JP2017160304A - ビスフェノール系樹脂、電極、鉛蓄電池及びこれらの製造方法、並びに、樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、鉛蓄電池の電極を得るための材料に対しては、水溶液での保存安定性に優れることが求められている。
本発明者らは、前記特許文献1に開示されている技術のホルムアルデヒドにパラホルムアルデヒドを適用した場合について検討した結果、ある条件下で縮合物の水溶液での保存安定性が低下することを見出した。
本実施形態に係るビスフェノール系樹脂は、(a)ビスフェノール系化合物(以下、場合により「(a)成分」という)と、(b)アミノベンゼンスルホン酸及びアミノベンゼンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(b)成分」という)と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、場合により「(c)成分」という)と、を反応させて得られる。
ビスフェノール系化合物は、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ビスフェノール系化合物としては、充電受け入れ性に更に優れる観点からはビスフェノールAが好ましく、放電特性に更に優れる観点からはビスフェノールSが好ましい。
アミノベンゼンスルホン酸としては、2−アミノベンゼンスルホン酸(別名オルタニル酸)、3−アミノベンゼンスルホン酸(別名メタニル酸)、4−アミノベンゼンスルホン酸(別名スルファニル酸)等が挙げられる。
ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン(例えばホルムアルデヒド37質量%の水溶液)中のホルムアルデヒドを用いてもよい。ホルムアルデヒド誘導体としては、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン等が挙げられる。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド誘導体とを併用してもよい。
HO(CH2O)nH …(II)[式(II)中、nは2〜100の整数を示す。]
本実施形態に係る樹脂組成物は、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、水(例えばイオン交換水)、有機溶媒等が挙げられる。樹脂組成物に含まれる溶媒は、ビスフェノール系樹脂を得るために用いた反応溶媒であってもよい。
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
[式(VIII)中、X6は、2価の基を示し、R62及びR63は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、n62+n63は、1〜3の整数を示す。]
不揮発分含量(質量%)=[(乾燥後の残分質量)/(乾燥前の樹脂組成物の質量)]×100 ・・・(2)
本実施形態に係る電極は、例えば、電極活物質の原料と、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂、又は、当該ビスフェノール系樹脂を含有する樹脂組成物と、を用いて製造されたものである。本実施形態に係る電極の製造方法は、本実施形態に係るビスフェノール系樹脂の製造方法により得られたビスフェノール系樹脂を用いて電極を製造する工程を備える。また、本実施形態に係る電極は、ビスフェノール系樹脂を含有する樹脂組成物を用いて製造されてもよい。電極が未化成である場合、電極は、例えば、電極活物質の原料等を含む電極層と、当該電極層を支持する集電体とを有している。化成後の電極は、例えば、電極活物質等を含む電極層と、当該電極層を支持する集電体とを有している。電極は、例えば、鉛蓄電池用の負極(負極板等)である。
[実施例1]
攪拌装置、還流装置及び温度調節装置を備えた反応容器に下記の各成分を仕込み第1の混合液を得た。
水酸化ナトリウム:1.05モル〔42.0質量部〕
イオン交換水:44.0モル〔792.6質量部〕
4−アミノベンゼンスルホン酸:1.00モル〔173.2質量部〕
ビスフェノールA:0.96モル〔219.2質量部〕
ビスフェノールS:0.04モル〔10.4質量部〕
パラホルムアルデヒド(三井化学株式会社製):2.50モル[75.8質量部〕(ホルムアルデヒド換算)
樹脂溶液の構成成分を下記の表1に示す成分へ変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例2〜6及び比較例1〜3のビスフェノール系樹脂及び樹脂溶液を得た。なお、表1中、37質量%ホルマリンの配合量は、ホルムアルデヒド換算の配合量である。
[構造単位の含有量の測定]
単離されたビスフェノール系樹脂について、前記式(I)〜(IV)で表される構造単位の含有量を、1H−NMRスペクトルにおけるビスフェノールAのメチル基由来の0.1〜2.3ppmのピーク積分値に対する、メチロール基やベンゾオキサジン環に由来する4.3〜4.8ppmのピーク積分値の比から求めた。NMR条件は下記のとおりである。「積分値比」と表示して結果を表1に示す。(NMR条件)
装置:AV400M(ブルカーバイオスピン株式会社製)
測定温度:室温(25℃)
測定溶媒:DMSO−d6(和光純薬工業株式会社)
樹脂溶液の不揮発分含量を下記の手順により測定した。まず、50φ×15mmの容器(ステンレスシャーレ)に樹脂溶液2gを入れ、150℃で60分間熱風乾燥機を用いて乾燥させた。次に、容器の温度が室温(25℃)に戻った後、残分質量を測定することにより、前記(2)式に基づいて不揮発分含量を測定した。結果を表1に示す。
反応終了後に樹脂溶液を下記のpH測定装置のセンサー部に500μL注入して樹脂溶液のpHを測定した。結果を表1に示す。(pH測定の条件)
pH測定装置:株式会社堀場製作所製 ツインpHメーター AS−212
校正液:株式会社堀場製作所製 pH校正液(pH4.01、pH6.86)
測定温度:25℃
