JP2017160303A - ビスフェノール系樹脂粉末、電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法、並びに樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることが可能なビスフェノール系樹脂粉末を提供する。【解決手段】(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られるビスフェノール系樹脂粉末。【選択図】図1
Description
本発明は、ビスフェノール系樹脂粉末、電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法、並びに樹脂組成物に関する。
自動車用鉛蓄電池は、エンジン始動用及び電装品の電力供給用として広汎に用いられている。近年、環境保護及び燃費改善の取り組みとして、車両の一時停止時にはエンジンを止め、発進時に再始動するアイドリング・ストップ・システム(以下、「ISS」という)が実施され始めている。ISSにおいて使用される鉛蓄電池では、頻繁にエンジンの始動及び停止が繰り返されることにより、エンジン始動時の大電流放電回数が増え、電装品の使用と重なり放電負荷が多くなる。
自動車用鉛蓄電池の充電は、オルタネータによる定電圧充電である。近年、充電中の水分解による電解液の減少を抑制することを目的として、オルタネータ電圧の設定値は低下してきている。また、近年では、このような低い充電電圧を採用することに加えて、発電制御システムと呼ばれる「走行中のオルタネータによる充電を、車両の走行状態及び鉛蓄電池の充電状態に応じて制御することにより、エンジン負荷を低減し、燃費向上及びCO2削減を図る」方式も採用されている。このような方式では、鉛蓄電池の充電が行われにくく、完全充電状態になりにくい。このような使用条件において鉛蓄電池は、充分に充電されず放電過多で使用されることが多くなる。
鉛蓄電池の充電が完全に行われず、充電量の低い状態が継続すると、不活性の放電生成物である硫酸鉛が極板に蓄積する現象(サルフェーション)が起こる場合がある。このような状況では、活物質が還元されにくい(充電されにくい)状態であることから、サイクル特性等の電池性能が低下することが知られている。
また、完全な充電が行われにくい場合には、鉛蓄電池内における極板の上部と下部の間で、電解液である希硫酸の濃淡差が生じる成層化現象が起こる。この場合、極板下部の希硫酸の濃度が高くなりサルフェーションが発生する。そのため、極板下部の反応性が低下し、極板上部だけが集中的に反応するようになる。その結果、活物質間の結びつきが弱くなる等の劣化が進み、極板上部において、活物質を支持する集電体(例えば集電体格子)から活物質が剥離して、サイクル特性等の電池性能が低下する。
これに対し、サイクル特性等を向上させる手段として、下記特許文献1には、負極活物質と、フェノール類、アミノベンゼンスルホン酸及びホルムアルデヒドの縮合物とを用いて得られる鉛蓄電池用負極に関する技術が開示されている。
ところで、電極活物資の固定用樹脂に対しては、鉛蓄電池の充放電特性やサイクル特性等の電池性能を更に向上させるため、保存安定性を向上させることが求められている。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、鉛蓄電池において優れた電池性能を得ることが可能なビスフェノール系樹脂粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、電極活物質と前記ビスフェノール系樹脂粉末とを用いて製造される電極及び鉛蓄電池、並びに、これらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らの検討の結果、上記特許文献1に記載の鉛蓄電池用負極を用いた場合に充分な充電特性が得られないことが明らかとなった。これに対し、本発明者らは、ビスフェノール系化合物と、アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種とを反応させて得られるビスフェノール系樹脂を用いることにより、充電特性が向上することを見出した(特許文献2)。しかしながら、特許文献2に記載の発明においても、充電特性と放電特性がトレードオフの関係にあり、両特性の両立を図る必要のあることが明らかになった。本発明者らの鋭意検討の結果、ビスフェノール系化合物と、アミノベンゼンスルホン酸及びアミノベンゼンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種とを反応させて得られるビスフェノール系樹脂において平均粒径を規定した粉末を適用するとともに、その粉末に含まれるビスフェノール系化合物にビスフェノールAとビスフェノールSの混合物を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末は、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる。
また、本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末は、平均粒径が10〜250μmであることが好ましい。
本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末によれば、鉛蓄電池において優れた充放電特性を得ることができる。また、優れた充電受け入れ性が得られ、放電特性及びサイクル特性等の電池性能を両立することができる。
また、前記(a)成分は、ビスフェノールAとビスフェノールSからなることが好ましい。それにより、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性をバランス良く向上させることができる。
本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末を用いて得られる鉛蓄電池において、上記のとおり優れた充放電特性が得られる要因は、ビスフェノール系樹脂粉末と負極活性物質との混練性及び親和性が向上することにより、鉛蓄電池の電極反応において生成する反応物の粗大化が抑制され、電極の比表面積が高く保持されるためであると推測される。但し、要因はこれに限定されるものではない。
(b)成分は、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。この場合、更に充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性をバランス良く向上させることができる。
本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末の重量平均分子量は、10000〜300000であることが好ましい。この場合、更に優れた充放電特性を得ることができる。
本発明に係る樹脂組成物は、本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末を含有する。本発明に係る樹脂組成物を用いて作製する電池においても、優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明に係る樹脂組成物のpHは、7を超え14以下であることが好ましい。
本発明に係る電極は、電極活物質と、本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末と、を用いて製造される。本発明に係る鉛蓄電池は、本発明に係る電極を備える。これらの構成により、優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末の製造方法は、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種とを反応させる工程を備える。
本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末の製造方法によれば、鉛蓄電池において優れた充放電特性を得ることができる。また、本発明に係るビスフェノール系樹脂の製造方法によれば、優れた充電受け入れ性が得られ、放電特性及びサイクル特性等の電池性能を両立することができる。
