JP4616937B2 - 内容品保存性に優れたポリプロピレン系多層ブローボトル及びその製造方法 - Google Patents

内容品保存性に優れたポリプロピレン系多層ブローボトル及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、防湿性等が改善され、内容品保存性に優れたポリプロピレン系多層ブローボトル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品用のボトル等の容器を多層プラスチック材料により構成することはよく知られており、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を内層又は外層とし、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物等のガスバリヤー性樹脂を中間層とする多層プラスチック容器が種々提案されている。
また、内層又は外層を構成する樹脂として、ポリプロピレン系樹脂に石油樹脂類を混合した樹脂組成物を使用することも公知であり(例えば、特許文献1〜4参照)、このような石油樹脂としては、ガラス転移点が50℃以上であるものが好適に用いられる(特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−76646号公報
【特許文献2】
特開平3−178435号公報
【特許文献3】
特開平3−262640号公報
【特許文献4】
特公平7−17042号公報
【0004】
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂と石油樹脂類の相溶性は必ずしも充分であるとは言えず、これらを混合した樹脂組成物層を有する多層ボトルをブロー成形により製造する際に、樹脂組成物層と他の層との境界での剥離や、樹脂組成物層表面におけるシャークスキンの発生等が生じることがある。その結果、得られる多層ボトルは透明性や外観の劣ったものとなり、また、防湿性、内容品保存性、耐落下衝撃性等の性状も不充分なものとなる。さらに、ボトルの成形性も悪く、生産コストを上昇させる等の問題点もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明はこれら従来技術の問題点を解消して、透明性、防湿性、耐落下衝撃性等が改善され、内容品保存性に優れるとともに、成形性の良好なポリプロピレン系多層ブローボトル及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討した結果、ポリプロピレン系樹脂に混合する石油樹脂として、特定の分子量と軟化点を有する水素添加石油樹脂(以下、「水添石油樹脂」と略記する)を使用することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明はつぎのような構成をとるものである。
1.酸素バリアー性樹脂層と少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂層を有するポリプロピレン系多層ブローボトルにおいて、中間層として酸素バリヤー性樹脂層の内側に配置する主層を構成するポリプロピレン系樹脂層がポリプロピレン系樹脂及び分子量500〜1300で軟化点が70〜150℃である水添石油樹脂を含有する樹脂組成物により構成されたものであり、水添石油樹脂の配合量が樹脂組成物を基準として3〜20重量%であることを特徴とするポリプロピレン系多層ブローボトル。
2.ポリプロピレン系樹脂がエチレン含量が2〜15モル%のエチレン・プロピレンランダム共重合体であることを特徴とする1に記載のポリプロピレン系多層ブローボトル。
3.ポリプロピレン系樹脂がエチレン含量が2〜20モル%のエチレン・プロピレンブロック共重合体であることを特徴とする1に記載のポリプロピレン系多層ブローボトル。
4.ダイから押出したパリソンを直ちにブロー成形用の金型ではさみ、パリソン内に空気を吹き込んで成形することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系多層ブローボトルの製造方法。
5.連続的に押出成形したパイプを所定長さに切断して製造したパリソンを再加熱して金型にはさみ、パリソン内に空気を吹き込んで成形することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系多層ブローボトルの製造方法。
6.射出成形によって底部の閉じたパリソンを成形し、これをブロー成形用金型に移してパリソン内に空気を吹き込んで成形することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系多層ブローボトルの製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で多層ブローボトルの少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂組成物層を構成するポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレンとエチレン等のα−オレフィン類とを共重合させたプロピレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。このような共重合体としては、例えばエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
