JP2015168766A - ポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐低温衝撃性に優れ、さらに耐ユズ肌性にも優れた、大型のレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体を提供する。
【解決手段】 プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)45〜84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3〜15重量%、および低密度のポリエチレン系重合体(c)10〜40重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、プロピレン・エチレン共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が75%〜90%重量%で、該不溶部の極限粘度([η])が1.8〜2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5〜3.3dl/gであることを特徴とするポリプロピレン系フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明はポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体に関し、さらに詳しくは、特に耐低温衝撃性に優れ、耐ユズ肌性にも優れた、大型のレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体に関するものである。
従来、120℃〜135℃の高温でレトルト殺菌されるレトルト包装用のシーラントフィルムとしては、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする無延伸フィルム(以下CPPと称す)が使用されてきた。その主たる使用方法は、ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム(以下PETと称す)、ナイロン延伸フィルム(以下ONと称す)、アルミニウム箔(以下Al箔と称す)と貼合わせ、PET/ON/Al箔/CPP、PET/Al箔/ON/CPP またはPET/Al箔/CPP構成の積層体とした後、製袋して使用されるというものである。
最内面を構成するCPPフィルムは耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐ユズ肌性、耐ブロッキング性等の特性が要求される。特に近年は業務用等パウチの大型化が進み、更なる耐低温衝撃性等の要求レベルが高くなってきた。また、パウチ外観の品質要求レベルも高くなってきており、レトルト殺菌後の積層体表面に生じる微細な凹凸状外観、いわゆるユズ肌の発生を極力抑えることが望まれている。
このレトルト包装用フィルムとして用いられるCPPに適する樹脂として、これまでにも数多く提案がなされている。
特許文献1においては、融点が145℃〜160℃のプロピレン・エチレンブロック共重合体に水添ブロック共重合体を2〜20重量%配合してなることを特徴とするレトルト用ポリオレフィンフィルムが開示されているが、セミレトルト(120℃近傍での殺菌)用途のフィルムでの低温ヒートシール性、透明性及び耐低温衝撃性の改善にかかるものであり、レトルトの主流であるハイレトルト用途(125〜135℃殺菌)に適応できるものではなかった。
また、特許文献2には、ハイレトルト用途において耐低温衝撃性と耐ブロッキング性の両立を図るべく、気相法にてプロピレンを主体とした重合体部分(A成分)とエチレン・プロピレン共重合体部分(B成分)を重合せしめ、かかるA成分、B成分の極限粘度の比を一定値以下と規定し、かつ、キシレン可溶部の低分子量割合を抑制することが開示されているが、耐低温衝撃性は基本的に優れるものの、落袋強度の製袋条件への依存性が大きく不満足なものであった。かかる問題を解決すべく、特許文献2と同じ出願人から、上記A成分をエチレン含有量0.5〜1.5重量%のプロピレン・エチレン共重合体とする提案(特許文献3)もなされている。
しかしながら、かかるプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いたフィルムは、耐低温衝撃性を高めるべくキシレン可溶分量を多くするとブロッキングが発生し易くなり、包袋成形後、内容物を充填する際の開口性に問題が生じることから、本出願人は、キシレン可溶分量を特定したプロピレン・エチレンブロック共重合体に少量の高密度ポリエチレンを配合する提案(特許文献4)を行っているが、耐低温衝撃性が悪化する場合があった。
また特許文献5においては第一工程で実質的に不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体とした重合体部分を重合し、次いで第二工程を気相中でエチレン含有量が20〜50重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を重合して得られるブロック共重合体を溶融混練してなるレトルト食品包装用フィルムおよびその製造方法が開示されているが、耐低温衝撃性とヒートシール性、耐ブロッキング性には優れているが、耐ユズ肌性は良くなかった。
一方で、特許文献6にはユズ肌の発生が少なく、耐低温衝撃性、耐白化性、ヒートシール性に優れたレトルト食品包装用のシーラントフィルムが開示されているが、シール強度が十分ではなかった。
ここでユズ肌現象とは、カレーなどの油性食品を封入しレトルト殺菌をした後にフィルム表面に凹凸が生じる現象であり、外観上の問題として問題視される。ユズ肌発生の原因としては、レトルト食品に含まれる油分が最内層のシーラント層であるポリプロピレン系フィルム中に浸透・拡散した際に、該フィルム構成樹脂中における耐低温衝撃性改良のためのゴム成分に膨潤が発生し、ゴム成分の分散粒子径が大きいと膨潤の不均一が発生し、かかるゴム成分の不均一膨潤に伴うフィルムの微細凹凸発生の結果、外観がユズ肌状に見えるものである。
