以下、図面を参照して本発明による搬送装置及びインクジェット記録装置の実施形態を説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
(実施形態1:基本原理)
図1及び図2(a)を参照して、本発明の実施形態1に係る搬送装置の基本原理を説明する。図1は、インクジェット記録装置1の概略構成を示す。図2(a)は、本発明の実施形態1に係る搬送ベルト355を示す模式的な斜視図である。
インクジェット記録装置1は、搬送装置300と記録ヘッド390とを備える。搬送装置300は、記録ヘッド390に対向して配置される。
搬送装置300は、搬送ベルト355と、吸引部360とを備える。搬送ベルト355は、被記録媒体Pを搬送する。吸引部360は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを吸引する。吸引部360は、ガイド部材361を含む。ガイド部材361は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを支持する。
[インクジェット記録装置1の構成]
図1を参照して、インクジェット記録装置1について説明する。インクジェット記録装置1は、装置筐体10と、装置筐体10の内部の下方に配置される給紙部20と、インクジェット記録方式の画像形成部30と、用紙排出部40とを備える。
給紙部20は給紙カセット200を備える。給紙カセット200は、装置筐体10に着脱自在に装着される。給紙カセット200内には、複数の被記録媒体Pが重ねられた状態で収納されている。被記録媒体Pは、例えば、普通紙、再生紙、薄紙、又は厚紙のような紙である。
画像形成部30は、搬送装置300と記録ヘッド390とを備える。搬送装置300は、第1用紙搬送部310と記録ヘッド390に対向して配置される第2用紙搬送部350とを備える。第2用紙搬送部350は、第1用紙搬送部310と用紙排出部40との間に配置される。なお、画像形成部30は、乾燥装置(図示せず)を備えていてもよい。乾燥装置は、被記録媒体P上に吐出されたインク滴を乾燥させる。
第1用紙搬送部310は略C字形の用紙搬送路311を有する。第1用紙搬送部310は、給紙カセット200の一端側の上方に配置されている給紙ローラー312と、用紙搬送路311の入口側に設けられる第1搬送ローラー対313と、用紙搬送路311の途中に設けられる第2搬送ローラー対314と、用紙搬送路311の出口側に設けられるレジストローラー対315と、ガイド板316とを備える。
図1において、X軸は、被記録媒体Pの搬送方向Dに直交する方向に平行である。Y軸は、ガイド部材361上における被記録媒体Pの搬送方向Dに平行である。Z軸は、ガイド部材361に直交する方向に平行である。本実施形態1では、Z軸は鉛直方向であり、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。
ガイド板316は給紙ローラー312と第1搬送ローラー対313との間に配置されている。給紙ローラー312は、給紙カセット200内の被記録媒体Pを1枚ずつ取り出す。ガイド板316は、給紙ローラー312が取り出した被記録媒体Pを第1搬送ローラー対313に案内する。
第1搬送ローラー対313は、ガイド板316によって案内される被記録媒体Pを挟んで用紙搬送路311に送出する。具体的には次の通りである。第1搬送ローラー対313は、フィードローラー313a及びリタードローラー313bを有する。フィードローラー313aとリタードローラー313bとは互いに対向し、互いに圧接する。フィードローラー313aは回転し、被記録媒体Pを搬送方向Dに送出する。リタードローラー313bは、1枚の被記録媒体Pが送られた場合、フィードローラー313aに従動して回転する。一方、複数枚の被記録媒体Pが重なって送られた場合、リタードローラー313bは、被記録媒体Pを送出する方向の逆方向に回転して、又は停止して、フィードローラー313aに接触している被記録媒体Pから他の被記録媒体Pを分離する。その結果、1枚の被記録媒体Pがフィードローラー313aによって送り出される。
第2搬送ローラー対314は、第1搬送ローラー対313が送出した被記録媒体Pを挟んでレジストローラー対315に向けて搬送する。レジストローラー対315は、レジストローラー対315に当接して停止した被記録媒体Pの斜行補正を行う。そして、レジストローラー対315は、印字タイミングと被記録媒体Pの搬送とを同期させるために被記録媒体Pを一時待機させた後、被記録媒体Pを印字タイミングに合わせて第2用紙搬送部350に送出する。
