JP2015140350A - 消石灰組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】特に強度に優れた塗膜や像の形成に適しているばかりか、重ね塗りにも適した塗膜や像を形成させ得る消石灰を含む組成物を提供する。
【解決手段】本発明の消石灰組成物は、消石灰粒子を含み、該消石灰粒子は、レーザ回折散乱法で測定した体積基準の粒度分布において、粒子径0.1〜0.5μmの粒子および粒子径3.0〜20.0μmの粒子を含有し、全消石灰量を100体積%としたとき、粒子径0.1〜0.5μmの粒子の含有率が40〜70体積%であり、粒子径3.0〜20.0μmの粒子の含有率が20〜60体積%であり、且つ、粒子径0.1〜0.5μmの粒子と粒子径3.0〜20.0μmの粒子の合計量が60体積%以上であることを特徴とする。
【選択図】無し
【解決手段】本発明の消石灰組成物は、消石灰粒子を含み、該消石灰粒子は、レーザ回折散乱法で測定した体積基準の粒度分布において、粒子径0.1〜0.5μmの粒子および粒子径3.0〜20.0μmの粒子を含有し、全消石灰量を100体積%としたとき、粒子径0.1〜0.5μmの粒子の含有率が40〜70体積%であり、粒子径3.0〜20.0μmの粒子の含有率が20〜60体積%であり、且つ、粒子径0.1〜0.5μmの粒子と粒子径3.0〜20.0μmの粒子の合計量が60体積%以上であることを特徴とする。
【選択図】無し
Description
本発明は、所定の基材に塗布し、乾燥することにより塗膜や像を形成する塗布組成物として好適に使用される消石灰組成物に関する。
耐アルカリ性、耐洗浄性、調湿性、防カビ性などの特性に優れた塗膜を形成し得る塗料として、漆喰形成成分である消石灰(水酸化カルシウム)や酸化チタンなどの無機粒子を主成分として含有するものが知られている(特許文献1参照)。
また、紙、布および板等に描画し、乾燥した後に耐水性を有する水彩絵の具、ポスターカラー、水性塗料、水性インキなどに使用される塗布組成物としては、着色剤として顔料、定着剤としてアクリル酸エステル系エマルジョン、安定剤としてヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性樹脂などを水に溶解乃至分散させたものが知られている(特許文献2参照)。
特許文献1,2などで提案されている塗料等の塗布組成物においては、消石灰や顔料などの無機粒子が隠蔽力を示すため、耐アルカリ性等の優れた特性を示す塗膜を形成し得るのであるが、このような無機粒子単独ではバインダー機能が不十分であるため、ボイドなどの欠陥がない塗膜を形成するためにアクリル樹脂などの有機バインダーが多く配合されており、この結果、塗膜の強度、耐熱性、耐候性が低く、長期の安定性を欠くという欠点があった。このような問題は、当然、塗料のみならず、有機バインダーが配合されているインキや絵の具、ポスターカラー、ペイントマーカーなどの用途に使用されている塗布組成物においても同様である。
上記の問題が解決され、強度、耐熱性、耐候性などの特性に優れた塗膜や像を形成させ得る塗布組成物が、本出願人により特許文献3で提案されている。
特許文献3の塗布組成物は、粒径が1μm以下と超微細な消石灰(水酸化カルシウム)粒子を含んでおり、水酸化カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを生成するという漆喰の原理を利用して上記のような塗膜や像を形成させるというものである。即ち、このような超微細な水酸化カルシウム粒子は、炭酸ガスと反応し粒子同士が強固に且つ緻密に結合した炭酸カルシウムを生成する。このため、有機バインダーの量を少なくすることができ、これが強度や耐熱性、耐候性の向上をもたらしている。
特許文献3の塗布組成物は、粒径が1μm以下と超微細な消石灰(水酸化カルシウム)粒子を含んでおり、水酸化カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを生成するという漆喰の原理を利用して上記のような塗膜や像を形成させるというものである。即ち、このような超微細な水酸化カルシウム粒子は、炭酸ガスと反応し粒子同士が強固に且つ緻密に結合した炭酸カルシウムを生成する。このため、有機バインダーの量を少なくすることができ、これが強度や耐熱性、耐候性の向上をもたらしている。
しかしながら、本発明者等の実験によると、特許文献3のように超微細の水酸化カルシウムを含む塗布組成物は、重ね塗りに適していないことが判った。即ち、このような塗布組成物を塗布して塗膜や像を形成した後、この上に重ね塗りを行って塗膜や像を形成すると、重ね塗りによって形成された塗膜や像が剥がれやすいという問題を生じるのである。このような問題は、絵の具のように重ね塗りを頻繁に行う描画材の分野では、特に重要な解決課題となっている。
本発明の目的は、特に強度に優れた塗膜や像の形成に適しているばかりか、重ね塗りにも適した塗膜や像を形成させ得る消石灰を含む組成物を提供することにある。
本発明者等は、極めて微細な消石灰粒子と共に、それよりも粗大な消石灰粒子とを含む消石灰組成物は、これを塗布し、乾燥することにより、強度に優れた塗膜や像を形成できるばかり、かかる塗膜や像は、その上に重ね塗りされた場合においても、剥がれにくい塗膜や像を形成し得るという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、消石灰粒子を含み、該消石灰粒子は、レーザ回折散乱法で測定した体積基準の粒度分布において、粒子径0.1〜0.5μmの粒子および粒子径3.0〜20.0μmの粒子を含有し、全消石灰量を100体積%としたとき、粒子径0.1〜0.5μmの粒子の含有率が40〜70体積%であり、粒子径3.0〜20.0μmの粒子の含有率が20〜60体積%であり、且つ、粒子径0.1〜0.5μmの粒子と粒子径3.0〜20.0μmの粒子の合計量が60体積%以上であることを特徴とする消石灰組成物が提供される。
本発明の消石灰組成物においては、
(1)水性スラリーの形態を有しており、前記粒度分布を有する消石灰粒子が水に分散していること、
(2)さらに顔料を含み、塗膜または像の形成用塗布組成物として使用されること、
(3)前記顔料を、全消石灰量100質量部当り5〜200質量部の量で含んでいること、
(4)水彩絵の具として使用されること、
が好ましい。
(1)水性スラリーの形態を有しており、前記粒度分布を有する消石灰粒子が水に分散していること、
(2)さらに顔料を含み、塗膜または像の形成用塗布組成物として使用されること、
(3)前記顔料を、全消石灰量100質量部当り5〜200質量部の量で含んでいること、
(4)水彩絵の具として使用されること、
が好ましい。