また、かかる耐ユズ肌性の良好なフィルムを提供すべく、特定のプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体にエチレン系共重合体エラストマーを配合する提案(特許文献7)がなされているが、単層フィルム構成では改善効果が十分なものではなかった。
さらに、安定した低温ヒートシール性、セミレトルト耐性、透明性及び低温での耐低温衝撃性を一挙に満足させるべく、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主体とするポリオレフィンに、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなる水添ブロック共重合体を特定量配合することが提案されている(特許文献8)。また更に、袋の中の食品が視認でき、電子レンジでも使用できるパウチとして、ハイレトルト用途にも広く使用できるように、プロピレン・エチレンブロック共重合体の融点、及びスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物のスチレンとエチレン・ブチレンの比を特定すると共に、該フィルムの赤外吸光高度計によるプロピレン帰属の吸光度とエチレン帰属の吸光度比、及びスチレン帰属の吸光度比を特定する提案(特許文献9)が行われており、耐折り曲げ白化性に優れたシーラントフィルムが提供されるに至ったが、耐ユズ肌性が必ずしも十分に満足されるものではなかった。
上述した如く、レトルト包装用シーラントに要求される品質は、近年益々高レベルのものが要望されるようになってきており、これまで開示された構成のものでは、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐屈曲白化性、耐ユズ肌性等が未だ不十分で、これらの要求特性全てを高いレベルでバランスよく満足するものは見出されていなかった。
特開平07−166024公報 特開平06−93062号公報 特開平10−87744号公報 特開平10−158463号公報 特開2000−186159公報 特開2003−105164公報 特開2000−256532号公報 特開平7−166024号公報 特開2008−255285号公報
本発明は、耐低温衝撃性に優れ、さらに耐ユズ肌性にも優れた、大型のレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体を提供することにある。
本発明者らは従来技術の問題点に鑑み、プロピレン・エチレンブロック共重合体の特性、追加添加する各種樹脂を鋭意検討した結果、前記課題を解決するに至った。
すなわち、本発明にかかるポリプロピレン系フィルムは、少なくともプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)45〜84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3〜15重量%、および低密度のポリエチレン系重合体(c)10〜40重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が75〜90重量%で、該不溶部の極限粘度([η])が1.8〜2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5〜3.3dl/gであるポリプロピレン系フィルムである。
また、本発明は、前記水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)がスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体であって、スチレンに対しエチレンとブチレンの合計の重量比が12/88から67/33の範囲であることを特徴とするものである。
また、更に本発明は、前記低密度のポリエチレン系重合体(c)が密度0.900g/cm以上0.935g/cm以下で、メルトフローレートが1〜20g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とするものである。
また、本発明は、エチレン・α−オレフィンエラストマー(d)が3〜15重量%含有されてなるポリプロピレン系フィルムである。
また、更に本発明は、単層または2層以上のフィルムが積層された基材層の片面にヒートシール層として上記いずれかに記載のフィルムが積層されていることを特徴とする積層体である。
本願発明のポリプロピレン系フィルムは、耐低温衝撃性、及び耐ユズ肌性を高いレベルで兼備し、レトルト包装用に好適なシーラントフィルムとして使用できる。また、本発明にかかる積層体は業務用等のパウチの大型化にも好ましく対応でき、油性食品を包装してもユズ肌等が生じ難く、外観良好で落袋強度等に優れたレトルト用包装袋を提供できる。
以下に、本発明のポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体について具体的に説明する。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、少なくともプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)45〜84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3〜15重量%、および(c)低密度のポリエチレン系重合体10〜40重量%からなる組成である必要がある。