本発明に係るビスフェノール系樹脂の製造方法は、(b)成分の配合量が(a)成分1モルに対して0.5〜1モルであり、(c)成分の配合量が(a)成分1モルに対してホルムアルデヒド換算で2.5〜3モルである態様が好ましい。この場合、更に優れた充放電特性を得ることができる。
本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末の製造方法は、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種とを反応させる工程、及び前記反応工程で得られる反応物を乾燥して平均粒径が10〜250μmである粉末を作製する工程を備えることが好ましい。
本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末の製造方法は、平均粒径を所定の範囲に制御できる乾燥工程を採用することにより、熱ストレスが少なく、流動性の高い球形の粉末が製造できる。この粉末を電極活物質の固定用樹脂として適用したときに鉛蓄電池の充放電特性やサイクル特性等の電池性能を更に向上することができる。
本発明に係る電極の製造方法は、電極活物質と、本発明に係るビスフェノール系樹脂粉末の製造方法により得られたビスフェノール系樹脂と、を用いて電極を製造する工程を備える。本発明に係る鉛蓄電池の製造方法は、本発明に係る電極の製造方法により電極を得る工程を備える。これらにおいても、優れた充放電特性を得ることができる。
本発明によれば、鉛蓄電池において優れた充放電特性を得ることができる。また、本発明によれば、優れた充電受け入れ性が得られ、放電特性及びサイクル特性等の電池性能を両立することができる。本発明によれば、ビスフェノール系樹脂粉末の鉛蓄電池への応用、及び、ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物の鉛蓄電池への応用を提供できる。
特に、本発明によれば、電極活物質と前記ビスフェノール系樹脂粉末とを用いて製造される負極を有する鉛蓄電池において優れた特性を得ることができる。本発明によれば、ビスフェノール系樹脂粉末の鉛蓄電池の負極への応用、及び、ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物の鉛蓄電池の負極への応用を提供できる。
本発明によれば、ビスフェノール系樹脂粉末の自動車における鉛蓄電池への応用、及び、ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物の自動車における鉛蓄電池への応用を提供できる。また、本発明によれば、充電受け入れ性に優れるため、過酷な環境で使用されるISS車両用途として充分満足し得る鉛蓄電池を提供することができる。本発明によれば、ビスフェノール系樹脂のISS車両における鉛蓄電池への応用、及び、ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物のISS車両における鉛蓄電池への応用を提供できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<ビスフェノール系樹脂、樹脂組成物及びこれらの製造方法>
本実施形態に係る樹脂粉末を構成するビスフェノール系樹脂は、(a)ビスフェノール系化合物(以下、場合により「(a)成分」という)と、(b)アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(b)成分」という)と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(c)成分」という)と、を反応させて得られる。本実施形態に係る樹脂組成物は、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末を含有している。本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、ビスフェノール系樹脂粉末と溶媒(水等)とを含有する組成物であり、25℃において液状又は分散状態の樹脂溶液である。以下、樹脂組成物の構成成分等について説明する。
本実施形態に係る樹脂粉末を構成するビスフェノール系樹脂は、(a)ビスフェノール系化合物(以下、場合により「(a)成分」という)と、(b)アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(b)成分」という)と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(c)成分」という)と、を反応させて得られる。本実施形態に係る樹脂組成物は、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末を含有している。本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、ビスフェノール系樹脂粉末と溶媒(水等)とを含有する組成物であり、25℃において液状又は分散状態の樹脂溶液である。以下、樹脂組成物の構成成分等について説明する。
[(a)成分:ビスフェノール系化合物]
ビスフェノール系化合物は、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール系化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及び、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ビスフェノール系化合物としては、放電特性及びサイクル特性に更に優れる観点から、ビスフェノールAとビスフェノールSとを組合わせて用いることが好ましい。放電特性及びサイクル特性に更に優れる観点から、ビスフェノールAとビスフェノールのモル比が8:2であると好ましく,9:1であるとより好ましく、9.6:0.4であるとさらに好ましい。
ビスフェノール系化合物は、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール系化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及び、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ビスフェノール系化合物としては、放電特性及びサイクル特性に更に優れる観点から、ビスフェノールAとビスフェノールSとを組合わせて用いることが好ましい。放電特性及びサイクル特性に更に優れる観点から、ビスフェノールAとビスフェノールのモル比が8:2であると好ましく,9:1であるとより好ましく、9.6:0.4であるとさらに好ましい。
[(b)成分:アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体]
アミノナフタレンスルホン酸としては、例えば、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(p−体)、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ana−体)、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(ε−体)、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ε−体)、6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(amphi−体)、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸、8−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(peri−体)、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(kata−体)、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、などが上げられる。アミノナフタレンスルホン酸誘導体としては、上記のナフタレンスルホン酸のモノアルカリ金属塩若しくはジアルカリ金属塩が上げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム塩が好ましい。