本発明の消石灰組成物は、これを塗布し、乾燥することにより、強度に優れた塗膜や像を形成することができる。例えば、かかる塗膜或いは像は、大気との接触により水酸化カルシウムが炭酸化して炭酸カルシウムが形成されるため、高強度であり、耐スクラッチ性に優れ、さらには、耐アルカリ性にも優れている。このため、このような塗膜或いは像形成用の塗布組成物として好適に使用される。
また、本発明の消石灰組成物を用いて形成される塗膜や像は、この上に重ね塗りが行われてさらに塗膜や像が形成されたとき、重ね塗りにより形成された塗膜や像が剥がれにくいという特性を示す。このことから理解されるように、本発明の消石灰組成物は、頻繁に重ね塗りが行われる分野、具体的には絵の具などの描画材として好適に使用される。
また、本発明の消石灰組成物を用いて形成される塗膜や像は、この上に重ね塗りが行われてさらに塗膜や像が形成されたとき、重ね塗りにより形成された塗膜や像が剥がれにくいという特性を示す。このことから理解されるように、本発明の消石灰組成物は、頻繁に重ね塗りが行われる分野、具体的には絵の具などの描画材として好適に使用される。
<消石灰粒子>
本発明の消石灰組成物は、消石灰粒子を含むものであるが、この消石灰粒子は、通常2つの極大ピークを示す粒度分布を有する。即ち、レーザ回折散乱法で測定した粒度分布を示す図1を参照して、本発明で使用される消石灰粒子の粒度分布は、小径側の極大ピークXと大径側の極大ピークYとの2つの極大ピークを示す。この小径側の極大ピークXは、0.1〜0.5μmの超微細領域に存在し、一方、大径側の極大ピークYは、3.0〜20.0μmの粗大領域に存在している。このことから理解されるように、本発明において使用される消石灰粒子は、上記の極大ピークXを示す小径粒子群のものと、上記の極大ピークYを示す大径粒子群との集合体(即ち、混合物)であり、このような粒度分布を有する消石灰粒子の使用により、前述した強度や重ね塗り特性に優れた塗膜を形成することができる。
本発明の消石灰組成物は、消石灰粒子を含むものであるが、この消石灰粒子は、通常2つの極大ピークを示す粒度分布を有する。即ち、レーザ回折散乱法で測定した粒度分布を示す図1を参照して、本発明で使用される消石灰粒子の粒度分布は、小径側の極大ピークXと大径側の極大ピークYとの2つの極大ピークを示す。この小径側の極大ピークXは、0.1〜0.5μmの超微細領域に存在し、一方、大径側の極大ピークYは、3.0〜20.0μmの粗大領域に存在している。このことから理解されるように、本発明において使用される消石灰粒子は、上記の極大ピークXを示す小径粒子群のものと、上記の極大ピークYを示す大径粒子群との集合体(即ち、混合物)であり、このような粒度分布を有する消石灰粒子の使用により、前述した強度や重ね塗り特性に優れた塗膜を形成することができる。
即ち、消石灰(水酸化カルシウム)は、既に述べたように、大気中の炭酸ガスを吸収して炭酸カルシウム(即ち漆喰)を生成するという性質を有するものであり、前述した特許文献3では、粒子径が1μm以下超微細な消石灰粒子が使用されており、これは、本発明で使用される消石灰粒子中の小径粒子群に相当するものである。従って、本発明の消石灰組成物を塗布し、乾燥した時、特許文献3と同様、超微細な消石灰粒子が速やかに炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを形成する際に粒子同士が強固に結合するばかりか、他の無機顔料と併用された場合においても、消石灰の超微細粒子が他の無機顔料粒子の間の空隙に隙間なく入り込み、この状態で炭酸化が行われ、消石灰粒子同士が速やかに且つ強固に結合すると同時に無機顔料粒子を固定化することができる。即ち、この消石灰の超微細粒子(小径粒子群)は、優れたバインダー機能を示し、強度の高い塗膜や像の形成に寄与し、さらには、有機バインダーの使用量を少なくすることもでき、形成される塗膜の耐熱性や耐候性を向上させることが可能となる。
ところで、上記のような消石灰の超微細粒子(小径粒子群)のみを用いて形成される塗膜や像は、重ね塗り特性が不満足であり、形成された塗膜や像の上に重ね塗りによってさらに塗膜や像を形成した場合、重ね塗りにより形成された塗膜や像が剥がれ易くなってしまうという問題を本発明者等は発見した。本発明において使用される消石灰粒子は、上記の小径粒子群の超微細粒子と共に、大径粒子群の粗大粒子を含んでいるため、このような重ね塗り特性も有効に改善される。
このような大径粒子群の粗大粒子が小径粒子群の超微細粒子に加えられている消石灰粒子の使用により重ね塗り特性が改善される理由は、明確に解明されるには至っていないが、本発明者等は次のように推定している。
即ち、粒子径0.1〜0.5μmの粒子からなる超微細消石灰粒子(小径粒子群)のみを使用して塗膜や像を形成した場合、その塗膜や像の表面はかなり平滑で空隙が小さい表面を形成する。このため、他の塗布液等を用いて重ね塗りを行い、さらに塗膜や像を形成すると、重ね塗りにより形成された塗膜や像は、アンカー効果が期待できず、わずかな力を加えるだけでも剥がれ易くなってしまう。しかるに、本発明に従い、この超微細な消石灰粒子に、粒子径3.0〜20.0μmの粒子からなる粗大な消石灰粒子(大径粒子群)が加えられたものを用いた場合には、形成される塗膜や像の表面の平滑性が損なわれ、粗い面となると同時に大きな空隙も形成されることになる。この粗い面と大きな空隙がアンカー効果を発揮し、重ね塗りにより、この上に形成される塗膜や像を安定に保持することが可能となり、その剥がれが有効に阻止されるものと考えられる。
さらに、本発明における小径粒子群が乾燥後に速やかに炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを形成し、粒子同士が強固に結合する初期の塗膜強度を発現するのに対し、粗大な消石灰粒子は、乾燥とともに炭酸ガスとの反応が進行するのは同じであるが、粒子径が大きいため、その比表面積が小さく、炭酸化する反応速度はかなり遅い。そのため、形成された塗膜や像の上に重ね塗りすることによって、積層された塗膜や像を形成した場合、下層の塗膜や象の表面に大径粒子群が多数存在することになり、上層の塗膜や象が形成された際、下層と上層の界面に存在する粗大消石灰同士が、長時間かけて炭酸ガスと反応し、炭酸カルシウムを形成する際に強固な結合が発現する。その結果、上層と下層の塗膜や象の層間の剥がれを抑制する層間の強固な結合が形成されるものと考える。
