JP2015163815A - 断熱材及び断熱材の製造方法 - Google Patents

断熱材及び断熱材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも嵩が低く、かつ、加工性に優れ、微細構造にも適用可能な断熱材を提供する。【解決手段】主体繊維と、エアロゲルと、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダーと、を含む断熱材であって、前記エアロゲルは、密度が0.5g/cm3未満、熱伝導率が0.02W/(m・K)以下であり、前記主体繊維100重量部に対して、前記エアロゲルが35〜210重量部配合された、ことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、断熱性を有する断熱材、及び該断熱材の製造方法に関する。
医薬品、食品などの冷蔵製品及び冷凍製品は、輸送時の品質の劣化を防ぐため、冷蔵、冷凍条件以外の環境では、通常、断熱性を有する発泡スチロール容器や発泡ウレタン等の断熱材を付与した段ボール箱のような、断熱容器(例えば、特許文献1)に収納されて運搬される。このような断熱容器は、収納される製品と比して嵩高であるため、製品の運送コストがかさむ、という問題があった。また、製品自体とは別に断熱容器を用意し、製品を収納・梱包することが必須であり、運送手順が煩雑化する要因となっていた。
一方、製品を高温状態で比較的長時間保つ容器が必要とされる場面も多い。このような容器は、通常、使用時に外部が高温とならず、使用者が素手で触れられることも同時に要求される場合が少なくない。このような容器としては、保温性を持たせるため、発泡スチロール等の嵩高の素材の容器や、側壁が積層構造を有する紙容器等が使用されている。側壁が積層構造を有する紙容器としては、例えば特許文献2のように、側壁の積層内部に空気の層を有するものが知られる。いずれにしても、内側の容積に比して、全体が嵩高であり、容器自体の運送時、収納時のスペースを多大に要するものであった。
特開平11−147577号公報 特開2000−247377号公報 特開平7−48881号公報
上記のように、各分野における従来の断熱材は、多くが嵩高の形態であるため、運搬効率、収納効率を下げる要因となっていた。また、使用される素材も、ガラスウール、断熱ボード、発泡ウレタン、発泡スチロール等に限られており、その厚みと構造上の脆弱性により、微細な加工、成形が困難であり、ボックス状の断熱容器や、比較的大型の基材等、使用される対象が限られていた。
そこで、本発明は、従来よりも嵩が低く、かつ、加工性に優れ、微細構造にも適用可能な断熱材を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の断熱材は、主体繊維と、エアロゲルと、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダーと、を含む断熱材であって、前記エアロゲルは、密度が0.5g/cm3未満、熱伝導率が0.02W/(m・K)以下であり、前記主体繊維100重量部に対して、前記エアロゲルが35〜210重量部配合された、ことを特徴とする。
上記構成を備えた本発明の断熱材は、通常の紙同様に嵩が低く、優れた加工性を有するのに加え、一定量配合された、低密度、低熱伝導率のエアロゲルにより、優れた断熱性を有する。また、本発明の断熱材は、主体繊維、エアロゲルに加え、バインダーとして、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含有する。当該バインダーを含有することで、抄紙工程等でのエアロゲルの粒子形状の崩壊が生じにくく、その断熱性を保持しやすい、という効果を奏する。
なお、ここでいう「密度」は、粒子の状態で、25℃、1気圧の条件下で測定するものを指すものとする。また、ここでいう「エアロゲル」とは、ナノメートル規模の孔が多数あり、そこから空気が分散される固体材料の連続マトリクスを持つ微粒子である。さらに、本発明において、「重量部」とは、水以外においては、すべて乾燥重量に基づくものである。
