散安定性の面から、前記金属微粒子と前記微細化セルロースとが不可分であることが好ましい。
本実施形態において「平板状」とは、板状の粒子であり、表面13または裏面14の面積を円に相当した粒子径dとすると、粒子径dを粒子厚みhで割った平均アスペクト比(d/h)が2.0以上である粒子を意味する。尚、表面13、裏面14の形状は特に限定されないが、主に通常六角形や三角形等の多角形である。また、表面13(裏面14)、裏面14(裏面13)、表面13と裏面14は、どちらの面積が大きくもよく、両面は平行でなくてもよい。
光学特性を発揮するためには、平板状金属微粒子11の形状は以下の範囲であることが好ましい。
平板状金属微粒子11の粒子径dの平均値は、2nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは20以上500nm以下、20以上400nm以下が更に好ましい。
平板状金属微粒子11の粒子厚みhの平均値、すなわち表面13と裏面14の距離hは、1以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。
アスペクト比d/hの平均値は、2.0以上が好ましく、2.0以上100以下がより好ましく、2.0以上50以下が更に好ましい。
平均値は100個の粒子を測定して求める。本発明の複合体は、直径dを任意に変化させ、粒子径d/厚みhのアスペクト比を制御することで、光学特性を制御できる。
特に、本発明の複合体は、500nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長を有するように制御しやすく、また遮熱フィルムや色材へ応用できる。そのため、本発明の複合体を含有する分散液は、500nm以上2500nm以下の波長領域が極小となる極小波長を有することが好ましい。
複合体は、平板状金属微粒子11と微細化セルロース12を含んでいればよく、他の成分を含んでも構わない。
本開示に係る平板状金属微粒子の形状、サイズの評価は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査透過型電子顕微鏡にて行うことができる。
平板状金属微粒子の粒子径及び厚みの測定方法、ならびにアスペクト比の算出方法としては、具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)粒子径の測定法
複合体を含む分散液をTEM観察用支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾したのち、透過型電子顕微鏡観察を行う。得られた画像中の平板状金属微粒子を、円で近似した際の径を平面方向の粒子径として算出する。
(2)厚みの測定法
図6のように複合体を含む分散液をPETフィルム上にキャストして風乾し包埋樹脂で固定したものをミクロトームで断面方向に切削し、透過型電子顕微鏡観察を行う。得られた画像中の平板状金属微粒子の厚みを平面方向の粒子径として算出する。
(3)アスペクト比の算出方法
上述のようにして求めた粒子径dを粒子厚みhで割った値を、アスペクト比=d/hとして算出する。
粒子径、厚み、アスペクト比の平均値は100個の粒子の平均として算出できる。なお、上述した測定方法および算出方法は一例であり、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の(工程1)と(工程2)を含有する方法で得られた微細化セルロースを用い、更に(工程3)にて複合体を形成させることで安定的に、かつ生産性よく、500nm以上2500nm以下の波長領域に透過率が極小となる極小波長を有する複合体を得ることができる。光学特性を有する複合体の生産性の観点から、複合体を含有する分散液を金属微粒子の濃度が2.5×10−4mol/lになるように調整したとき、極小波長における透過率が30%以下となることが好ましい。すなわち、平板状金属微粒子の濃度が2.5×10−4mol/lである分散液において、光路長1cmにおける光線透過率は、500nm以上2500nm以下の波長領域に光線透過率が極小となる極小波長を有し、かつ極小波長における光線透過率は、分散媒に対して、30%以下となることが好ましい。
複合体の光学特性は、例えば分光光度計UV−3600(株式会社島津製作所)を用いて以下の方法で評価することができる。
複合体を含有する分散液を、金属微粒子の濃度が2.5×10−4mol/lになるように調整し、光路長1cmにおいて分散媒をリファレンスとして200nmから2600nmの波長領域の分光透過率を測定する。得られた透過スペクトルより、透過率が極小となったときの波長を極小波長(λmax)とする。
(金属)
本発明の複合体に含有される金属種は、特に限定されず、用途に合わせて任意の金属種を用いることができる。例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が挙げられる。特に、赤外線を遮蔽する目的では、少なくとも銀を含む1種類以上が好ましい。複合体中に含まれる金属の割合は特に限定されない。
金属微粒子の異方成長を促進し、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を析出させるためには、還元析出処理時に用いられる金属の量が、微細化セルロース1gに対して0.0005mmol以上0.4mmol以下の範囲にあることが好ましく、0.001mmol以上0.2mmol以下の範囲にあることがさらに好ましく、0.002mmol以上0.1mmol以下の範囲にあることがとくに好ましい。
(複合体の利用方法)
得られた複合体の周りを、他の金属あるいは金属酸化物で被覆して、金属微粒子と微細化セルロースとを含有する複合体の安定性を向上させても良い。被覆に用いる金属種としては特に限定せず、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物が挙げられる。
複合体は、光学フィルター、遮熱フィルム、塗料、抗菌フィルム、パーソナルケア用品、化粧品、抗菌剤等に応用できる。用途によっては複合体を含む分散液から、複合体を分離しても構わない。特に限定されないが、例えば、コーティング液に分散させ、プラスチックフィルムやガラス等に塗工してコーティング層を形成することができる。また、複合体を成形材料と複合化しても構わない。
