JP2015164184A - 窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置 - Google Patents

窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁耐力が高く、回路部材との接合強度の高い窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびにこの回路基板を搭載してなる電子装置を提供する。【解決手段】主面に回路部材2が設けられる窒化珪素質基板1であって、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が主面の1mm2当たりに50個以上200個以下存在する。このような構成を満たしていることにより、高い絶縁耐力を有し、回路部材2との接合強度の高い優れた特性を有する窒化珪素質基板1とすることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置に関するものである。
近年、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)素子、金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)素子、発光ダイオード(LED)素子、フリーホイーリングダイオード(FWD)素子、ジャイアント・トランジスタ(GTR)素子等の半導体素子、昇華型サーマルプリンタヘッド素子、サーマルインクジェットプリンタヘッド素子およびペルチェ素子等の各種電子部品を回路基板の回路部材上に搭載した電子装置が用いられている。
電子部品を搭載する回路部材を備える回路基板としては、絶縁性の窒化珪素質基板の主面に、例えば、銅を主成分とする回路部材が接合されているものが用いられている。
このような窒化珪素質基板として、例えば、特許文献1では、希土類金属を酸化物に換算して2.0〜17.5重量%、Mgを酸化物に換算して0.3〜3.0重量%、不純物陽イオン元素
としてのAl、Li、Na、K、Fe、Ba、Mn、Bを合計で0.3重量%以下含有し、
窒化珪素結晶および粒界相から成るとともに粒界相中における結晶化合物相の粒界相全体に対する割合が20%以上である窒化珪素質基板(高熱伝導性窒化珪素焼結体)が提案されている。
特開2000−34172号公報
しかしながら、特許文献1で提案された窒化珪素質基板のように、粒界相中における結晶化合物相の粒界相全体に対する割合が20%以上と高いときには、焼結工程における結晶化合物相が生成する過程での体積収縮によって、粒界に空隙が多く発生しやすくなる。この粒界に発生する空隙は、窒化珪素質基板の主面を100倍に拡大すると白点として見える
ことから、以下において、空隙を白点と記載する場合がある。
そして、白点が多く確認される窒化珪素質基板を用いて、例えば、回路部材を接合したときには、回路部材を構成する金属成分が白点に浸入する量が多くなり、窒化珪素質基板の絶縁耐力が低下するという問題があった。また、逆に白点が小さい、または、数が少ないときには、白点に浸入する金属成分の量が少なく、得られるアンカー効果が小さいため、接合強度が低下するという問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みて案出されたものであり、回路部材との接合強度を高くすることができるとともに、絶縁耐力の高い窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置を提供することを目的とするものである。
本発明の窒化珪素質基板は、主面に回路部材が設けられる窒化珪素質基板であって、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が前記主面の1mm当たりに50個以上20
0個以下存在することを特徴とするものである。
また、本発明の回路基板は、上記構成の窒化珪素質基板の主面に回路部材を備えていることを特徴とするものである。
また、本発明の電子装置は、上記構成の回路基板における回路部材上に電子部品を搭載してなることを特徴とするものである。
本発明の窒化珪素質基板によれば、回路部材との接合強度を高くすることができるとともに、絶縁耐力が高い窒化珪素質基板とすることができる。
また、本発明の回路基板によれば、高い接合強度と高い絶縁耐力とにより、長期間にわたって使用可能な信頼性の高い回路基板とすることができる。
また、本発明の電子装置によれば、長期間にわたって使用可能な信頼性の高い電子装置とすることができる。
本実施形態の回路基板の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図である。 本実施形態の回路基板の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるB−B’線での断面図である。 本実施形態の回路基板のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるC−C’線での断面図である。 本実施形態の電子装置の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるD−D’線での断面図である。
まず、本実施形態の窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置について図面を用いて説明する。なお、断面図における各構成の厚みについては、一部誇張して示している。
