以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
[基本原理]
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る搬送装置300の基本原理を説明する。図1は、インクジェット記録装置1の概略構成を示す。インクジェット記録装置1は、搬送装置300と、記録ヘッド390とを備える。搬送装置300は、記録ヘッド390に対向して配置される。
搬送装置300は、搬送ベルト355と、吸引部360とを備える。搬送ベルト355は、被記録媒体Pを搬送する。吸引部360は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを吸引する。吸引部360は、ガイド部材361を含む。ガイド部材361は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを支持する。
図2は、ガイド部材361の概略を示す。ガイド部材361は、記録ヘッド390に対向する第1領域A1を有する。図3は、ガイド部材361の一部の詳細を示す。図4は、図3のIV-IV断面を示す。ガイド部材361には、溝364aと貫通孔365aが形成されている。溝364aの一部は第1領域A1に位置する。貫通孔365aは溝364aに連通する。溝364aには空気流通抑制部365bが設けられている。空気流通抑制部365bは、溝364aのうち第1領域A1に位置する部位の空気の流通を抑制する。
本実施形態によれば、ガイド部材361の溝364aのうち第1領域A1に位置する部位の空気の流通が空気流通抑制部365bによって抑制されるため、記録ヘッド390の直下では空気の流通が抑制される。その結果、簡略かつコンパクトな構成により、記録ヘッド390の直下での紙粉の舞い上がりが抑制され、記録ヘッド390への紙粉の付着を抑制できる。
[インクジェット記録装置1の構成]
図1を参照して、インクジェット記録装置1について説明する。インクジェット記録装置1は、装置筐体10と、装置筐体10の内部の下方に配置される給紙部20と、インクジェット記録方式の画像形成部30と、用紙排出部40とを備える。
給紙部20は給紙カセット200を備える。給紙カセット200は、装置筐体10に着脱自在に装着される。給紙カセット200内には、複数の被記録媒体Pが重ねられた状態で収納されている。被記録媒体Pは、例えば、普通紙、再生紙、薄紙、又は厚紙のような紙である。
画像形成部30は、搬送装置300と記録ヘッド390とを備える。搬送装置300は、第1用紙搬送部310と記録ヘッド390に対向して配置される第2用紙搬送部350とを備える。第2用紙搬送部350は、第1用紙搬送部310と用紙排出部40との間に配置される。なお、画像形成部30は、乾燥装置(図示せず)を備えていてもよい。乾燥装置は、被記録媒体P上に吐出されたインク滴を乾燥させる。
第1用紙搬送部310は略C字形の用紙搬送路311を有する。第1用紙搬送部310は、給紙カセット200の一端側の上方に配置されている給紙ローラー312と、用紙搬送路311の入口側に設けられる第1搬送ローラー対313と、用紙搬送路311の途中に設けられる第2搬送ローラー対314と、用紙搬送路311の出口側に設けられるレジストローラー対315と、ガイド板316とを備える。
図1において、X軸は、被記録媒体Pの搬送方向Dに直交する方向に平行である。Y軸は、ガイド部材361上における被記録媒体Pの搬送方向Dに平行である。Z軸は、ガイド部材361の上面に直交する方向に平行である。本実施形態では、Z軸は鉛直方向であり、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。
ガイド板316は、給紙ローラー312と第1搬送ローラー対313との間に配置されている。給紙ローラー312は、給紙カセット200内の被記録媒体Pを1枚ずつ取り出す。ガイド板316は、給紙ローラー312が取り出した被記録媒体Pを第1搬送ローラー対313に案内する。
