JP3888745B2 - エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液の製造法 - Google Patents

エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、色相が良好で、フィルムにした時フィッシュアイが少ないエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットを、例えば湿式ストランド方式により製造する際の原料となるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は酸素遮断性、機械的強度等の諸性質に優れていることから、フィルム、シート、容器、繊維等の各種用途に多用されている。
該共重合体ケン化物成形物はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットを溶融成形して製造されるが、該ペレットの製造方法としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を水/メタノール溶媒に押出し、切断する方法が特公昭47−38634号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭47−38634号公報開示技術では、得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は色相が悪く、またかかるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物から得られたフィルムはフィッシュアイが多いという欠点があり、それ故色相が良好で、尚且つフィルムのフィッシュアイが少ないエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、アルコール中でエチレン−酢酸ビニル共重合体をアルカリケン化した後、塔式反応器を用いて塔上部よりエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール溶液を導入し、塔底部よりアルコール蒸気/水蒸気を仕込み、塔頂部よりアルコールを留出させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の調整を行うに当たり、塔内へ酸あるいは酸のエステルを塔内に仕込むことにより、得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(例えば該溶液を湿式ストランド方式で析出させて得る)が、本発明の目的とする性質をもつ事を見出し本発明を完成するに到った
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体はエチレン含量15〜60モル%であることが好ましく、更には20〜55モル%であり、より好ましくは、25〜50モル%である。
【0006】
エチレン含量が15モル%未満では、該エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物溶液を凝固液中で析出させる場合析出が不完全で、乳化してしまい操作上好ましくなく、エチレン−酢酸ビニル共重合体のアルコール溶液を均一溶液状態に保つためには加圧したり、かなり高温に加熱することが必要となり好ましくない。更に、本発明で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液から製造したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を溶融成形した場合、溶融成形性、高湿度下での酸素遮断性が低下して好ましくない。
【0007】
一方60モル%を越えると本発明で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液から製造したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を溶融成形した場合、十分な酸素遮断性が得られず、機械的強度も向上し難く好ましくない。
【0008】
又本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体はエチレン、酢酸ビニル以外に、これらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合成分として含有しても差支えない。該単量体としては、例えばプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0009】
かかるエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化反応は、アルコール溶媒にてケン化を行うことが必要であるが、この時用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられるが、好ましくはメタノール、n−プロパノール、t−ブタノールが用いられる。またアルコールと共にグリセリン、エチレングリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなどを併用してもよい。
【0010】
アルカリとしては、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体のアルカリケン化反応に使用される従来公知のアルカリをそのまま使用できる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラート、t−ブトキシカリウムなどのアルカリ金属アルコラート、1,8−ジアザビシクロ[5,4,10]ウンデセン−7(DBU)で代表される塩基性アミン、更には炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩などが挙げられるが、取り扱いの容易さ、コスト等から水酸化ナトリウムの使用が好ましい。
【0011】
アルカリの使用量は必要ケン化度、反応温度等により異なるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の残存酢酸基に対して0.05当量以下が用いられ、好ましくは0.03当量以下である。
【0012】