ここで、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は、該ブロック共重合体の20℃キシレン不溶部の割合が75〜90重量%で、該不溶部の極限粘度([η]と称す)が1.8〜2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EPと称す)が2.5〜3.3dl/gとする必要がある。なお上記20℃キシレン不溶部、及び該可溶部とは、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットを沸騰キシレンに完全に溶解させた後20℃に降温し、4時間以上放置し、その後これを析出物と溶液とに濾別した際、析出物を20℃キシレン不溶部と称し、溶液部分(濾液)を乾固して減圧下70℃で乾燥して得られる部分を該可溶部と称す。
かかるキシレン不溶部はプロピレン・エチレンブロック共重合体中のポリプロピレンからなる海成分に相当し、キシレン可溶部はポリエチレンおよびエチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分に相当する。これら不溶部と可溶部の割合については、不溶部の割合が75〜90重量%の範囲にあることが必要であり、該不溶部が75重量%より小さければ、可溶部の割合が大きくなることで耐ブロッキング性、耐熱性、剛性、耐屈曲白化性が低下し、該不溶部が90重量%より大きければ、可溶部の寄与による耐低温衝撃性が不足する。
また、キシレン不溶部の極限粘度([η])は1.8〜2.2dl/gであり、該極限粘度([η])が1.8dl/gより小さければ、海成分のポリプロピレンの分子量が小さいことで耐低温衝撃性、耐屈曲白化性が不十分となり、2.2dl/gより大きければ、反対にポリプロピレンの分子量が大きくなりすぎ、キャスト成形が困難になる。
また、キシレン可溶部の極限粘度([η]EP)は2.5〜3.3dl/gであり、2.5dl/gより小さければフィルムがベタつくなど耐ブロッキング性が悪化し、3.3dl/gより大きければ、ポリエチレンおよびエチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分の分散粒子径が大きくなり、油性食品を包装した場合、ユズ肌現象が生じ易くなり、また、ゲル、フィッシュアイ等が発生する懸念がある。
尚、キシレン可溶部のエチレン含有量は20〜50重量%の範囲が好ましい。該含有率が20重量%より小さければ低温での耐低温衝撃性が低下し、逆に、50重量%より大きければ、耐ブロッキング性が不十分となりやすい。
かかるプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は、後述の水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)と低密度のポリエチレン系重合体(c)を加えた際、耐ユズ肌性や耐低温衝撃性がより著しく良化する。
また、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)のメルトフローレート(MFR、単位g/10分)としては、キャスト成形性の観点及び耐低温衝撃性の低下やゲル、フィッシュアイの発生懸念の観点から0.5〜5g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは、1〜3.5g/10分の範囲である。MFRが0.5未満では溶融粘度が高すぎて、製膜時に安定して口金から押出しするのが難しく、MFRが5を越えると耐低温衝撃性が悪化する。
ここで、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)のキシレン不溶分及び可溶分の極限粘度、及びメルトフローレートの調整方法としては、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)の重合時の各工程で水素ガスや金属化合物などの分子量調整剤を加える方法、パウダー状で得られた重合体を溶融混練しペレタイズする際に添加剤を添加する方法、パウダーで得られた重合体を溶融混練しペレタイズする際の混練条件を調整する方法等を挙げることができる。
尚、本発明に用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)の製造方法としては、触媒を用いて原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。ここで、触媒としてはチーグラー・ナッタ型やメタロセン触媒などを用いることができ、例えば、特開平07−216017号公報に挙げられるものを好適に用いることができる。具体的には(1)Si−O結合を有する有機ケイ素化合物及びエステル化合物の存在下、一般式Ti(OR)4−a(式中、Rは炭素数が1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン原子、aは0<a≦4の数字を表し、好ましくは2≦a≦4、特に好ましくはa=4である。)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物で処理した後、エーテル化合物と四塩化チタンの混合物もしくはエーテル化合物と四塩化チタンとエステル化合物の混合物で処理することにより、得られる3価のチタン化合物含有固体触媒、(2)有機アルミニウム化合物、(3)電子供与性化合物(ジアルキルジメトキシシラン等が好ましく用いられる)よりなる触媒系が挙げられる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)の製造方法として、生産性及び耐低温衝撃性の観点から、第1工程で実質的に不活性剤の不存在下にプロピレンを主体とした重合体部分を重合し、次いで第2工程で気相中にてエチレン・プロピレン共重合体を重合する方法を用いるのが好ましい。
ここでプロピレンを主体とした重合体部分は、耐熱性、剛性などの観点から、融点が160℃以上のプロピレン単独重合体が好ましいが、融点が160℃以上の範囲のものであれば、プロピレンと少量のエチレン、1−ブテンなどのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