複合体を分画する方法としては、沈殿法、遠心分離、ゲル濾過カラム、ゲル電気泳動法等の公知の方法を用いることができる。複数の分画方法を組み合わせても良い。分画した複合体を再分散させる方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、攪拌型分散機、高速度回転せん断装置、ミル型分散装置(ボールミル、ビーズミル、コロイドミル等)、高圧噴射装置、超音波分散装置等の液中分散装置が挙げられる。分散剤を添加して分散化してもよい。
コーティング液の溶媒は、特に限定するものではないが、分散性の観点から水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒については特に制限は無いが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましい。中でも、水、エタノールが好ましい。
コーティング層の形成方法は、常温乾燥コーティング、加熱硬化コーティング、電着コーティング等の公知の方法を用いることができる。
成形の方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、射出成形法、圧縮成形法、積層成形法、トランスファ成形法、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイ成形法、押出ラミネート、ブロー成形法、真空成形法、スプラッシュ成形法、低圧積層成形法が挙げられる。
複合体と成形材料の複合組成物や複合体を含有するコーティング層は、成形性の向上や劣化抑制、複合体の分散性の向上等の目的で、公知の添加剤を混合することができる。例えば、熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤を含んでも構わない。
<実施例1>
(酸化工程)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に35℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが2.0mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化セルロースを得た。
(分散化工程)
前記TEMPO酸化で得た酸化セルロース1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、1質量%の微細化セルロース水分散液を得た。
(複合体形成工程)
硝酸銀を蒸留水50mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。水素化ホウ素ナトリウムを蒸留水50mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。前記1%微細化セルロース水分散液50g対し、前記硝酸銀水溶液0.5gを室温(25℃)で攪拌しながら添加した。30分攪拌を続けたのち、硝酸銀水溶液を添加し、更に水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加して銀と微細化セルロースとを含有する複合体を製造した。
<実施例2>
実施例1の酸化工程において、TEMPO酸化反応中に系内の温度を常に40℃に保ったこと以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<実施例3>
実施例1の酸化工程において、TEMPO酸化反応中に系内の温度を常に45℃に保ったこと以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<実施例4>
実施例1の酸化工程において、セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.0mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加しTEMPO酸化反応を停止させた以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<実施例5>
実施例1の酸化工程において、セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが4.0mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加しTEMPO酸化反応を停止させた以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<実施例6>
実施例1の微細化工程において、前記TEMPO酸化で得た酸化セルロース2gを98gのの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、2質量%の微細化セルロース水分散液を得た。複合体形成工程においては、前記2%微細化セルロース水分散液50g対し、前記硝酸銀水溶液1.0gを室温(25℃)で攪拌しながら添加した。30分攪拌を続けたのち、硝酸銀水溶液を添加し、更に水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加して銀と微細化セルロースとを含有する複合体を製造した。上記以外は実施例1と同様に複合体を形成した。
<比較例1>
実施例1の酸化工程において、TEMPO酸化反応中に系内の温度を常に15℃に保ったこと以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<比較例2>
実施例1の酸化工程において、TEMPO酸化反応中に系内の温度を常に20℃に保ったこと以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<比較例3>
実施例1の酸化工程において、TEMPO酸化反応中に系内の温度を常に20℃に保ち、
セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが4.0mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加しTEMPO酸化反応を停止させた以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<比較例4>
