JP2015189716A - ヒアルロン酸合成促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】副作用が少なく、安全性に優れたヒアルロン酸合成促進剤、当該ヒアルロン酸合成促進剤を含む医薬を提供すること。【解決手段】カゼイン分解物を有効成分とするヒアルロン酸合成促進剤、および当該ヒアルロン酸合成促進剤、および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬を提供する。本発明では、食品として長年使用されてきた乳由来の成分を有効成分とするため、生体への安全性が高いヒアルロン酸合成促進剤および医薬を提供することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、カゼイン分解物を含有するヒアルロン酸合成促進剤に関する。
ヒアルロン酸は、酸性ムコ多糖の一種であり、軟骨、滑膜、関節液、皮膚、臍帯、眼硝子体、その他の結合組織に広く存在し、水分を大量に保持し、ゲル状の形態を呈するという性質を有するため、生体内において重要な役割を果たしている。
生体内のヒアルロン酸は、加齢により徐々にこれら皮膚や関節液等から減少することが知られているので、ヒアルロン酸と加齢との関係について多くの研究が行われている。
例えば、加齢によって皮膚に存在するヒアルロン酸が質的・量的に減少すると、皮膚のシワやタルミの形成、皮膚の弾力性やハリの低下といった皮膚の変化、いわゆる皮膚の老化が生じる。
また、関節液や滑膜等に存在するヒアルロン酸が質的・量的に減少すると、加齢による変形性関節症等の関節疾患を招く一因になると考えられている。加齢による変形性関節症の患者数は、今後、社会の高齢化に伴ってさらに増えることが懸念されている。
このことから、生体内におけるヒアルロン酸の合成を促進させるための種々の物質が検討されている。
例えば、特許文献1には、コラーゲン又はゼラチンのコラゲナーゼによる分解物であり、そのアミノ酸配列が、(Gly−X−Y)(式中、Glyは、グリシン残基を表し、X,Yはアミノ酸残基を表す)で表されるコラーゲントリペプチドからなるコラーゲンペプチド(Gly−X−Y)n(nは、正の整数)を含有するヒアルロン酸産生促進剤及びこれらを含有する皮膚外用剤、飲食品を提供することが開示されている。
また、特許文献2には、ソウジュツ(Atractylodis Lanceae Rhizoma)の溶媒抽出物を有効成分として含有するHAS2mRNA発現促進剤、又はヒアルロン酸産生促進剤、また、これを配合してなる皮膚外用剤、又は抗老化剤が開示されている。
ここで、本技術に関連のある乳成分や乳由来ペプチド、乳分解物等について、これまでに知られている生理機能について、説明する。
例えば、特許文献3には、κ−カゼイン及び/又はκ−カゼインの加水分解物を有効成分とする動脈硬化防止剤が開示されている。
また、特許文献4には、Met−Lys−Proからなるペプチドを有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害活剤又は血圧降下剤が開示されている。
また、特許文献5には、獣乳カゼインを平均鎖長がアミノ酸残基数として2.1以下に加水分解して得た、ペプチドXaa−Pro又はXaa−Pro−Proを多く含むカゼイン加水分解物を有効成分として含有する経口摂取用関節リウマチ抑制剤が開示されている。
特開2004−123637号公報 特開2012−158529号公報 特開平8−081388号公報 国際公開第2003/044044号パンフレット 国際公開第2007/091678号パンフレット
本発明は、副作用が少なく、安全性に優れたヒアルロン酸合成促進剤、当該ヒアルロン酸合成促進剤を含む医薬を提供することにある。
本発明者は、ヒアルロン酸合成促進作用を有する物質について鋭意検討した結果、意外にも食品として長年使用されてきた乳由来の成分であるカゼインの分解物に、ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現促進作用及びヒアルロン酸合成促進作用を有することを突き止めた。そして、カゼインの分解物がヒアルロン酸合成促進剤として利用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上述のように、従来、乳成分や乳由来ペプチド、乳分解物等における生理機能が見出されている(例えば、前記特許文献1〜3参照)が、カゼイン分解物にヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現促進作用があることは全くの意外であった。
すなわち、本発明は、カゼイン分解物を有効成分とするヒアルロン酸合成促進剤、及び当該ヒアルロン酸促進剤及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬を提供するものである。
本発明は、副作用が少なく、安全性に優れたヒアルロン酸合成促進剤、当該ヒアルロン酸合成促進剤を含む医薬を提供することができる。
本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の好ましい実施形態に限定されず、本開示の範囲内で自由に変更することができるものである。
本開示のカゼイン分解物は、カゼインを加水分解したものが好適である。カゼインの分解処理としては、特に限定されないが、例えば、酵素処理、酸処理、アルカリ処理、熱処理等が挙げられ、これらから1種又は適宜2種以上の処理を組み合わせてもよい。
前記カゼイン分解物の非蛋白態窒素比率は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。
<非蛋白態窒素比率の算出方法>