また、ここでいう「低融点合成繊維」とは、少なくとも当該繊維の表面において、融点が140℃以下であって、主体繊維が融点を有する場合には当該融点よりも低い融点を有する合成繊維を指すものとする。
前記バインダーは、前記水溶性ポリマーを含み、前記水溶性ポリマーは、カチオン化デンプン及び両性デンプンの少なくとも一方であることが好ましい。バインダーとして、カチオン化デンプン又は両性デンプンを使用することで、抄紙時におけるエアロゲルの粒子形状がより壊れにくく、これを用いた断熱材の断熱性能を保持することができる。
また、前記バインダーは、前記低融点合成繊維を含み、前記低融点合成繊維は、ビニロンバインダー繊維であることが好ましい。バインダーとして、ビニロンバインダー繊維を使用することで、効率よく断熱材を製造することができる。
前記エアロゲルは、メチルシリケートモノマーを常圧乾燥又は臨界乾燥でエアロゲル化した多孔質シリカ粒子であることが好ましい。メチルシリケートの常圧乾燥ゲル又は臨界乾燥ゲルは、低密度での製造が容易であり、水溶液中で多孔質形状が崩壊しにくいため、抄紙スラリー中でその形状が保持されやすい。
前記エアロゲルの平均粒径が2〜140μmであり、かつ、比表面積が400m2/g以上であることが好ましい。エアロゲルの平均粒径を2〜140μmとすることで、断熱材に十分な断熱性を与え、嵩の低い断熱材においても断熱性能を発揮させることが可能である。また、多孔質シリカ分活の比表面積を400m2/g以上とすることで、より高い断熱性を断熱材に付与することが可能となる。
本発明の断熱材は、厚さが15μm〜1.2cm、坪量が10〜480g/m2、密度が0.5〜1.5g/cm3のシート状とすることが好ましい。断熱材を当該性状とすることで、紙様の質感、加工性をもたせることができる。
本発明の断熱材の製造方法は、主体繊維100重量部と、密度が0.5g/cm3未満、熱伝導率が0.02W/(m・K)以下のエアロゲル35〜210重量部と、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダー0.3〜125重量部と、を水に添加混合して混合スラリーを調製し、前記混合スラリーを抄紙する、ことを特徴とする。上記製造方法により、通常の紙同様に嵩が低く、優れた加工性を有するのに加え、優れた断熱性を有する断熱材の製造が可能である。
本発明の断熱材の製造方法において、抄紙時の前記混合スラリーは、pH7〜8とすることが好ましい。pH7〜8のスラリー中においては、エアロゲルの形質、性状が安定しやすく、同時に主体繊維がパルプを含む場合にはそのフィブリル化が促進されやすい。
また、本発明の断熱材の製造方法において、前記混合スラリーの前記バインダーが前記水溶性ポリマーを含み、前記水溶性ポリマー及び前記エアロゲルを、少なくとも前記主体繊維を水に懸濁したスラリーに、添加混合して前記混合スラリーを調整することが好ましい。エアロゲルが繊維に絡むことによりエアロゲルと繊維の複合体が形成され、水面に浮上しにくくなるからである。
本発明の断熱材は、十分な断熱性を有し、かつ、嵩が低く、加工性に優れるものである。また、本発明の断熱材の製造方法は、十分な断熱性を保持しつつ、嵩が低く、加工性に優れた断熱材を提供可能である。
以下、本発明の断熱材及び該断熱材の製造方法について例示的に説明する。
1.断熱材
本発明の断熱材は、主体繊維と、エアロゲルと、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダーと、を含む断熱材であって、前記エアロゲルは、密度が0.5g/cm3未満、熱伝導率が0.02W/(m・K)以下であり、前記主体繊維100重量部に対して、前記エアロゲルが35〜210重量部配合された、ことを特徴とする。以下、前記断熱材の各配合成分について詳述する。
<主体繊維>