実施例1の酸化工程において、TEMPO酸化反応中に系内の温度を常に55℃に保ち、
セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが4.0mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加しTEMPO酸化反応を停止させた以外は、実施例1と同様の条件で複合体を形成した。
<評価方法>
実施例1から実施例6及び比較例1から比較例4で得られた酸化セルロース、微細化セルロースについて、カルボキシ基量、分子量、分散液の光線透過率及びレオロジー測定を次のように行い、複合体を含有する分散液の透過率の極小値における波長(λmax)を以下のように行った。
[カルボキシ基量]
分散処理前の酸化セルロースについて、含有されるカルボキシ基量は以下の方法にて算出した。酸化セルロースの乾燥重量換算0.2gをビーカーにとり、イオン交換水80mlを添加する。そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加え、攪拌させながら0.1M塩酸を加えて全体がpH2.8となるように調整した。ここに自動滴定装置(東亜ディーケーケー株式会社、AUT−701)を用いて0.1M水酸化ナトリウム水溶液を0.05ml/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続けた。得られた電導度曲線から水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシ基の含有量を算出した。
〔結晶化度の算出〕
TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。測定には試料水平型多目的X線回折装置(UltimaIII、株式会社リガク製)を用い、X線出力:(40kv、40mA)の条件で、5°≦2θ≦35°の範囲でX線回折パターンを測定した。得られるX線回折パターンはセルロースI型結晶構造に由来するものであるため、以下に示す手法によって結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100
ただし、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
〔微細化セルロースの数平均長軸径の算出〕
原子間力顕微鏡を用いて微細化セルロースの数平均短軸長を算出した。まず微細化セルロースの分散液を0.001%となるように希釈したのち、マイカ板上に20μLずつキャストして風乾した。乾燥後に原子間力顕微鏡(AFM5400L、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、DFMモードで微細化セルロースの形状を観察した。微細化セルロースの数平均短軸径は、原子間力顕微鏡による観察画像から100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求めた。
[微細化セルロースの光線透過率]
微細化セルロースの分散液について、光線透過率を測定した。石英製のサンプルセルの一方にはリファレンスとして水を入れ、もう一方には気泡が混入しないように分散液を入れ、光路長1cmにおける波長660nmの光透過率を分光光度計(日本分光株式会社製、NRS−1000)にて測定した。
[レオロジー]
微細化セルロース0.5質量%の分散液のレオロジーをレオメータ(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、AR2000ex)傾斜角1°のコーンプレートにて測定した。測定部を25℃に温調し、せん断速度を0.01s−1から100s−1について連続的にせん断粘度を測定し、1s−1及び100s−1のときの値を求めた。
[複合体観察]
複合体形成工程を経た分散液を、高速冷却遠心機にて75,600g(30分×5セット)の条件で遠心し、複合体を精製・分画した。前記精製済み複合体を含む分散液をシリコンウェハ板上にキャストし、白金蒸着処理を施した後、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)を用いて垂直方向から観察することで、複合化を確認した。複合体が観察された場合を『○』、観察されなかった場合を『×』とした。
[λmaxと透過率]
複合体の光学特性は、例えば分光光度計UV−3600(株式会社島津製作所製)を用いて以下の方法で評価することができる。
複合体を含有する分散液を、金属微粒子の濃度が2.5×10−4mol/lになるように調整し、気泡が混入しないように複合体を含有する分散液を石英サンプルセル(光路長1cm)に入れて200nmから2600nmの波長領域の分光透過率を測定した。リファレンスには分散媒を用いた。
得られた光線透過率から、複合体由来の吸収により、500nm以上で光線透過率が極小となった波長(λmax)と、λmaxにおける透過率を得た。
表1に示すように、実施例1から実施例6の製造方法で複合体を形成することで、長波長領域に透過率が低下する極小波長λmaxを得ることができ、λmaxでの透過率が20%以下と低下していた。また、実施例6においては、2質量%の微細化セルロース分散液を用い、より効率よく複合体を製造できた。比較例1から比較例3においては、複合体を形成することができたが、λmaxでの透過率が30%以上と高く、複合体のサイズや形状の制御が不安定であった。実施例4では複合体が製造できず、複合体由来のλmaxを得られなかった。
本発明を用いれば、環境調和型材料を用い、低エネルギーで形状の制御された複合体を製造することができる。この複合体は、そのプラズモン共鳴現象を利用し、サイズや形状を制御して、遮熱フィルムや光学フィルター、色材等に応用が可能である。また、複合化する金属種によっては触媒や抗菌剤としても利用することができる。
1 複合体
11 金属微粒子(銀微粒子)
11a 金属微粒子の一次粒子
12 微細化セルロース(CSNF)
12a 微細化セルロースが金属微粒子の内部に取り込まれている部分
12b 微細化セルロースが金属微粒子表面に露出している部分
13 表面
14 裏面
15 側面
16 PETフィルム
17 包埋樹脂
d 粒子径
h 厚み