即ち、粒子径0.1〜0.5μmの粒子からなる超微細消石灰粒子(小径粒子群)のみを使用して塗膜や像を形成した場合、その塗膜や像の表面はかなり平滑で空隙が小さい表面を形成する。このため、他の塗布液等を用いて重ね塗りを行い、さらに塗膜や像を形成すると、重ね塗りにより形成された塗膜や像は、アンカー効果が期待できず、わずかな力を加えるだけでも剥がれ易くなってしまう。しかるに、本発明に従い、この超微細な消石灰粒子に、粒子径3.0〜20.0μmの粒子からなる粗大な消石灰粒子(大径粒子群)が加えられたものを用いた場合には、形成される塗膜や像の表面の平滑性が損なわれ、粗い面となると同時に大きな空隙も形成されることになる。この粗い面と大きな空隙がアンカー効果を発揮し、重ね塗りにより、この上に形成される塗膜や像を安定に保持することが可能となり、その剥がれが有効に阻止されるものと考えられる。
さらに、本発明における小径粒子群が乾燥後に速やかに炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを形成し、粒子同士が強固に結合する初期の塗膜強度を発現するのに対し、粗大な消石灰粒子は、乾燥とともに炭酸ガスとの反応が進行するのは同じであるが、粒子径が大きいため、その比表面積が小さく、炭酸化する反応速度はかなり遅い。そのため、形成された塗膜や像の上に重ね塗りすることによって、積層された塗膜や像を形成した場合、下層の塗膜や象の表面に大径粒子群が多数存在することになり、上層の塗膜や象が形成された際、下層と上層の界面に存在する粗大消石灰同士が、長時間かけて炭酸ガスと反応し、炭酸カルシウムを形成する際に強固な結合が発現する。その結果、上層と下層の塗膜や象の層間の剥がれを抑制する層間の強固な結合が形成されるものと考える。
また、本発明において、全消石灰量を100体積%としたとき、0.1〜0.5μmの超微細領域の消石灰粒子(小径粒子群)の含有量は、40〜70体積%であり、3.0〜20.0μmの粗大な消石灰粒子(大径粒子群)の含有量は、20〜60体積%の範囲にあり、且つ、0.1〜0.5μmの領域の粒子と3.0〜20.0μmの領域の粒子の合計が60体積%以上であることが必要である。
超微細領域の消石灰粒子が40体積%未満であると、塗膜や象の形成の際、速やかに炭酸ガスと反応して形成される炭酸カルシウムの量が不十分になり、形成される塗膜や像の初期の強度が損なわれてしまう。また、超微細領域の消石灰粒子が70体積%より多い場合、あるいは、粗大な消石灰粒子が20体積%未満であると、形成される塗膜や象の表面が平滑となり且つ大きな空隙が形成されにくくなり、重ね塗りの際にアンカー効果が発揮されず、上層の塗膜の剥がれが起きてしまう。
さらに、超微細領域の消石灰粒子(小径粒子群)と粗大な消石灰粒子(大径粒子群)との合計が60体積%未満であると、得られる塗膜や象の強度が低下すると共に、アンカー効果に十分な空隙が形成されず、重ね塗りした場合に上層の塗膜の剥がれが起きてしまう。また、小径粒子群と大径粒子群との合計の上限は限定されるものではないが、あまりに多くしようとすると、消石灰粒子のふるい分けによるコストが嵩むため、95体積%以下が好ましく、90体積%以下がより好ましい。
超微細領域の消石灰粒子が40体積%未満であると、塗膜や象の形成の際、速やかに炭酸ガスと反応して形成される炭酸カルシウムの量が不十分になり、形成される塗膜や像の初期の強度が損なわれてしまう。また、超微細領域の消石灰粒子が70体積%より多い場合、あるいは、粗大な消石灰粒子が20体積%未満であると、形成される塗膜や象の表面が平滑となり且つ大きな空隙が形成されにくくなり、重ね塗りの際にアンカー効果が発揮されず、上層の塗膜の剥がれが起きてしまう。
さらに、超微細領域の消石灰粒子(小径粒子群)と粗大な消石灰粒子(大径粒子群)との合計が60体積%未満であると、得られる塗膜や象の強度が低下すると共に、アンカー効果に十分な空隙が形成されず、重ね塗りした場合に上層の塗膜の剥がれが起きてしまう。また、小径粒子群と大径粒子群との合計の上限は限定されるものではないが、あまりに多くしようとすると、消石灰粒子のふるい分けによるコストが嵩むため、95体積%以下が好ましく、90体積%以下がより好ましい。
上述した粒度分布を有する消石灰粒子は、それ自体公知の方法で製造される小径粒子群の超微細な消石灰粒子(即ち、極大ピークXの位置に体積換算でのメディアン径(D50)を有する粒子)と、やはり、それ自体公知の方法で製造される大径粒子群の粗大な消石灰粒子(即ち、極大ピークYの位置に体積換算でのメディアン径(D50)を有する粒子)とを、積算分率が前述した範囲となるような量比で混合することにより得られる。
例えば、消石灰粒子は、水酸化カルシウム或いは酸化カルシウム(生石灰)を水性媒体中で湿式粉砕することにより製造されるが、この場合、平均粒径が前述した超微細領域の範囲内となるまで湿式粉砕を行うことにより、小径粒子群の超微細な小石灰粒子が得られ、平均粒径が前述した粗大領域内となるまで湿式粉砕を行うことにより、大径粒子群の粗大な消石灰粒子を得ることができる。
湿式粉砕に供する水酸化カルシウムとしては、工業用消石灰、農業用消石灰、水酸化カルシウム試薬などを使用することができる。また、酸化カルシウムとしては、消化反応による凝集が少ないという観点から硬焼生石灰が好適である。これらの原料カルシウムの粒子径や粒度分布などは特に制限されず、例えば塊状物の形でも使用することができる。
湿式粉砕に用いる水性媒体としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、工業用水など、特に制限がなく、種々のものを使用することができる。また、水性媒体の量は、水性スラリー中の水酸化カルシウムと水との合計を100質量%とした際、水酸化カルシウムの濃度が20乃至70質量%、特に30乃至50質量%程度となる量とするのがよい。この固形分濃度が低いと、スラリーの固液分離傾向が著しくなってしまい、また、固形分濃度が高すぎると、粘性が高くなりすぎ、粉砕効率が低下してしまうからである。
湿式粉砕に用いる粉砕機としては、ボールミル、遊星ミル、攪拌槽型ミル、スラリー循環式ミル等の公知の湿式粉砕可能な粉砕機が使用される。
尚、湿式粉砕にあたって、超微細な消石灰粒子を得るためには、例えば特開2006−298732号公報に開示されているように、高分子分散剤を水性媒体中に添加しておくことが必要である。
即ち、高分子分散剤を用いずに湿式粉砕したときには、スラリー粘度が著しく向上してしまい、この結果、粉砕効率が低下してしまい、平均粒子径が6μm程度の粗大な消石灰粒子を得ることはできるとしても、超微細な消石灰粒子を得ることが極めて困難である。例えば、粒径が1μm以下の超微細な消石灰の粒子が得られたスラリー中に含まれていたとしても、その量は極めて微量であり、ほとんどが大径の粒子であり、分級を繰り返し行って、超微細な消石灰粒子を篩い分けたとしても、コストや時間がかかり、実際問題として、工業的に実施することができない。
