JP2006183805A - Vリブドベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた耐磨耗性、耐久性、並びに耐発音性を備えたVリブドベルトを提供する。
【解決手段】Vリブドベルト1は、カバー帆布5からなる伸張部2と、コードよりなる心線3を埋設した接着部4と、その下側に弾性体層である圧縮部6からなっている。この圧縮部6は、ベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブを有している。そして圧縮部6は、ゴム100重量部に対して(イ)窒素吸着比表面積が70m/g以上かつジブチルフタレート吸油量が100cm/100g以上のカーボンブラックを20〜60重量部、(ロ)窒素吸着比表面積が70m/g未満かつジブチルフタレート吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを15〜55重量部の割合で含有するゴム組成物で構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は動力伝動ベルトに関し、詳しくは優れた静音性、耐摩耗性、耐久性を有するVリブドベルトに関する。
ゴム工業分野、なかでも自動車用部品の高機能、高性能化が望まれている。自動車用部品に用いられるゴム製品のなかにVリブドベルトがあり、例えば自動車のエアーコンプレッサーやオルタネータ等の補機駆動の動力伝動に広く利用されている。
近年、静粛化について厳しい要求があり、特に駆動装置においてはエンジン音以外の音は異音とされるため、ベルト発音対策が盛んに研究されている。駆動装置における異音としては、回転変動の大きな条件や高負荷条件において発生するスリップ音や、圧縮ゴムが粘着摩耗を起こし、その結果リブ間の溝底に付着した粘着ゴムにより発生する騒音が指摘されている。またプーリレイアウトのミスアライメントによりVリブドベルトが偏倚走行し、この偏荷重に基づく異音の発生によって乗客に不快感を与える等の問題もあった。
これらの問題に対して、圧縮ゴムに綿、ナイロン、ビニロン、レーヨン、アラミド繊維などの短繊維群をベルト幅への配向性を保って埋設することにより、ベルトの摩擦伝動部の耐側圧性を高め、更に埋設した短繊維の一部をベルト側面より意図的に突出させることによって、リブ部の摩擦性能や発音の抑制効果を狙うことが一般になされている。また、上記ベルトの効果をさらに向上させるために、摩擦伝動部の両側壁面に突出させる短繊維としてアラミド繊維を用いることで、アラミド繊維特有の耐摩耗性によりベルト自体の耐久性の向上を意図した伝動ベルトも提案されている。(例えば特許文献1参照)
特開平1−164839号公報
しかし、短繊維を配合したVリブドベルトは、経時的に短繊維が磨耗や脱落によって減少し、リブ表面の摩擦係数が高くなって発音しやすくなる。これを防ぐために、カーボンブラックなど補強材の配合量を減らしてリブゴム硬度を低くすることが考えられるが、耐摩耗性や耐粘着磨耗性が低下する不具合があった。一方で、短繊維を多量に配合するという対策も考えられるが、短繊維を多く含有させるとリブゴム硬度やモジュラスが高くなるため、ミスアライメントによるプーリとベルトの摩擦が強くなって異音が発生したり、スティックスリップの振動を緩和する効果が乏しくなって振動音が発生したりするなどの問題があった。
上記問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、本発明を提案するものであり、その目的とするところは、優れた耐摩耗性、耐久性、静音性を兼ね備えたVリブドベルトを提供することにある。
本発明は、伸張部とベルト周方向に延びるリブを形成した圧縮部を有し、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトであって、圧縮部が、ゴム100重量部に対して(イ)窒素吸着比表面積が70m/g以上かつジブチルフタレート吸油量が100cm/100g以上のカーボンブラックを20〜60重量部、(ロ)窒素吸着比表面積が70m/g未満かつジブチルフタレート吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを15〜55重量部の割合で含有するゴム組成物で構成されることを特徴とするVリブドベルトである。また本発明は、前記Vリブドベルトにあって、ゴムがエチレン・α−オレフィンゴムであるVリブドベルトである。
本発明では、圧縮部を、特性の異なる2種のカーボンブラックを所定量含有するゴム組成物で構成することで、静音性、耐摩耗性、耐久性を向上させたVリブドベルトとすることができる。
更にゴムとしてエチレン・α−オレフィンを選択することで、優れた耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有しているとともに比較的に安価で、脱ハロゲンという要求を満たすVリブドベルトとすることができる。
図1に本発明に係るVリブドベルトの断面斜視図を示す。Vリブドベルト1は、カバー帆布5からなる伸張部2と、コードよりなる心線3を埋設した接着部4、その下側に圧縮部6を配置した構成からなっている。該圧縮部6は、ベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブを有している。