Claims (25)

  1. (工程1)天然セルロースを、N−オキシル化合物を用いて35℃以上50℃以下の温度で酸化反応を行い、酸化セルロースを得る酸化工程と、
    (工程2)前記酸化セルロースを解繊して微細化セルロースの分散液を得る分散化工程と、
    (工程3)微細化工程により得られた微細化セルロース分散液中に金属塩を添加して還元することで、平板状金属微粒子を成長させるとともに、前記平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を形成する複合体形成工程と
    を含む、複合体の製造方法。
  2. 前記天然セルロースが漂白クラフトパルプであることを特徴とする、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  3. 前記酸化セルロース形成工程における、水酸化ナトリウムの添加量は、前記天然セルロースの乾燥重量当たり1.0mmol以上5.0mmol以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合体の製造方法。
  4. 前記微細化セルロースの短軸の数平均軸径は1nm以上50nm以下であり、かつ長軸の数平均軸径は0.1μm以上10μm以下であり、前記微細化セルロースが含むカルボキシ基量は0.1mmol/g以上3.0mmol/gであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  5. 前記微細化セルロースを0.5質量%含む分散液の粘度は、25℃における、せん断速度が1s−1のときに30mPa・s以上2000mPa・s以下であり、
    かつ、せん断速度が100s−1のときに20mPa・s以上200mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1記載から4のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  6. 前記微細化セルロースを1.0質量%含む分散液が有する、貯蔵弾性率G’および損失弾性率G’’は、25℃において、各周波数ωが10−1以上102以下の範囲において、共に100Pa以上102Pa以下であり、かつG’はG’’より大きいことを特徴とする、
    請求項1から5のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  7. 前記微細化セルロースを1.0質量%含む分散液が有する、
    弾性応力の最大値は0.5Pa以上であり、粘性応力の最大値が4Pa以上であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  8. 前記微細化セルロースの結晶化度が70%以上であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  9. 前記微細化セルロースを、固形分濃度1%含む分散体において、光路長1cmにおける、660nmの波長の光線透過率は、分散媒に対して、80%以上であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  10. 前記金属塩が、硝酸銀、塩化銀、酸化銀、硫酸銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、塩化金酸、塩化金ナトリウム、塩化金カリウム、塩化白金、酸化白金のいずれかを少なくとも1種類以上含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  11. 前記複合体が含む前記平板状金属微粒子は、少なくとも1種類以上の金属又はそれらの化合物であり、
    前記複合体が含む前記微細化セルロースのそれぞれは、少なくとも一部又は全部が前記平板状金属微粒子の内部に取り込まれるとともに、残部が当該平板状金属微粒子の表面に露出することを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  12. 前記複合体に含まれる、前記平板状金属微粒子と前記微細化セルロースとが不可分であることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  13. 請求項1から12のいずれかに記載の複合体の製造方法によって製造された、複合体。
