JP2015195307A - 半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電界集中の緩和と正孔電流の低下を同時に達成する技術を提供する。【解決手段】 半導体装置10は、半導体基板11とトレンチ型絶縁ゲート27とエミッタトレンチ57を備える。半導体基板11は、n型のエミッタ領域40と、p型のボディ領域36と、n型のドリフト領域32と、p型の第1フローティング領域34と、を有する。トレンチ型絶縁ゲート27の底面の少なくとも一部は、第1フローティング領域34に接する。トレンチ型絶縁ゲート27の側面とエミッタトレンチ57の側面は、ボディ領域36を介して対向する。【選択図】図2
Description
本明細書に開示する技術は、半導体装置に関する。
半導体装置としてIGBTが知られている。IGBTでは、ターンオフ損失の低減が望まれている。ターンオフ損失を低減するためには、一般に、ゲート抵抗を小さくし、スイッチング速度を高速化させることが行われる。
ターンオフ損失は、ゲート抵抗が比較的に大きい範囲では、ゲート抵抗を小さくするにつれて低減するものの、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲では飽和することが知られている。本願発明者の検討によると、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲では、半導体装置がオンからオフに切換る遷移期間において、トレンチ型絶縁ゲートの底部でアバランシェが発生し、これによりターンオフ損失が飽和することが分かってきた。
この知見に基づくと、ターンオフ損失を低減させるためには、トレンチ型絶縁ゲートの底部におけるアバランシェの発生を抑制することが肝要である。このアバランシェ現象は、電界が集中する箇所に正の空間電荷が存在すると加速される。このため、アバランシェの発生を抑制するためには、トレンチ型絶縁ゲートの底部における電界集中の緩和と正孔電流の低下を同時に達成する必要がある。
例えば、特許文献1は、トレンチ型絶縁ゲートの底部にp型のフローティング領域を形成する技術を開示する。この構成によると、トレンチ型絶縁ゲートの底部の電界集中を緩和させることができる。しかしながら、特許文献1の構成では、トレンチ型絶縁ゲートの底部を流れる正孔電流を低下させることができない。
本明細書では、トレンチ型絶縁ゲートの底部における電界集中の緩和と正孔電流の低下を同時に達成する技術を提供する。
本明細書が開示する半導体装置は、半導体基板とトレンチ型絶縁ゲートとエミッタトレンチを備える。半導体基板は、第1導電型のエミッタ領域と、第2導電型のボディ領域と、第1導電型のドリフト領域と、第2導電型の第1フローティング領域と、を有する。ボディ領域は、エミッタ領域を取り囲んでいる。ドリフト領域は、ボディ領域によってエミッタ領域から分離されている。第1フローティング領域は、ドリフト領域によってボディ領域から分離されている。トレンチ型絶縁ゲートは、半導体基板の上面からエミッタ領域及びボディ領域を貫通している。トレンチ型絶縁ゲートの底面の少なくとも一部は、第1フローティング領域に接している。トレンチ型絶縁ゲートの側面とエミッタトレンチの側面は、ボディ領域を介して対向している。
上記の半導体装置では、トレンチ型絶縁ゲートの底部に第2導電型の第1フローティング領域が形成されている。このため、半導体装置がオンからオフに切換る遷移期間において、第1フローティング領域とドリフト領域とのpn接合から空乏層が広がり、トレンチ型絶縁ゲートの底部における電界集中が緩和される。また、上記の半導体装置では、トレンチ型絶縁ゲートの側面とエミッタトレンチの側面がボディ領域を介して対向している。即ち、エミッタトレンチは、トレンチ型絶縁ゲートに隣り合うように配置されている。エミッタトレンチの周囲の電位は、エミッタトレンチが配置されない構成と比較して低下する。これにより、正孔電流の一部が、エミッタトレンチ側に分流される。このため、半導体装置がオンからオフに切換る遷移期間において、トレンチ型絶縁ゲートの底部を流れる正孔電流を低下させることができる。この構成によると、トレンチ型絶縁ゲートの底部における電界集中の緩和と正孔電流の低下を同時に達成することができる。このため、半導体装置がオンからオフに切換る遷移期間において、トレンチ型絶縁ゲートの底部においてアバランシェが発生することを抑制でき、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲においてもターンオフ損失を低減することができる。