次に、本発明に用いる水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)とは、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBからなる構造を有しており、例えばA−B−A、B−A−B−A、B−A−B−A−B及びこれらの混合物等からなる水添ブロック共重合体が挙げられる。該水添ブロック共重合体はビニル芳香族化合物を10〜40重量%含むのが望ましい。
重合体ブロックAを構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレンが挙げられ、特にスチレンが好ましい。また、重合体ブロックBを構成する水素添加された共役ジエン化合物の水添前の共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1、3−ペンタジエンが挙げられ、特にブタジエン、イソプレンが好ましい。ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体において、共役ジエン化合物に基づく脂肪族二重結合の80%、好ましくは90%以上が水素添加され、オレフィン系化合物重合体ブロックBとしたものが好ましい。
代表的な水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)としては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の耐候性、耐熱性を向上させるために二重結合に水素を添加した水素添加物であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SBES)、同じくスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体などが挙げられ、特にスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体が好ましい。スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の中でも、スチレン含有量が低く、エチレンとブチレン含有量が高いものが、ポリプロピレンからなる海成分とポリエチレンおよびエチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分への相溶性に優れ、具体的にはJSR(株)製“ダイナロン”8601Pや旭化成(株)製“タフテック”H1062やクレイトンポリマージャパン(株)製のG1660などが好適に使用でき、スチレンに対しエチレンとブチレン合計の重量比が12/88から67/33の範囲のものが好ましい。
本発明において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)に、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)を添加することで、耐低温衝撃性を向上させることができるとともに、ポリエチレンおよびエチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分の分散性を向上させ、分散粒子径を小さくすることで耐ユズ肌性を向上させることができる。本発明のポリプロピレン系フィルムにおける水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)の組成割合は3〜15重量%の範囲であることが重要であり、該水添スチレン系熱可塑性エラストマーが3重量%未満の場合は、レトルト処理後の耐低温衝撃性、及び耐ユズ肌性の改善効果が小さくなる。逆に15重量%を越える場合はレトルト処理での耐熱性が不十分となり、耐ブロッキング性も低下する。かかる水添スチレン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、耐低温衝撃性の点で5g以下/10分が好ましく、さらに好ましくは0.2〜5g/10分である。
次に本発明に用いるもう1つの成分は、低密度のポリエチレン系重合体(c)である。低密度とは0.900〜0.935g/cmの範囲の密度のことを指す。ポリエチレン系重合体とは、エチレン単独またはエチレンと炭素数3以上のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等との共重合体であり、一般的に知られている方法によって製造されているものが使用できる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレンや、直鎖状低密度ポリエチレンが使用でき、中でも密度0.900〜0.935g/cmであって、190℃でのMFRが1〜20g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。かかるポリエチレン系重合体の密度が0.900g/cm未満では耐ブロッキング性が低下し、0.935g/cmより高い場合は耐低温衝撃性が低下する。
本発明において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)に、上述の低密度のポリエチレン系重合体(c)を添加し、ポリプロピレンよりも低いガラス転移点の成分を増やすことで耐低温衝撃性を向上させることができ、またポリエチレン成分をより多く均一にポリプロピレン中に微分散させることで耐ユズ肌性を向上させることができる。
