JP2015207578A - 多層セラミック基板及びその製造方法 - Google Patents

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達哉 加藤
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Masanori Ito
正憲 伊東
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Abstract

【課題】空間部に起因する焼成時におけるグリーンシートの収縮を抑制する。【解決手段】多層セラミック基板の製造方法は、グリーンシート積層体を得る積層工程と、焼成工程とを備える。積層工程は、空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートを少なくとも1枚用意する第1の工程と、グリーンシートの表面上の領域であって、少なくとも空間部で露出することになる領域を覆うように第1の層を形成する第2の工程と、グリーンシートを積層して、空間部内で第1の層が露出するグリーンシート積層体を得る第3の工程と、焼成工程に先立って、グリーンシート積層体の上面および下面の各々を覆うように第2の層を形成する第4の工程と、を備える。第1の層の材料のガラス屈伏点が、グリーンシートの材料のガラス屈伏点よりも低く、かつ、第1の層の材料の結晶化温度が、前記グリーンシートの材料の軟化点よりも低い。【選択図】図1

Description

本発明は、多層セラミック基板及びその製造方法に関するものである。
多層セラミック基板は、一般に、複数のセラミックグリーンシートを重ね合わせて厚み方向にプレスすることによりグリーンシート積層体を作製し、このグリーンシート積層体を焼成することにより製造される。グリーンシート積層体を焼成する際には、一般に積層体全体が収縮する。そのため、このような積層体の収縮に起因する不都合を抑える方法の一つとして、例えば、セラミックグリーンシートの焼結温度では焼結しない無機材料を含む層(拘束層)によってグリーンシート積層体を積層方向に挟持して、その後に焼成の工程を行なう構成が提案されている。このような構成とすることで、焼成時には、焼結による収縮を起こさない拘束層によって、グリーンシート積層体の積層面方向の収縮を抑えることができる。
多層セラミック基板としては、その表面や内部に空間部を形成した基板が知られている。具体的には、多層セラミック基板表面に設けられた凹部であるキャビティや、多層セラミック基板内部に設けられた中空部を有するものが知られている。多層セラミック基板において上記キャビティや中空部を設ける際には、グリーンシートの積層に先立って、グリーンシートにおいて、キャビティや中空部を形成するための孔部および/または溝部が形成される。
このように、上記空間部を形成したグリーンシート積層体を焼成する場合には、上記した拘束層によってグリーンシート積層体を挟持して収縮を抑える場合であっても、拘束層から離間した空間部の内壁面等においては収縮が生じ得る。その結果、空間部の底面の隅部にクラックが生じたり、空間部の底面が変形する可能性があった。
上記空間部を形成したグリーンシート積層体を焼成する際に生じる上記した不都合を抑えるための方法の一つとして、例えば、上記空間部の底面に、上記した拘束層と同様にセラミックグリーンシートの焼結温度では焼結しない無機材料を含む収縮抑制用シートを配置する構成が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
また、上記空間部を形成したグリーンシート積層体における焼成時の収縮に起因する問題を抑える他の方法として、グリーンシート積層体において、隣り合うセラミックグリーンシート間の各々に、セラミックグリーンシートの焼結温度では焼結しない無機材料を含む収縮抑制層を設ける構成も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
特開2006−108483号公報 特開2003−318309号公報 特許第3963328号 特許第4967668号 特許第3666321号
しかしながら、グリーンシート積層体の上記空間部内に、セラミックグリーンシートの焼結温度では焼結しない無機材料を含む収縮抑制用シートを配置する場合には、収縮抑制用シートの厚みを抑えると、収縮抑制用シートによる拘束力が不十分となる場合があった。収縮抑制用シートの厚みを厚くすることにより拘束力を強めることは可能であるが、セラミックグリーンシート上への印刷等の簡便な方法により収縮抑制用シートを形成する場合には、形成できる収縮抑制用シートの厚みに限界があるため、収縮抑制用シートによる拘束力を十分に強められない場合があった。
また、収縮抑制用シートに含まれる溶媒が焼成時に気化して失われるため、上記空間部の底面に収縮抑制用シートを設ける場合には、収縮抑制用シートの構成材料が空間部内で飛散するという問題を生じ得た。積層体内部に形成された空間部から、上記飛散した材料を除去することは困難であるため、飛散した収縮抑制用シートの構成材料を焼成後に空間部から除去しようとすると、多層セラミック基板の製造工程が複雑化するという問題を生じる。
また、グリーンシート積層体において、隣り合うセラミックグリーンシート間の全てに収縮抑制層を設ける場合には、多層セラミック基板の製造工程が複雑化するという問題を生じる。さらに、多層セラミック基板を構成する隣り合う絶縁層間の各々に収縮抑制層が形成されることにより、多層セラミック基板の性質が影響を受け、採用し難い場合があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、複数のグリーンシートを積層して空間部が形成されたグリーンシート積層体を得る積層工程と、前記グリーンシート積層体を焼成する焼成工程とを備える、多層セラミック基板の製造方法が提供される。