以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。図1乃至図7は、本発明の第1の実施の形態及びその変形例を説明するための図である。このうち、図1は、本発明の第1の実施の形態によるパウチの一例を示す平面図である。
図1に示すパウチ1は、重ねられた積層フィルム10をヒートシールすることにより製袋される平パウチ形式のものである。図1に示すように、パウチ1は、互いに対向して配置された表積層フィルム11aと裏積層フィルム11bとからなる一対の積層フィルム10を含んでおり、重ね合せられた一対の積層フィルム10の縁部12近傍が互いにヒートシールされている。図1に示すパウチ1において、重ね合せられた一対の積層フィルム10の縁部12によって、パウチ1の外縁5が規定されている。
(積層フィルム)
図2は、図1に示すパウチ1をなす積層フィルム10の積層方向に沿った断面であって、積層フィルム10の層構成を説明するための図である。上述のように、パウチ1は、一対の積層フィルム10をヒートシールすることによって製袋される。このため、積層フィルム10には、袋内方側となる部分にシール性を有するシーラントフィルム38が設けられている。また、電子レンジ用のパウチ1は、輸送時等に他のパウチの角等から受ける突き刺し、パウチに伝わる衝撃あるいは当該衝撃に伴う屈曲に対して充分な耐性を必要とされる。この点、パウチ1をなす積層フィルム10は、耐突き刺し性、耐衝撃性及び耐屈曲性をもつポリアミド系樹脂層33を含んだ多層共押フィルム31を備えている。そして、電子レンジでの加熱により内容物から伝わる熱がポリアミド系樹脂層33に伝わることを抑制するために、多層共押出しフィルム31のポリアミド系樹脂層33よりも袋内方となる側にポリエステル系樹脂フィルム36が設けられている。さらに、ここで説明するパウチ1は、食品を内容物として内包することに適したパウチ1である。この点、パウチ1を構成する積層フィルム10は、水蒸気の透過を防止する蒸気バリア性及び酸素ガス等のガスの透過を防止するガスバリア性を確保すべく、バリア層37を備えている。このような層構成を持つ積層フィルム10は、製袋してパウチ1とするときの袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、多層共押出しフィルム31とバリア層37とポリエステル系樹脂フィルム36とシーラントフィルム38とをこの順で含んでいる。以下、各層について詳述していく。
(多層共押出しフィルム)
上述したように、多層共押出しフィルム31は、耐突き刺し性、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れたポリアミド系樹脂層33を含んでいる。多層共押出しフィルム31がポリアミド系樹脂層33を含むことにより、輸送時等に受ける突き刺し、パウチ1に伝わる衝撃あるいはこれに伴う屈曲を多層共押出しフィルム31によって吸収することができ、これにより、突き刺し、衝撃あるいは屈曲に起因したパウチ1へのピンホールの発生を効果的に防止することができる。
また、電子レンジ用のパウチ1には、熱に対する耐性も必要とされる。このため、多層共押出しフィルム31は、耐熱性をもつ第1ポリエステル系樹脂層32を、ポリアミド系樹脂層33よりも袋外方となる側に含んでいる。
ところで、ポリアミド系樹脂層33は、吸湿し易くこれによりカールする場合がある。一方、第1ポリエステル系樹脂層32は、吸湿を妨げる機能をある程度もつ。したがって、袋外方となる側に配置された第1ポリエステル系樹脂層32により、袋外方からポリアミド系樹脂層33に向かう蒸気を妨げることもできる。
好ましくは、多層共押出しフィルム31は、ポリアミド系樹脂層33よりも袋内方となる側に、第2ポリエステル系樹脂層34をさらに含む。このような形態によれば、袋内方となる側に配置された第2ポリエステル系樹脂層34により、袋内方からポリアミド系樹脂層33に向かう蒸気も妨げることもできる。加えて、多層共押出しフィルム31がポリアミド系樹脂層33を基準にして概ね対称となる。そして、ポリアミド系樹脂層33が第1ポリエステル系樹脂層32と第2ポリエステル系樹脂層34との間でバランスよく保持されることにより、ポリアミド系樹脂層33のカールを更に効果的に抑制することができる。
また、好ましくは、多層共押出しフィルム31は、二軸延伸処理される。これにより、多層共押出しフィルム31に含まれるポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂をなす分子が、延伸処理によって延伸方向に並び、多層共押出しフィルム31が優れた寸法安定性を発揮するようになる。多層共押出しフィルム31が優れた寸法安定性を発揮することにより、吸湿によるポリアミド系樹脂層33の寸法変化が生じ難くなる。また、二軸延伸処理によって、多層共押出しフィルム31に易開封性を付与することができる。
なお、本実施の形態では、多層共押出しフィルム31は、積層フィルム10のうち、製袋してパウチ1とするときの最も袋外方となる層としても機能する。
以下、多層共押出しフィルム31の各層の構成について詳述する。なお、以下の説明では、第1ポリエステル系樹脂層32及び第2ポリエステル系樹脂層34を単にポリエステル系樹脂層32、34と略記することがある。
