JP4938282B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物、シーラントフィルム及びレトルト食品包装用積層体 - Google Patents
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Description
この発明によれば、成分(A)であるポリプロピレン系樹脂がプロピレン−エチレンブロック共重合体、及びプロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂であるため、剛性と耐衝撃性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物を提供できる。
この発明によれば、成分(B)であるシングルサイト触媒により重合して得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体がアイソタクチック構造を有し、密度とメルトフローレート(MFR)が所定の範囲にあるので、剛性と耐衝撃性のバランスに優れるとともに、適度な成形性(押出特性)を持ったポリプロピレン系樹脂組成物を提供できる。
この発明によれば、成分(C)であるエチレン−α−オレフィン共重合体が2〜35質量部配合されているので、低温における耐衝撃性に特に優れる。例えば、本組成物からなるシーラントフィルムを用いた製袋品を、低温の環境下で落下させた場合の破袋強度に優れる。
この発明によれば、シーラントフィルムが前記したポリプロピレン系樹脂組成物を原料としているため、低温での耐衝撃性に優れる。さらに、このシーラントフィルムは、高いヒートシール強度を持ち、しかも、高温のレトルト処理を経てもヒートシール強度が低下しない。
この発明によれば、前記したシーラントフィルムの片面に基材フィルムが積層されているため、レトルト食品包装袋として前述の効果を奏する。なお、基材フィルムとしては、耐熱性の観点から二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましく、耐衝撃性・耐ピンホール性の観点からは二軸延伸ナイロンフィルムが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、(A)ポリプロピレン系樹脂30〜95質量%と、(B)シングルサイト触媒により重合して得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜70質量%とからなる樹脂組成物に対して、(C)エチレン−α−オレフィン共重合体が配合されたものである。
成分(A)であるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、及びプロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体等が挙げられる。
該共重合体のメルトフローレートが0.1g/10min未満であると、その共重合体を用いた本願ポリプロピレン系樹脂組成物は製膜が難しくなり、15g/10minを越えると、その共重合体を用いた本願ポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムの耐衝撃性が低下するおそれがある。
該共重合体の融点が150℃未満の場合は、該共重合体の耐熱性が低下し、その共重合体を用いた本願ポリプロピレン系樹脂組成物は、レトルト後のヒートシール強度が低下するおそれがある。170℃を越える融点を持つ該共重合体は、実質的に、高アイソタクティックなホモポリプロピレンと同じことになり(エチレン量がゼロに近い)、耐衝撃性が低いため、その共重合体を用いた本願ポリプロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性も低下するおそれがある。
エチレン単位が2質量%未満であると、低温でヒートシールする場合にいわゆるショット数を落とさざるを得なくなる上に、ヒートシール部の耐衝撃性も低下する。一方、エチレン単位が10質量%を越えると、融点が低くなりすぎ、レトルト用途には使用しにくくなる。エチレン単位の含有量は、より好ましくは2〜5質量%である。
MFRが0.1g/10min未満であると、フィルムの押出成形が困難となる。一方、MFRが15g/10minを越えると、成形後のフィルムの耐衝撃性が低下するおそれがある。MFRは、好ましくは0.5〜4.0g/10minである。
エチレン単位とブテン−1単位の含有量がともに1質量%未満の場合は、低温でヒートシールする場合にいわゆるショット数を落とさざるを得なくなる上に、ヒートシール部の耐衝撃性も低下する。一方、エチレン単位やブテン−1単位の少なくとも一方が上限値を越えると、融点が低くなりすぎてレトルト用途には使用しにくくなる。エチレン単位とブテン−1単位の含有量は、より好ましくはともに2〜5質量%である。
MFRが0.1g/10min未満であると、フィルムの押出成形が困難となる。一方、MFRが15g/10minを越えると、成形後のフィルムの耐衝撃性が低下するおそれがある。MFRは、好ましくは0.5〜3.0g/10minである。
このような成分(A)ポリプロピレン系樹脂の製造法は特に制限はなく、公知の重合触媒及び重合方法により製造することができる。
ここで、分子量分布は、ゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求められる。
S70≧0.48×Tm+25 (1)
このS70は、成分(B)であるプロピレン−エチレンランダム共重合体の立体規則性の尺度であり、融解ピーク温度(Tm)は、成形後のシーラントフィルムのヒートシール性の尺度である。従って、この式(1)を満足する範囲は、シーラントフィルムの剛性とヒートシール性のバランスに優れている。
なお、S70は、連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めたものであって、70℃以上で溶出する全量である。このS70は、例えば下記の要領で測定可能である。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