かかる低密度のポリエチレン系重合体(c)は、本発明のポリプロピレン系フィルムにおける組成割合として、10〜40重量%を含有することが必要である。該ポリエチレン系重合体が10重量%未満の場合、耐低温衝撃性及び耐ユズ肌性の改善効果が十分でなく、逆に30重量%を超える場合は耐ブロッキング性が低下し、加工性や袋の開口性が悪化する。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、さらに第4成分として、エチレン・α−オレフィンエラストマー(d)を3〜15重量%含有させてもよく、かかるエチレン・α−オレフィンエラストマー(d)を含有させることにより、更に低温での耐低温衝撃性を向上できる。含有量が3重量%未満では追添の効果は見られず、逆に15重量%より多い場合は、耐ブロッキング性、シール性が低下する場合があるので、要求特性のバランスを調整しつつ配合割合を最適化するのが好ましい。
かかるエチレン・α−オレフィンエラストマー(d)は、低結晶性もしくは非晶性の共重合体エラストマーであり、主成分としての50〜90重量%のエチレンと共重合モノマーとしてのα−オレフィンとのランダム共重合体であり、具体的にはメタロセン系触媒により製造されるものが好ましい。
尚、α−オレフィンとしては、炭素数が3〜10のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのものが使用でき、具体的なα−オレフィンエラストマーとしては、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテンランダム共重合体、エチレン・オクテンランダム共重合体等を挙げることができ、中でもエチレン・プロピレンランダム共重合体或いはエチレン・ブテンランダム共重合体を好ましく用いることができる。
また、該エチレン・α−オレフィンエラストマー(d)のメルトフローレートとしては、190℃、荷重21.18N下で、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)との混和性の観点及び耐ブロッキング性の観点から、0.3〜6g/10分の範囲が好ましい。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、上記の(a)、(b)、(c)の3成分を、或いは好ましくは上記(a)、(b)、(c)及び(d)の4成分を、通常の方法で混合して、得られた混合物を通常の方法でフィルムに成形することによって得られる。溶融製膜法としては、インフレーション法、ダイ法、カレンダー法などがあり、特にダイ法を好ましく採用できる。例えば、1軸または2軸の溶融押出機で(a)、(b)、(c)及び(d)のペレットまたはパウダーを必要量溶融混練したのち、得られた混練物をフィルターで濾過して、フラットダイ(例えばTダイ)または環状のダイからフィルム状に押し出すことによって製造できる。溶融押出機から押出す溶融ポリマの温度は通常200〜300℃が適用できるが、ポリマの分解を防ぎ良好な品質のフィルムを得るためには、220〜270℃が好ましい。Tダイから押出す場合は、押出されたフィルムは20〜65℃の一定温度に設定した冷却ロールに接触させて、冷却・固化させた後巻き取る。環状ダイから押出す場合は、一般にインフレーション法と呼ばれる方法でバブルを形成し、これを冷却・固化させた後、巻き取る。
本発明のポリプロピレン系フィルムは冷却固化の後に延伸を行うこともできるが、好ましくは実質的に延伸を行わない無延伸フィルムであることが好ましい。実質的に延伸を行わない無延伸フィルムの方が、引き裂き強さに優れ、かつ、ヒートシールする際のヒートシール温度を過度に高める必要がない(比較的低温でヒートシールできる)ことから好ましい。また、本発明において、無延伸フィルムとは、押出キャストフィルムのことであるが、実際の製膜工程においては、フィルムの長手方向または幅方向に若干配向したフィルムとなる場合もあるため、本発明における無延伸フィルムの複屈折率(フィルムの長手方向と幅方向の屈折率の差)は0.005以下であることが、ヒートシール性と熱寸法安定性の点で好ましい。尚、複屈折率(Δn)は、コンペンセーター法を用い、サンプルのリターデーションR(nm)を測定し、該測定部のフィルムの厚みd(nm)より、Δn=R/dとして求めることができる。
このようにして得られた本発明のフィルムの厚さは20〜300μm、より好ましくは40〜100μmである。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、単独で包装用のフィルムとして使用することもできるが、一般のAl箔を含むレトルト食品包装袋用のシーラントフィルムとして好ましく使用できる。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、塩酸吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤、造核剤等を含むことができる。これらの添加剤は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系として、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(“イルガノックス”1076、“Sumilizer”BP−76)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(“イルガノックス”1010、“Sumilizer”BP−101)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(“イルガノックス”3114、Mark AO−20)等を、また、ホスファイト系(リン系)酸化防止剤として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(“Irgafos” 168、Mark 2112)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−4’−ビフェニレン−ジホスホナイト(“Sandstab”P−EPQ)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(“Ultranox”626,Mark PEP−24G)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(Mark PEP−8)等が挙げられるが、中でもこれらのヒンダードフェノール系とホスファイト系の両機能を合わせ持つ6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン(“Sumilizer”GP)、及び、アクリル酸2[1−2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル]エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(“Sumilizer” GS)が好ましく、特に、この両者の併用は、フィルム製膜に際し、特に20℃キシレン可溶部の分解抑制に効果を発揮し、耐低温衝撃性と耐ブロッキング性の両立に大きく寄与することから好ましい。