JP2015218083A - アルカリハライド単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、黒鉛ルツボを用いたときのカーボン微粉末の剥離発生による汚染の問題及び結晶育成中の漏れの問題が生じす、結晶の離型性が良好となる、ブリッジマン法によるアルカリハライド単結晶の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法は、黒鉛製のルツボの中に原料及び種結晶を装填し、ブリッジマン法によって単結晶を育成する製造方法において、前記原料又は前記種結晶の少なくともいずれか一方と接触する部分が、前記ルツボの内面であるか、前記ルツボの内側に配置した黒鉛製のシートであるか、又は、前記ルツボの内面及び前記シートの両方であり、少なくとも前記接触する部分を含む部分に白金被膜を形成する工程を含み、該白金被膜を白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって形成する。
【選択図】図3
【解決手段】本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法は、黒鉛製のルツボの中に原料及び種結晶を装填し、ブリッジマン法によって単結晶を育成する製造方法において、前記原料又は前記種結晶の少なくともいずれか一方と接触する部分が、前記ルツボの内面であるか、前記ルツボの内側に配置した黒鉛製のシートであるか、又は、前記ルツボの内面及び前記シートの両方であり、少なくとも前記接触する部分を含む部分に白金被膜を形成する工程を含み、該白金被膜を白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって形成する。
【選択図】図3
Description
本発明は、ブリッジマン法(引き下げ法)によって、NaCl、KCl、LiF、CaF2、NaI、CsIなどのアルカリハライドの単結晶を製造する方法に関する。
Cs137などの半減期の長い元素の放射線測定が社会要請として強くなってきている。また、暗黒物質などの探索では放射性不純物のない高純度のシンチレーターが望まれている。そこで、このようなシンチレーターとしてアルカリハライド系シンチレーターが使用されうる。
ところで、本出願人は、(1)白金、若しくは不純物の含有量の合計が100ppm以下で残部が白金である材料を用いて形成したことを特徴とする単結晶製造用ルツボ、及び、(2)白金、若しくは不純物の含有量の合計が100ppm以下で残部が白金である材料からなる保護膜を、カーボン製又はグラッシーカーボン製ルツボ本体の少なくとも内面に設けた単結晶製造用ルツボについて開示している(例えば特許文献1を参照。)。ここで、不純物の含有量の合計が100ppm以下の白金を用いるのは不純物の融液への溶け出しを防ぐためであり、白金の保護膜を設ける理由は、カーボン微粉末の剥離発生による融解されたフッ化物系単結晶の原料溶液の汚染防止などのためとしている。また、特許文献1では、対象とする単結晶として、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどのフッ化物系単結晶を例示している。そして、単結晶育成方法として、チョクラルスキー法又はブリッジマン法を挙げている。ここで、チョクラルスキー法とは、結晶化しようとする原料をルツボに入れ、電気炉内にて原料を融点以上に昇温し融解させ、この原料融液に棒状の種子結晶の下端部を浸してゆっくり回転させながら引き上げることにより、種子結晶の下端部から結晶を成長させる方法である。また、ブリッジマン法とは、結晶化しようとする原料をルツボに入れ、電気炉内に温度勾配を形成した状態で、種子結晶側を先端にしてルツボを高温側から低温側に徐々に移動させることにより、種子結晶側より順次に結晶を成長させる方法である。
また、グラッシーカーボンルツボを用いて、NaI単結晶を育成する方法の開示がある(例えば非特許文献1を参照。)。
T.Berthhold et al.Journal of Crystal Growth 217(2000)p.441−448
NaCl、KCl、LiF、CaF2、NaI、CsIなどのアルカリハライドの単結晶は、主としてブリッジマン法で製作されている。ブリッジマン法で用いるルツボには、アルミナ、石英、白金、黒鉛製のルツボが使われている。特に高純度結晶を作製するためには、特許文献1で開示される白金又は白金合金製のルツボが好ましい。
ルツボの素材によって種々の特徴があるが、いずれも物質が活性なため、ルツボと融液との濡れ性があり、最適なルツボを選ぶ必要がある。なお、濡れ性は低い方が結晶取り出しの観点から好ましいとされる。また、結晶製造雰囲気として、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、又は活性ガス雰囲気など目的とする結晶に適した雰囲気を選択する必要があり、このときルツボ素材がその雰囲気に適するものでなければならない。
フッ化物融液と黒鉛ルツボの組合せは、濡れ性が低く、使用しやすい組合せである。しかし、フッ化物以外の単結晶を育成する場合には、アルミナルツボ、石英ルツボ又は白金ルツボを用いることが考えられる。(ルツボ素材:結晶の種類)の組合せを示せば、次の通りである。
(アルミナ:NaCl,KCl,KBr,LiF)
(石英:NaI,CsI)
(白金:NaCl,NaI)
(黒鉛:NaCl,CaF2,NaI)