即ち、高分子分散剤を用いずに湿式粉砕したときには、スラリー粘度が著しく向上してしまい、この結果、粉砕効率が低下してしまい、平均粒子径が6μm程度の粗大な消石灰粒子を得ることはできるとしても、超微細な消石灰粒子を得ることが極めて困難である。例えば、粒径が1μm以下の超微細な消石灰の粒子が得られたスラリー中に含まれていたとしても、その量は極めて微量であり、ほとんどが大径の粒子であり、分級を繰り返し行って、超微細な消石灰粒子を篩い分けたとしても、コストや時間がかかり、実際問題として、工業的に実施することができない。
また、上記の高分子分散剤としては、分子量が大きく、水酸化カルシウムを分散し得るものであれば特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。その代表的な例としては、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩等を挙げることができ、これらの中でもポリカルボン酸塩が好適である。
ポリカルボン酸塩としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体もしくはその部分エステルの塩(特開平1−92212号参照)、アリルエーテル−無水マレイン酸共重合体もしくはその誘導体の塩(特開昭63−285140号参照)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはその誘導体の塩(特開昭58−74552号、特開平1−226757号等参照)、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体もしくはその誘導体の塩(特開昭60−103062号参照)及びこれらのポリカルボン酸塩の側鎖にアルキレングリコール鎖がグラフト結合したもの(特開2007−332027号参照)などを例示することができる。また、塩の形態としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、低級アミン塩、低級アルカノールアミン塩などを例示することができる。本発明においては、これらポリカルボン酸類の中でもアルキレングリコール鎖を有するものが好適に使用され、さらに、その重量平均分子量は1000〜10万の範囲にあることが好適である。
また、上記の高分子分散剤は、湿式粉砕すべき消石灰(水酸化カルシウム)当り0.5重量%〜40重量%の量で使用することが好ましい。高分子分散剤の使用量が少なすぎると、超微細な領域まで粉砕することが困難となってしまい、高分子分散剤を必要以上に多量に使用すると、消石灰の水性スラリーの粘性が経時と共に大きく変化するようになり、物性が不安定となってしまうおそれがあるからである。
本発明において、用いる消石灰粒子は、上記のような湿式粉砕により得られる小径粒子群の超微細な消石灰粒子の水性スラリー(このスラリーには前述した高分子分散が含まれている)と、大径粒子群の粗大な消石灰粒子の水性スラリーとを混合することにより得られる。
この場合、超微細な消石灰粒子の水性スラリーと粗大な消石灰粒子の水性スラリーとを混合して得られる消石灰粒子の水性スラリーは、これを乾燥して水性媒体を除去し、粉末の形態で保存しておくこともできるが、一般的には、水性スラリーのまま保存し、消石灰組成物の用途に応じて、適宜の配合剤を混合して、販売及び使用に供することが好ましい。粉末の形態に保存しておくと、大気中の炭酸ガスを吸収して炭酸化を生じてしまい、炭酸化に伴う粒子同士の結合により、粒度分布が大きく変動してしまうからである。勿論、得られた粉末を窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中に保存しておけば、その炭酸化に伴う粒度分布の変動を回避することはできるが、コストの点で大きく不利となるばかりか、取り扱いも難しくなってしまう。
この場合、超微細な消石灰粒子の水性スラリーと粗大な消石灰粒子の水性スラリーとを混合して得られる消石灰粒子の水性スラリーは、これを乾燥して水性媒体を除去し、粉末の形態で保存しておくこともできるが、一般的には、水性スラリーのまま保存し、消石灰組成物の用途に応じて、適宜の配合剤を混合して、販売及び使用に供することが好ましい。粉末の形態に保存しておくと、大気中の炭酸ガスを吸収して炭酸化を生じてしまい、炭酸化に伴う粒子同士の結合により、粒度分布が大きく変動してしまうからである。勿論、得られた粉末を窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中に保存しておけば、その炭酸化に伴う粒度分布の変動を回避することはできるが、コストの点で大きく不利となるばかりか、取り扱いも難しくなってしまう。
<消石灰組成物>
上記の説明から理解されるように、本発明の消石灰組成物は、所定の粒度分布を有する消石灰粒子の水性スラリーに、必要に応じて、塗膜や像を形成するための塗布液に使用される公知の配合剤が添加され、販売及び使用に供されるものであり、従って、水性スラリーの形態を有しており、且つ用途に応じて、希釈或いは濃縮等により、塗膜の形成や像の形成に適正な粘度に調整される。
上記の説明から理解されるように、本発明の消石灰組成物は、所定の粒度分布を有する消石灰粒子の水性スラリーに、必要に応じて、塗膜や像を形成するための塗布液に使用される公知の配合剤が添加され、販売及び使用に供されるものであり、従って、水性スラリーの形態を有しており、且つ用途に応じて、希釈或いは濃縮等により、塗膜の形成や像の形成に適正な粘度に調整される。
上記のような配合剤としては、結着性を補足するための有機バインダー、無機顔料、乾燥調整剤(乾燥遅延剤)、凍結防止剤、消泡剤、レオロジー調整剤、界面活性剤、艶消し剤、無機細骨剤などが代表的である。
尚、上記の各種の配合剤を配合する場合において、前述した粒度分布を有する消石灰粒子の優れたバインダー機能(塗膜強度向上機能)や粗面化機能(重ね塗り改善機能)が損なわれないようにすることが必要であり、このため、当該スラリー形態の組成物中の消石灰粒子の固形分中での濃度(即ち、全消石灰量の固形分濃度)が、一般に、20質量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上に維持しておくことが望ましい。即ち、消石灰粒子の濃度がこの範囲内に維持されるように、各種配合剤の添加量が決定される。
尚、上記の各種の配合剤を配合する場合において、前述した粒度分布を有する消石灰粒子の優れたバインダー機能(塗膜強度向上機能)や粗面化機能(重ね塗り改善機能)が損なわれないようにすることが必要であり、このため、当該スラリー形態の組成物中の消石灰粒子の固形分中での濃度(即ち、全消石灰量の固形分濃度)が、一般に、20質量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上に維持しておくことが望ましい。即ち、消石灰粒子の濃度がこの範囲内に維持されるように、各種配合剤の添加量が決定される。