第1搬送ローラー対313は、ガイド板316によって案内される被記録媒体Pを挟んで用紙搬送路311に送出する。具体的には次の通りである。第1搬送ローラー対313は、フィードローラー313a及びリタードローラー313bを有する。フィードローラー313aとリタードローラー313bとは互いに対向し、互いに圧接する。フィードローラー313aは回転し、被記録媒体Pを搬送方向Dに送出する。リタードローラー313bは、1枚の被記録媒体Pが送られた場合、フィードローラー313aに従動して回転する。一方、複数枚の被記録媒体Pが重なって送られた場合、リタードローラー313bは、被記録媒体Pを送出する方向の逆方向に回転して、又は停止して、フィードローラー313aに接触している被記録媒体Pから他の被記録媒体Pを分離する。その結果、1枚の被記録媒体Pがフィードローラー313aによって送り出される。
第2搬送ローラー対314は、第1搬送ローラー対313が送出した被記録媒体Pを挟んでレジストローラー対315に向けて搬送する。レジストローラー対315は、レジストローラー対315に当接して停止した被記録媒体Pの斜行補正を行う。そして、レジストローラー対315は、印字タイミングと被記録媒体Pの搬送とを同期させるために被記録媒体Pを一時待機させた後、被記録媒体Pを印字タイミングに合わせて第2用紙搬送部350に送出する。
第2用紙搬送部350は、速度検知ローラー351と、吸着ローラー352と、駆動ローラー353と、テンションローラー354と、一対のガイドローラー356と、無端状の搬送ベルト355と、吸引部360とを備える。搬送ベルト355は、速度検知ローラー351、駆動ローラー353、テンションローラー354、及び一対のガイドローラー356に張設されている。本明細書において、搬送ベルト355のうち、被記録媒体Pが載置される面を搬送面と記載し、搬送面に対向する面を搬送裏面と記載する。駆動ローラー353等の各ローラーの回転軸はX軸に平行である。搬送ベルト355には複数の吸引孔(図示せず)が形成される。複数の吸引孔の各々は、搬送面から搬送裏面まで貫通する。
速度検知ローラー351は、ガイド部材361よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの上流に配置される。速度検知ローラー351は、パルス板(図示せず)を含む。速度検知ローラー351は、搬送ベルト355に接触して回転する。速度検知ローラー351と一体となって回転するパルス板の回転速度を測定することにより、搬送ベルト355の回転速度が検知される。速度検知ローラー351は、記録ヘッド390の下部における搬送ベルト355の蛇行補正の影響を抑制する。
吸着ローラー352は、ガイド部材361のうち搬送方向Dの上流端部に対向するように配置される。吸着ローラー352は、被記録媒体Pを搬送ベルト355及びガイド部材361に押し付けつつ、被記録媒体Pを搬送方向Dに搬送する。吸着ローラー352は、吸引部360によって被記録媒体Pの全体が均等に吸引されるように、被記録媒体Pのカールを軽減する。その結果、被記録媒体Pの搬送ベルト355への密着性を高めることができる。被記録媒体Pが吸着ローラー352に進入するときの吸着ローラー352への衝突振動を緩和するため、吸着ローラー352の慣性モーメントは小さいほうが好ましく、吸着ローラー352は軽いことが好ましい。例えば、吸着ローラー352は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。吸着ローラー352の表面がアルミニウムによって形成される場合、吸着ローラー352の表面の摩耗を抑制するためアルマイト処理を施すことが好ましい。ここで、アルマイト処理とは、アルミニウムを陽極として酸性の処理浴中で電気分解することにより、アルミニウムの表面を電気化学的に酸化させ、酸化アルミニウム皮膜を生成させることをいう。なお、アルマイト処理により、吸着ローラー352は、電気的に絶縁状態となる。ただし、吸着ローラー352に導電性が必要な場合は、吸着ローラー352の表面にはアルマイト処理が施されない。
なお、レジストローラー対315による被記録媒体Pの搬送速度と搬送ベルト355による被記録媒体Pの搬送速度との差が発生する場合がある。しかし、吸着ローラー352が搬送ベルト355上の被記録媒体Pに押圧力を付与し、レジストローラー対315と吸着ローラー352との間で被記録媒体Pを撓ませることにより、搬送速度の差を解消することができる。
