JP2015178671A - 自動車用ターボチャージャのタービンホイール及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タービンホイールを、質量%でC:0.08〜0.20%,Mn:0.25%以下,Si:0.01〜0.50%,Cr:12.0〜14.0%,Mo:3.80〜5.20%,Nb+Ta:1.80〜2.80%,Ti:0.50〜1.00%,Al:5.50〜6.50%,B:0.005〜0.015%,Zr:0.05〜0.15%,Fe:0.01〜2.5%,残部Ni及び不可避的不純物の組成を有するNi基合金にて構成し、翼部の先端から軸部までを含む各部位のγ′相のサイズが0.4〜0.8μmの範囲内に収まるように組織制御する。
【選択図】 なし
Description
ターボチャージャは、エンジンからの排気ガスを利用してタービンホイールを回転させ、同軸上に設けられたコンプレッサホイールを駆動してエンジンに高圧空気を供給する。
図3(A)に示しているようにターボチャージャ10は、タービンハウジング12内部にタービンホイール14を、またコンプレッサハウジング16内にコンプレッサホイール18を有し、それらタービンホイール14とコンプレッサホイール18とが、共通のロータシャフト20で一体回転状態に連結されている。
そしてコンプレッサホイール18の回転により、コンプレッサハウジング16内に空気を吸入してこれを加圧し、高圧の空気をエンジンへと過給する。
同図に示しているようにタービンホイール14は、回転中心の軸部22と、軸部22から放射状に延び出した多数の翼部24とを有しており、全体として複雑な形状をなしている。
またその肉厚も軸部22と翼部24とで異なり、回転中心の軸部22で肉厚が厚く、翼部24で肉厚が薄い。
更に翼部24においても肉厚は各部位で異なっており、軸部22に近い付根部では肉厚が厚く、先端に行くほど肉厚は薄い。
自動車用ターボチャージャのタービンホイール14の場合、最も肉厚の薄い部分ではその厚みは1mm以下である。
そのため、従来はタービンホイールの材料として高温強度に優れたNi基合金,特にインコネル713C(インコネル社の商品名)を代表とするNi基鋳造合金が主として用いられてきた。
しかしながら、これら特許文献2〜4においても製品各部位のγ′相のサイズを制御することで高温強度を高める点の記載はなく、本発明とは異なっている。
更に詳しく研究するなかで、製造条件の差によってγ′相のサイズが大きく変化すること、そしてそのことによってタービンホイールの強度や耐久特性が大きく変わることを突き止めた。
ところがタービンホイールにあっては、翼部と軸部とで肉厚が異なり、更に翼部においても中心側の付根部から先端にかけて肉厚が薄く変化する形状をなしており、即ち各部位で肉厚が様々に異なっており、これに応じて冷却時の冷却速度も肉厚の違いに応じて各部位で様々となる。
このような特有の事情を有するタービンホイールにおいて、本発明者らはタービンホイール全体でγ′相のサイズをどのようなサイズとすれば良いかの問題に直面した。
本発明者らはこれを新たな課題として更に研究を進める中で、γ′相のサイズは0.4〜0.8μmの範囲内が適正なサイズであること、更に好ましい条件としては最も細かいγ′相と最も粗大なγ′相のサイズ比が1.5倍以下であることが適正であることを突き止めた。
γ′相のサイズが粗大過ぎると強度が低下し、使用中の繰返し応力により疲労破壊を引き起してしまう。或いは強度低下が顕著であると、使用時の応力に耐えられずに翼部が塑性変形してしまい、その結果タービンハウジングと接触して破損に到ってしまう。
一方γ′相のサイズが微細過ぎると、強度が高くなるものの靭性,延性に乏しくなるため、応力負荷部にて脆性的な破壊を起し易くなり、使用中に割れが発生し易くなる。
排ガス中には燃焼によって出来た煤とか、或いはエンジン内で金属が擦れ合ったりすることで発生する金属片とかが含まれ、そういったものが飛んで来てタービンホイールに衝突すると、強度差のある部分で応力集中により破壊し易くなるのである。
前述したように、タービンホイールにおいて冷却中に析出するγ′相は、冷却速度によってサイズが変化し、冷却速度が速いほどサイズが細かくなり、また逆に冷却速度が遅いほどサイズが大きくなる傾向を示す。
またタービンホイールにあっては、厚みが薄く且つ中心から離れた翼先端部では冷却の速度が速く、一方中心に近い翼部の付根付近や軸部においては冷却の速度が遅い。
従ってタービンホイールにあっては、従来の製造条件の下では部位によってγ′相のサイズが異なったものとなる。
