JP2017079166A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】充電受入性及びISSサイクル特性に優れる鉛蓄電池を提供することを目的とする。【解決手段】正極、負極、及び電解液を備える鉛蓄電池であって、前記負極が負極材と負極集電体とを有し、前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、前記負極集電体は耳部を有し、前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されている、鉛蓄電池。【選択図】なし

Description

本発明は、鉛蓄電池に関するものである。
近年、自動車においては、大気汚染防止又は地球温暖化防止のため、様々な燃費向上対策が検討されている。燃費向上対策を施した自動車としては、例えば、エンジンの動作時間を少なくするアイドリングストップ車(以下、「ISS車」という)、エンジンの回転を無駄なく動力に使用する発電制御車等のマイクロハイブリッド車が検討されている。
ISS車では、エンジンの始動回数が多くなるため、鉛蓄電池の大電流放電が繰り返される。また、ISS車及び発電制御車では、オルタネータによる発電量が少なくなり、鉛蓄電池の充電が間欠的に行われるため充電が不充分となる。
前記のような使われ方をする鉛蓄電池は、PSOC(Partial State Of Charge)と呼ばれる部分充電状態で使用されることになる。鉛蓄電池は、PSOC下で使用されると、満充電状態で使用される場合よりも寿命が短くなる。
更に、ISS車用途の様にPSOC下で間欠的な充電及び大電流放電が繰り返されると負極集電体の耳部は硫酸鉛化し易くなり、前記耳部がやせ細り、耳部破断による突然寿命に至ることが知られている。
これに対し、下記特許文献1には、ISS車用途で使用される場合の電池の負極劣化を遅延させるとともに、耳部破断をそれよりさらに遅延させた、突然寿命にならない長寿命の鉛蓄電池を提供するために、特定の濃度のSnを含有する負極集電体、及び特定の濃度のアルミニウムイオンを含む電解液を用いる技術が開示されている。
特許第4515902号
特許文献1では、負極劣化を遅らせ、それよりも耳部破断による突然寿命を遅らせることで鉛蓄電池の長寿命化を達成できることを開示している。しかしながら、ISS車用途の鉛蓄電池は更なる長寿命化が求められている。
ところで、完全な充電が行われず充電が不足した状態で鉛蓄電池が使用される場合には、電池内の電極(極板等)における上部と下部の間で、電解液である希硫酸の濃淡差が生じる成層化現象が起こる。この場合、電極下部の希硫酸の濃度が高くなりサルフェーションが発生する。そのため、電極下部の反応性が低下し、電極上部のみが集中的に反応するようになる。その結果、活物質間の結びつきが弱くなる等の劣化が進み、電極上部において格子から活物質が剥離して、電池性能低下及び早期寿命に至る。
そのため、最近の自動車用鉛蓄電池においては、PSOC下で使用された場合の電池の寿命性能を向上させるため、充電受入性を向上させることが極めて重要な課題となっている。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、充電受入性に優れ、ISSサイクル特性にも優れる鉛蓄電池を提供することを目的とする。
前記課題に対し、本発明者らは、正極、負極、及び電解液を備える鉛蓄電池において、前記負極が負極材と負極集電体とを有し、前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、前記負極集電体は耳部を有し、前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されていることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明に係る鉛蓄電池は、正極、負極、及び電解液を備える鉛蓄電池において、前記負極が負極材と負極集電体とを有し、前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、前記負極集電体は耳部を有し、前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されている、鉛蓄電池である。
本発明に係る鉛蓄電池によれば、優れた充電受入性を得ることが可能である。従って、特に、初期の状態からある程度の充放電が繰り返されて活物質が充分に活性化した後において、ISS車、マイクロハイブリッド車等では低くなりがちなSOCを適正なレベルに維持することができる。また、本発明に係る鉛蓄電池によれば、充電受入性に優れ、PSOC下で優れたISSサイクル特性を得ることができる。
また、本発明に係る鉛蓄電池によれば、電解液がアルミニウムイオンを含んでいることにより、更に優れた充電受入性、及びPSOC下で優れたISSサイクル特性を得ることができる。
本発明に係る鉛蓄電池によれば、優れた充電受入性を得ることが可能である。また、本発明に係る鉛蓄電池によれば、PSOC下で優れたISSサイクル特性を有する。本発明に係る鉛蓄電池は、充電が間欠的に行われ、PSOC下で負荷への高率放電が行われる液式鉛蓄電池として、ISS車、マイクロハイブリッド車等において好適に用いることができる。
本発明によれば、鉛蓄電池のマイクロハイブリッド車への応用を提供できる。本発明によれば、鉛蓄電池のISS車への応用を提供できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<鉛蓄電池>
本実施形態に係る鉛蓄電池は、例えば、電極(電極板等)、電解液(硫酸等)及びセパレータを備えている。電極は、正極(正極板等)及び負極(負極板等)を有している。本実施形態に係る鉛蓄電池としては、液式鉛蓄電池、制御弁式鉛蓄電池、密閉式鉛蓄電池等が挙げられ、液式鉛蓄電池が好ましい。正極は、集電体(正極集電体)と、当該集電体に保持された正極材と、を有している。負極は、集電体(負極集電体)と、当該集電体に保持された負極材と、を有している。本実施形態において正極材及び負極材は、例えば、化成後(例えば満充電状態)の電極材である。電極材が未化成である場合、電極材(未化正極材及び未化負極材)は、電極活物質(正極活物質及び負極活物質)の原料等を含有している。集電体は、電極材からの電流の導電路を構成する。
(正極材)[正極活物質]
正極材は、正極活物質を含有している。正極活物質は、正極活物質の原料を含む正極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成活物質を得た後に化成することで得ることができる。化成後の正極活物質は、β−二酸化鉛(β−PbO2)を含むことが好ましく、α−二酸化鉛(α−PbO2)を更に含んでいてもよい。正極活物質の原料としては、特に制限はなく、例えば鉛粉が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの紛体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。正極活物質の原料として鉛丹(Pb34)を用いてもよい。未化成の正極材は、主成分として、三塩基性硫酸鉛を含む未化成の正極活物質を含有することが好ましい。
[正極添加剤]
正極材は、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、炭素材料(炭素質導電材)、補強用短繊維等が挙げられる。炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック(ケッチェンブラック等)、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。補強用短繊維としては、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等が挙げられる。