本発明の断熱材の主体繊維は、合成繊維及び天然繊維のいずれでも使用することができる。合成繊維を使用する場合、主体繊維としては、特に限定されるものではないが例えば、通常、不織布の原料として使用される合成繊維である、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、オレフィン繊維、ポリウレタン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリ乳酸繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維を使用することができ、ポリエステル繊維が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)繊維がより好ましい。
また、天然繊維を使用する場合、主体繊維としては、特に限定されるものではないが例えば、パルプを使用することができる。パルプの種類は、特に限定されるものではなく、通常、紙の原料として使用される木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプのいずれも使用可能であり、また、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、メカニカルパルプのいずれも使用可能である。
各種主体繊維の選択は、断熱材の所望の柔軟性、耐熱性、難燃性、不燃性、可撓性、強度、重量に応じて適宜変更することができ、主体繊維には、上記の1種類のみの繊維を含有させることも、複数種類の繊維を含有させることもできる。
特に、後述のエアロゲルを多量に含有する本実施形態の断熱材においては、例えば主体繊維としてパルプのみにした場合などは、高い断熱性を有するもののその強度が低くなりやすい。この場合、主体繊維中に、ミクロフィブリル化されたパルプ(セルロースナノファイバー)を、全主体繊維100重量部中0.5〜22重量部配合することで、断熱材の高い断熱性を維持しつつ、紙様の強度と加工性を付与することができる。
後述のエアロゲルを多量に含有する断熱材においては、エアロゲルの保持するため繊維径の細い合成繊維が望ましい。
<エアロゲル>
本発明に使用するエアロゲルは、ナノメートル規模の孔が多数あり、そこから空気が分散される固体材料の連続マトリクスを持つ微粒子であり、例えば99%が空気で構成され、非常に軽く、効果的な断熱材になる。またエアロゲルとしては、シリカ、メチルシリケート、シリカ・アルミナ等の公知のシリカ化合物、レゾルシノール・ホルムアルデヒド、セルロース、セルロースナノファイバーエアロゲル等の多孔質粒子を使用できる。多孔率の程度にかかわらず、素材自体の熱伝導率が0.15W/(m・K)以下、特に、0.1W/(m・K)以下、さらには0.06〜0.018W/(m・K)のものを使用することが好ましい。特に、メチルシリケートモノマーを常圧乾燥又は臨界乾燥でエアロゲル化したものが、低密度での製造が容易であること、ナノレベルでの多孔構造又は中空構造を比較的容易に形成し得ること、水溶液中で崩壊しにくいこと、などから、好適に使用可能である。
エアロゲルの多孔率は50.0〜99.8%、特に70〜99.8%、さらに86〜99.8%とすることが好ましい。また、平均粒径は、特に限定されるものではないが、2〜140μmとすることが好ましい。多孔質シリカ粒子エアロゲルの粒径が140μm超であると、断熱材を厚くする必要があり、低嵩で断熱効果を有する断熱材剤を提供する、という本願の目的を達成しにくい。また、2μm未満であると、十分な断熱効果が得られにくい。
エアロゲルは、比表面積が400m2/g以上、特に500〜1000m2/g、さらに600〜1000m2/gのものを使用することが好ましい。比表面積を上げることで、多孔率を高くすることができる。また、断熱材全体の重量を軽減することもできる。
本発明の断熱材におけるエアロゲルの配合量は、主体繊維100重量部に対して35〜210重量部とすることが好ましい。エアロゲルの配合量を35重量部未満とすると、断熱材に十分な断熱性を与えられない可能性がある。また、エアロゲルの配合量を210重量部超とすると、断熱材の強度が下がり、所望の紙様の加工性を得ることが困難となる、断熱材からのエアロゲルの脱落、飛散等が生じる、等の問題が生じ得る。
また、主体繊維がパルプを含み、後述のバインダーがカチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む場合には、同様な観点から、エアロゲルの配合量は、主体繊維100重量部に対して35〜75重量部とすることが好ましく、特に35〜60重量部、さらに38〜52重量部とすることが好ましい。