これらのルツボを用いた場合には、濡れ性が高い故に、単結晶を取り出すための特別な剥離工程が必要であり(アルミナ、石英、白金のいずれの場合にも該当する。)、ルツボ形状の自由度が低い(特に、アルミナ又は白金の場合に該当する。)、又は、ルツボのコストが高い(アルミナ、石英、白金のいずれの場合にも該当する。)という問題がある。各ルツボの特徴を表1にまとめた。ここで、◎は非常によい、○はよい、△は使用可能(使用下限)、×は使用不可を示す。
(アルミナ:NaCl,KCl,KBr,LiF)
(石英:NaI,CsI)
(白金:NaCl,NaI)
(黒鉛:NaCl,CaF2,NaI)
これらのルツボを用いた場合には、濡れ性が高い故に、単結晶を取り出すための特別な剥離工程が必要であり(アルミナ、石英、白金のいずれの場合にも該当する。)、ルツボ形状の自由度が低い(特に、アルミナ又は白金の場合に該当する。)、又は、ルツボのコストが高い(アルミナ、石英、白金のいずれの場合にも該当する。)という問題がある。各ルツボの特徴を表1にまとめた。ここで、◎は非常によい、○はよい、△は使用可能(使用下限)、×は使用不可を示す。
表1にまとめた項目の評価を考慮して、非特許文献1に開示されているように黒鉛ルツボを使用することが好ましいと考えられる。しかし、黒鉛ルツボを使用すると特許文献1で指摘するようにカーボン微粉末の剥離発生による融解されたフッ化物系単結晶の原料溶液の汚染の問題がある。
また、特に黒鉛ルツボを使用する場合、ルツボに対して融液の浸透性があり、結晶育成中に漏れが発生する問題がある。特に、ヨウ化物の単結晶を育成する場合には漏れの問題が生じやすい。
本発明の目的は、黒鉛ルツボを用いたときのカーボン微粉末の剥離発生による汚染の問題及び結晶育成中の漏れの問題が生じず、結晶の離型性が良好となるブリッジマン法によるアルカリハライド単結晶の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、融液と接触する箇所に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成した黒鉛製のルツボを用いることで、カーボン微粉末などの不純物の混入が少なく、また、結晶育成中の漏れの問題が生じず、さらには結晶の離型性が良好となることを見出し、本発明を完成させた。具体的には、本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法は、黒鉛製のルツボ又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のルツボの中に原料及び種結晶を装填し、ブリッジマン法によってアルカリハライド単結晶を育成するアルカリハライド単結晶の製造方法において、前記原料又は前記種結晶の少なくともいずれか一方と接触する部分が、(1)前記ルツボの内面であるか、(2)前記ルツボの内側に配置した黒鉛製の又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のシートであるか、又は、(3)前記ルツボの内面及び前記シートの両方であり、前記ルツボ又は前記シートのうち、少なくとも前記接触する部分を含む部分に白金被膜を形成する工程を含み、該白金被膜を白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって形成することを特徴とする。
本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法では、前記シートの両面に前記白金被膜を形成することが好ましい。シートが融液と接触する面の反対面にも白金被膜を形成することで、当該反対面に融液が回り込んできたとしても、シートに由来する不純物の混入を防ぐことができる。
本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法では、前記ルツボの内側に前記シートを配置する工程において、前記シートに白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布した後、該シートを一周巻き以上とし、かつ、巻き重なり部分を接触させた状態で前記ルツボの内側に配置し、次いで、該シートを焼成することで、前記巻き重なり部分において白金を相互拡散させて該シートの巻き重なり部分を接合することが好ましい。白金を相互拡散させてシートの巻き重なり部分を接合することで、巻き重なりの隙間に融液が浸透してるつぼの内面に到達してしまうことを防ぐことができる。また、白金被膜がシートの接着剤を兼ねることとなるため、融液への不純物の混入を防ぐことができる。
本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法では、前記ルツボの内面に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、前記シートを一周巻き以上の筒状シートとし、かつ、該筒状シートの内面及び外面の両方に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、前記筒状シートとは別に前記シートを前記ルツボの底と同形状の底敷き用シートとし、かつ、該底敷き用シートの両面に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、内面に白金被膜を形成したルツボの内底に白金被膜を形成した底敷き用シートを敷き、かつ、該ルツボに白金被膜を形成した筒状シートを入れて該ルツボの内側の側面と該筒状シートの外面とを向い合わせに配置することが好ましい。ルツボの内底と内側の側面にシートが接触し、育成された単結晶とルツボとの境界部分にシートが介在することとなるため、離型性が向上する。また、ルツボとの接触がなくなるため、単結晶中への不純物の混入が抑制される。
