JP2015148028A - 複合結束紡績糸及びそれを用いてなる布帛 - Google Patents

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Abstract

【課題】布帛に対し、天候に左右されず持続性ある優れた保温効果は勿論のこと、着用耐久性、ウォーム感さらには抗ピリング性などをも付与できる新規な紡績糸と、その紡績糸を用いた布帛とを提供することを目的とする。
【解決手段】遠赤外線放射性微粒子を含有する合成繊維フィラメントを芯部に配し、吸湿発熱性短繊維を鞘部に配してなる複合結束紡績糸であって、芯鞘質量比率(芯/鞘)が20/80〜60/40の範囲にあることを特徴とする複合結束紡績糸。本発明では、吸湿発熱性短繊維として、リヨセル短繊維が好適である。
【選択図】なし

Description

本発明は、布帛に優れた保温効果と抗ピリング性とを付与できる紡績糸と、その紡績糸を使用した布帛とに関するものである。
従来から、保温を目的とする布帛が数多く上市されており、中空糸などによるデッドエアーの利用や吸湿発熱効果の利用、太陽光を熱に変換して利用する方法など、様々な手法を用いた布帛が提案されている。例えば、中空糸によるデッドエアーを利用したものとして、表裏面をつなぐ接結糸に中空糸を配し、表側にポリエステル仮撚糸を、裏側にその他の糸を各々配した布帛が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、吸湿発熱効果を利用したものとして、特定のアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を使用した布帛(例えば、特許文献2)や、セルロース分子にN−メチロール(メタ)アクリルアミドと特定の水溶性ビニル重合性化合物とを導入した吸湿発熱性セルロース繊維を使用した布帛(例えば、特許文献3)などが提案されている。
さらに、太陽光を熱に変換する手法を利用したものとして、特定の太陽光吸収性微粒子を含有するポリエステル繊維を使用した布帛(例えば、特許文献4)などが提案されている。
これに対して、近年、遠赤外線放射性微粒子を利用して布帛に保温効果を与える技術が提案されている。例えば、当該微粒子としてアルミナや酸化マグネシウムなどを所定量含有するポリエステル繊維を使用した布帛(例えば、特許文献5)が提案されている。
特開2002−235264号公報 特公平7−59762号公報 特許第2898623号公報 特開平8−197659号公報 特開平9−59827号公報
しかしながら、デッドエアーを利用する手法は、空気を含ませることで放熱を抑えるという消極的な手法であるため、寒さに対する保温効果には限界があり、また空気層を利用するため、布帛が肉厚になってしまうという問題があった。
また、吸湿発熱効果を利用する手法は、発汗などによる湿気を吸収することで発熱を促す手法であり、湿気を吸収した際は発熱するものの、持続性が低く、すぐに放熱してしまうという問題があった。
さらに、太陽光を熱に変換する手法については、晴天時の屋外においては十分な効果が認められるものの、雨天時や室内ではその効果がほとんど期待できないという問題があっ た。
そして、遠赤外線放射性微粒子の利用については、かかる微粒子のみで所望の保温効果を得るには、遠赤外線放射性微粒子を多量に繊維に含有又は付着させる必要がある。そうすると、これが要因となり紡糸操業性に悪影響を及ぼすという問題があった。加えて、この手法のみでは、実現可能な保温効果に限界があり、十分な暖かさを具現するに至っていないのが実情である。
さらに、上記の手法は、専らフィラメント糸のみ又は紡績糸のみを使用した布帛に適用され、両者を併用する布帛へ適用された例は見当たらない。一般にフィラメント糸は強度に優れ、布帛に着用耐久性を与えるのに適しているとされている。通常、フィラメント糸は、加撚に伴い強度が増す傾向にあるから、布帛の着用耐久性を向上させる目的で糸を積極的に加撚することが広く行われている。しかしながら、実撚りを有した糸は、布帛の着用耐久性を向上させる点で有効である一方、ピリングを誘発し易く、ピリングにより布帛の品位は大きく損なわれることとなる。そこで、着用耐久性を与えつつピリングを抑える手法が、これまでに幾つか検討されてきたが、満足できるものは未だ提案されていない。
他方、紡績糸はその糸形態に起因して、布帛に適度なふくらみ感を与えることができ、そのふくらみ感に由来する各種風合いも付加することができるとされている。特に、秋冬向け衣料にあっては、単に保温効果を付与するだけでは足りず、ふくらみ感に由来するウォーム感(ふっくらした温かみのある風合い)を与えることが商品価値を高めるうえで有利とされている。
このように、布帛に対し、優れた保温効果と共に、着用耐久性、ウォーム感さらには抗ピリング性をも与える手段は、未だ提案されていないのが実情である。