  14. 前記平板状金属微粒子の厚みhの平均値は、1nm以上100nm以下の範囲であり、
    前記平板状金属微粒子の粒子径dの平均値は、2nm以上1000nm以下の範囲であり、
    アスペクト比d/hの平均値は、2.0以上100以下である
    ことを特徴とする、請求項13に記載の複合体。
  15. 前記平板状金属微粒子が、少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物を含むことを特徴とする、請求項13または14のいずれかに記載の複合体。
  16. 前記複合体を含有する分散液が、500nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長を有することを特徴とする、請求項13から15のいずれかに記載の複合体。
  17. 平板状金属微粒子と少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化され、
    平板状金属微粒子は、少なくとも1種類以上の金属又はそれらの化合物であり、
    前記微細化セルロースのそれぞれは、少なくとも一部又は全部が前記平板状金属微粒子の内部に取り込まれるとともに、残部が当該平板状金属微粒子の表面に露出した複合体であって、
    前記平板状金属微粒子の濃度が2.5×10−4mol/lである分散液において、
    光路長1cmにおける光線透過率は、500nm以上2500nm以下の波長領域に前記光線透過率が極小となる極小波長を有し、かつ前記極小波長における前記光線透過率は、分散媒に対して、30%以下であることを特徴とする、複合体。
  18. 前記平板状金属微粒子と前記微細化セルロースとが不可分であることを特徴とする請求項17に記載の複合体。
  19. 前記平板状金属微粒子が、銀であることを特徴とする請求項17又は18に記載の複合体。
  20. 前記平板状金属微粒子の厚みhの平均値は、1nm以上100nm以下の範囲であり、
    前記平板状金属微粒子の粒子径dの平均値は、2nm以上1000nm以下の範囲であり、
    アスペクト比d/hの平均値は、2.0以上100以下である
    ことを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の複合体。
  21. 前記微細化セルロースが、結晶表面にカルボキシ基を有することを特徴とする、請求項17から20のいずれかに記載の複合体。
  22. 前記カルボキシ基の含有量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上3.0mmol以下であることを特徴とする、請求項17から21のいずれかに記載の複合体。
  23. 前記微細化セルロースの結晶構造が、セルロースI型であることを特徴とする、請求項17から22のいずれかに記載の複合体。
  24. 前記微細化セルロースの形状が、天然セルロースのミクロフィブリル構造由来の繊維状であることを特徴とする、請求項17から23のいずれかに記載の複合体。
  25. 前記微細化セルロースの短軸の数平均軸径は1nm以上50nm以下であり、かつ長軸の数平均軸径は0.1μm以上10μm以下であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることを特徴とする、請求項17から24のいずれかに記載の複合体。
JP2014105984A 2014-05-22 2014-05-22 複合体の製造方法、及び複合体 Active JP6421455B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014105984A JP6421455B2 (ja) 2014-05-22 2014-05-22 複合体の製造方法、及び複合体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014105984A JP6421455B2 (ja) 2014-05-22 2014-05-22 複合体の製造方法、及び複合体