本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法では、アルカリハライド単結晶の育成が完了した後、該アルカリハライド単結晶の取り出しと共に前記シートを前記ルツボから取り外す工程と、次いで、新規のシートを配置して次のアルカリハライド単結晶の育成を行なう工程と、をさらに有することが好ましい。ルツボから単結晶の取出しが容易であり、融液と接触する部分のみのシート交換によって次の結晶育成を行うことができ、また、ルツボを痛めることがない。
本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法では、アルカリハライド単結晶がNaI又はCsIであることが好ましい。暗黒物質の探索に使用されるNaIは超高純度であることを要求されており、本方式を使用することで大幅に性能改善できる。また、CsIはNaIに比べて漏れ性が大きく、本方式であれば漏れを防止でき、るつぼ寿命の向上が図れる。
本発明に係るアルカリハライド単結晶の製造方法は、黒鉛ルツボを用いたときのカーボン微粉末の剥離発生による汚染の問題が生じず、かつ、結晶育成中の漏れの問題も生じない。また、ルツボに対する結晶の離型性が良好であり、結晶の取り出しが容易である。
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係るアルカリハライド単結晶の製造方法は、ブリッジマン法による単結晶育成方法を用いる。この方法は、(1)結晶の原料及び種結晶を準備する第一工程、(2)ルツボを準備する第二工程、(3)(1)の原料及び種結晶を(2)のルツボに入れる第三工程、(4)電気炉内に温度勾配を形成した状態で、種子結晶側を先端にしてルツボを高温側から低温側に徐々に移動させることにより、種子結晶側より順次に結晶を成長させる第四工程、を有する。
(第一工程)
対象とする単結晶は、アルカリハライド単結晶であり、例えば、NaCl、KCl、LiF、CaF2、NaI又はCsIである。結晶の原料は、NaCl、KCl、LiF、CaF2、NaI又はCsIの粉末又は多結晶体であり、高純度に精製された粉末又は多結晶体であることが好ましい。種結晶は、目的とするアルカリハライドの種結晶(単結晶)を準備する。
対象とする単結晶は、アルカリハライド単結晶であり、例えば、NaCl、KCl、LiF、CaF2、NaI又はCsIである。結晶の原料は、NaCl、KCl、LiF、CaF2、NaI又はCsIの粉末又は多結晶体であり、高純度に精製された粉末又は多結晶体であることが好ましい。種結晶は、目的とするアルカリハライドの種結晶(単結晶)を準備する。
(第二工程)
使用するルツボについて説明する。ルツボ本体(以降、ルツボ本体及びそれに白金被膜を形成したものを区別せずに単に「ルツボ」と表記する場合がある。)は、黒鉛製のルツボ又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のルツボとする。黒鉛製とする理由は次のとおりである。(1)機械加工が容易で形状自由度が高い、(2)サイズがメートル級まで可能であり製作時に型が不要である、(3)低コストでの製造か可能である。ガラス状カーボンを含浸させた黒鉛はグラッシーカーボンとも呼ばれている。黒鉛にガラス状カーボンを含浸させる処理は含浸の程度が低い方から順に、(1)黒鉛粉の周りをガラス状カーボンで被覆し、かつ、被覆物が黒鉛粉の結合力を強めた処理(以降、単に「含浸処理」ともいう。)、(2)さらに表面の黒鉛粉の脱落を抑制する光沢処理、(3)さらに黒鉛粉間の隙間を埋めることでガス・液体の透過を抑制する緻密処理、がある。本実施形態で使用するルツボ本体は、これらいずれかの処理が為されたものを包含する。この中で、緻密処理が為されたタイプが好ましく、ルツボの内面が、緻密処理されたタイプが特に好ましい。
使用するルツボについて説明する。ルツボ本体(以降、ルツボ本体及びそれに白金被膜を形成したものを区別せずに単に「ルツボ」と表記する場合がある。)は、黒鉛製のルツボ又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のルツボとする。黒鉛製とする理由は次のとおりである。(1)機械加工が容易で形状自由度が高い、(2)サイズがメートル級まで可能であり製作時に型が不要である、(3)低コストでの製造か可能である。ガラス状カーボンを含浸させた黒鉛はグラッシーカーボンとも呼ばれている。黒鉛にガラス状カーボンを含浸させる処理は含浸の程度が低い方から順に、(1)黒鉛粉の周りをガラス状カーボンで被覆し、かつ、被覆物が黒鉛粉の結合力を強めた処理(以降、単に「含浸処理」ともいう。)、(2)さらに表面の黒鉛粉の脱落を抑制する光沢処理、(3)さらに黒鉛粉間の隙間を埋めることでガス・液体の透過を抑制する緻密処理、がある。本実施形態で使用するルツボ本体は、これらいずれかの処理が為されたものを包含する。この中で、緻密処理が為されたタイプが好ましく、ルツボの内面が、緻密処理されたタイプが特に好ましい。
使用するシートについて説明する。シート本体は、黒鉛製のシート又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のシートとする。シートにおいてもルツボ本体と同様に、黒鉛にガラス状カーボンを含浸させる処理は、含浸処理、光沢処理及び緻密処理の三形態がある。本実施形態で使用するシート本体は、これらいずれかの処理が為されたものを包含する。この中で、緻密処理が為されたタイプが好ましく、シートの両面が緻密処理されたタイプが特に好ましい。