第2用紙搬送部350は、速度検知ローラー351と、吸着ローラー352と、駆動ローラー353と、テンションローラー354と、一対のガイドローラー356と、無端状の搬送ベルト355と、吸引部360とを備える。搬送ベルト355は、速度検知ローラー351、駆動ローラー353、テンションローラー354、及び一対のガイドローラー356に張設されている。本明細書において、搬送ベルト355のうち、被記録媒体Pが載置される面を搬送面と記載し、搬送面に対向する面を搬送裏面と記載する。駆動ローラー353等の各ローラーの回転軸はX軸に平行である。搬送ベルト355には複数の吸引孔355aが形成される。複数の吸引孔355aの各々は、搬送面から搬送裏面まで貫通する。
速度検知ローラー351は、ガイド部材361よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの上流に配置される。速度検知ローラー351は、パルス板(図示せず)を含む。速度検知ローラー351は、搬送ベルト355に接触して回転する。速度検知ローラー351と一体となって回転するパルス板の回転速度を測定することにより、搬送ベルト355の回転速度が検知される。速度検知ローラー351は、記録ヘッド390の下部における搬送ベルト355の蛇行補正の影響を抑制する。
吸着ローラー352は、搬送ベルト355を介してガイド部材361のうち搬送方向Dの上流端部に配置される。吸着ローラー352は、被記録媒体Pを搬送ベルト355及びガイド部材361に押し付けつつ、被記録媒体Pを搬送方向Dに搬送する。吸着ローラー352は、吸引部360によって被記録媒体Pの全体が均等に吸引されるように、被記録媒体Pのカールを軽減する。その結果、被記録媒体Pの搬送ベルト355への密着性を高めることができる。被記録媒体Pが吸着ローラー352に進入するときの吸着ローラー352への衝突振動を緩和するため、吸着ローラー352の慣性モーメントは小さいほうが好ましく、吸着ローラー352は軽いことが好ましい。例えば、吸着ローラー352は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。吸着ローラー352の表面がアルミニウムによって形成される場合、吸着ローラー352の表面の摩耗を抑制するためアルマイト処理を施すことが好ましい。ここで、アルマイト処理とは、アルミニウムを陽極として酸性の処理浴中で電気分解することにより、アルミニウムの表面を電気化学的に酸化させ、酸化アルミニウム皮膜を生成させることをいう。なお、アルマイト処理により、吸着ローラー352は、電気的に絶縁状態となる。ただし、吸着ローラー352に導電性が必要な場合は、吸着ローラー352の表面にはアルマイト処理が施されない。
なお、レジストローラー対315による被記録媒体Pの搬送速度と搬送ベルト355による被記録媒体Pの搬送速度との差が発生する場合がある。しかし、吸着ローラー352が搬送ベルト355上の被記録媒体Pに押圧力を付与し、レジストローラー対315と吸着ローラー352との間で被記録媒体Pを撓ませることにより、搬送速度の差を解消することができる。
駆動ローラー353は、速度検知ローラー351に対して被記録媒体Pの搬送方向Dに間隔をおいて配置されている。速度検知ローラー351と駆動ローラー353によってガイド部材361上の搬送ベルト355は平面に維持される。駆動ローラー353は、摩擦力によって搬送ベルト355と密着する。例えば、搬送ベルト355がポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリカーボネート(PC)のような樹脂から形成されている場合、駆動ローラー353の表面には、エチレンプロピレンジエン(EPDM)、ポリウレタン樹脂、又はニトリルゴム(NBR)のようなゴム材を巻くことが好ましい。特に、画像形成部30が水系インクを用いて被記録媒体Pに画像を形成する場合、駆動ローラー353に巻かれるゴム材の膨潤を抑制するため、エチレンプロピレンジエン(EPDM)を駆動ローラー353に巻くことが好ましい。