ケン化に当たっては、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を、アルコール又はアルコール含有媒体中に通常20〜60重量%程度の濃度になる如く溶解し、アルカリを添加して40〜140℃の温度で反応せしめる。該溶液温度においてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が析出しない様に配慮すればケン化物の濃度に特に制限はないが、通常はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の濃度が10〜55重量%、好ましくは15〜50重量%となるようにすれば良い。
【0013】
かかるケン化により得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル成分のケン化度は70モル%以上とすることが好ましく、更にはケン化度80モル%以上にする。ケン化度が70モル%未満の場合、本発明で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液から製造したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を溶融成形した場合の熱安定性が悪く、十分な酸素遮断性、機械的強度が得られず好ましくない。
【0014】
本発明ではエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化が終了し、目的とするケン化度のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール溶液が得られた後、塔式反応器を用いて塔上部より該アルコール溶液を導入し、塔底部よりアルコール蒸気/水蒸気を仕込み、塔頂部よりアルコールを留出させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物溶液の調製を行うに当たり、塔内へ酸あるいは酸のエステルを仕込むことを最大の特徴とするものある。
【0015】
用いられる酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、アセト酢酸、乳酸、酪酸等が用いられ、好ましくはギ酸、酢酸、アセト酢酸が用いられる。また酸のエステルとしてはギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が用いられるが、好ましくはギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルが用いられる。
【0016】
該酸あるいは酸のエステルの添加量としては、ケン化に使用するアルカリ量に対して0.01〜50当量、好ましくは0.05〜30当量である。該当量が0.01未満では、得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のケン化度が製造工程中に徐々に上昇し、ケン化度のコントロールが難しく、またエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の色相が悪く、50当量を越えると、過剰に酸、あるいは酸のエステルが残存しやすくなり、またエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を溶融成形した場合は、着色しやすくなり好ましくない。
【0017】
以下具体的に本発明の好ましい製造法について詳細に記述する。
まずエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール溶液をアルカリケン化し、得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール溶液に水を加えるのであるが、加えられる水の量としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物100重量部に対して、3〜500重量部が好ましく、更には5〜320重量部である。水が3重量部未満ではエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物/水溶液が均一にならず不安定となり、後工程のストランド製造時にストランド析出が安定して出来なくなり、500重量部を越えると、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液中で、該ケン化物が析出し、ストランド状に押出すことが困難になり、好ましくない。該水はアルコール蒸気と水蒸気の混合物として加えるのが好ましく、アルコール蒸気と水蒸気の比率(重量比)は95/5〜20/80が好ましく更に好ましくは90/10〜25/75である。該重量比が95/5を越えると、該ケン化物のアルコール/水溶液が不均一となり好ましくなく、20/80未満では、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液の溶液粘度が高く不安定で、ケン化物の析出が起こりやすいので好ましくない。
【0018】
アルコール蒸気と水蒸気の仕込方法としては特に制限されず、別々に仕込でも、アルコール/水混合蒸気として仕込でもよい。
【0019】
本発明では、塔式反応器が用いられ、かかるアルコール蒸気の仕込みは、塔頂部、塔上部、塔中部、塔下部、塔底部のいずれでもよいが好ましくは、塔中部、塔下部、塔底部であり、水蒸気の仕込は、塔頂部、塔上部、塔中部、塔下部、塔底部のいずれでもよいが好ましくは、塔中部、塔下部、塔底部である。
【0020】
アルコール蒸気と水蒸気を別々に仕込む場合、アルコール蒸気と水蒸気は同方向で並流とすることが好ましい。
【0021】
酸あるいは酸のエステルを共存させる方法としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のアルコール/水溶液を調整する反応器(塔)に酸あるいは酸のエステルを一括仕込、分割仕込、滴下仕込、一定速度での仕込により共存させる方法で、このときの仕込みは塔上部、塔中部、塔下部、塔底部のいずれでもよいが、塔中部あるいは塔底部より一定速度での仕込を行うことが好ましい。
【0022】
共存させるための添加(仕込み)の形態としては、液状、気体状いずれでもよい。
【0023】
本発明の方法でエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液が得られるわけであるが、該溶液中の該ケン化物の濃度として好ましくは10〜55重量%であり、更に好ましくは15〜50重量%である。10重量%に満たない場合、凝固液中での凝固が困難となり、逆に55重量%を越えるとペレットの空隙率が低下し、成形時の熱安定性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0024】