ケルダール法日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定した。また、ラッパポート(Rappaport)−梅田変法(臨床検査、第9巻、第534乃至537頁、1965年)に基づく測定キット(商品名:NPN−テストワコー;和光純薬工業社製)を使用し、該測定キットの説明書に従って試料の非蛋白態窒素量を測定し、得られた値に6.38を乗じて非蛋白態窒素化合物量を算出した。これらの測定値から非蛋白態窒素比率(%)を次式により算出する。
非蛋白態窒素比率(%)=(非蛋白態窒素化合物量/全窒素量)×100
前記カゼイン分解物のアミノ酸遊離率は、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下である。
<アミノ酸遊離率の算定方法>
トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6規定の塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6規定の塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸自動分析機(日立製作所製。835型)により分析し、アミノ酸の質量を測定した。
上記の方法により試料中の各アミノ酸の組成を測定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出する。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残留する各遊離アミノ酸の質量を上記の方法により測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質量を算出する。これらの値から、試料中の遊離アミノ酸含有率を次式により算出した。
アミノ酸遊離率(%)=(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100
前記カゼイン分解物の分子量は、好ましくは2000ダルトン(以下、「Da」とする)以下又は未満、より好ましくは1000Da以下、さらにより好ましくは500Da以下である。
<分子量の算定方法>
本開示におけるカゼイン分解物の分子量は、以下の数平均分子量の概念により求めるものである。
数平均分子量(Number Average of Molecular Weight)は、例えば文献(社団法人高分子学会編、「高分子科学の基礎」、第116〜119頁、株式会社東京化学同人、1978年)に記載されているとおり、高分子化合物の分子量の平均値を次のとおり異なる指標に基づき示すものである。
すなわち、タンパク質加水分解物等の高分子化合物は不均一な物質であり、かつ分子量に分布があるため、タンパク質加水分解物の分子量は、物理化学的に取り扱うためには、平均分子量で示す必要があり、数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、分子の個数についての平均であり、ペプチド鎖iの分子量がMiであり、その分子数をNiとすると、次の式により定義される。
Figure 2015189716
前記カゼイン分解物における出発原料のカゼインは、例えば、市販品の各種カゼイン、乳酸カゼイン、塩酸カゼイン等の酸カゼイン;ナトリウムカゼイネイト、カリウムカゼイネイト、カルシウムカゼイネイト等のカゼイネイト等から選ばれる1種のもの又は2種以上の混合物が挙げられる。当該混合物は、任意の割合で混合すればよい。また、前記カゼインは、ウシ由来、ヤギ由来、ヒツジ由来、ウマ由来等の獣由来のものが好ましく、ウシ由来のものがより好ましい。具体的には、乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等から公知の方法によって単離されたカゼインであることが好ましい。
すなわち、本発明に用いられるカゼイン分解物は、蛋白質であるカゼインを出発原料として加水分解された分解物であることが好適である。
原料カゼインを水又は温湯に分散し、溶解してカゼイン水溶液を調製する。溶解時には、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の食品上使用可能な塩類でpHを調整することができる。当該カゼイン水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常、蛋白質濃度として2%以上、さらに5〜15質量%程度の濃度範囲に設定するのが好適である。
次いで、前記カゼイン水溶液を、加水分解処理する。当該加水分解処理として、例えば酸処理、アルカリ処理、熱処理及び酵素処理等が挙げられるが、酵素処理による加水分解が好ましい。また、適宜2種以上の処理を組み合わせてもよい。
本開示における蛋白質分解酵素は、例えば、植物由来、動物由来、微生物由来等が挙げられ、これらから1種又は2種以上組み合わせて使用できる。当該蛋白質分解酵素としては、エンドプロテアーゼが好適である。
前記エンドプロテア−ゼとして、例えば、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼが挙げられ、これらを1種又は2種以上選択して用いることができる。このうち、セリンプロテアーゼ及び/又はメタロプロテアーゼを用いるのが好適である。前記セリンプロテアーゼとして、例えば、トリプシンやパンクレアチン(すい臓由来酵素、トリプシン、キモトリプシン、リパーゼなどを含む)等が挙げられる。
また、プロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及び酸性プロテアーゼに分類される。このうち中性プロテアーゼを用いるのが好適である。
