JP6045857B2 - 高強度Ni基超合金と、それを用いたガスタービンのタービン動翼 - Google Patents
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Description
本発明者らは、普通鋳造用合金であって、耐食性及び耐酸化性を維持しながら、従来材より優れた高温クリープ強度を得る合金検討した結果、上記本発明を見出すに至ったものである。
以下、本発明のNi基合金に含まれる各成分の働き、組成範囲について説明する。
Crは、固溶強化元素として働くと共に緻密な酸化皮膜を形成し高温における腐食雰囲気下で耐酸化、耐高温腐蝕性に寄与する。特に、溶融塩腐食に対する耐食性を向上させるためには、Cr含有量をより増加させるほど効果は大きくなる。そして、その効果がより顕著に現れるのは11.00質量%を超えてからである。しかし、本発明の合金では、固溶強化元素Wが多く添加されているため、Cr量が多くなりすぎると、脆いTCP相が析出して高温強度が低下する。そのため、他の合金元素とのバランスをとって、その上限を15.0質量%とすることが望ましい。この組成範囲において、高強度と高耐食性が得られる。好ましくは12.50〜14.50質量%の範囲である。
Coはγ′相の固溶温度を低下させ、溶体化熱処理を容易にする効果があり、特に本発明合金のように、部分溶体化で使用される場合には低い熱処理温度でも溶体化率を大きくすることが可能となる。その効果を得るためには、最低でも4%以上の添加が必要である。しかし、Coの過度の添加は、γ′相を不安定化し、むしろ強度低下につながる。従って、Coは最大でも9.00%にする必要がある。この組成範囲に於いて、高い高温強度が得られる。好ましくは4.50〜8.00質量%の範囲である。
Alはγ′相(Ni3Al)を形成するために必須の元素であり、60%分率γ′を形成するために、最低でも4.50%以上の添加が必要である。AlはAl2O3保護皮膜を形成することで、耐酸化性及び耐食性を向上させる。しかし、過度に添加するとγ′相の固溶強化度が低下し、かえって高温強度が低下することから、添加量は最大でも7.00%にする必要がある。この組成範囲において、高温における強度と耐酸化特性、耐食性のバランスを考慮した場合、好ましくは5.00〜6.50質量%の範囲である。
TiはCrとAlの複合酸化物の形成を防止し、合金の耐食性を向上させる効果がある。然し、Tiの添加ではγ′相の固相線温度を下げるから、高温強度を低下させるため、溶融塩腐食に対する耐食性をいじするためには、0.50質量%以上の含有量が必要である。しかし、2.10質量%を越えて添加すると、更に脆化相のη相が析出してくるため、また、γ′相の形成元素としてγ′相の析出量はTiの添加量と伴に増加し、γ′相の析出量を制御するために、その上限を2.10質量%とする必要がある。本発明合金のようにCrを11.0〜15.0質量%含む合金に於いて、高温における強度と耐食性、耐酸化特性のバランスを考慮した場合、好ましくは0.50〜1.50質量%の範囲である。
Wは、高価元素Reを除いて、最も固溶強化効果がある元素であり、主にγ相を固溶強化する。従って、優れた高温強度を求めるために、本発明には組織の安定性を維持する限り、Wを多めに添加する。なお、Wは、Moと同様固溶強化元素であって剛性率の向上と拡散係数の低減に寄与するが、Moと比較しμ相中への経年的な移行は少なく、長期間安定して強化に寄与する。γ相とγ′相の格子定数ミスマッチをより少なくすると、γとγ′の相の界面強度を向上させ、高温クリープ強度を向上させる。Wはγ相側に主に入る元素で、反対にTaは析出相であるγ′相側に主に入る元素である。W量が多い合金はγ相側の格子定数が大きくなり、一般に(γ′相の格子定数−γ相の格子定数)/(両相の格子定数平均)で定義される格子定数ミスマッチが小さくなる。従って、γ相とγ′相の格子定数ミスマッチを小さくするためには、Wの量は最低8.00%以上である。然しながら、Wの過度の添加は、合金の相安定を悪化させTCP相等の析出につながり、かつ耐食性を低下させるため、最大でも13.00%に規制する必要がある。更に、Wと複合添加でTCP相の析出し易くなる元素Taを無添加にする。相安定性を重視する場合、好ましくは8.50〜12.00質量%の範囲である。
MoはWと同様の効果を有するため、必要に応じてWの一部と代替えすることが可能である。また、γ′相の固溶温度をあげるため、Wと同様にクリープ強度を向上させる効果がある。そして、このような効果を得るためには0.1質量%以上の含有量が必要であり、Moの含有量が増えるにつれてクリープ強度も向上する。
Nbは、CrとAlの複合酸化物の形成を防止し、合金の耐食性を改善する効果がある。一方、Taより効果は小さいが、γ′相を固溶強化する効果はTiより高い。従って、Nbは高温強度を落とさずに耐食性を改善できる有効な元素であり、0.005%以上添加する必要がある。しかしながら、γ′相の相安定性を保つためには、Nbの添加量は1.00%以下とする必要がある。高温における強度と耐食性、耐酸化特性のバランスを考慮した場合、好ましくは0.005〜1.00質量%の範囲であり、より好ましくは0.005〜0.80質量%の範囲である。
