JP2015165018A - 光硬化する組成物ならびにその組成物から得られる光硬化物および粘接着剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ビニルエーテルウレタン化合物と、チオール化合物と、光ラジカル発生剤と、環状構造を有する(メタ)アクリルモノマーとを含有する組成物。前記ビニルエーテルウレタン化合物と、前記環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーとのモル比が、10:90〜65:35の範囲である組成物。さらに前記組成物から得られる光硬化物。
【選択図】なし
Description
特に光硬化性の粘接着剤は、光硬化時に硬化収縮が起きるため、被着体から剥落しやすい傾向を示す。したがって、光硬化性の粘接着剤は、光硬化時の硬化収縮の抑制が求められる。
さらに、本発明者は、特許文献4に示したとおり、イソホロン由来の骨格とウレタン結合とを有するビニルエーテル化合物(ビニルエーテルウレタン化合物)と特定の光重合開始剤とを含む組成物を光硬化して得られる粘接着剤が、優れた伸び特性を示すことを見出している。
式(1)中、−Z−は、式(3)で示す置換基を表す。
式(1)中、Lは、エステル骨格、エーテル骨格およびカーボネート骨格からなる群より選択される少なくとも一種以上の骨格を表す。]
式(4)および式(5)中、−Z−は、式(3)で示す置換基を表す。
また、式(4)および式(5)中、k、l、mは、それぞれ正の整数を表す。]
また、式(6)中、pは0〜5の整数を、qは1〜5の整数をそれぞれ表す。
式(7)中、R3は水素原子またはメチル基を、T3は炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキレンオキサイド基を、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Aは酸素原子またはNR基(ただしRは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す)を、それぞれ表す。
また、式(7)中、uおよびwはそれぞれ独立に0〜5の整数を、vは1〜5の整数を表す。]
本明細書において、光硬化する組成物を単に組成物と称することがある。
本明細書において、組成物から得られる光硬化物を単に光硬化物と称することがある。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、組成物中の各成分の量は、特に断らない限り、各成分に複数の種類の物質が含まれる場合に、複数の種類の物質を合計した量で表す。
本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を意味する。
式(1)中、−Z−は、式(3)で示す置換基を表す。
式(1)中、Lは、エステル骨格、エーテル骨格およびカーボネート骨格からなる群より選択される少なくとも一種以上の骨格を表す。]
本発明の組成物に光を照射すると、まず光ラジカル発生剤からラジカルが生成し、次いでビニルエーテルウレタン化合物とチオール化合物とのエンチオール反応と、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーの単独でのラジカル重合反応とがほぼ同時に進行し、次いでこれらの2種類の反応物を含む光硬化物が生成する。本発明者は、この光硬化物が優れた伸び特性を有するとともに被着体が樹脂および無機物のいずれの場合にも優れた接着力を示すことを見出した。
前記ビニルエーテルウレタン化合物の構造中に含まれることがある式(2)の置換基は、シクロヘキシル骨格である。
また、前記ビニルエーテルウレタン化合物の構造中、式(3)の置換基は、イソホロンに由来する骨格である。
前記骨格の炭素数が4個以上であれば、本発明の光硬化物は、ヤング率が低くなり、優れた伸び特性を示す。
エステル骨格、エーテル骨格およびカーボネート骨格は、いずれも極性が高い。前記ビニルエーテルウレタン化合物が極性の高いこれらの骨格を有するため、本発明の組成物を含む粘接着剤は、極性樹脂への接着力が優れる。
前記ビニルエーテルウレタン化合物が式(4)および式(5)からなる群より選択される一種以上のビニルエーテルウレタン化合物であれば、エステル骨格またはエーテル骨格を有するため、本発明の光硬化物は、より一層優れた伸び特性を示す。
また、式(5)中の繰り返し構造単位の数を示すmは、1〜700が好ましく、式(5)の化合物を容易に製造できることから1〜100がより好ましい。
本発明の組成物が含有する前記チオール化合物は、その分子中にチオール基をもつ化合物であり、たとえば、メチルチオール、エチルチオール、1−プロピルチオール、イソプロピルチオール、1−ブチルチオール、イソブチルチオール、tert−ブチルチオール、1−ペンチルチオール、イソペンチルチオール、3−ペンチルチオール、1−ヘキシルチオール、シクロヘキシルチオール、4−メチル−2−ペンチルチオール、1−ヘプチルチオール、1−オクチルチオール、イソオクチルチオール、2−エチルヘキシルチオール、1−ノニルチオール、イソノニルチオール、1−デシルチオール、1−ドデシルチオール、1−ミリスチルチオール、セチルチオール、1−ステアリルチオール、イソステアリルチオール、2−オクチルデシルチオール、2−オクチルドデシルチオール、2−ヘキシルデシルチオール、ベヘニルチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、などが挙げられる。