この多層セラミック基板の製造方法において、前記積層工程は;前記グリーンシート積層体を構成するための複数のグリーンシートの内、前記空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートを少なくとも1枚用意する第1の工程と;前記複数のグリーンシートの内、前記孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートに隣接して配置され、一部が前記空間部で露出することになる面を有するグリーンシートの表面上の領域であって、少なくとも前記空間部で露出することになる領域を覆うように、該領域の焼成時の収縮を抑えるための第1の層を形成する第2の工程と;前記グリーンシート積層体を構成する前記複数のグリーンシートを積層して、前記空間部内で前記第1の層が露出する前記グリーンシート積層体を得る第3の工程と;前記焼成工程に先立って、前記グリーンシート積層体の上面および下面の各々を覆うように、前記焼成工程における焼成温度では焼結しない第2の層を形成する第4の工程と;を備え;前記第1の層の材料のガラス屈伏点が、前記グリーンシートの材料のガラス屈伏点よりも低く、かつ、前記第1の層の材料の結晶化温度が、前記グリーンシートの材料の軟化点よりも低い。
この形態の多層セラミック基板の製造方法によれば、グリーンシート積層体を焼成する際に、構成材料が結晶化した第1の層によってグリーンシートを拘束し、収縮を抑制することができる。そのため、空間部を形成したことに起因するグリーンシートの変形を抑え、このような変形に起因する多層セラミック基板の損傷を抑えることができる。また、焼成の工程において第1の層が収縮する温度条件下において、グリーンシートによって第1の層の収縮を抑制することが可能になる。
(2)上記形態の多層セラミック基板の製造方法において、前記第1の層の材料の軟化点が、前記グリーンシートの材料のガラス屈伏点よりも低いこととしてもよい。
この形態の多層セラミック基板の製造方法によれば、焼成時の温度が第1の層の材料の軟化点を超えて第1の層がさらに大きく収縮し始めた後にも、グリーンシートによって第1の層の収縮を抑制する効果を保つことが可能になる。
(3)上記形態の多層セラミック基板の製造方法において、前記第2の工程は、前記空間部で露出することになる面を有するグリーンシートの表面上の領域であって、前記空間部で露出することになる領域を超える範囲の領域を覆うように、前記第1の層を形成することとしてもよい。
この形態の多層セラミック基板の製造方法によれば、空間部で露出するグリーンシート表面では、空間部の内壁面の隅部(空間部の内壁面を構成するグリーンシートの積層面における、空間部で露出する領域の外周)においても、グリーンシートの収縮を抑制することができる。その結果、グリーンシートの収縮の影響を受け易い空間部内壁面の隅部における損傷を抑えることができる。
(4)上記形態の多層セラミック基板の製造方法において、前記第2の工程は、前記空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートに隣接する2枚のグリーンシートの各々の表面において、前記第1の層を形成することとしてもよい。
この形態の多層セラミック基板の製造方法によれば、空間部に露出するグリーンシートの両方において収縮を抑えることができる。そのため、多層セラミック基板においてグリーンシートの収縮に起因する損傷の発生を抑える効果を、より高めることができる。
(5)本発明の他の形態によれば、ガラスセラミック層である絶縁層が複数積層されて空間部が形成されている積層体を備える多層セラミック基板が提供される。この多層セラミック基板において、前記積層体を構成する前記複数の絶縁層は、前記空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成された第1のガラスセラミック層と、前記第1のガラスセラミック層に隣接して配置され、一部が前記空間部で露出する面を有する第2のガラスセラミック層とを有する。この多層セラミック基板は、前記第2のガラスセラミック層の前記空間部で露出する領域を覆うように、該領域の焼成時の収縮を抑えるための第1の層が形成され、前記第1の層の材料のガラス屈伏点が、前記絶縁層の材料のガラス屈伏点よりも低く、かつ、前記第1の層の材料の結晶化温度が、前記絶縁層の材料の軟化点よりも低い。
この形態の多層セラミック基板によれば、第1の層が設けられていることにより、多層セラミック基板の製造時の焼成工程において、第2のガラスセラミック層となるグリーンシートの収縮が第1の層によって抑制されているため、空間部に起因する損傷が抑えられた多層セラミック基板とすることができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、多層セラミック基板を備える半導体デバイス、あるいは、多層セラミック基板の設計方法等の形態で実現することができる。
多層セラミック基板の概略構成を示す断面模式図である。 多層セラミック基板の製造方法を示す工程図である。 グリーンシート上に第1の層を形成した様子を表わす説明図である。 グリーンシート積層体を第2の層で挟持した様子を示す断面模式図である。 第1の層によりグリーンシートの収縮が抑制される仕組みを説明するための図である。 露出した空間部の様子を表わす模式図である。 ガラス成分に係る条件と焼成温度および空間部欠陥の有無についての評価結果を示す図である。
A.多層セラミック基板の概略構成:
図1は、本発明の一実施形態としての多層セラミック基板10の概略構成を示す断面模式図である。多層セラミック基板10は、コンピュータや通信機器等で用いられる高周波モジュールやICパッケージに用いられる回路基板であり、低温焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics)によって構成されている。多層セラミック基板10は、複数の絶縁層20が積層された多層構造を有している。図1に示す多層セラミック基板10は、一例として8層(絶縁層20a〜20h)の絶縁層20を有しているが、絶縁層20の数は任意に設定可能である。なお、以下の説明では、多層セラミック基板10が備える絶縁層を総称するときには絶縁層20と呼び、個々の絶縁層を示すときには絶縁層20a〜20hとして区別する。