(負極材)[負極活物質]
負極活物質は、負極活物質の原料を含む負極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成活物質を得た後に化成することで得ることができる。化成後の負極活物質としては、海綿状鉛(Spongylead)等が挙げられる。前記海綿状鉛は、電解液中の硫酸と反応して、次第に硫酸鉛(PbSO4)に変わる傾向がある。負極活物質の原料としては、鉛粉等が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの紛体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。未化成の負極材は、例えば、塩基性硫酸鉛及び金属鉛、並びに、低級酸化物から構成される。
[負極添加剤]
負極材は、添加剤を更に含有している。本実施形態に係る鉛蓄電池において、負極材は、(A)ビスフェノール系樹脂を含んでおり、(B)その他の添加剤を含んでいてもよい。(A)ビスフェノール系樹脂としては、例えば、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノ酸、アミノ酸誘導体、アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
以下、前記(A)ビスフェノール系樹脂について詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
<(A)ビスフェノール系樹脂>
((a)成分:ビスフェノール系化合物)
ビスフェノール系化合物は、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール系化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及び、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)が挙げられる。
ビスフェノール系化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ビスフェノール系化合物としては、充電受入性に更に優れる観点からビスフェノールAが好ましく、放電特性に更に優れる観点からビスフェノールSが好ましい。
ビスフェノール系化合物としては、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、ビスフェノールAとビスフェノールSとを併用することが好ましい。この場合、(A)ビスフェノール系樹脂を得るためのビスフェノールAの配合量は、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、ビスフェノールA及びビスフェノールSの合計量を基準として、70mol%以上が好ましく、75mol%以上がより好ましく、80mol%以上が更に好ましい。ビスフェノールAの配合量は、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、ビスフェノールA及びビスフェノールSの合計量を基準として、99mol%以下が好ましく、98mol%以下がより好ましく、97mol%以下が更に好ましい。
((b)成分:アミノ酸、アミノ酸誘導体、アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体)
アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。アミノ酸誘導体としては、例えば、前記アミノ酸のカルボキシル基の水素原子がアルカリ金属で置換されたアルカリ金属塩が挙げられる。アミノ酸及びアミノ酸誘導体の中では、特に、グルタミン酸及びそのアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
アミノアルキルスルホン酸及びアミノアルキルスルホン酸誘導体としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。アミノアルキルスルホン酸としては、例えば、下記一般式(I)においてX1が水素原子である化合物が挙げられる。アミノアルキルスルホン酸誘導体としては、例えば、下記一般式(I)においてX1がアルカリ金属であるアルカリ金属塩が挙げられる。
Figure 2017079166
[式(I)中、R1は、水素原子又は炭化水素基を示し、X1は、アルカリ金属又は水素原子を示し、n1は、0〜3の整数を示す。]
式(I)におけるR1の炭化水素基としては、例えば、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基が挙げられる。直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。環状の炭化水素基としては、例えば、脂環式炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、1以上が好ましい。炭化水素基の炭素数は、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基及びt−ヘキシル基が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば脂環式アルキル基が挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。R1としては、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、水素原子、及び、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
式(I)におけるX1のアルカリ金属としては、例えばナトリウム及びカリウムが挙げられる。X1としては、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、ナトリウムが好ましい。n1としては、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
アミノアルキルスルホン酸としては、例えば、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、及び、2−メチルアミノエタンスルホン酸が挙げられ、2−アミノエタンスルホン酸が好ましい。
アミノアリールスルホン酸としては、例えば、アミノベンゼンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸が挙げられる。アミノアリールスルホン酸誘導体としては、例えば、アミノベンゼンスルホン酸誘導体及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体が挙げられる。
アミノベンゼンスルホン酸としては、例えば、2−アミノベンゼンスルホン酸(別名オルタニル酸)、3−アミノベンゼンスルホン酸(別名メタニル酸)、及び、4−アミノベンゼンスルホン酸(別名スルファニル酸)が挙げられる。