試料濃度:5mg/ml
試料注入量:0.2ml
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製MIRAN1A
測定波長:3.42μm
なお、式(1)の右辺を左辺に近づけるには、多段重合でプロピレン−エチレンランダム共重合体を製造する等、分子量分布を広げるように条件を適宜変更しても良い。
メタロセン系触媒としては、例えば、置換シクロペンタジエニル環をもつ遷移金属化合物から構成されるものが含まれる。具体的なメタロセン系触媒は、特開平8−134121号公報、特表平8−509773号公報、特表平8−510290号公報、特開平6−306121号公報又は特表平7−500622号公報などに、詳細に記載されている。
このような触媒の存在下で、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、スラリー重合法、気相重合法のいずれかの方法で、0〜250℃の温度及び高圧(50MPa超)、中圧(10〜50MPa)又は低圧(常圧〜10MPa未満)のいずれかの圧力で、重合し製造することができる。
また、ここで、成分(C)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、成分(A)と成分(B)とからなる樹脂組成物100質量部に対して、2〜35質量部配合されることが好ましい。成分(C)であるエチレン−α−オレフィン共重合体の配合量が2質量部未満であると、低温における耐衝撃性の向上が十分ではなく、一方、35質量部を越えると、耐熱性が低下し、レトルト処理後のヒートシール強度が低下するおそれがある。
チルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2、4、6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、メチレンビス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、テトラキス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)−4、4'−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2、4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4、4'−ビフェニレン−ジ−フォスフォ
ナイト等が使用できる。
[各樹脂成分の性状]
以下に、実施例及び比較例にて用いた各樹脂成分の性状を示す。
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分(A))
プロピレン−エチレンブロック共重合体として、以下のBPP−1及びBPP−2を用いた。
基本構造:
プロピレン単位単独重合体成分 :75質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分:25質量%
(プロピレン−エチレンランダム共重合体成分は、エチレン単位35質量%と、プロピレン単位65質量%とから構成される。)
メルロフローレート(MFR、230℃) :1.0g/10min
密度 :0.900g/cm3
基本構造:
プロピレン単位単独重合体成分 :82質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分 :18質量%
(プロピレン−エチレンランダム共重合体成分は、エチレン単位33質量%と、プロピレン単位67質量%とから構成される。)
メルロフローレート(MFR、230℃) :3.7g/10min
密度 :0.900g/cm3
シングルサイト触媒により重合して得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体として、以下のRPP−1を用いた。
基本構造:
エチレン単位の含有量 :2.7質量%
プロピレン単位の含有量 :97.3質量%
メルロフローレート(MFR、230℃) :6.5g/10min
密度 :0.900g/cm3
融解ピーク温度(Tm) :133.3℃
分子量分布(Mw/Mn) :2.5
オルトジクロロベンゼン抽出量 :0.3質量%
(オルトジクロロベンゼンを溶媒とするTREFにより測定される常温非晶部量)
マルチサイト触媒により重合して得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体として、以下のRPP−2を用いた。
基本構造:
エチレン単位の含有量 :2.4質量%
プロピレン単位の含有量 :97.6質量%
メルロフローレート(MFR、230℃) :7.4g/10min
密度 :0.900g/cm3
融解ピーク温度(Tm) :144.5℃
分子量分布(Mw/Mn) :4.3
オルトジクロロベンゼン抽出量 :2.3質量%
(オルトジクロロベンゼンを溶媒とするTREFにより測定される常温非晶部量)
エチレン−α−オレフィン共重合体として、以下のEBMとm−C8LLを用いた。ここで、EBMは、シングルサイト触媒により重合して得られたランダム共重合体であり、m−C8LLは、シングルサイト触媒により重合して得られた共重合体である。
基本構造:エチレン−ブテン−1ランダム共重合体
メルロフローレート(MFR、190℃) :3.6g/10min
密度 :0.885g/cm3
融解ピーク温度(Tm) :68℃
ビカット軟化点 :60℃
低温脆化温度 :―70℃未満
基本構造:エチレン−オクテン−1共重合体
メルトフローレート(MFR、190℃) :3.0g/10min
密度 :0.875g/cm3
極限粘度[η] :1.35dl/g
樹脂成分としてBPP−1とRPP−1をともに50質量%ずつ含む樹脂組成物(ペレット)100質量部にEBM(ペレット)を5質量部配合したものを押出機に供給して、220℃で溶融混練し、空冷インフレーション法により厚さ70μmのシーラントフィルム(ブロー比:2)を成形した。
