JP2015183171A - フェノール系樹脂、電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法、並びに、樹脂組成物 - Google Patents

フェノール系樹脂、電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法、並びに、樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることが可能なフェノール系樹脂を提供する。
【解決手段】(a)フェノール系化合物と、(b)アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる、フェノール系樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、フェノール系樹脂、樹脂組成物、電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法に関する。
自動車用鉛蓄電池は、エンジン始動用及び電装品の電力供給用として広汎に用いられている。近年、環境保護及び燃費改善の取り組みとして、車両の一時停止時にはエンジンを止め、発進時に再始動するアイドリング・ストップ・システム(以下、「ISS」という)が実施され始めている。ISSにおいて使用される鉛蓄電池では、頻繁にエンジンの始動及び停止が繰り返されることにより、エンジン始動時の大電流放電回数が増え、電装品の使用と重なり放電負荷が多くなる。
自動車用鉛蓄電池の充電は、オルタネータによる定電圧充電である。近年、充電中の水分解による電解液の減少を抑制することを目的として、オルタネータ電圧の設定値は低下してきている。また、近年では、このような低い充電電圧を採用することに加えて、発電制御システムと呼ばれる「走行中のオルタネータによる充電を、車両の走行状態及び鉛蓄電池の充電状態に応じて制御することにより、エンジン負荷を低減し、燃費向上及びCO削減を図る」方式も採用されている。このような方式では、鉛蓄電池の充電が行われにくく、完全充電状態になりにくい。このような使用条件において鉛蓄電池は、充分に充電されず放電過多で使用されることが多くなる。
鉛蓄電池の充電が完全に行われず、充電量の低い状態が継続すると、不活性の放電生成物である硫酸鉛が極板に蓄積する現象(サルフェーション)が起こる場合がある。このような状況では、活物質が還元されにくい(充電されにくい)状態であることから、サイクル特性等の電池性能が低下することが知られている。
また、完全な充電が行われにくい場合には、鉛蓄電池内における極板の上部と下部の間で、電解液である希硫酸の濃淡差が生じる成層化現象が起こる。この場合、極板下部の希硫酸の濃度が高くなりサルフェーションが発生する。そのため、極板下部の反応性が低下し、極板上部だけが集中的に反応するようになる。その結果、活物質間の結びつきが弱くなる等の劣化が進み、極板上部において、活物質を支持する集電体(例えば集電体格子)から活物質が剥離して、サイクル特性等の電池性能が低下する。
これに対し、サイクル特性等を向上させる手段として、下記特許文献1には、負極活物質と、フェノール類、アミノベンゼンスルホン酸及びホルムアルデヒドの縮合物とを用いて得られる鉛蓄電池用負極に関する技術が開示されている。
国際公開第1997/37393号
ところで、鉛蓄電池に対してはサイクル特性等の電池性能を更に向上させることが求められている。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることが可能なフェノール系樹脂及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記フェノール系樹脂を用いて製造される電極及び鉛蓄電池、並びに、これらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らの鋭意検討の結果、上記特許文献1に記載の鉛蓄電池用負極を用いた場合に充分なサイクル特性が得られないことが明らかとなった。これに対し、本発明者らは、フェノール系化合物と、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種とを反応させて得られるフェノール系樹脂を用いることにより上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明に係るフェノール系樹脂は、(a)フェノール系化合物と、(b)アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる。
本発明に係るフェノール系樹脂によれば、鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることができる。また、本発明に係るフェノール系樹脂によれば、優れた充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性等の電池性能を両立することができる。
上記のとおり優れたサイクル特性が得られる要因について、本発明に係るフェノール系樹脂を用いて得られる鉛蓄電池においては、鉛蓄電池の電極反応において生成する反応物が粗大化することが抑制されることにより電極の比表面積が高く保持されるためであると推測される。但し、要因はこれに限定されるものではない。
本発明に係る樹脂組成物は、本発明に係るフェノール系樹脂を含有する。本発明に係る樹脂組成物においても、優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明に係る樹脂組成物のpHは、6を超え14以下であることが好ましい。この場合、フェノール系樹脂の溶媒(水等)への優れた溶解性、及び活物質原料(鉛粉)への優れた濡れ性を得ることができる。