<バインダー>
本発明の断熱材は、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダーを含有する。即ち、本発明の断熱材が含有するバインダーは、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含む。水溶性ポリマーとしては、デンプン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、水性ウレタン等をカチオン化処理及び/又は両性化処理したものを好適に使用できる。特に、カチオン化デンプン及び両性デンプンの少なくとも一方が、抄紙時に水溶液に気泡等が生じにくく、安定した抄紙と、高い歩留まりを可能とすることから、より好適に使用できる。
カチオン化デンプン、両性デンプンは、例えば、特開2003−64101号公報(カチオン化デンプン)、特開2001−19701号公報(両性デンプン)等に記載される公知の方法を用いることで実施可能である。なお、カチオン性デンプンは、市販されているものを適宜使用することができ、例えば、日本食品化工株式会社製ネオタックシリーズ等が適用可能である。
低融点合成繊維としては、少なくとも当該繊維の表面において、融点が140℃以下であって、主体繊維が融点を有する場合(例えば主体繊維に合成繊維が含有される場合)には当該融点よりも低い融点を有する合成繊維であれば特に限定されるものではなく、低融点合成繊維としては、例えば、ビニロンバインダー繊維、オレフィンバインダー繊維、ポリステルバインダー繊維等が好適に使用できる。
低融点合成繊維としては、特にビニロンバインダー繊維が好ましく、当該繊維は、70℃で水中溶解するため、乾燥時にエアロゲルと繊維間を接着することができる。ビニロンバインダー繊維は、市販されているものを適宜使用することができ、例えば、株式会社クラレ製VPB105−1等が適用可能である。
また、バインダー繊維は芯が高融点成分で鞘が低融点成分である芯鞘繊維を用いてもよい。
バインダーとして、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を使用することにより、当該バインダーを含有することで、抄紙工程等でのエアロゲルの粒子形状の崩壊が生じにくく、その断熱性を保持しやすい。特に、主体繊維がパルプを含み、エアロゲルが多孔質シリカ粒子、より具体的にはメチルシリケート粒子である場合には、水とパルプを含むパルプスラリー中で、通常、パルプはアニオン性であり、また、該スラリー中に添加される多孔質シリカ粒子、特にメチルシリケート粒子は、アニオン性又は両性を示す。アニオン性のパルプ及びアニオン性又は両性の多孔質シリカ粒子は、互いに凝集しにくく歩留まりが低くなりやすい。ここで、バインダーとしてカチオン性ポリマー及び/又は両性ポリマーを使用することにより、パルプ及び多孔質シリカ粒子の凝集を促進し、歩留まりを高めることが可能である。
なお、上記歩留まりは、さらにキチン・キトサン等を含む公知の凝集剤を用いることにより高めることが可能である。
バインダーは、主体繊維100重量部に対して、0.3〜125重量部配合することが好ましい。バインダーの配合量を0.3重量部未満とすると、抄紙工程等でのエアロゲルの粒子形状の崩壊が生じにくく、その断熱性を保持しやすい。また、バインダーの配合量を125重量部超とすると、断熱材の強度が下がり、所望の紙様の加工性を得ることが困難となる虞がある。
また、主体繊維がパルプを含み、バインダーがカチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む場合には、同様な観点から、水溶性ポリマーの配合量は、主体繊維100重量部に対して0.3〜33重量部とすることが好ましく、特に0.3〜18重量部とすることがより好ましい。
<その他の成分>