上記の配合剤において、有機バインダーは、上記の消石灰粒子(特に超微細な消石灰粒子)のバインダー機能を補足し、この消石灰粒子(及び後述する無機顔料粒子)により形成される塗膜や像を紙等の基材に強固に固定するために使用されるものである。このような有機バインダーとしては、水溶性樹脂や水性樹脂エマルジョンが使用される。
上記の水溶性樹脂としては、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビアゴム、フィッシュグリューなどの天然タンパク質やアルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、芳香族アミド、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、アクリル、ポリエステル、アルキド、ウレタン、アミド樹脂、メラミン樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等の合成高分子等の一般的なものが挙げられる。
また、水性樹脂エマルジョンとしては、水媒体中にモノマー、オリゴマーこれらの重合体等が分散したエマルジョンが特に制限なく使用できる。かかる水性エマルジョンを具体的に例示すると、アクリル樹脂系、酢酸ビニル系、ウレタン樹脂系、スチレン/ブタジエンゴム系等の合成高分子系エマルジョンを挙げることができる。
ところで、上記のような有機バインダーは、既に述べたように、塗膜の耐熱性や耐候性を低下させるため、その配合量は可及的に少ない方が好ましく、また、有機バインダーを多量に使用すると、塗膜や像の表面の平滑性が高められ、前述した消石灰の粗大粒子の粗面化により発現する重ね塗り特性が損なわれるおそれがある。このため、このような有機バインダーの使用量は、可及的に少なくし、例えば消石灰粒子(全消石灰量)100質量部当り、30質量部以下、特に10〜25質量部程度とすることが望ましい。
上記の有機バインダーは、通常、水溶液やエマルジョンの形で上述した水性スラリーと混合される。有機バインダーのエマルジョンや水性懸濁液は、乳化重合や懸濁重合によりバインダーとなる樹脂を製造することにより得られるものであってもよいし、予め製造された有機バインダーを、界面活性剤や分散剤と共に水と混合攪拌することによって得られたものでもよい。
無機顔料は、形成される塗膜や像の色相調整のために使用される。即ち、消石灰(水酸化カルシウム)や、これが炭酸化して生成する炭酸カルシウムは白色顔料或いは体質顔料として機能するものであるが、これらに他の無機顔料を配合することにより、白以外の色に色味を調整したり、白色度を強くすることができる。
このような無機顔料の粒径は、塗膜の緻密性を損なわないという観点から、一般に、レーザ回折散乱法で測定して、体積換算でのメディアン径(d50)が0.1乃至10.0μm程度の範囲にあるのがよく、特に20μm以上の粗大な粒子は含んでいないことが好ましい。
上記の無機顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、ハンザーイエローG、ハンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの黄色顔料や、その他の色の顔料、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラック、ベンジジンオレンジ、クロムバーミリオン、カドミウムオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ファーストオレンジレーキ、レーキレッドC、弁柄、ワッチングレッド、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、パーマネントレッド2B、パーマネントレッドFRLL、カーマインレーキ、キナクリドンレッド、メチルバイオレットレーキ、ファーストバイオレットB、キナクリドンバイオレット、インダスレンバイオレット、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、紺青、群青、コバルトブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニングリーン、マーカライトグリーンレーキ、ピグメントグリーンB、ビリジアン、シェンナー、アンバー、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末などに代表される各色の無機顔料を挙げることができる。
また、天然マイカの表面を金属酸化物で被覆したものや、合成マイカの表面を金属酸化物で被覆したパール顔料や、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の体質顔料なども使用することができる。
また、天然マイカの表面を金属酸化物で被覆したものや、合成マイカの表面を金属酸化物で被覆したパール顔料や、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の体質顔料なども使用することができる。
さらに、無機顔料の代わりに有機顔料も使用することができるが、有機顔料の使用は、形成される塗膜や像の耐熱性や耐候性を損なうことがあるため、本発明においては、有機顔料よりも無機顔料の使用が好適である。
また、前述した無機顔料の中でも黄色顔料を使用した場合には、特許文献3にも開示されているように、黄色の退色を抑制できるという利点がある。即ち、消石灰粒子の内の超微細な粒子が黄色顔料の表面に添着しての炭酸化により、黄色顔料の表面に炭酸カルシウムの保護膜が形成され、これにより、光による黄色顔料の劣化(黄色の退色)が有効に防止することができるわけである。
また、前述した無機顔料の中でも黄色顔料を使用した場合には、特許文献3にも開示されているように、黄色の退色を抑制できるという利点がある。即ち、消石灰粒子の内の超微細な粒子が黄色顔料の表面に添着しての炭酸化により、黄色顔料の表面に炭酸カルシウムの保護膜が形成され、これにより、光による黄色顔料の劣化(黄色の退色)が有効に防止することができるわけである。
上述した無機顔料は、通常、前述した粒度分布を有する消石灰粒子の固形分当りの濃度が前述した範囲内にあることを条件として、該消石灰粒子(全消石灰量)100質量部当り、5〜200質量部、特に20〜150質量部の量で使用される。