(1)ポリエステル系樹脂層
ポリエステル系樹脂層32、34は、多層共押出しフィルム31に寸法安定性、耐熱性等の機能を付与するものである。特に寸法安定性が付与されることで、湿潤時のガスバリア性の低下を抑制することができる。
ポリエステル系樹脂層32、34は、いずれも結晶性ポリエステルを主成分として含有するのが好ましい。結晶性ポリエステルは、多層共押出しフィルム31に寸法安定性、耐熱性等の機能を付与することに大きく寄与する。結晶性ポリエステルとして、例えば、ジカルボン酸とジオールとを重縮合させることにより得られる樹脂等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステルや、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、3−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸ジアルキル、2−スルホイソフタル酸ジアルキル、4−スルホイソフタル酸ジアルキル、3−スルホイソフタル酸ジアルキル及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のスルホン基含有ジカルボン酸等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン等のアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類、1,3−ジヒドロキシブタンスルホン酸、1,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸等のスルホン基含有ジオール等が挙げられる。
この中でも特に、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレート(PET);ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(99〜80モル%)及びイソフタル酸(1〜20モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート;ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分が1,4−ブタンジオールであるポリブチレンテレフタレート(PBT);ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(99.5〜90モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(0.5〜10モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート等が寸法安定性、耐熱性等の点から好適であり、より好ましくはテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(PET)である。
このような結晶性ポリエステルは商業的に入手可能であり、例えば、ベルペット−EFG6C、ベルペットPIFG5(いずれも(株)ベルポリエステルプロダクツ製)等をポリエステル系樹脂層32、34を構成する結晶性ポリエステルとして用いることができる。
なお、ポリエステル系樹脂層32、34に用いられる結晶性ポリエステルは1種のみでも良いし、必要に応じ2種以上をブレンドして用いてもよい。
また、ポリエステル系樹脂層32、34は、必要に応じ結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂を含有していても良いが、ポリエステル系樹脂層32、34を構成する成分の総重量に対する結晶性ポリエステルの含有量は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂としては非晶性ポリエステル等が例示できる。非晶性ポリエステルとはJIS−K7121に基づく示差走査熱量測定において融解熱量が観察されないポリエステルである。このような特性を有するポリエステルであれば特に限定されないが、具体例として、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコール(20〜80モル%)及びシクロヘキサンジメタノール(80〜20モル%)であるポリエステル;ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(20〜80モル%)及びイソフタル酸(80〜20モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステルが好適である。このような非晶性ポリエステルは商業的に入手可能であり、例えば、Eastar Copolyester 6763(イーストマンケミカル製)等を非晶性ポリエステルとして用いることができる。
また、後述するバリア層37の効果を損なわない範囲で必要に応じて、ポリエステル系樹脂層32、34に公知の無機又は有機添加剤等を適宜配合することができる。無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、染料等を適宜配合することができる。
(2)ポリアミド系樹脂層