なお、組成物の保存安定性および光硬化物の臭気を低減できる観点から、本発明に特に好適に用いることができるチオール化合物は、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、などが挙げられる。
本発明の組成物は、これらのチオール化合物を単独で含有してもよく、また二種以上を組み合わせて含有してもよい。
また、前記チオール化合物がチオール化合物1分子中に4個以下のチオール基を有する場合、本発明の光硬化物は、架橋密度が小さくなることで、優れた耐衝撃性を示すため好ましい。
本発明の組成物が光ラジカル発生剤を含有するため、組成物に波長200nm〜500nmの光を照射することでラジカルが発生し、次いでラジカルがチオール化合物から水素原子を引き抜いてチイルラジカルが生成し、次いでチイルラジカルが前記ビニルエーテルウレタン化合物の有する二重結合と、後述する環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーの有する二重結合とにそれぞれ付加しそれぞれ反応することで、本発明の組成物は硬化する。
なお、仮に光ラジカル発生剤を含まない組成物でも、この組成物に光を照射するまたは加熱することによりチオール化合物からチイルラジカルが発生するが、このチイルラジカルの量が少ないため、組成物が硬化しない。そのため、光ラジカル発生剤を含まない組成物では光硬化物が実質的に得られない。
前記環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部位に環状構造を有することが好ましい。
前記環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーの前記環状構造は、シクロヘキシル基に代表される脂肪族環構造や、フェニル基に代表される芳香族環構造のいずれでもよく、テトラヒドロフルフリル基、ピペリジル基に代表されるヘテロ環構造でもよく、さらにイソボルニル基に代表される複数の環状構造(多環構造)でもよい。
また、前記環状構造には、アルキル基等の各種置換基を有していてもよい。
一般に、ウレタン構造を有する化合物は、光硬化時に硬化収縮が大きくなりやすい。
本発明者は、本発明の組成物に光照射すると、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合反応と、ビニルエーテルウレタン化合物のエンチオール反応とが同じ系内で起こり、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合反応物とビニルエーテルウレタン化合物のエンチオール反応物との両方を光硬化物が含むため、本発明の光硬化物がウレタン構造を有していても、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合反応物の硬化収縮を抑制できると考えている。
また、本発明者は、環状構造を有する(メタ)アクリルモノマーが(メタ)アクリロイル基を1つのみ有する、つまり単官能であるため、環状構造を有する多官能(メタ)アクリルモノマーと比較して、(メタ)アクリルモノマーの架橋反応が抑制されると考えている。架橋反応が抑制されると、光硬化時の硬化収縮が小さくなる。そのため、本発明の光硬化物を含む粘接着剤は、光硬化時の硬化収縮が小さくなることで、より優れた接着力を示す。
本発明者は、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合反応と、ビニルエーテルウレタン化合物のエンチオール反応とを同じ系内で行って得られる光硬化物が、被着体が樹脂および無機物のいずれの場合にも優れた接着力を示すことを見出した。さらに、本発明者は、本発明の組成物が、分子中に柔軟な構造を有するウレタンビニルエーテル化合物と、嵩高い立体構造を有し光硬化時の硬化収縮を低減する効果のある環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーとの両方を含むことで、光硬化時の硬化収縮を抑制でき、被着体が樹脂および無機物のいずれの場合にも優れた接着力を示すと考えている。
環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーは、たとえば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレ−ト、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、などが挙げられる。
また、式(6)中、pは0〜5の整数を、qは1〜5の整数をそれぞれ表す。
式(7)中、R3は水素原子またはメチル基を、T3は炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキレンオキサイド基を、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Aは酸素原子またはNR基(ただしRは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す)を、それぞれ表す。
また、式(7)中、uおよびwはそれぞれ独立に0〜5の整数を、vは1〜5の整数を表す。]
