JP2015214651A - ポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶性樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂のペレット化を可能とするポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法を提供する。【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出機1にて溶融押出してストランド5を形成する工程と、上記ストランド5を冷却した後、ストランド5をペレット状に切断する工程とを備えたポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法であって、上記ストランド5の冷却工程が、ストランド5の下側表面を、それ自体が冷却された金属製エンドレスベルト6表面に接触させるとともに、そのストランド5表面に霧を噴霧した後、ストランド5に乾燥ガスを噴射させることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、各種成形品の成形材料として用いることのできるポリビニルアルコール系樹脂(以下「PVA」という)製ペレットの製法に関するものである。
従来から、疎水性の熱可塑性樹脂は、上記熱可塑性樹脂を溶融混練にてストランドに押し出して水接触冷却(水流浸漬)した後、切断装置にてペレット形状に切断することによりペレット化することが行なわれており、得られたペレットは各種成形材料に供されている。このように、疎水性を示す熱可塑性樹脂に関しては、上記のように水接触冷却方法により冷却することが可能であり、ペレットも容易に製造することができる。しかしながら、水溶性樹脂であるPVAは、上記のようにストランドに押出した後、水接触冷却により冷却しようとすると溶解してしまうこととなり、効果的に冷却することができず、溶融押出したストランドをペレット形状に切断することが困難であった。
このため、水溶性樹脂であるPVAのペレット化が検討されている。例えば、揮発成分を除去したPVAを準備し、これをベルト上にストランド形状に押出成形した後、上記ベルト上に押し出されたPVAを空冷あるいは風冷して、ペレタイザー等の切断装置にてペレット化することが提案されている(特許文献1参照)。
特開2012−149144号公報
しかしながら、上記特許文献1の製法では、溶融混練して押し出された高温のストランドの冷却方法として空冷あるいは風冷により冷却したものを切断して所望のペレットを製造するというものであることから、上記冷却手段により切断可能となる温度まで冷却しようとすれば長時間の冷却を必要とし、工業的生産という観点から現実的ではなく、例えば、高融点のPVAにおいては押し出されたストランドは、さらに高温であり一層冷却が困難となるという問題がある。このように、水溶性樹脂であるPVAを原料としてペレット化するという製造方法に関しては現実的な製造方法が未だ確立されていないのが実情である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、水溶性樹脂であるPVAのペレット化を可能とするPVA製ペレットの製法の提供をその目的とする。
本発明者は、上記事情に鑑み、従来は工業的に生産することが困難であった水溶性樹脂であるPVAのペレットを得るために一連の研究を行なった。そして、水溶性樹脂であるPVA粉末を溶融押出してなる高温状態のストランドをいかに冷却してペレット状に切断可能にするか、このストランドの冷却方法を主眼に研究を進めた。その結果、溶融押出したストランドをそれ自体が冷却された金属製ベルトに接触させ、その接触面を冷却するとともに、そのストランドの金属製ベルト非接触面には霧を噴霧した後、このストランドに乾燥ガスを噴射させることにより、高温状態のストランドを効果的に冷却することが可能となり、その結果、この冷却したストランドを工業的に効率的にペレット状に切断することが可能となることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記目的を達成するため、本発明のPVA製ペレットの製法は、PVAを溶融押出してストランドを形成する工程と、上記ストランドを冷却した後、ストランドをペレット状に切断する工程とを備えたPVA製ペレットを製造する方法であって、上記ストランドの冷却工程が、それ自体が冷却された金属製ベルト表面にストランドを接触させるとともに、そのストランド表面に霧を噴霧した後、ストランドに乾燥ガスを噴射させるという構成をとる。
従来では製造が困難であった水溶性樹脂であるPVA製ペレットを工業的に高効率にて製造することが可能となる。
そして、上記ストランドをペレット状に切断する際のストランドの温度が95℃以下、特に35〜95℃であると、ストランド自体がペレタイザーに巻き付いたり、切断後のストランド同士の引っ付きがなく、効率的に切断することが可能となる。
また、上記ストランドをペレット状に切断する工程が、ストランドの温度35〜95℃、かかるストランドの含水量が0.1重量%未満の条件で行なわれると、ストランド自体がペレタイザーに巻き付いたり、切断後のペレット同士の引っ付きがなく、効率的に切断することが可能となる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出してストランドを形成する工程が、粉末状のポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出機に投入してストランドを押出形成するとともに、投入した粉末状ポリビニルアルコール系樹脂が完全溶融状態となる前の領域に予備ベントが形成されてなる溶融押出機を用いて行なわれると、溶融混練が支障なく行なわれ、均一なストランドを形成することが可能となる。
本発明のPVA製ペレットの製法の一例を模式的に示す工程図である。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
本発明のPVA製ペレットの製法は、
