JP2015143573A - 摩擦伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被水時でもベルトスリップが発生せず、ベルトスリップに伴う発音やベルトの伝達性能の低下を抑制できる摩擦伝動ベルトを提供する。
【解決手段】プーリと接して摩擦係合し、かつゴム成分を含むゴム組成物で形成された摩擦伝動部を備えた摩擦伝動ベルト1において、前記摩擦伝動部5の摩擦伝動面を含む表面にシラン化合物を含む膜状親水部5aを形成する。前記シラン化合物はシランカップリング剤(特にアミノ基を有するシランカップリング剤)であってもよい。前記膜状親水部の平均厚みは0.01〜1mm程度であってもよい。この摩擦伝動ベルトは、摩擦伝動部に液状シラン化合物を含浸させて製造される。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車エンジン補機駆動などの駆動装置に用いられ、被水時の摩擦係数低下が少ないために発音が少なく、伝達性能に優れた摩擦伝動ベルト及びその製造方法に関する。
近年、ゴム工業分野、なかでも、自動車用部品の高機能、高性能化が望まれている。そのような状況の中で、通常走行時に限らず、被水時においても高い伝達性能を有する動力伝動ベルトが求められている。また、静粛化についても厳しい要求があり、特に、駆動装置においてはエンジン音以外の音は異音とされるため、ベルト発音対策についても厳しい要請がある。動力伝動ベルトを備えた駆動装置における異音としては、雨天走行時などにエンジンルーム内に水が入り、ベルトとプーリの間に水が付着することで発生するベルトスリップによる発音などがある。そこで、このようなスリップ音などの異音に対して、種々の対策が検討されている。
特開平7−151191号公報(特許文献1)には、被水時のベルトスリップや、それに伴う発音を抑えるために、綿などの短繊維が含有するゴム組成物を用いて、ベルトのプーリ接触面を形成することにより、ベルトのプーリ接触面からフィブリル化した短繊維を突出させたVリブドベルトが開示されている。しかし、このベルトは、ベルトの運転に伴って短繊維が脱落し、経時的に効果が低下する。
実公平7−31006号公報(特許文献2)には、ベルト走行初期時に多発するベルトの粘着性と摩擦に起因する発音を効果的に阻止するために、ベルトの伝動面から短繊維を突出させるのに加え、タルクやシリカ等のパウダー状の粘性抑制剤を、ベルトの伝動面(プーリ接触面)全面に亘って満遍なく付着させた動力伝動用ベルトが開示されている。しかし、このベルトは、ベルトの走行に伴ってパウダーが飛散するため、発音の抑制効果を持続的に維持できない。
特開2005−147392号公報(特許文献3)には、ベルトのプーリへの密着性を高め、発音を抑制するために、圧縮ゴム層に可塑剤又は軟化剤を配合し、ベルト表面にブリードさせる動力伝動用ベルトが開示されている。しかし、ベルト表面に可塑剤や軟化剤が過剰にブリードされると、摩擦係数が低下し、ベルトの伝達機能が低下する。
特開2004−232743号公報(特許文献4)には、注水時において水膜除去効果を呈し、スリップを抑制するために、圧縮ゴム層の表面(プーリとの接触部)がポリアミド樹脂パウダーを配合したゴム組成物で構成された動力伝動ベルトが開示されている。しかし、ポリアミド樹脂パウダーをゴム組成物内へ均一に分散させるのは困難であり、十分量を表面に露出させるのも困難である。また、ベルト内部に存在しているため、発音や伝達性能への寄与は小さく、異物となり、ベルト物性も低下させる。
特開2007−120526号公報(特許文献5)には、ベルトの伝動面の水に対する濡れ性を高め、被水などによるスリップやスリップに伴った発音を抑制するために、水酸基又は水分子を有する親水性無機物、あるいは水と反応して前記親水性無機物となる親水性無機物前駆体を含有したゴム組成物でベルトのプーリ接触面を形成した伝動ベルトが開示されている。この文献には、前記ゴム組成物がシランカップリング剤を含有させることや、親水性無機物又は前駆体の表面をシランカップリング剤で表面処理することにより、ベルトの耐摩耗性を向上できることが記載されている。実施例では、ゴム100重量部に対してシランカップリング剤2重量部を配合している。しかし、親水性無機物又は前駆体及びシランカップリング剤も、ベルト内部に存在しているため、発音や伝達性能を向上できない。
また、シラン化合物を含む溶液でゴムの表面改質を行う技術も提案されている。特開平11−166060号公報(特許文献6)には、アルコキシシランを含有する補強剤液をゴム表面に塗工し、水及び触媒が含有する混合液を塗工して浸透させ、アルコキシシランの加水分解物の重縮合体である表面層をゴム表面に形成するゴムの表面改質方法が開示されている。この方法では、ゴム表面に表面層を形成するため、ゴム表面の硬度を高くできるとともに、ゴムの耐摩耗性を向上できる。この方法は、自動車用ワイパーのゴム部材、ゴムローラ、ゴムベルト、ゴムホース、シール材に利用できることが記載されている。
国際公開WO2002/038655号パンフレット(特許文献7)には、廃タイヤなどから発生する廃棄ゴムのチップを、溶媒で希釈したシランカップリング剤中に浸漬することにより、ゴムチップの表面を改質する表面改質ゴムの製造方法が開示されている。これにより、ゴムチップの接着性及び耐久性を向上でき、改質したゴムチップを舗装材や弾性成形体に使用できる。
しかし、特許文献6及び7の方法は、耐摩耗性や接着性の向上を目的とするワイパーや舗装材などのゴム製品に使用される方法であり、ベルトスリップやそれに伴った発音の抑制を目的とする摩擦伝動ベルトは記載されていない。
特開2004−352742号公報(特許文献8)には、フッ素含有化合物と多官能性アルコキシシランとシランカップリング剤とを含有するゴムの表面処理組成物をゴム表面に塗布し、加熱することによりゴム表面に密着性の高い表面処理層を形成する方法が開示されている。この方法によれば、優れた表面特性(例えば、撥水撥油性、耐溶剤性等)を有するゴム製品を成形できる。しかし、この文献にも摩擦伝動ベルトは記載されていない。さらに、複数種の化合物を組み合わせる必要があり、簡便な方法ではない。
特開平11−335493号公報(特許文献9)には、無機系充填剤が内部に分散された架橋ゴムを、アルコキシシラン化合物を含む溶液に浸漬して膨潤させ、次いでこの膨潤架橋ゴムを触媒水中に浸漬して膨潤架橋ゴム中でアルコキシシラン化合物の加水分解物の重縮合体を生成するゴム製品の製法が開示されている。この方法で得られたゴム製品は、無機充填材の表面が改質されて分散性が高まることにより、引張り強さが向上するとともに、摩擦係数が低減し、ヒステリシスロスが抑制され、防振ゴム、ゴムまり、コンベアベルト、オイルフェンス、OA機器ベルト(ADFベルト)などの明色ゴム用途に利用できる。しかし、この文献には、ベルトスリップやそれに伴った発音の抑制を目的とする摩擦伝動ベルトは記載されていない。さらに、この方法は、工程が複雑であるため、生産性が低下する。