図1は、本実施形態の回路基板の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図である。
図1に示す本実施形態の回路基板10は、本実施形態の窒化珪素質基板1の主面側に回路部材2を設けてなる。なお、図1に示す回路基板10においては、窒化珪素質基板1と回路部材2とが、直接接合されている例を示している。以下の説明では、まず回路部材2を説明したのち、窒化珪素質基板1について説明する。
本実施形態の回路基板10において、回路部材2は、金属成分を主成分とする。なお、回路部材2における主成分とは、回路部材2を構成する全成分100質量%のうち、50質量%
以上占める成分をいう。
より具体的には、金属成分が銅であることが好ましく、銅の含有量が90質量%以上と多い、無酸素銅、タフピッチ銅およびりん脱酸銅のいずれかからなることが好適であり、特に、無酸素銅のうち、銅の含有量が99.995質量%以上の線形結晶無酸素銅、単結晶状高純度無酸素銅および真空溶解銅のいずれかからなることが好適である。このように、回路部材2における銅の含有量が多いときには、高い熱伝導率により放熱特性が向上し、電気抵
抗が低いことにより回路特性(電子部品の発熱を抑制し電力損失を少なくする特性)が向上する。また、銅の含有量が多いときには、降伏応力が低くなり、加熱すると塑性変形しやすくなるため、窒化珪素質基板1と回路部材2との接合強度が上がり、より信頼性が高くなる。なお、回路部材2の厚みは0.5mm以上5mm以下がよい。
次に、本実施形態の窒化珪素質基板1について説明する。本実施形態の窒化珪素質基板1は、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が主面の1mm当たりに50個以上200個以下存在しているものである。
このような構成を満たしていることにより、回路部材2を窒化珪素質基板1の主面に接合した場合、回路部材2を構成する金属成分が白点に浸入して、強いアンカー効果が得られるため、接合強度を高くすることができるとともに、白点に浸入する金属成分の量が多すぎないため、高い絶縁耐力を有する。
これに対し、白点の円相当径が2μm未満であったり、主面の1mm当たりにおける白点の個数が50個未満では、回路部材2を構成する金属成分が白点に浸入する量が少なく、得られるアンカー効果が小さいため、接合強度が低下する。また、窒化珪素の結晶粒子は、その形状が柱状および針状であり、結晶粒子が3次元的に絡み合って存在するものであることから、白点の円相当径が30μmを超えるときには、白点として見える空隙の深さが深いものとなりやすく、金属成分が多く浸入しやすくなるため絶縁耐力が低下することとなる。また、主面の1mm当たりにおける白点の個数が200個を超えるときにも、金
属成分が多く浸入しやすくなるため、絶縁耐力が低下して絶縁破壊を起こしやすくなる。
また、本実施形態の窒化珪素質基板1によれば、隣り合う白点間の距離の平均値が4μm以上であることが好適である。
このように、隣り合う白点間の距離の平均値が4μm以上であるときには、それぞれの白点に侵入した金属成分による放電が抑制されるため、絶縁耐力の低下を抑制することができる。なお、隣り合う白点間の距離の平均値とは、それぞれの白点の重心間距離の平均値と、測定する範囲内の白点の円相当径の平均値とを求め、重心間距離の平均値から円相当径の平均値を差し引いた値のことである。
また、本実施形態の窒化珪素質基板1によれば、白点における凹凸度が1.1以上2.9以下であることが好適である。
ここで、凹凸度とは、白点の輪郭の凹凸の度合いを示すものであり、数値が大きいほど、輪郭に凹凸が多く存在するということである。そして、白点の凹凸度が1.1以上2.9以下であるときには、回路部材2を接合するろう材の塗布等において、白点の輪郭の凹凸から欠けが生じることによって、塗布する部材を損傷させたり、回路部材2中に残ったりすることなく、回路部材2との接合強度を向上させることができる。
また、本実施形態の窒化珪素質基板1によれば、白点における円形度が0.7以上0.9以下であることが好適である。
ここで、円形度とは、数値が大きいほど、白点の輪郭が真円に近づき、真円の円形度は1である。そして、白点における円形度が0.7以上0.9以下であるときには、回路部材2を接合するろう材の塗布等において、白点の輪郭の凹凸から欠けが生じることによって、塗布する部材を損傷させたり、回路部材2中に残ったりすることなく、回路部材2との接合強度を向上させることができる。
次に、円相当径が2μm以上30μm以下の白点の1mm当たりの個数、白点の凹凸度および円形度の求め方について説明する。まず、窒化珪素質基板1の主面を研磨して鏡面に加工する。そして、鏡面に研磨加工した面を測定面とし、光学顕微鏡を用いて100倍の
倍率で観察し、例えば、面積が1.2mm(横方向の長さが1.2mm、縦方向の長さが1mm)となる範囲をCCDカメラで撮影する。次に、撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製であり、以降に画像解析ソフト「A像くん」と記した場合、旭化成エンジニアリング(株)製の画像解析ソフトを示すものとする。)による粒子解析という手法で解析することにより、円相当径が2μm以上30μm以下の白点の1mm当たりの個数、白点の凹凸度および円形度を求めることができる。なお、円相当径が2μm以上30μm以下の白点の1mm当たりの個数の算出にあたっては、1mm当たりの個数に換算する必要がある。
