JP2019052408A - 発泡断熱紙容器用紙基材、発泡断熱紙容器用シートおよび発泡断熱紙容器 - Google Patents
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Abstract
Description
また、この特許文献1には、前記した発泡断熱紙製容器用シートを胴部材および/または底板部材に用いることを特徴とすると共に、前記発泡断熱紙製容器用シートの前記紙基材が含有する水分を加熱蒸発させ、前記熱可塑性樹脂層を発泡させて得られる発泡断熱紙製容器が開示されている。
また、発泡断熱紙製容器には断熱性を有することが要求される。
本発明は、以下のような構成を有している。
以下、本実施形態を構成する各部材について説明する。
水溶性樹脂は、紙基材1の表面に塗工され、被膜(水溶性樹脂層2)を形成するものである。水溶性樹脂層2には、熱可塑性樹脂層4の発泡を均一にし、発泡断熱紙容器8の断熱性と表面の美麗性を向上させるという役割がある。
水溶性樹脂は、水に溶解する樹脂である。水溶性樹脂は、造膜性を有する水溶性高分子であれば特に限定されない。水溶性樹脂としては、例えば、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール、澱粉類、ポリアクリルアミド類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロースエーテルおよびその誘導体、などが挙げられる。本実施形態における水溶性樹脂としては、これらを単独、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明者らは本発明に適した水溶性樹脂について検討した。その結果、水溶性樹脂層2を形成する水溶性樹脂としては、加工適性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましいことが判明した。
ポリビニルアルコールは、化学式[−CH2CH(OH)−]n[−CH2CH(OCOCH3)−]mで表され、PVOHやPVA、ポバールなどと呼称されている。ポリビニルアルコールは、一般的には、酢酸ビニルモノマーを重合して得られたポリ酢酸ビニル樹脂をけん化することで製造される。なお、前記化学式において、nはけん化部分を示し、mは未けん化部分を示す。
本実施形態では、部分けん化ポリビニルアルコールまたは完全けん化ポリビニルアルコール(本実施形態では、けん化度90モル%以上のものをいう)を用いることができる。なお、n+mで平均重合度が表され、{n/(n+m)}×100でけん化度(モル%)が表される。平均重合度は、酢酸ビニルモノマーを重合させる工程で酢酸ビニルモノマーをどれだけ結合するかによって任意に調節できる。けん化度は、ポリ酢酸ビニル樹脂をけん化する工程で酢酸ビニル単位をどれだけ水酸基へ変換するかによって任意に調節できる。平均重合度およびけん化度は、JIS K 6726−1994に準じて測定できる。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726−1994に準拠して測定した場合には、300〜4000が好ましく、500〜3000がより好ましく、1000〜2000がさらに好ましい。平均重合度を300以上とすることによって、成膜性が向上する。また、平均重合度を4000以下とすることによって、水への溶解性が向上し、溶液粘度が高くならず、塗工することが容易となる。
水溶性樹脂として澱粉類を使用することも可能である。
澱粉類としては、未変性の澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など)、カチオン化澱粉などが挙げられる。
水溶性樹脂としてポリアクリルアミド(PAM)類を使用することも可能である。
ポリアクリルアミド類としては、ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、ノニオン性ポリアクリルアミドなどが挙げられる。カチオン性ポリアクリルアミドとしては、アミノ基、4級アンモニウム塩、アゼチジニウム環等の官能基を有するポリアクリルアミドが挙げられる。アニオン性ポリアクリルアミドとしては、カルボキシル基、スルホン基等を有するポリアクリルアミドが挙げられる。ノニオン性ポリアクリルアミドとしては、水酸基、アミド基等を有するポリアクリルアミドが挙げられる。また、両性ポリアクリルアミドとは、カチオン性とアニオン性の両方の官能基を有するポリアクリルアミドのことである。
紙基材1上に強固に密着した水溶性樹脂層2が形成されると、水蒸気の透過量を適度に制御して、水蒸気の透過量の場所によるばらつきを小さくすることができる。その結果、熱可塑性樹脂層4の発泡状態を均一にさせることができ、断熱性を向上させることができる。
水溶性樹脂層2を形成する方法については、特に限定されない。塗布法、転写法、含浸法、噴射法等の種々の公知の方法を用いることができる。水溶性樹脂層2は、例えば、紙基材1の少なくとも片面に水溶性樹脂を含有する塗工液を塗布または含浸し、乾燥させることによって形成することができる。塗工液は、例えば水を媒体とし、水溶性樹脂を水溶液として用いることができる。
水溶性樹脂層2の形成量は、紙基材1の片面あたり、固形分で0.05〜6.00g/m2であることが好ましい。特に、水溶性樹脂層2がポリビニルアルコール層である場合、ポリビニルアルコール層の形成量は、紙基材1の片面あたり、固形分で0.05〜0.50g/m2の範囲であることが好ましく、0.06g〜0.10g/m2以下であることがより好ましい。