アミノナフタレンスルホン酸としては、例えば、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(p−体)、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ana−体)、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(ε−体)、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ε−体)、6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(amphi−体)、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸、8−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(peri−体)、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(kata−体)、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、などが上げられる。アミノナフタレンスルホン酸誘導体としては、上記のナフタレンスルホン酸のモノアルカリ金属塩若しくはジアルカリ金属塩が上げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム塩が好ましい。
アミノナフタレンスルホン酸誘導体としては、アミノナフタレンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、アミノナフタレンスルホン酸のスルホ基(−SO3H)の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム)で置換された化合物等が挙げられる。アミノナフタレンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基で置換された化合物としては、5−メチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸、3−メチル−5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。アミノナフタレンスルホン酸のスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換された化合物としては、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウム、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸カリウム、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸モノカリウム、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸ジカリウム、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸カリウム、等が挙げられる。
(b)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(b)成分としては、充電受け入れ性及びサイクル特性が更に向上する観点から、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸が好ましい。
ビスフェノール系樹脂を得るための(b)成分の配合量は、放電特性が更に向上する観点から、(a)成分1.00モルに対して、0.50モル以上が好ましく、0.60モル以上がより好ましく、0.80モル以上が更に好ましい。(b)成分の配合量は、放電特性及びサイクル特性が更に向上しやすくなる観点から、(a)成分1.00モルに対して、1.30モル以下が好ましく、1.20モル以下がより好ましく、1.00モル以下が更に好ましい。
[(c)成分:ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体]
ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン(例えばホルムアルデヒド37質量%の水溶液)中のホルムアルデヒドを用いてもよい。ホルムアルデヒド誘導体としては、例えば、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン及びトリオキサンが挙げられる。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド誘導体とを併用してもよい。
ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン(例えばホルムアルデヒド37質量%の水溶液)中のホルムアルデヒドを用いてもよい。ホルムアルデヒド誘導体としては、例えば、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン及びトリオキサンが挙げられる。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド誘導体とを併用してもよい。
(c)成分としては、優れたサイクル特性が得られやすくなる観点から、ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、パラホルムアルデヒドがより好ましい。パラホルムアルデヒドは、例えば下記一般式(II)のような構造を有する。
ビスフェノール系樹脂を得るための(c)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、(b)成分の反応性が向上する観点から、(a)成分1モルに対して、2モル以上が好ましく、2.2モル以上がより好ましく、2.5モル以上が更に好ましい。(c)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、得られるビスフェノール系樹脂の溶媒への溶解性に優れる観点から、(a)成分1モルに対して、3.5モル以下が好ましく、3.2モル以下がより好ましく、3モル以下が更に好ましい。
[溶媒]
本実施形態に係る樹脂組成物は、溶媒を更に含んでいてもよい。溶媒としては、例えば水(例えばイオン交換水)及び有機溶媒が挙げられる。樹脂組成物に含まれる溶媒は、ビスフェノール系樹脂を得るために用いた反応溶媒であってもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、溶媒を更に含んでいてもよい。溶媒としては、例えば水(例えばイオン交換水)及び有機溶媒が挙げられる。樹脂組成物に含まれる溶媒は、ビスフェノール系樹脂を得るために用いた反応溶媒であってもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、ビスフェノール系樹脂以外の天然樹脂又は合成樹脂を更に含有していてもよい。
本発明の樹脂粉末を構成するビスフェノール系樹脂は、例えば、下記式(III)で表される構造単位、及び、下記式(IV)で表される構造単位の少なくとも一方を有することが好ましい。
式(III)で表される構造単位、及び、式(IV)で表される構造単位の比率は、特に制限はなく、合成条件等によって変化し得る。ビスフェノール系樹脂としては、式(III)で表される構造単位、及び、式(IV)で表される構造単位のいずれか一方のみを有する樹脂を用いてもよい。