その他、特に限定されるものではないが、例えば製紙用添加剤として通常使用される、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤、ロジン、カルボキシルメチルセルロース、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等のサイズ剤、ポリアクリルアミド、ケイ酸ソーダ等の歩留まり向上剤、染料、顔料等を、必要に応じて内添又はサイズプレスにより添加することができる。また、上記以外に、例えば、添加剤としては、水溶性ポリウレタン樹脂などの分散剤(例えば、吉村油化株式会社製、テキサノールPE―10Fなど)、消泡剤(例えば、明成化学工業株式会社製、フォームレスPニューなど)を用いることができる。
<断熱材の性状>
上記の成分よりなる断熱材の性状は、厚さ15μm〜1.2cm、坪量10〜480g/m2、密度0.5〜1.5g/cm3のシート状とすることができる。これらの数値は、一般的な紙と同様の範囲内であり、これにより、本発明の断熱剤に、紙と同様の外観、質感を有することが分かる。断熱材は、抄紙シートの一層のみである必要はなく、複数のシートを接着剤等で貼合した多層構造であってもよく、また、シートの片面又は両面にポリエチレン等の樹脂層を設けたラミネート構造であってもよい。特にラミネート構造とすることで、シートからのエアロゲルの脱落を防ぐことができ、また、断熱材全体の強度、断熱性を高めることができる。
<断熱材の製造方法>
1.抄紙用スラリーの調製
主体繊維100重量部と、上記のエアロゲル35〜210重量部と、上記のバインダー0.3〜125重量部とを水に添加混合して混合スラリーを調製し、抄紙用スラリー(混合スラリー)を調製する。
なお、バインダーとして、上記の水溶性ポリマーを含有するものを使用する場合には、水溶性ポリマー及びエアロゲルを、少なくとも主体繊維を水に懸濁したスラリーに、添加混合して抄紙用スラリーを調整することが好ましい。具体的には、例えば、主体繊維としてパルプ、エアロゲルとして多孔質シリカ粒子を使用し、バインダーが水溶性ポリマーを含有する場合には、パルプを水に懸濁したスラリーに、多孔質シリカ粒子と、バインダーとを添加混合して抄紙用スラリー(混合スラリー)を調製することが好ましい。
抄紙用スラリーの調製に際して、スラリーがpH7〜8となるように、必要に応じて酸、アルカリ等を添加して調整することが好ましい。特に、エアロゲルが疎水化処理されたメチルシリケート等である場合、pH7〜8の条件下で最もその化学構造が安定しやすい。そのため、粒子の多孔構造を保持するためにも、上記条件下でスラリーを調製することが望まれる。
2.抄紙工程
上記の抄紙用スラリーを、紙の製造において通常使用される公知の抄紙機を用いて抄紙する。抄紙機のスリット幅、ドラム径、ドラム回転速度、プレス圧、ドライヤー温度等は、断熱材シートの所望の性状によって、適宜変更可能である。
3.付帯工程
上記抄紙工程によって得られた抄紙シートについて、必要に応じて、複数のシートを接着剤を介して積層してもよく、また、片面又は両面にポリエチレン等の樹脂層を設けるラミネート加工を施してもよい。
<断熱材による断熱方法>
本発明の断熱材について、目的の物品を包装する、目的の物品に貼付する等の手段により、目的の物品に対して断熱効果を奏することが可能である。ここで、目的の物品の素材については特に限定されず、紙、プラスチック、板材、金属等何れにも使用可能である。その使用の目的についても、食品、医薬品の容器や包装材、建築材等に使用可能である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の断熱材は、上記一例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
本発明の断熱材の効果を確かめるために以下の2つの実験を行った。
[実験1]
<断熱材の作成>
1.実施例1:断熱材
500mLビーカーに水300mLを入れ、ここに市販のケナフパルプを200g、メチルシリケートの臨界乾燥疎水ゲル粉末(平均粒径5μm、比表面積750m2/g、キャボット社製Aerogel Enova)を100g、カチオン性デンプン(日本食品化工株式会社製 #40T)を0.8g添加して、ハンディミキサーを用いて10,000rpmの回転数で全体が均一になるまで攪拌して、パルプスラリーを調製した。