本発明に係る電極は、本発明に係るフェノール系樹脂を用いて製造されたものである。本発明に係る鉛蓄電池は、本発明に係る電極を備えている。これらにおいても、優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明に係るフェノール系樹脂の製造方法は、(a)フェノール系化合物と、(b)アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させる工程を備える。
本発明に係るフェノール系樹脂の製造方法によれば、鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることができる。また、本発明に係るフェノール系樹脂の製造方法によれば、優れた充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性等の電池性能を両立することができる。
本発明に係るフェノール系樹脂の製造方法は、(b)成分の配合量が(a)成分1モルに対して0.3〜2.0モルであり、(c)成分の配合量が(a)成分1モルに対してホルムアルデヒド換算で2.0〜3.5モルである態様が好ましい。この場合、更に優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明に係る電極の製造方法は、本発明に係るフェノール系樹脂の製造方法により得られたフェノール系樹脂を用いて電極を製造する工程を備える。本発明に係る鉛蓄電池の製造方法は、本発明に係る電極の製造方法により電極を得る工程を備える。これらにおいても、優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明によれば、鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることができる。また、本発明によれば、優れた充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性等の電池性能を両立することができる。本発明によれば、フェノール系樹脂の鉛蓄電池への応用、及び、フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物の鉛蓄電池への応用を提供できる。
特に、本発明によれば、前記フェノール系樹脂を用いて製造される負極を有する鉛蓄電池において優れた特性を得ることができる。本発明によれば、フェノール系樹脂の鉛蓄電池の負極への応用、及び、フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物の鉛蓄電池の負極への応用を提供できる。
本発明によれば、フェノール系樹脂の自動車における鉛蓄電池への応用、及び、フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物の自動車における鉛蓄電池への応用を提供できる。また、本発明によれば、充電受け入れ性に優れるため、過酷な環境で使用されるISS車両用途として充分満足し得る鉛蓄電池を提供することができる。本発明によれば、フェノール系樹脂のISS車両における鉛蓄電池への応用、及び、フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物のISS車両における鉛蓄電池への応用を提供できる。
図1は、H−NMRスペクトルの測定結果を示す図面である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<フェノール系樹脂、樹脂組成物及びこれらの製造方法>
本実施形態に係るフェノール系樹脂は、(a)スフェノール系化合物(以下、場合により「(a)成分」という)と、(b)アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(b)成分」という)と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(c)成分」という)と、を反応させて得られる。本実施形態に係る樹脂組成物は、本実施形態に係るフェノール系樹脂と溶媒(水等)とを含有する組成物であり、25℃において液状の樹脂溶液である。以下、フェノール系樹脂及び樹脂組成物の構成成分等について説明する。
((a)成分:フェノール系化合物)
フェノール系化合物は、ベンゼン環上にヒドロキシ基を有する化合物である。フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、パラフェノールスルホン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、オルトアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノール系化合物としては、放電特性及びサイクル特性に更に優れる観点から、フェノール及びパラフェノールスルホン酸が好ましく、フェノールがより好ましい。
((b)成分:アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体)