Cは、Ti、Nb等とMC型炭化物、Cr、W、Mo等とM23C6及びM6C型炭化物を形成し、高温で結晶粒界が移動するのを阻止することで結晶粒界を強化する効果があり、本発明において特に重要な役割を果たす元素である。普通鋳造材で、この効果を発揮させるためには最低でも0.05%以上添加する必要がある。また、強度と延性をいずれも増大させたい場合には、0.10%以上添加することが好ましい。しかし、C量を多くしすぎると、γ相及びγ′相の固溶強化に有効な元素が炭化物にとられることで、かえって高温強度が低下するようになる。また、過剰の炭化物は疲労強度を低下させる。従って、Cの上限は0.20%に規制する必要がある。単結晶材では、粒界強化が不要となり、Cの添加が0又は0.002以下である。
Bは結晶粒界の非整合部を埋め、結晶粒界の結合力を増加させる効果がある。本発明の合金においては、最低でも0.005%のBの添加が必要である。普通鋳造材として、より高い粒界強度が要求される場合には0.010%以上添加することが望ましい。しかし、BはNi基超合金の融点を著しく低下させるため、最大でも0.02%とする必要がある。
Hf、及びZrは、結晶粒界に偏析して結晶粒界の強度を若干向上させる。しかし、大部分はNiとの金属間化合物すなわちNi3Zr等を結晶粒界に形成する。この金属間化合物は合金の延性を低下させ、また低融点であるため、合金の溶融温度が低下し、溶体化処理温度範囲が狭くなるなど、有効な作用が少ない。したがって、その上限はそれぞれ2.00質量%、及び0.05質量%とした。好ましくは、Hfが0〜0.10質量%、Zrが0〜0.03質量%である。
酸素と窒素は不純物であり、いずれも合金原料から持ち込まれることが多く、Oはるつぼからも入り、合金中には酸化物(Al2O3)や窒化物(TiNあるいはAlN)として塊状に存在する。鋳物中にこれらが存在すると、クリープ変形中のクラックの起点となり、クリープ破断寿命を低下させたり、疲労亀裂発生の起点となって疲労寿命が低下したりする。特に酸素は、鋳物表面に酸化物として現れることで、鋳物の表面欠陥となり、鋳造品の歩留まりを低下させる原因となる。そのため、これら元素の含有量は少ないほど良いが、実際のインゴットを製造する場合に、無酸素、無窒素にはできないことから、特性を大きく劣化させない範囲として、両元素はいずれも0.005質量%以下であることが望ましい。
合金組成を均一化するために1505Kで2h溶体化熱処理を行った。溶体化熱処理後は空冷とし、これに続く時効熱処理の条件は、全ての合金で1394K/4時間/空冷+1352K/4時間/空冷+1148K/16時間/空冷とした。その後、試験片加工を行い、クリープ破断試験、腐食、及び酸化試験を実施した。
Claims (5)
- 質量比で、Cr:11.00〜15.00%、Co:4.00〜9.00%、Al:4.50〜7.00%、Ti:0.50〜2.10%、W:8.00〜13.00%、Mo:0.10〜1.00%、Nb:0.005〜1.00%、C:0.20%以下、B:0.02%以下、Hf:2.00%以下、Zr:0.05%以下、O:0%超0.005%以下、N:0%超0.005%以下を含み、残部がNiと不可避不純物からなり、
一方向凝固用合金および単結晶用合金であることを特徴とするNi基合金。 - 質量比で、Cr:11.00〜15.00%、Co:4.00〜9.00%、Al:4.50〜7.00%、Ti:0.50〜2.10%、W:8.00〜13.00%、Mo:0.10〜1.00%、Nb:0.005〜1.00%、C:0.05〜0.20%、B:0.005〜0.02%、Hf:2.00%以下、Zr:0.05%以下、O:0%超0.005%以下、N:0%超0.005%以下を含み、残部がNiと不可避不純物からなり、
普通鋳造用合金であることを特徴とするNi基合金。 - 請求項2において、質量比で、Cr:12.50〜14.50%、Co:4.50〜8.00%、Al:5.00〜6.50%、Ti:0.50〜1.50%、W:8.50〜12.00%、Mo:0.40〜0.80%、Nb:0.005〜0.80%、C:0.10〜0.20%、B:0.010〜0.02%であることを特徴とするNi基合金。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、質量比で、Hf:0.10%以下、Zr:0.03%以下であることを特徴とするNi基合金。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のNi基合金よりなることを特徴とするガスタービン用タービン翼。
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