特開平7−151191号公報(請求項1、段落[0006]) 実公平7−31006号公報(特許請求の範囲、第3欄33〜46行) 特開2005−147392号公報(請求項1、段落[0009]) 特開2004−232743号公報(請求項1、段落[0007]) 特開2007−120526号公報(特許請求の範囲、段落[0006][0016][0028][0036]) 特開平11−166060号公報(請求項1、段落[0049][0052]) 国際公開WO2002/038655号パンフレット(請求の範囲第1項、第1頁4〜11行、第4頁5〜9行) 特開2004−352742号公報(特許請求の範囲、段落[0068]) 特開平11−335493号公報(請求項1、段落[0007][0053][0055])
従って、本発明の目的は、被水時でもベルトスリップが発生せず、ベルトスリップに伴う発音やベルトの伝達性能の低下を抑制できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、被水時のベルトスリップが抑制された摩擦伝動ベルトを簡便に製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、摩擦伝動ベルトの摩擦伝動面にシラン化合物を含む膜状親水部(親水層)を形成することにより、被水時でもベルトスリップが発生せず、ベルトスリップに伴う発音やベルトの伝達性能の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の摩擦伝動ベルトは、プーリと接して摩擦係合し、かつゴム成分を含むゴム組成物で形成された摩擦伝動部を備えた摩擦伝動ベルトであって、前記摩擦伝動部が、プーリと接する摩擦伝動面を含む表面に形成された膜状親水部を有し、かつ前記膜状親水部がシラン化合物を含む。前記シラン化合物はシランカップリング剤(特にアミノ基を有するシランカップリング剤)であってもよい。前記膜状親水部の平均厚みは10〜1000μm程度であってもよい。前記膜状親水部中のシラン化合物の割合は3〜35質量%程度であってもよい。前記摩擦伝動部は短繊維を含んでいてもよい。この短繊維は、摩擦伝動面の表面から突出し、かつ短繊維の突出部の平均長さが1mm以下であってもよい。前記ゴム成分は、ジエン系ゴム及びオレフィン系ゴムからなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。
本発明には、摩擦伝動部に液状シラン化合物を含浸させる含浸工程を含む前記摩擦伝動ベルトの製造方法も含まれる。本発明の製造方法は、さらに液状シラン化合物を含浸させた後の摩擦伝動面の表面に付着した液状シラン化合物を除去する除去工程を含んでいてもよい。本発明には、この製造方法により得られた摩擦伝動ベルトも含まれる。
本発明では、摩擦伝動ベルトの摩擦伝動面がシラン化合物を含む膜状親水部で形成されているため、被水時でもベルトスリップが発生せず、ベルトスリップに伴う発音やベルトの伝達性能の低下を抑制できる。さらに、この摩擦伝動ベルトは、摩擦伝動面に液状シラン化合物を接触させるだけの簡便な方法で製造できるため、生産性が高い。
図1は、本発明のVリブドベルトの一例を示す概略断面図である。 図2は、実施例においてゴムシートにシラン化合物を含浸させた状態を示すSi・Kα線像である。 図3は、実施例でのVリブドベルトの摩擦係数の測定方法を説明するための概略図である。 図4は、実施例でのVリブドベルトの伝達性能の評価方法を説明するための概略図である。 図5は、実施例でのVリブドベルトの負荷トルクと伝達効率との関係を評価する方法を説明するための概略図である。 図6は、実施例1でのVリブドベルトの負荷トルクと伝達効率との関係を示すグラフである。 図7は、比較例1でのVリブドベルトの負荷トルクと伝達効率との関係を示すグラフである。 図8は、実施例1、4〜7及び比較例1でのVリブドベルトの軸荷重400Nにおける負荷トルクと伝達効率との関係を示すグラフである。 図9は、実施例1、4〜7及び比較例1でのVリブドベルトの軸荷重800Nにおける負荷トルクと伝達効率との関係を示すグラフである。 図10は、実施例1でのVリブドベルトの負荷トルクとスリップ率との関係を示すグラフである。 図11は、比較例1でのVリブドベルトの負荷トルクとスリップ率との関係を示すグラフである。 図12は、実施例1、4〜7及び比較例1でのVリブドベルトの軸荷重400Nにおける負荷トルクとスリップ率との関係を示すグラフである。 図13は、実施例1、4〜7及び比較例1でのVリブドベルトの軸荷重800Nにおける負荷トルクとスリップ率との関係を示すグラフである。
[摩擦伝動部]
本発明の摩擦伝動ベルトは、プーリと接して摩擦係合し、かつゴム成分を含むゴム組成物で形成された摩擦伝動部を備えている。この摩擦伝動部は、プーリと接する摩擦伝動面を含む表面に形成され、かつシラン化合物を含む膜状親水部を有している。
(膜状親水部)
膜状親水部は、摩擦伝動面に形成されていればよく、摩擦伝動面の少なくとも一部に形成されていればよいが、摩擦伝動面全体の50%以上(特に80%以上)の面積で形成されているのが好ましく、略全面(100%)に形成されているのが特に好ましい。膜状親水部は、摩擦伝動ベルトの摩擦伝動面以外の表面に形成されていてもよく、非摩擦伝動面[例えば、圧縮層(摩擦伝動部)の先端面や、摩擦伝動ベルトの背面(伸張層の表面)など]に形成されていてもよい。
膜状親水部は、膜状又は層状に形成されており、平均厚みは、例えば、10〜1000μm、好ましくは20〜800μm、さらに好ましくは30〜500μm(特に50〜300μm)程度である。膜状親水部の厚みが大きすぎると、摩擦伝動部の機械的特性が低下し、小さすぎると、ベルトスリップの抑制効果が小さくなる。
本発明では、膜状親水部の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)に装着したエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いて測定でき、シラン化合物を含まない非親水部に対してシラン化合物を含む親水部をSi・Kα線像により目視で識別することにより測定できる。膜状親水部の厚みは、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
膜状親水部を構成するゴム組成物に含まれるシラン化合物は、親水部中において均一に分散していてもよいが、不均一に分散している場合が多く、通常、摩擦伝達面に近づくにつれて濃度が高くなるように傾斜して分散されている。
なお、摩擦伝動部において、膜状親水部以外の他の部分は、ゴム組成物で形成されていればよいが、通常、膜状親水部からシラン化合物を除いたゴム組成物で形成された非親水部である。非親水部は、膜状親水部のような親水性を発現しない範囲でシラン化合物を含んでいてもよく、例えば、短繊維の表面を被覆するシラン化合物を含んでいてもよい。非親水部におけるシラン化合物の割合は、例えば、非親水部全体に対して5質量%以下(特に0〜1質量%)程度である。
(シラン化合物)
膜状親水部に含まれるシラン化合物としては、第1のゴム成分中で縮合体を形成でき、ベルトスリップ抑制効果の耐久性を向上できる点から、加水分解性縮合基を有するシラン化合物を利用できる。