X3及びX4としては、例えば、アルキリデン基(メチリデン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、sec−ブチリデン基等)、シクロアルキリデン基(シクロヘキシリデン基等)、フェニルアルキリデン基(ジフェニルメチリデン基、フェニルエチリデン基等)及びスルホニル基が挙げられ、放電特性及びサイクル特性に更に優れる観点から、イソプロピリデン基(−C(CH3)2−)、スルホニル基(−SO2−)が好ましく、イソプロピリデン基とスルホニル基を組合わせて用いることがより好ましい。X3及びX4はフッ素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。X3及びX4がシクロアルキリデン基である場合、炭化水素環はアルキル基等により置換されていてもよい。
R31、R33、R34、R41、R43及びR44のアルカリ金属としては、例えばナトリウム及びカリウムが挙げられる。n31及びn41は、サイクル特性及び溶媒への溶解性に更に優れる観点から、5〜300が好ましい。n32及びn42は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、1又は2が好ましく、1がより好ましい。n33及びn43は、製造条件により変化するが、サイクル特性に更に優れると共にビスフェノール系樹脂の保存安定性に優れる観点から、0が好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物におけるビスフェノール系樹脂粉末の含有量は、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、樹脂組成物における不揮発分の全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。
本発明の樹脂粉末を構成するビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、鉛蓄電池において電極からビスフェノール系樹脂が電解液に溶出することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、10000以上が好ましく、15000以上がより好ましく、20000以上が更に好ましい。ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、電極活物質に対する吸着性が低下することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、300000以下が好ましく、250000以下がより好ましく、200000以下が更に好ましい。
本発明の樹脂粉末を構成するビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、例えば、下記条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定することができる。(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物における未反応成分(残存成分)の含有量は、サイクル特性が更に向上する観点から、樹脂組成物の全質量を基準として、1質量%以下が好ましく、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましい。未反応成分の含有量は、例えば、樹脂組成物を乾燥処理することにより低減することができる。未反応成分の含有量は、例えばガスクロマトグラフィーにより測定できる。
本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末を含有する組成物における水分量は、品質管理及び操作性に優れる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。同様の観点から、水分量は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。水分量は、例えばカールフィッシャー滴定により測定できる。
本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末の製造方法は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を反応させてビスフェノール系樹脂を得る樹脂製造工程を備えている。本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末を含有する組成物は、樹脂粉末製造工程において得られる組成物であってもよく、樹脂粉末製造工程後にビスフェノール系樹脂粉末と他の成分とを混合して得られる組成物であってもよい。
ビスフェノール系樹脂は、例えば、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を反応溶媒中で反応させることにより得ることができる。反応溶媒は、水(例えばイオン交換水)であることが好ましい。反応を促進させるために、有機溶媒、触媒、添加剤等を用いてもよい。
樹脂製造工程は、サイクル特性が更に向上する観点から、(b)成分の配合量が(a)成分1モルに対して0.5〜1.5モルであり、且つ、(c)成分の配合量が(a)成分1モルに対してホルムアルデヒド換算で2.5〜3モルである態様が好ましい。(b)成分及び(c)成分の好ましい配合量は、(b)成分及び(c)成分の配合量のそれぞれについて上述した範囲である。
本実施形態に係る樹脂粉末を構成するビスフェノール系樹脂は、充分量のビスフェノール系樹脂が得られやすい観点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を塩基性条件(アルカリ性条件)で反応させることにより得ることが好ましい。塩基性条件に調整するためには、塩基性化合物を用いてもよい。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。塩基性化合物の中でも、反応性に優れる観点から、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。
(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する反応溶液が反応開始時において中性(pH=7)である場合、ビスフェノール系樹脂の生成反応が進行しにくい場合があり、反応溶液が酸性(pH<7)である場合、副反応が進行する場合がある。そのため、反応開始時の反応溶液のpHは、ビスフェノール系樹脂の生成反応を進行させつつ副反応が進行することを抑制する観点から、アルカリ性である(7を超える)ことが好ましく、7.1以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、8.5以上が特に好ましい。反応溶液のpHは、ビスフェノール系樹脂の(b)成分に由来する基の加水分解が進行することを抑制する観点から、14以下が好ましく、13以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。反応溶液のpHは、例えばアズワン株式会社製のTwin pHで測定することができる。pHは25℃におけるpHと定義する。
上記のようなpHに調整しやすいことから、強塩基性化合物を配合することが好ましい。強塩基性化合物の配合量は、(b)成分に含まれるスルホ基1モルに対して、1.01モル以上が好ましく、1.02モル以上がより好ましく、1.05モル以上が更に好ましい。同様の観点から、強塩基性化合物の配合量は、(b)成分に含まれるスルホ基1モルに対して、1.5モル以下が好ましく、1.3モル以下がより好ましく、1.2モル以下が更に好ましい。強塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。
本実施形態では、ビスフェノール系樹脂の製造方法により得られる反応物(反応溶液)をそのまま、後述する電極の製造に用いてもよいが、反応物を乾燥して得られるビスフェノール系樹脂粉末を溶媒(水等)に溶解させて、後述する電極の製造に用いることが好ましい。