このような炭素数1〜10のアルキレン基は、たとえば、炭素数1のメチレン基[−CH2−]、炭素数2のエチレン基[−(CH2)2−]、炭素数3のトリメチレン基[−(CH2)3−]、炭素数4のテトラメチレン基[−(CH2)4−]、炭素数5のペンタメチレン基[−(CH2)5−]、炭素数6のヘキサメチレン基[−(CH2)6−]、炭素数7のヘプタメチレン基[−(CH2)7−]、炭素数8のオクタメチレン基[−(CH2)8−]、炭素数9のノナメチレン基[−(CH2)9−]および炭素数10のデカメチレン基[−(CH2)10−]の直鎖アルキレン基に加え、炭素数3の1−メチルエチレン基[−CH(CH3)−CH2−]、2−メチルエチレン基[−CH2−CH(CH3)−]、炭素数4の1、1−ジメチルエチレン基[−C(CH3)2−CH2−]、1、2−ジメチルエチレン基[−CH(CH3)−CH(CH3)−]、2、2−ジメチルエチレン基[−CH2−C(CH3)2−]、1−エチルエチレン基[−CH(C2H5)−CH2−]および2−エチルエチレン基[−CH2−CH(C2H5)−]など各種の分岐アルキレン基などが挙げられる。
また、このような炭素数1〜10のアルキレンオキサイド基は、たとえば、炭素数1のオキシメチレン基[−O−CH2−]、炭素数2のオキシエチレン基[−O−(CH2)2−]、メチレンオキシメチレン基[−CH2−O−CH2−]、炭素数3のオキシトリメチレン基[−O−(CH2)3−]、メチレンオキシエチレン基[−CH2−O−(CH2)2−]、エチレンオキシメチレン基[−(CH2)2−O−CH2−]などの直鎖アルキレンオキサイド基に加え、炭素数3の[−O−CH(CH3)−CH2−]、[−O−CH2−CH(CH3)−]、[−CH2−O−CH(CH3)−]などで表すことができる各種の分岐アルキレンオキサイド基などが挙げられる。
また、このようなアルキレンオキサイド基は、炭素数1〜10の範囲である限り各種のアルキレンオキサイド基を組み合わせた構造、たとえば[-C5H10−O−CH2−O−C4H8−]などの構造であってもよい。
このような脂肪族環骨格は、たとえば炭素数4のシクロブチレン基、炭素数5のシクロペンチレン基、炭素数6のシクロヘキシレン基、炭素数7のシクロヘプチレン基などの単環構造に加え、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、ノルボルネン骨格、イソボルネン骨格およびジシクロペンタン骨格などの各種の多環構造が例示できる。 また、このような芳香族環骨格は、たとえばフェニレン基[−C6H4−]、キシリレン基[−CH2−C6H4−CH2−]、ナフチレン基[−C10H6−]などが例示できる。
式(6)中のR2は、水素原子またはT2(脂肪族環骨格または芳香族環骨格)の水素原子に置換する炭素数1〜10のアルキル基を表す。
このようなアルキル基は、たとえば、炭素数1のメチル基、炭素数2のエチル基、炭素数3の1−プロピル基[−(CH2)2−CH3]などの直鎖アルキル基に加え、炭素数3の1−メチルエチル基[−CH(CH3)2]などの分岐アルキル基が例示できる。
さらに、式(6)中のpは0〜5の整数を、qは1〜5の整数をそれぞれ表す。ここで、pが0とは、式(6)の環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーが、T1で表されるアルキレン基およびアルキレンオキサイド基のいずれも有さないことを表し、(メタ)アクリロイル基と環状構造(T2)とが直接結合する構造となる。
このようなアルキル基は、たとえば炭素数1のメチル基、炭素数2のエチル基、炭素数3の1−プロピル基などの直鎖アルキル基に加え、炭素数3の1−メチルエチル基[−CH(CH3)−CH3]などの分岐アルキル基が例示できる。
さらに、式(7)中のuおよびwはそれぞれ独立に0〜5の整数を、vは1〜5の整数を、それぞれ表す。ここで、uが0とは、式(7)の環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーが、T3で表されるアルキレン基およびアルキレンオキサイド基のいずれも有さないことを表し、(メタ)アクリロイル基と環状構造とが直接結合する構造となる。
また、表2は、式(7)において、R3〜R7、T3およびAの各構造ならびにu、vおよびwの各数値に対応した環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーの名称例をまとめたものである。
ビニルエーテル系のモノマーは、たとえば、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、が挙げられる。
アクリル系のモノマーは、たとえば、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート、ジエチレングルコールジアクリレート、トリエチエレングルコールジアクリレート、トリプロピレングルコールジアクリレートが挙げられる。
アクリルアミド系のモノマーは、たとえば、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド及びアクリロイルモルフォリンが挙げられる。
なおこれらのビニルモノマーは、単独で含有してもよく、また二種以上を組み合わせて含有してもよい。
一般に、光硬化物を含む粘接着剤は、粘度が高く、基材などへ塗工時の作業性を改善する目的で有機溶剤などの希釈剤が用いられる。有機溶剤などの希釈剤は、粘接着剤の塗工後に乾燥工程により除去される。