ポリアミド系樹脂層33は、多層共押出しフィルム31に耐屈曲性、耐衝撃性等の機能を付与するものである。特に耐屈曲性が付与されることで、屈曲後のガスバリア性の低下を抑制することができる。
ポリアミド系樹脂層33は、脂肪族ポリアミドを70〜99重量%、芳香族ポリアミドを1〜30重量%含有する。
(2−1)脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。具体的には、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等を例示でき、これらのうち、2種以上の脂肪族ポリアミドを混合しても良い。
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン-6,6、ナイロン−6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6との共重合体)が挙げられ、より好ましくはナイロン−6、ナイロン−6/6,6であり、更に好ましくはナイロン−6である。2種以上の脂肪族ポリアミドとしてはナイロン−6とナイロン−6/6,6の組み合わせ(重量比で50:50〜95:5程度)が好ましい。
(2−2)芳香族ポリアミド
芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD−ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S−6007、S−6011(いずれも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
或いは、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。好ましくはヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体等である。具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル(株)製)等が例示される。
ポリアミド系樹脂層33として、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの好ましい組み合わせは、ナイロン−6とMXD−ナイロンの組み合わせ、ナイロン−6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)の組み合わせが挙げられる。
(2−3)含有量
多層共押出しフィルム31におけるポリアミド系樹脂層33では、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドの含有量は、脂肪族ポリアミドが70〜99重量%、好ましくは85〜97重量%、芳香族ポリアミドが1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%の割合で含有されるように調整する。脂肪族ポリアミドが99重量%より多い場合、芳香族ポリアミドが1重量%より少ない場合には、二軸延伸性が低下し、フィルムの成形が困難となる。一方、脂肪族ポリアミドが70重量%より少ない場合、芳香族ポリアミドが30重量%より多い場合には、耐屈曲性が低下する。
ポリアミド系樹脂層33は、上記ポリアミド系樹脂からなるものであってもよいが、バリア層37の効果を損なわない範囲で必要に応じて、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を配合することができる。耐屈曲性改良剤としては、ポリオレフィン類、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられ、0.5〜10重量%程度の範囲で適宜配合することができる。無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。例えば、アンチブロッキング剤であれば、シリカ、タルク、カオリン等を100〜5000ppm程度の範囲で適宜配合することができる。なお、第2ポリエステル系樹脂層34を1層のみではなく、2層以上設けることも可能である。
(3)接着層
上記のポリエステル系樹脂層32、34とポリアミド系樹脂層33との層間強度を向上させる目的で、接着層が形成されていてもよい。接着層を介在させることにより、両者の接着後の層間強度を飛躍的に向上させることができる。接着層としては特に限定されず、例えば不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂を用いることができる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン、変性スチレン系エラストマー等が挙げられる。
変性ポリオレフィンは、公知の製法で得られ、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとをラジカル発生剤の存在下で加熱混合して得られる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。