乾燥方法としては,たとえば凍結乾燥、真空乾燥、スプレードライ、加熱乾燥などがあげられる。ビスフェノール系樹脂を早く、大量に処理する目的から加熱乾燥やスプレードライが好ましく、熱ストレスを少なくする目的と乾燥後のビスフェノール系樹脂の形状を流動性の高い球形に保つ目的から、スプレードライがさらに好ましい。
上記スプレードライ等の乾燥方法において得られたビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径は、1〜1000μmであることが好ましい。1000μm以上になると、水への溶解性が低下する。1μm以下になると、取り扱い時に飛散し、また帯電し易く周囲への付着が多くなる。また、平均粒径が小さいほど、水に溶解する時にママコ(塊り)を発生しやすくなり、取り扱い性が著しく悪くなる。これらの観点から,ビスフェノール系樹脂の粒径は1〜1000μmであると好ましく、5〜500μmであるとさらに好ましく、粉末で鉛粒子と混練する際の取り扱い性の観点から10〜250μmであるとさらに好ましい。
ビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱方式流動分布測定装置を用い、分散媒としてポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の界面活性剤を添加した水溶液に樹脂粉末試料を均一に分散して測定できる。具体的には、マイクロトラック法によるレーザーの散乱光を解析して得られる微粒子の総体積を100%として累積カーブを求め、小粒径側からの累積カーブが50%となる点の粒径(メジアン径、d50)をビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径とする。
樹脂組成物(例えば25℃において液状の樹脂溶液)のpHは、後述する電池作製プロセスにおいて、ビスフェノール系樹脂の溶媒(水等)への溶解性に優れると共に、電極活物質(鉛、酸化鉛等)などへの樹脂組成物の濡れ性に優れる観点から、アルカリ性である(7を超える)ことが好ましく、7.1以上がより好ましい。樹脂組成物のpHは、ビスフェノール系樹脂の溶媒(水等)への溶解性に更に優れる観点から、7.5以上が好ましい。樹脂組成物のpHは、電極活物質(鉛、酸化鉛等)などへの樹脂組成物の濡れ性に更に優れる観点から、8以上が好ましい。樹脂組成物のpHは、ビスフェノール系樹脂の(b)成分に由来する基の加水分解を低減できる観点から、14以下が好ましく、13.5以下がより好ましく、13以下が更に好ましい。樹脂組成物のpHは、電極活物質(鉛、酸化鉛等)などへの樹脂組成物の濡れ性に更に優れる観点から、12以下が好ましい。特に、ビスフェノール系樹脂を5質量%の水溶液(例えば、イオン交換水を含む水溶液)に調整したときのpHが上記範囲であることが好ましい。また、樹脂製造工程において得られる組成物を樹脂組成物として用いる場合、樹脂組成物のpHは、上記範囲であることが好ましい。樹脂組成物のpHは、例えばアズワン株式会社製のTwin pHで測定することができる。pHは25℃におけるpHと定義する。樹脂組成物のpHは、例えば、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整することができる。
ビスフェノール系樹脂の合成反応は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分が反応してビスフェノール系樹脂が得られればよく、例えば、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を同時に反応させてもよく、(a)成分、(b)成分及び(c)成分のうちの2成分を反応させた後に残りの1成分を反応させてもよい。
ビスフェノール系樹脂の合成反応は、次のように二段階で行うことが好ましい。第一段階の反応では、例えば、(b)成分、溶媒(水等)及び塩基性化合物(例えば強塩基性化合物)を仕込んだ後に攪拌し、(b)成分におけるスルホ基の水素原子をアルカリ金属等で置換して(b)成分のアルカリ金属塩等を得る。これにより、後述の縮合反応において副反応を抑制しやすくなる。反応系の温度は、(b)成分の溶媒(水等)への溶解性に優れる観点から、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。反応系の温度は、副反応を抑制する観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましい。反応時間は、例えば5〜30分である。
第二段階の反応では、例えば、第一段階で得られた反応物に(c)成分を加え、混合物が透明の均一系になるまで5〜30分間撹拌した後、混合物に(a)成分を加えて縮合反応させることによりビスフェノール系樹脂を得る。反応系の温度は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応性に優れる観点から、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましく、95℃以上が更に好ましい。反応系の温度は、反応溶媒(例えば水)が蒸発することを抑制する観点から、120℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましい。反応時間は、例えば1〜10時間である。
このようにして得られた反応物を乾燥して溶媒(水等)及び未反応の(c)成分などを除去することによりビスフェノール系樹脂が得られる。乾燥方法としては、特に限定されないが、ビスフェノール系樹脂の自己硬化反応を防ぎ,また粒径分布を均一に保つ観点から、ビスフェノール系樹脂の温度が100℃以下となる方法が好ましい。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、凍結乾燥及びスプレードライ乾燥が挙げられるが、本発明においてはスプレードライ乾燥が好ましい。
<電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法>
本実施形態に係る電極は、電極活物質と、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末、又は、当該ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物と、を用いて製造される。本実施形態に係る電極の製造方法は、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂の製造方法により得られたビスフェノール系樹脂粉末を用いて電極を製造する工程を備える。電極は、例えば、電極活物質等を含む電極層と、当該電極層を支持する集電体とを有している。電極は、例えば、鉛蓄電池用の負極(負極板等)である。
本実施形態に係る電極は、電極活物質と、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末、又は、当該ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物と、を用いて製造される。本実施形態に係る電極の製造方法は、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂の製造方法により得られたビスフェノール系樹脂粉末を用いて電極を製造する工程を備える。電極は、例えば、電極活物質等を含む電極層と、当該電極層を支持する集電体とを有している。電極は、例えば、鉛蓄電池用の負極(負極板等)である。
本実施形態に係る鉛蓄電池は、本実施形態に係る電極を備えている。本実施形態に係る鉛蓄電池としては、例えば液式鉛蓄電池及び密閉式鉛蓄電池が挙げられ、液式鉛蓄電池が好ましい。本実施形態に係る鉛蓄電池の製造方法は、例えば、本実施形態に係る電極の製造方法により電極を得る電極製造工程と、電極を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池を得る組み立て工程とを備えている。