アミノベンゼンスルホン酸誘導体としては、例えば、アミノベンゼンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、及び、アミノベンゼンスルホン酸のスルホ基(−SO3H)の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム又はカリウム)で置換されたアルカリ金属塩が挙げられる。アミノベンゼンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基で置換された化合物としては、例えば、4−(メチルアミノ)ベンゼンスルホン酸、3−メチル−4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−メチルベンゼンスルホン酸、4−(エチルアミノ)ベンゼンスルホン酸、及び、3−(エチルアミノ)−4−メチルベンゼンスルホン酸が挙げられる。アミノベンゼンスルホン酸のスルホ基の水素原子がアルカリ金属で置換されたアルカリ金属塩としては、例えば、2−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−アミノベンゼンスルホン酸カリウム、3−アミノベンゼンスルホン酸カリウム、及び、4−アミノベンゼンスルホン酸カリウムが挙げられる。
アミノナフタレンスルホン酸としては、例えば、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(p−体)、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ana−体)、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸(ε−体、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸)、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ε−体)、6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(amphi−体)、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸、8−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(peri−体)、1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸(kata−体、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸)等のアミノナフタレンモノスルホン酸;1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸等のアミノナフタレンジスルホン酸;7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸等のアミノナフタレントリスルホン酸が挙げられる。
アミノナフタレンスルホン酸誘導体としては、例えば、アミノナフタレンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、及び、アミノナフタレンスルホン酸のスルホ基(−SO3H)の水素原子がアルカリ金属で置換されたアルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、モノアルカリ金属塩及びジアルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
アミノナフタレンスルホン酸及びアミノナフタレンスルホン酸誘導体としては、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。R2のアルカリ金属としては、例えばナトリウム及びカリウムが挙げられる。n2は、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、1又は2が好ましく、1がより好ましい。n2が2又は3である場合、R2は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Figure 2017079166
[式(II)中、R2は、アルカリ金属又は水素原子を示し、n2は、1〜3の整数を示す。]
(b)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(b)成分としては、充電受入性及びサイクル特性が更に向上する観点から、アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体が好ましく、2−アミノエタンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、及び、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
(A)ビスフェノール系樹脂を得るための(b)成分の配合量は、放電特性が更に向上する観点から、(a)成分1molに対して、0.5mol以上が好ましく、0.6mol以上がより好ましく、0.8mol以上が更に好ましく、0.9mol以上が特に好ましい。(b)成分の配合量は、放電特性及びサイクル特性が更に向上しやすくなる観点から、(a)成分1molに対して、1.3mol以下が好ましく、1.2mol以下がより好ましく、1.1mol以下が更に好ましい。
((c)成分:ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体)
ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン(例えばホルムアルデヒド37質量%の水溶液)中のホルムアルデヒドを用いてもよい。ホルムアルデヒド誘導体としては、例えば、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン及びトリオキサンが挙げられる。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド誘導体とを併用してもよい。
(c)成分としては、優れたサイクル特性が得られやすくなる観点から、ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、パラホルムアルデヒドがより好ましい。パラホルムアルデヒドは、例えば下記一般式(III)のような構造を有する。
HO(CH2O)n3H …(III)
[式(III)中、n3は2〜100の整数を示す。]
(A)ビスフェノール系樹脂を得るための(c)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、(b)成分の反応性が向上する観点から、(a)成分1molに対して、2mol以上が好ましく、2.2mol以上がより好ましく、2.4mol以上が更に好ましい。(c)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、(A)ビスフェノール系樹脂の溶媒への溶解性に優れる観点から、(a)成分1molに対して、3.5mol以下が好ましく、3.2mol以下がより好ましく、3mol以下が更に好ましい。
(b)成分としてアミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸又はアミノアリールスルホン酸誘導体を用いる場合、(A)ビスフェノール系樹脂は、下記式(IV)で表される構造単位、及び、下記式(V)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を有することが好ましい。
Figure 2017079166