好ましいポリプロピレン系樹脂としては、エチレン含有量が2〜15モル%で、MFRが1.0g/10分以上のエチレン・プロピレンランダム共重合体が挙げられる。
【0008】
エチレン・プロピレン共重合体中のエチレンの含有量が低い場合には、成形条件によっては、得られるボトルの透明性が低下する。一方、エチレンの含有量が15モル%を超えると、得られる共重合体中には低分子量物が多く含まれるようになり、得られる共重合体の性状が不安定になるとともに、重合反応が困難となり収率も低下するので実用性がないものとなる。
【0009】
他の好ましいポリプロピレン系樹脂としては、エチレン含有量が2〜20モル%で、MFRが0.5〜4.0g/10分のエチレン・プロピレンブロック共重合体が挙げられる。
このようなブロック共重合体は、例えば、プロピレン或いはプロピレンとエチレンの初段の重合に引き続いて、エチレン、プロピレンのゴム成分を次段で重合させることにより、最終的に所望のエチレン含有量とMFRを有するものを得ることができる。このようなブロック共重合体を多層ブローボトルの主層、或いは内層に使用した場合には、多層ボトルの衝撃強度、剛性を高く維持することができるとともに、外部ヘイズが小さくなり、透明性の優れたボトルとすることが可能となる。
【0010】
これらのポリプロピレン系樹脂には、その衝撃強度・透明性等の物性を向上させる目的で、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・α−オレフィン共重合体、等のポリエチレン系樹脂;エチレン・プロピレンゴム(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、芳香族ビニルモノマーと不飽和ビニルモノマーとのブロック共重合体の水素添加物(SEBS、SEPS)等の樹脂類を配合する場合がある。
【0011】
本発明の多層ブローボトルの少なくとも1層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物は、主成分となる上記のポリプロピレン系樹脂に少量成分として分子量500〜1300の水添石油樹脂を配合することによって得ることができる。
このような水添石油樹脂としては、石油のクラッキングにより副生する分解油成分を精製・重合して得られるC5〜C9留分を主成分とする脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂やテルペン系樹脂を水添したものが挙げられ、分子量が500〜1300で、軟化温度が70〜150℃、水添率が90%以上のものが好適に用いられる。
【0012】
テルペン樹脂類としては、ピネン、カレン、シルマン、オシメン、リモネン、テルピノン、テルピネン、サピネン、トリシフレン等を重合させたもので、極性基等を含まず、一般式(Cで表される樹脂が挙げられ、これらを水添したものが使用される。
水添石油樹脂の分子量が500未満のものや、極性基等を有するものは、ベタ付きが著しく、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が劣り、ポリプロピレン系樹脂との混合が困難となることがある。一方、分子量が1300を超える水添石油樹脂は実用性に難点がある。
【0013】
ポリプロピレン系樹脂と水添石油樹脂との混合方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、ポリプロピレン系樹脂と所定量の水添石油樹脂をペレットとして混合することができる。また、塊状原料を用い、所定の配合比で、あらかじめ2軸押出機を使用して混練配合してもよい。さらに、ベース樹脂となるポリプロピレン系樹脂に、30〜50重量%程度の高濃度の水添石油樹脂を配合したマスターバッチをあらかじめ調製し、これをポリプロピレン系樹脂にドライブレンドすることによって、所期の配合比に調整する方法も利用できる。そして、直接混合する場合には、通常のフルフライトスクリューを装備した押出機を使用してもよいが、均一に混合するには、圧縮比の比較的大きい押出機を使用することが好ましい。
水添石油樹脂の配合量は、ポリプロピレン系樹脂を基準として3〜20重量%、特に3〜9重量%とすることが好ましい。配合量が3重量%未満では、得られる多層ブローボトルの防湿性の向上効果が明確でなく、20重量%を超えると多層ボトルの衝撃強度が著しく低下する傾向にある。
【0014】