電極製造工程では、例えば、電極ペーストを集電体(例えば集電体格子)に充填した後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極を得る。電極ペーストは、例えば、電極活物質及びビスフェノール系樹脂粉末を含んでおり、その他の所定の添加剤等を更に含有していてもよい。電極が負極である場合、負極活物質は鉛粉(PbO)であることが好ましい。添加剤としては、例えば、硫酸バリウム、炭素材料及び補強用短繊維(アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等)が挙げられる。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック及び黒鉛が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びケッチェンブラックが挙げられる。
本実施形態に係る電極が負極である場合、負極ペーストは、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、鉛粉に、ビスフェノール系樹脂粉末又は当該ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物、及び、必要に応じて添加剤を添加して混合することにより混合物を得る。次に、この混合物に、希硫酸及び溶媒(水等)を加えて混練することにより負極ペーストが得られる。
負極ペーストにおいて、硫酸バリウムを用いる場合、硫酸バリウムの配合量は、負極活物質の全質量を基準として0.01〜1質量%が好ましい。また、炭素材料を用いる場合、炭素材料の配合量は、負極活物質の全質量を基準として0.2〜1.4質量%が好ましい。本実施形態に係るビスフェノール系樹脂粉末又は当該ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物の配合量は、負極活物質の全質量を基準として、樹脂固形分換算で、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%が更に好ましい。
集電体の材質としては、例えば、鉛−カルシウム−錫合金、鉛−カルシウム合金、及び、これらに砒素、セレン、銀、ビスマス等を微量添加した合金が挙げられる。
熟成条件としては、温度35〜85℃、湿度50〜98RH%の雰囲気で15〜60時間が好ましい。乾燥条件としては、温度45〜80℃で15〜30時間が好ましい。
本実施形態に係る電極が負極である場合、鉛蓄電池用の正極(正極板等)は、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、電極活物質である鉛粉(PbO)に対して、補強用短繊維を加えた後、水及び希硫酸を加える。これを混練して正極ペーストを作製する。正極ペーストを作製するに際しては、鉛丹(Pb3O4)を加えてもよい。この正極ペーストを集電体(例えば集電体格子)に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の正極が得られる。正極ペーストにおいて、補強用短繊維の配合量は、鉛粉の全質量を基準として0.005〜0.3質量%が好ましい。集電体の種類、熟成条件、乾燥条件は、負極の場合とほぼ同様である。
組み立て工程では、例えば、上記のように作製した負極及び正極を、セパレータを介して交互に積層し、同極性の極板同士をストラップで連結させて極板群を得る。この極板群を電槽内に配置して未化成電池を作製する。次に、未化成電池に希硫酸を入れて化成処理を行う。続いて、希硫酸を一度抜いた後、電解液(硫酸等)を入れることにより鉛蓄電池が得られる。硫酸の比重(20℃換算)は1.25〜1.35が好ましい。
セパレータの材質としては、例えば、ポリエチレン及びガラス繊維が挙げられる。なお、化成条件、及び、硫酸の比重は電極活物質の性状に応じて調整することができる。また、化成処理は、組み立て工程において実施されることに限られず、電極製造工程において実施されてもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
<負極板の作製>
[実施例1]
ジムロート、メカニカルスターラー及び温度計を装着した500mLセパラブルフラスコに25wt%水酸化ナトリウム水溶液39.4質量部及びイオン交換水137.8質量部を加えた後、150rpmで5分間撹拌して水酸化ナトリウム水溶液を調製した。この水酸化ナトリウム水溶液に5−アミノ1−ナフタレンスルホン酸22.3質量部を加えて25℃にて10分間撹拌することにより、均一の水溶液を得た。この水溶液にパラホルムアルデヒド9.6質量部(ホルムアルデヒド換算)を加えた後に5分間撹拌してパラホルムアルデヒドを溶解し、均一の水溶液を得た。この水溶液にビスフェノールA22.8質量部を加えた後、115℃に設定したオイルバスを用いて加熱し、フラスコ内の温度が95度に到達してから5時間撹拌した。得られた反応溶液をスプレードライ方法にて乾燥し、樹脂粉末を作製した。
スプレードライ条件を以下に示す。
メーカ型番:TR160(乾燥室内径φ1600mm) (プリス製)
システムフロー:オープンサイクルシステム
噴霧方式:アトマイザーディスク方式
製品捕集方式:2点捕集方式(本体下、サイクロン下)
サンプル送液量:1.8 kg/h
入口温度:180℃
出口温度:110℃
アトマイザー回転数:4,000〜10,000 rpm
熱風送風量:3 m3/min
[実施例1]
ジムロート、メカニカルスターラー及び温度計を装着した500mLセパラブルフラスコに25wt%水酸化ナトリウム水溶液39.4質量部及びイオン交換水137.8質量部を加えた後、150rpmで5分間撹拌して水酸化ナトリウム水溶液を調製した。この水酸化ナトリウム水溶液に5−アミノ1−ナフタレンスルホン酸22.3質量部を加えて25℃にて10分間撹拌することにより、均一の水溶液を得た。この水溶液にパラホルムアルデヒド9.6質量部(ホルムアルデヒド換算)を加えた後に5分間撹拌してパラホルムアルデヒドを溶解し、均一の水溶液を得た。この水溶液にビスフェノールA22.8質量部を加えた後、115℃に設定したオイルバスを用いて加熱し、フラスコ内の温度が95度に到達してから5時間撹拌した。得られた反応溶液をスプレードライ方法にて乾燥し、樹脂粉末を作製した。
スプレードライ条件を以下に示す。
メーカ型番:TR160(乾燥室内径φ1600mm) (プリス製)
システムフロー:オープンサイクルシステム
噴霧方式:アトマイザーディスク方式
製品捕集方式:2点捕集方式(本体下、サイクロン下)
サンプル送液量:1.8 kg/h
入口温度:180℃
出口温度:110℃
アトマイザー回転数:4,000〜10,000 rpm
熱風送風量:3 m3/min
実施例1で得られたビスフェノール系樹脂粉末の1H−NMRスペクトルを下記条件で測定した。1H−NMRスペクトルの測定結果を図1に示す。
装置:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)
重溶媒:DMSO−d6
図1の1H−NMRスペクトルから、実施例1のビスフェノール樹脂粉末は、上記式(III)で表される構造単位及び上記式(IV)で表される構造単位の少なくともどちらかを有することが確認された。
装置:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)
重溶媒:DMSO−d6
図1の1H−NMRスペクトルから、実施例1のビスフェノール樹脂粉末は、上記式(III)で表される構造単位及び上記式(IV)で表される構造単位の少なくともどちらかを有することが確認された。
実施例1で得られたビスフェノール系樹脂粉末の重量平均分子量を下記条件のGPCにより測定した。GPCを用いて測定される重量平均分子量は90000であった。
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(5000)、TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(5000)、TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
実施例1で得られたビスフェノール系樹脂粉末を5質量%含有する水溶液のpHを記の測定条件で測定した。