本発明では、圧縮部6を、ゴム100重量部に対して(イ)NSAが70m/g以上かつDBP吸油量が100cm/100g以上のカーボンブラックを20〜60重量部、(ロ)NSAが70m/g未満かつかつDBP吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを15〜55重量部を含有するゴム組成物で構成する。好ましくは、(イ)カーボンブラックはNSAが70〜160m/g以上かつDBP吸油量が100〜150cm/100g以上であり、(ロ)カーボンブラックはNSAが10〜70m/g未満かつかつDBP吸油量が30〜100cm/100g未満である。
(イ)カーボンブラックは、NSAが70m/g以上かつDBP吸油量が100cm/100g以上であるため補強性が高く、また(ロ)NSAが70m/g未満かつDBP吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを含有させることで発音抑制効果が向上することを見出した。そして、この(イ)(ロ)を所定量、具体的には(イ)カーボンブラックを20〜60重量部、(ロ)カーボンブラックを15〜55重量部含有させることで、充分な耐摩耗性、耐久性を確保しつつ、耐発音性を兼ね備えたVリブドベルトとすることが可能となる。
尚、(イ)カーボンブラックが20重量部未満であれば、補強性が充分ではなく、耐摩耗性、耐久性に劣り、60重量部を超えると、加工性が悪くなるといった不具合がある。また(ロ)カーボンブラックが15重量部未満であれば、耐発音性の向上が顕著ではなく、55重量部を超えると、加工性が悪くなると共に充分な発音低減効果を奏することができなくなる。
ここで、NSA(窒素吸着比表面積)は、カーボンブラックの比表面積であって、JIS K 6217―2に従い測定される。またDBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)は、ストラクチャーの指標であって、JIS K 6217―4に従い測定される。
尚、(ロ)NSAが70m/g未満かつDBP吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを含有させることで、発音が抑制されるその理由は明らかではないが、損失正接tanδを制御することにより耐発音性を向上させることができると推察される。tanδの大小は、DBP吸油量とNSAの値に影響されるが、DBP吸油量のほうが影響力が強い。
圧縮部6を構成するゴム組成物のうち、ゴムは、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー、エチレン−α−オレフィンゴム等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。なかでもエチレン・α−オレフィンゴムが、優れた耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有しているとともに比較的に安価で、脱ハロゲンという要求を満たすことから好ましく用いられる。
エチレン・α−オレフィンゴムとしては、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなど)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレンゴム(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などのゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。EPDMは耐熱性や耐寒性に優れるという特性を有しており、耐熱・耐寒性能の高い動力伝動ベルトを得ることができる。このEPDMはヨウ素価が3〜40のものが好ましく用いられる。ヨウ素価が3未満であると、ゴム組成物の加硫が十分でなく摩耗や粘着の問題が発生し、またヨウ素価が40を超えると、ゴム組成物のスコーチが短くなって扱い難くなり、耐熱性が悪くなるものである。
上記ゴムの架橋には、硫黄や有機過酸化物が使用される。有機過酸化物としては具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1.1−t−ブチルペロキシ−3.3.5−トリメチルシクロヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン−3、ビス(t−ブチルペロキシジ−イソプロピル)ベンゼン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシベンゾアート、t−ブチルペロキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートが挙げられる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、ゴム100重量部に対して1〜8重量部の範囲で好ましく使用される。