次に、図1〜図4を参照して、ルツボに対するシートの配置の関係について説明する。ルツボ本体1は、有底円筒形である場合を示した。シートは、ルツボの内面を覆うように配置することが好ましく、例えば、(1)図1に示したように、帯状シートを巻き回して、筒状シート2とし、ルツボ本体1の内側の側面を覆うように配置する形態1、(2)図2に示したように、ルツボ本体1の底と同形状のシート3をルツボ本体1の内底面に敷く形態2、(3)図3に示したように、形態1と形態2の両方を組み合わせて、ルツボ本体1の内側の側面と内底面とを筒状シート2及びルツボ本体1の底と同形状のシート3で覆うように配置する形態3、(4)図4に示したように、シートをルツボの内面形状に合わせて有底筒状シート6とし、ルツボ本体1の内側を有底筒状シート6で覆うように配置する形態4、がある。なお、これらの形態では、1枚のシートを用いる形態であっても複数枚のシートを組み合わせる形態としてもよい。図1、図2及び図4に示した形態は、例えば1枚のシートを用いる形態であり、図3に示した形態は、例えば2枚のシートを用いる形態である。なお、図5は図1におけるA−A断面図である。図6は図2におけるB−B断面図である。
ルツボの内面を覆うようにシートが配置され、かつ、ルツボの中に結晶の原料及び種結晶が入っているとき、原料及び種結晶と接触する部分(以降、「接触部分」ともいう。)が生じる。すなわち、接触部分は、(1)前記ルツボの内面であるか、(2)前記ルツボの内側に配置した黒鉛製の又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のシートであるか、又は、(3)前記ルツボの内面及び前記シートの両方である。より具体的には、ルツボに対するシートの配置の関係で挙げた形態1では、筒状シート2の内側の面とルツボ本体1の内底面が接触部分となる。同じく形態2では、ルツボ本体1の内側の側面とルツボ本体1の底と同形状のシート3の上面が接触部分となる。同じく形態3では、筒状シート2の内側の面とルツボ本体1の底と同形状のシート3の上面が接触部分となる。同じく形態4では、有底筒状シート6の内側面が接触部分となる。
本実施形態では、少なくとも前記接触部分に白金被膜を形成する。つまり、原料又は種結晶の少なくともいずれか一方と接触する部分は、融液と接触する部分を含むがルツボ本体又はシート本体と直接接触するとルツボ本体又はシート本体由来の黒鉛粉が融液に混入することがあり、また、ルツボ本体の壁に融液が浸透してルツボの外に融液がしみだしてしまうことがある。そこで、ルツボ又はシートのうち、少なくとも接触部分を含む部分に白金被膜を形成することで、融液への黒鉛粉の混入の問題及びルツボの外への融液しみだしの問題を抑制する。例えば、図1に示した筒状シート2を配置したルツボ100Aでは、図7に示すように白金被膜5を筒状シート2の内面に形成し、かつ、図8に示すように白金被膜5をルツボ本体1の内底面に形成する。図2に示したルツボ本体1の底と同形状のシート3を配置したルツボ100Bでは、図9に示すように白金被膜5をルツボ本体1の内側の側面に形成し、かつ、図10に示すように白金被膜5をルツボ本体1の底と同形状のシート3の上面に形成する。図3に示したルツボ本体1の内側の側面と内底面とを筒状シート2及びルツボ本体1の底と同形状のシート3で覆うように配置したルツボ100Cでは、図7に示すように白金被膜5を筒状シート2の内面に形成し、かつ、図10に示すように白金被膜5をルツボ本体1の底と同形状のシート3の上面に形成する。図4に示したルツボ本体1の内側を有底筒状シート6で覆うように配置したルツボ100Dでは、図11及び図12に示すように、有底筒状シート6の内側面に白金被膜5を形成する。そして、原料及び種結晶と接触する部分に加えて、接触しない部分についてもこれらの問題の発生を予防することを目的として白金被膜を形成することが好ましい。すなわち、シートの両面に白金被膜を形成することが好ましい。シートが融液と接触する面の反対面にも白金被膜を形成することで、当該反対面に融液が回り込んできたとしても、シートに由来する不純物の混入を防ぐことができる。また、ルツボ本体の内側の側面又は底面、好ましくはこれらの両方に白金被膜を形成することで、シートから漏れてルツボまで融液が回り込んできたとしても、ルツボに由来する不純物の混入を防ぐことができ、また、ルツボへの被害を防ぐことができる。例えば、ルツボに対するシートの配置の関係で挙げた形態1では、図13に示すように筒状シート2の外側の面にも白金被膜5を形成することが好ましく、図14に示すように筒状シート2の外側の面とルツボ本体1の内側の側面にも白金被膜5を形成することがより好ましい。同じく形態2では、図15に示すようにルツボ本体1の底と同形状のシート3の下面にも白金被膜5を形成することが好ましく、図16に示すようにルツボ本体1の底と同形状のシート3の下面と、ルツボ本体1の内底面にも白金被膜5を形成することが好ましい。同じく形態3では、図13に示すように筒状シート2の外側の面にも白金被膜5を形成することが好ましく、図14に示すように筒状シート2の外側の面とルツボ本体1の内側の側面にも白金被膜5を形成することがより好ましい。また、図15に示すようにルツボ本体1の底と同形状のシート3の下面にも白金被膜5を形成することが好ましく、図16に示すようにルツボ本体1の底と同形状のシート3の下面と、ルツボ本体1の内底面にも白金被膜5を形成することが好ましい。同じく形態4では、図17及び図18に示すように有底筒状シート6の外側の面にも白金被膜5を形成することが好ましく、図19及び図20に示すように有底筒状シート6の外側の面とルツボ本体1の内側の側面にも白金被膜5を形成することがより好ましい。このように、本実施形態では(1)シート本体の内面のみ、(2)シート本体の内面と外面の両方、(3)シート本体の内面とルツボの内側面、(4)シート本体の内面と外面の両方及びルツボの内側面、(5)シートを敷かない場合にはルツボの内側面、に白金被膜を形成することが好ましい。