試験機:Twin pH(アズワン株式会社製)
校正液:pH6.86(25℃)、pH4.01(25℃)
測定温度:25℃
測定手順:校正液を用いて2点校正を行った。試験機のセンサ部の洗浄を行った後、測定溶液をスポイトで吸い取り、センサ部に0.1〜0.3mLを滴下した。画面上に測定終了の表示が現れたときのpHを測定値とした。
試験機:Twin pH(アズワン株式会社製)
校正液:pH6.86(25℃)、pH4.01(25℃)
測定温度:25℃
測定手順:校正液を用いて2点校正を行った。試験機のセンサ部の洗浄を行った後、測定溶液をスポイトで吸い取り、センサ部に0.1〜0.3mLを滴下した。画面上に測定終了の表示が現れたときのpHを測定値とした。
実施例1で得られたビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径(μm)は、日機装製のレーザー回折散乱方式流動分布測定装置を用い、分散媒としてポリオキシエチレンクミルフェニルエーテルの0.5質量%の水溶液に樹脂粉末試料を均一に分散して測定し、メジアン径(d50)として求めた。
鉛粉の全質量を基準として、ビスフェノール系樹脂粉末0.2質量%と、ファーネスブラック0.2質量%と、硫酸バリウム1.0質量%とを鉛粉に対して添加した後に乾式混合した。次に、希硫酸(比重1.26(20℃換算))及び水を加えながら混練して負極ペーストを作製した。負極ペーストを厚さ0.6mmのエキスパンド集電体(鉛−カルシウム−錫合金)に充填して負極板を作製した。負極板を通常の方法に従い、温度50℃、湿度95%の雰囲気下に18時間放置して熟成した後、温度50℃の雰囲気下で乾燥して未化成負極板を得た。
[実施例2〜3]
スプレードライ方法による乾燥条件を調整することによりビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径を変更したこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。また、実施例1と同様に、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量、ビスフェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpH、及び平均粒径をそれぞれ測定した。なお、表1中、パラホルムアルデヒドの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
スプレードライ方法による乾燥条件を調整することによりビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径を変更したこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。また、実施例1と同様に、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量、ビスフェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpH、及び平均粒径をそれぞれ測定した。なお、表1中、パラホルムアルデヒドの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
[実施例4〜6]
ビスフェノール系樹脂を得るための成分を下記の表1に示す成分へ変更したこと、さらに、スプレードライ方法による乾燥条件を調整することによりビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径を変更したこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。また、実施例1と同様に、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量、ビスフェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpH、及び平均粒径をそれぞれ測定した。なお、表1中、パラホルムアルデヒドの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
ビスフェノール系樹脂を得るための成分を下記の表1に示す成分へ変更したこと、さらに、スプレードライ方法による乾燥条件を調整することによりビスフェノール系樹脂粉末の平均粒径を変更したこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。また、実施例1と同様に、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量、ビスフェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpH、及び平均粒径をそれぞれ測定した。なお、表1中、パラホルムアルデヒドの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
[比較例1]
ビスフェノール系樹脂を得るための成分を表1に示す成分へ変更したこと、スプレードライ法による乾燥工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。また、実施例1と同様に、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量、ビスフェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpH、及び平均粒径をそれぞれ測定した。表1中、37質量%ホルマリンの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
ビスフェノール系樹脂を得るための成分を表1に示す成分へ変更したこと、スプレードライ法による乾燥工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法により負極板を得た。また、実施例1と同様に、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量、ビスフェノール系樹脂を5質量%含有する水溶液のpH、及び平均粒径をそれぞれ測定した。表1中、37質量%ホルマリンの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
<正極板の作製>
鉛粉の全質量を基準として0.01質量%のカットファイバー(ポリエチレン繊維)を鉛粉に対して添加した後に乾式混合した。次に、希硫酸(比重1.26(20℃換算))及び水を加えて混練して正極ペーストを作製した。鋳造格子体からなる正極集電体(鉛−カルシウム−錫合金)に正極ペーストを充填して、温度50℃、湿度95%の雰囲気下に18時間放置して熟成した後、温度50℃の雰囲気下で乾燥して未化成正極板を得た。
鉛粉の全質量を基準として0.01質量%のカットファイバー(ポリエチレン繊維)を鉛粉に対して添加した後に乾式混合した。次に、希硫酸(比重1.26(20℃換算))及び水を加えて混練して正極ペーストを作製した。鋳造格子体からなる正極集電体(鉛−カルシウム−錫合金)に正極ペーストを充填して、温度50℃、湿度95%の雰囲気下に18時間放置して熟成した後、温度50℃の雰囲気下で乾燥して未化成正極板を得た。
<電池の組み立て>
未化成負極板及び未化成正極板が交互に積層されるように、ポリエチレン製のセパレータを介して6枚の未化成負極板及び5枚の未化成正極板を積層した後に、同極性の極板同士をストラップで連結させて極板群を作製した。極板群を電槽に挿入して2V単セル電池を組み立てた。この電池に希硫酸(比重1.28(20℃換算))を注液した後に、50℃の水槽中、通電電流1.0Aで15時間の条件で化成した。そして、希硫酸を排出した後に、再び比重1.28(20℃換算)の希硫酸を注入して鉛蓄電池を得た。