加水分解性縮合基を有するシラン化合物は、メチルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのアリールアルコキシシランであってもよいが、第1のゴム成分との反応性を有する官能基(極性基)を有するシランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤には、ハロゲン含有シランカップリング剤、エチレン性不飽和結合基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、カルボキシル基含有シランカップリング剤、シラノール基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤などが含まれる。
ハロゲン含有シランカップリング剤としては、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのトリフルオロC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシランなどのパーフルオロアルキルC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシランなどのクロロC2―4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、メチルトリクロロシランなどのC1−4アルキルトリクロロシランなどが挙げられる。
エチレン性不飽和結合基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシランなどのビニルトリC1−4アルコキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC2−4アルキル−C1−4アルキルジC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの脂環式エポキシ基を有するC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4アルキル−C1−4アルキルジC1−4アルコキシシラン、3−(2−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシランなどの(グリシジルオキシC1−4アルコキシ)C2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノC2−4アルキルC1−4アルコキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシランなどのアミノC2−4アルキルアミノC2−4アルキル−C1−4アルキルC1−4アルコキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアリールアミノC2−4アルキルC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
ウレイド基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−ウレイドイソプロピルトリメトキシシシラン、3−ウレイドイソプロピルトリエトキシシランなどのウレイドC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
カルボキシル基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−カルボキシエチルトリメトキシシランなどのカルボキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
シラノール基含有シランカップリング剤としては、例えば、トリメチルシラノールなどのトリC1−4シラノールなどが挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのシランカップリング剤のうち、ゴム成分との相互作用が強い官能基を有するシランカップリング剤、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤が好ましく、伝達効率を高め、スリップ率を低下できる点から、アミノC2−4アルキルC1−4アルコキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤が特に好ましい。
シラン化合物の割合は、摩擦伝動部を構成するゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは1〜10質量部(特に2〜10質量部)程度である。特に、本発明では、シラン化合物は、摩擦伝動部の表面近傍に局在した膜状親水部を形成している。摩擦伝動部に含まれる全シラン化合物のうち、膜状親水部に含まれるシラン化合物の割合は、例えば、90質量%以上、好ましくは95〜100質量%、さらに好ましくは99〜100質量%程度である。さらに、膜状親水部に含まれるシラン化合物の割合(膜状親水部中のシラン化合物の割合)は、膜状親水部全体に対して、例えば、3〜35質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは7〜25質量%(特に7〜23質量%)程度であり、伝達効率などの点から、例えば10〜23質量%(特に15〜23質量%)程度であってもよい。膜状親水部におけるシラン化合物の割合が少なすぎると、ベルトスリップ抑制効果が低下し、多すぎると、摩擦伝動部の機械的特性が低下する。
本発明では、膜状親水部中のシラン化合物の割合は、含浸前後の重量差から算出したシラン化合物の重量と、Si・Kα線像より測定した膜状親水部の厚み(シラン化合物の含浸深さ)から算出した膜状親水部を構成するゴム組成物の重量とに基づいて算出できる。膜状親水部中のシラン化合物の割合は、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
(ゴム成分)
摩擦伝動部(膜状親水部及び非親水部)を構成するゴム成分には、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキルクロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、オレフィン−ビニルエステル共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)など)などが含まれる。これらのゴム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのゴム成分のうち、ジエン系ゴム及び/又はオレフィン系ゴムが好ましい。
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレンイソプレンゴム(ブチルゴム)(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系単量体の重合体;アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム(NCR)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)、アクリロニトリルイソプレンブタジエンゴム(NBIR)などのアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンクロロプレンゴム(SCR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)などのスチレン−ジエン共重合ゴムなどが挙げられる。