本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルの酸素バリヤー性樹脂層を構成する好適な材料としては、エチレン含有量が20〜50モル%で、ケン化度が97モル%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物が挙げられる。特に、210℃で測定されるMFRが3.0〜15.0g/10minのものが好適に用いられる。
他の酸素バリヤー性樹脂としては、炭素数100個当たりアミド基の数が3〜30個、特に4〜25個であるポリアミド類、芳香環を有するポリアミド類や、ポリアクリロニトリル、密度が1.5以上の高密度脂肪族ポリエステル、例えばポリグリコール酸共重合体等が用いられる。
これらの酸素バリヤー性樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、またその性状を損なわない範囲内で、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。
【0015】
本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルには、水添石油樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂組成物層、酸素バリヤー性樹脂層のほかに、さらにポリプロピレン系樹脂を主体とする樹脂層を設けることができる。このような樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂のみにより構成するほかに、ポリプロピレン系樹脂に他の熱可塑性樹脂を配合した樹脂組成物によって構成することができる。
また、他の熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、プラスチックボトルを製造する際に通常使用される樹脂はいずれも使用することができる。好ましい熱可塑性樹脂としては、LDPE、HDPE、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂;環状ポリオレフィン重合体及び共重合体、或いはこれらとポリエチレン樹脂との混合物等が挙げられる。
【0016】
特に、外層を構成するポリプロピレン系樹脂に好適に配合される樹脂としては、スチレン/ブタジエン又はイソプレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS,SEPS)等が挙げられる。これらの樹脂を配合することによって、多層ボトルの衝撃強度、落下耐性等を向上させることができ、さらに、より剛性の高いポリプロピレン系樹脂を多層ボトルに適用することが可能となり、より高剛性の座屈変形しにくいボトルを得ることができる。
このような水素添加ポリマーとしては、芳香族ビニル化合物と共役二重結合を有するビニル化合物からなる共重合体の水素添加ポリマーが挙げられる。特に好ましい水素添加ポリマーとしては、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加ポリマー、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加ポリマー、スチレン・ビニルイソプレンブロック共重合体の水素添加ポリマー等が挙げられる。これらの水素添加ポリマーは、主成分であるプロピレン系重合体に対して、1〜35重量%の割合で配合される。
【0017】
多層ボトルの外層を構成するのに好適に用いられる剛性の高いプロピレン系重合体としては、例えば、コモノマーとしてエチレンやブテン−1を0〜10モル%の共重合比で用いたMFRが0.5〜8g/10分のランダム共重合体、初段の重合では3モル%以下のコモノマー含有量で、後段の重合とその後の改質を含めエチレン含有量が15重量%以下で、MFRが0.5〜8g/10分のブロック共重合体等が挙げられる。いずれの場合にも、樹脂剛性を確保する観点から、結晶融解熱が50〜175J/gの範囲のものを使用することが好ましい。樹脂の結晶融解熱は、例えばパーキンエルマー社製DSC7型測定器を使用して、10℃毎分の昇温速度で、標準試料により熱量更正して測定することができる。
【0018】
このような剛性の高いプロピレン系重合体の例としては、エチレンコモノマーの含有量を低水準としたもの;塩化マグネシウム担持型立体規則性重合触媒、マグネシウム,チタン,ハロゲンを必須成分とする固体触媒、有機アルミニウム化合物,炭素数4以上の分岐したアルキル基を有する有機ケイ素化合物からなる触媒等を用いて、アイソタクテイシテイが13C−NMRより計算されるアイソタクテクペンタッド分率で0.97以上のホモポリマー樹脂;あるいは低エチレンランダム共重合体樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂をベースにして、逐次のエチレン・プロピレン共重合を行ったり、炭素数4〜20のエチレン・α−オレフィン共重合体を配合したりして、剛性と衝撃性をバランスした重合体を使用することもできる。
【0019】
また、多層ボトルの主層を構成する、プロピレン系重合体に上記の水素添加ポリマーを配合した樹脂組成物中には、結晶核剤を添加してもよい。結晶核剤を添加することにより、水素添加ポリマーの添加と相伴って相乗的作用が奏されることがある。