本発明の組成物は、低粘度のため、組成物の粘度を低減するための希釈剤を低減できる。前述したとおり、本発明の組成物が含む環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーは、反応性希釈剤となりうる。従来の光硬化物には、希釈剤としては有機溶剤が広く用いられるが、その場合、希釈剤を蒸発させる工程が必要になる。本発明の組成物は、希釈剤の乾燥工程が不要になることで作業性が優れ、また、溶剤を用いないため、作業時の環境が良好となる。
このような希釈剤は、具体的には、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。
本発明の組成物にたとえば波長200nm〜500nmの範囲を含む光を照射することで、本発明の光硬化物が得られる。
また、本発明の光硬化物は、3Dプリンタでの成形時に用いる各種材料、防振材、電気部品材料および医療用材料などに使用することができる。
本発明の粘接着剤は、粘着剤または接着剤のいずれか一方の性質を示すものである。
本発明の粘接着剤の形態は、本発明の組成物を被着体上に塗布後、被着する物を重ね、次いで光照射して硬化させて使用する形態と、本発明の組成物を被着体上に塗布後、次いで光を照射した後、被着する物を重ねて硬化させる態様とがある。
ビニルエーテルウレタン化合物が柔軟性を示し、かつ光硬化時の硬化収縮が緩和するため、本発明の粘接着剤は、被着体との接着力がより優れる。
また、本発明の粘接着剤は、極性の高いエーテル基とチオール基とを有する。特にチオール化合物が有する硫黄原子の分極効果により、本発明の粘接着剤は、金属やガラス等の無機物を被着体に用いた場合の接着力が改善されている。
さらに、本発明の粘接着剤は、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含有するため、極性樹脂への接着力が優れる。くわえて、本発明の粘接着剤は、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーが嵩高い立体構造を有しているため、本発明の組成物の硬化時に硬化収縮が小さいことでいずれの被着体に対しても接着力が特に優れる。たとえば、イソホロンに由来する骨格とウレタン結合とを有するビニルエーテルウレタン化合物とジビニルエーテルモノマーとの組成物から得られる従来の光硬化性の粘接着剤と比較し、本発明の粘接着剤は、より多くの被着体に対して優れた接着力を示す。
本発明の粘接着剤は、被着体が樹脂または無機物のいずれの場合であっても優れた接着力を示すという優れた特性を有する。
前記コーティング膜は、光や物理的衝撃などからの保護や各種の装飾のために各種基体に本発明の組成物を塗布して利用される。
また、前記コーティング膜は、たとえば本発明の組成物を基材フィルムに塗布後、光照射して得られる光硬化物を、基材フィルムから剥離して使用することもできる。
前記コーティング膜は、優れた伸び特性を有し、かつ基体への密着性が優れる。
また、前記コーティング膜は、極性の高いチオール化合物を有するため、チオール基の硫黄原子の分極効果により、基体が無機物の場合の密着性が優れる。
また、前記コーティング膜は、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含むため、極性樹脂への密着性が優れる。さらに環状構造を有する単官能アクリルモノマーが嵩高い立体構造を有しているため、硬化収縮が小さく、基体への密着性が優れる。
前記コーティング膜は、従来のコーティング膜では達成が難しかった、基体が極性樹脂、非極性樹脂および無機物のいずれの場合であっても優れた密着性を示す。
さらに本発明の光硬化物は、エンチオール硬化反応により得られるため、従来のビニルエーテル化合物のカチオン硬化反応において懸念となる湿度による反応の阻害や、ラジカル硬化反応において懸念となる酸素による反応の阻害も抑制でき、硬化性が優れる。
本発明の組成物は、極性の高いエーテル基およびチオール基を含む。通常、インキ組成物に用いられる各種着色剤の極性は高い。本発明の組成物と各種着色剤がいずれも極性が高く、相溶性が良好になるため、本発明の光硬化物を含むインキ組成物は、優れた着色性を示す。また、前記粘接着剤および前記コーティング膜と同様の理由で、本発明の光硬化物を含むインキ組成物は、印刷対象物が非極性樹脂、極性樹脂および無機物のいずれの場合であっても、印刷対象物との密着性が優れる。
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、サンニックスPP−400(三洋化成工業株式会社製:ポリプロピレングリコール)100質量部、イソホロンジイソシアネート109質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部を入れ、攪拌下で前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.21質量部、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)54質量部を投入し、さらに2時間反応させて透明液体を得た。反応終了は赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm−1のピークが消失したことにより確認した。以上により、エーテル骨格を有するビニルエーテルウレタン化合物264質量部を得た。