本明細書が開示する技術の詳細、及び、さらなる改良は、発明を実施するための形態及び実施例にて詳しく説明する。
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
(特徴1) 本明細書が開示する半導体装置では、エミッタトレンチが、半導体基板の上面からボディ領域を貫通していてもよい。半導体基板はさらに、第2導電型であり、エミッタトレンチの底面に接する第2フローティング領域を有していてもよい。この構成によると、半導体装置がオンからオフに切換る遷移期間において、エミッタトレンチ底部において電界が集中することを緩和できる。
(特徴2) 本明細書が開示する半導体装置では、半導体基板の厚み方向において、トレンチ型絶縁ゲートの長さとエミッタトレンチの長さが等しくてもよい。この構成によると、エミッタトレンチ用のトレンチをトレンチ型絶縁ゲート用のトレンチと同時に形成できるため、エミッタトレンチを容易に形成することができる。また、トレンチ底部の電界を均一化でき、特定のトレンチ底部への電界集中を防止することができる。
(特徴3) 本明細書が開示する半導体装置では、半導体基板の上面に対して直交する方向から観測したときに、少なくとも一方向に沿ってトレンチ型絶縁ゲートとエミッタトレンチが交互に配置されていてもよい。この構成によると、正孔電流を各エミッタトレンチに分流させることができ、各トレンチ型絶縁ゲートの底部における正孔電流を効果的に低下させることができる。
実施例1の半導体装置10について図1〜6を参照して説明する。半導体装置10は、IGBTであり、電力用半導体装置として用いられる。図1では図を見易くするために半導体基板11上の絶縁膜及び電極の図示を省略している。図1に示すように、半導体基板11には、素子領域12と、終端領域14が形成されている。終端領域14は素子領域12を取り囲んでいる。半導体基板11には例えばSi基板が用いられる。なお、以下の説明において、z方向は半導体基板11の厚み方向を意味し、x方向はz方向に垂直な一方向を意味し、y方向はx方向及びy方向に垂直な方向を意味する。
素子領域12にはy方向に延びる3つのトレンチ型絶縁ゲート27と、y方向に延びる4つのエミッタトレンチ57が形成されている。トレンチ型絶縁ゲート27とエミッタトレンチ57は、x方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。半導体装置10をx方向に沿って観測すると、いずれのトレンチ型絶縁ゲート27もエミッタトレンチ57の間に配置されている。
図2に示すように、素子領域12には、半導体基板11の上面に臨む領域に、n+型のエミッタ領域40とp−型のボディ領域36が形成されている。エミッタ領域40とボディ領域36は、半導体基板11の上面に露出している。ボディ領域36は、エミッタ領域40に接すると共に、エミッタ領域40を取り囲んでいる。
ボディ領域36の下側には、n−型のドリフト領域32が形成されている。ドリフト領域32は、半導体基板11の全面に形成されている。ドリフト領域32の不純物濃度は、エミッタ領域40の不純物濃度より低い。ドリフト領域32は、ボディ領域36の下面に接している。ドリフト領域32は、ボディ領域36によってエミッタ領域40から分離されている。
半導体基板11の下面に臨む範囲には、p+型のコレクタ領域30が形成されている。コレクタ領域30は半導体基板11の全面に形成されている。コレクタ領域30の不純物濃度は、ボディ領域36の不純物濃度より高い。コレクタ領域30は、ドリフト領域32の下面に接している。コレクタ領域30は、ドリフト領域32によってボディ領域36から分離されている。
半導体基板11には、トレンチ型絶縁ゲート27が形成されている。トレンチ型絶縁ゲート27は、ゲートトレンチ24、ゲート電極16、及び絶縁体26を有する。ゲートトレンチ24は、半導体基板11の上面から、エミッタ領域40及びボディ領域36を貫通しており、その下方の側面はドリフト領域32に接している。ゲートトレンチ24内には、ゲート電極16が形成されている。ゲート電極16は、その下端がボディ領域36の下面より深くなるように形成されている。ゲートトレンチ24の壁面とゲート電極16の間(即ち、ゲート電極16の側方及び下方)には絶縁体26が充填されている。このため、ゲート電極16は、絶縁体26を介してボディ領域36及びエミッタ領域40に対向している。また、ゲート電極16の上面には、キャップ絶縁膜45が形成されている。