さらに、主成分としてある程度剛性の高いポリプロピレン系重合体を使用し、ボトルの衝撃強度を改良し、剛性を確保する目的で、プロピレン系重合体に結晶核剤を少量配合することができる。
【0020】
結晶核剤としては、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、ロジンの金属塩、芳香族系リン化合物の金属塩等が用いられる。好ましい結晶核剤としては、P−t−ブチル安息香酸アルミニウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)アルミニウム、p−エチルベンジリデンソルビトール、ロジンのナトリウム塩等が挙げられる。
これらの結晶核剤の配合量は、樹脂組成物を構成する樹脂を基として、0.05〜0.5重量%、好ましくは0.2〜0.3重量%である。
【0021】
本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルを構成する各樹脂層中には、必要に応じて、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の高級脂肪酸アミド等からなる滑剤や、プラスチック容器中に通常添加される紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料等の着色剤、酸化防止剤、中和剤等の添加剤を配合することができる。
【0022】
本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルを構成する各樹脂層の間には、必要に応じて接着性樹脂を介在させることができる。
このような接着性樹脂としては、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数10までのα−オレフィンを共重合させたエチレン・α−オレフィン共重合体をアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸又はこれらの無水物でグラフト変性した樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
これらの接着樹脂のグラフト変性率は、0.05〜5重量%程度とすることが好ましい。これらの酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、予め高濃度の酸で変性したエチレン・α−オレフィン共重合体と、未変性の低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を配合し、樹脂全体としての酸変性率を0.05〜5重量%程度に調整したブレンド物を接着樹脂として使用することも好ましい。
酸変性率が0.05重量%よりも少ない場合には、接着性が不足し、プリフォームのハンドリングやブロー成形時、或いは製品にした際のデラミネーションが生じるおそれがある。一方、酸変性率が5重量%を超える場合には、変性に必要なコストが高くなるとともに生産性が著しく低下し、ブロー成形時に発泡が生じやすくなり、成形範囲が極端に狭くなる等の問題が発生する。
【0024】
本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルの好ましい層構成の例としては、外層から順に、第1のポリプロピレン系樹脂層/接着性樹脂層/酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂を含有する第2のポリプロピレン系樹脂組成物層/第3のポリプロピレン系樹脂層;第1のポリプロピレン系樹脂層/接着性樹脂層/酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂及び回収樹脂を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物層/第1のポリプロピレン系樹脂層;水添石油樹脂を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物層/接着性樹脂層/酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂及び回収樹脂を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物層/水添石油樹脂を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物層;第1のポリプロピレン系樹脂層/接着性樹脂層/酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂及び回収樹脂を含有する第2のポリプロピレン系樹脂組成物層/第1のポリプロピレン系樹脂層;水添石油樹脂を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物層/接着性樹脂層/酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂及び回収樹脂を含有する第2のポリプロピレン系樹脂組成物層/水添石油樹脂を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物層;第1のポリプロピレン系樹脂層/接着性樹脂層/酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂及び回収樹脂を含有する第2のポリプロピレン系樹脂組成物層/第3のポリプロピレン系樹脂層;第1のポリプロピレン系樹脂層/回収樹脂を含有する第2のポリプロピレン系樹脂組成物層/接着性樹脂層/酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂を含有する第2のポリプロピレン系樹脂組成物層/第1のポリプロピレン系樹脂層;水添石油樹脂を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物層/接着性樹脂層/第1の酸素バリヤー性樹脂層/接着性樹脂層/水添石油樹脂及び回収樹脂を含有する第2のポリプロピレン系樹脂組成物層/接着性樹脂層/第2の酸素バリヤー性樹脂層;等が挙げられる。回収樹脂としては、本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルを、それぞれ製造する際に発生するスクラップ樹脂を使用する。また、第1の酸素バリヤー性樹脂としては、通常はエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物が用いられ、第2の酸素バリヤー性樹脂としては、別の酸素バリヤー性樹脂又は環状オレフィン共重合体が好適に使用される。
【0025】
本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルでは、酸素バリアー性樹脂層と少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂層を有するポリプロピレン系多層ブローボトルのポリプロピレン系樹脂層を、ポリプロピレン系樹脂及び分子量500〜1300の水添石油樹脂を含有する樹脂組成物により構成することにより、以下の実施例に具体的に示すように、多層ボトルの水分及び酸素バリヤー性を飛躍的に向上させることができる。
また、異種材料からなる多層ボトルのブロー成形時のブロー性、延伸性、或いはパリソンのインジェクション性等を、ポリプロピレン系樹脂のみからなる単層、或いは多層ボトルと同程度に改善するとともに、多層ボトルの層間剥離の発生等を防止することができる。
【0026】
【実施例】
つぎに、実施例により本発明のポリプロピレン系多層ブローボトルについてさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
以下の例において、ポリプロピレン系樹脂のMFRは210℃で測定した値を表す。また、得られた多層ブローボトルの性状は、つぎのようにして評価した。
(透湿度)
ボトル内に十分乾燥させた塩化カルシウム30gとガラスビーズ30gを充填し、ポリプロピレンキャップで栓をして、40℃、相対湿度90%の雰囲気中に放置し、ボトルの胴壁を透過した水分による質量増加を測定することにより、ボトルの表面積からボトルの透湿度(g/m・day)を算出した。ボトル各3本について算出した平均値を透湿度とした。
【0027】
(酸素透過度)
ボトル内に5ccの水を入れ、窒素置換後、アルミ複合材でシールしたボトルを30℃、相対湿度80%の雰囲気中に放置し、ボトル内の初期酸素濃度及び3週間後の酸素濃度より、ボトル内容積、表面積を用いて、ボトルの酸素透過度(mL/m・day・atm)を算出した。ボトル各3本について算出した平均値を酸素透過度とした。
【0028】
(透明性)
JIS K7105に準じて、ボトル胴壁の最薄肉部について透明性の基準として、ヘイズ(%)と積分球を使用した水中光線透過率(%)を測定した。ボトルの3点について測定した平均値を採用した。
【0029】
(落下強度)
ボトル内に内容積の90%の量の水を充填し、5℃で1日保管した後に、1.2mの高さからボトルを垂直に5回、水平に5回落下させて、ボトルの破損の有無を目視により確認した。各例について、12本のボトルを試験した。
【0030】
(座屈強度)
ボトル内に内容積の90%の量の水を充填し、常温にて、引っ張り試験機を用いて、毎分50mmで圧縮試験を行い、容器パネルが大変形するときの強度(kgf)をもって、座屈強度とした。ボトル各5本について測定した平均値を測定値とした。
【0031】
〔内容品保存性〕
ボトル内に収納した内容品の保存性は、つぎのようにして評価した。
(食用油保存性▲1▼)
ジアシルグリセロールを主成分とする食用油を、ボトル内容積の90%となるようにボトルに充填し、40℃、相対湿度90%の雰囲気で1か月保存した後に、内容品への水分の浸透による濁りの発生を積分球式デジタル濁度計により測定して、カオリンを基準濃度としてmg/Lで表記した。この値が2mg/Lを超えると、見た目に白濁した感じとなる。