水溶性樹脂層2の形成量がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂層4を均一に発泡させることができ、また、発泡樹脂層9を厚くできる。従って、断熱性が高まる。また、水溶性樹脂層2の形成量がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂層4を発泡させた場合に表面に大きな凹凸などが生じ難く、美麗性を高めることができる。さらに、水溶性樹脂層2の形成量がこの範囲にあると、塗工液を塗布するときに抄紙工程または乾燥工程における設備汚れを軽減でき、汚れが脱落して発泡断熱紙容器8に異物となって混入することを防ぐことができる。
水溶性樹脂層2の形成量は、平均形成量を表し、乾燥前後の重量変化、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで確認できる。
発泡断熱紙容器用紙基材3は、坪量あたりの透気抵抗度(透気抵抗度/坪量)を1.0〜6.0s/g/m2としている。坪量あたりの透気抵抗度がこの範囲にあると、得られる発泡断熱紙容器用シート5およびそれを用いた発泡断熱紙容器8において、水蒸気の透過量を適度に抑制して、熱可塑性樹脂層4の発泡状態が均一となる。そのため、断熱性と美麗性のバランスが良好となる。
坪量あたりの透気抵抗度が1.0s/g/m2未満であると、水蒸気の透過量が過度に多くなるため、熱可塑性樹脂層4の発泡において部分的に過発泡が発生し易く、美麗性に劣る傾向がある。
また、坪量あたりの透気抵抗度が6.0s/g/m2を超えると、水蒸気の透過量が過度に少なくなるため、熱可塑性樹脂層4を十分に発泡させることができない。そのため、断熱性が劣ることになる。
坪量あたりの透気抵抗度は、より良好な美麗性を得る観点から、2.0s/g/m2以上とするのが好ましく、2.3s/g/m2以上とするのがより好ましい。坪量あたりの透気抵抗度は、より良好な断熱性を得る観点から、4.7s/g/m2以下とするのが好ましく、4.5s/g/m2以下とするのがより好ましい。透気抵抗度は、JIS P 8117;2009に記載の王研式試験機法に準じて測定される。
地合い指数は、紙の均一性(ミクロの坪量の均一性、平滑性)を示す指数であり、数値が大きいほど、地合いが良好であることを意味する。発泡断熱紙容器用紙基材3は、地合い指数を60以上としている。地合い指数を所定値以上とすることにより、発泡断熱紙容器用紙基材3中の水分量分布が均一になる。そのため、発泡時の発泡断熱紙容器用紙基材3からの水蒸気の透過量が均一となり、過発泡が抑えられ、発泡形態が均一となる。地合い指数が60未満であるとこのような効果が得られない。地合い指数は、地合いをより良好とし、発泡形態をより均一にする観点から、80以上であるのが好ましく、85以上であるのがより好ましく、90以上であることがさらに好ましい。
地合い指数は、市販されている3Dシートアナライザーで発泡断熱紙容器用紙基材3の透過強度を測定し、厚さのバラつきを数値化することで得られる。本実施形態においては、M/Kシステム社製の3Dシートアナライザーを用いて、測定レンジ2(低感度)、光源の絞り1.0mmで地合い指数を測定する。
(パルプ)
本実施形態において、紙基材1を構成するパルプの種類は特に限定されない。パルプの種類としては、例えば、針葉樹材の晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹材の晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)等の木材系パルプ、靭皮パルプ、リンターパルプ、麻パルプ等の非木材パルプ等の天然パルプが挙げられる。これらのパルプは、1種単独、または2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、品質やコストの面から木材パルプを使用することが好ましい。
ここで、図5は、本実施形態に係る発泡断熱紙容器用紙基材の好ましい一態様を示した模式的断面図である。なお、図5は、多層材13である紙基材1の一方の面に水溶性樹脂層2を有している様子を例示している。また、多層材13である紙基材1の他方の面にも水溶性樹脂層(図5において図示せず)を設けることができる。多層材13である紙基材1の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、100〜650μmとすることができる。
澱粉層12は、パルプ層11とパルプ層11の間に設けられることによって、パルプ層11とパルプ層11を強固に接着するものである。澱粉層12としては、例えば、カチオン化澱粉、ジカルボン酸エステル澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、エーテル化澱粉、アセチル化澱粉、酸化澱粉などを用いることができる。なお、本実施形態においては、カチオン化澱粉を含んでいるのが好ましい。このようにすると、前記したように、地合いを均一にできるため、発泡時の紙基材1からの水蒸気の透過量がより一層均一となり、過発泡が抑えられ、発泡形態が均一となる。また、カチオン化澱粉を用いた澱粉層12は、バリア性を過度に上げることなく、水蒸気の透過をより妨げることがない。
澱粉層12を形成する方法については、特に限定されない。塗布法、転写法、含浸法、噴射法等の種々の公知の方法を用いることができる。澱粉層12は、例えば、紙基材1の少なくとも片面に接着剤として機能する澱粉を含有する塗工液を塗布または含浸し、乾燥させることによって形成することができる。
紙基材1(パルプ層11)の抄紙方法および抄紙機の型式は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等の公知の抄紙方法および抄紙機が選択可能である。
また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙基材1の表面にアルカリ性薬剤を塗布してもよい。