ゲートトレンチ24の底部には、p−型の第1フローティング領域34が形成されている。第1フローティング領域34は、ゲートトレンチ24の底部に接すると共に、ゲートトレンチ24の底部を囲んでいる。第1フローティング領域34は、ドリフト領域32に囲まれている。これによって、第1フローティング領域34は、ボディ領域36から分離されており、フローティングである。
半導体基板11には、エミッタトレンチ57が形成されている。エミッタトレンチ57は、エミッタ用トレンチ54、エミッタ電極46a、及び絶縁体56を有する。エミッタ用トレンチ54は、トレンチ型絶縁ゲート27と略同一の深さまで延びている。即ち、エミッタ用トレンチ54は、半導体基板11の上面から、ボディ領域36を貫通し、その下方の側面はドリフト領域32に接している。エミッタトレンチ57の側面は、トレンチ型絶縁ゲート27の側面と、ボディ領域36を介して対向している。エミッタ用トレンチ54内には、エミッタ電極46aが形成されている。エミッタ電極46aは、その下端がボディ領域36の下面より深くなるように形成されている。エミッタ用トレンチ54の壁面とエミッタ電極46aの間(即ち、エミッタ電極46aの側方及び下方)には絶縁体56が充填されている。このため、エミッタ電極46aは、絶縁体56を介してボディ領域36に対向している。
エミッタ用トレンチ54の底部には、p−型の第2フローティング領域64が形成されている。第2フローティング領域64は、エミッタ用トレンチ54の底部に接すると共に、エミッタ用トレンチ54の底部を囲んでいる。第2フローティング領域64は、ドリフト領域32に囲まれている。これによって、第2フローティング領域64は、ボディ領域36から分離されており、フローティングである。
半導体基板11の下面にはコレクタ電極28が形成されている。コレクタ電極28は、半導体基板11の全面に形成されている。コレクタ電極28は、コレクタ領域30とオーミック接触している。半導体基板11の上面には、エミッタ電極46bが形成されている。素子領域12では、エミッタ電極46bはエミッタ領域40及びボディ領域36とオーミック接触している。エミッタ用トレンチ54内のエミッタ電極46aは、エミッタ電極46bに電気的に接続されている。エミッタ電極46bは、キャップ絶縁膜45によってゲート電極16から絶縁されている。半導体基板11の上面にエミッタ電極46bを、半導体基板11の下面にコレクタ電極28をそれぞれ形成することにより、半導体装置10が完成する。
上述した半導体装置10を使用するときは、コレクタ電極28が正電位に接続され、エミッタ電極46a、46bがグランド電位に接続される。ゲート電極16に印加される電位が閾値電位以上のときは、半導体装置10がオンである。半導体装置10がオンのとき、トレンチ型絶縁ゲート27の絶縁体26に接している範囲のボディ領域36にチャネルが形成される。これによって、電子が、エミッタ電極46bからエミッタ領域40、ボディ領域36のチャネル、ドリフト領域32、及びコレクタ領域30を通ってコレクタ電極28に流れ、これに呼応してコレクタ電極28からエミッタ電極46bに正孔電流が流れる。
次に、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間について説明する。ゲート電極16に印加される電位が下がり始め、ゲート電極16に印加される電位が閾値電位未満となると、エミッタ電極46bからの電子の供給が停止され、ボディ領域36とドリフト領域32とのpn接合から空乏層が広がる。上記のpn接合から広がる空乏層が第1フローティング領域34及び第2フローティング領域64に到達すると、第1フローティング領域34とドリフト領域32とのpn接合、及び第2フローティング領域64とドリフト領域32とのpn接合から空乏層が広がる。このとき、ドリフト領域32に残存している正孔が、空乏層及びボディ領域36を通ってエミッタ電極46bに引き抜かれる。半導体装置10では、トレンチ型絶縁ゲート27の側方にエミッタトレンチ57が配置されており、その電位はグランド電位である。このため、ドリフト領域32に残存している正孔は、図2の矢印で示すように、トレンチ型絶縁ゲート27の近傍及びエミッタトレンチ57の近傍を優先的に通って、エミッタ電極46bに流れ込む。即ち、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間の正孔電流は、トレンチ型絶縁ゲート27の近傍を流れる経路とエミッタトレンチ57の近傍を流れる経路に分流される。エミッタトレンチ57側に分流される正孔電流は、その大部分がエミッタトレンチ57の側面近傍に流れ込み、エミッタトレンチ57の角部近傍にはほとんど流れない。