未化成負極板及び未化成正極板が交互に積層されるように、ポリエチレン製のセパレータを介して6枚の未化成負極板及び5枚の未化成正極板を積層した後に、同極性の極板同士をストラップで連結させて極板群を作製した。極板群を電槽に挿入して2V単セル電池を組み立てた。この電池に希硫酸(比重1.28(20℃換算))を注液した後に、50℃の水槽中、通電電流1.0Aで15時間の条件で化成した。そして、希硫酸を排出した後に、再び比重1.28(20℃換算)の希硫酸を注入して鉛蓄電池を得た。
<電池特性の評価>
上記の2V単セル電池について、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性を下記のとおり測定した。比較例1の充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性の測定結果をそれぞれ100とし、各特性を相対評価した。結果を表1に示す。
上記の2V単セル電池について、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性を下記のとおり測定した。比較例1の充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性の測定結果をそれぞれ100とし、各特性を相対評価した。結果を表1に示す。
(充電受け入れ性)
充電受け入れ性として、電池の充電状態(State of charge)が90%になった状態、つまり、満充電状態から電池容量の10%を放電し、2.33Vで定電圧充電した際の5秒後の電流値を測定した。5秒後の電流値が大きいほど初期の充電受け入れ性が良い電池であると評価される。
充電受け入れ性として、電池の充電状態(State of charge)が90%になった状態、つまり、満充電状態から電池容量の10%を放電し、2.33Vで定電圧充電した際の5秒後の電流値を測定した。5秒後の電流値が大きいほど初期の充電受け入れ性が良い電池であると評価される。
(放電特性)
放電特性として、−15℃において5Cで定電流放電し、電池電圧が1.0Vに達するまでの放電持続時間を測定した。放電持続時間が長いほど放電特性に優れる電池であると評価される。なお、前記Cとは、“放電電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。
放電特性として、−15℃において5Cで定電流放電し、電池電圧が1.0Vに達するまでの放電持続時間を測定した。放電持続時間が長いほど放電特性に優れる電池であると評価される。なお、前記Cとは、“放電電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。
(サイクル特性)
サイクル特性は、日本工業規格の軽負荷寿命試験(JIS D 5301)に準じた方法で評価した。サイクル数が大きいほど耐久性が高い電池であると評価される。
サイクル特性は、日本工業規格の軽負荷寿命試験(JIS D 5301)に準じた方法で評価した。サイクル数が大きいほど耐久性が高い電池であると評価される。
(保存安定性の評価)
保存安定性は次の手順により評価した。φ30×65のガラス容器に樹脂溶液30mLを入れた後、恒温槽を用いて40℃で保管した。そして、1ヶ月毎に、この樹脂溶液を用いて前記2V単セル電池を作製し前記電池特性を測定した。電池特性として、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性を前記と同様に手法により評価した。保管前に比べて、充電受け入れ性が2%減少、放電特性が2%減少、又は、サイクル特性が10%減少した時点を保存可能限界であるとして評価した。結果を下記の表1に示す。
保存安定性は次の手順により評価した。φ30×65のガラス容器に樹脂溶液30mLを入れた後、恒温槽を用いて40℃で保管した。そして、1ヶ月毎に、この樹脂溶液を用いて前記2V単セル電池を作製し前記電池特性を測定した。電池特性として、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性を前記と同様に手法により評価した。保管前に比べて、充電受け入れ性が2%減少、放電特性が2%減少、又は、サイクル特性が10%減少した時点を保存可能限界であるとして評価した。結果を下記の表1に示す。
実施例では、ビスフェノール系樹脂粉末を使用し、さらに、その平均粒径を制御することにより、比較例と比べてサイクル特性が大きく向上し、保存安定性にも優れていることが確認できる。また、充電受け入れ性及び放電特性についても、比較例1とほぼ同等の水準に留まっており、例えばISS車両用途としての性能を充分満足できることが確認できる。このように、実施例は、優れた充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性が両立されていることが確認できる。
本発明によれば、鉛蓄電池において優れたサイクル特性を得ることが可能なビスフェノール系樹脂粉末及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記ビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、電極活物質と前記ビスフェノール系樹脂とを用いて製造される電極及び鉛蓄電池、並びに、これらの製造方法を提供することができる。
Claims (13)
- (a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られるビスフェノール系樹脂粉末。
- 平均粒径が10〜250μmであることを特徴をする、請求項1に記載のビスフェノール系樹脂粉末。
- 前記(a)成分が、ビスフェノールAとビスフェノールSからなる、請求項1又は2に記載のビスフェノール系樹脂粉末。
- 重量平均分子量が10000〜300000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビスフェノール系樹脂粉末。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のビスフェノール系樹脂粉末を含有する樹脂組成物。
- pHが7を超え14以下である請求項5に記載の樹脂組成物。
- 電極活物質と、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビスフェノール系樹脂粉末とを有する電極。
- 請求項7に記載の電極を備える、鉛蓄電池。
- (a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させる工程を備える、ビスフェノール系樹脂粉末の製造方法。
- 前記(b)成分の配合量が前記(a)成分1モルに対して0.5〜1モルであり、前記(c)成分の配合量が前記(a)成分1モルに対してホルムアルデヒド換算で2.5〜3モルである、請求項9に記載のビスフェノール系樹脂粉末の製造方法。
- 前記(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させる工程、及び前記反応工程で得られる反応物を乾燥して平均粒径が10〜250μmである粉末を作製する工程を備える、請求項9又は10に記載のビスフェノール系樹脂粉末の製造方法。
- 電極活物質と、請求項9〜11のいずれか一項に記載のビスフェノール系樹脂粉末の製造方法により得られたビスフェノール系樹脂粉末と、を用いて電極を製造する工程を備える、電極の製造方法。
- 請求項12に記載の電極の製造方法により電極を得る工程を備える、鉛蓄電池の製造方法。
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JP2016044391A JP2017160303A (ja) | 2016-03-08 | 2016-03-08 | ビスフェノール系樹脂粉末、電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法、並びに樹脂組成物 |
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- 2016-03-08 JP JP2016044391A patent/JP2017160303A/ja active Pending
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