紙基材1(パルプ層11)を抄紙する際に配合する填料は、製紙分野で一般に使用されている填料が使用可能であり、特に限定されない。填料の例としては、クレー、焼成カオリン、デラミネートカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が例示できる。これらの填料は単独または2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。前記の酸性抄紙であれば一般に、これらの填料から酸溶解性のものを除いたものが使用される。
紙基材1(パルプ層11)を抄紙する際に、各種内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。内添助剤の例としては、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルこはく酸無水物(ASA)等の各種の内添サイズ剤、ノニオン性、カチオン性、両性の各種歩留まり向上剤、ろ水度向上剤、紙力向上剤、カチオン化澱粉などの各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物およびこれらの誘導体あるいは変性物等、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。本実施形態においては、紙基材1(パルプ層11)は、前記したカチオン化澱粉を含んでいるのが好ましい。このようにすると、図5に示す多層材13とした場合に、パルプ層11中のカチオン化澱粉と澱粉層12とが強固に固着するので、パルプ層11と澱粉層12との接着力が高まる。特に、澱粉層12をカチオン化澱粉を用いて形成するとこの効果が高まるのでより好ましい。また、カチオン化澱粉は、バリア性を過度に上げることなく、水蒸気の透過を妨げることがない。
パルプ層11の坪量は、特に限定されるものではないが、例えば、30〜200g/m2とすることができる。
本実施形態に係る発泡断熱紙容器用紙基材3は、前記したように、紙基材1の少なくとも片面に水溶性樹脂層2を有すると共に、坪量あたりの透気抵抗度を所定の範囲とし、かつ地合い指数を所定値以上としているが、これらの構成要素に加えて、以下に説明する特性を有していることが好ましい。
発泡断熱紙容器用紙基材3の水分量は、紙基材1が含有する水分量と水溶性樹脂層2が含有する水分量の合計となる。紙基材1が含有する水分量は、紙基材1の坪量および含水率によって決定される。発泡断熱紙容器用紙基材3の水分量は、好ましくは15〜32g/m2であり、より好ましくは20〜23g/m2である。水分量は、調湿後、JIS P 8127;2010に準じて測定される。
水溶性樹脂を紙基材1に塗工すると、水溶性樹脂は紙基材1の表面から内部に向けて浸透する。そして、水溶性樹脂を乾燥させることによって固化することで、水溶性樹脂層2が形成される。本実施形態では、紙基材1に浸透して固化した水溶性樹脂も水溶性樹脂層2の一部とみなす。
水溶性樹脂層2の紙基材1への浸透厚さは、5〜35μmの範囲であるのが好ましい。水溶性樹脂層2の紙基材1への浸透厚さがこの範囲にあると、熱可塑性樹脂層4を均一に発泡させることができ、また、発泡後の厚さを厚くできる。従って、断熱性が高まる。また、水溶性樹脂層2の紙基材1への浸透厚さがこの範囲にあると、紙基材1から発生する水蒸気の透過を適度にバリアできるため、水蒸気の透過量の場所によるばらつきを小さくできる。その結果、発泡セルを小さく均質に形成でき、表面の平坦性や美麗性が高まる。
水溶性樹脂層2の紙基材1への浸透厚さは、平均浸透厚さを表し、乾燥前後の重量変化、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで確認できる。
王研式平滑度は、紙の表面の平滑性を規定するための指標となる単位である。王研式平滑度は、30〜500秒であることが好ましい。王研式平滑度が30秒以上であると、発泡断熱紙容器用紙基材3の表面性が高まり、画質が良好な発泡断熱紙容器用シート5が得られる。また、王研式平滑度が500秒以下であると、高平滑度を得るためにキャレンダー等で発泡断熱紙容器用紙基材3を潰すため、発泡断熱紙容器用紙基材3の厚さが薄くなり過ぎることを抑え、発泡断熱紙容器8の成形加工適性が向上する。
王研式平滑度は、JIS P 8155:2010に準じて測定される。
発泡断熱紙容器用紙基材3の坪量は、好ましくは100〜400g/m2であり、より好ましくは200〜400g/m2であり、さらに好ましくは220〜400g/m2であり、特に好ましくは260〜350g/m2である。坪量が100g/m2以上であると、水分量の関係から発泡が十分形成され、得られた発泡断熱紙容器8を手で把持したときに熱さを感じ難い。また、坪量が400g/m2以下であると、発泡断熱紙容器8の成形加工適性が向上する傾向がある。
発泡断熱紙容器用紙基材3の密度は、所望に応じて適宜設定すればよく、特に限定されることはないが、0.60〜0.99g/cm3とすることが好ましい。なお、発泡断熱紙容器用紙基材3の密度が低くなるほど、熱可塑性樹脂層4を発泡させる際に水蒸気が紙基材1を通り易くなり、発泡性が向上する傾向が見られる。発泡断熱紙容器用紙基材3の密度が0.60g/cm3以上であると、発泡断熱紙容器8に必要な紙力が得られ易い。また、発泡断熱紙容器用紙基材3の密度が0.99g/cm3以下であると、熱可塑性樹脂層4を発泡させる際に水蒸気が紙基材1を通り易くなり、発泡性が向上する傾向がある。
発泡断熱紙容器用シート5は、前記したように、紙基材1の少なくとも片面に水溶性樹脂層2を有する発泡断熱紙容器用紙基材3と、この水溶性樹脂層2の上に熱可塑性樹脂層4とを有する。この発泡断熱紙容器用シート5は、上記の発泡断熱紙容器用紙基材3の水溶性樹脂層2が形成されている表面上に熱可塑性樹脂層4を設けることによって形成される。また、発泡断熱紙容器用シート5を加熱処理することによって、紙基材1と水溶性樹脂層2に含まれる水分が加熱蒸発し、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層4は発泡樹脂層9となる。以下、発泡断熱紙容器用シート5について説明するが、既に説明した構成要素については説明を省略する。