本発明はこのような従来技術の欠点を解消するものであり、布帛に対し、天候に左右されず持続性ある優れた保温効果は勿論のこと、着用耐久性、ウォーム感さらには抗ピリング性などをも付与できる新規な紡績糸と、その紡績糸を用いた布帛とを提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、遠赤外線放射性微粒子を利用する手法と吸湿発熱効果を利用する手法とを併用することで、相乗的に保温効果が奏されることを見出した。そして、この保温効果は、天候に左右されない持続性ある優れた保温効果であり、この相乗効果を利用すれば、紡糸操業性を改善する目的で遠赤外線放射性微粒子の使用量を多少減らしても、十分な保温効果が確保できることを見出した。特に、吸光熱変換効果を追加利用すると、かかる相乗効果を一層向上させうることも見出した。さらに、本発明者らは、長短繊維を複合した紡績糸(長短複合紡績糸)で布帛を構成することで、両繊維に由来する特性を併せ持つ布帛が提供できることを見出し、中でもリング紡績したものではなく結束紡績したものを用いることで、布帛の抗ピリング性も併せて改善できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ね、完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
(1)遠赤外線放射性微粒子を含有する合成繊維フィラメントを芯部に配し、吸湿発熱性短繊維を鞘部に配してなる複合結束紡績糸であって、芯鞘質量比率(芯/鞘)が20/80〜60/40の範囲にあることを特徴とする複合結束紡績糸。
(2)前記吸湿発熱性短繊維がリヨセル短繊維であることを特徴とする(1)記載の複合結束紡績糸。
(3)鞘部にアクリル短繊維を含み、前記吸湿発熱性短繊維と前記アクリル短繊維との混合比率(吸湿発熱性短繊維/アクリル短繊維)が80/20〜30/70の範囲にあることを特徴とする(1)又は(2)記載の複合結束紡績糸。
(4)前記合成繊維フィラメントの断面が芯鞘構造をなし、前記遠赤外線放射性微粒子が鞘成分に含まれ、前記遠赤外線放射性微粒子の含有量が鞘成分100質量部に対して0.5〜2.5質量部であり、かつフィラメントにおける芯鞘の質量比率(芯/鞘)が95/5〜15/85の範囲にあることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の複合結束紡績糸。
(5)前記合成繊維フィラメントが発熱性微粒子を含有することを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の複合結束紡績糸。
(6)前記合成繊維フィラメントの断面が芯鞘構造をなし、前記発熱性微粒子が鞘成分に含まれ、前記発熱性微粒子の含有量が鞘成分100質量部に対して0.5〜2.5質量部であり、かつフィラメントにおける芯鞘の質量比率(芯/鞘)が95/5〜15/85の範囲にあることを特徴とする(5)記載の複合結束紡績糸。
(7)(1)〜(6)いずれかに記載の複合結束紡績糸を用いてなる布帛。
本発明によれば、天候に左右されず持続性ある優れた保温効果は勿論のこと、着用耐久性、ウォーム感さらには抗ピリング性にも優れる布帛が提供できる。
本発明の布帛は、長短複合紡績糸から構成されており、両繊維に由来する特性を備えているから、特段の工夫なく優れた着用耐久性及びウォーム感が得られる。特に本発明における長短複合紡績糸は結束紡績したもの(複合結束紡績糸)であり、無撚りもしくは撚りの少ないものであるにも関わらず、所定の強度を有しており、加えて毛羽の発現を効果的に抑えることもできる。このため、かかる複合結束紡績糸を使用することで、着用耐久性及び抗ピリング性のいずれにも優れる布帛が得られる。
本発明の布帛は、秋冬向け衣料に好適なものである。
本発明では、遠赤外線放射性微粒子を利用する技術と吸湿発熱効果を利用する技術とを併用することにより、優れた保温効果が奏される。このため、フィラメントの紡糸操業性を改善する目的で遠赤外線放射性微粒子の使用量を多少減らしても、布帛において一定の保温効果が確保できる。加えて、太陽光を熱に変換する手法によりもたらされる吸光熱変換効果を追加的に利用することで、遠赤外線放射が一層促進される。これにより、一層の保温効果が期待できるようになるから、遠赤外線放射性微粒子の使用量をさらに減らしても、一定の保温効果が確保できる。また、吸光熱変換効果のよりどころとなる発熱性微粒子についても、使用量をさほど増やさずとも一定の保温効果の向上が期待できる。このように、本発明では、布帛の保温効果、フィラメントの紡糸操業性及び製織編の工程通過性などが両立でき、布帛の用途展開を図り易いという利点がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合結束紡績糸は、遠赤外線放射性微粒子を含有する合成繊維フィラメントを芯部に配し、吸湿発熱性短繊維を鞘部に配してなるものである。
合成繊維マルチフィラメントを構成するポリマーとしては、繊維形成能を有するポリマーであれば、どのようなものでも使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリ塩化ポリマー;ポリ4フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー;PLA(ポリ乳酸)やPBS(ポリブチレンサクシネート)などの、バイオマス由来モノマーを化学的に重合してなるバイオマスポリマー;これらのポリマーを構成するモノマーの2種以上からなる共重合体などがあげられる。
上記のポリマーは、粘度、熱的特性、相溶性などに鑑みて、他の構成モノマーを共重合成分として含む共重合体であってもよい。例えば、ポリエステル共重合体を使用する場合であれば、共重合体成分として、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール;グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸などのヒドロキシカルボン酸;ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトンがあげられる。