ポリオレフィンとしては、オレフィン類の単独重合体、相互共重合体、他の共重合可能なモノマー(例えば、他のビニル系モノマー)との共重合体を例示できる。具体的には、例えば、ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン)等)、ポリプロピレン、ポリブテン、これらの相互共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を例示できる。
変性ポリオレフィンとして、好ましくは無水マレイン酸変性ポリオレフィンである。具体的には、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(例えば、三井化学(株)製のアドマーSF731、SE800等や、三菱化学(株)製のモディック等)が例示される。
変性スチレン系エラストマーは、公知の製法で得られ、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体とスチレン系エラストマーとをラジカル重合剤の存在下で加熱混合して得られる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物やスチレン−イソプレン共重合体の水素添加物等を例示できる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。
変性スチレン系エラストマーとして、好ましくは無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物である。具体的には、無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物(例えば、クレイトンポリマー製のクレイトンFG1901や旭化成ケミカルズ(株)製のタフテックM1913等)が例示できる。
(5)層構成
本実施の形態による多層共押出しフィルム31は、第1ポリエステル系樹脂層32、ポリアミド系樹脂層33及び第2ポリエステル系樹脂層34の3層をこの順に有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムである。ここで、ポリエステル系樹脂層32、34は、2層のみではなく、3層以上設けることも可能である。また、ポリアミド系樹脂層33は、1層のみではなく、2層以上設けることも可能である。なお、複数あるポリエステル系樹脂層32、34は、使用する樹脂や厚みは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、ポリアミド系樹脂層33が複数ある場合も同様に、使用する樹脂や厚みは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、その他にも、接着層やガスバリアフィルム、シール層等を必要に応じて設けることもできる。
ポリエステル系樹脂層32、34をA層、ポリアミド系樹脂層33をB層、接着層をD層、と表記すると、具体的な層構成として、(A)層/(B)層/(A)層、(A)層/(A)層/(B)層/(A)層、(A)層/(A)層/(B)層/(A)層/(A)層、(A)層/(B)層/(A)層/(A)層、(A)層/(A)層/(B)層/(B)層/(A)層/(A)層、(A)層/(D)層/(B)層/(D)層/(A)層、(A)層/(B)層/(B)層/(A)層、(A)層/(B)層/(A)層等が挙げられる。
以上のような層構成を有する多層共押出しフィルム31の総膜厚は、用途にあわせて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常10〜50μm程度、好ましくは12〜25μm程度である。
また、各層の膜厚は、通常、ポリエステル系樹脂層32、34は1〜20μm程度、好ましくは1〜15μm程度である。ポリエステル系樹脂層32、34の厚みが1μm以上であることによって、寸法安定性、耐熱性等の優れた機能が多層共押出しフィルム31に付与され得る。また、20μm以下であることにより、耐屈曲性の優れたフィルムを得ることができる。なお、ポリエステル系樹脂層32、34が複数の層からなる場合には、ポリエステル系樹脂層32、34の厚みは、複数のポリエステル系樹脂層32、34の総厚みである。
ポリアミド系樹脂層33の厚みは5〜49μm程度、好ましくは8〜23μm程度である。ポリアミド系樹脂層33の厚みが5μm以上であることによって、耐屈曲性、耐衝撃性等の優れた機能が付与され、49μm以下であれば充分な衝撃強度を付与しつつ、製品コストを抑えることができる。なお、ポリアミド系樹脂層33を複数形成する場合には、ポリアミド系樹脂層33の厚みは、複数のポリアミド系樹脂層33の総厚みである。
とりわけ、多層共押出しフィルム31が材料費を抑えた上で効率良く耐屈曲性及び耐衝撃性を発揮するためには、多層共押出しフィルム31に占めるポリアミド系樹脂層33の厚みの割合は、51%以上であることが好ましい。この場合、多層共押出しフィルム31の厚みが10μm以上であると、多層共押出しフィルム31中のポリアミド系樹脂層33の厚みが5μm以上となり、多層共押出しフィルム31が充分な耐屈曲性及び耐衝撃性を発揮することができる。また、多層共押出しフィルム31の厚みが10μm以上であると、多層共押出しフィルム31が基材としての安定性を発揮し、他のフィルムとラミネートする際の加工性を向上させることができる。