熱可塑性樹脂層4に使用する熱可塑性樹脂は、水溶性樹脂層2上に形成可能であり、かつ発泡させることが可能であれば特に制限されず、結晶性樹脂および非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用することが可能である。
非結晶性樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、単一の樹脂を単層で使用してもよいし、複数の樹脂を混合して使用してもよいし、複層で使用してもよい。
本実施形態に係る発泡断熱紙容器用シート5は、紙基材1の熱可塑性樹脂層4を形成した面とは反対側の面に、熱可塑性樹脂層4よりも融点の高い高融点熱可塑性樹脂層10やアルミニウム箔等の金属層を積層してもよい。このような高融点熱可塑性樹脂層10や金属層を有すると、発泡断熱紙容器用シート5を加熱して熱可塑性樹脂層4を発泡させる際に、紙基材1の熱可塑性樹脂層4を形成した面と反対側の面から水蒸気が蒸散することが抑制され、熱可塑性樹脂層4の発泡性が向上する。
ここで、図6は、本実施形態に係る発泡断熱紙容器用シートの好ましい一態様を示した模式的断面図である。なお、図6は、多層材13である紙基材1の一方の面に水溶性樹脂層2および熱可塑性樹脂層4を有している様子を例示している。また、多層材13である紙基材1の他方の面にも水溶性樹脂層および熱可塑性樹脂層(いずれも図6において図示せず)を設けることができる。この態様では、紙基材1を多層材13としているので、地合いが均一になる。そのため、発泡時の紙基材1からの水蒸気の透過量がより一層均一となり、過発泡が抑えられ、発泡形態が均一となる。
熱可塑性樹脂層4および高融点熱可塑性樹脂層10の形成方法は特に制限されず、押し出しラミネート法、ウェットラミネート法、ドライラミネート法等の各種方法を適宜使用して紙基材1上に積層すればよい。押し出しラミネート法とは、紙基材1の表面に、熱可塑性樹脂をTダイから溶融樹脂膜の状態で押し出し、クーリングロールとこれに対向するニップロールとの間で冷却しつつ押圧・圧着する方法である。紙基材1と熱可塑性樹脂層4との密着性、および熱可塑性樹脂層4の発泡性が良好となるため、押し出しラミネート法が好ましい。
発泡断熱紙容器用シートを用いて発泡断熱紙容器を成形する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造することができる。具体例としては、以下に説明する一般的なカップ成形機によって成形する方法がある。
本実施形態では、胴部材ブランクと底板部材ブランクを組み立てて容器の形とした後、加熱処理を行う。加熱処理を行うと、胴部材ブランクや底板部材ブランクの紙基材1等に含まれる水分が気化し、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層4が発泡されて、発泡断熱紙容器8となる。発泡断熱紙容器8は、胴部材6および底板部材7の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いており、当該発泡断熱紙は、紙基材1の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層9を有している。
なお、パルプのろ水度は、JIS P 8121:2012に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の密度は、JIS P 8118:1998に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の王研式平滑度は、JIS P 8155:2010に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の地合い指数は、3Dシートアナライザー(M/Kシステム社製)を用いて、測定レンジ2(低感度)、光源の絞り1.0mmで紙基材の透過強度を測定し、厚さのバラつきを数値化したものである。なお、地合い指数は高いほど好ましい。
発泡断熱紙容器用紙基材の水分量は、JIS P 8127:2010に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量あたりの透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に記載の王研式試験機法に準じて測定した。
(発泡断熱紙容器用紙基材)
パルプとして広葉樹晒クラフトパルプLBKP(ろ水度430ml)を使用し、固形分換算でパルプ原料100質量%に対し、カチオン化澱粉0.5質量%、ポリアクリルアミド系紙力増強剤(PAM系紙力増強剤)0.1質量%、アルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30質量%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂(PAE系湿潤紙力増強剤)0.1質量%を添加した紙料スラリーを長網抄紙機で抄紙した。抄紙して得られたパルプを5枚用い、各層間にカチオン化澱粉を塗工量1.0g/m2で塗工し、パルプが5層となる紙基材(原紙)を得た。
次いで、得られた紙基材の両面に、ブレードコーターによりポリビニルアルコール(PVA)(日本酢ビ・ポバール株式会社製、製品名:JM17、けん化度96.5モル%)を片面あたり固形分で0.06g/m2(両面で0.12g/m2)となるように塗工、乾燥して、実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。