駆動ローラー353は、速度検知ローラー351に対して被記録媒体Pの搬送方向Dに間隔をおいて配置されている。速度検知ローラー351と駆動ローラー353によってガイド部材361上の搬送ベルト355は平面に維持される。駆動ローラー353は、摩擦力によって搬送ベルト355と密着する。例えば、搬送ベルト355がポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリカーボネート(PC)のような樹脂から形成されている場合、駆動ローラー353の表面には、エチレンプロピレンジエン(EPDM)、ポリウレタン樹脂、又はニトリルゴム(NBR)のようなゴム材を巻くことが好ましい。特に、画像形成部30が水系インクを用いて被記録媒体Pに画像を形成する場合、駆動ローラー353に巻かれるゴム材の膨潤を抑制するため、エチレンプロピレンジエン(EPDM)を駆動ローラー353に巻くことが好ましい。
搬送ベルト355がエチレンプロピレンジエン(EPDM)のようなゴム材を含む場合、駆動ローラー353の表面は金属によって形成されてもよい。駆動ローラー353の表面がアルミニウムによって形成される場合、駆動ローラー353の表面の摩耗を抑制するため駆動ローラー353の表面にアルマイト処理を施すことが好ましい。アルマイト処理によって駆動ローラー353は電気的に絶縁状態になる。ただし、駆動ローラー353に導電性が必要な場合は、駆動ローラー353の表面にはアルマイト処理が施されない。なお、駆動ローラー353と搬送ベルト355とは電気的に導通している場合、搬送ベルト355を電気的に接地させて、インクの飛翔精度の低下を抑制できる。この場合、搬送ベルト355を形成するゴム材に導電性を付与する。
駆動ローラー353は、モーター(図示せず)によって回転駆動され、搬送ベルト355を反時計回りに回転させる。搬送ベルト355の速度にムラがある場合、搬送ベルト355に対して速度ムラ補正制御が実行されることがある。速度ムラ補正制御とは、搬送ベルト355の速度のムラを補正して搬送ベルト355の速度を一定にする制御のことである。速度ムラ補正制御を実行する場合、駆動ローラー353の慣性モーメントは小さい方が好ましく、駆動ローラー353は軽いことが好ましい。例えば、駆動ローラー353は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。一方、速度ムラ補正制御を実行しない場合、慣性によるフライホイール効果によって駆動ローラー353の回転動作を安定させるため駆動ローラー353の重さを重くすることが好ましい。この場合、駆動ローラー353は、中実の金属を用いて形成される。
テンションローラー354は、搬送ベルト355のガイド部材361に対する上流端に配置される。テンションローラー354は、搬送ベルト355が撓まないように搬送ベルト355にテンションを付与する。テンションローラー354の一方端部の位置を変化させることで搬送ベルト355の自動蛇行補正が実行される。
搬送ベルト355は、搬送ベルト355に吸着された被記録媒体Pを搬送する。搬送ベルト355は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)又はポリイミド(PI)で形成されることが好ましい。この場合、搬送ベルト355の厚みのムラが抑制される。一対のガイドローラー356は、吸引部360の下方に配置される。
一対のガイドローラー356は固定的に配置されて、搬送ベルト355の内周面(搬送裏面)で囲まれた空間を維持する。一対のガイドローラー356のうち駆動ローラー353に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の駆動ローラー353への巻き掛け量を維持する。一対のガイドローラー356のうちテンションローラー354に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の蛇行補正を安定して行うため、搬送ベルト355のテンションローラー354への巻き掛け量を維持する。