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、プラクセルCD205PL(ダイセル化学工業株式会社製:ポリカーボネートジオール)100質量部、イソホロンジイソシアネート92質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部を入れ、攪拌下で前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.21質量部、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)46質量部を投入し、さらに2時間反応させて透明液体を得た。反応終了は赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm−1のピークが消失したことにより確認した。以上により、カーボネート骨格を有するビニルエーテルウレタン化合物238質量部を得た。
エステル骨格としてカプロラクトン骨格を有するビニルエーテルウレタン化合物(日本カーバイド工業株式会社製 商品名 クロスマーU001)と、光ラジカル発生剤(BASFジャパン株式会社製 商品名 イルガキュア184)とを表3に示す割合で褐色サンプル瓶に量りとり、60℃、20分間加熱した後に5分間スパチュラで撹拌した。次いで、褐色サンプル瓶にチオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製 商品名 カレンズMTPE、1分子中にチオール基を4個含む)と環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーであるフェノキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名 ライトアクリレートPO−A)とを量りとり、40℃、10分間加熱した後に5分間スパチュラで撹拌混合することで本発明の組成物を得た。
表3に示した組成にした以外は、実施例1と同様の手順で本発明の組成物を得た。
なお表3には各種組成をモル部で表した。
実施例5の組成物が含有するc(メタ)アクリルモノマーは、共栄社化学株式会社製 商品名 ライトアクリレートCHAとして、実施例6ではライトアクリレートIBXAとして、実施例7ではライトアクリレートTHFAとしてそれぞれ入手可能である。
また、実施例8および実施例9の組成物が含有するチオール化合物である、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタンは、昭和電工株式会社製 商品名カレンズMTPEとして入手可能である。ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)は、1分子中にチオール基を2個含む。
さらに、実施例16の組成物が含有するポリエチレングリコールジアクリレートは、共栄社化学株式会社製 商品名 ライトアクリレート14EGAとして入手可能である。
表3に示した組成にした以外は、実施例1と同様の手順で組成物を得た。
比較例2の組成物が含有する(メタ)アクリルモノマーは共栄社化学株式会社製 商品名 ライトアクリレートLAとして、比較例4の(メタ)アクリルモノマーはライトアクリレートECAとして、比較例5の(メタ)アクリルモノマーはアクリロイル基を2個もつ多官能の(メタ)アクリルモノマーであるライトアクリレートDCPAとして、それぞれ入手可能である。
比較例7の組成物が含有するアクリルウレタン化合物は、東亞合成株式会社製 商品名アロニックスM−1100として入手できる。なお、アロニックスM−1100の重量平均分子量は約2000であり、構造式は CH2=CHCOO−R’−OCONH−[R−NHCOO−(ポリオール)−OCONH]n−R−NHCOO−R’−OCOCH=CH2である。
各実施例および各比較例の組成物を、テフロン(登録商標)型(幅4mm、長さ30mm、厚さ2mm)に流し込み、照射強度160Wの高圧水銀ランプを用いて、照射量500mJ/cm2の条件で硬化させた後、テフロン(登録商標)型から取り出し、幅4mm、長さ30mm、厚さ2mmの棒状の試験片(光硬化物)を用意した。
各実施例および各比較例の試験片の最大伸度(%)は、JIS K7161に記載の方法に基づき、チャック間のつかみ間隔を20mmとし、引張速度10mm/minの条件にて行った。各試験の測定値は、試験片を3個用いてそれぞれ測定を行い、その平均とした。
なお、最大伸度(%)は、数値が大きいほど伸び特性が優れていることを表す。
接着力の判定に用いた被着体は、非極性樹脂としてポリプロピレン(PP)を、極性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ABS樹脂(ABS)、ポリカーボネートを、無機物としてガラス、アルミニウムである。
各実施例および各比較例の組成物を、上記の各種被着体に30μmアプリケーターで塗布し、次いで照射強度160Wの高圧水銀ランプを用いて、照射量500mJ/cm2の条件で硬化させ、試験片を用意した。各実施例および各比較例の試験片の接着力は、JIS K 5600−5−6に準じ、クロスカットテープ剥離試験を行って評価した。
各被着体の接着力の評価基準は、剥がれた面積が0%のもの(剥がれがなかったもの)を「1」、剥がれた面積が0%より大きく20%未満のものを「2」、剥がれた面積が20%以上を「3」とした。
さらに接着力の総合判定は、評価が「1」の被着体数により分類した。各組成物の接着力の総合判定は、7種類の被着体のなかで、評価が「1」の被着体が5種類以上であれば「A」、4種類を「B」、4種類未満を「C」とそれぞれ判定し、総合判定結果がAまたはBであれば合格とした。