本発明の複合結束紡績糸では、複数の合成繊維フィラメント(単糸)が束となり芯部が構成されている。そして、このフィラメントには、遠赤外線放射性微粒子が含有されている。
遠赤外線放射性微粒子とは、遠赤外線を放射可能な物質からなる微粒子である。本発明で使用される遠赤外線放射性微粒子としては、特に限定されないが、例えば、マイカ、タルク、方解石などの鉱物;酸化錫、アルミナ、二酸化珪素などの酸化物系セラミックス;炭化珪素、炭化ホウ素などの炭化物系セラミックス;白金、タングステンなどの金属類があげられる。中でも、紡糸操業性と遠赤外線放射性とを同時に向上させる観点から、マイカ、酸化錫、タルクが好適であり、マイカ、酸化錫がより好適である。これらの遠赤外線放射性微粒子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用してもよい。
フィラメントに含まれる遠赤外線放射性微粒子の含有量としては、特に限定されないが、0.1〜10質量%が好ましい。
遠赤外線放射性微粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、10μm以下が好ましく、0.1〜5μmがより好ましく、0.3〜3μmがさらに好ましい。このような範囲を満足する遠赤外線放射性微粒子を使用することで、紡糸操業性を改善しつつ優れた保温効果を得ることができる。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を用いて測定される体積平均粒子径をいう。
遠赤外線放射性微粒子を使用すると遠赤外線が放射されるので、布帛の使用場所や天候などによらず、一律に保温効果が期待できる。しかし、単に遠赤外線放射性微粒子を使用しただけでは、高いレベルの保温効果は得られない。遠赤外線がより放射されるための工夫が必要である。
具体的には、後述する吸湿発熱効果による熱を利用する。吸湿発熱効果とは前述のように湿気などの吸収による発熱効果をいう。本発明では、この吸湿発熱効果による熱を保温効果の向上そのものに利用するだけでなく、その熱を遠赤外線放射性微粒子の温度上昇に活用する。遠赤外線放射性微粒子は、温度が上昇するとより多くの遠赤外線を放射する傾向にあるから、結果として優れた保温効果が得られる。
吸湿発熱効果は、後述する吸湿発熱性短繊維の使用により奏される。
本発明では、遠赤外線放射性微粒子による保温効果と吸湿発熱性短繊維による保温効果との総和を超える相乗的な保温効果が奏される。一般に、フィラメントの紡糸操業性は、フィラメント中の微粒子の含有量が増えるほど低下する傾向にあるが、本発明では、上記のような相乗的な保温効果が奏されるから、ことさら遠赤外線放射性微粒子の含有量を増やす必要がなく、紡糸操業性改善のために微粒子の含有量を多少減らしても、十分な保温効果が確保できる。しかるに、遠赤外線放射性微粒子の含有量は、保温効果と紡糸操業性とを両立させる観点から、0.2〜5質量%が好ましく、0.5〜2.5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
なお、遠赤外線の放射量は、一般に微粒子の種類により異なるから、微粒子の種類を特定することも遠赤外線放射効果を高めるうえで有効であり、この点でマイカが好適である。
さらに、本発明における合成繊維マルチフィラメントには、艶消し剤、難燃剤、抗酸化剤などの各種微粒子及び薬剤などが適宜含まれていてもよい。中でも、発熱性微粒子が含まれていることが好ましい。発熱性微粒子を含有することで、発生した熱を暖かさそのものの向上に利用できるのは無論のこと、遠赤外線放射性微粒子の温度上昇にも活用できる。すなわち、発熱性微粒子によりもたらされる吸光熱変換効果を追加的に利用することで、遠赤外線放射効果をさらに促すことができる。
発熱性微粒子としては、電磁波(太陽光を含む)の吸収により発熱する微粒子であれば、どのようなものでも使用できる。例えば、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、カーボンなどがあげられる。中でも、紡糸操業性及び吸光熱変換効果の観点から、カーボン、炭化ジルコニウムが好ましい。これらの発熱性微粒子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用してもよい。
フィラメントに含まれる発熱性微粒子の含有量としては、特に限定されないが、0.1〜10質量%が好ましい。特に、本発明では、前記した相乗的な保温効果が奏されるため、紡糸操業性改善のためにその含有量を多少減らしても、十分な保温効果が確保できる。かかる観点から、発熱性微粒子の含有量としては、0.2〜5質量%が好ましく、0.5〜2.5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
発熱性微粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmがより好ましく、0.1〜2μmがさらに好ましい。このような範囲を満足する発熱性微粒子を使用することで、紡糸操業性を改善しつつ優れた保温効果を得ることができる。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を用いて測定される体積平均粒子径をいう。