(1)PVAを溶融押出してストランドを形成する工程と、
(2)上記ストランドを冷却した後、ストランドをペレット状に切断する工程
とを備えたPVA製ペレットの製法である。そして、本発明においては、このような製法において、ストランドの冷却工程を、後に記載のように、従来にはない特殊な冷却方法および工程にて行なうことを特徴とするものである。
まず、本発明のPVA製ペレットの製法において、原料として使用されるPVAについて説明し、上記製法はその後で説明する。
《PVA》
本発明のPVA製ペレットの製法に用いられるPVAは、通常、粉末状であり、未変性のPVAおよび変性PVAのいずれでもよい。上記変性PVAとしては、例えば、アセトアセチル化PVA、オキシアルキレン基含有PVA、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVA、カルボン酸変性PVA等があげられる。中でも、融点が低く、溶融成形する際に比較的低温で溶融できるという点から、上記側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAが特に好ましい。
上記PVAのケン化度は、通常、72〜100モル%、好ましくは78〜98.5モル%、特に好ましくは86〜96モル%である。上記ケン化度が高過ぎると成形温度が高くなり、溶融成形可能な温度範囲が狭くなり、溶融成形が困難になる傾向があり、低すぎると、柔軟性が高くなりすぎて、成形物の表面がベタベタする傾向がある。
そして、上記PVAの平均重合度(JIS K6726に準拠)は、通常、300〜1100、特には450〜800、さらには500〜650であることが好ましい。平均重合度が大きすぎると、溶融成形時にせん断発熱が発生しやすく、樹脂が熱分解する傾向がみられ、逆に、平均重合度が小さすぎると、得られた成形物の強度が低くなる傾向がみられる。
さらに、上記PVAは粉末状であり、その平均粒子径は、通常50〜2000μm、好ましくは100〜1700μm、特に好ましくは150〜1500μmである。
ここで、平均粒子径とは、PVA粒子を、目開き、1700μm、1000μm、850μm、500μm、250μm、150μmの篩を用い、篩振とう機にて粒径が1700μm以上、1000μm以上1700μm未満、850μm以上1000μm未満、500μm以上850μm未満、250μm以上500μm未満、150μm以上250μm未満のものに分別し、各々の重量から求めた粉体粒度分布の累積値が50重量%となる粒子径をいう。
上記PVAはビニルエステル系モノマーを重合し、更にそれをケン化することにより製造される。上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。経済的な点から、特に好ましくは酢酸ビニルが用いられる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
また、上記変性PVAは、ビニルエステル系モノマーと他の不飽和単量体との重合体をケン化して製造されたり、ポリビニルアルコールを後変性したりして製造される。
上記他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等があげられる。
また、上記後変性の方法としては、PVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等があげられる。
そして、先に述べたように、本発明に用いられるPVAとしては、融点が低く、溶融成形する際に比較的低温で溶融できるという点から、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAを用いることが好ましい。
<側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVA>
上記側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAは、具体的には、下記の一般式(1)で表わされる、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAであり、式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。
Figure 2015214651
なお、上記側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAの上記式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常、0.3〜20モル%程度であり、残る部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と若干量の酢酸ビニル構造単位からなる。
上記式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR1〜R3、及びR4〜R6は、すべて水素原子であることが好ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が好ましく、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
また、上記式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のXは代表的には単結合であり、熱安定性の点で単結合であるものが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよく、かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2m−、−(CH2O)mCH2−、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等があげられ(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)、その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CH2OCH2−が好ましい。