(食用油保存性▲2▼)
汎用の食用油として、ひまわり油をボトル内容積の90%となるようにボトルに充填し、40℃、相対湿度90%の雰囲気で1か月保存した後に、油の酸化劣化の程度を過酸化物価(POV)として、飯島電子工業製POV計(型式:IP−200)を使用して、0.1meq/kgの単位まで計測した。また、食用油の官能検査を行い、異臭の有無を確認した。
【0032】
(実施例1)
多層ボトルの外層及び内層を構成する樹脂として、エチレン含有量が6.5モル%でMFRが8g/10分のポリプロピレン系共重合体;接着性樹脂として、エチレン含有量が7.0モル%でMFR4.0g/10分、酸変性度が0.5重量%の無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体;酸素バリヤー性樹脂層を構成する樹脂として、エチレン含有量が32モル%でMFRが4.8g/10分のエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)を使用した。また、主層を構成する樹脂組成物として、エチレン含有量が8.5モル%でMFRが1.6g/10分のエチレン・プロピレンブロック共重合体53重量%、分子量が800で軟化点135℃の水添テルペン樹脂7重量%、多層ボトル製造時に発生するスクラップ樹脂(回収樹脂)40重量%を配合したものを使用した。
これらの樹脂を使用して、外層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/主層/内層=15/2/6/2/65/10の厚み比を有する、内容積690mL、表面積600cm、容器重量28gのシリンダー形状の多層ボトルを、ロータリーブロー成型機を使用して、ダイレクトブロー法により毎分70本(型数12)の成形速度で作製した。
【0033】
(実施例2)
主層を構成する樹脂組成物中の水添テルペン樹脂の配合量を3重量%とするとともに、内層を構成するポリプロピレン系樹脂に対して主層と同じ水添テルペン樹脂3重量%を添加した以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを作製した。この例では、ボトルの成形速度を10%アップし、毎分77本とした。
【0034】
(比較例1)
主層を構成する樹脂組成物中に、水添テルペン樹脂を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを作製した。
これらの各例で得られた、多層ボトルの性能評価の結果を表1に示す。また、ボトルの内容品について、評価した結果を表2に示す。
なお、表1の水添テルペン樹脂添加量はバージン樹脂として添加する水添テルペン樹脂の添加量を示すものであり、スクラップ樹脂に由来する水添テルペン樹脂の量は含まれていない。スクラップ樹脂を含む実施例1,2においては、この添加量にスクラップ樹脂に由来する水添テルペン樹脂の量を加えた水添テルペン樹脂の総量は、いずれも請求項1に記載された、「(主層を構成する樹脂組成物中の)水添石油樹脂の配合量が樹脂組成物を基準として3〜20重量%である」という要件を満たすものである。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1及び表2によれば、ポリプロピレン系樹脂組成物層に水添テルペン樹脂を添加することによって、多層ボトルの耐透湿性が改善されるとともに、耐酸素透過性も向上する。また、内容品の保存性も改善され、食用油の濁りの発生と酸化劣化を防止できることが判明した。比較例1に見られるように、わずかな酸化の進行によっても、食用油の香りが失われる傾向にあった。
ボトルの外観に関しては、水添テルペン樹脂を添加することによって、透明性が向上し、また、座屈強度も改善されることが判明した。
そして、ポリプロピレン系樹脂組成物層に水添テルペン樹脂を添加することによって、多層ボトルの成形速度も向上した。水添テルペン樹脂を添加しない比較例1のボトルでは、ボトル底部のピンチオフが薄くなり、落下試験で落下回数を増すとその部分からスローリークを生じることがあった。
【0038】
(実施例3)
多層ボトルの外層を構成する樹脂として、エチレン含有量が7モル%でMFRが10g/10分のポリプロピレン系共重合体90重量%、スチレンの含有量が30モル%でスチレン分子量が15,000のスチレン・ブタジエンブロック共重合体を水素添加したポリマー7重量%、エチレン含有量が12モル%で密度が0.900g/cm、MFRが4.0g/10分のエチレン・1−ヘプテン共重合体3重量%からなる樹脂組成物を使用した。また、接着性樹脂として、エチレン含有量が7.0モル%でMFR4.0g/10分、酸変性度が0.5重量%の無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体;酸素バリヤー性樹脂層を構成する樹脂として、エチレン含有量が29モル%でMFRが3.8g/10分のエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH);内層を構成する樹脂として、エチレン含有量が7モル%でMFRが1.5g/10分のエチレン・プロピレンランダム共重合体を使用した。そして、主層を構成する樹脂組成物として、エチレン含有量が5モル%でMFRが1.3g/10分のエチレン・プロピレンブロック共重合体97重量%、分子量が770で軟化点125℃、水添率96%の水添テルペン樹脂3重量%を配合したものを使用した。