実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.86g/cm3、王研式平滑度80秒、地合い指数90、水分量20.0g/m2、坪量あたりの透気抵抗度2.33s/g/m2であった。
上記発泡断熱紙容器用紙基材の一方の面に、厚さ40μmとなるように高融点の熱可塑性樹脂(中密度ポリエチレン、密度940kg/m3、融点133℃)を溶融温度360℃、積層速度50m/分で押し出した。その後、クーリングロールとニップロール(JIS−A硬度:70)を用いて、線圧2kgf/cmで押圧・圧着し、高融点熱可塑性樹脂層を形成した。
実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をロッドコーターで行い、PVAを片面あたり固形分で0.08g/m2(両面で0.16g/m2)となるように塗工、乾燥した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.89g/cm3、王研式平滑度89秒、地合い指数90、水分量21.5g/m2、坪量あたりの透気抵抗度3.66s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例2の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をゲートロールサイズプレスで行い、PVAを片面あたり固形分で0.10g/m2(両面で0.20g/m2)となるように塗工、乾燥した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.89g/cm3、王研式平滑度85秒、地合い指数80、水分量22.5g/m2、坪量あたりの透気抵抗度4.33s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例3の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例4の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をロッドコーターで行い、PVAを片面あたり固形分で0.12g/m2(両面で0.24g/m2)となるように塗工、乾燥した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例4の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度81秒、地合い指数92、水分量21.5g/m2、坪量あたりの透気抵抗度4.65s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例4の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例5の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をロッドコーターで行い、PVAを片面あたり固形分で0.15g/m2(両面で0.30g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは19.0μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
実施例5の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度81秒、地合い指数92、水分量22.1g/m2、坪量あたりの透気抵抗度5.77s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例5の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例6の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をゲートロールサイズプレスで行った。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.0μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
実施例6の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.89g/cm3、王研式平滑度89秒、地合い指数92、水分量20.5g/m2、坪量あたりの透気抵抗度2.00s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例6の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例7の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をロッドコーターで行い、PVAを片面あたり固形分で0.04g/m2(両面で0.08g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは17.5μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