前記蛋白質分解酵素は、市販品を用いることができる。前記蛋白質分解酵素の例示として、例えば、ビオプラーゼ(長瀬生化学工業社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、プロテアーゼS(天野エンザイム社製)、プロテアーゼA(天野エンザイム社製)、パンクレアチン(天野エンザイム社製)、PTN6.0S(ノボザイムズ社製)、サビナーゼ(ノボザイムズ社製)、GODO B.A.P(合同酒精社製)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)、GODO B.N.P(合同酒精社製)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社製)、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、トリプシン(ノボザイムズ社製)、キモトリプシン(ノボザイムズ社製)、ズブチリシン(ノボザイムズ社製)、パパイン(天野エンザイム社製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)等が挙げられ、これらから1種又は2種以上の酵素を選択して用いてもよい。
このうち、スブチリシン(subtilisin:例えば、ビオプラーゼ)、トリプシン(trypsin:例えばPTN6.0S)、バシロシン(bachillolysin:例えばプロテアーゼN)、セリンプロテアーゼ(例えば、パンクレアチン)から選ばれる1種又は2種以上のものが好適であり、これらは中性のプロテアーゼである。さらに、これらのうちで、スブチリシン及びトリプシン及びバシロシンの3種の組み合わせ、又はプロテアーゼA及びパンクレアチンの2種の組み合わせの何れかを使用することが好適である。
前記カゼインに対するエンドプロテア−ゼの使用量は、特に限定されず、基質濃度、酵素力価、反応温度及び反応時間等により適宜調整すればよいが、一般的には、カゼイン中の蛋白質1g当り2000〜11000活性単位の割合で添加することが好ましい。
前記蛋白質分解酵素による加水分解は、所望の条件(例えば、分子量の範囲内等)になるように行うのが望ましい。これにより、本開示で用いるカゼイン分解物を得ることができる。
前記蛋白質分解酵素による加水分解前に前記原料乳蛋白質溶液のpHを、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の食品上使用可能な塩類で使用酵素の至適pHに調整することもできる。前記原料乳蛋白質溶液のpHは、好ましくは5〜10、より好ましくは7〜10に調整する。
前記蛋白質分解酵素の反応温度は、使用酵素の最適温度の範囲で行うことが望ましく、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜60℃で行う。
前記蛋白質分解酵素の反応保持時間は、前記特定の非蛋白態窒素比率になるように適宜調整すればよく、例えば0.5〜24時間で行うことが可能であり、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜10時間である。
前記蛋白質分解酵素による加水分解は、当該酵素を加熱して失活させて終了させればよい。例えば、100℃以上(好適には110〜130℃)で失活させる場合には1〜3秒間、100℃未満60℃以上で失活させる場合には3〜40分間で行うことが好適である。
加水分解終了後、必要に応じて分解液のpHを、好ましくは6〜8、より好ましくは7.0±0.5、さらに好ましくは7.0±0.3とするのが好適である。
なお、本開示のカゼイン分解物の製造において、カルシウム濃度未調整の溶液を加水分解した場合には、得られた分解液を、前記のような脱塩処理し、カルシウム濃度を調整してもよい。次いで、常法により加熱して酵素を失活させる。反応加熱温度と反応保持時間は使用した酵素の熱安定性を配慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができる。加熱失活後、常法により冷却し、そのまま利用することもでき、必要に応じて濃縮して濃縮液を得ることもでき、更に濃縮液を乾燥し、粉末製品を得ることも可能である。
また、前記カゼイン水溶液を酸処理又はアルカリ処理にて加水分解する際には、カゼイン水溶液のpHを調整して処理すればよい。当該pH調整による処理の場合には、カゼイン水溶液のpHが、好ましくはpH5以下又はpH9以上であり、より好ましくはpH4以下又はpH10以上である。このようにpH処理された水溶液は、室温にて数分以上、好ましくは5分〜1時間、放置又は撹拌することによって、酸処理又はアルカリ処理の加水分解物を得ることができる。ここで、「室温」とは、4〜40℃程度であるが、10〜30℃が好適である。
また、前記カゼイン水溶液を、熱処理にて加水分解してもよい。このカゼイン水溶液は、pH未調整でもよく、またpH調整(具体的には、酸性(pH5以下)、中性(pH6〜8)、アルカリ性(pH8以上))してもよい。熱処理は、4〜100℃程度で、上記酸アルカリ処理のような条件にて行えばよい。
得られたカゼイン分解物は、未精製のままの状態で使用しても効能を発揮することが可能である。さらに、効能を向上させるために適宜本開示の効能を有する成分又はこの成分を有する画分を公知の分離精製を行うことで得ることも可能である。
例えば、得られたカゼイン分解物に対して分子量分画を行い、本開示の効能を高めることも可能である。これにより、カゼイン分解物を分子量2000Da未満又は以下にすることが好ましく、さらに分子量1000Da以下にすることが好ましい。
分子量分画として、例えば、限外濾過、ゲル濾過等の方法が採用でき、これにより不要な分子量のペプチドの除去率を高めることができる。
限外濾過の場合には、所望の限外濾過膜を使用すればよく、ゲル濾過の場合には、所望のサイズ排除クロマトグラフィーに用いるゲルろ過剤を使用すればよい。
さらに、脱塩や不純物を除去したり、純度を高めたりするために、公知の分離精製方法(例えば、イオン交換樹脂等)を用いてもよい。