本実施形態では、図21及び図22に示すようにシートを用いない形態5を包含する。ルツボ200は、図23及び図24に示すように内側の側面及び内底面に白金被膜5が形成されている。ルツボ本体1は有底円筒形である場合を示した。
次に白金被膜について説明する。白金被膜は具体的には白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって形成する。白金ペーストは、Pt粉末と有機バインダーと溶剤とを主として含み、かつ、単結晶の不純物となる金属を含有させない。有機バインダーと溶剤は、焼成によって、分解蒸発する物質であればよい。また、白金元素を含む湿式コーティング液は、例えば特許文献2に記載の白金の被膜方法で用いる白金塗布液が好ましい。具体的にはジニトロジアンミン白金と、アンモニア、アンモニウム塩及びアミンから成る群から選択される還元剤と、アルコール又はアルコールアミンである界面活性剤と、これらを溶解する溶媒とを含んで成る白金塗布液である。
ルツボ本体又はシート本体の表面のうち、少なくとも白金被膜を形成する部分について新たな表面層が露出する程度に軽く研摩し、生じた粉を充分に除去する。次に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成する。塗布方法は特に限定しないが刷毛塗り等の方法で行う。焼成温度は、好ましくは110〜750℃の範囲内、例えば、120℃、150℃、400℃、720℃とする。特許文献2に記載の白金塗布液を用いる場合には、基材表面に塗布し熱処理することによりジニトロジアンミン白金を金属白金に還元して基材表面に析出させる。白金被覆条件は特に制限されないが、例えば前記白金塗布液を被処理物である基材に塗布し、60℃程度で半乾燥し、それを350℃から600℃程度に保持したマッフル炉中に入れて熱分解を行い、あるいは塗布後に火炎にて加熱熱分解して白金を析出させる。これを繰り返して所定の厚さにする。白金被膜の厚さは、1〜50μm、好ましくは1.5〜25μm、より好ましくは2〜10μmである。白金塗布液による白金被膜をこの膜厚範囲で形成することによって、単結晶の離型性を高めることができる。膜厚が50μmよりも大きく、白金塗布液又は白金ペースト以外による白金被膜であると、単結晶の離型性が損なわれる。また、膜厚が1μmよりも小さいと、るつぼの表面に直接、融液が触れる恐れがある。加熱熱分解後の白金被膜の塗布量は20〜1000g/m2、好ましくは30〜500g/m2、より好ましくは40〜200g/m2である。焼き付け時間は3分ないし15分程度であるが、それより長くても基材の変質が起こらない限りは問題にはならない。なお加熱時の雰囲気は特に指定されず、酸化雰囲気でも良いし、中性あるいは還元雰囲気でも良い。なお加熱雰囲気中に塩素根が混入しないようにする必要がある。このようにして焼き付けた白金は所定量の被覆を行った後に更に安定化の加熱も合わせて行うことが出来、これによって更に強固な被覆とすることが出来る。このときに白金塗布液が塩素根を含まないため、白金の揮散がほとんどなく、またアンモニウム、アンモニアあるいはアミンという有効な還元剤により白金イオンが金属白金に還元される。塩素根を含まないこと及び還元剤の働きで、熱分解時には緻密な金属白金の被膜を作ることが出来、さらに極めて高い歩留まり、実質的にほぼ100%の歩留まりが達成できる。白金ペーストを用いる場合には、基材表面に塗布し熱処理することにより白金ペースト被膜を基材表面に焼き付ける。
このような白金被膜を形成する理由は次の通りである。(1)白金は化学的安定性が非常に高い、(2)白金箔の内張りは大きさが限定され自由度が低くなってしまうところ、コーティングする場合は形状の制約がなく製作自由度が高い、(3)白金板の内張りは型が必要であり、また、板厚もあることからコストが高い、(4)白金をコーティングにより形成すれば、現場での塗布作業が可能である。
本実施形態では、ルツボの内側にシートを配置する工程において、帯状のシートを巻きまわして筒状シートとしてから配置する場合、白金被膜に接着剤の役割をさせることもできる。具体的には、シートに白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布した後、該シートを一周巻き以上とし、かつ、巻き重なり部分(例えば、図5の符号4で示した部分である。)を接触させた状態でルツボの内側に配置し、次いで、該シートを焼成することで、巻き重なり部分において白金を相互拡散させて該シートの巻き重なり部分を接合することが好ましい。白金を相互拡散させてシートの巻き重なり部分を接合することで巻き重なりの隙間に融液が浸透し、るつぼの内面に到達することを防ぐことができる。また、白金被膜がシートの接着剤を兼ねることとなるため融液への不純物の混入を防ぐことができる。このとき、白金元素を含む湿式コーティング液を用いる場合、重ね塗りをせずに一度の塗布で白金の被膜化とシートの接着を行なう。白金ペーストを用いる場合、同様に重ね塗りをせずに一度の塗布で白金の被膜化とシートの接着を行なう。