上記側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAは、例えば、(i)ビニルエステル系モノマーと下記の一般式(2)で示される化合物(例えば、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)との共重合体をケン化する方法、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記の一般式(3)で示される化合物(例えば、ビニルエチレンカーボネート)との共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記の一般式(4)で示される化合物(例えば、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)との共重合体をケン化および脱ケタール化する方法、(iv)ビニルエステル系モノマーとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得ることができる。中でも、上記(i)ビニルエステル系モノマーと下記の一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法が好適に用いられる。
Figure 2015214651
Figure 2015214651
Figure 2015214651
なお、上記各方法において用いられるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
以下、上記(i)、(ii)、(iii)の各方法について詳しく説明する。
[(i)の方法]
上記(i)の方法は、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(2)で示される化合物とを共重合したのちケン化して、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVAを製造する方法である。
上記一般式(2)で示される化合物において、R1〜R3、R4〜R6およびXは上記一般式(1)と同様のものがあげられ、R7およびR8は、それぞれ独立して水素原子またはR9−CO−(式中、R9は、アルキル基、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、上記アルキル基は共重合反応性やそれに続く工程において悪影響を及ぼさない範囲で、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい)である。
上記一般式(2)で示される化合物としては、具体的にXが単結合である3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、Xがアルキレン基である4,5−ジヒドロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジヒドロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン、Xが−CH2OCH2−あるいは−OCH2−であるグリセリンモノアリルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、等があげられる。
中でも、共重合反応性および工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、R1、R2、R3、R4、R5、R6が水素、Xが単結合、R7、R8がR9−CO−でありR9がアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、そのなかでも特にR9がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。なお、酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1―ブテンを共重合させた時の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1ブテン)=0.701、であり、これは後述のビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
なお、上記3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、工業生産用ではイーストマンケミカル社、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。また、1,4―ブタンジオールの製造工程中の副生成物として得られる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを利用することもできる。
また、特開平10−212264号公報等に記載の1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを3,4−ジアセトキシ−1−ブテンに変換する方法等、公知の技術を利用して得ることもできる。
上記ビニルエステル系モノマーと一般式(2)で表される化合物とを共重合するに当たっては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行なわれる。
共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、中でも、一般式(2)で示される化合物に由来する1,2−ジオール構造単位がポリビニルエステル系ポリマーの分子鎖中に均一に分布させられる点から滴下重合が好ましく、特には酢酸ビニルとの反応性比を用いたHANNA法に基づく重合方法が好ましい。
なお、上記滴下重合とは、共重合の際に反応系内のモノマー比率を一定範囲に保つために、いずれか一方あるいは両方のモノマーを連続的あるいは非連続的に滴下しながら重合させるものであり、特に、両モノマーの反応性比に基づいて計算されたモノマー消費速度に見合う速度でモノマーの滴下を行ない、系内のモノマー比率をほぼ一定に保つようにしたのがHANNA法による滴下重合である。