ジエン系ゴムは水添物であってもよい。水添物としては、例えば、水素化ニトリルゴム(H−NBR)などが挙げられる。さらに、H−NBRは、不飽和カルボン酸金属塩を含んでいてもよい。SBRには、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体、スチレンブロックとブタジエンブロックとのブロック共重合体なども含まれる。これらのジエン系ゴムは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
オレフィン系ゴムはエチレン−α−オレフィンエラストマーであってもよい。エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−α−オレフィン系ゴム)としては、例えば、エチレン−α−オレフィンゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムなどが挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α−C3−12オレフィンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレンなどのα−C3−4オレフィン(特にプロピレン)が好ましい。
ジエンモノマーとしては、通常、非共役ジエン系単量体、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが例示できる。これらのうち、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン(特にエチリデンノルボルネン)が好ましい。
代表的なエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDMなど)などが例示できる。これらのオレフィン系ゴムは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのジエン系ゴム及びオレフィン系ゴムのうち、有害なハロゲンを含まず、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有し、経済性にも優れる点から、EPDMなどのエチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−α−オレフィン系ゴム)が特に好ましい。
(添加剤又は配合剤)
摩擦伝動部を形成するゴム成分(又はゴム組成物)は、必要に応じて、慣用の各種添加剤(又は配合剤)を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、加硫剤又は架橋剤[例えば、オキシム類(キノンジオキシムなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジンなど)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)など]、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、補強剤(カーボンブラック、含水シリカなどの酸化ケイ素など)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、可塑剤、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤(芳香族アミン系、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、接着性改善剤[レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメラミン樹脂、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが例示できる。
これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、ゴム成分の種類や用途、性能などに応じて適宜選択して用いられる。
添加剤の割合は、ゴム成分の種類などに応じて適宜選択できる。例えば、補強剤(カーボンブラックなど)の割合は、ゴム100質量部に対して、10質量部以上(例えば、20〜150質量部)、好ましくは25〜120質量部、さらに好ましくは35〜100質量部程度である。
(短繊維)
摩擦伝動部を形成するゴム成分(又はゴム組成物)は、短繊維を含んでいてもよい。短繊維としては、例えば、セルロース系繊維[セルロース繊維(植物、動物又はバクテリアなどに由来するセルロース繊維)、セルロース誘導体の繊維]、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体の繊維、ビニロンなど)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維などの芳香族ポリアミド繊維)、ポリエステル繊維[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC2−4アルキレンC6−14アリレート系繊維など]、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリウレタン繊維、炭素繊維などの無機繊維などが例示できる。
これらの短繊維は、用途に応じて、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの短繊維のうち、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステル系繊維(PET繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)などが汎用される。
短繊維は、摩擦伝動面とプーリとの摺動性を向上させるために、摩擦伝動面で突出しているのが好ましい。短繊維の突出部の平均長さは、1mm以下(例えば、10μm〜1mm)であってもよく、好ましくは500μm以下(例えば、50〜500μm)、さらに好ましくは200μm以下(例えば、100〜200μm)であってもよい。突出部の平均長さが長すぎると、繊維間にシラン化合物が堆積し、ベルトのスリップ抑制効果が低下する。
短繊維の平均長さは、例えば、20〜2000μm、好ましくは100〜1000μm、さらに好ましくは150〜500μm)であってもよい。短繊維の突出部の平均長さは、例えば、10〜500μm、好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは50〜100μm程度である。