吸引部360は、搬送ベルト355を介して記録ヘッド390と対向するように搬送ベルト355の搬送裏面側に配置されている。吸引部360は、ガイド部材361と、空気流通室362と、単数又は複数の吸引装置363とを備える。ガイド部材361は、空気流通室362の上面開口を覆う。空気流通室362は、上部に開口の設けられた中空の箱形状を有している。吸引装置363は、空気流通室362に連通して配置され、空気流通室362の空気を吸引して空気流通室362に負圧を発生させる。結果として被記録媒体Pが空気流通室362の上部に搬送ベルト355及びガイド部材361を介して吸引される。ここで、負圧とは、基準圧よりも低い圧力のことである。本明細書では、基準圧は大気圧である。負圧を「PN」、絶対圧を「PA」、基準圧を「PR」と表すと、負圧PNは(PA−PR)の絶対値である(PN=|PA−PR|)。絶対圧は絶対真空を0としたときの圧力である。空気流通室362は減圧室として機能する。
用紙排出部40は、搬送ガイド400と、排出ローラー対410と、排出トレイ420とを備える。搬送ガイド400は、第2用紙搬送部350よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの下流に配置される。排出トレイ420は、装置筐体10に形成された排出口430から外部に突出するように装置筐体10に固定されている。
搬送ガイド400は、搬送ベルト355から搬送される被記録媒体Pを排出ローラー対410に案内する。搬送ガイド400を通過した被記録媒体Pは、排出ローラー対410によって排出口430の方向に送出され、排出口430を介して排出トレイ420に排出される。
図2を参照して、記録ヘッド390の構成について詳細に説明する。記録ヘッド390は、単数又は複数のインクジェットヘッド390k、単数又は複数のインクジェットヘッド390c、単数又は複数のインクジェットヘッド390m及び単数又は複数のインクジェットヘッド390yにより構成されている。インクジェットヘッド390k、390c、390m、及び390yの各々は、インクを吐出する。
本実施形態では、記録ヘッド390は、3個のインクジェットヘッド390k(1セットのインクジェットヘッド390kと記載することもある。)、3個のインクジェットヘッド390c(1セットのインクジェットヘッド390cと記載することもある。)、3個のインクジェットヘッド390m(1セットのインクジェットヘッド390mと記載することもある。)及び3個のインクジェットヘッド390y(1セットのインクジェットヘッド390yと記載することもある。)により構成される。
1セットのインクジェットヘッド390k、390c、390m及び390yは、被記録媒体Pの搬送方向Dの上流側から下流側に向けて並設される。そして、3個のインクジェットヘッド390kは、搬送ベルト355(図1参照)の幅方向に沿って千鳥足状に配置される。3個のインクジェットヘッド390c〜3個のインクジェットヘッド390yについても3個のインクジェットヘッド390kと同様に配置される。
各インクジェットヘッド390k、各インクジェットヘッド390c、各インクジェットヘッド390m及び各インクジェットヘッド390yは、ラインヘッドであり、また、多数のノズル(図示せず)を備えている。多数のノズルは、各インクジェットヘッド390k〜各インクジェットヘッド390yの各々のノズル面に形成される。各インクジェットヘッド390kのノズル面は、ガイド部材361と対向する。各インクジェットヘッド390c〜各インクジェットヘッド390yの各々のノズル面についても同様である。記録ヘッド390はライン型と称される。各インクジェットヘッド390k〜各インクジェットヘッド390yは、搬送ベルト355(図1参照)の幅方向に沿って延びている。
インクジェットヘッド390kの多数のノズルの各々は、インクジェットヘッド390k内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はインクジェットヘッド390k内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。そして、インク液室はインク供給チューブ(図示せず)を介してブラック(K)のインクタンク(図示せず)に連通接続されている。従って、インクジェットヘッド390kの多数のノズルは、ブラック(K)のインクを吐出する。