本開示のカゼイン分解物は、後記実施例に示すように、ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現促進作用又はヒアルロン酸合成促進作用を有する。従って、本開示のカゼイン分解物は、ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現促進用又はヒアルロン酸合成促進用の各製剤として使用することができる。さらに、当該ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現促進用又はヒアルロン酸合成促進作用を有することにより、生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下又は生体内ヒアルロン酸の減少に関わる様々な状態を、予防、改善又は治療することができる。
ところで、生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下又は生体内ヒアルロン酸の減少に関わる様々な状態とは、例えば、皮膚老化及び加齢による関節症等が挙げられる。
前記皮膚老化として、例えば、皮膚のシワやタルミの形成、皮膚の弾力性低下、皮膚のハリの低下抑制剤、光(例えば紫外線等)又は酸化成分(例えば活性酸素等)による皮膚老化等が挙げられる。
前記加齢による関節症として、例えば、加齢による変形性関節症、関節軟骨の加齢変性、機械的ストレス(関節の摩耗等)による軟骨変性等が挙げられる。
近年、皮膚老化及び加齢による関節症に対する対策として、生体内ヒアルロン酸が減少している箇所に、外因性のヒアルロン酸を注入することが行われている。しかし、生体内分解等により注入した箇所のヒアルロン酸が減少するため、注射等の侵襲行為にて再注入を数週間程度で行う必要があり、また所定の医療機関に赴いて処置を行う必要がある。このため、費用負担以外にも、身体的負担等の様々な負担を希望者にかけることになる。
本開示のカゼイン分解物は、上述した皮膚老化及び加齢による関節症等を、予防、改善又は治療することができる。また、本開示のカゼイン分解物は、上述した皮膚老化の抑制作用及び加齢による関節症等の病変抑制作用を有する。
すなわち、本開示のカゼイン分解物は、皮膚老化抑制、シワ・タルミ形成抑制、皮膚弾力低下抑制、ハリ低下抑制等の各製剤の有効成分として含有させることができる。また、本開示のカゼイン分解物は、加齢による関節症、加齢による変形性関節症、関節軟骨の加齢変性、機械的ストレスによる軟骨変性等の予防、治療又は改善のための各製剤の有効性分として含有させることができる。
また、本開示のカゼイン分解物は、上述した各製剤として使用することができ、また製造するために使用することもできる。
上記使用とは、適用対象であるヒト若しくは非ヒト動物における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
また、本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;疾患、症状又は状態の悪化の防止、遅延若しくは疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
また、本明細書において、「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、或いは適用対象の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
以上、従って、本開示のカゼイン分解物及びこれを有効成分として含有する上述の各種製剤(以下、「本技術の各種製剤」ともいう)は、ヒトを含む動物に摂取又は投与して、上述の、生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下が関与する疾病、疾患や症状の改善等を図るための方法に使用することができる。
また、本開示のカゼイン分解物及びこれを有効成分として含有する上述の本技術の各種製剤は、上述のような生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下等が関与する疾病、疾患や症状のための、又は上述した皮膚老化又は加齢による関節症等の予防、改善及び/又は治療のための、ヒト用若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、皮膚外用剤、化粧品及び食品等の有効成分としてこれらに配合して使用可能である。また、本開示のカゼイン分解物は、これら各種製剤の製造のために使用可能である。
医薬品に配合する場合、経口投与剤や非経口投与剤等とすることができる。
また、食品に配合する場合には、上述の生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下等によって引き起こされる各種疾患等の予防、改善又は治療をコンセプトとする機能性食品、病者用食品、特定保健用食品等に応用できる。また、本開示のカゼイン分解物は、これら食品等の製造のために使用可能である。
本開示のカゼイン分解物及びこれを有効成分として含有する上述の本技術の各種製剤は、経口投与及び非経口投与の何れでもよいが、経口投与が望ましい。非経口投与として、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。経口投与の剤形として、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤、軟膏等が挙げられる。
製剤化に際しては、本開示のカゼイン分解物の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、公知の又は将来的に見出される上述のヒアルロン酸合成促進作用を有する医薬;ヒアルロン酸、コンドロイチン等のグリコサミノグリカン及びこれら多糖の構成糖(例えば、グルコサミン、ウロン酸等)等を併用することも可能である。
また、本開示のカゼイン分解物を有効成分として食品中に含有させ、本開示のカゼイン分解物及びこれを有効成分として含有する上述の各種製剤の一態様として、上述のヒアルロン酸の合成促進作用等を有する食品として加工することも可能である。
このような食品として、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料類、これら以外の市販食品等が挙げられる。