次に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(基材フィルム)と厚さ7μmのアルミニウム箔とをウレタン系接着剤を用いてドライラミネートを行い、さらにこのアルミニウム箔層と前記したシーラントフィルムとをウレタン系接着剤を用いてドライラミネートを行った。最終的に、二軸延伸ポリエステル層//アルミニウム箔//シーラント層の3層構成からなるレトルト食品包装用積層体を得た。
BPP−1をBPP−2に変更し、EBMの配合量を10質量部とした以外は、実施例1と同様にしてレトルト食品包装用積層体を得た。
RPP−1をRPP−2に変更した以外は、実施例1と同様にしてレトルト食品包装用積層体を得た。
RPP−1をRPP−2に変更した以外は、実施例2と同様にしてレトルト食品包装用積層体を得た。
樹脂成分としてBPP−1のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてレトルト食品包装用積層体を得た。
樹脂成分としてBPP−2のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてレトルト食品包装用積層体を得た。
樹脂成分としてEBMを配合しないこと以外は、実施例1と同様にしてレトルト食品包装用積層体を得た。
樹脂成分としてBPP−2 100質量部に対して、m−C8LLを11質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてレトルト食品包装用積層体を得た。
[評価方法]
(1)耐衝撃性
積層体を150mm×150mmの平袋に製袋し、200mLの水を充填した。121℃で30分間レトルト処理後、2重袋にて水平に落下させ破袋するまでの平均回数を測定した(0℃、落下高さ0.9m、n=10)。
なお、製袋条件は、以下の通りである。
ヒートシール幅 :8mm
ヒートシール圧 :3.0kg/cm2
ボトムシール温度:195℃
サイドシール温度:205〜215℃、
ヒートシール時間:0.8秒
積層体の内面同士を下記の4通りの温度でヒートシールを行った後、23℃の水で0.5秒間冷却してヒートシール強度測定用試料とした。各試料は、レトルト処理を行う前にヒートシール強度を測定するとともに、121℃で30分間処理を行って、23℃で1日保管した後にもヒートシール強度を測定した。
ヒートシール条件は、以下の通りである。
ヒートシール温度:200℃、210℃、220℃、230℃
ヒートシール形状:15mm×10mm
ヒートシール圧 :3.0kg/cm2
ヒートシール時間:0.5秒
表1の実施例1、2から明らかなように、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を原料とするシーラントフィルムを用いたレトルト食品包装用積層体は、いずれも低温における耐衝撃性に優れている。さらに、このレトルト食品包装用積層体は、レトルト処理後でもヒートシール強度がほとんど低下せず、レトルト食品包装用として実用上極めて優れている。
一方、比較例1、2は、成分(B)のかわりに、マルチサイト触媒により重合して得られたるプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いているため、レトルト処理後のヒートシール強度の低下が大きい。比較例3、4は、原料樹脂がプロピレン−エチレンブロック共重合体単独であるため、レトルト処理前後ともヒートシール強度が低い。また、比較例4は、低温耐衝撃性にも劣っている。比較例5は、原料中に樹脂成分として、成分(C)を配合していないため、低温耐衝撃性に劣っている。比較例6は、原料中に成分(B)が配合されていないので、レトルト処理後にヒートシール強度の低下が大きい。
Claims (6)
- (A)ポリプロピレン系樹脂30〜95質量%と、(B)シングルサイト触媒により重合して得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜70質量%とからなる樹脂組成物に対して、(C)エチレン−α−オレフィン共重合体を配合したポリプロピレン系樹脂組成物であって、
成分(A)がプロピレン−エチレンブロック共重合体、及びプロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。 - (A)ポリプロピレン系樹脂30〜95質量%と、(B)シングルサイト触媒により重合して得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体5〜70質量%とからなる樹脂組成物に対して、(C)エチレン−α−オレフィン共重合体を配合したポリプロピレン系樹脂組成物であって、
成分(A)がプロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、及びプロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、
成分(B)のプロピレン−エチレンランダム共重合体は、アイソタクチック構造を有し、密度が0.89〜0.915g/cm3、メルトフローレート(MFR)が0.1〜15g/10minであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。 - 請求項1または請求項2のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物において、
成分(C)のコモノマーであるα−オレフィンの炭素数が3〜18であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物において、
成分(A)と成分(B)とからなる樹脂組成物100質量部に対して、成分(C)を、2〜35質量部配合したことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物を原料とするシーラントフィルム。
- 請求項5に記載のシーラントフィルムの片面に基材フィルムが積層されていることを特徴とするレトルト食品包装用積層体。
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