本発明における合成繊維マルチフィラメントは、例えば、上記の繊維形成能を有するポリマーに、上記遠赤外線放射性微粒子及び好ましくは上記発熱性微粒子さらにはその他の微粒子、薬剤などを所定量練り込み、溶融紡糸することにより得ることができる。このとき、フィラメントの断面形状としては、特に限定されず適宜の形状が採用できる。断面形状は、紡糸口金を選択することにより調整可能である。
また、フィラメント中における各微粒子の分散状態も適宜の態様が採用できる。一般に、遠赤外線放射効果をより高めるには、フィラメント鞘成分に集中して上記微粒子を配することが好ましい。
フィラメント断面が芯鞘構造をなし、その鞘成分に前記遠赤外線放射性微粒子を含む場合、赤外線放射性微粒子の含有量としては、鞘成分100質量部に対して0.5〜2.5質量部の範囲にあることが好ましい。このとき、微粒子の含有量が0.5質量部未満になると、所望の遠赤外線放射効果が得難くなり、2.5質量部を超えると、所望の紡糸操業性や工程通過性が得難くなる。
他方、フィラメント断面が芯鞘構造をなし、その鞘成分に前記発熱性微粒子を含む場合、発熱性微粒子の含有量としては、鞘成分100質量部に対して0.5〜2.5質量部の範囲にあることが好ましい。このとき、微粒子の含有量が0.5質量部未満になると、所望の吸光熱変換効果が得難くなり、2.5質量部を超えると、所望の紡糸操業性や工程通過性が得難くなる。
そして、フィラメント断面が芯鞘構造をなし、遠赤外線放射性微粒子、もしくは遠赤外線放射性微粒子及び発熱性微粒子を鞘成分に含む場合、その芯鞘の質量比率としては、95/5〜15/85の範囲にあることが好ましく、85/15〜40/60の範囲がより好ましい。芯鞘の質量比率がこの範囲を満足すると、保温効果及び紡糸操業性を両立する点で有利となる。
しかしながら、一方で紡糸操業性や製織編時の工程通過性などを向上させるには、芯成分に集中して各微粒子を配することが一般に好ましいとされている。この点、本発明では、遠赤外線放射効果と吸湿発熱効果とさらに好ましくは吸光熱変換効果との相乗効果により、優れた保温効果を奏するから、紡糸操業性改善のためにフィラメント全体に含まれる微粒子の含有量を減らしても、一定レベルの保温効果が確保できる。特に上記両微粒子をフィラメント鞘成分に含有させると、両微粒子が接近することで、前記相乗効果がより効率的に奏されるから、両微粒子をさらに減らしても、十分に保温効果の確保が可能となる。
このような点から、両微粒子を共にフィラメント鞘成分に含む場合には、両微粒子の含有量をそれぞれ0.3〜1.5質量部程度まで減らしても、十分な保温効果が確保できる。
さらに、本発明における合成繊維マルチフィラメントの太さ(単糸繊度)としては、特に限定されないが、0.01〜30dtexが好ましく、0.1〜10dtexがより好ましく、0.1〜3dtexがさらに好ましい。また、複合結束紡績糸の芯部を構成する繊維束としてのトータル繊度は、1〜500dtexが好ましく、5〜300dtexがより好ましく、10〜200dtexがさらに好ましい。
単糸繊度を細くすることでフィラメント表面積が増加し、それに伴い遠赤外線放射効果が高まり、ひいては保温効果も高まることになる。また、単糸繊度を細くすると、空気層が増加するためデッドエアーに由来する保温効果がさらに付加される。ただし、単糸繊度を細くし過ぎると、フィラメントの紡糸操業性が低下する傾向にある。一方、単糸繊度を太くし過ぎると、布帛の風合いが低下するばかりでなく、フィラメント表面積が低減し、所望の遠赤外線放射効果が得られない傾向にある。また、トータル繊度については、繊度が細くなり過ぎると、フィラメントの紡糸操業性が低下する傾向にあり、太くなり過ぎると、布帛に肉厚感が付与され風合いが低下する他、複合結束紡績糸の被覆性が低下することがある。
結束紡績糸の芯部を構成する繊維束の形態としては、特に限定されず、フラットヤーン、仮撚糸、混繊糸などいずれのものでもよい。
本発明では、このように優れた保温効果が奏され、かかる保温効果の獲得に吸湿発熱効果の利用が必要となるが、本発明では、この吸湿発熱効果を得るために吸湿発熱性短繊維を使用する。
吸湿発熱性短繊維としては、ポリノジックレーヨン、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、リヨセル、モダール、麻、羊毛などがあげられる。これらを用いることで、吸湿発熱効果だけでなく、布帛にソフト感、ウォーム感なども付与できる。中でも吸湿発熱効果と風合いを同時に高める観点から、綿、リヨセル、モダールが好ましく、リヨセルが特に好ましい。本発明では、吸湿発熱性を本来的に有していない短繊維を吸湿発熱処理して吸湿発熱性を具備させたものを、吸湿発熱性短繊維として用いてもよい。
ここで、リヨセル繊維とは、パルプ原料を溶剤に溶解したものを乾式又は湿式紡糸することにより得た繊維のことである。紡糸後、繊維をカットして短繊維とすることができる。溶剤としては、N−メチルモルフォリン−N−オキサイド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピペリジン−N−オキサイド、ジメチルアセトアミドなどがあげられ、溶解後紡糸前に溶解液を濾過することが好ましい。リヨセルは、吸湿発熱性及び静電気防止性に優れるものである。また、製造過程で誘導体化などの工程を含まないため、セルロース分子の重合度が低下し難く、繊維強度にも優れている。
また、リヨセル繊維は、外から摩擦を受けると一般にフィブリル化し易く、この点を改善するために、原綿段階でフィブリル化防止加工しておくとよい。フィブリル化防止加工としては、例えば、クロルヒドリン基を有する化合物とアルカリ化合物と中性塩とからなる反応促進剤を含む水溶液を用いて、60℃で60分間の条件で処理すればよい。