例えば、前記小麦粉製品として、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
前記即席食品類として、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
例えば、前記農産加工品として、 農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
前記水産加工品として、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
前記畜産加工品として、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
例えば、前記乳・乳製品として、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等が挙げられる。
前記油脂類として、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
例えば、前記基礎調味料として、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられる。
前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
例えば、前記冷凍食品として、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
例えば、前記菓子類として、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
例えば、前記飲料類として、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
例えば、上記以外の市販食品として、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等が挙げられる。
本技術の各種製剤において、本開示のカゼイン分解物の含有量は、製剤の最終組成物に対し、少なくとも0.001質量%であることが好ましい。
本開示のカゼイン分解物の摂取量又は投与量は、年齢、症状等により異なるが、通常、0.001〜3000mg/kg体重/日、好ましくは0.01〜200mg/kg体重/日であり、1日1回から3回に分けて投与してもよい。ヒトに対する摂取量又は投与量は、好ましくは10mg/kg体重/日である。
前記カゼイン分解物のヒトへの投与の際の用量は、『体表面積に基づく動物からのHED(Human Equivalent Dose)交換』(例えば、参考文献1を参照)による換算式から算出することができる。
HED=[動物への投与量(mg/kg体重)]×{[動物の体重(kg)]÷[ヒトの体重(kg)]}0.33
ヒトの体重:60kg
マウスの体重:20g
参考文献1:Guidance for Industry, Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers, V. STEP 2:HUMAN EQUIVALENT DOSE CALCULATION, July 2005, Pharmacology and Toxicology, p.6-7 / U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER)
本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕 カゼイン分解物を有効成分として含有するヒアルロン酸合成促進剤。
〔2〕 前記カゼイン分解物が蛋白質加水分解酵素による加水分解物である前記〔1〕記載のヒアルロン酸合成促進剤。
〔3〕 前記カゼイン分解物の分子量が1000Da以下である前記〔1〕又は〔2〕記載のヒアルロン酸合成促進剤。
〔4〕 前記蛋白質加水分解酵素が、エンドプロテアーゼである前記〔2〕又は〔3〕記載のヒアルロン酸合成促進剤。
〔5〕 ヒアルロン酸合成促進剤又は本技術の製剤の製造のための、カゼイン分解物の使用。
〔6〕 ヒアルロン酸合成促進用食品の製造のための、カゼイン分解物の使用。
〔7〕 カゼイン分解物の、ヒアルロン酸合成促進用食品への使用。
〔8〕 生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下又は生体内ヒアルロン酸の減少が関与する疾病、疾患や症状の予防、改善又治療のための、カゼイン分解物。
〔9〕 生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下又は生体内ヒアルロン酸の減少が関与する疾病、疾患や症状の予防、改善又治療における使用のための、カゼイン分解物。
〔10〕 生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下又は生体内ヒアルロン酸の減少が関与する疾病、疾患や症状の予防、改善又治療のための、カゼイン分解物の使用。
〔11〕 カゼイン分解物を有効成分として摂取又は投与する、生体内のヒアルロン酸の生合成能の低下又は生体内ヒアルロン酸の減少が関与する疾病、疾患や症状の予防、改善又治療方法。
〔12〕 前記〔8〕〜〔11〕記載の生体内ヒアルロン酸の生合成能の低下又は生体内ヒアルロン酸の減少が関与する疾病、疾患や症状が、皮膚のシワやタルミの形成、皮膚の弾力性低下、皮膚のハリの低下、光(例えば紫外線等)又は酸化成分(例えば活性酸素等)による皮膚老化、変形性関節症、関節軟骨の加齢変性、機械的ストレス(関節の摩耗等)による軟骨変性である、カゼイン分解物又はカゼイン分解物の使用。
〔13〕 前記〔5〕〜〔12〕の何れかに記載のカゼイン分解物は、熱処理、酸処理、アルカリ処理、蛋白質分解酵素処理から選ばれる1種又は2種以上の処理による分解物であるのが好適である。
〔14〕 前記〔13〕に記載のカゼイン分解物は、カゼインの蛋白質加水分解酵素による加水分解物であるのが好適である。