また、隣り合う白点間の距離の平均値については、上述したものと同じ画像を用いて、まず、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することにより、白点の円相当径の平均値を求め、次に、分散度計測の重心間距離法という手法で解析することによって白点の重心間距離の平均値を求める。そして、白点の重心間距離の平均値から白点の円相当径の平均値を差し引くことにより、隣り合う白点間の距離の平均値を求めることができる。
そして、粒子解析および分散度計測の重心間距離法というこれらの手法における設定条件としては、ともに、例えば、明度を明、2値化の方法を手動、小図形除去面積を0μm、画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の0.8倍以上2倍以下とすればよい。
また、本実施形態の窒化珪素質基板1によれば、主面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、主面を構成する全成分の合計100質量%のうち、菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%
以上20質量%以下であることが好適である。
このような構成を満たしていることにより、本実施形態の窒化珪素質基板1は、優れた機械的強度を有しつつ、回路部材2を構成する金属成分との接合強度を向上できる。
ここで、窒化硼素は、常圧における結晶構造として、六方晶と菱面体晶とがあり、菱面体晶の窒化硼素は、単位格子におけるc軸の格子定数(1.0000nm)が六方晶の窒化硼素の単位格子のc軸における格子定数(0.66813nm)よりも大きいものである。
そして、このような菱面体晶の窒化硼素が存在していることにより、焼結時に、窒化珪素の柱状結晶粒子を構成する単位格子の一部が菱面体晶の窒化硼素の単位格子内に侵入して、菱面体晶の窒化硼素と窒化珪素とが強固に結合されるとともに、結合された結晶の形状が複雑な形状となっているため接合強度が向上できる。
また、窒化硼素において、六方晶の結晶構造の窒化硼素は少ないことが好適であり、六方晶の窒化硼素の含有量は、菱面体晶の窒化硼素の含有量の10%以下であることが好適である。
次に、上述した窒化珪素質基板1の主面を構成する全成分の合計100質量%のうちの菱
面体晶の窒化硼素の含有量を求め方について説明する。なお、菱面体晶の窒化硼素の含有量を求めるにあたっての試料採取は、主面から30μmの深さまで削った粉末を対象とする。そして、得られた粉末を試料とし、X線回折装置(XRD)を用いたリートベルト法によって得られた定量値を、窒化珪素質基板1の主面を構成する全成分の合計100質量%の
うちの菱面体晶の窒化硼素の含有量とする。
そして、本実施形態の窒化珪素質基板1は、窒化珪素を主成分とするものであり、ここで、主成分とは焼結体を構成する全成分100質量%のうち、窒化珪素を63質量%以上含有
するものである。特に、窒化珪素を70質量%以上含有すると機械的強度がより高くなる傾向があるため好適である。
なお、本実施形態の窒化珪素質基板1における機械的強度は、JIS R 1601−2008(ISO 14704:2000(MOD))に準拠して、室温における4点曲げ強度で評価する
ことができ、本実施形態の窒化珪素質基板1は、900MPa以上の4点曲げ強度を有する
。また、本実施形態の窒化珪素質基板1における金属成分との接合強度は、JIS C 6481−1996に準拠して測定することができる。
また、本実施形態の窒化珪素質基板1は、窒化珪素を主成分とし、例えば、マグネシウム、希土類金属(RE)およびアルミニウムを酸化物換算で、それぞれ2質量%以上6質量%以下、12質量%以上16質量%以下および0.1質量%以上0.5質量%以下含んでいることが好ましい。
なお、マグネシウム、希土類金属(RE)およびアルミニウムを酸化物換算した各含有量は、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分
光分析装置(ICP)を用いて、Mg、REおよびAlの含有量を求め、それぞれMgO、REおよびAlに換算することで求めることができる。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)によっても含有量を求めることができる。さらに、窒化珪素については、XRFやICPによりSiの含有量を求めてSiに換算したり、窒素分析装置を用いて、Nの含有量を求めてSiに換算したりして求めてもよいが、100質量%から、SiやN以外の含有量を差し引くことによっても求めることができる。
マグネシウムの酸化物換算での含有量が2質量%以上6質量%以下であるときには、マグネシウムの酸化物が有する焼結促進作用によって、低い焼成温度であっても緻密化を図ることができ、優れた機械的特性を有する窒化珪素質基板1とすることができる。なお、マグネシウムの酸化物換算での含有量は、3質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
また、希土類金属の酸化物換算での含有量が12質量%以上16質量%以下であるときには、酸素との高い親和性によって、液相中に窒化珪素の粉末間の酸素が多く取り込まれ、窒化珪素の粒成長が促進されるため、優れた放熱特性を有する窒化珪素質基板1とすることができる。なお、希土類金属の酸化物換算での含有量は、13質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