[式(IV)中、X4は、2価の基を示し、A4は、アルキレン基又はアリーレン基を示し、R41は、アルカリ金属又は水素原子を示し、R42は、メチロール基(−CH2OH)を示し、R43及びR44は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、n41は、1〜600の整数を示し、n42は、1〜3の整数を示し、n43は、0又は1を示す。]
Figure 2017079166
[式(V)中、X5は、2価の基を示し、A5は、アルキレン基又はアリーレン基を示し、R51は、アルカリ金属又は水素原子を示し、R52は、メチロール基(−CH2OH)を示し、R53及びR54は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、n51は、1〜600の整数を示し、n52は、1〜3の整数を示し、n53は、0又は1を示す。]
(b)成分としてアミノ酸又はアミノ酸誘導体を用いる場合、(A)ビスフェノール系樹脂は、下記式(VI)で表される構造単位、及び、下記式(VII)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を有することが好ましい。
Figure 2017079166
[式(VI)中、X6は、2価の基を示し、A6は、アルキレン基又はアリーレン基を示し、R61は、アルカリ金属又は水素原子を示し、R62は、メチロール基(−CH2OH)を示し、R63及びR64は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、n61は、1〜600の整数を示し、n62は、1〜3の整数を示し、n63は、0又は1を示す。]
Figure 2017079166
[式(VII)中、X7は、2価の基を示し、A7は、アルキレン基又はアリーレン基を示し、R71は、アルカリ金属又は水素原子を示し、R72は、メチロール基(−CH2OH)を示し、R73及びR74は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、n71は、1〜600の整数を示し、n72は、1〜3の整数を示し、n73は、0又は1を示す。]
式(IV)で表される構造単位、及び、式(V)で表される構造単位の比率は、特に制限はなく、合成条件等によって変化し得る。(A)ビスフェノール系樹脂としては、式(IV)で表される構造単位、及び、式(V)で表される構造単位のいずれか一方のみを有する樹脂を用いてもよい。式(VI)で表される構造単位、及び、式(VII)で表される構造単位の比率は、特に制限はなく、合成条件等によって変化し得る。(A)ビスフェノール系樹脂としては、式(VI)で表される構造単位、及び、式(VII)で表される構造単位のいずれか一方のみを有する樹脂を用いてもよい。
4、X5、X6及びX7としては、例えば、アルキリデン基(メチリデン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、sec−ブチリデン基等)、シクロアルキリデン基(シクロヘキシリデン基等)、フェニルアルキリデン基(ジフェニルメチリデン基、フェニルエチリデン基等)などの有機基;スルホニル基が挙げられ、充電受入性に更に優れる観点からはイソプロピリデン基(−C(CH32−)基が好ましく、放電特性に更に優れる観点からはスルホニル基(−SO2−)が好ましい。X4、X5、X6及びX7は、フッ素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。X4、X5、X6及びX7がシクロアルキリデン基である場合、炭化水素環はアルキル基等により置換されていてもよい。
4、A5、A6及びA7としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の2価のアリーレン基が挙げられる。前記アリーレン基は、アルキル基等により置換されていてもよい。
41、R43、R44、R51、R53、R54、R61、R63、R64、R71、R73及びR74のアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム及びカリウムが挙げられる。n41、n51、n61及びn71は、サイクル特性及び溶媒への溶解性に更に優れる観点から、5〜300が好ましい。n42、n52、n62及びn72は、充電受入性、放電特性及びサイクル特性がバランス良く向上する観点から、1又は2が好ましく、1がより好ましい。n43、n53、n63及びn73は、製造条件により変化するが、サイクル特性に更に優れるとともに(A)ビスフェノール系樹脂の保存安定性に優れる観点から、0が好ましい。
(A)ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、鉛蓄電池において電極から(A)ビスフェノール系樹脂が電解液に溶出することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、3000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が更に好ましく、30000以上が特に好ましい。(A)ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、電極活物質に対する吸着性が低下して分散性が低下することを抑制することによりサイクル特性が向上しやすくなる観点から、200000以下が好ましく、150000以下がより好ましく、100000以下が更に好ましい。
(A)ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、例えば、下記条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定することができる。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
(A)ビスフェノール系樹脂は、例えば、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を反応溶媒中で反応させることにより得ることができる。反応溶媒は、水(例えばイオン交換水)であることが好ましい。反応を促進させるために、有機溶媒、触媒、添加剤等を用いてもよい。
(A)ビスフェノール系樹脂を得る樹脂製造工程は、サイクル特性が更に向上する観点から、(b)成分の配合量が(a)成分1molに対して0.5〜1.3molであり、且つ、(c)成分の配合量が(a)成分1molに対してホルムアルデヒド換算で2〜3.5molである態様が好ましい。(b)成分及び(c)成分の好ましい配合量は、(b)成分及び(c)成分の配合量のそれぞれについて上述した範囲である。
(A)ビスフェノール系樹脂は、充分量の(A)ビスフェノール系樹脂が得られやすい観点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を塩基性条件(アルカリ性条件)で反応させることにより得ることが好ましい。塩基性条件に調整するためには、塩基性化合物を用いてもよい。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。塩基性化合物の中でも、反応性に優れる観点から、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。