また、乾燥調整剤(乾燥遅延剤)や凍結防止剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、グリセリンなどのグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、トリエタノールアミンなどを単独或いは2種以上混合して使用することができる。これらは、通常、本発明の水性ペースト状の消石灰組成物中に0.5〜10重量%の量で添加される。
特に、重ね塗りや色の混合を行う用途(例えば水性絵の具等の描画材)の用途に本発明の組成物を使用する場合には、迅速な乾燥を抑制するように、乾燥調整剤を配合しておくことが望ましい。
特に、重ね塗りや色の混合を行う用途(例えば水性絵の具等の描画材)の用途に本発明の組成物を使用する場合には、迅速な乾燥を抑制するように、乾燥調整剤を配合しておくことが望ましい。
消泡剤としては、動植物油系、脂肪酸系、ノニオン系(特に、ポリエーテル系)、アセチレンジオール系、フッ素系、シリコーン系、鉱物油系、リン酸エステル系等などを単独或いは2種以上混合して使用することができ、脂肪酸系、ノニオン系(特に、ポリエーテル系)系が特に好ましい。その使用量は、消石灰組成物の固形分当たりの濃度として0.1〜5重量%が好ましい。
レオロジー調整剤としては、ベンナイト、メチルセルロース若しくはその誘導体、カゼイン若しくはその塩、カルボキシル系コポリマー、ヒドロキシル系コポリマーやポリアルキルアリルスルホン酸塩系、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系、芳香族アミノスルホン酸塩系のポリマーを主成分とするものであり、単独或いは2種以上混合して使用することができる。その使用量は、消石灰組成物の固形分当たりの濃度として0.2〜5.0重量%が好ましい。
界面活性剤は、この消石灰組成物中に適宜配合される添加剤や水酸化カルシウム微細粒子などを水に安定に均一分散させるために使用され且つ前述した高分子分散剤に比して分子量がかなり低いものであるが、このような界面活性剤は、水性のものであればよく、イオン性、両性及びノニオン性のいずれの界面活性剤も使用でき、これらの界面活性剤は、勿論、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもでき、良好な分散が確保されるように、適宜の量で使用される。
イオン性界面活性剤の例としては、以下のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が代表的である。
アニオン性界面活性剤;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム
ラウリル硫酸ナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル
カチオン性界面活性剤;
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド
トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド
アニオン性界面活性剤;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム
ラウリル硫酸ナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル
カチオン性界面活性剤;
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド
トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド
また、両性界面活性剤の代表例としては以下のものを挙げることができる。
両性界面活性剤;
ラウリルベタイン
ラウリルジメチルアミンオキサイド
両性界面活性剤;
ラウリルベタイン
ラウリルジメチルアミンオキサイド
さらに、ノニオン系界面活性剤の代表例としては、以下のものを例示することができる。
ノニオン系界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル
ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
ノニオン系界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル
ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
艶消し剤は、例えば、形成される塗膜や像表面の光沢をなくし、重厚な高級感を現出するもので、たとえば、シリカ、水性コロイダルシリカ、チタン酸カリウム、タルク、炭化水素系ワックス、シリカ系ワックス、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、アクリル系樹脂粉末、スチレン系樹脂粉末などが、1種単独或いは2種以上を組合せて使用される。その使用量は、消石灰組成物中の固形分当たりの濃度として2〜10重量%が好ましい。2重量%未満では塗膜のつや消しという本来の目的が充分達せられず、10重量%を超えると塗膜や像の強度、特に耐スクラッチ性が低下するおそれがある。
無機細骨材は、形成される塗膜や像に適度な強度を付与するために使用されるものであり、珪砂、寒水砂、マイカ、施釉珪砂、施釉マイカ、セラミックサンド、ガラスビーズ、パーライト、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどが使用される。これらの一部は体質顔料としても使用されるものではあるが、無機細骨材としては、一般に、レーザ回折散乱法で測定して、体積換算でのメディアン径(d50)が0.1乃至100μm程度の範囲内にある粒状物が使用される。但し、体積換算でのメディアン径(d50)が200μm以上の無機細骨材は、前述した超微細な消石灰粒子によるバインダー機能等を損なう可能性があるため、その使用量は可及的に少ない方がよく、最も好適には、使用しない方がよい。
本発明の消石灰組成物においては、上記のような配合剤以外にも、例えば増粘剤、可塑剤、抗菌剤、紫外線吸収剤などを、本発明の利点が損なわれない程度の量で適宜配合することができる。また、前述した乾燥調整剤(乾燥遅延剤)とは逆に、消石灰組成物を塗布したときの乾燥性を高めるために、水溶性の有機溶剤を配合することもでき、特にこのような水溶性有機溶媒は、本発明の消石灰組成物をインキとして使用する場合に、特に効果的である。
このような水溶性有機溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒が好適であり、これらは、水との混合溶媒の形で使用することもできる。このような水溶性有機溶媒を使用する場合には、一般に全溶媒中の水分濃度が85乃至98質量%程度に維持されるような量とするのがよい。