本実施形態では、融液と黒鉛との接触を抑制するために、また、単結晶の取り出し易さ及びシートのルツボからの離し易さの観点から次の工程を経ることが好ましい。具体的には、この工程はルツボの内面に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、シートを一周巻き以上の筒状シートとし、かつ、筒状シートの内面及び外面の両方に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、筒状シートとは別にシートをルツボの底と同形状の底敷き用シートとし、かつ、底敷き用シートの両面に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、内面に白金被膜を形成したルツボの内底に白金被膜を形成した底敷き用シートを敷き、かつ、該ルツボに白金被膜を形成した筒状シートを入れて該ルツボの内側の側面と該筒状シートの外面とを向い合わせに配置する(形態3に対応する。)。ここで、白金被膜で筒状シートの巻き重なり部分を接着することがより好ましい。ルツボの内底と内側の側面にシートが密着し、育成された単結晶とルツボとの境界部分にシートが介在することとなるため離型性が向上する。また、ルツボとの接触がなくなるため単結晶中への不純物の混入が抑制される。
(第三工程)
第二工程で準備した白金被膜を施したルツボ、白金被膜を施したシートを内側に配置したルツボ、又は、白金被膜を施したシートを内側に配置した白金被膜を施したルツボに、第一工程で準備した原料及び種結晶をこの中に入れる。まず種結晶を入れ、次に原料を入れることが好ましい。
第二工程で準備した白金被膜を施したルツボ、白金被膜を施したシートを内側に配置したルツボ、又は、白金被膜を施したシートを内側に配置した白金被膜を施したルツボに、第一工程で準備した原料及び種結晶をこの中に入れる。まず種結晶を入れ、次に原料を入れることが好ましい。
(第四工程)
ブリッジマン法に従い、電気炉内に温度勾配を形成した状態で、種子結晶側を先端にしてルツボを高温側から低温側に徐々に移動させることにより、種子結晶側より順次に結晶を成長させる。
ブリッジマン法に従い、電気炉内に温度勾配を形成した状態で、種子結晶側を先端にしてルツボを高温側から低温側に徐々に移動させることにより、種子結晶側より順次に結晶を成長させる。
(第五工程)
本実施形態では、第四工程が終了し、単結晶をルツボから取り出すときに次の工程をさらに有することが好ましい。具体的には、アルカリハライド単結晶の育成が完了した後、該アルカリハライド単結晶の取り出しと共にシートをルツボから取り外す工程と、次いで、新規のシートを配置して次のアルカリハライド単結晶の育成を行なう工程と、をさらに有することが好ましい。ルツボから単結晶の取出しが容易であり、融液と接触する部分のみのシート交換によって次の結晶育成を行うことができ、また、ルツボを痛めることがない。なお、新規のシートには、前回使用したシートと同様に白金被膜が施されたシートを用いることが好ましい。
本実施形態では、第四工程が終了し、単結晶をルツボから取り出すときに次の工程をさらに有することが好ましい。具体的には、アルカリハライド単結晶の育成が完了した後、該アルカリハライド単結晶の取り出しと共にシートをルツボから取り外す工程と、次いで、新規のシートを配置して次のアルカリハライド単結晶の育成を行なう工程と、をさらに有することが好ましい。ルツボから単結晶の取出しが容易であり、融液と接触する部分のみのシート交換によって次の結晶育成を行うことができ、また、ルツボを痛めることがない。なお、新規のシートには、前回使用したシートと同様に白金被膜が施されたシートを用いることが好ましい。
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
(実施例1)
内径160mm、内部高さが290mmの円筒形状の黒鉛ルツボを準備した。壁の肉厚は10mmとした。次に幅290mm、長さ520mm、厚さ0.2mmの帯状の黒鉛シートを準備した。次にツルボの内底面と同形状の厚さ0.2mmの黒鉛シートを準備した。次に黒鉛ルツボの内面及び黒鉛シートの両面を2000番のエメリーで軽く磨いた。そして、発生した粉を十分に拭き取った。次にcis−ジニトロジアンミン白金(II)10g(白金として約6g)を脱イオン水に添加し、更に界面活性剤としてイソプロパノールアミンを白金量に対して5%( 約0.3g)となるように秤取し前記脱イオン水に加えた。この脱イオン水を温度60℃ で攪拌しながらジニトロジアンミン白金を溶解させた。最初薄い黄色の懸濁液であったが溶解につれて透明性が増し薄い黄色の透明液体になった。この透明液体の攪拌を続け、15分ほどで加熱をやめて攪拌のみ続けた。液の温度が40℃程度になったとき、イソプロピルアルコールと脱イオン水の1:1の混合液を添加し白金含有量が20質量%となるようにして白金塗布液を作製した。黒鉛ルツボの内面、ルツボの内底面と同形状の黒鉛シートの両面、及び、帯状の黒鉛シートの両面に白金塗布液を刷毛塗りした。次に100〜200℃、真空雰囲気(100Pa、以降同じ。)でこれらを10分間乾燥させた。次に400℃、真空雰囲気(10Paにて、60分間仮焼成した。そして、白金塗布液を刷毛塗りから仮焼成までの工程を5回繰り返した。次に700℃、真空雰囲気(10Pa)で6時間焼成した。100℃以下となってから焼成炉(電気炉)から取り出した。白金被膜の厚さは7μmであった。作製した白金被膜付きの黒鉛ルツボの中に白金被膜付きの黒鉛シートを敷き、さらに作製した白金被膜付きの帯状黒鉛シートを巻き回して筒状シートとし、ルツボの側面と筒状シートの外面とが向い合わせになるように筒状シートをルツボ内に配置した。次に、NaIの種結晶を調製したルツボ内に入れ、さらにNaI原料粉末をルツボの開口部の縁まで入れた。そして、ブリッジマン法にてNaI単結晶を育成した。条件を(条件1)に示す。