反応時の反応溶液が中性(pH=7)である場合、(A)ビスフェノール系樹脂の生成反応が進行しにくい場合があり、反応溶液が酸性(pH<7)である場合、副反応が進行する場合がある。そのため、反応時の反応溶液のpHは、(A)ビスフェノール系樹脂の生成反応を進行させつつ副反応が進行することを抑制する観点から、アルカリ性である(7を超える)ことが好ましく、7.1以上がより好ましく、7.2以上が更に好ましい。反応溶液のpHは、(A)ビスフェノール系樹脂の(b)成分に由来する基の加水分解が進行することを抑制する観点から、13以下が好ましく、10以下がより好ましく、9以下が更に好ましい。反応溶液のpHは、例えば、アズワン株式会社製のTwin pHで測定することができる。pHは25℃におけるpHと定義する。
前記のようなpHに調整しやすいことから、強塩基性化合物の配合量は、(b)成分1molに対して、1.01mol以上が好ましく、1.02mol以上がより好ましく、1.03mol以上が更に好ましい。同様の観点から、強塩基性化合物の配合量は、(b)成分1molに対して、1.1mol以下が好ましく、1.08mol以下がより好ましく、1.07mol以下が更に好ましい。強塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。
本実施形態では、(A)ビスフェノール系樹脂を製造する際に得られる反応物(反応溶液)をそのまま、後述する電極の製造に用いてもよいし、反応物を乾燥して得られる(A)ビスフェノール系樹脂を溶媒(水等)に溶解させて、後述する電極の製造に用いてもよい。
(A)ビスフェノール系樹脂を含む樹脂溶液(例えば25℃において液状の樹脂溶液)のpHは、(A)ビスフェノール系樹脂の溶媒(水等)への溶解性に優れる観点から、アルカリ性である(7を超える)ことが好ましく、7.1以上がより好ましい。樹脂溶液のpHは、樹脂組成物の保存安定性が向上する観点から、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8.5以下が更に好ましい。特に、樹脂製造工程において得られる反応物を樹脂溶液として用いる場合、樹脂溶液のpHは、前記範囲であることが好ましい。樹脂溶液のpHは、例えば、アズワン株式会社製のTwin pHで測定することができる。pHは25℃におけるpHと定義する。
(A)ビスフェノール系樹脂の合成反応は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分が反応して(A)ビスフェノール系樹脂が得られればよく、例えば、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を同時に反応させてもよく、(a)成分、(b)成分及び(c)成分のうちの2成分を反応させた後に残りの1成分を反応させてもよい。
(A)ビスフェノール系樹脂の合成反応は、次のように二段階で行うことが好ましい。第一段階の反応では、例えば、(b)成分、溶媒(水等)及び塩基性化合物を仕込んだ後に攪拌し、(b)成分におけるスルホ基の水素原子をアルカリ金属等で置換して(b)成分のアルカリ金属塩等を得る。これにより、後述の縮合反応において副反応を抑制しやすくなる。反応系の温度は、(b)成分の溶媒(水等)への溶解性に優れる観点から、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。反応系の温度は、副反応を抑制する観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下が更に好ましい。反応時間は、例えば30分である。
第二段階の反応では、例えば、第一段階で得られた反応物に(a)成分及び(c)成分を加えて縮合反応させることにより(A)ビスフェノール系樹脂を得る。反応系の温度は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応性に優れる観点から、75℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましく、87℃以上が更に好ましい。反応系の温度は、副反応を抑制する観点から、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、93℃以下が更に好ましい。反応時間は、例えば5〜20時間である。
このようにして得られた反応物を乾燥して溶媒(水等)及び未反応の(c)成分などを除去することにより(A)ビスフェノール系樹脂が得られる。乾燥方法としては、特に限定されないが、(A)ビスフェノール系樹脂の自己硬化反応を防ぐ観点から、(A)ビスフェノール系樹脂の温度が100℃以下となる方法が好ましい。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、凍結乾燥及びスプレードライ乾燥が挙げられる。
本発明に係る鉛蓄電池は、負極材が(A)ビスフェノール系樹脂を含むことにより、充電受入性に優れる。更に、本発明に係る鉛蓄電池は、負極材が(A)ビスフェノール系樹脂を含むことにより、負極集電体の耳部が破断しにくくなり、突然寿命になりにくいためISSサイクル特性に優れる。前記負極材が(A)ビスフェノール系樹脂を含むことにより、負極集電体の耳部が破断しにくくなる要因は定かではないが、耳部の電位が硫酸鉛の溶解及び析出の電位よりも高い電位を推移し、耳部が破断しにくくなると推察される。
[(B)その他の添加剤]
負極材は、(B)その他の添加剤を含んでいてもよい。(B)その他の添加剤は、例えば、硫酸バリウム、炭素材料(炭素質導電材)、補強用短繊維等が挙げられる。
[炭素材料(炭素質導電材)]
炭素質導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。炭素質導電材の添加量は、満充電状態の負極活物質(海綿状金属鉛)100質量部に対し0.1〜3質量部が好ましい。充電受入性が向上する観点からは黒鉛が好ましく、更に充電受入性が向上する観点からは鱗片状黒鉛がより好ましい。鱗片状黒鉛の平均一次粒子径は、充電受入性が向上する観点から100μm〜500μmが好ましく、100μm〜350μmがより好ましく、100μm〜220μmが更に好ましい。
ここでいう鱗片状黒鉛とは、JIS M 8601(2005)記載のものを指す。鱗片状黒鉛の電気抵抗率は、0.02Ω・cm以下で、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類の0.1Ω・cm前後より一桁小さい。従って、従来の鉛蓄電池で用いられているカーボンブラック類に替えて鱗片状黒鉛を用いることにより、負極活物質の電気抵抗を下げて、充電受入性能を改善することができる。
ここで、鱗片状黒鉛の平均一次粒子径は、JISM8511(2005)記載のレーザ回折・散乱法に準拠して求める。レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック9220FRA)を用い、分散剤として市販の界面活性剤ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(例えば、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製:トリトンX−100)を0.5vol%含有する水溶液に鱗片状黒鉛試料を適量投入し、撹拌しながら40Wの超音波を180秒照射した後、測定を行なう。求められた平均粒子径(メディアン径:D50)の値を平均一次粒子径とする。
[補強用短繊維]
補強用短繊維は、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等が挙げられる。
(電解液)
電解液は、硫酸及びアルミニウムイオンを含有していることが好ましく、例えば、硫酸及び硫酸アルミニウム粉末を混合することにより得ることができる。電解液中に溶解させる硫酸アルミニウムは、無水物又は水和物として添加することができる。