かかるキシレン可溶部の分解が促進されると耐ブロッキング性が悪化する。
尚、酸化防止剤の添加量としては、用いる酸化防止剤の種類にもよるが、0.05〜0.3重量%の範囲で適宜設定すればよい。
また、中和剤としては、ハイドロタルサイト類化合物、水酸化カルシウムなどがフィルム製膜時の発煙低下に好ましい。
また、本発明のポリプロピレン系フィルムは、必要に応じて通常工業的に実施される大気中でのコロナ放電処理、窒素や炭酸ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理を施すこともできる。
また、本発明は上述したポリプロピレン系フィルムを用いた積層体に関する。本発明に係る積層体は、特に単層または2層以上の透明なフィルムとアルミニウム箔とが積層された基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルム(以下本フィルムと記載)を積層してなるものである。また、単層または2層以上の透明なフィルムからなる基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルムが積層された積層体である。これらの代表的な構成は、PET/AL箔/本フィルム、PET/ON/AL箔/本フィルム、PET/AL箔/ON/本フィルム、ON/本フィルムである。
かかる積層体の製造方法は、積層体の構成フィルムに接着剤を用いて貼合わせる通常のドライラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて本フィルムと基材層の貼合わせには直接ポリプロピレン系樹脂を押出してラミネートする方法も採用できる。
これら積層体は本フィルムをシール層(袋の内面)として、平袋、スタンディングパウチなどに製袋加工され使用される。
また、これら積層体の積層構造は、包装袋の要求特性(例えば包装する食品の品質保持期間を満たすためのバリア性能、内容物の重量に対応できるサイズ・耐低温衝撃性、内容物の視認性など)に応じて適宜選択される。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。また、本発明の詳細な説明および実施例中の各評価項目の測定値は、下記の方法で測定した。
(1)20℃キシレン可溶部の含有量
ポリプロピレンペレット5gを沸騰キシレン(関東化学(株)1級)500mlに完全に溶解させた後に、20℃に降温し、4時間以上放置する。その後、これを析出物と溶液とに濾過して、可溶部と不溶部に分離した。可溶部は濾液を減圧下で固化した後、70℃で乾燥し、その重量を測定して含有量(重量%)を求めた。
(2)20℃キシレン不溶部および可溶部の極限粘度
上記方法で分離したサンプルを用い、ウベローデ型粘度計を用いて、135℃テトラリン中で測定を行った。
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K−7210−1999に準拠し、プロピレン・エチレンブロック共重合体は温度230℃、ポリエチレン系重合体は温度190℃、水添スチレン系熱可塑性エラストマー及びエチレン・α−オレフィンランダム共重合エラストマーは温度230℃または190℃で、それぞれ荷重21.18Nにて測定した。
(4)密度
JIS K−7112−1999に基づき、密度勾配管による測定方法で測定した。
(5)ブロッキング剪断力
幅30mmで長さ100mmのフィルムサンプルを準備し、シール面どうしを30mm×40mmの範囲を重ね合わせて、500g/12cmの荷重をかけ、80℃のオーブン内で24時間加熱処理した後、23℃、湿度65%の雰囲気下に30分以上放置した後、オリエンテック社製テンシロンを使用して300mm/分の引張速度で剪断剥離力を測定した。 本測定法で剪断剥離力が30N/12cm以下を良好と判定した。
(6)耐低温衝撃性
厚さ12μmのPETフィルムと厚さ15μmのONフィルムと厚さ9μmのAL箔と本発明のフィルムとをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の積層体を作成した。
積層体構成:PET/接着剤/ON/接着剤/AL箔/接着剤/本発明のフィルム
この積層体2枚を本発明のフィルムが袋の内面になるようにして、富士インパルス社製CA−450−10型ヒートシーラーを使用し、加熱時間1.4秒(シール温度:約220℃)、冷却時間3.0秒で、製袋サイズ150mm×285mmのスタンディングパウチを作成した。この袋に濃度0.1%の食塩水1000cmを充填した後、135℃で30分レトルト処理する。レトルト処理後の袋を0℃の冷蔵庫で保管した後、55cmの高さから平らな床面に落下させ(n数20個)、破袋に至るまでの回数を記録する。本評価法ではn数20個の平均値で15回以上を耐低温衝撃性良好とした。
(7)耐ユズ肌性
厚さ12μmのPETフィルムと厚さ15μmのONフィルムと厚さ9μmのアルミニウム箔と本発明のフィルムとをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の厚さ115μmの積層体を作成した。