かかるケン化物濃度の調整にあたっては、アルコール蒸気/水蒸気を導入して、アルコールを留出させる。
【0025】
アルコールを留出させた場合、ケン化物アルコール/水溶液中のアルコールと水の重量混合比を95/5〜20/80に調整するのが好ましく、更には90/10〜25/75である。アルコールと水の重量混合比が95/5を越えると、アルコール/水溶液が不安定となり、ストランド析出が安定して出来ないことがあり、20/80未満ではアルコール/水溶液の溶液粘度が高く、ケン化物の析出を招き、ストランド状に押出すことが困難となることがあるので好ましくない。
【0026】
酸あるいは酸のエステルの添加と同時期に飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレフィン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム等)等の滑剤や、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)等を配合しても良い。
【0027】
かくして本発明の方法でエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液が得られるのであるが、該溶液からエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(ポリマー)を得るには、該溶液を凝固液中にストランド状に押し出し析出させることが好ましい。凝固液としては水又は水/アルコール混合溶媒が用いられ、アルコール使用時のアルコール濃度は前記共重合体ケン化物アルコール/水溶液におけるアルコール/水混合液のアルコール含量と同等かそれより低いことが好ましく、該含量を越えると、凝固液中でのストランド析出時のポリマー損失が増加し好ましくない。
【0028】
更に凝固液として沸点が100℃以下であり、かつアルコールとは相溶性を有するが、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は溶解させない有機溶媒を用いることも可能である。上記の有機溶媒としてはベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機酸エステル等が挙げられる。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物溶液を凝固液と接触させる温度は−10〜40℃、好ましくは0〜20℃である。上記の有機溶媒は該ケン化物の非溶剤であるので、該ケン化物が凝固液に溶解してポリマー損失を招く心配は殆どないが、なるべく低温での操作が安全である。
【0029】
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物溶液は任意の形状、通常は円形の孔を有するノズル又はダイスより凝固液中にストランド状に押し出される。
上記の如く孔の断面形状は通常円形であるが、場合によっては楕円形、角形、菱形、星形等でも良く、孔の径は1〜5mm程度が適当である。又、ストランドは必ずしも一本である必要はなく、数本〜数百本の間の任意の数で押し出し可能である。
【0030】
ストランド状に押し出されたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は凝固が充分進んでから切断され、ペレット化される。
【0031】
上記で得られたペレットは水洗処理を行うことが好ましく、水洗条件としては、ペレットを温度10〜50℃の水槽中で水洗する。水洗により、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレット中の過剰な酸、あるいは酸のエステル、オリゴマー等が除去される。
上記の処理で得られたペレットは、成形時の作業性や取扱い面から円柱状の場合は径が2〜5mm、長さ2〜5mmのものが、又球状の場合は径が2〜5mm程度のものが実用的である。
【0032】
かくして得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットは溶融成形されて目的とする成形物に成形されるのであるが、溶融成形に際しての温度条件としては約160〜260℃とするのが望ましい。成形に際しては必要に応じガラス繊維や炭素繊維などの補強材、フィラー、着色剤、ハイドロタルサイトなどの安定剤、発泡剤、乾燥剤などの公知の添加剤を適当配合することもある。又、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物には改質用の熱可塑性樹脂を適当量配合することもできる。
【0033】
溶融成形法としては射出成形法、圧縮成形法、押出成形法など任意の成形法が採用できる。このうち押出成形法としてはT−ダイ法、中空成形法、パイプ押出法、線条押出法、異形ダイ押出法、インフレーション法などが挙げられるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物単独の成形物(フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物など)のみならず、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層と他の熱可塑性樹脂層との共押出成形も可能である。
【0034】
共押出成形の場合の相手側樹脂としては低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜20のα−オレフィン)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンの単独又は共重合体、あるいはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなど広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。また異なるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物との共押出も可能である。
【0035】
更にエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物から一旦フィルム、シートなどの成形物を得、これにポリオレフィンなど他の熱可塑性樹脂を押出コートしたり、他の熱可塑性樹脂のフィルム、シートなどを接着剤を用いてラミネートする場合、任意の基材(紙、金属箔、延伸または未延伸プラスチックスフィルム又はシート、織布、不織布、金属箔、木質面など)をエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物で押出コートにより被覆(更に他の樹脂、例えばヒートシール性樹脂を押出しコートすることもある)することも可能である。