しかしながら、これらの溶体化及び時効処理はγ′ソルバス温度(固溶化温度)の低い合金においては可能であるが、インコネル713Cで代表されるNi基鋳造合金では使用時の耐熱温度を高めるためにγ′ソルバス温度が高く設計されており、溶体化処理においてγ′を完全に固溶させようとすると、局部溶融を引き起こしてしまうため上記の熱処理による組織制御が困難である。
鋳型温度が低過ぎると、鋳型に溶湯が接触して、最初に凝固する表層や翼部の先端部において冷却速度が速すぎるために、その部位のγ′相サイズが微細になり過ぎる。
一方鋳型温度が高過ぎると、特に凝固の遅い軸部などでγ′相サイズが粗大になり過ぎる。
同様に鋳込温度も低過ぎるとγ′相のサイズが微細になり過ぎ、逆に高過ぎると粗大になり過ぎる。
例えば鋳型内部を減圧し、溶湯をその減圧により鋳型内部に吸引する減圧吸引鋳造では、一般に鋳込チャンバとしての減圧チャンバの内部に鋳型を配置するとともに、減圧チャンバ内で鋳型周りに砂(バックアップサンド)を充填し、減圧チャンバを減圧して溶湯を鋳型内に吸引鋳造するが、その際溶湯の熱が鋳型から砂へと抜熱して砂に熱が籠り、鋳型内の凝固金属が保熱状態に置かれる場合が生ずる。
特に鋳込質量が大きい場合には減圧チャンバへの抜熱量が大きくなるために、砂(バックアップサンド)の温度上昇が大となり、凝固金属が保熱状態となり易い。
而してγ′の析出する温度域で鋳型と製品が保熱されると、γ′相のサイズは粗大化する傾向となる。
このようにすることで、バックアップサンドによる保熱状態を、γ′相のサイズを0.4〜0.8μmの範囲内とするのに適したものとすることができる。
尚、上記鋳込チャンバの容積と溶湯の容積との比率について、より好ましい範囲は3〜8%であり、更に好ましくは4〜8%である。
C:0.08〜0.20%
Cは主にMCあるいはM23C6炭化物を形成することで粒界強度を向上させる。十分な高温強度を得るには0.08%以上の添加を必要とする。但し過剰な添加は粗大な共晶炭化物を形成し靭延性の低下を引き起こす為、上限を0.20%とする。
Mnは多く添加すると高温腐食性が落ちる為、上限を0.25%とする。
Siは高温酸化条件下において酸化被膜を緻密で安定させる効果がある為、不可避的に入る量0.01%を超えて意図的に添加しても良い。しかし0.50%を超える添加は高温強度を低下させるので好ましくない。
Crは、表面にCr2O3からなる緻密な酸化皮膜を形成して耐酸化性,高温耐食性を向上させる。このような特性を発揮させるには12.0%以上を含有させることが必要である。
しかし過剰に添加するとσ相が析出して延性,靭性が悪化するため、14.0%を上限とする。
Moは、オーステナイト相に固溶して固溶強化により母相を強化する効果がある。このためには、少なくとも3.80%以上含有させる必要がある。しかし5.20%を超えるとσ相が析出しやすくなり、靭延性を低下させるため、5.20%を上限とする。
Nb,Taはγ′相に固溶してγ′相を強化するとともに、MC型の炭化物を形成し粒界を強化しクリーブ強度を高める。十分な効果を得るには1.80%以上添加する必要がある。しかし2.80%を超えて添加すると共晶炭化物の粗大化を招き、クリープ強度がむしろ低下する為、2.80%を上限とする。
Tiはγ′相に固溶してこれを強化し、0.50%以上の添加でクリープ強度を高める効果がある。しかし1.00%を超えて添加すると、共晶炭化物を増加させて延性を低下させるため、1.00%までとする。
Alは、γ′相(Ni3Al金属間化合物)を形成し、高温強度の向上に大きく寄与する。タービンホイール用途の鋳造合金として十分な高温強度を得るには5.50%以上の添加を必要とするが、Alの添加量を増加するとクリープ強度が低下する為、6.50%を上限とする。
Bは粒界を強化するため、0.005%以上添加する。しかし、Bの過剰な添加はホウ化物を形成して特性を低下させるため、上限を0.015%とする。
ZrもBと同様に粒界強化によりクリープ強度を向上させる。しかし、過剰な添加は有害相の形成や特性面の低下を引き起こすため、0.05〜0.15%を適正範囲とする。
Feは合金コストを下げる目的で、低廉な合金原料を使用した際に含まれている。2.5%まではタービンホイールとしての特性に大きな影響を与えないため、含有しても良い。但し、2.5%を超えるとクリープ特性が低下するため、2.5%を上限とする。
C:0.1%,Mn:0.03%,Si:0.1%,Cr:13.5%,Mo:5.0%,Nb+Ta:2.5%,Ti:1.00%,Al:6.0%,B:0.010%,Zr:0.08%,Fe:1.0%,残部Ni及び不可避的不純物の組成を有するNi基合金を用いて、図1に示す減圧吸引鋳造設備26により図3(B)に示すタービンホイール14を鋳造した。