アミノアリールスルホン酸としては、例えば、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸等のアミノベンゼンスルホン酸;4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(p−体)、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ana−体)、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸(ε−体、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸)、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ε−体)、6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(amphi−体)、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸、8−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(peri−体)、1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸(kata−体、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸)等のアミノナフタレンモノスルホン酸;1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸等のアミノナフタレンジスルホン酸;7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸等のアミノナフタレントリスルホン酸が挙げられる。アミノアリールスルホン酸誘導体としては、例えば、アミノアミノアリールスルホン酸のスルホ基(−SOH)の水素原子がアルカリ金属で置換されたアルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、モノアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、ナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩が好ましい。
(b)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(b)成分としては、充電受け入れ性及びサイクル特性が更に向上する観点から、アミノベンゼンスルホン酸が好ましく、4−アミノベンゼンスルホン酸がより好ましい。
フェノール系樹脂を得るための(b)成分の配合量は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、(a)成分1モルに対して、0.3モル以上が好ましく、0.4モル以上がより好ましく、0.5モル以上が更に好ましい。(b)成分の配合量は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、(a)成分1モルに対して、2.0モル以下が好ましく、1.3モル以下がより好ましく、1.2モル以下が更に好ましく、1.1モル以下が特に好ましい。
((c)成分:ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体)
ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン(例えばホルムアルデヒド37質量%の水溶液)中のホルムアルデヒドを用いてもよい。ホルムアルデヒド誘導体としては、例えば、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン及びトリオキサンが挙げられる。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド誘導体とを併用してもよい。
(c)成分としては、優れたサイクル特性が得られやすくなる観点から、ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、パラホルムアルデヒドがより好ましい。パラホルムアルデヒドは、例えば下記一般式(I)のような構造を有する。
HO(CHO)H …(I)
[式(I)中、nは2〜100の整数を示す。]
フェノール系樹脂を得るための(c)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、(b)成分の反応性が向上する観点から、(a)成分1モルに対して、2.0モル以上が好ましく、2.2モル以上がより好ましく、2.4モル以上が更に好ましい。(c)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、得られるフェノール系樹脂の溶媒への溶解性に優れる観点から、(a)成分1モルに対して、3.5モル以下が好ましく、3.2モル以下がより好ましく、3.0モル以下が更に好ましい。
(溶媒)
本実施形態に係る樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば水(例えばイオン交換水)及び有機溶媒が挙げられる。樹脂組成物に含まれる溶媒は、フェノール系樹脂を得るために用いる反応溶媒であってもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物における不揮発分含量(Nonvolatile Mat
ter content)は、フェノール系樹脂の溶解性及び電池特性に優れる観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。同様の観点から、本実施形態に係る樹脂組成物における不揮発分含量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
不揮発分含量の測定は、例えば、下記の手順により測定することができる。まず、所定量(例えば2g)の樹脂組成物を容器(例えばステンレスシャーレ等の金属シャーレ)に入れた後、熱風乾燥機を用いて樹脂組成物を150℃、60分間乾燥させる。次に、容器の温度が室温(例えば25℃)に戻った後、残分質量を測定する。そして、下記の式から不揮発分含量を算出する。