また、アルミニウムの酸化物換算での含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下であるときには、熱伝導率の低下を抑制しつつ、窒化珪素質基板1の機械的強度を向上させることができる。なお、アルミニウムの酸化物換算での含有量は、0.2質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましい。
そして、窒化珪素質基板1の絶縁耐力は、JIS C 2141−1992(IEC 672-2(1980))に準拠して測定した絶縁破壊の強さ(MV/m)で評価することができる。本実
施形態の窒化珪素質基板1は、絶縁破壊の強さが20MV/m以上である。
また、窒化珪素質基板1の電気的特性は、体積抵抗率が、常温で1014Ω・cm以上であって、300℃で1012Ω・cm以上であることが好ましい。この体積抵抗率は、JIS

C 2141−1992に準拠して測定すればよい。ただし、窒化珪素質基板1が小さく、窒化珪素質基板1からJIS C 2141−1992で規定する大きさとすることができない場合には、2端子法を用いて評価するものとし、その結果が上記数値を満足することが好ましい。
そして、本実施形態の回路基板10は、絶縁耐力および接合強度が高い本実施形態の窒化珪素質基板1を備えているため、長期間にわたって使用可能であり、高い信頼性を有する。
次に、図2は、本実施形態の回路基板の他の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるB−B’線での断面図である。
図2に示す例の回路基板20は、窒化珪素質基板1と回路部材2とが接合層4を介して接合されている点が図1に示す回路基板10とは異なっている。回路部材2を接合層4となるろう材を介して接合することにより、厚みの厚い回路部材2を接合層4を介して、容易に窒化珪素質基板1に接合することができる。
なお、接合層4となるろう材としては、主成分が銀および銅の少なくともいずれか1種であって、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上を含有することが好適であり、その厚みは、例えば、5μm以上20μm以下がよい。
次に、図3は、本実施形態の回路基板のさらに他の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるC−C’線での断面図である。
図3に示す例の回路基板30は、本実施形態の窒化珪素質基板1の主面側に回路部材2を設けてなり、窒化珪素質基板1側から接合層4および銅材5を順次介して接合されている。
図2に示す回路基板20において、窒化珪素質基板1に回路部材2を接合するときの温度が800〜900℃であるのに対し、図3に示す回路基板30のように、銅材5を介することにより、回路部材2と銅材5との間の接合を、銅の拡散によって300〜500℃程度の比較的低い温度で接合することができるため、窒化珪素質基板1に生じる反りを抑制することができる。その結果、窒化珪素質基板1に生じる応力が小さいことから、熱を繰り返し加えても亀裂が生じにくいものとなる。また、回路部材2を厚くすることができるため、回路基板30の放熱特性を高くすることができる。
なお、銅材5としては、銅の含有量が多い、無酸素銅、タフピッチ銅およびりん脱酸銅のいずれかからなることが好適であって、特に、無酸素銅のうち、銅の含有量が99.995質量%以上の線形結晶無酸素銅、単結晶状高純度無酸素銅および真空溶解銅のいずれかからなることが好適であり、その厚みは、例えば、0.1mm以上0.6mm以下がよい。
図4は、本実施形態の電子装置の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるD−D’線での断面図である。
図4に示す例の電子装置Sは、本実施形態の回路基板10の回路部材2上に半導体素子等の電子部品6が搭載されたものである。
図4に示す例の電子装置Sによれば、絶縁耐力が高く、回路部材2との接合強度が高い回路基板10上に電子部品6が載置されていることから、信頼性の高い電子装置Sとすることができる。なお、回路部材2は一つを使用する場合で図示したが、複数個の回路部材2を使用しても構わない。
次に、本実施形態の窒化珪素質基板の製造方法について説明する。
まず、β化率が20%以下であって、純度が98%以上である窒化珪素の粉末と、添加成分として酸化マグネシウム(MgO)および希土類金属の酸化物(例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr11、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくともいずれか1種)の各粉末とを、バレルミル、回転ミル、振動ミル、ビーズミル、サンドミルおよびアジテーターミル等の混合装置を用いて、水とともに湿式混合し、粉砕してスラリーを作製する。
ここで、酸化マグネシウムおよび希土類金属の酸化物の各粉末の添加量は、例えば、それぞれ1質量%以上2質量%以下および2質量%以上4質量%以下であり、残部が窒化珪素の粉末である。
なお、窒化珪素質基板1に存在する白点の円相当径および単位面積当たりの個数は、カルシウムの含有量にて調整することができる。具体的には、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点の1mm当たりに50個以上200個以下存在する窒化珪素質基板1を
得るには、窒化珪素質基板1中に含まれるカルシウムの含有量が2質量ppm以上100質