絶縁層20は、ガラスに無機フィラーを添加したガラスセラミックス(低温焼成セラミックスの焼結体)から成る。この絶縁層20は、上記ガラスおよび無機フィラーに、さらに溶媒等を加えたセラミックスラリーによってセラミックグリーンシート(以下、単にグリーンシートとも呼ぶ)を形成し、このグリーンシートを焼成することにより得られる。用いるガラスおよび無機フィラーは、目標とする焼成温度や製造すべき基板の性質に応じて適宜選択すれば良い。ガラスとしては,例えば、ホウケイ酸系ガラス、ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラス等を用いることができる。無機フィラーとしては、アルミナ(Al23)、コージェライト、ムライト、マグネシア、スピネル、シリカ等を用いることができる。焼成温度を1000℃以下にするという観点から、ガラスとしてホウケイ酸系ガラスを用い、無機フィラーとしてアルミナを用いることが好ましい。
各絶縁層20には、厚み方向に貫通するビアホール24が設けられており、各ビアホール24内にはビア導体26が配置されている。また、各絶縁層20の間および最外層の絶縁層20の表面には、配線パターンを構成する配線層22が配置されている。各層の配線層22同士は、ビア導体26を介して電気的に接続されている。
ビア導体26は、金属粉末を含む導電性ペーストをビアホール24に充填することにより形成される。また、配線層22は、導電性ペーストを用いて絶縁層20上に所定の配線パターンを印刷することにより形成される。同時焼成法によってビア導体26、配線層22および絶縁層20を形成する場合、導電性ペースト中の金属は、絶縁層20の焼成温度よりも高融点である必要がある。導電性ペースト中に含まれる金属としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)およびそれらの合金から選択される金属を用いることができる。ビア導体26を形成するための導電性ペーストと、配線層22を形成するための導電性ペーストとの組成は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
多層セラミック基板10には、キャビティ30および中空部34,36が形成されている。キャビティ30は、半導体LSIやチップコンデンサなどのチップ部品を実装するために多層セラミック基板10の表面に設けられた凹部であり、多層セラミック基板10の最外層(絶縁層20a)において開口している。中空部34,36は、素子の実装用あるいは流体の流路として多層セラミック基板内部に設けられた空隙である。中空部34,36の壁面(上面および下面)は、中空部34,36となる空隙が設けられた絶縁層(絶縁層20d,20eまたは絶縁層20g)に隣接して配置された一対の絶縁層(絶縁層20c,20fまたは絶縁層20f、20h)によって形成されている。以下の説明では、多層セラミック基板10の表面に形成されるキャビティと、内部に形成される中空部とを合わせて、空間部と呼ぶ。
上記空間部は、多層セラミック基板10を構成する絶縁層20に設けた孔部または溝部によって形成される。孔部とは、絶縁層20の外周から離間した閉じた外周を有する形状を指す。また、溝部とは、一部が絶縁層20の外周で開口する形状を指す。また、上記空間部は、1層の絶縁層20に設けた孔部または溝部によって形成されていてもよく、連続して配置される複数の絶縁層20において積層方向に重なる領域に設けられた孔部または溝部によって形成されていてもよい。図1では、キャビティ30は、1層の絶縁層20aに設けた孔部によって形成されており、中空部34は、2層の絶縁層20d,20eに設けた孔部によって形成されており、中空部36は、1層の絶縁層20gに設けた溝部によって形成されている。
なお、孔部および/または溝部が形成された絶縁層(絶縁層20a、20d、20e、20g)が、課題を解決するための手段に記載した第1のガラスセラミック層に相当する。また、この第1のガラスセラミック層に隣接して配置され、一部が空間部で露出する面を有する絶縁層(絶縁層20b、20c、20f、20h)が、課題を解決するための手段に記載した第2のガラスセラミック層に相当する。
絶縁層20の表面であって、上記空間部内で露出する領域には、収縮抑制層である第1の層28が設けられている。多層セラミック基板10の製造工程において、絶縁層20となるグリーンシートにおける第1の層28が形成された領域の収縮は、第1の層28により抑制される。
本実施形態では、キャビティ30については、その下面全体を覆うように、すなわち、絶縁層20bの表面のうちのキャビティ30に露出する領域全体を覆うように、第1の層28が設けられている。中空部34,36については、上面と下面の各々の全体を覆うように、第1の層28が設けられている。すなわち、絶縁層20c,20fの表面のうちの中空部34に露出する領域全体を覆うように、第1の層28が設けられており、絶縁層20f,20hの表面のうちの中空部36に露出する領域全体を覆うように、第1の層28が設けられている。
第1の層28は、絶縁層20と同様に、ガラスに無機フィラーを添加した絶縁性セラミックス(低温焼成セラミックスの焼結体)から成る。用いるガラスとしては、所定の結晶化温度以上に加熱すると結晶化する結晶化ガラスを用いている。用いる無機フィラーの種類は、絶縁層20と同様の種類のものを選択可能である。第1の層28は、上記ガラスおよび無機フィラーに、さらに溶媒等を加えたセラミックペーストから成る層を、グリーンシートの所定の位置に形成し、このセラミックペーストから成る層をグリーンシートごと焼成することにより作製する。なお、以下の説明では、第1の層28については、焼成の前後を通して第1の層28と呼ぶ。
本実施形態では、第1の層28の構成材料のうちのガラスのガラス屈伏点(以下、第1の層28の材料のガラス屈伏点とも呼ぶ)は、絶縁層20の構成材料のうちのガラスのガラス屈伏点(以下、絶縁層20あるいはグリーンシートの材料のガラス屈伏点とも呼ぶ)よりも低い。また、第1の層28の構成材料のうちのガラスの結晶化温度(以下、第1の層28の材料の結晶化温度とも呼ぶ)は、絶縁層20の構成材料のうちのガラスの軟化点(以下、絶縁層20あるいはグリーンシートの材料の軟化点とも呼ぶ)よりも低い。多層セラミック基板10を構成する各層を構成するガラスのガラス屈伏点(Mg)、結晶化温度(Tc)、および軟化点(Ts)は、示差熱分析(DTA)により測定することができる。各々の層について示差熱分析による測定を行なう場合には、混在する無機フィラー等に由来するピークを除去して解析することにより、各層を構成するガラスに係る上記温度を特定することができる。第1の層28がグリーンシートの収縮を抑制する働きについては、後に詳しく説明する。