上記共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等があげられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
上記溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.04〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、上記重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等の低温活性ラジカル重合触媒等があげられ、重合触媒の使用量は、コモノマーの種類や触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して0.002〜0.7モル%が好ましく、特には0.004〜0.5モル%が好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により30℃〜沸点程度で行なわれ、より具体的には、35〜90℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行なわれる。
得られた共重合体は、さらにケン化されるのであるが、上記ケン化にあたっては上記のようにして得られた共重合体をアルコール等の溶媒に溶解し、アルカリ触媒または酸触媒を用いて行なわれる。代表的な溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等があげられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒があげられる。
上記ケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマーおよび前記一般式(2)〜(4)で示される化合物に由来する1,2−ジオール構造単位の合計量1モルに対して0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜17ミリモルの割合が適当である。
また、ケン化反応の反応温度は、例えば、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
なお、(i)の方法により得られてなる側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAは、(ii)の方法や(iii)の方法によるものと異なり、そのケン化度によっては側鎖にアセトキシ基が残存する。上記側鎖アセトキシ基は側鎖水酸基よりも大きく、主鎖アセトキシ基よりも自由度が大きいことから、PVAの結晶性阻害、水溶液としたときの界面特性、あるいは他素材との親和性等に対する効果が大きいものとなる。
また、(ii)の方法や(iii)の方法により得られてなる側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAは、ケン化度が低い場合や、脱炭酸あるいは脱アセタール化が不充分な場合には側鎖にカーボネート環あるいはアセタール環が残存する場合がある。一方、(i)の方法により得られてなる側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAは上述のような問題点はなく、製造時および製品となった後の安定性の点で優れている。
[(ii)の方法]
(ii)の方法は、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(3)で示される化合物とを共重合したのちケン化、脱炭酸して、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVAを製造する方法である。
上記一般式(3)で示される化合物において、R1〜R3、R4〜R6およびXは前記一般式(1)と同様のものがあげられる。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3、R4、R5、R6が水素で、Xが単結合であるビニルエチレンカーボネートが好適に用いられる。
上記ビニルエステル系モノマーと一般式(3)で示される化合物とを共重合およびケン化するに当たっては、上記(i)の方法と同様に行なわれる。
なお、脱炭酸については、特別な処理を施すことなく、ケン化とともに脱炭酸が行なわれ、エチレンカーボネート環が開環することで1,2−ジオール構造に変換される。
また、一定圧力下(常圧〜1×107Pa)で、かつ高温下(50〜200℃)でビニルエステル部分をケン化することなく、脱炭酸を行なうことも可能であり、かかる場合、脱炭酸を行なった後、上記ケン化を行なうこともできる。
[(iii)の方法]
(iii)の方法は、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(4)で示される化合物とを共重合したのちケン化、脱ケタール化して、上記一般式(1)で表わされる、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAを製造する方法である。
上記一般式(4)で示される化合物において、R1〜R3、R4〜R6およびXは上記一般式(1)と同様のものがあげられ、R10、R11はそれぞれ独立して水素又はアルキル基であり、上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。上記アルキル基は共重合反応性等を阻害しない範囲内において、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3、R4、R5、R6が水素で、R10、R11がメチル基である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランが好適である。
上記ビニルエステル系モノマーと上記一般式(4)で示される化合物とを共重合およびケン化するに当たっては、上記(i)の方法と同様に行なわれる。