〔15〕 前記〔5〕〜〔14〕の何れかに記載のカゼイン分解物の分子量が1000Da以下であるのが好適である。
〔16〕前記〔5〕〜〔15〕の何れかに記載のカゼインが牛由来のカゼインであるのが好適である。
〔製造例1〕
市販のカゼイン(ニュージーランドデーリーボード社製)100mgに水900mgを加え、よく分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、濃度約10%のカゼイン水溶液を調製した。
該カゼイン水溶液を85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.0に調整した後、パンクレアチン2mg(天野エンザイム社製)、プロテアーゼAを4mg(天野エンザイム社製)を添加して、加水分解反応を開始した。8時間後に80℃で6分間加熱して酵素を失活させて酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
この加水分解液を分画分子量1000の限外ろ過膜(日本ポール社製)で限外ろ過し、濃縮後凍結乾燥し、カゼイン分解物Aを85mgを得た。
カゼイン分解物Aは、アミノ酸遊離率38%、分子量220Daであった。これらは上述の<アミノ酸遊離率の算定方法>、<分子量の算定方法>にて算定した。
〔製造例2〕
市販のカゼイン(ニュージーランドデーリーボード社製)100mgに水900mgを加え、よく分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、濃度約10%のカゼイン水溶液を調製した。
該カゼイン水溶液を85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.5に調整した後、ビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製)100活性単位(蛋白質1g当たり1200活性単位)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)170活性単位(蛋白質1g当たり2000活性単位)、及びPTN6.0S(ノボザイムズ・ジャパン社製)600活性単位(蛋白質1g当たり7000活性単位)を添加して、加水分解反応を開始した。8時間後に80℃で6分間加熱して酵素を失活させて酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
この加水分解液を分画分子量1000の限外ろ過膜(日本ポール社製)で限外ろ過し、濃縮後凍結乾燥し、カゼイン分解物Bを85mgを得た。
カゼイン分解物Bは、非蛋白態窒素比率25%、アミノ酸遊離率5%、分子量340Daであった。これらは上述の<非蛋白態窒素比率の算出方法>、<アミノ酸遊離率の算定方法>、<分子量の算定方法>にて算定した。
〔試験例1:ヒアルロン酸合成酵素(HAS1)遺伝子発現量解析〕
本開示のカゼイン分解物による生体内でのヒアルロン酸合成促進作用を確認するため、製造例1にて得られたカゼイン分解物Aを用いて細胞培養をし、ヒアルロン酸合成酵素HAS1の遺伝子発現量の測定を以下の方法で行った。
(1)細胞培養
10%FBS〔Fetal Bovin Serum(ウシ胎児血清)、GIBCO社製〕及び1%抗生物質(PSN Antibiotic Mixtuire、GIBCO社製)を含むF−12培地(Ham’s F-12 Nutrient Mixture、GIBCO社製)を用いて、白ウサギの膝関節滑膜組織由来の細胞株であるHIG−82細胞(大日本住友製薬株式会社製)を100mm径シャーレに1.5×10個になるように播種し、5%CO、37℃で24時間培養し、培地交換を行った後さらに24時間、合計48時間培養した。その後、培地を除去し、製造例1で得られたカゼイン分解物Aを50μg/mL含有するF−12培地を添加し、3時間培養した。また、カゼイン分解物Aを添加せずに、F−12培地で3時間培養したサンプルを調製し、これを対照試料とした。
(2)RNAの抽出
培養終了後、常法によりRNAを抽出した。すなわち、上清を除去したシャーレに1mLの細胞溶解液(TRIzol Reagent、invitrogen社製)を加えて細胞を溶解させ、これをチューブに回収してクロロホルムを添加して攪拌した後、遠心分離して、RNAを含む上層を回収した。この回収液に、0.5mLのイソプロピルアルコールを添加して攪拌し、常温で10分間静置した。その後、さらに遠心分離して上清を除去した後、75%エタノールで沈殿物を洗浄した。得られた沈殿物を風乾し、39.5μLのDEPCHO(0.1%Diethyl Dicarbonate、和光純薬工業株式会社)に懸濁した。さらに、残存するDNAを除去するために、DNA除去キット(DNase treatment removal reagent、Ambion社製)を使用し、当該キットの使用方法にしたがって残存DNAを除去した上清を回収し、これをRNA溶液とした。
(3)cDNA合成及びリアルタイムPCRによる遺伝子発現量の解析
上記抽出によって得られたRNA溶液から、逆転写反応によりcDNAの合成を行った。cDNAの合成は、cDNA合成キット(Prime Script RT-PCR Kit、タカラバイオ株式会社製)を用いて、当該キットの使用方法に従って行った。インターカレーターとしては、Sybr Green I(タカラバイオ株式会社製)を使用した。HAS1の遺伝子特異性プライマーとしては下記の配列を有するプライマー(タカラバイオ株式会社製)を使用した。
Forward:5’−GTGTCCTGCATCAGTGGTCCTC−3’
Reverse:5’−GTGCCCAGGAACTTCTGGTTGTA−3’
遺伝子発現量は、増幅させたGAPDHで標準化し、GAPDH遺伝子増幅用プライマーとしては、下記の配列を有するプライマー(タカラバイオ株式会社製)を使用した。
Forward:5’−GGCACAGTCAAGGCTGAGAATG−3’