量ppm以下となるように、カルシウム粉末を添加すればよい。
また、隣り合う白点間の距離の平均値が4μm以上である窒化珪素質基板1を得るには、窒化珪素の粉末および添加成分の各粉末の合計100質量部に対して、分散剤を2.5質量部添加して、水とともに湿式混合し、粉砕してスラリーを作製すればよい。
また、白点の凹凸度が1.1以上2.9以下である窒化珪素質基板1を得るには、混合装置による混合・粉砕時間を、例えば、24時間以上72時間以下とすればよい。
さらに、白点の円形度が0.7以上0.9以下である窒化珪素質基板1を得るには、混合装置による混合・粉砕時間を、例えば、36時間以上60時間以下とすればよい。
また、他の組成例として、マグネシウム、希土類金属およびアルミニウムを酸化物換算でそれぞれ2質量%以上6質量%以下、12質量%以上16質量%以下および0.1質量%以上0.5質量%以下含んでなる窒化珪素質基板1とするには、窒化珪素の粉末とこれら添加成分の粉末の合計との総和を100質量%としたとき、添加成分である酸化マグネシウム(Mg
O)の粉末を2〜6質量%、希土類金属の酸化物の粉末を12〜16質量%および酸化アルミニウム(Al)の粉末を0.1〜0.5質量%、残部を窒化珪素となるように秤量すればよい。
なお、窒化珪素および添加成分の粉末の混合・粉砕で用いるボールは、不純物が混入しにくい材質あるいは同じ材料組成の窒化珪素質焼結体からなるボールが好適である。なお、窒化珪素および添加成分の粉末の粉砕は、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%とし
た場合の累積体積が90%となる粒径(D90)が3μm以下となるまで粉砕することが、焼結性の向上という点から好ましい。混合・粉砕によって得られる粒度分布は、ボールの外径、ボールの量、スラリーの粘度および粉砕時間等で調整することができる。
次に、得られたスラリーに有機バインダを加えて混合した後、をASTM E 11−61に記載されている粒度番号が200のメッシュまたはこのメッシュより細かいメッシュの篩
いに通した後に乾燥させて、窒化珪素を主成分とする顆粒(以下、窒化珪素質顆粒という。)を得る。乾燥は、噴霧乾燥機で乾燥させてもよく、他の方法であっても何ら問題ない
。そして、粉末圧延法を用いて窒化珪素質顆粒をシート状に成形してセラミックグリーンシートとし、このセラミックグリーンシートを所定の長さに切断して窒化珪素を主成分とする成形体(以下、窒化珪素質成形体という。)を得る。あるいは、粉末圧延法に代えて、加圧成形法を用い、窒化珪素質顆粒を成形型に充填してから加圧することによって窒化珪素質成形体を得る。
次に、相対密度が55%以上95%以下である窒化珪素質焼結体からなるこう鉢の内部に、得られた窒化珪素質成形体を入れて、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉を用いて焼成する。なお、このとき、窒化珪素質成形体の100質量部に対して、2質量部以上10質量部未
満の量の窒化珪素質成形体と組成の近似した共材を窒化珪素質成形体の周囲に配置して焼成することにより、窒化珪素質成形体の含有成分の揮発を抑制することができる。
また、焼成条件については、室温から300〜1000℃までは真空雰囲気中にて昇温し、そ
の後、窒素ガスを導入して、窒素分圧を15〜900kPaに維持する。そして、さらに昇温
を進めることによって、1000〜1400℃付近では添加成分が固相反応を経て液相成分を形成し、1400℃以上の温度域でα型からβ型への窒化珪素の相転移が不可逆的に起こる。
そして、焼成炉内の温度を上げて、1640℃以上1750℃以下で4時間以上10時間以下保持した後、170℃/時間以上230℃/時間以下の降温速度で冷却することによって、本実施形態の窒化珪素質基板1を得ることができる。
また、主面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、主面を構成する全成分の合計100質量%の
うち、菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下である窒化珪素質基板を得るには、まず、得られた窒化珪素質成形体の主面に、窒化珪素、添加成分および菱面体晶の窒化硼素の各粉末を、バインダーとともにエタノール等の溶媒に添加したペーストをスクリーン印刷法で塗布し、60℃以上100℃以下の温度で乾燥する。なお、菱面体晶の窒
化硼素の粉末の添加量は、上記各粉末の合計100質量%のうち、5質量%以上20質量%以
下とすればよい。
そして、焼成炉の温度を1640℃以上1700℃未満で4時間以上10時間以下保持した後、170℃/時間以上230℃/時間以下の降温速度で冷却することにより、窒化珪素質基板の主面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、主面における全成分100質量%のうち、菱面体晶の窒化
硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下である窒化珪素質基板を得ることができる。なお、1700℃以上では、菱面体晶の窒化硼素は、六方晶の窒化硼素に変わりやすくなる。
次に、本実施形態の回路基板の製造方法について説明する。
図1に示す例の回路基板10を得るには、まず、窒化珪素質基板1を上述した製造方法により準備する。次いで、この窒化珪素質基板1の主面側に銅を主成分とする回路部材2を配置する。その後、窒素雰囲気中、1065℃以上1085℃以下で加熱し、同時に30MPa以上の圧力を加えることによって、窒化珪素質基板1の主面側に回路部材2を直接接合してなる回路基板10を得ることができる。