実施例1の半導体装置10の作用効果について説明する。半導体装置10では、トレンチ型絶縁ゲート27の底部に第1フローティング領域34が形成されている。このため、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間において、第1フローティング領域34とドリフト領域32とのpn接合から空乏層が広がる(厳密には、ボディ領域36とドリフト領域32とのpn接合から空乏層が広がり、その空乏層が第1フローティング領域34に到達すると、上記現象が起こる)。この空乏層により、トレンチ型絶縁ゲート27の底部に電界が集中することが緩和される。また、半導体装置10では、トレンチ型絶縁ゲート27から所定の間隔をおいた位置にエミッタトレンチ57が形成されている。これにより、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間において、正孔電流の一部がエミッタトレンチ57側に分流されるため、トレンチ型絶縁ゲート27の底部を流れる正孔電流を低下させることができる。この構成によると、トレンチ型絶縁ゲート27の底部において電界集中が緩和されると共に、トレンチ型絶縁ゲート27の底部を流れる正孔電流を低下させることができる。このため、ゲート抵抗が比較的に小さい場合であっても、トレンチ型絶縁ゲート27の底部においてアバランシェが発生することを抑制することができる。従って、ゲート抵抗が比較的小さい範囲において、ターンオフ損失を十分に低減することができる。
本願発明者は、上記の効果を確認するために、半導体装置10の性質を調べるシミュレーションを行った。その結果を図3、4に示す。図3は、半導体装置10と、比較例の半導体装置110(後述)及び半導体装置210(後述)のターンオフ時のサージ電圧のゲート抵抗依存性を示すグラフであり、図4は、半導体装置10〜210のターンオフ損失のゲート抵抗依存性を示すグラフである(以下、「ターンオフ時のサージ電圧」を単に「サージ電圧」とも称する)。図5は、比較例の半導体装置110を示す。半導体装置110は、エミッタトレンチ57、第1フローティング領域34、及び第2フローティング領域64を有していない点で、半導体装置10と異なっている。なお、比較例の半導体装置110については、いかなる状態でもアバランシェが発生しないという設定でもシミュレーションしており、その結果が図3及び図4に2点鎖線で示されている。図6は、別の比較例の半導体装置210を示す。半導体装置210は、エミッタトレンチ57及び第2フローティング領域64を有していない点で、半導体装置10と異なっている。別言すれば、半導体装置210は、半導体装置110が第1フローティング領域34を備えた構成であり、特許文献1の半導体装置と略同一の構成を有する。
図3に示すように、半導体装置10〜210のサージ電圧は、ゲート抵抗の減少に伴い増加し、各半導体装置10〜210毎に一定のゲート抵抗値を下回ると減少に転じている。一方、アバランシェの発生をシミュレーションの上で排除した半導体装置110のサージ電圧は、ゲート抵抗の減少に伴い増加し続けている。このことから、ゲート抵抗の減少に伴いサージ電圧が増加から減少に転じる原因は、トレンチ型絶縁ゲート27の底部におけるアバランシェの発生にあることがわかる。半導体装置10〜210を比較すると、サージ電圧の最大値(即ち、アバランシェが発生する直前のサージ電圧)は、半導体装置110、半導体装置210、半導体装置10の順に増加している。また、サージ電圧の最大値を与えるゲート抵抗値は、半導体装置110、半導体装置210、半導体装置10の順に減少している。即ち、ゲート抵抗の減少に伴うサージ電圧の推移は、半導体装置110、半導体装置210、半導体装置10の順に、アバランシェの発生をシミュレーションの上で排除した半導体装置110のサージ電圧の推移に近づいている。より具体的には、ゲート抵抗の減少に伴う半導体装置10のサージ電圧の推移は、サージ電圧が減少に転じるまでは、アバランシェの発生をシミュレーションの上で排除した半導体装置110のサージ電圧の推移と略同一となっている。このことから、半導体装置210は、半導体装置110よりも低いゲート抵抗値までアバランシェの発生を抑制できるものの、半導体装置10は、半導体装置210よりもさらに低いゲート抵抗値までアバランシェの発生を抑制できることが分かる。加えて、半導体装置10の構成によると、半導体装置110、210の構成と比較して、アバランシェが発生するまでの任意のゲート抵抗値におけるサージ電圧を増加できることが分かる。