不揮発分含量(質量%)=[(乾燥後の残分質量)/(乾燥前の樹脂組成物の質量)]×100
本実施形態に係る樹脂組成物は、フェノール系樹脂以外の天然樹脂又は合成樹脂を更に含有していてもよい。
本実施形態に係るフェノール系樹脂は、例えば、下記式(II)で表される構造単位を有することが好ましい。
Figure 2015183171
[式(II)中、Arは、アリーレン基(arylene groups)、R11は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は水素原子を示し、R12は、水酸基、メチル基、カルボキシル基又はメチロール基(−CHOH)を示し、R13は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は水素原子を示し、m1は、1〜600の整数を示し、q1は、1〜3の整数を示し、p1は0又は1を示す。n1/n2は、0.5〜4を示す。]
また、本実施形態に係るフェノール系樹脂は、下記式(III)で表される構造単位を有していてもよい。
Figure 2015183171
[式(III)中、Arは、アリーレン基(arylene groups)、R21は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は水素原子を示し、R22は、水酸基、メチル基、カルボキシル基又はメチロール基(−CHOH)を示し、R23は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は水素原子を示し、m2は、1〜600の整数を示し、q2は、1〜3の整数を示し、p2は0又は1を示す。]
11、R13、R21及びR23のアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム及びカルシウムが挙げられる。Ar及びArは、放電特性に優れる観点から、フェニレン基が好ましい。m1及びm2は、サイクル特性及び溶媒への溶解性に更に優れる観点から、5〜300が好ましい。p1及びp2は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性をバランス良く向上する観点から、0が好ましい。q1及びq2は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性をバランス良く向上する観点から、1が好ましい。
また、式(II)において、n1/n2は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、0.9〜2が好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物におけるフェノール系樹脂の含有量は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、樹脂組成物における不揮発分の全質量を基準として、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
フェノール系樹脂の重量平均分子量は、鉛蓄電池において電極からフェノール系樹脂が電解液に溶出することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上が更に好ましい。フェノール系樹脂の重量平均分子量は、電極活物質に対する吸着性が低下することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、300000以下が好ましく、250000以下がより好ましく、200000以下が更に好ましい。
フェノール系樹脂の重量平均分子量は、例えば、下記条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定することができる。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×10、5.80×10、2.55×10、1.46×10、1.01×10、4.49×10、2.70×10、2.10×10;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×10;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×10;キシダ化学株式会社製)
本実施形態に係る樹脂組成物における未反応の(c)成分(残存(c)成分)の含有量は、サイクル特性が更に向上する観点から、樹脂組成物の全質量を基準として、1質量%以下が好ましく、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましい。未反応の(c)成分の含有量は、例えば、樹脂組成物を乾燥処理することにより低減することができる。未反応の(c)成分の含有量は、例えばガスクロマトグラフィーにより測定できる。
本実施形態に係るフェノール系樹脂の製造方法は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を反応させてフェノール系樹脂を得る樹脂製造工程を備えている。本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂製造工程において得られる組成物であってもよく、樹脂製造工程後にフェノール系樹脂と他の成分とを混合して得られる組成物であってもよい。
フェノール系樹脂は、例えば、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を反応溶媒中で反応させることにより得ることができる。反応溶媒は、水(例えばイオン交換水)であることが好ましい。反応を促進させるために、有機溶媒、触媒、添加剤等を用いてもよい。