図2に示す例の回路基板20を得るには、まず、上述した窒化珪素質基板1を準備した後、この窒化珪素質基板1の主面上に、接合層4となる、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上を含有する銀(Ag)−銅(Cu)系合金のペースト状のろう材を、スクリーン印刷法、ロールコーター法および刷毛塗り法等のいずれかで塗布し、この上に銅を主成分とする回路部材2を配置する。上記ペースト状のろう材には、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選ばれる1種以上を含有させてもよい。その後、真空雰囲気中、800℃以上900℃以下で加熱し、同時に30
MPa以上の圧力を加えることによって、窒化珪素質基板1の主面側に回路部材2をろう材4を介して接合してなる回路基板20を得ることができる。
また、図3に示す例の回路基板30を得るには、まず、上述した窒化珪素質基板1を準備する。次いで、この窒化珪素質基板1の主面上に、接合層4となる、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上を含有する銀(Ag)−銅(Cu)系合金のペースト状のろう材を、スクリーン印刷法、ロールコーター法および刷毛塗り法等のいずれかで塗布する。上記ペースト状のろう材にも、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選ばれる1種以上を含有させてもよい。そして、ろう材上に薄状の銅材5をそれぞれ配置する。その後、800℃以上900℃以下で加熱して、窒化珪素質基板1の主面側に接合層4を介して銅材5を接合する。
そして、銅材5における回路部材2と対向する面を研磨した後、銅材5上に回路部材2を配置する。続いて、水素、窒素、ネオンまたはアルゴンのいずれかから選ばれる雰囲気中、300℃以上500℃以下で加熱し、同時に30MPa以上の圧力を加えることによって、窒化珪素質基板1の主面側に回路部材2を接合層4、銅材5を順次介して接合してなる回路基板30を得ることができる。
なお、本実施形態の説明においては、窒化珪素質基板1の主面側に回路部材2を設ける回路基板10〜30および電子装置Sについて説明したが、窒化珪素質基板1に回路部材2を設ける主面と反対の主面に放熱部材を設けてもよい。
以下、本実施形態の実施例を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、β化率が10%(即ち、α化率が90%)、純度が98%である窒化珪素の粉末と、添加成分として酸化マグネシウム(MgO)、酸化エルビウム(Er)、酸化アルミニウム(Al)および酸化モリブデン(MoO)の各粉末を、回転ミルを用いて湿式混合し、粒径(D90)が1μm以下となるまで混合・粉砕してスラリーとした。なお、このとき、表1に示す含有量となるカルシウム粉末についても添加した。
ここで、上記各粉末の含有量は、窒化珪素質基板におけるマグネシウム、エルビウム、アルミニウムおよびモリブデンの各含有量が酸化物換算でそれぞれ2.5質量%、14質量%
、0.3質量%および0.5質量%となるようにそれぞれ秤量した。
次に、得られたスラリーに有機バインダを加えた後、ASTM E 11−61に記載されている粒度番号が250のメッシュの篩いに通した後に噴霧乾燥機を用いて乾燥させること
によって、窒化珪素質顆粒を得た。そして、粉末圧延法を用いて、窒化珪素質顆粒をシート状に成形してセラミックグリーンシートとし、このセラミックグリーンシートを所定の長さに切断し、平板状の窒化珪素質成形体を得た。
次に、得られた窒化珪素質成形体を相対密度が75%である窒化珪素質焼結体からなるこう鉢の内部に入れた。なお、このとき、窒化珪素、酸化マグネシウムおよび希土類金属の酸化物等の成分を含んだ共材を、窒化珪素質成形体の100質量部に対して6質量部の量で
窒化珪素質成形体の周囲に配置した状態で、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉内に入れて焼成した。
焼成条件については、室温から500℃までは真空雰囲気中にて昇温し、その後、窒素ガ
スを導入して、窒素分圧を100kPaに維持した。そして、焼成炉内の温度を上げて1690
℃で5時間保持した。そして、降温速度を200℃/時間として冷却することによって、試
料No.1〜7の窒化珪素質基板を得た。
そして、各試料の主面に存在する円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点の1mm当たりの個数を測定するために、まず、主面を鏡面に研磨加工した面を測定面とし、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で観察し、面積が1.2mm(横方向の長さが1.2mm
、縦方向の長さが1mm)となる範囲をCCDカメラで撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することによって求め、1mm当たりの個数に換算した。
ここで、この手法の設定条件としては、明度を明、2値化の方法を手動、小図形除去面積を0μm、画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の1.2倍とした。