【0036】
なお溶融成形後の成形物、共押出成形物、溶融コート成形物は必要に応じ熱処理、冷却処理、圧延処理、一軸又は二軸延伸処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深しぼり加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行なうことができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、実施例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
【0038】
実施例1
棚段塔(ケン化塔)の塔上部にエチレン含量35モル%、エチレン−酢酸ビニル共重合体を50%含むメタノール溶液を10kg/時の速度で供給し、同時に該重合体中の残存酢酸基に対して、0.012当量の水酸化ナトリウムを含むメタノール溶液を塔上部より供給した。一方塔下部から15kg/時でメタノールを供給した。塔内温度は100〜110℃、塔圧は3kg/cm2Gであった。仕込み開始後30分からエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物メタノール溶液が取出され、組成はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物30%、メタノール70%であり、又エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル成分のケン化度は99.0モル%であった。
【0039】
次いで得られた該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物メタノール溶液をメタノール/水溶液調整塔の塔上部から10kg/時で供給し、120℃のメタノール蒸気を4kg/時、水蒸気を2.5kg/時の速度で塔下部から仕込み、塔頂部よりメタノールを8kg/時で留出させると同時に、ケン化で用いた水酸化ナトリウム量に対して6当量の酢酸メチルを塔内温95〜110℃塔の塔中部から仕込んで塔底部からエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物/水溶液(樹脂濃度35%)を得た。
【0040】
上記で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液を以下の如く評価した。
(1)ペレットの色相
○・・・着色なし
△・・・目視でやや黄色に着色
×・・・目視で黄色に着色
【0041】
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液を、孔径4mmのノズルより、メタノール5%、水95%よりなる5℃に維持された凝固液槽にストランド状に押し出して、凝固終了後、ストランド状物をカッターで切断し、直径3.8mm、長さ4mmのペレットを得て以下の基準で評価した。
【0042】
(2)フィルムの性能
得られたペレットを以下の条件で製膜し、得られたフィルムのフィッシュアイを以下の様に評価した。
Figure 0003888745
【0043】
(フィッシュアイの測定条件)
フィルム100cm当たりのフィッシュアイの数を測定した。
◎・・・1個以下
○・・・2〜5個以下
△・・・6〜9個以下
×・・・10以上
結果を表1に示した。
【0044】
実施例2
実施例1で酢酸メチルの替わりに酢酸(水酸化ナトリウム量に対して6当量)を用いた以外は同様に実施して、実施例1と同様に評価した。
【0045】
実施例3
実施例1で水酸化ナトリウムの量を0.004当量に変更した以外は同様に実施して、実施例1と同様に評価した。
【0046】
実施例4
実施例1において、棚段塔(ケン化塔)の塔上部にエチレン含量31モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を実施例1に準じて仕込んだ以外は同様に行い、実施例1と同様に評価した。
【0047】
比較例1
実施例1において、酢酸メチルの添加を行わなかった以外は同様に実施して、実施例1と同様に評価した。
実施例2〜4、比較例1の評価結果は表1に示した。
【0048】
【表1】
Figure 0003888745
【0049】
【発明の効果】
本発明ではアルコール中でエチレン−酢酸ビニル共重合体をアルカリケン化し、得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール溶液に水を加えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液を調整するに当たり、該溶液に酸あるいは酸のエステルを共存させているので、該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液から得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は色相が良好で、該ケン化物から得られるフィルムのフィッシュアイが少ない。

Claims (3)

  1. アルコール中でエチレン−酢酸ビニル共重合体をアルカリケン化した後、塔式反応器を用いて塔上部よりエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール溶液を導入し、塔底部よりアルコール蒸気/水蒸気を仕込み、塔頂部よりアルコールを留出させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物溶液の調製を行うに当たり、塔内へ酸あるいは酸のエステルを仕込むことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液の製造法。
  2. 酸として、ギ酸、酢酸、アセト酢酸のいずれか一つを用いることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液の製造法。
  3. 酸のエステルとして、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルのいずれか一つを用いることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物アルコール/水溶液の製造法。
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