吸湿発熱性短繊維の単糸繊度としては、特に限定されないが、0.6〜2.2dtexが好ましく、0.7〜1.6dtexがより好ましい。0.6dtex未満になると、短繊維の曲げ剛性が低下し、強度に優れる布帛が得難くなる。一方、2.2dtexを超えると、複合結束紡績糸を得る過程で、糸斑、ネップなどが発生し、布帛の風合いも低下する傾向にある。また、複合結束紡績糸の被覆性も低下し易く、さらには、芯部鞘部の界面において繊維同士が絡みづらくなり、複合結束紡績糸とした後、芯部鞘部が外力により容易に剥離し易くなる。この他、単糸繊度が太くなり過ぎると、繊維表面積が低減し、布帛の吸放湿性を維持する点でも不利となることがある。
また、吸湿発熱性短繊維の平均繊維長としては、30〜60mmが好ましく、35〜55mmがより好ましい。平均繊維長がこの範囲を満足することで、糸斑、ネップなどの発生を抑えることができ、芯部鞘部の界面における繊維同士が絡みつきも促進され、被覆性のよい複合結束紡績糸を得ることができる。
本発明の複合結束紡績糸は、特定フィラメントからなる繊維束を芯部に、特定短繊維からなる繊維束を鞘部にそれぞれ配した芯鞘二層構造をなし、このような糸を用いることで、天候に左右されない持続性ある優れた保温効果を有し、かつ着用耐久性、ウォーム感、ソフトな風合いなどにも優れる布帛が得られる。すなわち、本発明の複合結束紡績糸は、両繊維束に由来する特性をバランスよく布帛に反映させるべく特定の構成を備えるものであり、例えば、繊維原料が同じでも、両繊維束を交撚状に複合する、芯部鞘部の繊維束を入れ換える、芯鞘質量比率が所定範囲を外れるなどの場合には、ある特定の効果だけが強く反映される一方で、その他の効果が著しく低下することがあり、用途展開を図るうえで不利となる。
本発明では、このように両繊維束の特性をバランスよく布帛に反映させる観点から、両繊維束の芯鞘質量比率(芯/鞘)を20/80〜60/40の範囲に設定する必要がある。好ましくは30/70〜40/60である。芯鞘質量比率がこの範囲を外れると、遠赤外線放射効果と吸湿発熱効果とによる相乗効果が発揮されず、所望の保温効果が得られない。加えて、芯鞘質量比率が20/80に満たない場合、布帛に十分な着用耐久性が備わらず、布帛の防シワ性、耐洗濯収縮性、寸法安定性なども低下する。一方、60/40を超えると、複合結束紡績糸の被覆性が低下する他、布帛の風合い、吸放湿性なども低下する。
本発明では、複合結束紡績糸の鞘部に配される吸湿発熱性短繊維により、吸湿発熱効果に加えウォーム感、ソフトな風合い、吸放湿性などが布帛に付与されるが、さらに種々の特性を付与するべく、鞘部に吸湿発熱性短繊維以外の他の短繊維を混合してもよい。他の短繊維としては、アクリル短繊維、ポリエステル短繊維、ポリアミド短繊維、ポリビニルアルコール短繊維などがあげられる。他の短繊維の形態としては、ストレート形態のものでも嵩高加工されたものでもよい。
中でも、アクリル短繊維が好適である。アクリル短繊維は、熱収縮率が大きく、嵩高性に優れるため、これを鞘部に混合することで、保温効果の向上が期待できる。なお、本発明にいうアクリル短繊維とは、アクリルニトリルを95質量%以上含有する短繊維をいう。
アクリル短繊維の単糸繊度としては、特に限定されないが、0.6〜1.2dtexであることが好ましい。単糸繊度がこの範囲を満足すると、デッドエアーに起因する保温効果が付加され、また、通気抵抗が上がるのに伴い熱の放散も適度に抑えることができるようになる。さらに、吸湿発熱性短繊維による吸湿発熱効果も持続し易いものとなる。一方、当該単糸繊度が0.6dtex未満になると、短繊維の曲げ剛性が低下することで、着圧により短繊維間の空隙が減少し、保温効果の向上が期待できなくなる。また、1.2dtexを超えると、熱が放散し易くなり、布帛の風合いも硬いものとなり易い。
アクリル短繊維の平均繊維長としては、可紡性の観点から30〜60mmが好ましく、35〜55mmがより好ましい。
複合結束紡績糸鞘部にアクリル短繊維を含ませる場合、吸湿発熱性短繊維とアクリル短繊維との混合比率(吸湿発熱性短繊維/アクリル短繊維)としては、80/20〜30/70の範囲が好ましい。当該混合比率が30/70に満たない場合、十分な吸湿発熱効果が期待できない傾向にあり、一方、80/20を超えると、アクリル短繊維に由来する保温効果の向上が期待できない傾向にある。
次に、複合結束紡績糸の好ましい製造方法について説明する。
本発明の結束紡績糸を得るには、例えば、上記吸湿発熱性短繊維を含むスライバーと、上記遠赤外線放射性微粒子及び好ましくは発熱性微粒子を含有する合成繊維フィラメントからなる糸条とを用意し、糸条を芯部へ、スライバーを鞘部へそれぞれ配しながら結束紡績する方法があげられる。なお、当該スライバーとして、他の短繊維を混合した混合スライバーを用いるときは、スライバーを作製する際、原料工程又は練条の過程で他の短繊維を混合すれば、目的とする混合スライバーを準備することができる。
本発明では、空気精紡機を用いて結束紡績することが好ましい。
空気精紡機を用いると、空気流の旋回作用により、合成繊維フィラメントを芯部に配し、吸湿発熱性短繊維を鞘部に配してなる複合結束紡績糸を生産性よく得ることができる。空気精紡機には、通常、フィードローラーや糸道ガイドなどが備えられており、紡績糸形成部手前において、芯部となる繊維束を鞘部となる繊維束の中心部に供給することにより、容易に、無撚りもしくは撚りの少ない紡績糸を得ることができる。これに対し、リング精紡機などの空気精紡機以外の精紡機を用いた場合は、得られる紡績糸に実撚りが発現してしまう。このため、このような紡績糸は、糸表面の毛羽が絡み易く、布帛にするとピリングが多発するという問題がある。