搬送ベルト355がエチレンプロピレンジエン(EPDM)のようなゴム材を含む場合、駆動ローラー353の表面は金属によって形成されてもよい。駆動ローラー353の表面がアルミニウムによって形成される場合、駆動ローラー353の表面の摩耗を抑制するため駆動ローラー353の表面にアルマイト処理を施すことが好ましい。アルマイト処理によって駆動ローラー353は電気的に絶縁状態になる。ただし、駆動ローラー353に導電性が必要な場合は、駆動ローラー353の表面にはアルマイト処理が施されない。なお、駆動ローラー353と搬送ベルト355とは電気的に導通している場合、搬送ベルト355を電気的に接地させて、インクの飛翔精度の低下を抑制できる。この場合、搬送ベルト355を形成するゴム材に導電性を付与する。
駆動ローラー353は、モーター(図示せず)によって回転駆動され、搬送ベルト355を反時計回りに回転させる。搬送ベルト355の速度にムラがある場合、搬送ベルト355に対して速度ムラ補正制御が実行されることがある。速度ムラ補正制御とは、搬送ベルト355の速度のムラを補正して搬送ベルト355の速度を一定にする制御のことである。速度ムラ補正制御を実行する場合、駆動ローラー353の慣性モーメントは小さい方が好ましく、駆動ローラー353は軽いことが好ましい。例えば、駆動ローラー353は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。一方、速度ムラ補正制御を実行しない場合、慣性によるフライホイール効果によって駆動ローラー353の回転動作を安定させるため駆動ローラー353の重さを重くすることが好ましい。この場合、駆動ローラー353は、中実の金属を用いて形成される。
テンションローラー354は、搬送ベルト355のガイド部材361に対する上流端に配置される。テンションローラー354は、搬送ベルト355が撓まないように搬送ベルト355にテンションを付与する。テンションローラー354の一方端部を変化させることで搬送ベルト355の自動蛇行補正が実行される。
搬送ベルト355は、搬送ベルト355に吸着された被記録媒体Pを搬送する。搬送ベルト355は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)又はポリイミド(PI)で形成されることが好ましい。この場合、搬送ベルト355の厚みのムラが抑制される。一対のガイドローラー356は、吸引部360の下方に配置される。
一対のガイドローラー356は固定的に配置されて、搬送ベルト355の内周面(搬送裏面)で囲まれた空間を維持する。一対のガイドローラー356のうち駆動ローラー353に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の駆動ローラー353への巻き掛け量を維持する。一対のガイドローラー356のうちテンションローラー354に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の蛇行補正を安定して行うため、搬送ベルト355のテンションローラー354への巻き掛け量を維持する。
吸引部360は、搬送ベルト355を介して記録ヘッド390と対向するように搬送ベルト355の搬送裏面側に配置されている。吸引部360は、ガイド部材361と、空気流通室362と、単数又は複数の吸引装置363とを備える。
空気流通室362は中空の箱形状を有し、空気流通室362の上部は開放されている。つまり、空気流通室362の上部には開口が形成される。ガイド部材361は、空気流通室362の上部開口を覆う(塞ぐ)。ガイド部材361は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを支持する。
吸引装置363は、空気流通室362に連通して配置され、空気流通室362の空気を吸引して空気流通室362に負圧を発生させる。結果として被記録媒体Pが空気流通室362の上部に搬送ベルト355及びガイド部材361を介して吸引される。ここで、負圧とは、基準圧よりも低い圧力のことである。本明細書では、基準圧は大気圧である。負圧を「PN」、絶対圧を「PA」、基準圧を「PR」と表すと、負圧PNは(PA−PR)の絶対値である(PN=|PA−PR|)。絶対圧は絶対真空を0としたときの圧力である。空気流通室362は減圧室として機能する。
用紙排出部40は、搬送ガイド400と、排出ローラー対410と、排出トレイ420とを備える。搬送ガイド400は、第2用紙搬送部350よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの下流に配置される。排出トレイ420は、装置筐体10に形成された排出口430から外部に突出するように装置筐体10に固定されている。