次いで、上記パルプスラリーを抄紙用スクリーン(材質:ナイロン)を用いて手動にて抄紙し、金網状で室温で乾燥させることで、厚さ0.2mm、坪量200g/m2の断熱材(断熱シート)が得られた。なお、得られた断熱シートの外観、撓み性等は、市販の画用紙に類似するものであった。
2.実施例2〜5:断熱材
実施例1と同様に抄紙したスクリーン上の乾燥前のシートを、3枚、5枚、7枚、10枚重ねて乾燥させて作成した断熱シートを、それぞれ実施例2、3、4、5とした。
3.比較例1〜5:紙
比較対照として、厚さ0.2mm、坪量210g/m2の市販の画用紙を使用した。前記画用紙を1枚のみ使用したものを比較例1とし、3枚、5枚、7枚、10枚重ねて使用したものを、それぞれ比較例2、3、4、5とした。
<断熱性能の評価>
市販の紙コップ(9オンス、口径77mm×高さ91mm、材質:バージンパルプ(外側)、ポリエチレン(内側))の外周表面を覆うように、実施例1〜5の断熱シート、比較例1〜5の紙をそれぞれ巻きつけた。その際、断熱シート及び紙は、接着剤等を使用せず、紙コップに密着するように、かつ、重ならないように巻きつけて境界線のみ1cm幅×約5cmのセロハンテープで外側表面をテープ止めした。
上記紙コップのそれぞれに95℃の熱湯を250mL入れ、入れた直後、10秒後、20秒後、30秒後のシート外側の表面温度を測定した。表面温度の測定結果を表1に示す。
Figure 2015163815
表1に示すように、同等の厚さ、坪量を有する普通紙(画用紙)と比して、本発明の断熱材(断熱シート)は、紙コップ内部の熱湯の温度を外側表面に通しにくく、断熱性能に優れることが判明した。
[実験2]
<断熱材の作成>
1.実施例6:断熱材
1Lのハンディミキサーに水700mLを入れ、そこに市販のポリエステル繊維(PET繊維、帝人社製TA04PN SD 0.1dtex x 3mm)3.5gを入れ、10,000rpmの回転数で全体が均一になるまで攪拌する。これに、ビニロンバインダー繊維(株式会社クラレ製VPB105-1 x 3mm)1.2gを入れ撹拌した。このスラリーにメチルシリケートの臨界乾燥疎水ゲル粉末(平均粒径90μm、比表面積750m2/g、キャボット社製Aerogel Enova)を7.0g加え、同様に撹拌し抄紙用スラリーを調整した。
次いで実施例1と同様な方法で抄紙し、ロータリー式乾燥機で乾燥させることで、厚さ0.25mm、坪量100g/m2の断熱材(断熱シート)を得、当該断熱材を2枚のみ使用したものを実施例6とした(実施例6の断熱材の厚さは0.5mm)。なお、得られた断熱シートの外観、撓み性等は、市販の不織布に類似するものであった。
2.実施例7〜9:断熱材
実施例6と同様な方法で製造した断熱材を4枚、6枚、8枚重ねて使用したものを、それぞれ実施例7、8、9とした(それぞれ実施例の断熱材の厚さは1.0mm、1.5mm、2.0mm)。
3.比較例6〜9:不織布
比較対照として、0.25mmの不織布(ポリエステル繊維(帝人社製TA04PN SD 0.1dtex x 3mm)100重量部、ビニロンバインダー繊維(株式会社クラレ製VPB105-1 x 3mm)33.3重量部)を使用した。前記不織布を2枚のみ使用したものを比較例6とし、4枚、6枚、8枚重ねて使用したものを、それぞれ比較例7、8、9とした。
4.実施例10:断熱材
1Lのハンディミキサーに水700mLを入れ、そこに市販のポリエステル繊維(PET繊維、帝人社製TA04PN SD 0.1dtex x 3mm)3.5gを入れ、10,000rpmの回転数で全体が均一になるまで攪拌した。これに、ポリエステルバインダー繊維(PETバインダー繊維、帝人社製TK08PN SD 0.2dtex x 3mm)1.2gを入れ撹拌した。さらに、カチオン性デンプン(日本食品化工株式会社製 #40T)3.1g、メチルシリケートの臨界乾燥疎水ゲル粉末(平均粒径90μm、比表面積750m2/g、キャボット社製Aerogel Enova)を7.0g加え、同様に撹拌し抄紙用スラリーを調整した。