インクジェットヘッド390c〜インクジェットヘッド390yの各々の構成はインクジェットヘッド390kの構成と同様である。ただし、インクジェットヘッド390cはシアン(C)のインクタンク(図示せず)に連通接続され、シアン(C)のインクを吐出する。インクジェットヘッド390mはマゼンタ(M)のインクタンク(図示せず)に連通接続され、マゼンタ(M)のインクを吐出する。インクジェットヘッド390yはイエロー(Y)のインクタンク(図示せず)に連通接続され、イエロー(Y)のインクを吐出する。
図2〜図4を参照して、ガイド部材361について詳細に説明する。図2に示すように、ガイド部材361は、インクジェット記録装置1の平面視において矩形状である。ガイド部材361は、3個の矩形状のインクジェットヘッド390kに対応する3個の矩形状の第1領域A1(「第1領域A1k」と記載することもある。)、3個の矩形状のインクジェットヘッド390cに対応する3個の矩形状の第1領域A1(「第1領域A1c」と記載することもある。)、3個の矩形状のインクジェットヘッド390mに対応する3個の矩形状の第1領域A1(「第1領域A1m」と記載することもある。)、及び3個の矩形状のインクジェットヘッド390yに対応する3個の矩形状の第1領域A1(「第1領域A1y」と記載することもある。)を有する。
3個の第1領域A1kは、千鳥足状に配置された3個のインクジェットヘッド390kに対向して、千鳥足状に配置される。3個の第1領域A1cは、千鳥足状に配置された3個のインクジェットヘッド390cに対向して、千鳥足状に配置される。3個の第1領域A1mは、千鳥足状に配置された3個のインクジェットヘッド390mに対向して、千鳥足状に配置される。3個の第1領域A1yは、千鳥足状に配置された3個のインクジェットヘッド390yに対向して、千鳥足状に配置される。
ガイド部材361は複数の第2領域A2を有する。なお、図2では、複数の第2領域A2を明瞭にするため破線を記載しているが、実際には破線は存在しない。従って、本実施形態では、複数の第2領域A2は連続した1つの領域として形成されている。複数の第1領域A1の各々はいくつかの第2領域A2に隣接する。本実施形態では、複数の第1領域A1の各々は、2個の第2領域A2、3個の第2領域A2、又は4個の第2領域A2に隣接する。
ガイド部材361の第1領域A1は、電気伝導体を用いて形成される。記録ヘッドに対向するガイド部材361が絶縁体で形成される場合、搬送ベルト355と被記録媒体Pとが摩擦し、画像形成空間に微弱な電界が形成される。従って、紙粉が記録ヘッド390に向かって飛翔、付着する。その結果、記録ヘッド390のノズルを塞いでしまう可能性があると考えられる。
そこで、本実施形態では、第1領域A1が電気伝導体を用いて形成され、記録ヘッド390と第1領域A1との電位差を小さくすることによって、画像形成空間に電界が形成されることを抑制する。従って、第1領域A1で紙粉が記録ヘッド390に向かって飛翔、付着すること、つまり、記録ヘッド390への紙粉の移動が抑制される。その結果、被記録媒体Pに形成される画像に不具合が発生することを抑制できる。また、第1領域A1が電気伝導体を用いて形成されることで、画像形成空間は安定した電界状態を維持できる。
図3に示すように、第1領域A1及び第2領域A2には複数の溝364aが設けられる。複数の溝364aは、搬送方向D及び搬送方向Dに直交する方向に沿って配列される。複数の溝364aの各々は、貫通孔365aを有する。貫通孔365aは、溝364aの中央部に配置されている。例えば、複数の貫通孔365aは、搬送方向Dに直交する方向に沿って、千鳥足状に配置されるように、複数の溝364aに形成される。
複数の溝364aのうち、いくつかの溝364aの一部は第1領域A1に位置している。本実施形態では、全ての第1領域A1に複数の溝364aの一部が位置している。これらの溝364aには空気流通抑制部365bが設けられている。空気流通抑制部365bは、溝364aのうち第1領域A1に位置する部位に設けられている。空気流通抑制部365bは、溝364aの底面364aaに形成された凸状部である。空気流通抑制部365bの外周面365baは、全周にわたって溝364aの内周面364abから離間している。また、空気流通抑制部365bの高さは溝364aの深さ以下である。