搬送ガイド400は、搬送ベルト355から搬送される被記録媒体Pを排出ローラー対410に案内する。搬送ガイド400を通過した被記録媒体Pは、排出ローラー対410によって排出口430の方向に送出され、排出口430を介して排出トレイ420に排出される。
図2(a)及び図2(b)を参照して、本発明の実施形態1に係る搬送ベルト355について説明する。図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線に沿った模式的な断面図である。
図2(a)に示すように、搬送ベルト355には、複数の吸引孔355aが形成されている。搬送ベルト355の厚みは、例えば100μmである。
図2(b)に示すように、吸引孔355aは吸引部360に連通する。吸引孔355aは、搬送ベルト355の厚み方向DTに貫通する。吸引孔355aの開口部分の形状は円形である。吸引孔355aの直径は、2mmである。なお、吸引孔355aの形状は、例えば、楕円形、正方形及び長方形などであってもよい。
図1、図3(a)及び図3(b)を参照して、被記録媒体Pの一部と送り部材との関係について説明する。被記録媒体Pのうち、片面印刷時に印刷が行われる面を印刷面と記載し、他方の面を印刷裏面と記載する。図3(a)及び図3(b)は、被記録媒体Pの印刷面に対して法線方向から見た図である。幅方向D2は、被記録媒体Pの印刷面と平行かつ搬送方向D1と直行する方向を示す。幅PWは、被記録媒体Pの幅を示し、長さPLは被記録媒体Pの長さを示す。
送り部材Fは、第1搬送ローラー対313と第2搬送ローラー対314と給紙ローラー312とを含む。送り部材Fは、被記録媒体Pを搬送方向D1に送る際に被記録媒体Pと接触する。被記録媒体Pのうち送り部材Fと接触する部分を接触領域と記載する。
まず、図3(a)を参照して、給紙ローラー312が被記録媒体Pに接触する場合について説明する。図3(a)に示すように、給紙ローラー312は、1つのローラー部材312aを含む。ローラー部材312aは、被記録媒体Pの幅PWに対して中央付近に配置される。ローラー部材312aの幅RWは、被記録媒体Pの幅PWよりも狭い。ローラー部材312aは、給紙カセット200内から被記録媒体Pを取り出し搬送方向D1に送る際に、被記録媒体Pの一部と接触する。
接触領域801は、被記録媒体Pの印刷面とローラー部材312aとが接触する領域である。図3(a)に示す接触領域801は、被記録媒体Pの印刷面上の領域であるが、印刷裏面上又は両面上の領域であってもよい。接触領域801は、搬送方向D1に延びる被記録媒体P上の領域である。
次に、図3(b)を参照して、フィードローラー313aが被記録媒体Pに接触する場合について説明する。図3(b)に示すように、フィードローラー313aは、ローラー部材313a1とローラー部材313a2とを含む。
ローラー部材313a1は、搬送方向D1に沿った被記録媒体Pの右側端部付近に配置される。ローラー部材313a2は、搬送方向D1に沿った被記録媒体Pの左側端部付近に配置される。ローラー部材313a1及びローラー部材313a2の各々の幅RWは、被記録媒体Pの幅PWよりも狭い。ローラー部材313a1及びローラー部材313a2は、被記録媒体Pを搬送方向D1に送る際に被記録媒体Pの接触領域802と接触する。
接触領域802は、接触領域802a1と接触領域802a2とを含む。接触領域802a1は、被記録媒体Pの印刷面とローラー部材313a1とが接触する領域である。接触領域802a1は、被記録媒体Pの印刷面上の領域であるが、印刷裏面上又は両面上の領域であってもよい。接触領域802a2は、被記録媒体Pの印刷面とローラー部材313a2とが接触する領域である。接触領域802a2は、被記録媒体Pの印刷面上の領域であるが、印刷裏面上又は両面上の領域であってもよい。接触領域802(接触領域802a1及び接触領域802a2)は、搬送方向D1に延びる被記録媒体P上の領域である。
なお、図3(a)において、給紙ローラー312が含むローラー部材の数は1つであるが、給紙ローラー312が含むローラー部材の数は2つ以上であっても良い。また、図3(b)において、フィードローラー313aが含むローラー部材の数は2つであるが、フィードローラー313aが含むローラー部材の数は、1つ又は3つ以上であっても良い。なお、送り部材Fは、被記録媒体Pの幅PWよりも狭い幅の部材であれば、給紙ローラー312又はフィードローラー313aに限定されない。