積層体構成:PET/接着剤/ON/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/本発明のフィルム
この積層体2枚を本発明のフィルムが袋の内面になるようにして、平板ヒートシーラーを使用し、シール温度180℃、シール圧力1kg/cm、シール時間1秒の条件でヒートシールし、160mm×210mm(内部の寸法)の大きさの3方袋(平袋、シール幅5mm)を作成した。この袋に市販のレトルトカレー(ハウス食品工業社製のレトルトカレー「ククレカレー・辛口」)を充填した後、135℃で30分レトルト処理をした直後の積層体表面の凹凸発生状況を目視判定した。全く発生しないものをランク1、僅かに発生するものをランク2、軽度に発生するものをランク3、明確に発生するものをランク4、重度に発生するものをランク5として評価した。本評価法でランク1、2を耐ユズ肌性良好とした。
[実施例1]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)、水添エチレン系熱可塑性エラストマー(b)、低密度のポリエチレン系重合体(c)は次のものを使用した。
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)
20℃キシレン不溶部の含有量が85.5重量%、その極限粘度([η])が1.93dl/g、20℃キシレン可溶部の含有量が14.5重量%、その極限粘度([η]EP)が2.75dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分であり、酸化防止剤として“Sumilizer”GP300ppm及び“Sumilizer”GS750ppmを含有したプロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットを使用した。
(2)水添エチレン系熱可塑性エラストマー(b)
エチレンとブチレン合計の重量比が18/82のスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS、クレイトンポリマージャパン社製G1660)を使用した。
(3)低密度のポリエチレン系重合体(c)
密度0.935g/cmで、MFR3.0g/10分、共重合成分が1−ブテンである直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製GA401)を使用した。
前記(a)80重量%、(b)5重量%、(c)15重量%を、ペレット状態でブレンダーにより混合して押出機に供給し、溶融混練してフィルターで濾過し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後片面をコロナ放電処理して厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、耐ユズ肌性に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[実施例2]
実施例1で使用した(a)、(b)、(c)の混合比率を、(a)73重量%、(b)12重量%、(c)15重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、ユズ肌に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[実施例3]
実施例1で使用した(a)、(b)、(c)の混合比率を、(a)72重量%、(b)3重量%、(c)25重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、ユズ肌に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[実施例4]
実施例1で使用した(a)、(b)、(c)の混合比率を、(a)63重量%、(b)12重量%、(c)25重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、ユズ肌に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[実施例5]
実施例1で使用した(a)、(b)、(c)に、エチレン・α−オレフィンエラストマー(d)として、0.88g/cm、MFR(190℃)0.5g/10分のエチレン・ブテンランダム共重合体(三井化学株式会社製“タフマー”A0585)を加え、(a)72重量%、(b)3重量%、(c)20重量%、(d)5重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、耐ユズ肌性に優れたものであり、特に低温衝撃性は上記(d)を添加することでさらに優れたものとなり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[実施例6]
実施例5で使用した(a)、(b)、(c)、(d)の混合比率を、(a)67重量%、(b)3重量%、(c)20重量%、(d)10重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、耐ユズ肌性に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[実施例7]
低密度のポリエチレン系重合体(c)として、密度が0.903g/cmで、MFR3.8g/10分の共重合成分が1−ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製SP0540)を使用した。(c)を変更する以外は、実施例5と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、ユズ肌に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[実施例8]