空気流の旋回作用を利用する紡績方法は、各種のものが提案されている。本発明の結束紡績糸を得るためには、紡績ノズルから噴出する高速空気流により生じる旋回力を利用する装置を用いることが好ましい。このような装置としては、Murata−Vortex−Spinner(村田機械株式会社製、MVS)などがあげられる。本発明の紡績糸は、各種性能に照らし被覆性に優れていることが好ましく、具体的には、芯部繊維束の周囲を占有面積比50〜90%の割合で鞘部繊維束が被覆していることが好ましい。上述のMVSなどを用いた紡績方法により、かかる占有面積比を容易に達成できる。
本発明の結束紡績糸を紡出する際の加工速度としては、被覆性に優れる糸を得る観点から、150〜400m/分であることが好ましく、200〜350m/分であることがより好ましい。
本発明の結束紡績糸は、合成繊維フィラメントの繊維束を最内層に含み、その繊維束の周囲を吸湿発熱性短繊維の繊維束が取り囲んでいる。そして、この吸湿発熱性短繊維の繊維束の周囲には、紡績の過程で巻き付き繊維となった吸湿発熱性短繊維が強く巻き付いている。本発明の結束紡績糸は、その製法から明らかなように、無撚りもしくは撚りの少ないものである。このため、紡績糸鞘部に空気を多く含ませることができるため、デッドエアーによる保温効果の向上が期待でき、好ましい。
また、本発明の紡績糸は、積極的に実撚りを付与した紡績糸と比べ、鞘部に余分な負荷がかからず、短繊維が紡績糸表面に飛び出すのを防止することができる。その結果、毛羽の発現を抑制することができ、布帛に優れた抗ピリング性を付与することができる。さらに、軽量性に優れる布帛を得る点でも有利であり、紡績糸中に別途空気層を設ける必要もないため、布帛が肉厚になりづらく、好ましい。
なお、本発明において「無撚り」とは、結束紡績糸鞘部が繊維束として実質的に撚りが発現していない状態をいう。
結束紡績糸の太さとしては、用途に応じて最適なものを選択すればよいが、通常は、布帛の風合い、厚みなどの点から、英式綿番手換算で20〜80番手の範囲が好ましく、40〜60番手の範囲がより好ましい。
本発明では、既述のように、吸湿発熱性短繊維を併用することで遠赤外線放射効果が高まり、これにより優れた保温効果が奏されるから、肌に直接触れる場所や発汗が促されている環境下で布帛を使用することが、保温効果を奏するうえで好ましい。加えて、布帛は、抗ピリング性の他、着用耐久性、ソフト感及び吸放湿性などにも優れている。よって、本発明における布帛は、秋冬向けインナー衣料、スポーツ衣料などに好適である。
本発明における布帛は、雨天時や室内など太陽光の届きにくい場所でも、遠赤外線放射効果により暖かさを維持することができる。このため、本発明では、布帛をことさら厚くしなくても所望の保温効果が期待でき、この点でもインナー衣料、スポーツ衣料に好適であるといえる。
布帛の目付けとしては、風合い、着用耐久性などの点から、50〜300g/mであることが好ましく、150〜250g/mであることがより好ましい。目付けは、編物の場合は、JIS L1018 8.4.2に準じ、織物の場合は、JIS L1096 8.4.2に準じて測定する。
本発明における布帛には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記複合結束紡績糸以外の糸条が含まれていてもよい。本発明における布帛には、保温効果の観点から、上記紡績糸を好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量%含ませるとよい。
布帛の形状としては、織物、編物などがあげられる。布帛の組織としては、特に限定されず、目的に応じて適宜の組織を採用すればよい。また、布帛の設計についても、特に限定されない。
本発明の布帛は、まず上記紡績糸を製織編して生機を得、その後、これを精練、リラックス、ファイナルセットすることにより得ることができる。一連の後加工の途中もしくは最終段階において、公知の知見に基づき布帛を染色、アルカリ減量加工、着色プリント、エンボス加工、撥水加工、抗菌加工、蓄光加工、消臭加工などしてもよい。一般には、リラックスの後、染色することが好ましい。
本発明の布帛の用途については、特に限定されないが、例えば、各種インナー、Tシャツ、ジャケット、ウインドブレーカー、ウェットスーツ、スキーウエア、手袋、帽子、テント、靴の中敷き、布団の側地など、保温性が求められる各種繊維製品全般に適用できる。
以下、実施例及び比較例をあげてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)遠赤外線放射効果
各実施例及び比較例で得られた編物の遠赤外線放射強度を測定した。測定は、赤外分光光度計FT−IR装置(パーキンエルマー社製「Spectrum GX FT−IR(商品名)」)を使用し、測定温度40℃、測定波長域5〜20μmで行った。その際、同条件における黒体の遠赤外線放射強度も測定し、各波長における黒体の放射強度を100%とした場合の各編物の放射強度の比率(%)を求め、各波長で算出された比率の平均値を平均放射率(%)として算出した。また、ブランクとして、遠赤外線放射性微粒子及び発熱性微粒子を含まないこと以外は、各実施例及び比較例と同組成の糸を用いて製編、後加工した編物を用い、同様に平均放射率(%)を求めた。そして、次式に基づいて、遠赤外線放射効果を算出した。