B.多層セラミック基板の製造方法:
図2は、多層セラミック基板10の製造方法を示す工程図である。多層セラミック基板10を製造する際には、まず、絶縁層20を形成するための複数のグリーンシートを用意する(ステップS100)。
グリーンシートは、セラミック材料(絶縁層20の原料として既述したガラスおよび無機フィラー)に、バインダ、可塑剤、および溶剤を混合したセラミックスラリーを、シート状に成形することによって作製される。バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等から選択される化合物を用いることができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(フタル酸ジオクチル、以下、DOPとも呼ぶ)、フタル酸ジブチル等から選択される化合物を用いることができる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエン等から選択される化合物を用いることができる。グリーンシートの成形は、例えばドクターブレード法やカレンダーロール法により行なうことができる。
グリーンシートを用意した後、各々のグリーンシートについて、必要な箇所にビアホール24を形成すると共に、空間部を形成すべき位置に孔部および/または溝部を形成する(ステップS110)。ステップS110の動作は、例えば、パンチ加工(打ち抜き加工)、あるいはレーザによる穴あけ加工により行なうことができ、ビアホール24の形成と、孔部および/または溝部の形成とは、同時に行なうこともできる。なお、ステップS100およびステップS110によって、空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートを用意する工程が、課題を解決するための手段に記載した第1の工程に相当する。
その後、グリーンシートにおいて、配線層22およびビア導体26となる導電性ペーストを配置する(ステップS120)。導電性ペーストは、既述した金属から成る粉末に、バインダや溶剤などを混合したものである。配線層22となる導電性ペーストの配置は、例えばスクリーン印刷によって行なうことができる。ビア導体26となる導電性ペーストの配置は、例えば、穴埋め印刷によって行なうことができる。
グリーンシートに導電性ペーストを配置した後、特定のグリーンシートの表面の所定の位置に、第1の層28を形成する(ステップS130)。第1の層28は、セラミック材料(第1の層28の原料として既述したガラスおよび無機フィラー)に、バインダや溶剤などを混合して得られるセラミックペーストを、グリーンシート上に塗布することにより形成される。セラミックペーストの塗布は、例えばスクリーン印刷によって行なうことができる。
図3は、グリーンシート上に第1の層28を形成した様子を表わす説明図である。以下の説明では、多層セラミック基板10を構成する絶縁層20となる各々のグリーンシートにも、絶縁層20a〜20hと同じ参照番号を付すこととする。図3(A)は、グリーンシート20fにおけるグリーンシート20eと接する面上に第1の層28を形成する様子を表わし、図3(B)は、グリーンシート20hにおけるグリーンシート20gと接する面上に第1の層28を形成する様子を表わす。
図3(A)および図3(B)では、第1の層28の位置と共に、隣接するグリーンシート20eあるいはグリーンシート20gに設けられる孔部あるいは溝部の位置を破線で示している。これらの孔部あるいは溝部には、対応する空間部(中空部34,36)の参照番号と同じ参照番号を付している(孔部34および溝部36)。図3では、図1に示す断面に対応する位置を、A−A断面として示している。なお、図3(B)に示すように、グリーンシート20gには、中空部36を形成するための溝部36の他に、さらに、他の中空部38を形成するための溝部38が形成されており、グリーンシート20hには、溝部38に対応する第1の層28も設けられている。
図3に示すように、本実施形態では、各々の空間部と積層方向に重なる領域よりも広い範囲に、第1の層28を設けている。すなわち、グリーンシートの表面上の領域であって、空間部で露出することになる領域を超える範囲の領域を覆うように、第1の層28を形成する。なお、このステップS130が、課題を解決するための手段に記載した第2の工程に相当する。
第1の層28を形成した後、全てのグリーンシートを位置合わせしつつ所定の順序で積層してグリーンシート積層体を形成する(ステップS140)。すなわち、グリーンシート20a〜20hを、図1に示す形状となるように位置合わせしつつ積層し、積層したグリーンシート全体を積層方向にプレスして、グリーンシート積層体を得る。プレス時には隣り合うグリーンシート同士を熱圧着により接合させる。そのため、上記プレスは、グリーンシートに含まれるバインダが軟化する温度に加熱しつつ行なうこととしてもよい。上記プレスは、グリーンシートに含まれる溶剤が気化する温度で行なうことができる。なお、このステップS140が、課題を解決するための手段に記載した第3の工程に相当する。
その後、グリーンシート積層体を、2枚の第2の層によって積層方向の上下方向から挟持する(ステップS150)。すなわち、グリーンシート20aおよび20bの外側の面を覆うように、第2の層を設ける。ここで、第2の層とは、グリーンシート積層体の焼成時に、グリーンシート積層体の収縮を抑制するために設ける拘束層であり、グリーンシートが焼結する焼成温度では焼結しない層である。
図4は、グリーンシート積層体10aを2枚の第2の層40によって挟持した様子を示す断面模式図である。本実施形態の第2の層40は、ガラスを含有しないセラミック材料を用いたこと以外は絶縁層20と同様にして作製したセラミックスラリーによって形成している。例えば、上記セラミックスラリーから、シート状の拘束用グリーンシートを作製し、作製した拘束用グリーンシートをグリーンシート20a、20h上に配置して積層方向にプレスすることにより、第2の層40を形成することができる。あるいは、上記セラミックスラリーを用いてグリーンシート20a、20h上に第2の層40を印刷形成することも可能である。なお、図4では、グリーンシート20a、20hの全面を覆うように第2の層40を設けているが、例えば、キャビティ30は覆わないように第2の層40を設けてもよい。このステップS150が、課題を解決するための手段に記載した第4の工程に相当する。