電解液(アルミニウムイオンを含んでいてもよい)の比重(比重は温度によって変化するため、本明細書においては、20℃で換算した比重と定義する。以下同様である。)は下記の範囲であることが好ましい。電解液の比重は、浸透短絡又は凍結を抑制するとともに放電特性に更に優れる観点から、1.25以上が好ましく、1.28以上がより好ましく、1.285以上が更に好ましく、1.29以上が特に好ましい。電解液の比重は、充電受入性及びサイクル特性が更に向上する観点から、1.33以下が好ましく、1.32以下がより好ましく、1.315以下が更に好ましく、1.31以下が特に好ましい。電解液の比重の値は、例えば、浮式比重計、又は、京都電子工業株式会社製のデジタル比重計によって測定することができる。
電解液のアルミニウムイオン濃度は、充電受入性及びISSサイクル特性が更に向上する観点から、0.01mol/L以上が好ましく、0.02mol/L以上がより好ましく、0.03mol/L以上が更に好ましい。電解液のアルミニウムイオン濃度は、充電受入性及びISSサイクル特性が更に向上する観点から、0.2mol/L以下が好ましく、0.15mol/L以下がより好ましく、0.13mol/L以下が更に好ましい。電解液のアルミニウムイオン濃度は、例えば、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により測定することができる。
電解液のアルミニウムイオン濃度が前記所定範囲であることにより充電受入性が向上するメカニズムの詳細については明らかではないが、任意の低SOC下において、放電生成物である結晶性硫酸鉛の電解液中への溶解度が上がるため、又は、アルミニウムイオンの高いイオン伝導性により電解液の電極活物質内部への拡散性が向上するためと考えられる。
また、電解液のアルミニウムイオン濃度が前記所定範囲であることによりISSサイクル特性が向上するメカニズムについては、詳細に分かっていないが、負極板の耳部の電位が硫酸鉛の溶解及び析出の電位よりも高い電位を推移し、耳部が破断しにくくなると推察される。
(セパレータ)
セパレータとしては、ガラス、パルプ、及び合成樹脂から選ばれる少なくとも1種からなるセパレータ等が挙げられる。前記セパレータの中でも、短絡をより抑制できる観点からは、合成樹脂を用いることが好ましい。更に、前記合成樹脂の中でも特に、ポリオレフィンが好ましい。
<鉛蓄電池の製造方法>
本実施形態に係る鉛蓄電池の製造方法は、例えば、電極(正極及び負極)を得る電極製造工程と、前記電極を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池を得る組み立て工程とを備える。
電極製造工程では、例えば、電極材ペースト(正極材ペースト及び負極材ペースト)を集電体(例えば、鋳造格子体、エキスパンド格子体等の集電体格子)に充填した後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極を得る。正極材ペーストは、例えば、正極活物質の原料(鉛粉等)を含有しており、他の添加剤を更に含有していてもよい。負極材ペーストは、負極活物質の原料(鉛粉等)、及びビスフェノール系樹脂を含有しており、他の添加剤を更に含有していてもよい。
正極材ペーストは、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、正極活物質の原料に添加剤(補強用短繊維等)及び水を加える。次に、希硫酸を加えた後、混練して正極材ペーストが得られる。正極材ペーストを作製するに際しては、化成時間を短縮できる観点から、正極活物質の原料として鉛丹(Pb34)を用いてもよい。この正極材ペーストを集電体に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の正極を得ることができる。
正極材ペーストにおいて補強用短繊維を用いる場合、補強用短繊維の配合量は、正極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.005〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.3質量%がより好ましい。
未化成の正極を得るための熟成条件としては、温度35〜85℃、湿度50〜98RH%の雰囲気で15〜60時間が好ましい。乾燥条件は、温度45〜80℃で15〜30時間が好ましい。
本実施形態に係る鉛蓄電池の負極集電体について説明する。集電体の組成としては、例えば、鉛−カルシウム−錫合金、鉛−カルシウム合金及び鉛−アンチモン合金が挙げられる。これらの鉛合金を重力鋳造法、エキスパンド法、打ち抜き法等で格子状に形成することにより集電体を得ることができる。
負極集電体は、格子部と、その上下の縁に連設された帯状をなす部分とを備える。帯状をなす部分のうち、上縁側の帯状の部分に上額部が連接されており、上額部は集電のための耳部が形成されている。
本発明に係る負極集電体の耳部は、Sn又はSn合金の表面層を有している。前記表面層は、ISSサイクル特性が向上する観点から、Snを50質量%以上含む合金から形成されていることが好ましい。前記表面層は、ISSサイクル特性が更に向上する観点から、Snから形成されていることがより好ましい。前記表面層が、Sn又はSn合金から形成されていることにより、PSOC下で突然寿命にならない長寿命な性能を有する鉛蓄電池を提供することができる。
前記表面層が、Sn又はSn合金から形成されていることにより、PSOC下で突然寿命にならない長寿命な性能を有する鉛蓄電池を提供することができる理由は、ISS車用途等での充放電サイクルを繰り返した際に負極集電体の耳部破断が生じにくくなるからであると推察される。耳部破断の要因は定かではないが、耳部が硫酸鉛化し、前記硫酸鉛の溶解と析出を繰り返すことによって、耳部破断が生じやすくなると考えられる。よって、耳部と電解液が接触する表面が硫酸鉛の溶解と析出を繰り返す電位よりも高い電位となるようにすることで耳部破断が生じにくくなると考えられる。
前記表面層は、Sn又はSn合金から形成されていれば、Pb、Sn以外の金属を含有していても、耳部破断を生じにくくし、ISSサイクル特性が向上する効果がある。
本発明において、前記表面層は耳部に形成されており、前記表面層は上額部にも形成されていてもよい。
表面層を耳部に形成する方法としては、例えば圧延法、溶融メッキ法等が挙げられる。圧延法とは、表面層が形成される材料(例えば、金属板や合金板など)と、表面層を形成する材料(金属シート又は合金シート)とを重ね合わせて、これらを圧延する方法である。一方、溶融メッキ法とは、表面層を形成する材料が溶融した溶融槽に、耳部を浸漬させてメッキする方法である。これらの方法のうち、本発明においては、圧延法が好ましい。
圧延法により表面層を形成する方法は、例えば以下のような方法であってもよい。板状の鉛合金(基材)の両面に、表面層を形成するためのSnシート又はSnを含む合金シートを重ね合わせて、圧延ローラで圧延して圧延シートを作製する(圧延シートを作製する工程)。次に、負極集電体の耳部の位置に表面層が形成されるように圧延シートの位置を調整しながら、圧延シートをエキスパンド機により展開する(エキスパンド法)と、耳部の位置に表面層が形成された負極集電体が得られる。なお、この圧延法においては、基材となる合金の厚み、表面層となるシートの厚み、又は圧延後のシートの厚みを調整することによって、表面層の厚みを容易に調節可能である。圧延後の表面層の厚みは、製造上の観点から、10μm以上、60μm以下が好ましい。