実施例7の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度81秒、地合い指数92、水分量20.8g/m2、坪量あたりの透気抵抗度1.53s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例7の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例8の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAを片面あたり固形分で0.08g/m2(両面で0.16g/m2)となるように塗工、乾燥した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例8の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度81秒、地合い指数92、水分量15.0g/m2、坪量あたりの透気抵抗度3.65s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例8の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例9の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAを片面あたり固形分で0.08g/m2(両面で0.16g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、実施例9では、実施例8よりも弱い乾燥条件で乾燥した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例9の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度81秒、地合い指数92、水分量18.0g/m2、坪量あたりの透気抵抗度3.46s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例9の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例10の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をロッドコーターで行い、PVAを片面あたり固形分で0.08g/m2(両面で0.16g/m2)となるように塗工、乾燥した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例10の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.88g/cm3、王研式平滑度88秒、地合い指数90、水分量24.2g/m2、坪量あたりの透気抵抗度3.69s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例10の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例11の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAを片面あたり固形分で0.08g/m2(両面で0.16g/m2)となるように塗工、乾燥した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例11の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.89g/cm3、王研式平滑度103秒、地合い指数88、水分量30.0g/m2、坪量あたりの透気抵抗度3.98s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例11の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例12の発泡断熱紙容器用紙基材では、水溶性樹脂として、PVAの代わりに澱粉を用いた。ゲートロールサイズプレスコーターにより、澱粉を片面あたり固形分で2.00g/m2(両面で4.00g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、澱粉の紙基材への浸透厚さは65.0μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
実施例12の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.88g/cm3、王研式平滑度85秒、地合い指数80、水分量23.0g/m2、坪量あたりの透気抵抗度1.65s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例12の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例13の発泡断熱紙容器用紙基材では、水溶性樹脂として、PVAの代わりにPAMを用いた。ゲートロールサイズプレスコーターにより、PAMを片面あたり固形分で0.20g/m2(両面で0.40g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、澱粉の紙基材への浸透厚さは25.0μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
実施例13の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.88g/cm3、王研式平滑度85秒、地合い指数80、水分量23.0g/m2、坪量あたりの透気抵抗度2.02s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例13の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例14の発泡断熱紙容器用紙基材では、パルプとして広葉樹晒クラフトパルプLBKP(ろ水度380ml)を使用し、さらに、紙基材をパルプ層1層とした。そのため、比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、パルプ層の層間に塗工するカチオン化澱粉や酸化澱粉を用いなかった(表において澱粉層用澱粉の塗工量は0g/m2と表記した)。それ以外は実施例1と同様である。