次に、各試料の絶縁耐力を評価するために、各試料の絶縁破壊の強さ(MV/m)をJIS C 2141−1992(IEC 672-2(1980))に準拠して測定し、その値を表1に示
した。なお、各試料に形成する電極の材質は黄銅とし、各試料の周囲媒質としてシリコーン油を用いた。
次に、窒化珪素質基板を850℃で熱処理することによって、窒化珪素質基板の主面に付
着した有機物や残留炭素を除去した。熱処理した窒化珪素質基板の主面における回路部材の配置に対応する部分に、ペースト状のろう材をスクリーン印刷で塗布した後、135℃で
乾燥させることによって、接合層を形成した。
そして、窒化珪素質基板の主面に無酸素銅からなる回路部材を接合層に接するように配置して、真空雰囲気中において、840℃で加熱することにより、回路部材が接合層を介し
て窒化珪素質基板に接合された回路基板を得た。
また、窒化珪素質基板と回路部材との引きはがし強さ(kN/m)をJIS C 6481−1996に準拠して測定することにより、回路部材と窒化珪素質基板との接合強度を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2015164184
表1に示す通り、試料No.2〜6は、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が主面の1mm当たりに50個以上200個以下存在することにより、回路部材との接合
強度が高いとともに、高い絶縁耐力を有する窒化珪素質基板であることがわかった。
実施例1と同様に、窒化珪素の粉末と、添加成分として、酸化マグネシウム粉末、酸化エルビウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化モリブデン粉末を用い、実施例1と同様の添加量で秤量した。また、窒化珪素質基板の全成分100質量%のうち、5ppmの含有量
となるカルシウム粉末を添加し、回転ミルを用いて湿式混合し、粒径(D90)が1μm以下となるまで粉砕してスラリーとした。なお、この粉砕にあたっては、窒化珪素粉末および添加成分の各粉末の合計100質量部に対して、表2に示す量の分散剤(カルボキシル
基含有水溶性重合体)を添加した。そして、以降の工程については、実施例1に示した方法と同じ方法で、試料No.8〜12の窒化珪素質基板を得た。
そして、隣り合う白点間の距離の平均値を求めるため、まず、実施例1と同様の方法により撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することにより、白点の円相当径の平均値を求め、次に、分散度計測の重心間距離法という手法で解析することによって白点の重心間距離の平均値を求めた。そして、白点の重心間距離の平均値から白点の円相当径の平均値を差し引くことにより、隣り合う白点間の距離の平均値を求めた。なお、設定条件は、実施例1と同様とした。
また、各試料の絶縁耐力は、実施例1で示した方法と同じ方法を用いて絶縁破壊の強さ(MV/m)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2015164184
表2に示す通り、試料No.9〜12は、絶縁破壊の強さの値として大きな値が得られており、隣り合う白点間の距離の平均値が4μm以上であることにより、高い絶縁耐力を有するものとなることがわかった。
実施例1と同様に、窒化珪素の粉末と、添加成分として、酸化マグネシウム粉末、酸化エルビウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化モリブデン粉末を用い、実施例1と同様の添加量で秤量した。また、窒化珪素質基板の全成分100質量%のうち、5ppmの含有量
となるカルシウム粉末を添加し、回転ミルを用いて湿式混合し、粒径(D90)が1μm以下となるまで粉砕してスラリーとした。なお、回転ミルによる混合・粉砕時間は表2に示す通りとした。そして、以降の工程については、実施例1に示した方法と同じ方法で、試料No.13〜19の窒化珪素質基板を得た。
そして、実施例1と同様の方法により撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することにより、白点の凹凸度を求めた。なお、設定条件は、実施例1と同様とした。
また、実施例1で示した方法と同じ方法で回路基板を作製し、回路部材の引きはがし強さ(kN/m)を求めた。結果を表3に示す。
Figure 2015164184
表3に示す通り、試料No.14〜18は、引きはがし強さの値として大きな値が得られており、白点の凹凸度が1.1以上2.9以下であることにより、窒化珪素質基板と回路部材との接合強度が高まることがわかった。
酸化エルビウム粉末に変えて酸化イットリウム粉末を用い、回転ミルを用いた混合・粉砕時間を表4に示す時間としたこと以外は実施例3と同様の方法により、試料No.20〜26の窒化珪素質基板を作製した。
そして、実施例1と同様の方法により撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することにより、白点の円形度を求めた。なお、設定条件は、実施例1と同様とした。
また、実施例1で示した方法と同じ方法で回路基板を作製し、回路部材の引きはがし強さ(kN/m)を求めた。結果を表4に示す。
Figure 2015164184
表4に示す通り、試料No.21〜25は、引きはがし強さの値として大きな値が得られており、白点の円形度が0.7以上0.9以下であることにより、窒化珪素質基板と回路部材との接合強度が高まることがわかった。