36はその鋳型34における製品成形用のキャビティ、即ち図3(B)に示すタービンホイールを成形するためのキャビティで、38及び40は、溶湯28を吸い上げて各キャビティ36に導く幹通路及び枝通路である。
減圧チャンバ32内には、鋳型34周りに砂(バックアップサンド)44が充填されている。
また減圧チャンバ32には、内部を真空吸引(減圧吸引)するための吸引口46が備えられている。
すると、溶湯28が吸上管42から幹通路38,枝通路40を経てキャビティ36内に鋳込まれる。
鋳型34内で、詳しくはキャビティ36内で溶湯が凝固し、減圧チャンバ32が上昇せしめられた後に、製品が鋳型34とともに減圧チャンバ32から取り出される。
尚γ′相のサイズの評価は以下の方法に従って行った。
タービンホイール14の回転軸に対して垂直な翼部24の横断面でホイールを切断し、樹脂に埋め込んで観察試料を作製し、観察面を鏡面研磨した。
作製したミクロ観察試料を1%酒石酸−1%硫酸アンモニウム水溶液中で25mA/cm2の電流で4時間電解エッチングを行ってγ′相を抽出した。
電解後、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて30000倍の倍率でγ′相を撮影した。
撮影した画像を画像処理ソフト(三谷商事(株)社のWinroofを使用)を用いて立方体状のγ′相の一辺の長さを測定した。
詳しくはそれぞれの部位において、1〜5視野撮影し、各視野ごとに任意の15個のγ′相の一辺長さを測定し、平均化したものを、同一部位の各視野間で更に平均化し、これをその部位におけるγ′相のサイズとした。
試作したタービンホイール14をハウジングに組み込み、これに燃焼器からの高温の燃焼ガスを吹き付けて回転させた。燃焼ガスの温度は、ガソリンエンジンの用途を想定し約950℃とした。試験中に破損が見られたものは、試験後のホイールを回収し破損部の調査を実施した。
結果が表4に示してある。
比較例1ではγ′相の最大サイズが0.29,最小サイズが0.06で、何れも本発明の下限値よりも小さい。加えてγ′相の最大サイズと最小サイズとの比率が4.5で、望ましいサイズ比の1.5倍以下よりも大であり、結果として耐久試験では翼部24の薄肉部でクラックが発生し、耐久性が不十分であった。
比較例6,比較例8は、γ′相の最大サイズ,最小サイズともに本発明の下限値である0.4よりも小さく、加えてγ′相の最大サイズと最小サイズとの比率が望ましいサイズ比の1.5倍以下よりも大である。結果としていずれも翼部24の薄肉部でクラックが発生し、何れも耐久性が不十分であった。
例えば本発明では、減圧吸引鋳造を行うに際して上記例示した大気下減圧吸引鋳造の他、炉内部に連なる空間を真空状態として原料或いはインゴットを溶解して溶湯とし、その後に炉内に連通する空間にArガス等の不活性ガスを供給した状態の下で、減圧チャンバを介して減圧吸引し鋳造する真空下減圧吸引鋳造を行うことも可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
22 軸部
24 翼部
28 溶湯
32 鋳込チャンバ(減圧チャンバ)
34 鋳型
44 砂(バックアップサンド)
Claims (4)
- 質量%で
C:0.08〜0.20%
Mn:0.25%以下
Si:0.01〜0.50%
Cr:12.0〜14.0%
Mo:3.80〜5.20%
Nb+Ta:1.80〜2.80%
Ti:0.50〜1.00%
Al:5.50〜6.50%
B:0.005〜0.015%
Zr:0.05〜0.15%
Fe:0.01〜2.5%
残部Ni及び不可避的不純物の組成を有するNi基合金にて構成され、翼部の先端から軸部までを含む各部位のγ′相のサイズが0.4〜0.8μmの範囲内に収まるように組織制御されて成る自動車用ターボチャージャのタービンホイール。 - 前記Ni基合金を用いて鋳造され、且つ鋳造ままの組織で使用されることを特徴とする請求項1に記載のタービンホイール。
- ロストワックス法にて製造した多孔質鋳型を用い、前記Ni基合金の溶湯を該鋳型内に減圧吸引し鋳造して成る請求項1,請求項2の何れかに記載のタービンホイール。
- 請求項1〜3の何れかに記載のタービンホイールを製造するに際し、
鋳型を内部に有する鋳込チャンバの容積と、該鋳込チャンバ内部の該鋳型内に吸引鋳造される溶湯の容積との比率を2〜10%の範囲内とし、且つ該鋳込チャンバ内の該鋳型の周囲にバックアップサンドを充填して鋳造を行うことを特徴とするタービンホイールの製造方法。
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