(条件1)
a.使用炉:電気炉
b.炉内加熱温度:750℃
c.到達真空度:2Pa
d.結晶成長圧力:5kPa
e.成長速度:0.5mm/h
内径160mm、内部高さが290mmの円筒形状の黒鉛ルツボを準備した。壁の肉厚は10mmとした。次に幅290mm、長さ520mm、厚さ0.2mmの帯状の黒鉛シートを準備した。次にツルボの内底面と同形状の厚さ0.2mmの黒鉛シートを準備した。次に黒鉛ルツボの内面及び黒鉛シートの両面を2000番のエメリーで軽く磨いた。そして、発生した粉を十分に拭き取った。次にcis−ジニトロジアンミン白金(II)10g(白金として約6g)を脱イオン水に添加し、更に界面活性剤としてイソプロパノールアミンを白金量に対して5%( 約0.3g)となるように秤取し前記脱イオン水に加えた。この脱イオン水を温度60℃ で攪拌しながらジニトロジアンミン白金を溶解させた。最初薄い黄色の懸濁液であったが溶解につれて透明性が増し薄い黄色の透明液体になった。この透明液体の攪拌を続け、15分ほどで加熱をやめて攪拌のみ続けた。液の温度が40℃程度になったとき、イソプロピルアルコールと脱イオン水の1:1の混合液を添加し白金含有量が20質量%となるようにして白金塗布液を作製した。黒鉛ルツボの内面、ルツボの内底面と同形状の黒鉛シートの両面、及び、帯状の黒鉛シートの両面に白金塗布液を刷毛塗りした。次に100〜200℃、真空雰囲気(100Pa、以降同じ。)でこれらを10分間乾燥させた。次に400℃、真空雰囲気(10Paにて、60分間仮焼成した。そして、白金塗布液を刷毛塗りから仮焼成までの工程を5回繰り返した。次に700℃、真空雰囲気(10Pa)で6時間焼成した。100℃以下となってから焼成炉(電気炉)から取り出した。白金被膜の厚さは7μmであった。作製した白金被膜付きの黒鉛ルツボの中に白金被膜付きの黒鉛シートを敷き、さらに作製した白金被膜付きの帯状黒鉛シートを巻き回して筒状シートとし、ルツボの側面と筒状シートの外面とが向い合わせになるように筒状シートをルツボ内に配置した。次に、NaIの種結晶を調製したルツボ内に入れ、さらにNaI原料粉末をルツボの開口部の縁まで入れた。そして、ブリッジマン法にてNaI単結晶を育成した。条件を(条件1)に示す。
(条件1)
a.使用炉:電気炉
b.炉内加熱温度:750℃
c.到達真空度:2Pa
d.結晶成長圧力:5kPa
e.成長速度:0.5mm/h
単結晶の育成が完了後、単結晶のルツボからの取り出しを行なった。単結晶は白金被膜が付いたシートと共に取り出すことができ、その後、単結晶からシートを取外し、単結晶表面を軽く研磨するだけで単結晶表面の白金被膜を除去した。
実施例1で育成したNaI結晶の内部を目視で異物の有無を観察した。その結果、単結晶内に黒鉛ルツボに由来する粉が観察されなかった。
(実施例2)
NaIの種結晶及びNaI原料粉末の代わりに、CsIの種結晶とCsI原料粉末を用い、条件1を条件2に変更した以外は実施例1と同様にして、ブリッジマン法にてCsI単結晶を育成した。条件を(条件1)に示す。
(条件2)
a.使用炉:電気炉
b.炉内加熱温度:650℃
c.到達真空度:10−2Pa
d.結晶成長圧力:10kPa
e.成長速度:0.5mm/h
NaIの種結晶及びNaI原料粉末の代わりに、CsIの種結晶とCsI原料粉末を用い、条件1を条件2に変更した以外は実施例1と同様にして、ブリッジマン法にてCsI単結晶を育成した。条件を(条件1)に示す。
(条件2)
a.使用炉:電気炉
b.炉内加熱温度:650℃
c.到達真空度:10−2Pa
d.結晶成長圧力:10kPa
e.成長速度:0.5mm/h
実施例2で育成したCsI結晶の内部を目視で異物の有無を観察した。その結果、単結晶内に黒鉛ルツボに由来する粉が観察されなかった。また、使用したルツボの表面を観察し、その結果、ルツボの外部に融液が漏洩した痕跡が見つからなかった。
(実施例3)
実施例1において、ルツボの内面に白金被膜を形成しなかった以外は同様にして、ブリッジマン法にてNaI単結晶を育成した。
実施例1において、ルツボの内面に白金被膜を形成しなかった以外は同様にして、ブリッジマン法にてNaI単結晶を育成した。
単結晶の育成が完了後、単結晶のルツボからの取り出しを行なった。
実施例3で育成したNaI結晶の内部を電子顕微鏡及び光学顕微鏡を用いて異物の有無を観察した。その結果、単結晶内に黒鉛ルツボに由来する粉が観察されなかった。また、使用したルツボを切断して、断面を電子顕微鏡及び光学顕微鏡を用いて観察した。その結果、ルツボの内部に、融液がしみ込んだ跡が見つからなかった。
(比較例1)
実施例1において、ルツボの内底面と同形状の黒鉛シート及び帯状の黒鉛シートに白金被膜を形成しなかった以外は同様にしてブリッジマン法にてNaI単結晶を育成した。
実施例1において、ルツボの内底面と同形状の黒鉛シート及び帯状の黒鉛シートに白金被膜を形成しなかった以外は同様にしてブリッジマン法にてNaI単結晶を育成した。
単結晶の育成が完了後、単結晶のルツボからの取り出しを行なった。しかしながら、NaIの結晶はシートを超えて黒鉛ルツボまで漏れ出し、浸透しており、通常に取り出すことができず。黒鉛ルツボの浸透部を破壊し、結晶を取り出した。
比較例1で育成したNaI結晶の内部を目視で異物の有無を観察した。その結果、単結晶内に黒鉛ルツボに由来する粉が観察された。また、使用したルツボの外壁を観察した。その結果、ルツボの外壁に滲みが見つかった。
1 ルツボ本体