単離されたビスフェノール系樹脂の重量平均分子量を下記条件のGPCにより測定した。結果を表1に示す。(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
鉛粉の全質量を基準として、樹脂溶液を固形分換算で0.2質量%と、ファーネスブラック0.2質量%と、硫酸バリウム1.0質量%とを鉛粉に対して添加した後に乾式混合した。次に、希硫酸(比重1.26(20℃換算))及び水を加えながら混練して負極活物質ペーストを作製した。負極活物質ペーストを厚さ0.6mmのエキスパンド集電体(鉛−カルシウム−錫系合金)に充填して負極板を作製した。負極板を通常の方法に従い、温度50℃、湿度95%の雰囲気下に18時間放置して熟成した後、温度50℃の雰囲気下で乾燥して未化成負極板を得た。
鉛粉の全質量を基準として0.01質量%の補強用短繊維(ポリエチレン繊維)を鉛粉に対して添加した後に乾式混合した。次に、希硫酸(比重1.26(20℃換算))及び水を加えて混練して正極活物質ペーストを作製した。鋳造格子体からなる正極集電体(鉛−カルシウム−錫合金)に正極活物質ペーストを充填して、温度50℃、湿度95%の雰囲気下に18時間放置して熟成した後、温度50℃の雰囲気下で乾燥して未化成正極板を得た。
袋状に加工したポリエチレン製のセパレータに未化成負極板を挿入した。次に、未化成正極板と、前記袋状セパレータに挿入された未化成負極板とが交互に積層されるように、6枚の未化成負極板及び5枚の未化成正極板を積層した。続いて、キャストオンストラップ(COS)方式で同極性の極板の耳部同士を溶接して極板群を作製した。前記極板群を電槽に挿入して2V単セル電池を組み立てた。この電池に希硫酸(比重1.28(20℃換算))を注液した後に、50℃の水槽中、通電電流10Aで16時間の条件で化成して鉛蓄電池を得た。
前記の2V単セル電池について、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性を下記のとおり測定した。比較例1の充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性の測定結果をそれぞれ100とし、各特性を相対評価した。結果を表1に示す。
充電受け入れ性として、電池の充電状態(State of charge)が90%になった状態、つまり、満充電状態から電池容量の10%を放電し、2.33Vで定電圧充電した際の5秒後の電流値を測定した。5秒後の電流値が大きいほど初期の充電受け入れ性が良い電池であると評価される。
放電特性として、−15℃において5Cで定電流放電し、電池電圧が1.0Vに達するまでの放電持続時間を測定した。放電持続時間が長いほど放電特性に優れる電池であると評価される。なお、前記Cとは、“放電電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。
サイクル特性は、日本工業規格の軽負荷寿命試験(JIS D 5301)に準じた方法で評価した。サイクル数が大きいほど耐久性が高い電池であると評価される。
保存安定性を下記の手順により測定した。φ30×65のガラス容器に樹脂溶液30mLを入れた後、恒温槽を用いて40℃で保管した。そして、1ヶ月毎に、この樹脂溶液を用いて前記2V単セル電池を作製し前記電池特性を測定した。電池特性として、充電受け入れ性、放電特性及びサイクル特性を前記と同様に手法により評価した。保管前に比べて、充電受け入れ性が2%減少、放電特性が2%減少、又は、サイクル特性が10%減少した時点を保存可能限界であるとして評価した。結果を下記の表1に示す。
Claims (12)
- (a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノベンゼンスルホン酸及びアミノベンゼンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られ、 前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応により得られる樹脂の1H−NMRスペクトルにおいて、ビスフェノールAのメチル基に由来するピーク積分値に対するメチロール基やベンゾオキサジン環に由来するピーク積分値の比が0.25以下である、ビスフェノール系樹脂。
- 重量平均分子量が30000〜70000である、請求項1又は2に記載のビスフェノール系樹脂。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のビスフェノール系樹脂を含有する樹脂組成物。
- 不揮発分含量が10〜50質量%である、請求項4に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のビスフェノール系樹脂、又は、請求項4又は5に記載の樹脂組成物を用いて製造された電極。
- 請求項6に記載の電極を備える鉛蓄電池。
- (a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノベンゼンスルホン酸及びアミノベンゼンスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させてビスフェノール系樹脂を得る工程を備え、 前記(a)成分、前記(b)成分及び前記(c)成分の反応により得られる樹脂の1H−NMRスペクトルにおいて、ビスフェノールAのメチル基に由来するピーク積分値に対するメチロール基やベンゾオキサジン環に由来するピーク積分値の比が0.25以下である、ビスフェノール系樹脂の製造方法。
- 前記(b)成分の配合量が前記(a)成分1モルに対して0.5〜1.3モルであり、前記(c)成分の配合量が前記(a)成分1モルに対してホルムアルデヒド換算で2〜3.5モルである、請求項8又は9に記載のビスフェノール系樹脂の製造方法。
- 請求項8〜10のいずれか一項に記載のビスフェノール系樹脂の製造方法により得られたビスフェノール系樹脂を用いて電極を製造する工程を備える、電極の製造方法。
- 請求項11に記載の電極の製造方法により電極を得る工程を備える、鉛蓄電池の製造方法。
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