電極製造工程では、例えば、電極材ペースト(正極材ペースト及び負極材ペースト)を集電体(例えば、鋳造格子体、エキスパンド格子体等の集電体格子)に充填した後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極を得る。正極材ペーストは、例えば、正極活物質の原料(鉛粉等)を含有しており、他の添加剤を更に含有していてもよい。負極材ペーストは、負極活物質の原料(鉛粉等)及び(A)ビスフェノール系樹脂を含有しており、(B)その他の添加剤を更に含有していてもよい。
正極材ペーストは、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、正極活物質の原料に添加剤(補強用短繊維等)及び水を加える。次に、希硫酸を加えた後、混練して正極材ペーストが得られる。正極材ペーストを作製するに際しては、化成時間を短縮できる観点から、正極活物質の原料として鉛丹(Pb34)を用いてもよい。この正極材ペーストを集電体に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の正極を得ることができる。
正極材ペーストにおいて補強用短繊維を用いる場合、補強用短繊維の配合量は、正極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.005〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.3質量%がより好ましい。
未化成の正極を得るための熟成条件としては、温度35〜85℃、湿度50〜98RH%の雰囲気で15〜60時間が好ましい。乾燥条件は、温度45〜80℃で15〜30時間が好ましい。
負極材ペーストは、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、負極活物質の原料に添加剤(スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂、補強用短繊維、硫酸バリウム等)を添加して乾式混合することにより混合物を得る。そして、この混合物に硫酸(希硫酸等)及び溶媒(イオン交換水等の水、有機溶媒など)を加えて混練することにより負極材ペーストが得られる。この負極材ペーストを集電体(例えば、鋳造格子体、エキスパンド格子体等の集電体格子)に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の負極を得ることができる。
負極材ペーストにおいて、スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂(ビスフェノール系樹脂等)、炭素材料、補強用短繊維又は硫酸バリウムを用いる場合、各成分の配合量は下記の範囲が好ましい。スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂の配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、樹脂固形分換算で、0.01〜2.0質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%が更に好ましく、0.1〜0.3質量%が特に好ましい。炭素材料の配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.1〜3質量%が好ましく、0.2〜1.4質量%がより好ましい。補強用短繊維の配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として0.05〜0.15質量%が好ましい。硫酸バリウムの配合量は、負極活物質の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.01〜2.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。
未化成の負極を得るための熟成条件としては、温度45〜65℃、湿度70〜98RH%の雰囲気で15〜30時間が好ましい。乾燥条件は、温度45〜60℃で15〜30時間が好ましい。
組み立て工程では、例えば、前記のように作製した未化成の負極及び正極を、セパレータを介して交互に積層し、同極性の極板同士をストラップに連結(溶接等)させて極板群を得る。この極板群を電槽内に配置して未化成電池を作製する。次に、未化成電池に希硫酸を注液した後、直流電流を通電して化成を行うことにより鉛蓄電池が得られる。通常は、通電のみで所定比重の鉛蓄電池を得られるが、通電時間短縮を目的として、化成後に希硫酸を一度抜いた後、電解液を注液してもよい。
化成条件及び硫酸の比重は電極活物質の性状に応じて調整することができる。また、化成処理は、組み立て工程後に実施されることに限られず、電極製造工程における熟成及び乾燥後に実施されてもよい(タンク化成)。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
[合成例1]
<ビスフェノール系樹脂の作製>
[合成例(ビスフェノール・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物)]
ジムロート、メカニカルスターラー及び温度計を装着した500mLセパラブルフラスコに水酸化ナトリウム4.2質量部(0.105mol)及びイオン交換水79.26質量部(4.4mol)を加えた後、150rpm(=min-1)で5分間撹拌して水酸化ナトリウム水溶液を調製した。この水酸化ナトリウム水溶液に4−アミノベンゼンスルホン酸17.32質量部(0.1mol)を加えて25℃にて30分間撹拌を行い、均一の水溶液を得た。この水溶液にパラホルムアルデヒド9.09質量部(ホルムアルデヒド換算、0.3mol、三井化学株式会社製)を加えた後に5分間撹拌してパラホルムアルデヒドを溶解し、均一の水溶液を得た。この水溶液にビスフェノールA21.92質量部(0.096mol)及びビスフェノールS1.04質量部(0.004mol)を加えた後、90℃に設定したオイルバスを用いて加熱しながら10時間撹拌して水溶液を得た。ビスフェノールA及びビスフェノールSを加えた直後の反応開始時の水溶液のpHを下記の測定条件で測定した結果、pHは8.6であった。
得られた水溶液を耐熱容器に移した後、60℃に設定した真空乾燥機にこの水溶液を投入した。次に、1kPa以下の減圧状態で10時間乾燥することによりビスフェノール系樹脂粉末(ビスフェノール・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物)を得た。合成例1で得られたビスフェノール系樹脂の重量平均分子量を下記条件のGPCにより測定した結果、重量平均分子量は53900であった。
(pH測定条件)
試験機:Twin pH(アズワン株式会社製)
校正液:pH6.86(25℃)、pH4.01(25℃)
測定温度:25℃
測定手順:校正液を用いて2点校正を行った。試験機のセンサ部の洗浄を行った後、測定溶液をスポイトで吸い取り、センサ部に0.1〜0.3mLを滴下した。画面上に測定終了の表示が現れたときのpHを測定値とした。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×106、5.80×105、2.55×105、1.46×105、1.01×105、4.49×104、2.70×104、2.10×104;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×102;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×102;キシダ化学株式会社製)