また加硫促進剤を配合しても良い。加硫促進剤としてはチアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系の加硫促進剤が例示でき、チアゾール系加硫促進剤としては、具体的に2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等があり、チウラム系加硫促進剤としては、具体的にテトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィド等があり、またスルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的にN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等がある。また、他の加硫促進剤としては、ビスマレイミド、エチレンチオウレアなども使用できる。これら加硫促進剤は単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
また、架橋助剤(co−agent)を配合することによって、架橋度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。架橋助剤として挙げられるものとしては、TAIC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄など通常、有機過酸化物架橋に用いるものであるが、なかでもN−N’−m−フェニレンビスマレイミドが好ましい。その配合量はゴム成分100重量部に対して、0.5〜10重量部が望ましく、0.5重量部未満では添加による効果が顕著でなく、10重量部を超えると引裂き力や接着力が低下するといった不具合がある。
そして、上記カーボンブラック以外に必要に応じて、シリカのような増強剤、固体潤滑剤、充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合物に使用されるものを用いることができる。
また圧縮部6には、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミドなどからなる短繊維を混入して圧縮部6の耐側圧性を向上させるとともに、プーリと接する面になる圧縮部6の表面に該短繊維を突出させ、圧縮部の摩擦係数を低下させて、ベルト走行時の騒音を軽減させることができる。アラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつ、例えば商品名コーネックス、ノーメックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等が例示できる。
前記短繊維は、繊維長さは1〜20mmで、その添加量はゴム100重量部に対して5〜50重量部であることが望ましい。尚、短繊維の添加量が5重量部未満の場合には、圧縮部6のゴムが粘着しやすくなって摩耗する欠点があり、また一方50重量部を越えると、短繊維がゴム中に均一に分散し難い。
上記短繊維は圧縮部6のゴムとの接着を向上させるためにも、該短繊維をエポキシ化合物やイソシアネート化合物などを含有する処理液によって接着処理されることが好ましい。
接着部4は、圧縮部6と同様のゴム組成物を用いることもできるが、別のゴム組成物で構成してもよい。上述の如きゴム、配合剤を用いることができるが、接着性を考慮すると植物性軟質粒は混入しないほうが好ましい。
心線3は、ポリエステル繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などを材料とする撚コードが使用できる。ガラス繊維の組成は、Eガラス、Sガラス(高強度ガラス)のいずれでもよく、フィラメントの太さ及びフィラメントの集束本数及びストランド本数に制限されない。
前記心線3は接着処理を施されることが望ましく、例えば(1)未処理コードをエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200℃に温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260℃に温度設定した延伸熱固定処理器に30〜600秒間通し−1〜3%延伸して延伸処理コードとする、ことができる。
この前処理液で使用するイソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。このイソシアネート化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
また、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール.ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン.ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物などである。上記エポキシ化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
RFL処理液はレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物をゴムラテックスと混合したものであり、この場合レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は1:2〜2:1にすることが接着力を高める上で好適である。モル比が1/2未満では、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の三次元化反応が進み過ぎてゲル化し、一方2/1を超えると、逆にレゾルシンとホルムアルデヒドの反応があまり進まないため、接着力が低下する。またゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどがあげられる。