Reverse:5’−ATGGTGGTGAAGACGCCAGTA−3’
表1に、HAS1の遺伝子発現量の測定結果を示す。これらの数値は、n=3における測定値の平均を示す。対照試料を用いた場合の発現量平均値を1.00としたとき、カゼイン分解物Aで3時間刺激した培地上清のHAS1の発現量平均値は、2.83となり、対照試料と比較して遺伝子発現量が有意に増加した(t検定による解析結果、P<0.01で有意差あり)。
Figure 2015189716
ところで、ヒアルロン酸を合成する酵素には、HAS1、HAS2、HAS3が存在するが、その中でも、HAS1は高分子ヒアルロン酸を合成する酵素と言われている。そこで、試験例2において、ヒアルロン酸分子の高分子化を確認するため、培地上清中のヒアルロン酸の分子量測定を行った。
〔試験例2:ヒアルロン酸分子量の測定〕
試験例1(1)の細胞培養と同様の手順で、カゼイン分解物Aを添加したF−12培地で3時間培養し、培養上清を回収して凍結乾燥した試料中のヒアルロン酸の分子量を以下の方法により測定した。また、製造例2で得られたカゼイン分解物B、及び、参考例として未分解のカゼイン(参考例1、ニュージーランドデーリーボード社製)、ヒアルロン酸の構成成分であるグルコサミン(参考例2、甲陽ケミカル社製)を用い、これらを添加した培地上清におけるヒアルロン酸分子量も測定し、試料を添加しないF−12培地で培養した培地上清を対照試料とした。カゼイン分解物A、カゼイン分解物B、及び、グルコサミンについては、添加量の影響を確認するために、F−12培地への添加量を50μg/mL、500μg/mLとした2種類の濃度で試験を実施し、未分解のカゼインの添加量は500μg/mLとした。
(1)ヒアルロン酸の精製
細胞培養した培地上清18mL分の凍結乾燥物に、4.5mLの超純水を加え、4.5mLのアクチナーゼ緩衝液(100mM Tris-HCL,5.0mM CaCl2,pH7.8)を加えた。溶液を沸騰水浴で10分間加熱した後、10mgのチモール(和光純薬工業社製)と3.0mgのアクチナーゼE(科研製薬社製)を加えた。その後、50℃の恒温槽で24時間振とうしてタンパク質を分解した後、4.5mLの30%トリクロロ酢酸を加え、4℃で1時間静置してタンパク質を沈殿した。0℃、9000rpmで遠心分離し、上清を蒸留水で透析処理した後、凍結乾燥した。この凍結乾燥物を50μLの超純水に懸濁したものを1検体分のヒアルロン酸分子量測定用試料とした。
(2)アガロースゲル電気泳動によるヒアルロン酸分子量の測定
アガロース(GIBCO社製)を0.1Mピリジン−0.2Mギ酸緩衝液(pH3.5)に、1%になるように加熱溶解した。その後3分間撹拌冷却し、アガロース溶液30mLをトレー(縦100mm×横110mm×高さ10mm)に流し込み、コームを立てて、凝固するまで室温で30分間静置した。(1)で得たヒアルロン酸分子量測定用の懸濁液に、1μLの6×Loading Buffer(タカラバイオ株式会社製)を混合して全量をゲルに添加した。4℃にて50V、200mAの定電流で泳動した。4時間の泳動後、ゲルを染色液(ステインズオール5.6mg、ジオキサン5mL、超純水90mL、1M酢酸0.1mL、0.01Mアスコルビン酸5mL)にて染色した。
分子量1540kDa、210kDa、29kDaのヒアルロン酸(R&D Systems社製)をそれぞれ1.0g/mLになるように調製し、6× Loading Bufferで希釈した試料を分子量マーカーとして、得られたゲル中に泳動されたヒアルロン酸のバンドの濃淡の分析を行い、ヒアルロン酸の分子量を測定した。
測定した結果、各試料中のヒアルロン酸の分子量(検出されたバンド幅の最大値に対応する値)は、表2のとおりになった。数値は、各培養系での3検体分の測定値の平均を示す。この結果から、細胞培養過程において、カゼイン分解物A及びBを添加して3時間刺激した後の培地上清に含まれるヒアルロン酸は、カゼイン分解物を添加しなかった対照試料と比べて、有意に増加(高分子化)していることが確認された(t検定において、P<0.01で有意差あり)。また、未分解のカゼイン、グルコサミンの添加と比較しても、同濃度のカゼイン分解物を添加したほうが顕著に高分子化されていることが確認された。培地中への添加量が500μg/mLにおける未分解のカゼインとの比較では、カゼイン分解物A及びBでは、t検定においてp<0.05で有意に高分子化した。そして、ヒアルロン酸分子は、カゼイン分解物の濃度が高いほど高分子化する傾向であった。この結果から、試験例1で確認されたHAS1の遺伝子発現量の増加は、産生されるヒアルロン酸の高分子化に関与していることが明らかとなった。
Figure 2015189716
生体内ヒアルロン酸の分子量は千オーダー〜100万オーダーといわれ、10万〜100万オーダーのような分子量の高いヒアルロン酸が高粘性等の点から、生体内において有益な機能を発揮していると考えられている。
本開示のカゼイン分解物は、高分子のヒアルロン酸が合成されやすいと考えられる。すなわち、本開示のカゼイン分解物は、ヒアルロン酸の合成が促進しやすいと考えられる。このようなヒアルロン酸の合成促進効果が、生体内でのヒアルロン酸の減少に関与する症状に与える影響を確認するため、ヒアルロン酸減少が関与する疾患の一例として、本開示のカゼイン分解物の摂取が、変形性関節症に与える影響を以下の試験例3において確認した。
〔試験例3;変形性関節症モデルマウスに対するカゼイン分解物の投与効果の検証〕
(1)病理学的スコアの算出
病態動物として、雄性CD1(ICR)マウス(外科的処置により片脚の内側半月板を切除した変形性関節症モデル、日本チャールス・リバー社)を実験動物として用いた。