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2015221845A true JP2015221845A (ja) 2015-12-10
JP2015221845A5 JP2015221845A5 (ja) 2017-07-06
JP6421455B2 JP6421455B2 (ja) 2018-11-14

Family

ID=54785050

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014105984A Active JP6421455B2 (ja) 2014-05-22 2014-05-22 複合体の製造方法、及び複合体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6421455B2 (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5996082B1 (ja) * 2015-12-25 2016-09-21 第一工業製薬株式会社 セルロースナノファイバーおよび樹脂組成物
JP2018068816A (ja) * 2016-11-01 2018-05-10 凸版印刷株式会社 ホルムアルデヒド除去組成物およびその製造方法、ホルムアルデヒド除去シート
WO2018116661A1 (ja) * 2016-12-21 2018-06-28 日本製紙株式会社 酸型カルボキシル化セルロースナノファイバー
JP2018162436A (ja) * 2017-02-08 2018-10-18 日本製紙株式会社 H型カルボキシル化セルロースナノファイバー
JP2019002004A (ja) * 2017-06-16 2019-01-10 凸版印刷株式会社 光熱変換材料、光熱変換組成物、および光熱変換成形体
JP2019099687A (ja) * 2017-12-01 2019-06-24 凸版印刷株式会社 樹脂組成物および樹脂組成物の製造方法
WO2020100187A1 (ja) * 2018-11-12 2020-05-22 シャープ株式会社 表示デバイス
JPWO2020218152A1 (ja) * 2019-04-25 2020-10-29
US11578142B2 (en) 2016-12-21 2023-02-14 Nippon Paper Industries Co., Ltd. Acid type carboxylated cellulose nanofiber

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010095574A1 (ja) * 2009-02-18 2010-08-26 国立大学法人 九州大学 セルロースナノファイバーおよび金属ナノ粒子を含む複合体、ならびにその製造方法
JP2011184475A (ja) * 2010-03-04 2011-09-22 Toppan Printing Co Ltd 酸化セルロースの製造方法、酸化セルロース分散液の製造方法、及び酸化セルロース分散液
JP2014070158A (ja) * 2012-09-28 2014-04-21 Toppan Printing Co Ltd 抗菌性微細セルロース、その製造方法ならびに抗菌性コーティング剤

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010095574A1 (ja) * 2009-02-18 2010-08-26 国立大学法人 九州大学 セルロースナノファイバーおよび金属ナノ粒子を含む複合体、ならびにその製造方法
JP2011184475A (ja) * 2010-03-04 2011-09-22 Toppan Printing Co Ltd 酸化セルロースの製造方法、酸化セルロース分散液の製造方法、及び酸化セルロース分散液
JP2014070158A (ja) * 2012-09-28 2014-04-21 Toppan Printing Co Ltd 抗菌性微細セルロース、その製造方法ならびに抗菌性コーティング剤