尚、レゾルシン−ホルムアルデヒドの初期縮合物と上記ゴムラテックスの固形分質量比は1:2〜1:8が好ましく、この範囲を維持すれば接着力を高める上で好適である。上記の比が1/2未満の場合には、レゾルシン−ホルムアルデヒドの樹脂分が多くなり、RFL皮膜が固くなり動的な接着が悪くなり、他方1/8を超えると、レゾルシン−ホルムアルデヒドの樹脂分が少なくなるため、RFL皮膜が柔らかくなり、接着力が低下する。
更に、上記RFL液には加硫促進剤や加硫剤を添加してもよく、添加する加硫促進剤は、含硫黄加硫促進剤であり、具体的には2−メルカプトベンゾチアゾール(M)やその塩類(例えば、亜鉛塩、ナトリウム塩、シクロヘキシルアミン塩等)ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)等のチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム類、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(TP)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)ジエチルジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)等のジチオカルバミン酸塩類等がある。
また、加硫剤としては、硫黄、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛)、過酸化物等があり、上記加硫促進剤と併用する。
上記心線3を用いたVリブドベルト1は、Vリブドベルトを2%伸張させるのに必要な引張力が100〜250N/リブ、更に好ましくは130〜210N/リブとすることが好ましく、このような引張力であると、たとえリブゴム磨耗等によりベルト伸びが発生した場合でも、急激な張力低下を引き起こすことなく、安定した張力が維持できる。250N/リブを超えるとベルト伸び時に急激な張力低下が見られ、100N/リブ未満であると心線伸びによるベルト張力低下が大きくなる。
またベルトに147N/5本コードの初荷重をかけ、100℃雰囲気下30分放置した後に発生したベルト乾熱時収縮力が50〜150N/5本コードである特性を付与すると、ベルト伸びが発生しても張力を自己調整可能であり、オートテンショナーを設置しなくともベルトスリップ率が小さくてベルト寿命が長いものを得ることができる。ベルト乾熱時収縮力が50N未満の場合には、ベルト張力を調整する性能に乏しく、スリップ率が高くなる傾向がある。また、ベルト乾熱時収縮力が150Nを越える場合には、ベルト長さの経時収縮が大きくなる傾向がある上に、スリップ率が小さくなる効果は小さい。
カバー帆布5は、織物、編物、不織布などから選択される繊維基材である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。織物の場合は、これらの糸を平織、綾織、朱子織等することにより製織される。
上記カバー帆布5は、公知技術に従ってRFL液に浸漬することが好ましい。またRFL液に浸漬後、未加硫ゴムをカバー帆布に擦り込むフリクションを行ったり、ゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理することができる。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量%加えてもよい。
尚、Vリブドベルトは、図1のような構成に限定されず、例えば接着部を配置しないVリブドベルトや、背面にカバー帆布を貼着せずゴムを露出させたVリブドベルトなども本発明の技術範囲に属する。以下、これらの実施形態を図面をもとに説明する。
図2に示すVリブドベルト21は、背面が短繊維を含有するゴム組成物で形成された伸張部25と、該伸張部25の下層に圧縮部26を配置した構成を有する。心線23は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張部25に接し、残部が圧縮部26に接した状態となっている。そして、前記圧縮部25にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられており、該リブ表面には短繊維が植毛されている。ここで、伸張部25に含有される短繊維はベルト幅方向に配向している。
図3に示すVリブドベルト31は、背面が短繊維を含有するゴム組成物で形成された伸張部35と、該伸張部35の下層に接着部34が配設され、更にその下層に圧縮部36を配置した構成を有する。心線33は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張部35に接し、残部が接着部34に接した状態となっている。そして前記圧縮部36はベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられており、この圧縮部36が該ゴム組成物で構成される。ここで、伸張部35に含有される短繊維はベルト幅方向に配向しており、また圧縮部36に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈し、表面近傍の短繊維はリブ形状に沿って配向している。