実験動物は、8週齢で入荷後、ラボMRストック飼料(ノーサン工業社製)および水道水を自由摂取させた。1週間の馴化後、病態動物をカゼイン投与群(未分解カゼイン500mg/kg体重投与)、カゼイン分解物A投与群(カゼイン分解物Aを500mg/kg体重投与)、カゼイン分解物B投与群(カゼイン分解物Bを500mg/kg体重投与)およびグルコサミン投与群(甲陽ケミカル社製グルコサミンを500mg/kg体重投与)の4群(n=6/群)に分け、カゼイン投与群を対照群として、各マウスに1日1回経口ゾンデを用いた経口投与を8週間継続した。最終投与終了後に実験動物を16時間絶食させ、その後イソフルラン麻酔下で処置脚の大腿より下部を摘出し、剥皮した後中性ホルマリン緩衝液中で浸漬固定した。固定した検体は、EDTAにて脱灰し、膝関節前額断を包埋面としたパラフィンブロックを作製した。
当該標本を用いて、大腿骨の軟骨及び脛骨の軟骨それぞれについて、軟骨基質の変化〔軟骨のひ薄化、サフラニンO(S.O.)染色性の低下、軟骨基質の裂隙(クラック)形成〕と軟骨細胞の変化〔軟骨細胞の消失(染色性の低下を含む)、軟骨細胞の集塊(クラスター)形成〕を所見として採取した。S.O.染色は、常法によりパラフィン切片を作製し、染色後に光学顕微鏡下の観察によって病理組織学的評価を行った。そして、当該所見について、以下〔1〕〜〔5〕のとおり4段階のグレードを定義し、大腿骨及び脛骨のそれぞれの軟骨において採取した所見に合致するスコア(0〜3点)を付与した。各マウス毎のスコアの合計値を病理学的スコアとした。
<各所見グレード及びスコア>
〔1〕軟骨ひ薄化〔0点:変化なし、1点:正常の2分の1以上の厚さ、2点:正常の2分の1以下の厚さ、3点:軟骨層なし〕
〔2〕S.O.染色性低下〔0点:変化なし、1点:表層のみ低下、2点:中層まで低下、3点:深層まで低下〕
〔3〕クラック形成〔0点:変化なし、1点:表層内、2点:中層まで達する裂隙、3点:深層まで達する裂隙、または軟骨表面と並行な列隙がある〕
〔4〕クラスター形成〔0点:変化なし、1点:一個、2点:二〜三個、3点:多数〕
〔5〕軟骨細胞消失〔0点:変化なし、1点:狭いエリア、2点:やや広いエリア、3点:広範囲のエリア〕
各投与群における病理学的スコアは表3のとおりとなった。カゼイン分解物A、B投与群は、いずれも対照群(未分解カゼイン投与群)、グルコサミン投与群よりも病理学的スコアが低下する傾向が認められた。特に、カゼイン分解物Bは、大腿骨の病理学的スコアを顕著に低下させる傾向が確認された。
Figure 2015189716
(2)II型コラーゲン代謝マーカー及び血清ヒアルロン酸濃度の測定
さらに、病態動物の血液中のII型コラーゲン代謝マーカー及び血清ヒアルロン酸濃度の測定を行った。II型コラーゲンは、軟骨においてプロテオグリカンとともに細胞外マトリックスを形成し、軟骨の機能維持において重要な役割を果たしている。そのため、関節液中や血液中におけるII型コラーゲンの分解マーカーであるC2C(Collagen Type II Cleavage)、合成マーカーであるCP2(Procollagen TypeII C-propeptide)、及びこれらの比(C2C/CP2)は、軟骨における代謝状態を反映するマーカーとして知られている。また、ヒアルロン酸は、炎症の修復過程で血中濃度が増加するため、関節炎の症状の進展度とよく相関することが知られている。そこで、(1)で使用した病態マウスのカゼイン投与群とカゼイン分解物A投与群の血液を解剖前に採取し、II型コラーゲンの代謝マーカーであるC2CをCollagen Type II Cleavage ELISA(IBEX Pharmaceuticals社製)、CP2をProcollagen TypeII C-propeptide ELISA(IBEX Pharmaceuticals社製)によりそれぞれ測定し、血清ヒアルロン酸濃度は、QnE Hyaluronic Acid ELISA Assay(IBEX Pharmaceuticals社製)により測定した。測定は、各キットの使用方法に従って行った。
C2C、CP2及びヒアルロン酸濃度の測定結果(n=6/群の平均値)を表4に示し、C2C/CP2を表5に示す。カゼイン投与群よりもカゼイン分解物A投与群の方が、II型コラーゲン分解マーカーであるC2Cが低く、C2C/CP2比も低くなる傾向が確認された。また、カゼイン分解物A投与群では、血清ヒアルロン酸濃度も未分解カゼイン投与群よりも低下し、炎症が抑制されている傾向が確認された。これらの傾向はいずれも、カゼイン分解物A投与群は、軟骨中のII型コーラゲンの分解が、未分解のカゼイン投与群よりも抑制される傾向があることを示唆している。
Figure 2015189716
Figure 2015189716
(1)及び(2)の結果から、カゼイン分解物投与群では、病態動物の変形性関節症に伴う症状が改善されている傾向が確認された。したがって、カゼイン分解物の投与は、ヒアルロン酸の減少が関与する疾患の一つである変形性関節症の治療に有効であることが示唆された。
なお、試験例3で病態動物として使用した外科的処置により片脚の内側半月板を切除したマウスは、変形性関節症のモデルとして、例えば、参考文献2に記載されているように当該疾患モデルとして認められている。
参考文献2:The surgical destabilization of the medial meniscus(DMM) model of osteoarthritis in the 129/SvEv mouse, OsteoArthris and Cartilage(2007) Vol.15 No.9,1061-1069

Claims (4)

  1. カゼイン分解物を有効成分とするヒアルロン酸合成促進剤。
  2. 前記カゼインが、牛由来のカゼインである請求項1に記載のヒアルロン酸合成促進剤。
  3. 前記カゼイン分解物の分子量が、1000ダルトン以下である請求項1又は2記載のヒアルロン酸合成促進剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒアルロン酸合成促進剤及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬。
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