グリーンシート積層体上に第2の層40を設けた後、グリーンシート積層体を焼成する(ステップS160)。焼成時の雰囲気は、特に限定されない。焼成温度は、例えば800℃〜1000℃とすることができる。ステップS180の焼成工程により、グリーンシートを焼成すると共に、ステップS120で配置した導電性ペーストを焼成して、絶縁層20と、配線層22およびビア導体26とを同時焼結することができる。
焼成の後、第2の層40を除去する(ステップS170)。第2の層40は、例えば超音波洗浄、ショットブラスト(サンドブラスト)、あるいはウェットブラスト(ウォーターブラスト)により除去することができる。
第2の層40を除去した後、仕上げ工程を行ない(ステップS180)、多層セラミック基板10を完成する。仕上げ工程とは、例えば、グリーンシート積層体の焼成により得られた焼結体を研磨切削加工によって成形する工程、焼結体の表面に露出した配線層22およびビア導体26の少なくとも一部にメッキを施す工程、焼結体の表面に露出した配線層22に電気的に接続される電極および/または抵抗体を設ける工程、あるいは、ICやチップ部品などをキャビティ30等に配置して、多層セラミック基板に形成された回路に接続する工程等を含むことができる。
C.収縮抑制について:
図5は、第1の層28を設けることにより、空間部を形成するグリーンシートの収縮が抑制される仕組みを説明するための図である。具体的には、第1の層28とグリーンシートとの各々について、熱機械分析(Thermomechanical Analysis、TMA)によって熱膨張による変形量を測定した結果を、模式的なグラフにより示す図である。図5の横軸は温度を示し、縦軸は変形量を示す。図5のグラフ中には、第1の層28の材料のガラス屈伏点MgB、第1の層28の材料の結晶化温度TcB、第1の層28の構成材料のうちのガラスの軟化点(以下、第1の層28の材料の軟化点とも呼ぶ)TsB、グリーンシートの材料のガラス屈伏点MgA、およびグリーンシートの材料の軟化点TsAを示している。
第1の層28とグリーンシートとの各々は、その構成材料であるガラスのガラス屈伏点Mgに昇温すると、各層の変形(収縮)の程度が大きくなり始める。そして、さらに昇温してガラスの軟化点以上になると、各層の収縮の程度が特に大きくなる。ここで、第1の層28は、構成材料のガラスとして、所定の結晶化温度に達すると結晶化可能な結晶化ガラスを用いている。そのため、第1の層28は、さらに昇温して構成材料のガラスの結晶化温度以上になると、収縮が停止してそれ以上変形しなくなる。本実施形態では、既述したように、第1の層28の材料のガラス屈伏点MgBは、グリーンシートの材料のガラス屈伏点MgAよりも低く、第1の層28の材料の結晶化温度TcBは、グリーンシートの材料の軟化点TsAよりも低い。以下に、図5に基づいて、焼成時における各層の具体的な動作を説明する。
焼成の工程(ステップS160)においてグリーンシート積層体の温度が上昇すると、やがて、第1の層28の材料のガラス屈伏点MgBの温度に達する。第1の層28の材料のガラス屈伏点MgBを超えると、第1の層28が収縮を始める。このときの温度は、グリーンシートのガラス屈伏点MgAよりも低いため、第1の層28は、面全体で接触するグリーンシートによって拘束され、収縮が抑制される。
その後さらにグリーンシート積層体の温度が上昇すると、グリーンシートの材料のガラス屈伏点MgAに達し、グリーンシートが収縮を始める。その後さらにグリーンシート積層体の温度が上昇すると、第1の層28の材料の結晶化温度TcBに達する。第1の層28の材料の結晶化温度TcBを超えると、第1の層28の構成材料のうちのガラスが結晶化して、第1の層28はそれ以上収縮しなくなる。そのため、グリーンシートが収縮を続ける温度であっても、グリーンシートが第1の層28によって拘束されて、グリーンシートの面方向の収縮が抑制される。
その後さらにグリーンシート積層体の温度が上昇すると、グリーンシートの材料の軟化点TsAに達し、グリーンシートはさらに大きく収縮し始めるが、上記したようにガラスの結晶化により収縮が終了した第1の層28によってグリーンシートが拘束されるため、グリーンシートの面方向の収縮が抑制される。ここで、ステップ160で設定される焼成温度は、第1の層28の構成材料のうちのガラスの融点よりも低いため、焼成温度が結晶化温度TcBを超えた後は、第1の層28は焼成工程の間中、グリーンシートの収縮を抑制することができる。
なお、第1の層28の材料の軟化点TsBは、グリーンシートの材料のガラス屈伏点MgAよりも低いこととしてもよい。このような構成とすれば、焼成時の温度が第1の層28の材料の軟化点TsBを超えて第1の層28がさらに大きく収縮し始めた後に、焼成時の温度がグリーンシートの材料のガラス屈伏点MgAを超えるまでは、面全体で接触するグリーンシートによって第1の層28の収縮を抑制する効果を保つことができる。
以上のように構成された本実施形態の多層セラミック基板、およびその製造方法によれば、グリーンシートの材料の軟化点TsA以上となる温度範囲、すなわち、グリーンシート積層体における収縮が極めて顕著となる温度範囲では、ガラス成分が結晶化した第1の層28によってグリーンシートを拘束し、収縮を抑制することができる。すなわち、グリーンシート積層体を挟持する第2の層40から離間した部位である、空間部を形成する部位の収縮を抑えることができる。したがって、グリーンシート積層体において空間部の壁面近傍の変形を抑制し、上記変形に起因する多層セラミック基板10の損傷や、空間部近傍における配線形成の精度の低下を抑えることができる。