<遠赤外線放射効果の算出式>
遠赤外線放射効果=〔(得られた編物の平均放射率(%)−ブランクの平均放射率(%))/ブランクの平均放射率(%)〕×100
(2)吸湿発熱効果
まず、温度が20℃、湿度が65%に保たれた室内において、編物から15cm四方の試料を切り出し、表面が貼付面となるように試料を発泡スチロール板に貼り付け、試料セットとした。次に、乾燥機を使用して、試料セットを70℃で12時間乾燥した。そして、温度が30℃、湿度が90%に保たれた室内において、その試料の裏面温度を時間毎にサーモグラフィー(NEC三栄株式会社製「サーモトレーサTH7102MX(商品名)」)で測定し、最高到達温度で評価した。
(3)吸光熱変換効果
温度が20℃、湿度が65%に保たれた室内において、編物表面にレフランプから照度10000LUXの光を照射し、裏面温度を時間毎にサーモグラフィー(NEC三栄株式会社製「サーモトレーサTH7102MX(商品名)」)で測定し、その最高到達温度で評価した。
(4)抗ピリング性
JIS L1076A法(ICI形法)に基づいて、編物の抗ピリング性を評価した。5時間摩擦操作を行った後、5段階の等級で評価した。等級が高いほど抗ピリング性に優れる。
(5)毛羽指数
JIS L1095 9.22.2B法に基づき、紡績糸10mあたりの3mmの毛羽指数を測定した。
(6)風合い
10人のパネラーにより得られた編物を官能検査(ハンドリング)し、以下の3段階で評価した。
○:ソフト感、ウォーム感に優れると判断した者が8人以上。
△:ソフト感、ウォーム感に優れると判断した者が5人以上7人以下。
×:ソフト感、ウォーム感に優れると判断した者が4人以下。
(7)着用耐久性
丸首肌着を作製し、10名が3ヶ月間着用した後、着用によるシワ、寸法変化にかかる着用耐久性を、以下の3段階で評価した。
○:シワ及び寸法変化のいずれもが気にならないと判断した者が8人以上。
△:シワ及び寸法変化のいずれもが気にならないと判断した者が5人以上7人以下。
×:シワ及び寸法変化のいずれもが気にならないと判断した者が4人以下。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート98質量部に、遠赤外線放射性微粒子として平均粒子径3μmのマイカを1.0質量部、及び発熱性微粒子として平均粒子径1.5μmの炭化ジルコニウムを1.0質量部練り込んだ樹脂組成物を用意し、これを常法に基づいて溶融紡糸し、56dtex24fのフィラメント糸条を得た。なお、紡糸操業性は良好であった。一方、単糸繊度1.3dtex、平均繊維長38mmのリヨセル短繊維と、単糸繊度1.0dtex、平均繊維長38mmのアクリル短繊維とを原料工程で混合(原料混合)し、その後、常法に基づいて紡績することにより、リヨセル短繊維とアクリル短繊維との混合比率(リヨセル短繊維/アクリル短繊維)が40/60の混合スライバーを得た。
次に、フィラメント糸条及びスライバーを、ローラー方式のドラフト機構を備えた空気精紡機(村田機械株式会社製、MVS)へ導入した。加工速度を300m/分とし、フィラメント糸条が芯部に、スライバーが鞘部に各々配されるように結束紡績し、芯鞘質量比率(芯/鞘)が30/70で50番手(英式綿番手)の複合結束紡績糸を得た。
続いて、得られた複合結束紡績糸を、釜径38インチ、針密度28ゲージのダブルニット編機(株式会社福原精機製作所製「LPJ−H型(商品名)」)へ導入し、スムース組織の生機を製編した。なお、製編にあたり、ガイド摩耗に起因する毛羽立ち、糸切れは特段認められず、工程通過性は良好であった。
その後、生機を順次、精練、リラックス、染色、ファイナルセットし、目付け200g/mの編物を得た。
(実施例2)
混合スライバーに代えて、単糸繊度が1.3dtexで平均繊維長が38mmのリヨセル短繊維のみからなるスライバーを用いる以外は、実施例1と同様に行い、複合結束紡績糸及び編物を得た。得られた結束紡績糸は、太さ50番手(英式綿番手)、芯鞘質量比率(芯/鞘)30/70であった。また、編物の目付けは200g/mであった。
(実施例3)
芯鞘質量比率(芯/鞘)を50/50に変更する以外は、実施例1と同様に行い、複合結束紡績糸及び編物を得た。得られた結束紡績糸は、太さ50番手(英式綿番手)であった。また、編物の目付けは200g/mであった。
(実施例4)
炭化ジルコニウムに代えて平均粒子径1.5μmのカーボンを1.0質量部使用する以外は、実施例1と同様に行い、複合結束紡績糸及び編物を得た。得られた結束紡績糸は、太さ50番手(英式綿番手)、芯鞘質量比率(芯/鞘)30/70であった。また、編物の目付けは200g/mであった。
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレート98質量部に、遠赤外線放射性微粒子として平均粒子径3μmのマイカを1.0質量部、及び発熱性微粒子として平均粒子径1.5μmのカーボンを1.0質量部練り込んだ樹脂組成物と、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂とを用意した。そして、両者を複合紡糸機に導入し、前者を鞘成分に、後者を芯成分にそれぞれ配しつつ両者の質量比率(芯成分/鞘成分)が15/85となるように複合紡糸し、56dtex24fのフィラメント糸条を得た。