実施例14の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.91g/cm3、王研式平滑度103秒、地合い指数65、水分量23.2g/m2、坪量あたりの透気抵抗度5.72s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例14の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例15の発泡断熱紙容器用紙基材では、パルプとして広葉樹晒クラフトパルプLBKP(ろ水度430ml)をパルプ全質量に対して90質量%、針葉樹クラフトパルプNBKP(ろ水度480ml)を10質量%使用した。それ以外は実施例1と同様である。
実施例15の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.86g/cm3、王研式平滑度80秒、地合い指数74、水分量17.8g/m2、坪量あたりの透気抵抗度5.32s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例15の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例16の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAを片面あたり固形分で0.03g/m2(両面で0.06g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、澱粉の紙基材への浸透厚さは17.5μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
実施例16の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度78秒、地合い指数90、水分量22.7g/m2、坪量あたりの透気抵抗度1.22s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例16の発泡断熱紙容器用シートを得た。
比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAを片面あたり固形分で0.02g/m2(両面で0.04g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは15.0μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.90g/cm3、王研式平滑度95秒、地合い指数90、水分量22.5g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.83s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例1の発泡断熱紙容器用シートを得た。
比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をロッドコーターで行い、PVAを片面あたり固形分で0.60g/m2(両面で1.20g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは23.0μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度89秒、地合い指数90、水分量21.2g/m2、坪量あたりの透気抵抗度6.89s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例2の発泡断熱紙容器用シートを得た。
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、紙基材をパルプ層1層とした。そのため、比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、パルプ層の層間に塗工するカチオン化澱粉や酸化澱粉を用いなかった(表において澱粉層用澱粉の塗工量は0g/m2と表記した)。また、比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの塗工(表面処理方法)をゲートロールサイズプレスで行い、PVAを片面あたり固形分で0.08g/m2(両面で0.16g/m2)となるように塗工、乾燥した。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは17.8μmであった。それ以外は実施例1と同様である。
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.88g/cm3、王研式平滑度87秒、地合い指数50、水分量20.8g/m2、坪量あたりの透気抵抗度2.25s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例3の発泡断熱紙容器用シートを得た。
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、PVAの替わりに水を塗工し、乾燥した(水溶性樹脂の塗工量および水溶性樹脂の紙基材への浸透厚さはいずれも計測できないので、表1において「−」で表記した)。それ以外は実施例1と同様である。
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、密度0.87g/cm3、王研式平滑度89秒、地合い指数90、水分量25.2g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.50s/g/m2であった。