また、本実施形態では、グリーンシートの収縮を抑制するための拘束層を、隣り合うグリーンシートが接する各々の界面の全体に設けるのではなく、グリーンシート積層体全体の収縮は、2つの第2の層40によって抑えると共に、収縮に起因する問題が特に生じ易くなる空間部の壁面を構成する領域に、局所的に第1の層28を設けている。そのため、より簡素な構成により、グリーンシート積層体全体における収縮に起因する問題を抑えることができる。また、隣り合うグリーンシートが接する界面に広く拘束層を設ける場合に比べて、製造される多層セラミック基板の性質が、収縮を抑制するための層を設けたことに起因して影響を受ける程度を抑えることができる。
また、本実施形態では、第1の層28は、図3に示すように、グリーンシートの表面上の領域であって、空間部で露出することになる領域の外周全体を超える範囲の領域を覆うように形成している。したがって、空間部の上面および下面において、空間部の内壁面の隅部においても、グリーンシートの収縮を抑制することができる。その結果、グリーンシートの収縮の影響を受け易い空間部内壁面の隅部における損傷を抑えることができる。なお、第1の層28は、空間部で露出することになる領域の外周全体を超える範囲の領域を覆うのではなく、上記外周の一部を超える範囲の領域を覆うこととしてもよい。少なくとも上記外周を超えて第1の層28が形成された部位では、空間部内壁面の隅部に生じる損傷を抑える効果を高めることができる。また、上記外周を超えていなくても、少なくとも、空間部で露出することになる領域を覆うように第1の層28を設けるならば、上記空間部で露出することになる領域におけるグリーンシートの収縮を抑えることができる。
さらに、本実施形態では、焼成時におけるグリーンシートの収縮を、ガラス成分が結晶化して収縮が実質的に停止した第1の層28によって抑えている。そのため、焼成温度(グリーンシートの焼結温度)で焼結しない層を設けてグリーンシートの収縮を抑える場合に比べて、グリーンシートの収縮を抑える効果を高めることができる。したがって、焼成温度で焼結しない層によって収縮抑制層を形成する場合に比べて、収縮抑制層である第1の層28の厚みを、より薄くすることが可能になる。その結果、印刷等の簡便な方法により収縮抑制層を設けることが可能になり、製造工程を簡素化できる。例えば、第1の層28を、印刷によって形成した5〜10μm程度の厚みの層とする場合であっても、収縮抑制層として機能させることが可能になる。さらに、ガラス成分が結晶化した第1の層28を用いる本実施形態によれば、焼成後に、空間部内で第1の層28に由来する物質が飛散することがなく、第1の層28に由来する物質を焼成後に除去する必要もない。
また、本実施形態では、上記第1の層28が収縮する際には、グリーンシートが収縮し始める温度(ガラス屈伏点MgA)までは、グリーンシートによって第1の層28を拘束して、第1の層28の収縮を抑制することができる。そのため、第1の層28におけるガラス成分の結晶化に先立つ第1の層28の収縮に起因する不都合を抑えることができる。
なお、ガラスの結晶化により収縮が終了した第1の層28によってグリーンシートの収縮を抑える効果を高めるには、グリーンシートの材料の軟化点TsAは、第1の層28の材料の結晶化温度TcBよりも、5℃以上高いことが好ましく、25℃以上高いことがより好ましい。また、第1の層28の収縮を、グリーンシートによって抑える効果を高めるためには、グリーンシートの材料のガラス屈伏点MgAは、第1の層28の材料のガラス屈伏点MgBよりも、10℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。
ガラス成分の軟化や結晶化と温度との関係を表わす値として、上記したパラメータ以外にも、例えばガラス転移点等も知られている。しかしながら本願では、収縮の挙動との結びつきがより強いガラス屈伏点および軟化点、並びに結晶化のタイミングを直接表わす結晶化温度に基づいて、グリーンシートと第1の層28との間の関係を規定することで、グリーンシートの収縮をより効果的に抑制できる。
本実施形態では、空間部のうちの中空部34,36については、その下面及び上面の両方に第1の層28を設けている。このように、中空部を設けるための孔部や溝部が形成されたグリーンシートに隣接する2枚のグリーンシートのうちの双方に第1の層28を設けるのではなく、一方のグリーンシートのみに第1の層28を設けることも可能である。中空部の上面と下面の少なくとも一方に第1の層28を設ければ、設けた側において収縮抑制の効果が得られる。ただし、多層セラミック基板全体として収縮に起因する問題を抑えるには、両方に設けることが望ましい。
D.変形例:
・変形例1:
上記各実施形態では、ステップS140でグリーンシート積層体を形成する際に、空間部が中空の状態で積層体のプレスを行なっているが、異なる構成としてもよい。例えば、ステップS140で複数のグリーンシートを積層する際に、プレスに先立って、空間部内に、焼成時に焼失する空間充填材料を配置してもよい。このような構成とすることで、プレス時のグリーンシートの変形を抑え、プレス時の面圧(単位面積当たりにかかる圧力)を均一化することができる。
・変形例2:
上記実施形態では、図2に示す順序で多層セラミック基板10を製造したが、異なる構成としてもよい。例えば、ビアホール24と、空間部を形成するための孔部および/または溝部とを同時に形成するのではなく、別々に形成してもよい。このとき、ビアホール24を先に形成する場合には、形成したビアホール24内に、ビア導体26となる導電性ペーストを配置する動作は、上記孔部および/または溝部の形成の前でも後でもよい。また、配線層22となる導電性ペーストの配置を、ビアホール24の形成の工程と、上記孔部および/または溝部の形成の工程のうちの、少なくとも一方の前に行なってもよい。
あるいは、ビアホール24の形成の工程、ビアホール24内への導電性ペーストの配置の工程、および、上記孔部および/または溝部の形成の工程から選択される工程は、各グリーンシート1枚ずつについて行なうのではなく、グリーンシート積層体の一部を構成する隣り合う複数のグリーンシートごとに行なってもよい。この場合にも、ビアホール24の形成の工程、ビアホール24内への導電性ペーストの配置の工程、および、上記孔部および/または溝部の形成の工程の順序については、種々の変形が可能である。
以下に本発明を適用した具体的な実施例を示すが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