なお、脱ケタール化については、ケン化反応がアルカリ触媒を用いて行なわれる場合は、ケン化後、さらに酸触媒を用いて水系溶媒(水、水/アセトン、水/メタノール等の低級アルコール混合溶媒等)中で脱ケタール化が行なわれ、1,2−ジオール構造に変換される。その場合の酸触媒としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等があげられる。
また、ケン化反応が酸触媒を用いて行なわれる場合は、特別な処理を施すことなく、ケン化とともに脱ケタール化が行なわれ、1,2−ジオール構造に変換される。
さらに、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAは、不飽和モノマーを共重合したものを用いることができる。上記不飽和モノマーの導入量としては、一概にはいえないが、導入量が多すぎると水溶性が損なわれる場合があり、好ましくない。
上記不飽和モノマーとしては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、アセトアセチル基含有モノマー等があげられる。
さらに、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレン基含有モノマー、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有モノマー等もあげられる。
また、重合温度を100℃以上にすることにより、PVA主鎖中に1,2−ジオール結合を1.6〜3.5モル%程度導入したものを使用することが可能である。
《PVA製ペレットの製法》
本発明のPVA製ペレットの製法は、上記粉末状のPVAを用いて、つぎのようにして行なわれる。
本発明のPVA製ペレットの製法は、先に述べたように、
(1)PVAを溶融押出してストランドを形成する工程と、
(2)上記ストランドを冷却した後、ストランドをペレット状に切断する工程
とを備えたPVA製ペレットの製法である。そして、上記ストランドの冷却工程を、ストランドの表面を、それ自体が冷却された金属製ベルト表面に接触させるとともに、そのストランド表面に霧を噴霧した後、ストランドに乾燥ガスを噴射させるという、従来にはない特殊な冷却方法にて行なうものである。
本発明のPVA製ペレットの製法の工程の一例を、図1に示す工程図に基づき順を追って説明する。ただし、本発明のPVA製ペレットの製法における工程は、ストランドの冷却工程が、上記特徴を備えていればよく、図1に示す工程に限定されるものではない。
<溶融押出工程>
図1に示す溶融押出機1の投入口2に、粉末状のPVAを投入し、溶融混練して単数あるいは複数の略棒状のストランド5に押出成形する。このとき押出されるストランド5の直径は、溶融押出機1の押出口に取り付けられる金型の孔の大きさによって適宜設定されるが、通常、0.5〜4.0mmであり、好ましくは1.0〜3.0mm、特に好ましくは1.5〜2.5mmである。
上記溶融混練の温度条件としては、250℃以下に設定することが好ましく、より好ましくは150〜240℃、特に好ましくは180〜230℃である。溶融混練の温度が高すぎると、PVAが熱分解してしまい所望のストランド5を押出成形することが困難となる。
上記溶融押出機1としては、外観等特に限定されるものではなく2軸スクリュー式であってもホッパー下が2軸スクリューで、その後、先端に向かって1軸スクリュー式になっている通常1.5軸といわれる押出機であってもよいが、通常、2軸スクリュー式の溶融押出機が用いられる。
そして、上記溶融押出機1としては、投入された粉末状のPVAが溶融し始めて、かつ完全溶融する前の領域にベント3(図1参照)が設けられた溶融押出機を用いることが好ましい。上記ベント3を設けることにより、原料であるPVA中に含まれる揮発成分を溶融押出機1外に脱気することが可能となり、揮発成分が溶融押出機1内に滞留し、バックプレッシャーとしてホッパー側に噴出すことを防止して、安定な粉末原料の供給と均一な混練状態を維持し、連続してストランド5を押出成形することが可能となる。
また、上記ベント3としては、PVAが溶融し始めてから、かつ完全溶融する前の領域に設けられ発生した揮発成分を脱気することが可能であればその個数を限定するものではなく少なくとも1つ設けられていればよく、好ましくは1つである。上記ベント3の口の形状は、通常、円形、楕円形や三角形、四角形、五角形等の多角形があげられ、好ましくは、円形または四角形である。ベント3の大きさ(口径)は、原料であるPVAの投入量や溶融押出機1の大きさ等によって適宜設定されるが、例えば、円形である場合は、直径20〜150mm程度に設定される。かかる口径が大きすぎると未溶融の粉末PVA原料が噴出しやすくなる傾向があり、小さすぎると未溶融の粉末PVA原料が詰まる傾向がある。
上記原料であるPVA中の揮発成分とは、PVAの製造過程にて生成する反応生成物、あるいはPVAの製造に使用される原料の残存物に由来するものであり、例えば、水、メチルアルコール、酢酸メチル等があげられる。上記揮発成分の含有量は、通常、原料であるPVA中、3〜5重量%程度である。
また、上記のベント3以外にも完全溶融した後にベント4を設けてもよく、その数は、1つであっても2つ以上の複数の多段に設けてあってもよい。
<ストランドの冷却工程>
本発明におけるストランドの冷却工程は、図1に示すように、上記溶融押出されたストランド5を、水冷式の金属製エンドレスベルト6面に載置し、金属製エンドレスベルト6の回転駆動によりストランド5を移動させることによりストランド5の下側を冷却する。同時に、ストランド5表面に対して霧を噴霧した後、乾燥ガスを噴射することにより、蒸発潜熱を奪いストランド5全体を効率的に冷却することを特徴とするものである。
上記水冷式の金属製エンドレスベルト6としては、従来公知の水冷式による冷却方法を採用してなるステンレス製ベルトを用いることができ、例えば、ストランドが載置されていない状態にて、シャワー等で水冷する方法が好ましく用いられる。また、図面では、金属製エンドレスベルト6による冷却工程を1箇所設けているが、これに限定するものではなく、金属製エンドレスベルト6による冷却工程を連続して2箇所以上設けて多段方式としてもよい。