また、図4に示すように、半導体装置110よりもアバランシェ抑制効果が高い半導体装置210では、半導体装置110と比較して、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲におけるターンオフ損失が低下している。また、半導体装置210よりもさらに高いアバランシェ抑制効果を有する半導体装置10では、半導体装置210と比較して、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲におけるターンオフ損失がさらに低下している。即ち、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲におけるターンオフ損失の推移は、半導体装置110、半導体装置210、半導体装置10の順に、アバランシェの発生をシミュレーションの上で排除した半導体装置110のターンオフ損失の推移に近づいていることが分かる。以上のことから、より低いゲート抵抗値までアバランシェの発生を抑制することにより、サージ電圧を増加させることができ、その結果、ターンオフ損失を低減できることが分かる。以上のシミュレーションより、実施例1の半導体装置10の構成によると、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲においてターンオフ損失を十分に低減できることが確認された。
実施例1の半導体装置10の別の作用効果について説明する。半導体装置10では、エミッタトレンチ57の底部にも第2フローティング領域64が形成されている。このため、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間において、第2フローティング領域64とドリフト領域32とのpn接合から空乏層が広がり、エミッタトレンチ57の底部に電界が集中することを緩和できる。この結果、エミッタトレンチ57の底部におけるアバランシェの発生を抑制することができ、ゲート抵抗が比較的小さい範囲において、ターンオフ損失をより低減することができる。
また、実施例1の半導体装置10では、素子領域12に3つのトレンチ型絶縁ゲート27及び3つのエミッタトレンチ57が形成されている。エミッタトレンチ57を構成するエミッタ電極46aは、半導体基板11の上面に形成されたエミッタ電極46bに接続されている。ここで、エミッタトレンチ57の代わりにトレンチ型絶縁ゲート27を形成する場合(即ち、素子領域12に6つのトレンチ型絶縁ゲート27を形成する場合)を考える。この場合、半導体装置10と同数のトレンチ及びフローティング領域が形成されることにより、半導体装置10と同等の電界緩和効果を奏することができる。しかしながら、トレンチ型絶縁ゲート27の数が増加するため、ゲート容量が増加する。この結果、ターンオフ損失が増加することとなり好ましくない。実施例1の構成によると、電界緩和効果の低下を抑制しながらゲート容量の増加を防止できる。なお、エミッタトレンチを配置しても、オン電圧にはほとんど影響しない。結果として、オン電圧を維持した状態でターンオフ損失を低減することができる。
また、実施例1の半導体装置10では、エミッタトレンチ57は、トレンチ型絶縁ゲート27と略同一の深さまで延びている。この構成によると、ゲートトレンチ24とエミッタ用トレンチ54を同一のマスクを用いて形成できる。このため、エミッタトレンチ57を形成するにあたり、製造コストが上昇したり、製造効率が低下したりすることを抑制することができる。また、トレンチ底部の電界を均一化でき、特定のトレンチ底部への電界集中を防止することができる。
また、実施例1の半導体装置10では、半導体装置10を平面視したときに、同一方向(即ち、y方向)に延びるトレンチ型絶縁ゲート27とエミッタトレンチ57が、x方向に交互に配置されている。このため、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間における正孔電流を、各トレンチ型絶縁ゲート27に隣接する各エミッタトレンチ57の近傍に分流させることができ、その結果、各トレンチ型絶縁ゲート27の底部における正孔電流を効果的に低下させることができる。特に、半導体装置10では、複数のトレンチ型絶縁ゲート27と複数のエミッタトレンチ57が、所定の間隔をおいて配置されている。このため、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間における正孔電流を、各エミッタトレンチ57に略均等に分流させることができる。これにより、各トレンチ型絶縁ゲート27の近傍を流れる電流の大きさにばらつきがなくなるため、トレンチ型絶縁ゲート27毎にアバランシェの発生がばらつくことを抑制できる。