図2,3では、伸張部をカバー帆布で構成せず、短繊維を含有するゴム組成物で形成した構成を示したが、この際、背面駆動時の異音を抑制すべく、背表面に凹凸パターンを設けることができる。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターンなどを挙げることができるが、最も好ましくは織物パターンである。短繊維としては、ポリエステル、アラミド、ナイロン、綿などを所望に応じて配合することができ、好ましくはベルト幅方向に配向させることが望ましい。また背面を研磨面とすることもできる。そして伸張部や圧縮部や接着部を構成するゴム組成物、心線などは上述と同様のものが使用できる。
尚、図2のように接着部を配置しない構成の場合、心線23は伸張部25と圧縮部26の境界領域でベルト本体に埋設されることになる。この時、心線23とベルト本体との接着性を考慮すると、圧縮部は短繊維を含有しないゴム組成物で構成することが望ましい。また図3では圧縮部6に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈しているが、短繊維が幅方向に配向した構成としてもかまわない。
次に、これらVリブドベルトの製造方法を説明する。製造方法としては限定されるものではないが例えば以下のような方法がある。
第1の方法としては、まず、円筒状の成形ドラムの周面に伸張部を構成する部材と接着部を構成する接着ゴムシートとを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮部を構成する圧縮ゴムシートを順次巻き付けて未加硫スリーブを形成した後、加硫して加硫スリーブを得る。次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の該加硫スリーブに当接するように移動してスリーブの圧縮部表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨して摩擦伝動面を形成する。このようにして得られたスリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
第2の方法としては、周面にリブ刻印を設けた円筒状の成形ドラムに、圧縮部を構成する圧縮ゴムシート、接着部を構成する接着ゴムシートを巻き付けた後、心線をスピニングし、伸張部を構成する部材を巻き付けて未加硫スリーブを配置する。その後、該未加硫スリーブを成形ドラムに押圧しながら加硫することで、圧縮部にリブを型付けする。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
第3の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケットの上に伸張部を構成する部材、接着部を構成する接着ゴムシートを巻き、その上に心線をスピニングした後、さらに圧縮部を構成する圧縮ゴムシートを順次無端状に捲き付けて未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、未加硫スリーブをリブ部に対応した刻印を有する外型に押圧して加硫成形する。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
第4の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケットの上に圧縮部を構成する圧縮ゴムシートを配置した第1未加硫スリーブを形成した後、可撓性ジャケットを膨張させて、該第1未加硫スリーブをリブ部に対応した刻印を有する外型に押圧して、リブ部を有する予備成型体を作製する。そして、前記予備成型体を密着させた外型から、内型を離間させ、次いで、内型に伸張部を構成する部材、接着部を構成する接着ゴムシートを配置し、心線をスピニングして第2未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、前記予備成型体を密着させた外型に、該第2未加硫スリーブを内周側から押圧して予備成型体と一体的に加硫する。得られた加硫ベルトスリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
尚、図2のような接着部を配置しないVリブドベルトは、上記方法において接着ゴムシートを配置せずに製造することで得ることができる。更に図3のように圧縮部6に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈しているVリブドベルトは、例えば第2の方法、第3の方法、もしくは第4の方法で製造することで得られる。そして、圧縮部6に含有される短繊維が幅方向に配向したVリブドベルトは、例えば第1の方法で製造することで得られる。
以下、本発明を具体的な実施例を伴って説明する。
表1の配合に従いゴム組成物を調製し、カレンダーロールにて厚み1.0mmに圧延したゴムシートを作製した。このゴムシートを165°Cで30分間加硫し、得られた加硫ゴムの物性を測定した。JIS K6253に従い硬度(JIS−A)を、JIS K6251に従い切断時の伸びEB(%)を、100%伸張時の応力M100(MPa)を測定した。尚、表中のCMDとは列理直角を意味する。