摩擦伝動面から突出している短繊維の平均繊維径は、例えば、5〜50μm、好ましくは7〜40μm、さらに好ましくは9〜35μm(特に10〜30μm)程度である。繊維径が小さすぎると、摺動性の向上効果が小さく、大きすぎると、摩擦伝動部の機械的特性が低下する。
本発明では、短繊維の長さ及び径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定でき、平均値は、10本以上の測定値を平均してもよい。
短繊維は、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などで表面処理してもよい。
短繊維の割合(摩擦伝動面から突出している短繊維及び突出していない短繊維の合計割合)は、摩擦伝動部を構成するゴム成分100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部程度である。
[摩擦伝動ベルト]
本発明の摩擦伝動ベルトは、前記摩擦伝動部を備えていればよく、通常、摩擦伝動部は圧縮層を構成する。圧縮層を備えた摩擦伝動ベルトは、例えば、ベルト背面を形成する伸張層と、この伸張層の一方の面に形成され、かつその側面でプーリと接して摩擦係合する圧縮層と、前記伸張層と前記圧縮層との間にベルト長手方向に沿って埋設される心線とを備えた摩擦伝動ベルトであってもよい。
本発明の摩擦伝動ベルトでは、心線と伸張層又は圧縮層との接着性を向上させるために、必要に応じて圧縮層と伸張層との間に接着層を設けてもよい。接着層を設ける形態としては、心線を埋設する形態であってもよく、圧縮層と接着層又は接着層と伸張層との間に心線を埋設する形態であってもよい。
摩擦伝動ベルトとしては、例えば、Vリブドベルト、ローエッジVベルト、平ベルトなどの各種の摩擦伝動ベルトなどが挙げられる。これらのうち、被水による発音が問題となるVリブドベルトが特に好ましい。
図1は、本発明の摩擦伝動ベルト(Vリブドベルト)の一例を示す概略斜視図であり、ベルト長手方向に切断したベルトと概略斜視図である。この例では、Vリブドベルト1は、ベルト本体の外周側から内周側に向かって、補強布で形成された伸張層2、ゴム組成物で形成された接着層3、ゴム組成物で形成された圧縮層5が順次積層されている。さらに、前記接着層3は、ベルト長手方向に沿って延びる複数の心線4が埋設されている。また、前記圧縮層5は、内周側の表面(摩擦伝動面及び側面)にシラン化合物を含む膜状親水部5aを有している。
(圧縮層)
圧縮層は、前記摩擦伝動部で形成されていればよく、厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、1〜30mm、好ましくは1.5〜25mm、さらに好ましくは2〜20mm程度であってもよい。
(伸張層)
伸張層は、圧縮層と同様のゴム組成物で形成してもよく、帆布などの布帛(補強布)で形成してもよい。
補強布としては、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布や、経糸と緯糸との交差角が90〜120°程度の広角度帆布や編布などが好ましい。補強布を構成する繊維としては、前記短繊維の項で例示した繊維などを利用できる。
また、補強布には、接着処理(例えば、前記繊維部材の項で例示した接着処理)を施してもよい。さらに、接着処理[前記RFL液で処理(浸漬処理など)]した後、ゴム組成物を擦り込むフリクション又は積層(コーティング)してゴム付帆布を形成してもよい。
また、伸張層をゴム(ゴム組成物)で形成する場合、伸張層を構成するゴム組成物において、ゴム成分としては、前記圧縮層のゴム組成物のゴム成分と同系統又は同種のゴムを使用する場合が多い。また、加硫剤又は架橋剤、共架橋剤又は架橋助剤、加硫促進剤などの添加剤の割合も、それぞれ、前記圧縮層のゴム組成物と同様の範囲から選択できる。
ゴム組成物には、背面駆動時に背面ゴムの粘着により発生する異音を抑制するために、さらに圧縮層(摩擦伝動部)と同様の短繊維が含まれていてもよい。短繊維は、ゴム組成物中でランダムに配向させてもよい。さらに、短繊維は一部が屈曲した短繊維であってもよい。
さらに、背面駆動時の異音を抑制するために、伸張層の表面(ベルトの背表面)に凹凸パターンを設けてもよい。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターン、エンボスパターンなどが挙げられる。これらのパターンのうち、織布パターン、エンボスパターンが好ましい。さらに、経編布で伸張層の背面の少なくとも一部を被覆してもよい。
伸張層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、0.5〜10mm、好ましくは0.7〜8mm、さらに好ましくは1〜5mm程度であってもよい。
(接着層)
接着層は、例えば、前記圧縮層(圧縮ゴム層)と同様のゴム組成物で形成されていてもよい。接着層のゴム組成物において、ゴム成分としては、前記圧縮層のゴム組成物のゴム成分と同系統又は同種のゴムを使用する場合が多い。また、加硫剤又は架橋剤、共架橋剤又は架橋助剤、加硫促進剤などの添加剤の割合も、それぞれ、前記圧縮層のゴム組成物と同様の範囲から選択できる。接着層のゴム組成物は、さらに接着性改善剤(レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂など)を含んでいてもよい。
接着層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度であってもよい。
(心線)
心線は、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などで構成してもよい。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば、0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。心線はベルトの長手方向に埋設され、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に埋設してもよい。
心線は、ゴム成分との接着性を改善するため、心線は、前記短繊維と同様に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などによる種々の接着処理を施してもよい。
[摩擦伝動ベルトの製造方法]
本発明の摩擦伝動ベルトは、摩擦伝動部に液状シラン化合物を含浸させる含浸工程を含む製造方法により得られる。
(含浸工程)
含浸工程は、摩擦伝動部に液状シラン化合物を含浸させるが、詳しくは、摩擦伝動部の少なくとも摩擦伝動面に液状シラン化合物を接触させて含浸させる。
含浸工程は、ゴム組成物で形成された摩擦伝動部が加硫された後であればよく、切断又は研磨前の加硫スリーブに適用してもよく、切断又は研磨後の成形体に適用してもよい。
液状シラン化合物の接触方法としては、摩擦伝動面とシラン化合物とを接触できれば、特に限定されず、浸漬法、スプレーコート法、刷毛コート法などを利用できる。これらの方法のうち、簡便に均一な膜状親水部を形成できる点から、浸漬法が好ましい。浸漬法は、摩擦伝動部(又は摩擦伝動ベルト)全体を浸漬してもよく、摩擦伝動面を含む一部を浸漬してもよい。