以降は、フィラメント糸条として上記で得たフィラメント糸条を用いる以外、実施例1の場合と同様に行い、複合結束紡績糸及び編物を得た。得られた結束紡績糸は、太さ50番手(英式綿番手)、芯鞘質量比率(芯/鞘)30/70であった。また、編物の目付けは200g/mであった。
(実施例6)
ポリエチレンテレフタレート99質量部に、遠赤外線放射性微粒子として平均粒子径3μmのマイカを1.0質量部練り込んだ樹脂組成物を用意し、これを常法に基づいて溶融紡糸し、56dtex24fのフィラメント糸条を得た。なお、紡糸操業性は良好であった。
以降は、フィラメント糸条として上記で得たフィラメント糸条を用いる以外、実施例1の場合と同様に行い、複合結束紡績糸及び編物を得た。得られた結束紡績糸は、太さ50番手(英式綿番手)、芯鞘質量比率(芯/鞘)30/70であった。また、編物の目付けは200g/mであった。
(実施例7)
マイカに代えて平均粒子径3μmのアルミナを1.0質量部使用する以外、実施例6と同様に行い、複合結束紡績糸及び編物を得た。得られた結束紡績糸は、太さ50番手(英式綿番手)、芯鞘質量比率(芯/鞘)30/70であった。また、編物の目付けは200g/mであった。
(比較例1)
実施例1における混合スライバーを常法に基づいて粗紡し、混合粗糸を得た。そして、この混合粗糸と同例におけるフィラメント糸条とを同時にリング精紡糸へ導入し、糸条の周囲に粗糸が順次捲回するように紡出量を調整しつつ、撚数25回/インチの実撚り(撚係数3.6)を与え、長短複合紡績糸をボビンに巻き取った。得られた長短複合紡績糸は、太さ50番手(英式綿番手)、芯鞘質量比率(芯/鞘)は30/70であった。
以降は、この長短複合紡績糸を用いて、実施例1と同様に製編、後加工し、編物を得た。編物の目付けは200g/mであった。
以上で得た紡績糸及び編物の評価結果を表1に示す。
実施例にかかる編物は、いずれも天候に左右されない持続性ある保温効果を有しており、ウォーム感にも優れていた。さらに着用耐久性と共に抗ピリング性にも優れ、編物の品位は良好であった。これに対し、比較例1にかかる編物は、保温効果に優れるものの、積極的に実撚りが付与された紡績糸を使用したため、抗ピリング性に劣るものであった。
実施例1、2にかかる編物を比較すると、前者では紡績糸鞘部を構成するにあたり、アクリル短繊維を併用して吸湿発熱性短繊維の含有量を減らしたため、後者ほどの吸湿発熱効果は得られなかった。しかしながら、アクリル短繊維は、熱収縮率が大きく嵩高性にも優れるため、質感、見映えの点において、前者は後者よりむしろ優れていた。
また、実施例1、3にかかる編物では、紡績糸の芯鞘質量比率について、前者は後者に比べその範囲が最適化されており、後者のものと比べ(記載はないが)吸放湿性などに優れていた。
実施例4では、発熱性微粒子としてカーボンを使用したため、炭化ジルコニウムを使用した実施例1の場合と比べ保温効果に優れていた。
実施例5では、結束紡績糸において、フィラメント100質量部に対し各々の微粒子が0.85質量部ずつしか含まれていなかったが、フィラメントの断面が芯鞘構造をなし、しかも両微粒子が鞘成分に配され近接していたことにより、十分な遠赤外線放射効果ひいては十分な保温効果が確保できた。
また、実施例1、6を比較すると、前者では、発熱性微粒子による吸光熱変換効果を追加利用したため、暖かさそのものの向上に加え遠赤外線放射効果をさらに促すことができたのに対し、後者ではそのような効果を追加利用していないため、前者は後者に比べ保温効果に優れていた。
実施例7では、遠赤外線放射性微粒子としてアルミナを使用したため、マイカを使用したときほどの遠赤外線放射効果は得られなかった。

Claims (7)

  1. 遠赤外線放射性微粒子を含有する合成繊維フィラメントを芯部に配し、吸湿発熱性短繊維を鞘部に配してなる複合結束紡績糸であって、芯鞘質量比率(芯/鞘)が20/80〜60/40の範囲にあることを特徴とする複合結束紡績糸。
  2. 前記吸湿発熱性短繊維がリヨセル短繊維であることを特徴とする請求項1記載の複合結束紡績糸。
  3. 鞘部にアクリル短繊維を含み、前記吸湿発熱性短繊維と前記アクリル短繊維との混合比率(吸湿発熱性短繊維/アクリル短繊維)が80/20〜30/70の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の複合結束紡績糸。
  4. 前記合成繊維フィラメントの断面が芯鞘構造をなし、前記遠赤外線放射性微粒子が鞘成分に含まれ、前記遠赤外線放射性微粒子の含有量が鞘成分100質量部に対して0.5〜2.5質量部であり、かつフィラメントにおける芯鞘の質量比率(芯/鞘)が95/5〜15/85の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の複合結束紡績糸。
  5. 前記合成繊維フィラメントが発熱性微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の複合結束紡績糸。
  6. 前記合成繊維フィラメントの断面が芯鞘構造をなし、前記発熱性微粒子が鞘成分に含まれ、前記発熱性微粒子の含有量が鞘成分100質量部に対して0.5〜2.5質量部であり、かつフィラメントにおける芯鞘の質量比率(芯/鞘)が95/5〜15/85の範囲にあることを特徴とする請求項5記載の複合結束紡績糸。
  7. 請求項1〜6いずれかに記載の複合結束紡績糸を用いてなる布帛。
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