低密度のポリエチレン系重合体(c)として、密度が0.919g/cmで、MFR7.0g/10分である低密度ポリエチレン(住友化学(株)製L704)を使用した。(c)を変更する以外は、実施例5と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性、ユズ肌に優れたものであり、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。
[比較例1]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)を20℃キシレン不溶部の含有量が87.0重量%、その極限粘度([η])が2.00dl/g、20℃キシレン可溶部の含有量が13.0重量%、その極限粘度([η]EP)が1.80dl/g、230℃でのMFRが1.8g/10分であり、酸化防止剤として“イルガノックス”1010を700ppm、“イルガフォス”168を250ppm含有したプロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットに変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは、耐低温衝撃性が悪化し、耐ブロッキング性が不良であった。
[比較例2]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)を20℃キシレン不溶部の含有量が85.0重量%、その極限粘度([η])が1.70dl/g、20℃キシレン可溶部の含有量が15.0重量%、その極限粘度([η]EP)が2.75dl/g、230℃でのMFRが3.2g/10分であり、酸化防止剤として“イルガノックス”1010を700ppm、“イルガフォス”168を250ppm含有したプロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットに変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは、耐低温衝撃性が悪化し、耐ブロッキング性が不良であった。
[比較例3]
実施例1の(a)、(b)、(c)の混合比率を、(a)79重量%、(b)1重量%、(c)20重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性が悪化し、耐ユズ肌性も不十分なものであった。
[比較例4]
実施例1の(a)、(b)、(c)の混合比率を、(a)92重量%、(b)3重量%、(c)5重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐低温衝撃性が悪化し、耐ユズ肌性も不十分なものであった。
[比較例5]
実施例1の(a)、(b)、(c)の混合比率を、(a)57重量%、(b)18重量%、(c)25重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐ブロッキング性が不良であった。
[比較例6]
実施例1の(a)、(b)、(c)の混合比率を、(a)62重量%、(b)3重量%、(c)35重量%に変更する以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmフィルムを得た。得られたフィルムは耐ブロッキング性が不良であった。
Figure 2015168766
本発明のポリプロピレン系フィルムは、耐低温衝撃性、耐ブロッキング性、耐ユズ肌発生性等を兼備し、レトルト包装用途に好適なシーラントフィルムとして使用できる。
また、本発明の積層体は前記のポリプロピレン系フィルムがヒートシール層として積層されているので、この積層体を使用することにより、特に耐低温衝撃性、耐ユズ肌発生性に優れたレトルト用包装袋を提供できる。

Claims (5)

  1. プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)45〜84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3〜15重量%、および低密度のポリエチレン系重合体(c)10〜40重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、プロピレン・エチレン共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が75%〜90%重量%で、該不溶部の極限粘度([η])が1.8〜2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5〜3.3dl/gであることを特徴とするポリプロピレン系フィルム。
  2. 水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)がスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体であって、スチレンに対しエチレンとブチレンの合計の重量比が12/88から67/33の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系フィルム。
  3. 低密度のポリエチレン系重合体(c)が密度0.900g/cm以上0.935g/cm以下で、メルトフローレートが1〜20g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン系フィルム。
  4. 樹脂組成物にエチレン・α−オレフィンエラストマー(d)が3〜15重量%含有されてなる請求項1から3のいずれかに記載のポリプロピレン系フィルム。
  5. 単層または2層以上のフィルムが積層された基材層の片面にヒートシール層として請求項1から4のいずれかに記載のポリプロピレン系フィルムが積層された積層体。
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