Cited By (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017115047A (ja) * 2015-12-25 2017-06-29 第一工業製薬株式会社 セルロースナノファイバーおよび樹脂組成物
JP5996082B1 (ja) * 2015-12-25 2016-09-21 第一工業製薬株式会社 セルロースナノファイバーおよび樹脂組成物
JP2018068816A (ja) * 2016-11-01 2018-05-10 凸版印刷株式会社 ホルムアルデヒド除去組成物およびその製造方法、ホルムアルデヒド除去シート
WO2018116661A1 (ja) * 2016-12-21 2018-06-28 日本製紙株式会社 酸型カルボキシル化セルロースナノファイバー
US11578142B2 (en) 2016-12-21 2023-02-14 Nippon Paper Industries Co., Ltd. Acid type carboxylated cellulose nanofiber
JP7162422B2 (ja) 2017-02-08 2022-10-28 日本製紙株式会社 H型カルボキシル化セルロースナノファイバー
JP2018162436A (ja) * 2017-02-08 2018-10-18 日本製紙株式会社 H型カルボキシル化セルロースナノファイバー
JP2019002004A (ja) * 2017-06-16 2019-01-10 凸版印刷株式会社 光熱変換材料、光熱変換組成物、および光熱変換成形体
JP7167433B2 (ja) 2017-12-01 2022-11-09 凸版印刷株式会社 樹脂組成物および樹脂組成物の製造方法
JP2019099687A (ja) * 2017-12-01 2019-06-24 凸版印刷株式会社 樹脂組成物および樹脂組成物の製造方法
WO2020100187A1 (ja) * 2018-11-12 2020-05-22 シャープ株式会社 表示デバイス
WO2020218152A1 (ja) * 2019-04-25 2020-10-29 東洋製罐グループホールディングス株式会社 セルロースナノクリスタル複合体及びその製造方法
CN114008124A (zh) * 2019-04-25 2022-02-01 东洋制罐集团控股株式会社 纤维素纳米晶体复合体及其生产方法
JPWO2020218152A1 (ja) * 2019-04-25 2020-10-29
JP7287460B2 (ja) 2019-04-25 2023-06-06 東洋製罐グループホールディングス株式会社 セルロースナノクリスタル複合体及びその製造方法
CN114008124B (zh) * 2019-04-25 2023-09-29 东洋制罐集团控股株式会社 纤维素纳米晶体复合体及其生产方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6421455B2 (ja) 2018-11-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6421455B2 (ja) 複合体の製造方法、及び複合体
JP6446834B2 (ja) 複合体の製造方法、及び微細セルロース繊維の分散液
JP6690531B2 (ja) 複合体、複合体の製造方法、分散液、分散液の製造方法および光学材料
JP6446829B2 (ja) 赤外線遮蔽材料、コーティング組成物及び赤外線遮蔽フィルム
JP6516876B2 (ja) 多機能ビスコース繊維及びその調製方法
JP6083165B2 (ja) 金属/セルロース複合化微細繊維の製造方法、金属/セルロース複合化微細繊維を含む分散体および透明導電膜の製造方法
JP6260077B2 (ja) 抗菌性コーティング剤
De Campos et al. Obtaining nanofibers from curauá and sugarcane bagasse fibers using enzymatic hydrolysis followed by sonication
Caschera et al. Green approach for the fabrication of silver-oxidized cellulose nanocomposite with antibacterial properties
Ifuku et al. Synthesis of silver nanoparticles templated by TEMPO-mediated oxidized bacterial cellulose nanofibers
JP6248511B2 (ja) 増粘発色抗菌剤およびその製造方法並びにパーソナルケア製品用組成物
JP7259218B2 (ja) 光熱変換材料、光熱変換組成物、および光熱変換成形体
JP2013104133A (ja) 増粘用セルロース繊維の製法およびそれにより得られた増粘用セルロース繊維
JP2015218159A (ja) 抗菌性組成物、積層体、及び成形体
JP6260451B2 (ja) 多孔質体とその製造方法、ならびに遮熱フィルム
JP7167433B2 (ja) 樹脂組成物および樹脂組成物の製造方法
JP6402454B2 (ja) 光学材料及び光学フィルター
Shen et al. Acidified ZnCl2 molten salt hydrate systems as hydrolytic media for cellulose I and II nanocrystal production: from rods to spheres
JP6303258B2 (ja) 銀と微細化セルロース繊維の複合体の製造方法及び遮熱フィルムの製造方法
JP7143628B2 (ja) 樹脂成形体、及びその製造方法
JP7031144B2 (ja) 樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法、および樹脂組成物
JP7035416B2 (ja) 乾燥固形物および乾燥固形物の製造方法
JP6638783B2 (ja) 光学フィルター
JP6925948B2 (ja) 抗菌性微細セルロース
JP7009762B2 (ja) 多孔体および多孔体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170519

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170519

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180119

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180206

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180405

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180918

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181001

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6421455

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250