その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例4の発泡断熱紙容器用シートを得た。
得られた発泡断熱紙容器用シートから、A4サイズのサンプルを切り出した。熱可塑性樹脂層が外側となるようにして、円筒を作製した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、円筒の外側の熱可塑性樹脂層を発泡させた。
得られた発泡断熱紙の発泡前後の厚さから、発泡倍率を算出し、以下の基準で評価した。なお、◎、○、△が合格であり、×が不合格である。
◎:発泡倍率21倍以上で、断熱性は十分である。
○:発泡倍率19倍以上、21倍未満で、断熱性が十分である。
△:発泡倍率15倍以上、19倍未満で、断熱性はある。
×:発泡倍率15倍未満で、断熱性が不十分である。
得られた発泡断熱紙容器用シートから、1辺100mmの正方形の試験片を切り出した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、熱可塑性樹脂層を発泡させた。発泡後の熱可塑性樹脂層の表面を目視で観察し、以下の基準で美麗性を評価した。なお、◎、○、△が合格であり、×が不合格である。
◎:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく均質であり、表面は概ね平坦である。
○:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく表面も概ね平坦であるが、発泡セルの大きさにばらつきが見られる。
△:形成された発泡セルがやや大きく、大きさにばらつきも見られるが、表面の凹凸は小さく過発泡は見られない。
×:過発泡が発生しているなど、表面に大きな凹凸がある。
比較例1の発泡断熱紙容器用シートは、坪量あたりの透気抵抗度が低過ぎたので、水蒸気の透過量が過度に多くなり、過発泡が発生しているなど、表面に大きな凹凸が生じていた。そのため、比較例1の発泡断熱紙容器用シートは、表面の美麗性が劣っていた。
比較例2の発泡断熱紙容器用シートは、坪量あたりの透気抵抗度が高過ぎたので、水蒸気の透過量が過度に少なくなり、熱可塑性樹脂層を十分に発泡させることができなかった。そのため、比較例2の発泡断熱紙容器用シートは、断熱性が劣っていた。
比較例3の発泡断熱紙容器用シートは、地合い指数が低過ぎたので、発泡時の紙基材からの水蒸気の透過量が不均一となって過発泡が発生し、発泡形態が不均一となった。そのため、比較例3の発泡断熱紙容器用シートは、表面の美麗性が劣っていた。
比較例4の発泡断熱紙容器用シートは、水溶性樹脂層を設けていないため、発泡時の紙基材からの水蒸気の透過量が不均一となって過発泡が発生し、発泡形態が不均一となった。そのため、比較例4の発泡断熱紙容器用シートは、表面の美麗性が劣っていた。
2 水溶性樹脂層(PVA層)
3 発泡断熱紙容器用紙基材
4 熱可塑性樹脂層
5 発泡断熱紙容器用シート
6 胴部材
7 底板部材
8 発泡断熱紙容器
9 発泡樹脂層
10 高融点熱可塑性樹脂層
11 パルプ層
12 澱粉層
13 多層材
Claims (12)
- 紙基材の少なくとも片面に水溶性樹脂層を有し、坪量あたりの透気抵抗度が1.0〜6.0s/g/m2であり、地合い指数が60以上である発泡断熱紙容器用紙基材。
- 前記水溶性樹脂層がポリビニルアルコール層であることを特徴とする請求項1に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 前記紙基材が、パルプ層と、澱粉層とを交互に重ねた多層材であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 前記多層材の両側の最外層が前記パルプ層であることを特徴とする請求項3に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 前記パルプ層が、カチオン化澱粉を含んでいることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 水分量が15〜32g/m2であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 紙基材の少なくとも片面に水溶性樹脂層を有し、坪量あたりの透気抵抗度が1.0〜6.0s/g/m2であり、地合い指数が60以上である発泡断熱紙容器用紙基材と、
前記水溶性樹脂層の上に形成された熱可塑性樹脂層と、
を有することを特徴とする発泡断熱紙容器用シート。 - 前記水溶性樹脂層がポリビニルアルコール層であることを特徴とする請求項7に記載の発泡断熱紙容器用シート。
- 前記熱可塑性樹脂層の厚さが30〜80μmであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の発泡断熱紙容器用シート。
- 前記熱可塑性樹脂層がポリエチレン層であることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器用シート。
- 胴部材および底板部材の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いた発泡断熱紙容器であって、
前記発泡断熱紙は、
紙基材の少なくとも片面に水溶性樹脂層を有し、坪量あたりの透気抵抗度が1.0〜6.0s/g/m2であり、地合い指数が60以上である発泡断熱紙容器用紙基材と、
前記水溶性樹脂層の上に形成された、熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層と、
を有することを特徴とする発泡断熱紙容器。 - 前記水溶性樹脂層がポリビニルアルコール層であることを特徴とする請求項11に記載の発泡断熱紙容器。
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