上記水冷式の金属製エンドレスベルト6の表面温度は、2〜80℃であることが好ましく、より好ましくは5〜60℃、特に好ましくは20〜40℃である。表面温度が高すぎると、ストランド5を短時間でかつ効果的に冷却することが困難となる。
一方、上記ストランド5表面に対して霧を噴霧することによりストランド5全体を冷却する方法としては、例えば、図1に示すように、上記金属製エンドレスベルト6の回転駆動により移動するストランド5の上方に、霧を噴霧する噴霧装置7を設け、ストランド5表面に霧を噴霧してストランド5表面に水分を付着させ、ストランドの持つ熱でそれが蒸発し、蒸発潜熱を効率的に奪うことで冷却する方法があげられる。上記装置7の使用に際し、水噴霧量としては、冷却ベルトの速度によっても変わるが、通常、0.5〜9.6L/hr、好ましくは1.0〜4.0L/hr、特に好ましくは2.0〜3.0L/hrである。
また、噴霧する水の平均水滴粒子径は、通常0.1〜30μm、好ましくは0.5〜20μm、特に好ましくは1〜10μmである。かかる粒子径が大きすぎるとストランドが濡れて、PVAが溶けることがある。
上記のような霧は、例えば圧搾空気と水を同時に噴霧する2流体スプレーノズル(例えば、いけうち社製 AKIJet)を用いることで噴霧することができる。
つぎに、上記冷却工程を経由したストランド5に、乾燥ガス8を噴射することにより、ストランド5表面を蒸発潜熱に基づき冷却することが好ましい。上記乾燥ガス8としては、例えば、空気、不活性ガス(例えば、窒素ガス、炭酸ガス等)等があげられるが、好ましくは空気を噴射することによる空冷方式が採用される。上記乾燥ガス8のガス量としては、通常、5〜50m3/min、好ましくは10〜40m3/min、特に好ましくは20〜30m3/minである。また、使用する乾燥ガス8の温度としては、通常、5〜40℃、好ましくは10〜30℃、特に好ましくは15〜25℃である。
上記のストランドの冷却工程における、冷却距離は、通常4〜20m、好ましくは6〜15m、特に好ましくは8〜10mであり、短すぎると冷却が不充分になり、ストランドがペレタイザーでカッティング出来なくなる傾向があり、長すぎると生産時の作業性が悪くなる傾向がある。
上記冷却工程および乾燥ガス噴射工程を経由してなるストランド5の温度は、95℃以下であることが好ましく、より好ましくは35〜95℃、特に好ましくは60〜90℃である。上記ストランド5の温度が高すぎると、次工程でのストランド5を切断して効率良くペレット化することが困難となる。詳しくは、上記ストランド5の温度が高すぎると、次工程でペレット状に切断した際に、ストランド5が柔らかすぎて均一な切断面を備えたペレットを得ることが困難となる。一方、ストランド5の温度が低すぎると、ストランド5が硬すぎて切断時に微粉末が発生したり切断面に不具合が生じる傾向がみられる。
また、上記冷却工程および乾燥ガス噴射工程を経由してなるストランド5の含水量は、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.08重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下である。通常、含水量の下限は0.02重量%である。上記含水量が多すぎると、ストランド5をペレット状に切断する際、柔らかすぎて均一な切断面を備えたペレットを得ることが困難となる。
<ストランド切断(ペレット化)工程>
上記工程により冷却されたストランド5をペレット状に切断するための切断装置9に供給することにより、ストランド5をペレット状に切断成形する(ペレット化工程)。上記切断装置9としては、例えば、ペレタイザー等、回転刃にてストランド5を連続的にペレット状に切断する装置等があげられる。そして、この切断の際に、切断時の摩擦熱に起因したストランド5の温度上昇を抑制し適正な温度に冷却するため、切断部分に冷却ガス10が供給される。上記冷却ガス10としては、前述の乾燥ガスと同様、例えば、空気、不活性ガス(例えば、窒素ガス、炭酸ガス等)等があげられるが、好ましくは空気を噴射することによる空冷方式が採用される。上記冷却ガス10の供給ガス量としては、通常、150〜1200NL/min、好ましくは300〜1000NL/min、特に好ましくは500〜800NL/minである。また、供給する冷却ガス10温度としては、通常、5〜30℃、好ましくは8〜20℃、特に好ましくは10〜15℃である。
<ペレット冷却工程>
上記ストランド切断(ペレット化)工程を経由することにより切断成形されたPVA製ペレット(以下、単に「ペレット」という場合がある。)11は、そのペレット化形状を固定するために、ペレット冷却工程を経由させることが好ましい。上記ペレット冷却工程としては、例えば、図1に示すように、ペレット冷却装置14内にて、切断され成形されたペレット11を金属製網12上に載せ、矢印方向に移動させながら金属製網12自体を振動させる態様が、金属製網12表面に対するペレット11の付着防止および効果的な冷却の点から好ましい。加えて、冷却方法として、冷却ガス13を金属製網12の下方から上記金属製網12を通過させてペレット11に供給するとともに、ペレット冷却装置14の上方から装置外に冷却ガス13を流通させることにより、ペレット冷却装置14内にて冷却ガス13を滞留させないことがペレット11冷却の点から好ましい。上記冷却ガス13としては、前述の乾燥ガスと同様、例えば、空気、不活性ガス(例えば、窒素ガス、炭酸ガス等)等があげられるが、好ましくは空気である。上記冷却ガス13のガス量としては、通常、5〜60m3/min、好ましくは20〜50m3/min、特に好ましくは30〜40m3/minである。また、供給する冷却ガス13温度としては、通常、5〜35℃、好ましくは10〜30℃、特に好ましくは15〜25℃である。
上記ペレット冷却装置14を経由して冷却されたペレット11は、例えば、35℃未満であることが好ましく、より好ましくは10〜30℃、特に好ましくは20〜25℃である。上記冷却されたペレット11の温度が高すぎると、次工程でのペレット11の分級を効率良く行なうことが困難となり、また分級の精度が低下する傾向がみられる。