なお、接着層を設ける場合には、接着層の厚みは0.5〜5μm程度、好ましくは0.5〜2.5μm程度である。接着層の厚みが0.5μm以上であれば膜厚のコントロールがしやすく、5μm以下であれば充分な接着強度を付与しつつ、生産コストを抑えることができる。
このような多層共押出しフィルム31は、第1ポリエステル系樹脂層32をなすようになるポリエステル系樹脂と、ポリアミド系樹脂層33をなすようになるポリアミド系樹脂と、第2ポリエステル系樹脂層34をなすようになるポリエステル系樹脂と、を共押し出し成形することにより成膜することができる。
また、図1に示すように、本実施の形態では、多層共押出しフィルム31の袋内方側となる面に、絵柄を含む絵柄層35が積層されている。ここで、絵柄とは、多層共押出しフィルム31に記録または印刷され得る種々の態様の記録対象のことであり、特に限定されることなく、図、文字、模様、パターン、記号、柄、マーク等を広く含む。とりわけ、食品を内包することが意図されたパウチ1に用いられる積層フィルム10では、絵柄として、内容物の図や、内容物の商品名、賞味期限、製造日、製造番号等の情報を示す文字が用いられる。もっとも、絵柄層35は、商品の仕様に応じて多層共押出しフィルム31に積層されるものであり、多層共押出しフィルム31に絵柄層35が設けられなくてもよい。
本実施の形態では、絵柄層35は、袋外方側となる多層共押出しフィルム31の外面ではなく、多層共押出しフィルム31の内面に施される。この場合、絵柄層35は、耐摩耗性に優れることから擦れ等による消失を効果的に防止することができ、且つ、絵柄の改ざんも効果的に防止することができる。また、製袋してパウチ1としたときに、多層共押出しフィルム31の内面に積層された絵柄層35を多層共押出しフィルム31を介して視認し得るよう、多層共押出しフィルム31は透明性を有していることが好ましい。
(ポリエステル系樹脂フィルム)
ところで、本件発明者らは、従来の第1ポリエステル系樹脂層とポリアミド系樹脂層とシーラントフィルムとからなる積層フィルムにおいて、ポリアミド系樹脂層が溶け出す要因について調査した。この結果、従来の積層フィルムにおいて、収容空間に収容された内容物がシーラントフィルムに染み出すことが、ポリアミド系樹脂層の溶け出しに強く影響していることを突き止めた。シーラントフィルムに内容物が染み出すと、加熱によりシーラントフィルムに染み出した内容物も高温となる。このため、シーラントフィルムに積層されたポリアミド系樹脂層に過度に熱が伝わり、当該ポリアミド系樹脂層を溶け出させていたと考えられる。そこで、本件発明者らは、多層共押出しフィルム31とシーラントフィルム38との間にポリエステル系樹脂フィルム36を配置する、という構成に想到した。ポリエステル系樹脂フィルム36は、熱に対する優れた耐性を発揮するだけでなく、内容物の染み出しも防止することができる。したがって、このような形態によれば、収容空間2に収容された内容物は、ポリエステル系樹脂フィルム36までは染み出さない。このため、パウチ1を電子レンジ内で加熱しても、高温となった内容物の熱は、耐熱性に優れるポリエステル系樹脂フィルム36に伝わってからポリアミド系樹脂層33に伝わる。この結果、内容物から伝わる熱をポリエステル系樹脂フィルム36によって妨げ、当該内容物からの熱がポリアミド系樹脂層33に過度に伝わることを妨げることができる。
とりわけ、加熱時に内容物からの熱がポリアミド系樹脂層33に過度に伝わることを充分に妨げる観点から、ポリエステル系樹脂フィルム36の厚みは、7μm以上であることが好ましい。本実施の形態では、ポリエステル系樹脂フィルム36の厚みは、多層共押出しフィルム31に含まれる第1ポリエステル系樹脂層32及び第2ポリエステル系樹脂層34の総厚みよりも厚い。
なお、ポリエステル系樹脂フィルム36の成分は、上述した多層共押出しフィルム31のポリエステル系樹脂層と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
(バリア層)
次に、バリア層37について説明する。上述したように、パウチ1は、食品を内容物として内包することに適したパウチである。このため、内容物の酸化等の変質を防止しながら内容物を保存することができるように、バリア層37は、水蒸気の透過を防止する蒸気バリア性及び酸素ガス等のガスの透過を防止するガスバリア性を有している。バリア層37は、上記の機能を満たす層であれば特に限定されない。本実施の形態では、バリア層37は、ポリエステル系樹脂フィルム36に無機物を蒸着させて形成した蒸着膜からなる。バリア層37が蒸着膜からなる場合、優れたガスバリア性及び蒸気バリア性をパウチ1をなす積層フィルム10に付与することができる。また、蒸着膜は金属箔を含まないため、パウチ1を焼却処分する際に、焼却炉にパウチ1に含まれる金属箔が残渣として残ってしまう、ということも起こり得ない。
ポリエステル系樹脂フィルム36に無機物を蒸着させる方法として、減圧下において蒸発させた無機物をポリエステル系樹脂フィルム36に蒸着させる真空蒸着法(PVD法)や、減圧下において無機物を含む蒸着用ガスにプラズマを照射して当該無機物をポリエステル系樹脂フィルム36に蒸着させるプラズマ化学気相成長法(CVD法)が挙げられる。蒸着させる無機物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物を用いることができる。