サンプル1〜サンプル13として、グリーンシート(絶縁層20)のガラス成分の種類、第1の層28の有無、および第1の層28のガラス成分の種類を異ならせた多層セラミック基板を製造し、グリーンシートの収縮に起因する欠陥の発生を調べた。
[1]グリーンシートの材料:
(1)ガラス粉末:酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ホウ素(B23)を主成分とするホウケイ酸系ガラス粉末
(2)無機フィラー:アルミナ粉末(平均粒径3μm,比表面積1.8m2/g) (3)バインダ成分:アクリル樹脂
(4)可塑剤:DOP
(5)溶剤:メチルエチルケトン(MEK)
なお、上記(1)のガラス粉末としては、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)および酸化ホウ素(B23)の割合を異ならせることにより、ガラス屈伏点および軟化点の温度を異ならせたA1〜A2の2種類のガラス粉末を用意した。A1のガラス屈伏点(MgA1)は745℃であり、軟化点(TsA1)は863℃であった。A2のガラス屈伏点(MgA2)は677℃であり、軟化点(TsA2)は768℃であった。サンプル1〜4、7、8、11〜13はA1を用い、サンプル5、6、9、10はA2を用いた。
[2]グリーンシートの製法:
(1)ホウケイ酸系ガラス粉末と、アルミナ粉末と、を体積比60:40となるように秤量して(総量1kg)、アルミナ製ポットに投入した。
(2)アルミナ製ポットに、さらに、アクリル樹脂(120g)と、MEKおよびDOP(所望のスラリー粘度とシート強度とを確保できる量)と、を投入した。
(3)アルミナ製ポットに投入された上記の材料を5時間混合してセラミックスラリーを得た。
(4)上記セラミックスラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚み0.15mmのグリーンシートを作製した。
[3]配線層用導電性ペーストの材料:
(1)銅粉末(平均粒径1.0μm)
(2)ホウケイ酸系ガラス(屈伏点700℃)
(3)エチルセルロース樹脂
(4)溶剤:ターピネオール
[4]配線層用導電性ペーストの製法:
銅粉末100重量部に対してホウケイ酸系ガラス粉末3重量部を添加し、さらに、エチルセルロース樹脂とターピネオールとを加えて、3本ロールミルによって混練し、配線用導電性ペーストを作製した。
[5]ビア導体用ペーストの材料:
(1)銅粉末(平均粒径2.0μm)
(2)ホウケイ酸系ガラス(屈伏点700℃)
(3)エチルセルロース樹脂
(4)溶剤:ターピネオール
[6]ビア導体用ペーストの製法:
銅粉末100重量部に対してホウケイ酸系ガラス5重量部を添加し、さらに、エチルセルロース樹脂とターピネオールとを加えて、3本ロールミルによって混練し、ビア導体用ペーストを作製した。
[7]第1の層用ペーストの材料:
(1)結晶化ガラス粉末
(2)無機フィラー:アルミナ粉末(平均粒径3μm,比表面積1.8m2/g)
(3)エチルセルロース樹脂
(4)溶剤:ターピネオール
上記(1)の結晶化ガラス粉末としては、サンプル1および5では、ガラス屈伏点MgBが659℃、結晶化温度TcBが759℃であるGA44(日本電気硝子製)を用いた。サンプル2および6では、ガラス屈伏点MgBが572℃、結晶化温度TcBが734℃であるGA59(日本電気硝子製)を用いた。サンプル3および9では、ガラス屈伏点MgBが668℃、結晶化温度TcBが790℃であるGA60(日本電気硝子製)を用いた。サンプル4および10では、ガラス屈伏点MgBが714℃、結晶化温度TcBが838℃であるGA63(日本電気硝子製)を用いた。サンプル7では、ガラス屈伏点MgBが759℃、結晶化温度TcBが860℃であるGA55(日本電気硝子製)を用いた。サンプル8では、ガラス屈伏点MgBが738℃、結晶化温度TcBが915℃であるGA74(日本電気硝子製)を用いた。また、サンプル13では、ガラス屈伏点MgBが677℃であって、焼成温度である900℃以下では結晶化しないガラスを用いた。なお、サンプル11および12では、第1の層は設けなかった。
[8]第1の層用ペーストの製法:
結晶化ガラス粉末とアルミナ粉末とを、体積比60:40で混合したものに対して、エチルセルロース樹脂とターピネオールとを加えて、3本ロールミルによって混練し、第1の層用ペーストを作製した。
[9]拘束用グリーンシートの材料:
「(1)ガラス粉末」を用いないこと以外は、既述した「[1]グリーンシートの材料」と同様とした。
[10]拘束用グリーンシートの製法:
既述した「[2]グリーンシートの製法」と同様にして、厚み0.30mmの拘束用グリーンシートを作製した。
[11]多層基板の作製:
図2の製造方法に従い、6層の絶縁層20を有する多層セラミック基板であるサンプル1〜サンプル13の基板を作製した。ステップS110では、全てのサンプルについて、同様の形状のビアホール、孔部、および溝部を設けた。ステップS140で全てのグリーンシートを積層する際には、孔部および溝部内に、焼失性の樹脂のみによって構成される空間充填材料を充填した。ステップS150では、既述した拘束用グリーンシートをグリーンシート積層体の上下面に配置して、積層方向にプレスすることにより、第2の層を形成した。
[12]空間部欠陥に係る評価:
各サンプルについて、積層方向(厚み方向)に平行な断面が露出するように研磨を行なった。この研磨は、各サンプルに形成した空間部が露出するまで続行し、露出した空間部を観察した。
図6は、露出した空間部(キャビティ30)の様子を表わす模式図である。空間部における焼成後の欠陥は、露出した断面を100倍のマイクロスコープ(実体顕微鏡)で観察し、クラックの有無および変形の有無を目視により判断することで評価した。評価の際には、空間部が露出した位置においてクラックおよび変形が認められない場合には、クラックおよび変形が認められるまで100μm、500μmと研磨を進め、空間部の端部から最大1mmの距離まで研磨を行なった。