<分級工程>
上記冷却されたペレット11は、通常、分級工程を経由することにより、所望の形状・大きさに選別される。このようにして最終製品となるペレット11が得られる。
最終的に得られるペレット11は、形状としては、通常、略円柱である。また、ペレット11の大きさは、用途等に応じて適宜設定されるが、通常、直径0.5〜4mm、好ましくは1〜3mm、特に好ましくは1.5〜2.5mmであり、ペレット11の長さは、通常0.5〜4mm、好ましくは1〜3mm、特に好ましくは1.5〜2.5mmである。
本発明のPVA製ペレットの製法により得られてなるPVA製ペレットは、様々な成形材料に用いられるが、実質的にPVA製ペレットとして工業的に生産されてはいなかったことから、従来ではその成形材料用途として用いることができなかった、射出成形、押出成形、フィルム成形(インフレフィルム・Tダイキャストフィルム)、異型成形、溶融コーティング、ブロー成形、溶融紡糸、不織布成形(スパンボンド、メルトブローン)等の各種成形材料用途に用いられる。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
[実施例1]
<PVAの製造>
還流冷却器、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル76.6部(初期仕込み率は、40%)、メタノール14.2部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン9.2部(初期仕込み率は40%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを(対仕込み酢酸ビニル0.068モル%)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを13.5時間等速滴下しながら重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が91%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度50%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して4.5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とするPVAを作製した。
得られたPVAのケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、87モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、470であった。また、側鎖の1,2−ジオール構造単位の含有量は、1H−NMR(300MHzプロトンNMR、d6−DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、6モル%であった。
<溶融押出工程>
溶融押出機(2軸スクリュー式:東芝機械社製 TEM−58BS)1の投入口2に、上記で得られた粉末状の1,2−ジオールPVAを投入し、溶融混練して単数の略棒状のストランド5(直径58mm)に以下の条件で押出成形した。
直径(D)58mm、L/D=45
スクリュー回転数:150rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/A/D=90/120/150/180/200/205/210/210/210/210℃
スクリューパターン:2箇所練りスクリュー
スクリーンメッシュ:90/120/90mesh
吐出量:200kg/hr
ベント3位置:C4(口径100mm)
ベント4位置:C8(口径100mm)
なお、上記溶融混練の温度条件は、230℃とした。
<ストランドの冷却工程>
上記溶融押出された約230℃のストランド5を、水冷式のステンレス製ベルト6面に載置し、ステンレス製ベルト6の回転駆動によりストランド5を移動させ、ストランド5の下側を冷却した。同時に、図1に示すように、ステンレス製ベルト6の回転駆動により移動するストランド5上方に、水を噴霧する噴霧装置7(いけうち社製 AKIJetノズル)を設け、ストランド5表面に上部から水を噴霧してストランド5表面に水を付着させストランド5全体を冷却した。なお、上記水冷式のステンレス製ベルト6の表面温度は21℃であった。また、上記噴霧装置7の使用に際して、水噴霧量は3L/hrとした。
つぎに、上記冷却工程を経由したストランド5に、乾燥ガス8として空気を噴射することにより、ストランド5表面を冷却した。上記乾燥ガス8のガス量は30m3/min、乾燥ガス8の温度は20℃に設定した。
ストランドの冷却工程の全工程の冷却距離は10mであった。
上記冷却工程および乾燥ガス噴射工程を経由したストランド5の温度は、93℃であった。また、上記冷却工程および乾燥ガス噴射工程を経由したストランド5の含水量は、0.05%であった。なお、上記ストランド5の温度は、非接触型レーザー温度計を用いて測定した。一方、上記ストランド5の含水量は、カールフィッシャー水分計により測定した。
<ストランド切断(ペレット化)工程>
上記工程により冷却された93℃で含水量が0.05%のストランド5をペレット状に切断するために、ペレタイザー9(タナカ社製 TSL−450型)に供給してストランド5をペレット状に切断した(ペレット化工程)。同時に、上記ペレット状に切断する際に、切断部分に冷却ガス10として空気を噴射し供給した。上記冷却ガス(空気)10の供給ガス量は800Nl/minに、供給する冷却ガス10温度は10℃に設定した。
<ペレット冷却工程>