図3及び図4を参照して、本発明の実施形態1に係る搬送ベルト355の搬送面上の領域と被記録媒体Pの接触領域800との関係を説明する。図4は、本発明の実施形態1に係る搬送ベルト355を示す模式的な平面図である。
図4に示すように搬送ベルト355は、第1領域701と第2領域702とを含む。第1領域701は、被記録媒体Pが搬送ベルト355の搬送面に載って搬送される際に、被記録媒体Pの接触領域800と搬送ベルト355の搬送面とが重なる可能性のある領域である。すなわち、第1領域701は、被記録媒体Pの一部が搬送ベルト355の搬送面に載る可能性のある領域である。第1領域701は、領域701aと領域701bと領域701cとを含む。
領域701aは、接触領域801と搬送ベルト355の搬送面とが重なる可能性のある領域である。接触領域801は、図3(a)を参照して説明したように被記録媒体Pとローラー部材312aとが接触した領域である。
領域701bは、接触領域802a1と搬送ベルト355の搬送面とが重なる可能性のある領域である。接触領域802a1は、図3(b)を参照して説明したように被記録媒体Pとローラー部材313a1とが接触した領域である。
領域701cは、接触領域802a2と搬送ベルト355の搬送面とが重なる可能性のある領域である。接触領域802a2は、図3(b)を参照して説明したように被記録媒体Pとローラー部材313a2とが接触した領域である。第1領域701(領域701a、領域701b及び領域701c)は、搬送方向Dに延びる搬送ベルト355上の領域である。
第2領域702は、第1領域701に隣接する。第2領域702は、領域702aと領域702bと領域702cと領域702dとを含む。第2領域702(領域702a、領域702b、領域702c及び領域702d)は、搬送方向Dに延びる被記録媒体P上の領域である。
図5を参照して、本発明の実施形態1に係る搬送ベルト355について詳細に説明する。図5(a)〜(b)は、本発明の実施形態1に係る搬送ベルト355を示す模式的な平面図である。
図5(a)は、給紙ローラー312が被記録媒体Pの一部と接触する場合の搬送ベルト355を示す。図5(b)は、給紙ローラー312及びフィードローラー313a(2つのローラー部材)が被記録媒体Pの一部と接触する場合の搬送ベルト355を示す。
まず、図5(a)及び(b)に示す搬送ベルト355上の領域について説明する。図5(a)に示す搬送ベルト355は、第1領域701(領域701a)と第2領域702(領域702a及び領域702b)とを含む。図5(b)に示す搬送ベルト355は、第1領域701(領域701a、領域701b及び領域701c)と第2領域702(領域702a、領域702b、領域702c及び領域702d)とを含む。
図5(a)及び(b)が示すように、第1領域701に含まれる吸引孔355aの径は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの径よりも小さい。また、第1領域701に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔は、第2領域702に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔よりも狭い。すなわち、複数の吸引孔355aのうち第1領域701に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積(開口部分の面積)は、複数の吸引孔355aのうち第2領域702に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積よりも小さく、複数の吸引孔355aのうち第1領域701に含まれる単位面積当たりの吸引孔355aの数は、複数の吸引孔355aのうち第2領域702に含まれる単位面積当たりの吸引孔355aの数よりも多い。
本実施形態では、第1領域701に含まれる吸引孔355aの径は、1mmである。第2領域702に含まれる吸引孔355aの径は、2mmである。第1領域701に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔は、搬送ベルト355のX方向に対して、8mmであり、搬送ベルトのY方向に対して、4mmである。第2領域702に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔は、搬送ベルト355のX方向に対して、8mmであり、搬送ベルト355のY方向に対して、8mmである。第1領域701及び第2領域702に含まれる複数の吸引孔355aは、X方向及びY方向に対して千鳥足状に形成されている。