樹脂製造工程は、サイクル特性が更に向上する観点から、(b)成分の配合量が(a)成分1モルに対して0.3〜2.0モルであり、且つ、(c)成分の配合量が(a)成分1モルに対してホルムアルデヒド換算で2.0〜3.5モルである態様が好ましい。(b)成分及び(c)成分の好ましい配合量は、(b)成分及び(c)成分の配合量のそれぞれについて上述した範囲である。
フェノール系樹脂は、充分量のフェノール系樹脂が得られやすい観点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を塩基性条件(アルカリ性条件)で反応させることにより得ることが好ましい。塩基性条件に調整するためには、塩基性化合物を用いてもよい。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化カルシウムが挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。塩基性化合物の中でも、反応性に優れる観点から、水酸化ナトリウム及び水酸化カルシムが好ましい。
(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する反応溶液が反応開始時において中性(pH=7)である場合、フェノール系樹脂の生成反応が進行しにくい場合があり、反応溶液が酸性(pH<7)である場合、副反応が進行する場合がある。そのため、反応開始時の反応溶液のpHは、フェノール系樹脂の生成反応を進行させつつ副反応が進行することを抑制する観点から、アルカリ性である(7を超える)ことが好ましく、7.1以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、8.5以上が特に好ましい。反応溶液のpHは、フェノール系樹脂の(b)成分に由来する基の加水分解が進行することを抑制する観点から、12以下が好ましく、11以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。反応溶液のpHは、例えばアズワン株式会社製のTwin pHで測定することができる。pHは25℃におけるpHと定義する。
上記のようなpHに調整しやすいことから、強塩基性化合物の配合量は、(b)成分に含まれるスルホ基1モルに対して、1.01モル以上が好ましく、1.02モル以上がより好ましく、1.05モル以上が更に好ましい。同様の観点から、強塩基性化合物の配合量は、(b)成分に含まれるスルホ基1モルに対して、1.5モル以下が好ましく、1.3モル以下がより好ましく、1.2モル以下が更に好ましい。強塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムが挙げられる。
樹脂組成物のpHは、フェノール系樹脂の溶媒(水等)への溶解性に優れると共に、活物質の原料(酸化鉛等)などへの樹脂組成物の濡れ性に更に優れる観点から、6を超えることが好ましく、6.5以上がより好ましい。樹脂組成物のpHは、フェノール系樹脂の(b)成分に由来する基の加水分解を低減できる観点から、14以下が好ましく、12以下がより好ましく、11以下が更に好ましい。特に、フェノール系樹脂を5質量%の水溶液(例えば、イオン交換水を含む水溶液)に調整したときのpHが上記範囲であることが好ましい。また、樹脂製造工程において得られる組成物を樹脂組成物として用いる場合、樹脂組成物のpHは、上記範囲であることが好ましい。樹脂組成物のpHは、例えばアズワン株式会社製のTwin pHで測定することができる。pHは25℃におけるpHと定義する。樹脂組成物のpHは、例えば、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整することができる。
フェノール系樹脂の合成反応は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分が反応してフェノール系樹脂が得られればよく、例えば、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を同時に反応させてもよく、(a)成分、(b)成分及び(c)成分のうちの2成分を反応させた後に残りの1成分を反応させてもよい。
フェノール系樹脂の合成反応は、次のように二段階で行うことが好ましい。第一段階の反応では、例えば、(b)成分、溶媒(水等)及び塩基性化合物(例えば強塩基性化合物)を仕込んだ後に攪拌し、(b)成分におけるスルホ基の水素原子をアルカリ金属等で置換して(b)成分のアルカリ金属塩等を得る。これにより、後述の縮合反応において副反応を抑制しやすくなる。反応系の温度は、(b)成分の溶媒(水等)への溶解性に優れる観点から、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。反応系の温度は、副反応を抑制する観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下が更に好ましい。反応時間は、例えば5〜30分である。
第二段階の反応では、例えば、第一段階で得られた反応物に(c)成分を加え、混合物が透明の均一系になるまで5〜30分間撹拌した後、混合物に(a)成分を加えて縮合反応させることによりフェノール系樹脂を得る。反応系の温度は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応性に優れる観点から、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましく、95℃以上が更に好ましい。反応系の温度は、反応溶媒(例えば水)が蒸発することを抑制する観点から、120℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましい。反応時間は、例えば1〜5時間である。