つぎに、上記ストランド切断(ペレット化)工程を経由することにより成形されたペレット11をペレット冷却工程に経由した。上記ペレット冷却工程は、図1に示すように、ペレット冷却装置(タナカ社製 ミストラルASC型)14内にて、切断され成形されたペレット11をステンレス製網12上に載せ、ステンレス製網12自体を振動させながら、ペレット11を矢印方向に順次移動させた。加えて、冷却ガス13をステンレス製網12の下方から上記ステンレス製網12を通過させてペレット11に供給するとともに、この冷却ガス13を滞留させないようペレット冷却装置14の上方から装置外に冷却ガス13を流通させた。上記冷却ガス13は通常の空気であり、上記冷却ガス13のガス量は30m3/minに、供給する冷却ガス13温度は15℃に設定した。
上記ペレット冷却装置14を経由して冷却されたペレット11の温度は23℃であった。上記ペレット11の温度は、上記と同様、非接触レーザー温度計を用いて測定した。
<分級工程>
つぎに、上記冷却されたペレット11を、振動型ペレット選別機(タナカ社製 PSL−300A)を用いて分級した。最終的に得られたペレット11は略円柱状であり、大きさは直径2.0mm×長さ2.0mmであった。
<生産速度>
ペレット11の生産速度を以下のように測定した。すなわち、ペレット選別機から、一定時間内に出てくるペレットの重量を測定し、200kg/hrであることを確認した。
[実施例2]
実施例1において、ストランド5の冷却距離を5mにした以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。得られたペレット11は、略円柱状であり、大きさは直径2.0mm×厚み2.0mmであった。
生産速度を実施例1と同様に測定したところ、50kg/hrであった。
[比較例1]
実施例1において、ストランド5の冷却工程を経由せず、押出成形されたストランド5を、直接、ストランド切断(ペレット化)工程に供した。それ以外は実施例1と同様にしてペレットの製造を試みた。しかしながら、溶融したストランドは、冷却無しでは、全く張力が無いため、ペレタイザーに運ぶことが全くできないため、ペレット化不可能であった。
[比較例2]
実施例1にて行なったストランド5の冷却工程をつぎのように変更した。すなわち、水浴に浸漬する冷却方法を採用した。その結果、水浴に溶融ストランドが入ると、急速に冷却はされるが、表面が水溶解し、強い接着性を示し、ストランド同士が接着したり、装置類にストランドが接着したりして、ストランドが一定の速度で、かつ定量的に流れず、暴れた。そのためペレット化は全く不可能であった。
Figure 2015214651
上記結果からも明らかなように、実施例では、上記PVA製ペレットの製造工程を経由することにより、所望のPVA製ペレットを効率良く製造することができた。これに対して、比較例1,2に記載のPVA製ペレットの製法では、上述のような問題がそれぞれ発生したためPVA製ペレットを製造することができなかった。
本発明のPVA製ペレットの製法により得られるPVA製ペレットは、例えば、押出成形、射出成形、フィルム成形(インフレフィルム・Tダイキャストフィルム)、異型成形、溶融コーティング、ブロー成形、溶融紡糸、不織布成形(スパンボンド、メルトブローン)等における成形材料用途等に使用することができる。
1 溶融押出機
3 ベント
5 ストランド
6 金属製エンドレスベルト
7 噴霧装置
9 切断装置
11 PVA製ペレット(ペレット)
12 金属製網
14 ペレット冷却装置

Claims (5)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出してストランドを形成する工程と、上記ストランドを冷却した後、ストランドをペレット状に切断する工程とを備えたポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法であって、上記ストランドの冷却工程が、ストランドの下側表面を、それ自体が冷却された金属製ベルト表面に接触させるとともに、そのストランド表面に霧を噴霧した後、ストランドに乾燥ガスを噴射させることを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法。
  2. 上記ストランドをペレット状に切断する際のストランドの温度が95℃以下である請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法。
  3. 上記ストランドをペレット状に切断する工程が、ストランドの温度が35〜95℃において、その含水量が0.1重量%未満の条件で行なわれる請求項1または2記載のポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法。
  4. 上記ポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出してストランドを形成する工程が、粉末状のポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出機に投入してストランドを押出形成するとともに、投入した粉末状ポリビニルアルコール系樹脂が完全溶融状態となる前の領域に予備ベントが形成されてなる溶融押出機を用いて行なわれる請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法。
  5. 粉末状のポリビニルアルコール系樹脂を、下記の溶融押出機(x)に投入してストランドを押出形成する工程と、上記ストランドの下側表面を、それ自体が冷却された金属製ベルト表面に接触させるとともに、そのストランド表面を水系雰囲気に曝した後、ストランドに冷却ガスを噴射させることによりストランドの温度を95℃以下に冷却する工程と、上記冷却したストランドを、ストランドの温度が35〜95℃において、その含水量が0.1重量%未満の際にペレット状に切断する工程と、上記ペレットを冷却ガスにより35℃以下に冷却する工程とを備えた請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂製ペレットの製法。
    [(x)投入した粉末状ポリビニルアルコール系樹脂が完全溶融状態となる前の領域に予備ベントが形成されてなる溶融押出機。]
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