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、本明細書が開示する半導体装置は、上記の実施例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、エミッタトレンチ57の底部には第2フローティング領域64が形成されなくてもよい。上述したように、半導体装置10がオンからオフに切換る遷移期間においてエミッタトレンチ57側に分流される電流は、その大部分がエミッタトレンチ57の側面近傍に流れ込み、エミッタトレンチ57の角部近傍にはほとんど流れない。即ち、当該遷移期間におけるエミッタトレンチ57底部の正孔の数は比較的に少ないため、エミッタトレンチ57の底部では比較的にアバランシェが発生し難い。このため、エミッタトレンチ57の底部に第2フローティング領域64が形成されていなくても、ゲート抵抗が比較的に小さい範囲においてターンオフ損失を低減することができる。
また、トレンチ型絶縁ゲート27とエミッタトレンチ57の深さは同一でなくてもよい。例えば、エミッタトレンチ57の深さは、トレンチ型絶縁ゲート27の深さよりも浅くてもよいし、深くてもよい。
また、トレンチ型絶縁ゲート27及びエミッタトレンチ57の形状は、直線状に限られない。例えば、複数の環状のトレンチ型絶縁ゲート27と複数の環状のエミッタトレンチ57が、同心円状に交互に配置されていてもよい。即ち、トレンチ型絶縁ゲート27とエミッタトレンチ57とが交互に配置される方向は、一方向に限られない。
また、半導体基板11の材料はSiに限られず、例えばSiC又はGaNを材料としてもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
10:半導体装置
11:半導体基板
12:素子領域
14:終端領域
16:ゲート電極
24:ゲートトレンチ
26、56:絶縁体
27:トレンチ型絶縁ゲート
28:コレクタ電極
30:コレクタ領域
32:ドリフト領域
34、64:拡散領域
36:ボディ領域
40:エミッタ領域
46a、46b:エミッタ電極
11:半導体基板
12:素子領域
14:終端領域
16:ゲート電極
24:ゲートトレンチ
26、56:絶縁体
27:トレンチ型絶縁ゲート
28:コレクタ電極
30:コレクタ領域
32:ドリフト領域
34、64:拡散領域
36:ボディ領域
40:エミッタ領域
46a、46b:エミッタ電極
Claims (4)
- 半導体装置であって、
半導体基板とトレンチ型絶縁ゲートとエミッタトレンチを備えており、
前記半導体基板は、
第1導電型のエミッタ領域と、
第2導電型であり、前記エミッタ領域を取り囲んでいるボディ領域と、
第1導電型であり、前記ボディ領域によって前記エミッタ領域から分離されているドリフト領域と、
第2導電型であり、前記ドリフト領域によって前記ボディ領域から分離されている第1フローティング領域と、を有しており、
前記トレンチ型絶縁ゲートは、前記半導体基板の上面から前記エミッタ領域及び前記ボディ領域を貫通しており、
前記トレンチ型絶縁ゲートの底面の少なくとも一部は、前記第1フローティング領域に接しており、
前記トレンチ型絶縁ゲートの側面と前記エミッタトレンチの側面は、前記ボディ領域を介して対向する半導体装置。 - 前記エミッタトレンチは、前記半導体基板の前記上面から前記ボディ領域を貫通しており、
前記半導体基板はさらに、第2導電型であり、前記エミッタトレンチの底面の少なくとも一部に接する第2フローティング領域を有する請求項1に記載の半導体装置。 - 前記半導体基板の厚み方向において、前記トレンチ型絶縁ゲートの長さと前記エミッタトレンチの長さが等しい請求項1または2に記載の半導体装置。
- 前記半導体基板の前記上面に対して直交する方向から観測したときに、少なくとも一方向に沿って前記トレンチ型絶縁ゲートと前記エミッタトレンチが交互に配置されている請求項1から3の何れか一項に記載の半導体装置。
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2014
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