このようにして得られた反応物を乾燥して溶媒(水等)及び未反応の(c)成分などを除去することによりフェノール系樹脂が得られる。乾燥方法としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂の自己硬化反応を防ぐ観点から、フェノール系樹脂の温度が100℃以下となる方法が好ましい。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、凍結乾燥及びスプレードライ乾燥が挙げられる。
前記乾燥したフェノール系樹脂における水分量は、品質管理及び操作性に優れる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。同様の観点から、水分量は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。水分量は、例えばカールフィッシャー滴定により測定できる。
<電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法>
本実施形態に係る電極は、例えば、本実施形態に係るフェノール系樹脂を用いて製造されたものである。本実施形態に係る電極の製造方法は、本実施形態に係るフェノール系樹脂の製造方法により得られたフェノール系樹脂を用いて電極を製造する工程を備える。電極は、例えば、電極活物質等を含む電極層と、当該電極層を支持する集電体とを有している。電極は、例えば、鉛蓄電池用の負極(負極板等)である。
本実施形態に係る鉛蓄電池は、本実施形態に係る電極を備えている。本実施形態に係る鉛蓄電池としては、例えば、液式鉛蓄電池及び密閉式鉛蓄電池が挙げられ、液式鉛蓄電池が好ましい。本実施形態に係る鉛蓄電池の製造方法は、例えば、本実施形態に係る電極の製造方法により電極を得る電極製造工程と、電極を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池を得る組み立て工程とを備えている。
電極製造工程では、例えば、電極活物質ペーストを集電体(例えば集電体格子)に充填した後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極を得る。電極活物質ペーストは、例えば、電極活物質の原料及びフェノール系樹脂を含んでおり、その他の所定の添加剤等を更に含有していてもよい。電極が負極である場合、負極活物質の原料は鉛粉(PbOの紛体と鱗片状金属鉛の混合物)であることが好ましい。添加剤としては、例えば、硫酸バリウム、炭素材料及び補強用短繊維(アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等)が挙げられる。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック及び黒鉛が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びケッチェンブラックが挙げられる。
本実施形態に係る電極が負極である場合、負極活物質ペーストは、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、鉛粉に、フェノール系樹脂又は当該フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物、及び、必要に応じて添加剤を添加して混合することにより混合物を得る。次に、この混合物に、希硫酸及び溶媒(水等)を加えて混練することにより負極活物質ペーストが得られる。
負極活物質ペーストにおいて、硫酸バリウムを用いる場合、硫酸バリウムの配合量は、負極活物質の全質量を基準として0.01〜1質量%が好ましい。また、炭素材料を用いる場合の配合量は、負極活物質の全質量を基準として0.2〜1.4質量%が好ましい。本実施形態に係るフェノール系樹脂又は当該フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物の配合量は、負極活物質の全質量を基準として、樹脂固形分換算で、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%が更に好ましい。
集電体の組成としては、例えば、鉛−カルシウム−錫系合金、鉛−アンチモン-ヒ素系合金があり、用途に応じて適宜セレン、銀、ビスマスなどを添加してもよい。これらの鉛合金を重力鋳造法、エキスパンド法、打ち抜き法などで格子状に形成し集電体とすることができる。
熟成条件としては、温度35〜85℃、湿度50〜98RH%の雰囲気で15〜60時間が好ましい。乾燥条件としては、温度45〜80℃で15〜30時間が好ましい。
本実施形態に係る電極が負極である場合、鉛蓄電池用の正極(正極板等)は、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、正極活物質の原料である鉛粉に対して、補強用短繊維を加えた後、希硫酸及び水を加える。これを混練して正極活物質ペーストを作製する。正極活物質ペーストを作製するに際しては、化成時間を短縮できる観点から、鉛丹(Pb)を加えてもよい。この正極活物質ペーストを集電体(例えば集電体格子)に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の正極が得られる。正極活物質ペーストにおいて、補強用短繊維の配合量は、鉛粉の全質量を基準として0.005〜0.3質量%が好ましい。集電体の種類、熟成条件、乾燥条件は、負極の場合とほぼ同様である。