次いで実施例1と同様な方法で抄紙し、ロータリー式乾燥機で乾燥させることで、厚さ0.25mm、坪量130g/m2の断熱材(断熱シート)を得、当該断熱材を2枚のみ使用したものを実施例10とした(実施例10の断熱材の厚さは0.5mm)。なお、得られた断熱シートの外観、撓み性等は、市販の不織布に類似するものであった。
5.実施例11〜13:断熱材
実施例10と同様な方法で製造した断熱材を4枚、6枚、8枚重ねて使用したものを、それぞれ実施例11、12、13とした(それぞれ実施例の断熱材の厚さは1.0mm、1.5mm、2.0mm)。
6.比較例10〜13:不織布
比較対照として、0.25mmの不織布(ポリエステル繊維(帝人社製TA04PN SD 0.1dtex x 3mm)100重量部、ポリエステルバインダー繊維(PETバインダー繊維、帝人社製TK08PN SD 0.2dtex x 3mm)33重量部、カチオン性デンプン(日本食品化工株式会社製 #40T)36重量部)を使用した。前記不織布を2枚のみ使用したものを比較例10とし、4枚、6枚、8枚重ねて使用したものを、それぞれ比較例11、12、13とした。
<断熱性能の評価>
約100℃に加熱したステンレス製の円柱(直径:47mm、高さ:57mm)の上に実施例6〜13の断熱シート(40mm×40mm)、比較例6〜13の不織布(40mm×40mm)を置いた。10秒後、20秒後、30秒後、60秒後のシート及び不織布の上面側(シート及び不織布と円柱が接触する側とは逆側)の表面温度を測定した。当該表面温度の測定結果を表2に示す。
Figure 2015163815
表2に示すように、同等の厚さ不織布と比して、本発明の断熱材(断熱シート)は、ステンレス製の円柱の温度を通しにくく、断熱性能に優れることが判明した。

Claims (9)

  1. 主体繊維と、エアロゲルと、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダーと、を含む断熱材であって、
    前記エアロゲルは、密度が0.5g/cm3未満、熱伝導率が0.02W/(m・K)以下であり、前記主体繊維100重量部に対して、前記エアロゲルが35〜210重量部配合された、ことを特徴とする断熱材。
  2. 前記バインダーは、前記水溶性ポリマーを含み、
    前記水溶性ポリマーは、カチオン化デンプン及び両性デンプンの少なくとも一方である、請求項1に記載の断熱材。
  3. 前記バインダーは、前記低融点合成繊維を含み、
    前記低融点合成繊維は、ビニロンバインダー繊維である、請求項1又は2に記載の断熱材。
  4. 前記エアロゲルは、メチルシリケートモノマーを常圧乾燥又は臨界乾燥でエアロゲル化した多孔質シリカ粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱材。
  5. 前記エアロゲルの平均粒径が2〜140μmであり、かつ、比表面積が400m2/g以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱材。
  6. 厚さ15μm〜1.2cm、坪量10〜480g/m2、密度0.5〜1.5g/cm3のシート状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱材。
  7. 主体繊維100重量部と、密度が0.5g/cm3未満、熱伝導率が0.02W/(m・K)以下のエアロゲル35〜210重量部と、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダー0.3〜125重量部と、を水に添加混合して混合スラリーを調製し、
    前記混合スラリーを抄紙する、ことを特徴とする断熱材の製造方法。
  8. 抄紙時の前記混合スラリーをpH7〜8とする、請求項7に記載の断熱材の製造方法。
  9. 前記混合スラリーの前記バインダーが前記水溶性ポリマーを含み、
    前記水溶性ポリマー及び前記エアロゲルを、少なくとも前記主体繊維を水に懸濁したスラリーに、添加混合して前記混合スラリーを調整する、請求項7又は8に記載の断熱材の製造方法。
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