このような水溶性有機溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒が好適であり、これらは、水との混合溶媒の形で使用することもできる。このような水溶性有機溶媒を使用する場合には、一般に全溶媒中の水分濃度が85乃至98質量%程度に維持されるような量とするのがよい。
さらに、上述した各種の配合剤を配合する場合には、これを均一に分散させるために、適宜、水で希釈し或いは濃縮することにより、水性スラリーの形態の消石灰組成物の粘度を適宜の範囲に調整することもできる。また、各種の配合剤を、超微細な消石灰粒子の水性スラリーと粗大な消石灰粒子の水性スラリーとを混合する際に同時に混合することも可能である。
かくして種々の配合剤が適宜配合された本発明の消石灰組成物は、これに含まれる超微細な消石灰粒子がバインダーとしての機能を有しているため、それ自体で塗布組成物として使用することができ、例えば、適宜配合される配合剤の種類に応じて、水性塗料、水性インキ、絵の具、ペイントマーカーなどとして、刷毛塗り、ディッピング、スプレーコート、スクリーン印刷、プリンタなどの機器を用いての印刷、筆記具を用いての描画などによって紙等の基体上に塗布され、さらに空気乾燥、加熱乾燥などによって塗膜或いは像を形成する用途に使用される。
このようにして形成される塗膜や像においては、大気との接触により水酸化カルシウムが炭酸化して炭酸カルシウムが形成されるため、高強度であり、例えば耐スクラッチ性に優れ、さらには、耐アルカリ性にも優れている。特に、有機バインダーの配合量をゼロ或いは前述した範囲の少量とすることにより、この塗膜乃至像は、耐熱性や耐候性に優れ、長期間にわたって膜劣化が生じることなく、安定した特性を維持することができる。
このようにして形成される塗膜や像においては、大気との接触により水酸化カルシウムが炭酸化して炭酸カルシウムが形成されるため、高強度であり、例えば耐スクラッチ性に優れ、さらには、耐アルカリ性にも優れている。特に、有機バインダーの配合量をゼロ或いは前述した範囲の少量とすることにより、この塗膜乃至像は、耐熱性や耐候性に優れ、長期間にわたって膜劣化が生じることなく、安定した特性を維持することができる。
また、本発明の消石灰組成物を各種の用途に使用する場合には、消石灰粒子の炭酸化を防止するために、通常、タンクやチューブなどの密閉された容器等に保存しておくことが望ましい。
本発明の消石灰組成物により形成される塗膜や像は、超微細な消石灰粒子と共に粗大な消石灰粒子を所定の量比で含んでいるため、重ね塗り特性に優れ、重ね塗りによってこの上に塗膜や像を形成した場合において、重ね塗りにより形成された塗膜や像の剥がれが有効に防止される。このため、本発明の消石灰組成物は、適宜の色の無機顔料を配合して、チューブ等に充填し、絵の具(特に水性絵の具)等の重ね塗りが頻繁に行われる描画材として好適に使用される。しかも、このような描画材として使用したとき、粗大な消石灰粒子による表面粗面化によって立体感のある像を形成できるという利点もある。さらに、このような描画材は、超微細な消石灰粒子によるバインダー効果により、凹凸のある壁面などにもしっかりと固着した像を形成することができ、フレスコ画などの壁画の修復にも好適に利用される。
さらに、上述した本発明の消石灰組成物は、その用途に応じて、適宜の塗布性を確保するために、水性媒体の希釈や濃縮によって適宜の粘度に調整しておくことが望ましく、水性絵の具やペイントマーカーなどとして使用される場合には、筆記可能な粘度、例えば、その粘度(25℃)は500〜50000mPa・s等の範囲に調整される。
本発明の優れた効果を次の実験例で説明する。
なお、以下に、実験例で用いた各試験方法および材料を示す。
(1)付着性の評価方法
各実施例及び比較例に示す条件で形成された塗膜及びその塗膜上に重ねて形成された塗膜について、JIS K 5600−5−6(クロスカット法)の規定に従ってそれらの付着性を評価した。
分類0:どの格子の目にも剥がれがない
分類1:カットの交点における塗膜の小さな剥がれ(5%以内)
分類2:塗膜がカットの線に沿って交差点において剥がれる(5%以上15%未満)
分類3:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的に剥がれる(15%以上35%未満)
分類4:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的に剥がれる(35%以上65%未満)
分類5:分類4以上の剥がれを生じる(65%以上)
(2)メディアン径(D50)の測定方法
分散媒体としてエタノールを使用し、レーザ回折式粒度分析計を用いて消石灰の体積基準の粒度分布を測定し、測定結果から体積平均粒子径を算出し、これをメディアン径(D50)とした。また、測定結果から、所定粒径範囲の割合を求め、体積%とした。
(3)大径消石灰A
工業用高純度消石灰、宇部マテリアルズ(株)製、品名:CH−2N
(4)大径消石灰B
JIS特号消石灰、薬仙石灰(株)製
(5)工業用消石灰A
工業用消石灰、JIS特号、メディアン径(D50):32.1μm
(6)アクリルエマルジョンA
旭化成工業製アクリル系共重合体ラテックス(固形分濃度:40重量%)
(7)高分子分散剤A
ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(溶液状、固形分濃度:30%)
(8)顔料A
ホルベイン製カドミウムレッド(セレン化カドミウム)
メディアン径(D50):2.2μm
(1)付着性の評価方法
各実施例及び比較例に示す条件で形成された塗膜及びその塗膜上に重ねて形成された塗膜について、JIS K 5600−5−6(クロスカット法)の規定に従ってそれらの付着性を評価した。
分類0:どの格子の目にも剥がれがない
分類1:カットの交点における塗膜の小さな剥がれ(5%以内)
分類2:塗膜がカットの線に沿って交差点において剥がれる(5%以上15%未満)
分類3:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的に剥がれる(15%以上35%未満)
分類4:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的に剥がれる(35%以上65%未満)
分類5:分類4以上の剥がれを生じる(65%以上)
(2)メディアン径(D50)の測定方法
分散媒体としてエタノールを使用し、レーザ回折式粒度分析計を用いて消石灰の体積基準の粒度分布を測定し、測定結果から体積平均粒子径を算出し、これをメディアン径(D50)とした。また、測定結果から、所定粒径範囲の割合を求め、体積%とした。