クラックとは、空間部の下面の隅部に生じる亀裂である。具体的には、図6に示す隅部B,Cにおける亀裂の有無を判断した。変形とは、空間部の上面あるいは下面を形成する絶縁層の変形である。具体的には、空間部となる孔部および/または溝部と積層方向に重なる領域において、空間部の上面あるいは下面を形成する絶縁層と、当該絶縁層に隣接する絶縁層との間に生じる隙間の有無、すなわち、層間剥離(デラミネーション)の有無を判断した。図6では、キャビティ30の下面を形成する絶縁層20bと、この絶縁層20bに隣接する絶縁層20cとの間において、キャビティ30を形成する孔部と積層方向に重なる領域に、隙間Dが形成される様子を表わす。なお、図6ではキャビティの様子を示したが、中空部についても同様の評価を行なった。中空部の場合には、図6のように下面だけでなく、上面についても隅部のクラックおよび絶縁層の変形の有無を判断した。多層セラミック基板に設けた空間部の少なくともいずれか1つで、クラックあるいは変形が認められれば、当該欠陥が生じたと判定した。
[13]評価結果:
図7は、各サンプルにおけるガラス成分に係る条件、焼成温度、空間部欠陥の有無、および空間部欠陥の種類についての評価結果を示す図である。図7に示すように、第1の層の材料のガラス屈伏点MgBが絶縁層の材料のガラス屈伏点MgAよりも低く、第1の層28の材料の結晶化温度TcBが絶縁層の材料の軟化点TsAよりも低いサンプル1〜6では、空間部欠陥は認められなかった。これに対して、上記した2つの条件の少なくとも一方を満たさないサンプル7〜10では、クラックと変形の少なくとも一方の欠陥が認められた。
なお、サンプル11は、グリーンシートの収縮を抑制するための第1の層28と一対の第2の層40との双方を設けなかった多層セラミック基板である。サンプル12は、第1の層28は設けることなく、第2の層40のみを設けた多層セラミック基板である。サンプル13は、第1の層28および第2の層40を設けており、第1の層28の材料のガラス屈伏点MgBが絶縁層の材料のガラス屈伏点MgAよりも十分に低いものの(サンプル4を参照)、第1の層28のガラス成分として、焼成温度では結晶化しないガラス成分を用いた多層セラミック基板である。これらのサンプル11〜13では、クラックと変形の少なくとも一方の欠陥が認められた。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…多層セラミック基板
10a…グリーンシート積層体
20,20a〜20h…絶縁層
20a〜20h…グリーンシート
22…配線層
24…ビアホール
26…ビア導体
28…第1の層
30…キャビティ
34,36,38…中空部
34…孔部
36,38…溝部
40…第2の層

Claims (5)

  1. 複数のグリーンシートを積層して空間部が形成されたグリーンシート積層体を得る積層工程と、前記グリーンシート積層体を焼成する焼成工程とを備える、多層セラミック基板の製造方法であって、
    前記積層工程は、
    前記グリーンシート積層体を構成するための複数のグリーンシートの内、前記空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートを少なくとも1枚用意する第1の工程と、
    前記複数のグリーンシートの内、前記孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートに隣接して配置され、一部が前記空間部で露出することになる面を有するグリーンシートの表面上の領域であって、少なくとも前記空間部で露出することになる領域を覆うように、該領域の焼成時の収縮を抑えるための第1の層を形成する第2の工程と、
    前記グリーンシート積層体を構成する前記複数のグリーンシートを積層して、前記空間部内で前記第1の層が露出する前記グリーンシート積層体を得る第3の工程と、
    前記焼成工程に先立って、前記グリーンシート積層体の上面および下面の各々を覆うように、前記焼成工程における焼成温度では焼結しない第2の層を形成する第4の工程と、
    を備え、
    前記第1の層の材料のガラス屈伏点が、前記グリーンシートの材料のガラス屈伏点よりも低く、かつ、前記第1の層の材料の結晶化温度が、前記グリーンシートの材料の軟化点よりも低いことを特徴とする
    多層セラミック基板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の多層セラミック基板の製造方法であって、
    前記第1の層の材料の軟化点が、前記グリーンシートの材料のガラス屈伏点よりも低いことを特徴とする
    多層セラミック基板の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の多層セラミック基板の製造方法であって、
    前記第2の工程は、前記空間部で露出することになる面を有するグリーンシートの表面上の領域であって、前記空間部で露出することになる領域を超える範囲の領域を覆うように、前記第1の層を形成することを特徴とする
    多層セラミック基板の製造方法。
  4. 請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の多層セラミック基板の製造方法であって、
    前記第2の工程は、前記空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成されたグリーンシートに隣接する2枚のグリーンシートの各々の表面において、前記第1の層を形成することを特徴とする
    多層セラミック基板の製造方法。
  5. ガラスセラミック層である絶縁層が複数積層されて空間部が形成されている積層体を備える多層セラミック基板であって、
    前記積層体を構成する前記複数の絶縁層は、前記空間部を形成するための孔部および溝部の少なくとも一方が形成された第1のガラスセラミック層と、前記第1のガラスセラミック層に隣接して配置され、一部が前記空間部で露出する面を有する第2のガラスセラミック層とを有し、
    前記第2のガラスセラミック層の前記空間部で露出する領域を覆うように、該領域の焼成時の収縮を抑えるための第1の層が形成され、
    前記第1の層の材料のガラス屈伏点が、前記絶縁層の材料のガラス屈伏点よりも低く、かつ、前記第1の層の材料の結晶化温度が、前記絶縁層の材料の軟化点よりも低いことを特徴とする
    多層セラミック基板。
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