液状シラン化合物は、水や有機溶媒などの溶媒に希釈して用いてもよい。液状シラン化合物の濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
シラン化合物の接触時間は、10分以上(例えば、10分〜6時間)程度であり、ゴム組成物の種類や接触方法によって異なるが、例えば、浸漬法の場合、浸漬時間は10分〜12時間程度の範囲から選択できる。好ましい浸漬時間はゴム組成物の種類によって異なるが、例えば、EPDMを主成分とするゴム組成物の場合、好ましくは30分〜6時間程度であり、CRを主成分とするゴム組成物の場合、好ましくは10分〜1時間程度である。
(除去工程)
含浸工程に供した後は、摩擦伝動面の表面に付着した液状シラン化合物を除去する除去工程を経るのが好ましい。液状シラン化合物を除去しない場合、摩擦伝動面に残存した液状シラン化合物の反応生成物であるシロキサンやシルセスキオキサンが付着残留し、摩擦伝動ベルトの耐摩耗性などを低下させる場合があるためである。
除去工程において、液状シラン化合物を除去する方法は、特に限定されず、例えば、織布や不織布などの繊維構造体を用いて拭き取る方法、アルコールなどの溶媒で濯ぐ方法などが挙げられる。これらの方法のうち、簡便性の点から拭き取りによる方法が好ましい。
除去工程を経た摩擦伝動部(摩擦伝動ベルト)は、通常、風乾させるが、シラン化合物の反応は、経時で進行する。シラン化合物の反応の促進及び/又は制御のために、熱処理などの熱管理や触媒との接触は有効であるが、反応が進行すれば特に必要はない。
(他の工程)
他の工程は、特に制限されず、公知又は慣用の摩擦伝動ベルトの製造方法を採用でき、例えば、以下の2種類の方法で製造できる。
第1の方法では、表面が平滑な円筒状の成形モールドに装着された可撓性ジャケットの外周に、伸張層を形成するための部材と接着層を形成するためのゴムシートとを巻きつけた後、この上に心線を螺旋状にスピニングし、さらに圧縮層を形成するためのゴムシートを巻きつけて積層体を得た後、可撓性ジャケットを膨張させて、リブ刻印を施した外型に未加硫のスリーブを押圧して加硫成形してもよい。得られた加硫スリーブは、リブが形成されているが、必要に応じてリブ表面を研磨及び/又は植毛し、所定幅に切断してVリブドベルトを得てもよい。
第2の方法では、表面が平滑な円筒状の成形モールドの外周に、伸張層を形成するための部材と接着層を形成するためのゴムシートとを巻きつけた後、この上に心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮層を形成するためのゴムシートを巻きつけて積層体を得た後、この積層体を架橋してスリーブを得てもよい。加硫スリーブを成形モールドから取り出し、加硫スリーブの圧縮層をグラインダーにより研削して複数のリブを形成し、さらにカッターにより個々のベルトに切断してVリブドベルトを得てもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[使用原料の詳細]
EPDM:ダウ・ケミカル社製「ノーデルIP4640」
CR:電気化学工業(株)製「PM−40」
H−NBR:日本ゼオン(株)製「Zetpole・2021」
NR:標準マレーシアゴム(SMR)
SBR:住友化学(株)製「SBR1502」
IIR:JSR(株)製「ブチル♯268」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製「酸化亜鉛3種」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストV」、平均粒子径55nm
可塑剤:旭電化(株)製「アデカサイザーRS700」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラックMB」
共架橋剤:大和化成工業(株)製「BMI−3000H」
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDM−P」
有機過酸化物:日油(株)製「パークミルD−40」
APTMS:3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBM−903」
APTES:3−アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBE−903」
UPTES:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBE−585」
MPTMS:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBM−803」
IPTES:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBE−9007」
GPTMS:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBM−403」
ポリアミド短繊維:旭化成(株)製「66−ナイロン」、繊維径27μm、繊維長3mm
アラミド短繊維:帝人(株)製「コーネックス短繊維」、繊維径14μm、繊維長3mm。
[ゴムシートの作製]
表1に示すゴム組成物をバンバリーミキサーでゴム練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの未加硫圧延ゴムシート(圧縮層用シート)を作製した。圧延ゴムシートを所定の条件で加硫し、ゴムシートを成形した。ゴムの組成、加硫温度、加硫時間を表1に示す。
[ゴムシートの液状シラン化合物処理]
表1に示すゴムシートを液状シラン化合物(APTMS、APTES、UPTES、MPTMS、IPTES、GPTMS)に所定時間浸漬し、表面改質を行った。液状シラン化合物の浸漬時間は、APTMSが30、60、360分間、APTESが30分間、UPTESが60分間、MPTMSが30、60分間、IPTESが30、60分間、GPTMSが60分間とした。ゴムシートを液状シラン化合物から取り出し、表面に付着した液状シラン化合物を拭き取った後、風乾して評価した。すなわち、ゴムシート表面のSi・Kα線像を撮影し、液状シラン化合物が含浸した状態を確認し、評価した。また、このようなSi・Kα線像より、膜状親水部の厚み(シラン化合物の含浸深さ)を測定した。
なお、Si・Kα線像は、走査型電子顕微鏡(SEM)に装着したエネルギー分散型X線分光装置(EDS)(日本電子(株)製「JSM5900LV」)を用いて、試料中のシリコンからの特性X線のうちKα線を一定時間積算し、そのカウント数をヒートマップ化して撮影した。本発明では、得られたSi・Kα線像の色変化から親水部と非親水部との界面を目視で識別し、さらに、そのSi・Kα線像より膜状親水部の厚み(シラン化合物の含浸深さ)を測定できる。
ゴムシートに液状シラン化合物を浸漬した結果及び含浸深さを表2に示す。