組み立て工程では、例えば、前記のように作製した負極及び正極を、セパレータを介して交互に積層し、同極性の極板同士をストラップで連結(溶接等)させて極板群を得る。この極板群を電槽内に配置して未化成電池を作製する。次に、未化成電池に希硫酸を注液し、直流電流を通電し化成を行うことにより鉛蓄電池が得られる。また、希硫酸を一度抜いた後、電解液を注液してもよい。硫酸の比重(20℃換算)は1.25〜1.35が好ましい。
セパレータの材質としては、例えばポリエチレン及びガラス繊維が挙げられる。なお、化成条件、及び、硫酸の比重は電極活物質の性状に応じて調整することができる。また、化成処理は、組み立て工程において実施されることに限られず、電極製造工程において実施されてもよい。
尚、負極活物質は、負極活物質ペーストを熟成及び乾燥を行うことにより未化成活物質を得、その後、化成することで得ることができる。化成後の負極活物質は、多孔質の海綿状鉛(Spongy Lead)を含む。
また、正極活物質は、正極活物質ペーストを熟成及び乾燥を行うことにより未化成活物質を得、その後、化成することで得ることができる。化成後の正極活物質は、二酸化鉛を含む。
前記未化成活物質は、正極及び負極とも、主成分として三塩基性硫酸鉛を含むことが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
<負極板の作製>
[実施例1]
ジムロート、メカニカルスターラー及び温度計を装着した500mLセパラブルフラスコに水酸化ナトリウム4.2質量部、水酸化カルシウム3.8質量部及びイオン交換水140.0質量部を加えた後、200rpmで5分間撹拌して水酸化ナトリウム/水酸化カルシウム水溶液を調製した。この水酸化ナトリウム/水酸化カルシウム水溶液に4−アミノベンゼンスルホン酸34.6質量部を加えて25℃にて10分間撹拌することにより、均一の水溶液を得た。この水溶液にパラホルムアルデヒド19.1質量部(純度94質量%)を加えた後に5分間撹拌してパラホルムアルデヒドを溶解し、均一の水溶液を得た。この水溶液にフェノール18.8質量部を加えた後、115℃に設定したオイルバスを用いて加熱しながら3時間撹拌した。フェノールを加えた直後の反応開始時のpHを下記の測定条件で測定した。
試験機:Twin pH(アズワン株式会社製)
校正液:pH6.86(25℃)、pH4.01(25℃)
測定温度:25℃
測定手順:校正液を用いて2点校正を行った。試験機のセンサ部の洗浄を行った後、測定溶液をスポイトで吸い取り、センサ部に0.1〜0.3mLを滴下した。画面上に測定終了の表示が現れたときのpHを測定値とした。
得られた水溶液を耐熱容器に移し、60℃に設定した真空乾燥機に投入した後、1kPa以下の減圧状態で10時間乾燥することにより樹脂粉末(フェノール系樹脂)を得た。
実施例1で得られたフェノール系樹脂のH−NMRスペクトルを下記条件で測定した。H−NMRスペクトルの測定結果を図1に示す。
装置:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)
重溶媒:DMSO−d
実施例1で得られたフェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpHを、反応開始時のpHの上記測定条件と同様の測定条件で測定した。
鉛粉の全質量を基準として、フェノール系樹脂0.2質量%と、ファーネスブラック0.2質量%と、硫酸バリウム1.0質量%とを鉛粉に対して添加した後に乾式混合した。次に、希硫酸(比重1.26/20℃換算)及び水を加えながら混練して負極活物質ペーストを作製した。負極活物質ペーストを厚さ0.6mmのエキスパンド集電体(鉛−カルシウム−錫系合金)に充填して負極板を作製した。負極板を通常の方法に従い、温度50℃、湿度95%の雰囲気下に18時間放置して熟成した後、温度50℃の雰囲気下で乾燥して未化成負極板を得た。
[実施例2〜6]
フェノール系樹脂を得るための成分を表1に示す成分へ変更したこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。ここで、負極板作製に際し、実施例1〜3は樹脂粉末(フェノール系樹脂)の状態で用いた。また、実施例4〜6は、反応終了後の水溶液を不揮発分含量が30質量%に調製した樹脂組成物(樹脂溶液)を、固形分換算で実施例1〜3と同量になるように用いて負極板を作製した。また、実施例2〜6において、実施例1と同様に、フェノール系樹脂の重量平均分子量、反応開始時のpH、及び、フェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpHを測定した。なお、表1中、パラホルムアルデヒドの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
[比較例1]
フェノール系樹脂を用いなかったこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。
[比較例2]
フェノール系樹脂を得るための成分を表1に示す成分へ変更したこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。また、実施例1と同様に、フェノール系樹脂の重量平均分子量、反応開始時のpH、及び、フェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpHを測定した。表1中、37質量%ホルマリンの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
尚、実施例4〜6及び比較例2で得られたフェノール系樹脂の重量平均分子量を下記条件のGPCにより測定した。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW
(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×10、5.80×10、2.55×10、1.46×10、1.01×10、4.49×10、2.70×10、2.10×10;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×10;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×10;キシダ化学株式会社製)
<正極板の作製>
鉛粉の全質量を基準として0.01質量%の補強用短繊維(ポリエチレン繊維)を鉛粉に対して添加した後に乾式混合した。次に、希硫酸(比重1.26/20℃換算)及び水を加えて混練して正極活物質ペーストを作製した。鋳造格子体からなる正極集電体(鉛−カルシウム−錫合金)に正極活物質ペーストを充填して、温度50℃、湿度95%の雰囲気下に18時間放置して熟成した後、温度50℃の雰囲気下で乾燥して未化成正極板を得た。
<電池の組み立て>
袋状に加工したポリエチレン製のセパレータに未化成負極板を挿入し、前記袋状セパレータに挿入された未化成負極板及び未化成正極板が交互に積層されるように、6枚の未化成負極板及び5枚の未化成正極板を積層した後、キャストオンストラップ(COS)方式で同極性の極板の耳部同士を溶接して極板群を作製した。前記極板群を電槽に挿入して2V単セル電池(JIS50301規定のB19サイズ相当)を組み立てた。この電池に希硫酸(比重1.28/20℃換算)を注液した後に、50℃の水槽中、通電電流10Aで16時間の条件で化成した。そして、希硫酸を排出した後に、再び比重1.28(20℃換算)の希硫酸を注入して鉛蓄電池を得た。
<電池特性の評価>
上記の2V単セル電池について、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性を下記のとおり測定した。比較例2の充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性の測定結果をそれぞれ100とし、各特性を相対評価した。結果を表1に示す。
(充電受け入れ性)
充電受け入れ性として、電池の充電状態(State of charge)が90%になった状態、つまり、満充電状態から電池容量の10%を放電し、2.33Vで定電圧充電した際の5秒後の電流値を測定した。5秒後の電流値が大きいほど初期の充電受け入れ性が良い電池であると評価される。
(放電特性)
放電特性として、−15℃において5Cで定電流放電し、電池電圧が1.0Vに達するまでの放電持続時間を測定した。放電持続時間が長いほど放電特性に優れる電池であると評価される。なお、前記Cとは、“放電電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。
(サイクル特性)
サイクル特性は、日本工業規格の軽負荷寿命試験(JIS D 5301)に準じた方法で評価した。サイクル数が大きいほど耐久性が高い電池であると評価される。
Figure 2015183171
*溶離液に不溶であったため未測定
実施例では、比較例1、2と比べ充電受け入れ性及びサイクル特性が大きく向上していることが確認できる。また、放電特性についても、比較例2とほぼ同等の水準に留まっており、例えばISS車両用途としての性能を充分満足できることが確認できる。このように、実施例では、優れた充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性が両立されていることが確認できる。
本発明によれば、鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることが可能なフェノール系樹脂及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記フェノール系樹脂を含有する樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明は、前記フェノール系樹脂を用いて製造される電極及び鉛蓄電池、並びに、これらの製造方法を提供することができる。

Claims (9)

  1. (a)フェノール系化合物と、(b)アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる、フェノール系樹脂。
  2. 請求項1に記載のフェノール系樹脂を含有する、樹脂組成物。
  3. pHが6を超え14以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1に記載のフェノール系樹脂を用いて製造される、電極。
  5. 請求項4に記載の電極を備える、鉛蓄電池。
  6. (a)フェノール系化合物と、(b)アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させる工程を備える、フェノール系樹脂の製造方法。
  7. 前記(b)成分の配合量が前記(a)成分1モルに対して0.3〜2.0モルであり、前記(c)成分の配合量が前記(a)成分1モルに対してホルムアルデヒド換算で2.0〜3.5モルである、請求項6に記載のフェノール系樹脂の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載のフェノール系樹脂の製造方法により得られたフェノール系樹脂を用いて電極を製造する工程を備える、電極の製造方法。
  9. 請求項8に記載の電極の製造方法により電極を得る工程を備える、鉛蓄電池の製造方法。
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