2 筒状シート
3 ルツボの底と同形状のシート
4 巻き重なり部分
5 白金被膜
6 有底筒状シート
100A,100B,100C,100D シートを配置したルツボ
200 シートを配置していないルツボ
2 筒状シート
3 ルツボの底と同形状のシート
4 巻き重なり部分
5 白金被膜
6 有底筒状シート
100A,100B,100C,100D シートを配置したルツボ
200 シートを配置していないルツボ
Claims (6)
- 黒鉛製のルツボ又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のルツボの中に原料及び種結晶を装填し、ブリッジマン法によってアルカリハライド単結晶を育成するアルカリハライド単結晶の製造方法において、
前記原料又は前記種結晶の少なくともいずれか一方と接触する部分が、
(1)前記ルツボの内面であるか、
(2)前記ルツボの内側に配置した黒鉛製の又はガラス状カーボンを含浸させた黒鉛製のシートであるか、又は、
(3)前記ルツボの内面及び前記シートの両方であり、
前記ルツボ又は前記シートのうち、少なくとも前記接触する部分を含む部分に白金被膜を形成する工程を含み、
該白金被膜を白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって形成することを特徴とするアルカリハライド単結晶の製造方法。 - 前記シートの両面に前記白金被膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のアルカリハライド単結晶の製造方法。
- 前記ルツボの内側に前記シートを配置する工程において、
前記シートに白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布した後、該シートを一周巻き以上とし、かつ、巻き重なり部分を接触させた状態で前記ルツボの内側に配置し、
次いで、該シートを焼成することで前記巻き重なり部分において白金を相互拡散させて該シートの巻き重なり部分を接合することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリハライド単結晶の製造方法。 - 前記ルツボの内面に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、
前記シートを一周巻き以上の筒状シートとし、かつ、該筒状シートの内面及び外面の両方に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、
前記筒状シートとは別に前記シートを前記ルツボの底と同形状の底敷き用シートとし、かつ、該底敷き用シートの両面に白金ペースト又は白金元素を含む湿式コーティング液を塗布、焼成することによって白金被膜を形成し、
内面に白金被膜を形成したルツボの内底に白金被膜を形成した底敷き用シートを敷き、かつ、該ルツボに白金被膜を形成した筒状シートを入れて該ルツボの内側の側面と該筒状シートの外面とを向い合わせに配置することを特徴とする請求項1〜3に記載のアルカリハライド単結晶の製造方法。 - アルカリハライド単結晶の育成が完了した後、該アルカリハライド単結晶の取り出しと共に、前記シートを前記ルツボから取り外す工程と、
次いで、新規のシートを配置して次のアルカリハライド単結晶の育成を行なう工程と、をさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のアルカリハライド単結晶の製造方法。 - アルカリハライド単結晶が、NaI又はCsIであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のアルカリハライド単結晶の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014102607A JP2015218083A (ja) | 2014-05-16 | 2014-05-16 | アルカリハライド単結晶の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP2015218083A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017132655A (ja) * | 2016-01-27 | 2017-08-03 | 株式会社新興製作所 | Mg2Si1−xSnx結晶の製造方法及び製造装置 |
CN109023504A (zh) * | 2018-09-21 | 2018-12-18 | 中国科学院近代物理研究所 | 一种生长CsI(Tl)晶体的石英坩埚 |
-
2014
- 2014-05-16 JP JP2014102607A patent/JP2015218083A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017132655A (ja) * | 2016-01-27 | 2017-08-03 | 株式会社新興製作所 | Mg2Si1−xSnx結晶の製造方法及び製造装置 |
CN109023504A (zh) * | 2018-09-21 | 2018-12-18 | 中国科学院近代物理研究所 | 一种生长CsI(Tl)晶体的石英坩埚 |
CN109023504B (zh) * | 2018-09-21 | 2020-11-10 | 中国科学院近代物理研究所 | 一种生长CsI(Tl)晶体的石英坩埚 |
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