実施例1と同様に、窒化珪素の粉末と、添加成分として、酸化マグネシウム粉末、酸化エルビウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化モリブデン粉末を用い、実施例1と同様の添加量で秤量した。また、窒化珪素質基板の全成分100質量%のうち、5ppmの含有量
となるカルシウム粉末を添加し、回転ミルを用いて湿式混合し、粒径(D90)が1μm以下となるまで粉砕してスラリーとした。
次に、実施例1で示した方法と同じ方法によって、窒化珪素質顆粒を得た。そして、粉末圧延法を用いて、窒化珪素質顆粒をシート状に成形して所定の長さに切断することにより、平板状の窒化珪素質成形体を得た。また、同様の顆粒を用いて、冷間静水圧法を用いて、圧力を150MPaとした冷間静水圧プレス法により、窒化珪素質基板の外寸が60mm
×60mm×20mmとなるような厚肉の窒化珪素質成形体を得た。
ここで得られた平板状の窒化珪素質成形体は、回路部材と窒化珪素質基板との接合強度を評価するためのものであり、厚肉の窒化珪素質成形体は、窒化珪素質基板の機械的強度を評価するためのものである。
次に、窒化珪素、添加成分、結晶構造が菱面体晶または六方晶である窒化硼素の各粉末を準備し、主面における全成分100質量%のうちの含有量が表5に示す値となるように、
窒化硼素の粉末を秤量し、残部を上記組成比率の窒化珪素および添加成分として、バインダーとともにエタノール等の溶媒に添加したペーストを作製した。そして、スクリーン印刷法で塗布し、温度を80℃として乾燥させた。
次に、相対密度が75%である窒化珪素質焼結体からなるこう鉢の内部に各成形体を入れ、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉により表5に示す温度により焼成した。なお、このとき、窒化珪素質成形体100質量部に対して6質量部である窒化珪素質成形体と同組成の
共材を窒化珪素質成形体の周囲に配置した。
焼成条件については、室温から500℃までは真空雰囲気中にて昇温し、その後、窒素ガ
スを導入して、窒素分圧を100kPaに維持した。そして、焼成炉内の温度を上げて表5
に示す焼成温度で5時間保持した。そして、降温速度を200℃/時間として冷却すること
によって、窒化珪素質基板である試料No.27〜35を得た。
そして、窒化珪素質基板の主面を構成する全成分の合計100質量%のうちの菱面体晶ま
たは六方晶の窒化硼素の含有量を求めた。求め方としては、主面から30μmの深さまで削った粉末を試料とし、XRDを用いたリートベルト法によって得られた定量値を、窒化珪素質基板の主面を構成する全成分の合計100質量%のうちの菱面体晶または六方晶の窒化
硼素の含有量とした。
次に、実施例1で示した方法と同じ方法で回路基板を作製し、回路部材の引きはがし強さ(kN/m)を求めた。
また、外寸が60mm×60mm×20mmの窒化珪素質基板から、厚さ、幅および長さがそれぞれ3mm、4mmおよび50mmである試験片を切り出し、JIS 1601−2008(ISO 14704:2000(MOD))に準拠して、室温における4点曲げ強度を求めた。結果を
表5に示す。
Figure 2015164184
表5に示す通り、試料No.28〜32は、4点曲げ強度および引きはがし強さにおいて優れた値が得られており、主面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、主面を構成する全成分の合計100質量%のうち、菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下であるこ
とにより、優れた機械的強度を有しつつ、回路部材との接合強度を向上できることがわかった。
1:窒化珪素質基板
2:回路部材
4:接合層
5:銅材
6:電子部品
10、20、30:回路基板

Claims (7)

  1. 主面に回路部材が設けられる窒化珪素質基板であって、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が前記主面の1mm当たりに50個以上200個以下存在することを特徴とする窒化珪素質基板。
  2. 隣り合う前記白点間の距離の平均値が4μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の窒化珪素質基板。
  3. 前記白点は、凹凸度が1.1以上2.9以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の窒化珪素質基板。
  4. 前記白点は、円形度が0.7以上0.9以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の窒化珪素質基板。
  5. 前記主面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、前記主面を構成する全成分の合計100質量%のうち、前記菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の窒化珪素質基板。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の窒化珪素質基板の前記主面に前記回路部材を備えていることを特徴とする回路基板。
  7. 請求項6に記載の回路基板における前記回路部材上に電子部品を搭載してなることを特徴とする電子装置。
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