次に、Vリブドベルトを作製した。本実施例のVリブドベルトの構成としては、ポリエステル繊維のロープからなる心線を接着部内に埋設し、その上側に伸張部としてゴム付綿帆布を2プライ積層し、他方接着部の下側に設けた圧縮部に3個のリブをベルト長手方向に配したものである。
Figure 2006183805
ベルトの製造方法としては、まずフラットな円筒モールドに2プライのゴム付綿帆布を巻き付けた後、接着部を構成する接着ゴムシートを巻き付けて心線をスピニングする。そして圧縮部を構成する圧縮ゴムシートを配置した後、該圧縮ゴムシートの上に加硫用ジャケットを挿入する。次いで、成形モールドを加硫缶内に入れ、加硫した後、筒状の加硫スリーブをモールドから取り出し、該スリーブの圧縮部をグラインダーによってリブに成形し、成形体から個々のベルトに切断する工程からなっている。
ここで圧縮ゴムシートとして、表1に示すゴム組成物から調製し、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延したものを用いた。接着ゴムシートは、表1に示すゴム組成物から短繊維を除くゴム配合で調製したゴム組成物を、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延したものである。
このようにして得られた各Vリブドベルトの耐熱屈曲性試験、6%スリップ磨耗試験、並びにミスアライメント発音試験の結果を表2に示す。
低張力高温耐久試験の評価に用いた走行試験機は、駆動プーリ(直径120mm)、アイドラープーリ(直径85mm)、従動プーリ(直径120mm)、テンションプーリ(直径45mm)、を順に配置したものである。試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、ベルトのアイドラープーリへの巻き付け角度を90°にし、雰囲気温度120°C、駆動プーリの回転数が4900rpm、ベルト張力が40kg/3リブになるように駆動プーリに荷重を付与して走行し、心線に達する亀裂が5ケになるまでの時間(500時間打切り)を調べた。
6%スリップ磨耗試験では、駆動プーリ(直径80mm)、従動プーリ(直径80mm)、そしてテンションプーリ(直径120mm)を配置したものである。試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、ベルトのテンションプーリへの巻き付け角度を90°とし、室温条件下で、駆動プーリの回転数を3000rpm、従動プーリのトルクを0.7kg・m、ベルトスリップ率が6%となるようベルト張力を自動調整しながら24時間走行させた。そして走行試験前後のベルト重量を測定し、ベルト重量減量(走行前ベルト重量−走行後ベルト重量)を走行前ベルト重量で除したものを、摩耗率として算出した。
ミスアライメント発音試験では、駆動プーリ(直径125mm)、従動プーリ(直径125mm)、そしてテンションプーリ(直径60mm)を配置したものである。尚、駆動プーリと従動プーリ間で1.76°のミスアライメントを設定した。試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、室温条件下で、駆動プーリの回転数が1000rpm、ベルト張力が6kgf/リブになるように駆動プーリに荷重を付与し、走行させた時の発音レベルを評価した。発音レベルとしては5段階で評価し、“5”が最も発音レベルが低く、全く音が聞こえない状態を示す。尚、“3”以上を発音が気にならないレベルとして定義した。
Figure 2006183805
表2の結果より、実施例では、耐久性、耐摩耗性及び耐発音性において優れた結果が得られた。一方、(イ)カーボンブラックのみを含有させた比較例1,5、及び(ロ)カーボンブラックが適量より少ない比較例4では、耐摩耗性、耐久性は高いものの、発音レベルが高く、発音抑制効果に乏しいことが確認された。他方、(ロ)カーボンブラックのみを含有させた比較例2,6、及び(イ)カーボンブラックが適量より少ない比較例3では、耐発音性には優れた結果を示すが、耐摩耗性に劣ることが知見された。
本発明にかかるVリブドベルトは自動車用あるいは一般産業用の駆動装置などに装着できる。
本発明の第1の実施形態であるVリブドベルトの断面斜視図である。 本発明の第2の実施形態であるVリブドベルトの断面図である。 本発明の第3の実施形態であるVリブドベルトの断面図である。
符号の説明
1 Vリブドベルト
2 伸張部
3 心線
4 接着部
5 カバー帆布
6 圧縮部

Claims (2)

  1. 伸張部とベルト周方向に延びるリブを形成した圧縮部を有し、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトであって、圧縮部が、ゴム100重量部に対して(イ)窒素吸着比表面積が70m/g以上かつジブチルフタレート吸油量が100cm/100g以上のカーボンブラックを20〜60重量部、(ロ)窒素吸着比表面積が70m/g未満かつジブチルフタレート吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを15〜55重量部の割合で含有するゴム組成物で構成されることを特徴とするVリブドベルト。
  2. ゴムがエチレン・α−オレフィンゴムである請求項1記載のVリブドベルト。
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