(3)大径消石灰A
工業用高純度消石灰、宇部マテリアルズ(株)製、品名:CH−2N
(4)大径消石灰B
JIS特号消石灰、薬仙石灰(株)製
(5)工業用消石灰A
工業用消石灰、JIS特号、メディアン径(D50):32.1μm
(6)アクリルエマルジョンA
旭化成工業製アクリル系共重合体ラテックス(固形分濃度:40重量%)
(7)高分子分散剤A
ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(溶液状、固形分濃度:30%)
(8)顔料A
ホルベイン製カドミウムレッド(セレン化カドミウム)
メディアン径(D50):2.2μm
<実施例1〜11>
遊星ミルにより、消石灰を粉砕し小径消石灰スラリーを製造した。消石灰として工業用消石灰Aを、分散剤として高分子分散剤Aを、水はイオン交換水を使用した。消石灰の固形分濃度は40重量%となるように調整した。高分子分散剤Aは、消石灰固形分に対し、3.0重量%になるように添加した。粉砕時間を40、70、120分間として遊星ミルにて粉砕した後、表1に示す小径消石灰(超微細消石灰)α〜γを得た。
遊星ミルにより、消石灰を粉砕し小径消石灰スラリーを製造した。消石灰として工業用消石灰Aを、分散剤として高分子分散剤Aを、水はイオン交換水を使用した。消石灰の固形分濃度は40重量%となるように調整した。高分子分散剤Aは、消石灰固形分に対し、3.0重量%になるように添加した。粉砕時間を40、70、120分間として遊星ミルにて粉砕した後、表1に示す小径消石灰(超微細消石灰)α〜γを得た。
次に、レーザ回折式粒度分析計を用いて大径消石灰(粗大消石灰)A,Bの体積基準の粒度分布を測定し、メディアン径(D50)と、3.0〜20.0μmの粒径領域における積算分率3〜20μmの積算分率を求めた。その結果を表2に示す。
続いて、表3に示す積算分率になるように、表1に示した小径消石灰α〜γと、表2に示した粒大径消石灰A、Bを所定量混合し、実施例1〜11に示す消石灰組成物を調製した。
尚、実施例2,3及び4で調製された消石灰組成物に含まれる消石灰粒子の粒度分布を、図1、図2及び図3に示した。
尚、実施例2,3及び4で調製された消石灰組成物に含まれる消石灰粒子の粒度分布を、図1、図2及び図3に示した。
30cm×30cmの石膏ボード(チヨダウーテ製JIS規格品、GB−R、厚さ9.5mm)の表に、表3に示す消石灰組成物(水性)を刷毛で15cm×15cmの範囲に塗工した。その後、50℃の恒温乾燥器中で30分間乾燥させて、固形分で厚さ0.15mmの塗膜を形成させた。
このときの塗膜の付着性を評価し、その結果を表4に示す。
次に、上記のごとく形成された15cm×15cmの塗膜の上に、同組成の消石灰組成物(水性)を刷毛で塗工した。その後、50℃の恒温乾燥器中で30分間乾燥させて、固形分で厚さ0.15mmの塗膜を積層させた。このときの上層の塗膜の付着性を評価した。その結果を表4に示す。
また、このようにして二層の塗膜が形成された石膏ボードを、炭酸ガス濃度5%、湿度50%RH、温度20℃の恒温恒湿室に1ヶ月間置き、塗膜中に存在する水酸化カルシウムを炭酸化した後、上層の塗膜の付着性を評価した。その結果を表4に示す。
このときの塗膜の付着性を評価し、その結果を表4に示す。
次に、上記のごとく形成された15cm×15cmの塗膜の上に、同組成の消石灰組成物(水性)を刷毛で塗工した。その後、50℃の恒温乾燥器中で30分間乾燥させて、固形分で厚さ0.15mmの塗膜を積層させた。このときの上層の塗膜の付着性を評価した。その結果を表4に示す。
また、このようにして二層の塗膜が形成された石膏ボードを、炭酸ガス濃度5%、湿度50%RH、温度20℃の恒温恒湿室に1ヶ月間置き、塗膜中に存在する水酸化カルシウムを炭酸化した後、上層の塗膜の付着性を評価した。その結果を表4に示す。
<比較例1〜4>
表1に示した小径消石灰α、βまたは表2に示した大径消石灰A、Bを用い、比較例1〜4に示す消石灰組成物の水性スラリーを調製した。その粒度分布等を表5に示す。
表1に示した小径消石灰α、βまたは表2に示した大径消石灰A、Bを用い、比較例1〜4に示す消石灰組成物の水性スラリーを調製した。その粒度分布等を表5に示す。
表5に示された消石灰組成物(水性)を用い、実施例1〜11と同様の操作を行い、石膏ボードの表に固形分で厚さ0.15mmの塗膜を形成させた。このときの塗膜の付着性を評価し、その結果を表6に示す。
さらに、上記のごとく形成された15cm×15cmの塗膜の上に、実施例1〜11と同様の操作を行い、同組成の消石灰組成物の固形分での厚さが0.15mmの塗膜を積層させた。このときの上層の塗膜の付着性を評価し、その結果を表6に示す。
また、このようにして二層の塗膜が形成された石膏ボードを、炭酸ガス濃度5%、湿度50%RH、温度20℃の恒温恒湿室に1ヶ月間置き、塗膜中に存在する水酸化カルシウムを炭酸化した後、上層の塗膜の付着性を評価した。その結果を表6に示す。
さらに、上記のごとく形成された15cm×15cmの塗膜の上に、実施例1〜11と同様の操作を行い、同組成の消石灰組成物の固形分での厚さが0.15mmの塗膜を積層させた。このときの上層の塗膜の付着性を評価し、その結果を表6に示す。
また、このようにして二層の塗膜が形成された石膏ボードを、炭酸ガス濃度5%、湿度50%RH、温度20℃の恒温恒湿室に1ヶ月間置き、塗膜中に存在する水酸化カルシウムを炭酸化した後、上層の塗膜の付着性を評価した。その結果を表6に示す。
Claims (5)
- 消石灰粒子を含み、該消石灰粒子は、レーザ回折散乱法で測定した体積基準の粒度分布において、粒子径0.1〜0.5μmの粒子および粒子径3.0〜20.0μmの粒子を含有し、全消石灰量を100体積%としたとき、粒子径0.1〜0.5μmの粒子の含有率が40〜70体積%であり、粒子径3.0〜20.0μmの粒子の含有率が20〜60体積%であり、且つ、粒子径0.1〜0.5μmの粒子と粒子径3.0〜20.0μmの粒子の合計量が60体積%以上であることを特徴とする消石灰組成物。
- 水性スラリーの形態を有しており、前記粒度分布を有する消石灰粒子が水に分散している請求項1に記載の消石灰組成物。
- さらに顔料を含み、塗膜または像の形成用塗布組成物として使用される請求項1または2に記載の消石灰組成物。
- 前記顔料を、全消石灰量100質量部当り5〜200質量部の量で含んでいる請求項3に記載の消石灰組成物。
- 水彩絵の具として使用される請求項3または4に記載の消石灰組成物。
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