図4に示すように、ガイド部材361は、空気流通室362の上面開口を覆う天壁である。ガイド部材361は、上壁364と下壁365とから成る二重壁状である。上壁364には複数の溝364aが形成されている。上壁364は下壁365よりも記録ヘッド390に近い位置に配置される。従って、溝364aは、記録ヘッド390に向かって開口している。下壁365には複数の溝364aの各々に対応して設けられた貫通孔365aが形成されている。貫通孔365aは、下壁365の厚さ方向に沿って下壁365を貫通している。厚さ方向はZ軸に沿った方向である。また、下壁365には、第1領域A1に位置する溝364aに対応して設けられた空気流通抑制部365bが形成されている。
搬送ベルト355の搬送面上に被記録媒体Pが載置された状態で吸引装置363を駆動すると、空気流通室362内に大気圧に対する負圧が発生する。負圧は、ガイド部材361の複数の貫通孔365a及び複数の溝364a、並びに搬送ベルト355の複数の吸引孔(図示せず)を介して被記録媒体Pに作用する。従って、被記録媒体Pが搬送ベルト355の搬送面上に吸引される。そして、被記録媒体Pは、搬送ベルト355の回転に伴って搬送方向Dに搬送される。
図1〜図3を参照して、空気流通抑制部365bの機能について説明する。吸引部360のガイド部材361には、複数の溝364a及び複数の貫通孔365aが形成される。従って、被記録媒体Pの多くの紙粉が、複数の溝364a及び複数の貫通孔365aによる空気の流れによって、画像形成空間よりも被記録媒体Pの搬送方向の上流から画像形成空間に運ばれてくると考えられる。画像形成空間は、記録ヘッド390とガイド部材361との間の空間である。
一般的な吸引部では、記録ヘッドの直下の空気の流通によって、紙粉は記録ヘッド付近まで運ばれ、いずれ記録ヘッドのノズルを塞いでしまう可能性があると考えられる。従って、被記録媒体Pに形成される画像に不具合が発生する可能性がある。
そこで、本実施形態では、複数の溝364aのうち第1領域A1に位置する部位に空気流通抑制部365bを設ける。このように、記録ヘッド390の直下での空気の流通を抑制することによって、記録ヘッド390の直下に紙粉が引き込まれることを抑制する。従って、記録ヘッド390への紙粉の付着が抑制される。その結果、被記録媒体Pに形成される画像に不具合が発生することを抑制できる。
また、空気流通抑制部365bを設け、記録ヘッド390の直下での空気の流通を抑制することによって、画像の位置ズレ及び色ズレを抑制できる。以下、詳細について説明する。
一般的に、吸引部のガイド部材の構成は、被記録媒体に形成される画像の位置ズレ及び色ズレの精度を決定する一要因であると考えられる。具体的には次のとおりである。画像の位置ズレ及び色ズレは、インクの飛翔精度と、インクの着弾精度とに依存すると考えられる。インクの飛翔精度は、インクの飛翔空間(画像形成空間)における空気の流れの影響を受ける。空気の流れが速いとインクが空気の流れによって曲げられてしまう。従って、記録ヘッドの直下の空気の流通に影響をおよぼすガイド部材の構成は、インクの飛翔精度、ひいては、画像の位置ズレ及び色ズレの精度を決定する一要因と考えられる。
そこで、本実施形態では、ガイド部材361が空気流通抑制部365bを有し、記録ヘッド390の直下における空気の流通を抑制することにより、インクの飛翔精度を向上させる。その結果、画像の位置ズレ及び色ズレを抑制できる。
また、本実施形態では、空気流通抑制部365bが溝364aの底面364aaに形成された凸状部であり、空気流通抑制部365bの外周面365baが全周にわたって溝364aの内周面364abから離間している。この場合、空気流通抑制部365bに対して搬送方向Dの上流側から貫通孔365aに向かう空気流が空気流通抑制部365bで二股状に分岐して貫通孔365aに流入する。従って、被記録媒体Pが空気流通抑制部365bの両側で吸引されるため、被記録媒体Pが空気流通抑制部365bの片側で吸引される場合と比べると、被記録媒体Pをより確実に吸引することができる。