これらの樹脂を使用して、外層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/主層/内層=20/2/3/2/63/10の厚み比を有する、内容積680mL、表面積650cm、容器重量27gのシリンダー形状の多層ボトルを、ロータリーブロー成型機を使用して、ダイレクトブロー法により毎分65本(型数12)の成形速度で作製した。
【0039】
(実施例4〜6、比較例2〜4)
実施例3において、主層を構成する樹脂組成物中に配合する水添テルペン樹脂の添加量を表3に記載のとおりにした以外は、実施例3と同様にして多層ボトルを作製した。
【0040】
(実施例7及び8)
実施例3及び4において、主層を構成する樹脂組成物中に、さらに多層ボトル製造時に発生するスクラップ樹脂(回収樹脂)を、樹脂組成物全体を基準として40重量%配合して主層を構成する樹脂組成物とした以外は、実施例3及び4と同様にして多層ボトルを作製した。
これらの各例で得られた、多層ボトルの性能評価の結果を表3に示した。また、ボトルの内容品について、評価した結果を表4に示した。
なお、表3の水添テルペン樹脂添加量はバージン樹脂として添加する水添テルペン樹脂の添加量を示すものであり、スクラップ樹脂に由来する水添テルペン樹脂の量は含まれていない。スクラップ樹脂を含む実施例7,8においては、この添加量にスクラップ樹脂に由来する水添テルペン樹脂の量を加えた水添テルペン樹脂の総量は、いずれも請求項1に記載された、「(主層を構成する樹脂組成物中の)水添石油樹脂の配合量が樹脂組成物を基準として3〜20重量%である」という要件を満たすものである。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
表3及び表4によれば、主層を構成する樹脂組成物中の水添テルペン樹脂の添加量が3重量%未満(比較例2参照)では、未添加の場合に比較して多層ボトルの性能の改善効果が不充分である。また、添加量が20重量%を超えると、耐水分透過性や耐酸素透過性は改善されるものの、落下強度の低下が著しく、ポリプロピレン系樹脂特有のガラス状の割れが目立ち、ボトルの実用的価値が損なわれる(比較例3及び4参照)。したがって、水添テルペン樹脂の添加量としては3〜20重量%が好ましく(実施例3〜6)、特に3〜9重量%とした場合には、強度特性にも優れた実用的価値の高いボトルを得ることができる。
また、内容品保存性についても、ボトルの性能を反映して、水添テルペン樹脂の添加量が少ない場合には、濁りが発生し、食用油独特の香りが失われる傾向にあった。

Claims (6)

  1. 酸素バリアー性樹脂層と少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂層を有するポリプロピレン系多層ブローボトルにおいて、中間層として酸素バリヤー性樹脂層の内側に配置する主層を構成するポリプロピレン系樹脂層がポリプロピレン系樹脂及び分子量500〜1300で軟化点が70〜150℃である水添石油樹脂を含有する樹脂組成物により構成されたものであり、水添石油樹脂の配合量が樹脂組成物を基準として3〜20重量%であることを特徴とするポリプロピレン系多層ブローボトル。
  2. ポリプロピレン系樹脂がエチレン含量が2〜15モル%のエチレン・プロピレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系多層ブローボトル。
  3. ポリプロピレン系樹脂がエチレン含量が2〜20モル%のエチレン・プロピレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系多層ブローボトル。
  4. ダイから押出したパリソンを直ちにブロー成形用の金型ではさみ、パリソン内に空気を吹き込んで成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系多層ブローボトルの製造方法。
  5. 連続的に押出成形したパイプを所定長さに切断して製造したパリソンを再加熱して金型にはさみ、パリソン内に空気を吹き込んで成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系多層ブローボトルの製造方法。
  6. 射出成形によって底部の閉じたパリソンを成形し、これをブロー成形用金型に移してパリソン内に空気を吹き込んで成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系多層ブローボトルの製造方法。
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