ゴムシート表面のSi・Kα線像を撮影し、液状シラン化合物が含浸している状態を確認した結果、すべての組み合わせでゴムシート内に液状シラン化合物が含浸していた。EPDMを含むゴムシートをAPTMSに30分間浸漬したSi・Kα線像を図2に示す。図中の「A」はAPTMSが含浸した領域を示し、APTMSがEPDMを含むゴムシートに含浸しており、ゴムシート表面から10μmの深さまでAPTMSが含浸していた。また、EPDMをAPTMSに360分間浸漬した結果、30分間浸漬したときに比べ、含浸深さは大きくなることがわかった。
[Vリブドベルトの作製]
表3に示すゴム組成物をバンバリーミキサーでゴム練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの未加硫圧延ゴムシート(厚み2.5mmの圧縮層用シート)を作製した。さらに、表3に示すゴム組成物を用い、同様にして、厚み0.8mmの接着層用シート及び厚み0.8mmの伸張層用シートを作製した。なお、接着層用シートは、表3に示すゴム組成物において、短繊維の代わりにシリカ20質量部を配合した。これらのシートを用いて、以下のようにしてVリブドベルトを作製した。なお、心線としては、ゴムとの接着性を向上させるため、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)へ浸漬処理した後、EPDMを含むゴム組成物をトルエンに溶解した処理液でコーティング処理したポリエステル心線(1100dtex/2×3構成)を用いた。
(実施例1のベルト)
表面が平滑な円筒状の成形モールドに装着された可撓性ジャケットの外周に、伸張層用ゴムシートと接着層用ゴムシートとを巻きつけた後、この上に心線を螺旋状にスピニングし、さらに圧縮層用ゴムシートを巻きつけて積層体を得た後、可撓性ジャケットを膨張させて、リブ刻印を施した外型に未加硫のスリーブを押圧して加硫成形した。さらに、カッターを用いて、得られた加硫ゴムスリーブをベルト長手方向に所定の幅にカットしてVリブドベルト(リブ数3個、周長1100mm)を得た。得られたVリブドベルトをAPTMS(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)に120分間浸漬し、Vリブドベルトのプーリ接触部(摩擦伝動面)の表面改質を行った。VリブドベルトをAPTMSから取り出し、表面に付着したAPTMSを拭き取った後、風乾した。
(実施例2のベルト)
表面が平滑な円筒状の成形モールドの外周に、伸張層用ゴムシートと接着層用ゴムシートとを巻きつけた後、この上に心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮層を形成するためのゴムシートを巻きつけて積層体を得た後、これを架橋して加硫スリーブを得た。加硫スリーブを成形モールドから取り出し、加硫スリーブの圧縮層をグラインダーにより研削して複数のリブを形成し、さらにカッターにより個々のベルトに切断してVリブドベルト(リブ数3個、周長1100mm)を得た。得られたVリブドベルトを実施例1と同様の方法で表面改質した。
(実施例3のベルト)
表3に示すゴムシートを用いて実施例2と同様にしてVリブドベルトを作製し、APTMSへの浸漬時間を30分間とする以外は実施例1と同様にして表面改質した。
(実施例4のベルト)
APTMSへの浸漬時間を30分間とする以外は実施例1と同様にしてVリブドベルトを作製した。
(実施例5のベルト)
APTMSへの浸漬時間を360分間とする以外は実施例1と同様にしてVリブドベルトを作製した。
(実施例6のベルト)
APTMSに代えてMPTMSに60分間浸漬する以外は実施例1と同様にしてVリブドベルトを作製した。
(実施例7のベルト)
APTMSに代えてGPTMSに60分間浸漬する以外は実施例1と同様にしてVリブドベルトを作製した。
(比較例1のベルト)
表面改質しない以外は実施例1と同様にしてVリブドベルトを作製した。
(比較例2のベルト)
表面改質しない以外は実施例2と同様にしてVリブドベルトを作製した。
(比較例3のベルト)
表面改質しない以外は実施例3と同様にしてVリブドベルトを作製した。
(APTMS、MPTMS、GPTMSの含浸深さ)
実施例及び比較例で得られたVリブドベルト表面のSi・Kα線像を撮影し、APTMS、MPTMS、GPTMSが含浸した状態を確認した。また、このSi・Kα線像より、APTMS、MPTMS、GPTMSの含浸深さを測定した。
(APTMS、MPTMS、GPTMSの含浸割合)
APTMS、MPTMS、GPTMSの含浸割合を以下のようにして測定した。
すなわち、実施例1で得られたベルトでは、まず、含浸前後のVリブドベルトの重量差より、ベルト全体に含浸しているAPTMSの重量を算出した結果、0.55gであった。
次に、Si・Kα線像より測定したAPTMSの含浸深さから、APTMSが含浸している全ての部分の体積(接着層及び伸張層に含浸している部分も含む体積)及び膜状親水部の体積を求め、APTMSが含浸している全ての部分の体積と膜状親水部の体積との割合、APTMSの重量から膜状親水部に含浸しているシランカップリング剤の重量を算出した結果、膜状親水部に含浸しているAPTMSの重量は0.29gであった。
さらに、膜状親水部の体積にVリブドベルトの摩擦伝動部を構成するゴム組成物の密度を乗じて、膜状親水部を構成するゴム組成物の重量を算出した結果、1.19gであった。
最後に、膜状親水部に含浸しているAPTMSの重量と、膜状親水部を構成するゴム組成物の重量から、APTMSの含浸割合を算出した結果、19.8質量%であった。同様にして、実施例2〜7で得られたベルトのAPTMS、MPTMS、GPTMSの割合も測定した。
(短繊維の突出部の平均長さ)
さらに、実施例2〜3及び比較例2〜3で得られたVリブドベルトについて、摩擦伝動面から突出している短繊維の突出部の平均長さを測定した。短繊維の平均長さは、SEM像の繊維10本の平均値を算出した。
実施例及び比較例のゴム組成物の配合、APTMS、MPTMS、GPTMSへの浸漬時間、APTMS、MPTMS、GPTMSの含浸深さ及び割合、突出している短繊維の長さを表3に示す。
これらの実施例及び比較例で得られたベルトについて、さらに以下の評価を行った。
[ベルトの摩擦係数の測定]
乾燥時及び被水時のベルトの摩擦係数を測定した。測定方法は、長さ方向に切断したベルトを図3に示すようにプーリにかけ、チャックを介してロードセルにベルトの一方を固定し、もう一方の端には荷重をかけてプーリを回転させ、そのトルクから摩擦係数を算出した。なお、ベルトにかける荷重は1.75kgf、プーリの回転速度は43rpmとした。結果を表4に示す。
表4の結果から明らかなように、比較例では、被水によりベルトの摩擦係数が変化率−40〜−66%と乾燥時に比べて大きく低下したが、実施例では比較例に比べて変化率が小さく、実施例1では被水時の方が乾燥時よりも摩擦係数が増加していることが明らかとなった。
[ベルトの伝達性能の評価]
ベルトを2%スリップさせるのに必要なトルクを測定し、伝達性能を評価した。詳しくは、図4に示すように、直径120mmの駆動(Dr.)プーリと、直径120mmの従動(Dn.)プーリで構成される2軸走行試験機にVリブドベルトを巻き掛け、初張力(100、150N/ベルト1本の2水準)をVリブドベルトに付与した後、駆動プーリ回転数2000rpm、室温雰囲気の条件で従動プーリの負荷(従動トルク)を上げていき、従動プーリに対するVリブドベルトのスリップ率が2%になったときの従動トルクを測定した。従動トルクの数値が高いほどVリブドベルトの伝達性能が優れていることを意味する。また、駆動(Dr.)プーリに300mL/分の条件で3分間注水し、被水時の従動トルクを測定した。結果を表5に示す。