<鉛蓄電池の作製>
[実施例1]
(正極板の作製)
正極活物質の原料として、鉛粉と鉛丹(Pb34)を用いた。正極活物質の原料と、正極活物質の原料の全質量を基準として0.07質量%の補強用短繊維(アクリル繊維)と、水とを加えて混練した。続いて、比重1.280(20℃換算、以下同様)の希硫酸を少量ずつ添加しながら混練して、正極活物質ペーストを作製した。鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド式集電体にこの正極活物質ペーストを充填した後、50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後乾燥して未化成の正極板を作製した。
(負極集電体の作製)
負極集電体を下記の様に作製した。負極集電体の基材として、厚みが12mmであり、板状の鉛−0.05質量%カルシウム−0.5質量%錫合金を用いた。表面層を形成するための金属シートとして、厚みが0.2mmであるSnシートを用いた。前記鉛−0.05質量%カルシウム−0.5質量%錫合金の両面に、Snシートを重ね合わせ、圧延ローラで圧延することにより、厚さが0.9mmの圧延シートを作製した。圧延シートに形成された表面層の厚みは約15μmであった。
負極集電体の耳部の位置にSn層が備えられるように圧延シートの位置を調整しながら、圧延シートをレシプロ式エキスパンド機により展開し、耳部にSn層が形成された負極集電体を作製した。
(負極板の作製)
負極活物質の原料として鉛粉を用いた。合成例1で作製したビスフェノール系樹脂0.2質量%、補強用短繊維(アクリル繊維)0.1質量%、硫酸バリウム1.0質量%、及び、炭素質導電材(ファーネスブラック)0.2質量%の混合物を前記鉛粉に添加した後に乾式混合した(前記配合量は、負極活物質の原料の全質量を基準とした配合量である)。次に、水を加えた後に混練した。続いて、比重1.280の希硫酸を少量ずつ添加しながら混練して、負極活物質ペーストを作製した。前記の方法で作製した集電体にこの負極活物質ペーストを充填した後、50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後乾燥して未化成の負極板を作製した。
(電池の組み立て)
袋状に加工したポリエチレン製のセパレータに未化成負極板を挿入した。次に、未化成正極板8枚と、前記袋状セパレータに挿入された未化成負極板9枚とを交互に積層した。続いて、キャストオンストラップ(COS)方式で、同極性の極板の耳部同士を溶接して極板群を作製した。前記極板群を電槽に挿入して2V単セル電池(JIS D 5301規定のD26サイズの単セルに相当)を組み立てた。比重1.280の希硫酸をこの電池に注液した。その後、35℃の水槽中、通電電流20Aで20時間の条件で化成して鉛蓄電池を得た。
[実施例2〜4、比較例1〜4]
実施例2及び3は、電解液中のアルミニウムイオンが表1に示す濃度になるように硫酸アルミニウム無水物を溶解させた比重1.280の希硫酸をこの電池に注液した以外は、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製した。また、実施例4は、負極板に用いた負極集電体に備えた表面層をPb−Sn(50質量%)合金層に変更したこと以外は、実施例3と同様に鉛蓄電池を作製した。比較例2では、ビスフェノール系樹脂の代わりに、市販のリグニンスルホン酸ナトリウム(商品名:バニレックスN、日本製紙株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製した。比較例3では、表面層を形成せず、ビスフェノール系樹脂の代わりに市販のリグニンスルホン酸ナトリウム(商品名:バニレックスN、日本製紙株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製した。比較例4では、表面層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製した。
<電池特性の評価>
前記の鉛蓄電池について、充電受入性、低温高率放電性能及びISSサイクル特性を下記のとおり測定した。充電受入性、低温高率放電性能及びISSサイクル特性については、比較例3の測定結果をそれぞれ100として相対評価した。結果を表1に示す。
(充電受入性)
作製した電池において、25℃、10.4Aで30分間定電流放電し、12時間放置した後、100Aの制限電流の下、2.41Vで60秒間の定電圧充電し、充電開始から5秒目の電流値を測定した。
(低温高率放電性能)
作製した電池において、電池温度を−15℃に調整し、300Aで定電流放電し、セル電圧が1.0Vを下回るまでの放電持続時間を測定した。
(ISSサイクル特性)
ISSサイクル評価は次のように行った。電池温度が25℃になるように雰囲気温度を調整し、45A−59秒間、300A−1秒間の定電流放電を行った後、100A−2.33V−60秒間の定電流・定電圧充電を1サイクルとする試験を行った。試験中、3600サイクル毎に40時間放置した後にサイクルを再開した。この試験はISS車での鉛蓄電池の使われ方を模擬したサイクル試験である。このサイクル試験では、放電量に対して充電量が少ないため、充電が完全に行われないと徐々に充電不足になり、その結果、放電電流を300Aとして1秒間放電した時の1秒目電圧が徐々に低下する。すなわち、定電流・定電圧充電時に負極が分極して早期に定電圧充電に切り替わると、充電電流が減衰して充電不足になる。この寿命試験では、300A放電時の1秒目電圧が1.2Vを下回ったときを、その電池の寿命と判定した。
Figure 2017079166
負極材にビスフェノール系樹脂を含み、かつ負極集電体の耳部が表面層を有している実施例1は、負極材にビスフェノール系樹脂を含むが負極集電体の耳部に表面層を有していない比較例1、及び負極集電体の耳部に表面層を有しているが負極材にビスフェノール系樹脂でないリグニンスルホン酸ナトリウムを含む比較例2に対して、ISSサイクル特性が大きく向上することが分かる。この要因は、前記表面層としてSn又はSn合金を形成させること、及び負極材にビスフェノール系樹脂を含むことにより、耳部の電位が硫酸鉛の溶解・析出電位よりも高い電位を推移し、耳部の腐食・破断が抑制されるため、ISSサイクル特性がより向上できたものと推測する。
また、実施例2及び3からは、電解液にアルミニウムイオンを含むことにより、充電受入性及びISSサイクル特性が更に向上することが分かる。

Claims (5)

  1. 正極、負極、及び電解液を備える鉛蓄電池であって、前記負極が負極材と負極集電体とを有し、前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、前記負極集電体は耳部を有し、前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されている、鉛蓄電池。
  2. 前記電解液がアルミニウムイオンを含む、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 部分充電状態下で使用される、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の鉛蓄電池を備えるアイドリングストップシステム車。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の鉛蓄電池を備えるマイクロハイブリッド車。
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