以上、図1〜図5を参照して説明したように、搬送ベルト355の第1領域701に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積よりも小さい。第1領域701に含まれる吸引孔355aの単位面積当たりの数は、第2領域702に含まれる単位面積当たりの吸引孔355aの数よりも多い。したがって、第1領域701における吸引部360からの負圧が大幅に低下することを抑制し、空気の流通を抑制することができる。その結果、紙粉が空気中に舞うことを抑制しつつ被記録媒体Pの撓みを低減することが可能となり被記録媒体Pの搬送性を向上させる。
図5に示すように第1領域701に含まれる吸引孔355aの開口率は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの開口率よりも低いことが好ましい。具体的には、第1領域701の総面積に対する複数の吸引孔355aのうち第1領域701に含まれる吸引孔355aの開口部分の総面積の割合は、第2領域702の総面積に対する複数の吸引孔355aの開口部分の総面積の割合よりも低いことが好ましい。
開口率Rは、以下の式1で求められる。
R=St/S(式1)
Stは所定領域に含まれる吸引孔355aの開口部分の総面積であり、Sは当該所定領域の総面積である。開口率Rは、当該所定領域の総面積に対する当該所定領域に含まれる吸引孔355aの開口部分の総面積の割合である。
ここで、複数の吸引孔355aのそれぞれの直径が等しい場合、Stは、以下の式2で求められる。
St=Sa×N(式2)
Saは当該所定領域に含まれる吸引孔355aの1つの開口部分の面積である。Nは当該所定領域に含まれる吸引孔355aの数である。当該所定領域に含まれる吸引孔355aの開口部分の総面積は、当該所定領域に含まれる吸引孔355aの開口部分の面積の総和である。
なお、第1領域701に含まれる吸引孔355aの開口率は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの開口率と同じであってもよい。
以上、図1〜図5を参照して説明したように、搬送ベルト355において、第1領域701に含まれる吸引孔355aの開口率は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの開口率よりも低い。したがって、第1領域701における吸引部360からの負圧が低下し、空気の流通を抑制することができる。その結果、紙粉が被記録媒体Pから遊離し空気中に舞うことを抑制することができる。
[実施形態2]
次に、図6を参照して、本発明の実施形態2に係る搬送ベルト355について説明する。図6は、本発明の実施形態2に係る搬送ベルト355を示す模式的な平面図である。
図6は、給紙ローラー312及びフィードローラー313a(2つのローラー部材)が被記録媒体Pの一部と接触する場合の搬送ベルト355を示す。図6に示す搬送ベルト355は、第1領域701(領域701a、領域701b及び領域701c)と第2領域702(領域702a、領域702b、領域702c及び領域702d)とを含む。また、第1領域701は、第3領域703(領域701a)と第4領域704(領域701b及び領域701c)とを含む。
第3領域703は、図3(a)及び図4を参照して説明したように、搬送ベルト355が、ローラー部材312aと接触した被記録媒体Pの一部(接触領域801)を載せることが可能な領域である。
第4領域704は、図3(b)及び図4を参照して説明したように、搬送ベルト355が、ローラー部材313a1及びローラー部材313a2と接触した被記録媒体Pの一部(接触領域802)を載せることが可能な領域である。