表5から明らかなように、実施例1の乾燥時以外はすべて実施例が比較例よりもトルクが大きく、伝達性能に優れていることがわかった。また、実施例1についても、被水時のトルク低下率が低く、比較例1よりも優れていることが明らかとなった。
[負荷トルクと伝達効率の関係]
実施例1、4〜7及び比較例1のベルトについて、軸荷重400、600、800Nにおける負荷トルクと伝達効率の関係を評価した。詳しくは、図5に示すように、直径100mmの駆動(Dr.)プーリと、直径100mmの従動(Dn.)プーリで構成される2軸走行試験機にVリブドベルトを巻き掛け、軸荷重(400、600、800N)をVリブドベルトに付与した後、駆動プーリ回転数1800rpm、室温雰囲気の条件で従動プーリの負荷(従動トルク)を上げていき、Vリブドベルトの伝達効率を測定した。
実施例1及び比較例1で得られた結果を、それぞれ図6及び7に示す。実施例1のベルトは、比較例1のベルトに比べると伝達効率が高いことが明らかとなった。
軸荷重400N及び800Nについて、実施例1、4〜7及び比較例1で得られた結果を、それぞれ図8及び図9に示す。実施例のベルトは、比較例1のベルトに比べると伝達効率が高いことが明らかとなった。なお、図8における負荷トルク18Nmでの伝達効率と、図9における負荷トルク30Nmでの伝達効率とを表6に示す。
[負荷トルクとスリップ率の関係]
実施例1、4〜7及び比較例1のベルトについて、軸荷重400、600、800Nにおける負荷トルクとスリップ率の関係を評価した。詳しくは、図5に示す2軸走行試験機により、Vリブドベルトのスリップ率を測定した。
実施例1及び比較例1で得られた結果を、それぞれ図10及び11に示す。実施例1のベルトは、比較例1のベルトに比べるとスリップ率が低いことが明らかとなった。
軸荷重400N及び800Nについて、実施例1、4〜7及び比較例1で得られた結果を、それぞれ図12及び図13に示す。実施例のベルトは、比較例1のベルトに比べるとスリップ率が低いことが明らかとなった。なお、図12における負荷トルク18Nmでのスリップ率と、図13における負荷トルク30Nmでのスリップ率とを表7に示す。
以上より、次のことが明らかとなった。
比較例では、被水によりベルトの摩擦係数が変化率−40〜−66%と乾燥時に比べて大きく低下したが、実施例では比較例に比べて変化率が小さく、実施例1では被水時の方が乾燥時よりも摩擦係数が増加していた。
実施例1の乾燥時以外はすべて実施例が比較例よりもベルトを2%スリップさせるのに必要なトルクが大きく、伝達性能に優れていることがわかった。また、実施例1についても、被水時のトルク低下率が低く、比較例1よりも優れていることが明らかとなった。
実施例1、比較例1について、負荷トルクと伝達性能、スリップ率の関係について評価した結果、実施例1のベルトのほうが比較例1のベルトよりも伝達性能に優れ、スリップ率が低いことが明らかとなった。
この結果、本発明によると、ゴム組成物からなる摩擦伝動ベルトにおいて、作製したベルトをシランカップリング剤に接触させることのみで、被水時の摩擦係数があまり低下せず、動力伝達面におけるDRY/WETの摩擦係数の差が小さくなるので、それによりベルトとプーリのスリップが低減できる。結果として伝達性能に優れ、発音の少ないベルトを提供することができる。
実施例1及び4〜7の伝達効率及びスリップ率の比較から、アミノ基を有するシランカップリング剤で表面改質したベルト(実施例1及び4〜5)は、アミノ基以外の官能基を有するシランカップリング剤で表面改質したベルト(実施例6〜7)より伝達効率に優れ、スリップ率が低かった。すなわち、アミノ基以外の官能基を有するシランカップリング剤よりも、アミノ基を有するシランカップリング剤の方がより高い効果が得られる。詳しくは、表6から明らかなように、アミノ基を有するシランカップリング剤は、アミノ基以外のシランカップリング剤よりも0.1%以上伝達効率が向上している。ベルトの伝達効率は自動車の燃費と関係があり、例えば、軽自動車の場合、伝達効率0.1%の向上は、燃費で約0.2%の向上に相当するが、自動車分野で燃費を0.1%向上させることは重要な意義を有している。
実施例1及び4〜5の伝達効率及びスリップ率の比較から、シラン化合物の含浸割合が4.1質量%及び33.5質量%のベルト(実施例4〜5)でも効果は得られ、最も高い効果が得られたのは含浸割合が19.8質量%のベルト(実施例1)であった。
本発明の摩擦伝動ベルトは、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどの摩擦伝動ベルトとして利用できる。また、本発明の摩擦伝動ベルトは、被水時の静音性を改善できるため、自動車、自動二輪車、農業機械など屋外で使用される高負荷伝動機器にも好適に利用できる。
1…摩擦伝動ベルト(Vリブドベルト)
2…伸張層
3…接着層
4…心線
5…圧縮層(摩擦伝動部)
5a…膜状親水部

Claims (10)

  1. プーリと接して摩擦係合し、かつゴム成分を含むゴム組成物で形成された摩擦伝動部を備えた摩擦伝動ベルトであって、前記摩擦伝動部が、プーリと接する摩擦伝動面を含む表面に形成された膜状親水部を有し、かつ前記膜状親水部がシラン化合物を含む摩擦伝動ベルト。
  2. シラン化合物がシランカップリング剤である請求項1記載の摩擦伝動ベルト。
  3. シランカップリング剤がアミノ基を有する請求項2記載の摩擦伝動ベルト。
  4. 膜状親水部の平均厚みが10〜1000μmである請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  5. 膜状親水部中のシラン化合物の割合が3〜35質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  6. 摩擦伝動部が短繊維を含み、この短繊維が摩擦伝動面の表面から突出し、かつ短繊維の突出部の平均長さが1mm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  7. ゴム成分が、ジエン系ゴム及びオレフィン系ゴムからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
  8. 摩擦伝動部に液状シラン化合物を含浸させる含浸工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の摩擦伝動ベルトの製造方法。
  9. さらに液状シラン化合物を含浸させた後の摩擦伝動面の表面に付着した液状シラン化合物を除去する除去工程を含む請求項8記載の製造方法。
  10. 請求項8又は9記載の製造方法により得られた摩擦伝動ベルト。
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