一方、比較例1の光硬化物は、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まないため、最大伸度が100%未満であり、接着力の総合判定が「C」であった。比較例2〜4の各光硬化物は、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーに替えて直鎖構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含むため、いずれも接着力の総合判定が「C」であった。つまり、本発明の粘接着剤が、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含むことで、比較例1〜5の各組成物の結果と比較して硬化収縮が抑制され被着体への接着力が優れることがわかった。
比較例5の光硬化物は、環状構造を有する多官能(メタ)アクリルモノマーを含有するため、最大伸度が100%未満であり、接着力の総合判定が「C」であった。つまり、本発明の粘接着剤が、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含むことで、(メタ)アクリルモノマー同士の架橋反応が抑制され、得られる光硬化物の伸度が大きく、硬化収縮が抑制され被着体への接着力が優れることがわかった。
比較例6の光硬化物は、ビニルエーテルウレタン化合物に替えてアクリルウレタン化合物を含むため、最大伸度が100%以上であったが、接着力の総合判定が「C」であった。つまり、本発明の粘接着剤が、ビニルエーテルウレタン化合物を含むことで、アクリルウレタン化合物を含む比較例6の光硬化物と比較して光硬化時の硬化収縮が抑制され被着体への接着力が優れることがわかった。
比較例7の光硬化物は、ビニルエーテルウレタン化合物に替えてトリエチレングリコールジビニルエーテルを含むため、最大伸度が100%未満であり、接着力の総合判定が「C」であった。つまり、本発明の粘接着剤が、特定の構造のビニルエーテルウレタン化合物を含むため、光硬化時の光硬化物の架橋密度を小さくし、硬化収縮が抑制され被着体への接着力が優れることがわかった。
比較例8の光硬化物は、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーに替えて多官能ビニルエーテルモノマーであるトリエチレングリコールジビニルエーテルを含むため、最大伸度が100%未満であり、接着力の総合判定が「C」であった。つまり、本発明の粘接着剤が、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含むため、得られる光硬化物の伸度が大きく、硬化収縮が抑制され被着体への接着力が優れることがわかった。
比較例9の光硬化物は、ビニルエーテルウレタン化合物に替えてトリエチレングリコールジビニルエーテルを含み、環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まないため、最大伸度が100%未満であり、接着力の総合判定が「C」であった。
Claims (8)
- 前記チオール化合物が、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)からなる群より選択される一種以上のチオール化合物である請求項1または請求項2に記載の組成物。
- 前記環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーが、下記式(6)および式(7)からなる群より選択される一種以上のものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
また、式(6)中、pは0〜5の整数を、qは1〜5の整数をそれぞれ表す。
式(7)中、R3は水素原子またはメチル基を、T3は炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキレンオキサイド基を、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Aは酸素原子またはNR基(ただしRは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す)を、それぞれ表す。
また、式(7)中、uおよびwはそれぞれ独立に0〜5の整数を、vは1〜5の整数を表す。] - 前記環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーが、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種の環状構造を有する(メタ)アクリルモノマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記ビニルエーテルウレタン化合物と、前記環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーとのモル比が、10:90〜65:35の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物から得られる光硬化物。
- 請求項7に記載の光硬化物を含む粘接着剤。
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