以上、図1〜図4を参照して説明したように、本実施形態によれば、記録ヘッド390の直下に対向する第1領域A1に空気流通抑制部365bを配置することで、記録ヘッド390の直下で空気の流通を抑制する。従って、記録ヘッド390の直下での紙粉の舞い上がりが抑制され、記録ヘッド390への紙粉の付着を抑制する。その結果、記録ヘッド390のノズルの詰りが抑制され、被記録媒体Pに形成される画像に不具合が発生することを抑制できる。
また、図2及び図3を参照して説明したように、本実施形態によれば、被記録媒体Pが空気流通抑制部365bの両側で吸引されるため、被記録媒体Pを確実に吸引することができる。その結果、被記録媒体Pがガイド部材361から浮揚することを抑制でき、画像品質の低下を抑制できる。
また、図2及び図3を参照して説明したように、本実施形態によれば、第1領域A1は電気伝導体を用いて形成される。従って、記録ヘッド390の直下に電界が形成されることを抑制する。その結果、第1領域A1で紙粉が記録ヘッド390に向かって飛翔することを抑制でき、記録ヘッド390のノズル詰まりが抑制される。
以上、図面(図1〜図4)を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(7))。なお、図面を理解しやすくするために、それぞれの各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(1)図3及び図4を参照して説明したように、上記の実施形態では、空気流通抑制部365bは記録ヘッド390に対向する第1領域A1に設けられているが、空気流通抑制部365bは第1領域A1以外の領域に設けることもできる。例えば、記録ヘッド390が、貫通孔365aに対して空気の流れ方向の上流側に位置する複数のインク吐出口を有している場合、最下流に位置するインク吐出口と貫通孔365aとの間に空気流通抑制部365bを設けることができる。この場合、空気流通抑制部365bが第1領域A1に位置していなくても、第1領域A1における空気流を抑制することができる。
(2)図3を参照して説明したように、上記の実施形態では、溝364aの一部が第1領域A1に位置しているが、溝364aの全体が第1領域A1に位置していてもよい。
(3)図2を参照して説明したように、ガイド部材361は、1セットのインクジェットヘッド390k〜1セットのインクジェットヘッド390yの全ての第1領域A1に対して空気流通抑制部365bを有している。ただし、ガイド部材361は、1セットのインクジェットヘッド390k〜1セットのインクジェットヘッド390yのうち、1セット、2セット、又は3セットのインクジェットヘッドの第1領域A1に対して空気流通抑制部365bを有してもよい。
(4)図2を参照して説明したように、ガイド部材361は、3個のインクジェットヘッド390kの各々に対応して空気流通抑制部365bを有しているが、ガイド部材361は、3個のインクジェットヘッド390kのうち1個又は2個のインクジェットヘッドに対応して空気流通抑制部365bを有していてもよい。他のインクジェットヘッド390c〜インクジェットヘッド390yに対応する空気流通抑制部365bについても同様である。
(5)図1を参照して説明したように、記録ヘッド390は、4色のインクジェットヘッド390k〜インクジェットヘッド390yにより構成されるが、記録ヘッド390は、単色のインクジェットヘッドで構成されてもよいし、4色以外の複数色のインクジェットヘッドで構成されてもよい。
(6)図2を参照して説明したように、1色に対して3個のインクジェットヘッド390kが用意されるが、1色に対して、単数のインクジェットヘッド390kが用意されてもよいし、3個以外の複数のインクジェットヘッド390kが用意されてもよい。他のインクジェットヘッド390c〜インクジェットヘッド390yについても同様である。
(7)図3を参照して説明したように、複数の溝364aの全部に貫通孔365aが形成されるが、複数の溝364aの一部に貫通孔365aが形成されてもよい。なお、1つの溝364aに1つの貫通孔365aが形成されてもよいし複数の貫通孔365aが形成されてもよい。