図6に示すように、第3領域703には、吸引孔355aは含まれない。また、第4領域704に含まれる吸引孔355aの径は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの径よりも小さい。さらに、第4領域704に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔は、第2領域702に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔よりも狭い。本実施形態では、第2領域702に含まれる吸引孔355aの径は2mmである。第4領域704に含まれる吸引孔355aの径は1mmである。第2領域702に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔は、X方向に対して、8mmであり、Y方向に対して、8mmである。第4領域704に含まれる隣接する吸引孔355aの間隔は、X方向に対して、8mmであり、Y方向に対して、4mmである。第2領域702及び第4領域704に含まれる吸引孔355aは、X方向及びY方向に対して千鳥足状に形成されている。
搬送ベルト355において、第3領域703には吸引孔355aが含まれず、第4領域704に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口部分の面積よりも小さく、第4領域704に含まれる単位面積当たりの吸引孔355aの数は、第2領域702に含まれる単位面積当たりの吸引孔355aの数よりも多い。したがって、紙粉が特に発生しやすい第3領域703において、吸引部360からの負圧がなくなる。また、第4領域704において、吸引部360からの負圧が低下し、空気の流通を大幅に抑制することができる。その結果、紙粉が空気中に舞うことを抑制しつつ被記録媒体Pの撓みを低減することが可能となり被記録媒体Pの搬送性を向上させる。
[実施形態3]
なお、図1〜図6を参照して説明した搬送ベルト355は、搬送ベルト355の全面にわたって吸引孔355aが形成されていたが、第1領域701に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積が、第2領域702に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積よりも小さく、第1領域701に含まれる吸引孔355aの単位面積当たりの数が、第2領域702に含まれる単位面積当たりの吸引孔355aの数よりも多い限りは、搬送ベルト355の全面にわたって吸引孔355aが形成されていなくてもよい。例えば、搬送ベルト355のX方向の端部の一部又は全てにおいて吸引孔355aが形成されていなくてもよい(図7参照)。
図7を参照して、本発明の実施形態3に係る搬送ベルト355について説明する。図7は、本発明の実施形態3に係る搬送ベルト355を示す模式的な平面図である。
搬送ベルト355は、被記録媒体領域705と、領域706とを含む。被記録媒体領域705は、被記録媒体Pが搬送ベルト355の搬送面に載る可能性のある領域である。被記録媒体領域705は、第1領域701と第2領域702とを含む。領域706は、被記録媒体領域705に隣接する。領域706は、領域706aと領域706bとを含む。
領域706aと領域706bとは、搬送ベルト355のX方向の両端部に位置する。領域706aと領域706bの一部又は全てにおいて、吸引孔355aは形成されていなくてもよい。
図1〜図6を参照して説明した搬送ベルト355と同様に、被記録媒体領域705においても、第1領域701に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積は、第2領域702に含まれる吸引孔355aの1個当たりの開口面積よりも小さく、第1領域701に含まれる吸引孔355aの単位面積当たりの数は、第2領域702に含まれる単位面積当たりの吸引孔355aの数よりも多い。したがって、搬送ベルト355は、第1領域701における吸引部360からの負圧が大幅に低下することを抑制し、空気の流通を抑制することができる。その結果、紙粉が空気中に舞うことを抑制しつつ被記録媒体Pの撓みを低減することが可能となり被記録媒体Pの搬送性を向上させる。
以上、本発明の実施形態について、図面(図1〜図7)を参照しながら説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
なお、上記実施形態では、搬送ベルト355に含まれる複数の吸引孔355aの配置は、千鳥足状であるが、格子状であってもよい。
また、上記実施形態では、搬送ベルト355の形状は無端あったが、搬送ベルト355の形状は直線状であってもよい。
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。