なお、図2に示す例では、バリア層37をポリエステル系樹脂フィルム36に積層させた例を示したが、このような例に限定されない。バリア層37を多層共押出しフィルム31の容器内方となる側に積層させてもよい。
(シーラント層)
シーラントフィルム38は、上述したように、2つの積層フィルム10同士を重ね合わせて対向する縁部12をヒートシールすることで、当該縁部12を貼り合わせて密封するために設けられている。また、本実施の形態では、シーラントフィルム38は、積層フィルム10のうち、製袋してパウチ1とするときの最も袋内方となる側に配置される。
このようなシーラントフィルム38としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂からなる耐熱性のあるフィルム及びイージーピールフィルムなどが採用できる。更に、これらの材料からなるフィルムによって単層としてシーラントフィルム38が構成されてもよいし、あるいは、複数の前記材料からなるフィルムによって多層としてシーラントフィルム38が構成されてもよい。
とりわけ、パウチ1が電子レンジでの加熱により高温となる食品、例えば油を多く含むカレーやパスタソースを収容する場合には、シーラントフィルム38として、耐熱性に優れた、無延伸ポリプロピレン(CPP)を主として含む無延伸ポリプロピレン層(CPP層)、または、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主として含む直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)を採用することが好ましい。
シーラントフィルム38の厚みは、40μm以上200μm以下の範囲にあるのが好ましい。この場合、パウチ1の流通過程において生じ得る落下に対する耐衝撃強度に優れると共に、内容物の充填し易さ、内容物の詰替え易さといった取扱性にも優れる。
(接合層)
図2に示すように、本実施の形態では、多層共押出しフィルム31とポリエステル系樹脂フィルム36との間、及び、ポリエステル系樹脂フィルム36とシーラントフィルム38との間に接合層39が介在されている。この接合層39としては、例えばそれ自体既知のドライラミネート法にて一般に用いられる接着剤を用いることができ、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤等を用いることができる。
(シール領域)
図1に示すように、パウチ1は、重ねられた積層フィルム10の縁部12近傍をヒートシールすることにより形成されたシール領域40を備えている。シール領域40は、内容物を収容する収容空間2を密閉する機能を有している。図1に示すように、シール領域40の外縁40aは、重ねられた一対の積層フィルム10の縁部12に沿って周状に延びている。一方、シール領域40の内縁40bは、外縁40aに対して間隔を空けながら当該外縁40aに沿って周状に延びている。
図1に示すように、本実施の形態のシール領域40は、一対の積層フィルム10の上縁13近傍をヒートシールした上部シール領域41と、一対の積層フィルム10の側縁14近傍をヒートシールした側部シール領域42と、一対の積層フィルム10の下縁15近傍をヒートシールした下部シール領域43と、を含んでいる。
(蒸気抜き機構)
また、パウチ1は、加熱時に収容空間2内の蒸気を逃がすための蒸気抜き機構6を備えている。図1に示すように、蒸気抜き機構6は、一対の積層フィルム10によって取り囲まれる空間内に位置し、内容物を収容しない通気室7と、通気室7を取り囲んで当該通気室7を収容空間2から隔離させるポイントシール部50と、通気室7を形成する各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に形成された蒸気抜き手段80と、を含んでいる。
このうち、ポイントシール部50は、重ねられた積層フィルム10をヒートシールすることにより形成されている。ポイントシール部50は、加熱に伴って収容空間2内の圧力が高まると剥がれて、収容空間2と通気室7とを連通させるよう構成されている。図3に、ポイントシール部50を拡大して示す。図3に示すように、ポイントシール部50は、シール領域40に囲まれる領域内に位置している。ポイントシール部50の外縁50a及び内縁50bは、互いに対して間隔を空けながら、各角を面取りした矩形の輪郭に沿って周状に延びている。なお、本明細書において、ポイントシール部50の巾とは、内縁50bと外縁50aとの間の間隔をいう。
本実施の形態では、ポイントシール部50は、互いに対向するポイント上部51及びポイント下部53と、ポイント上部51及びポイント下部53の間を延びる一対のポイント側部52と、を含んでいる。一対のポイント側部52は、互いに対して間隔を空けながら互いに対向している。各ポイント側部52は、ポイント上部51の対応する側の端部とポイント下部53の対応する側の端部との間を延びている。本実施の形態では、ポイントシール部50のポイント側部52は、シール領域40の側部シール領域42と平行になっている。さらに、ポイントシール部50のポイント上部51は、シール領域40の上部シール領域41と平行になっており、ポイントシール部50のポイント下部53は、シール領域40の下部シール領域43と平行になっている。ただし、ポイント上部51、ポイント側部52及びポイント下部53は、対応する上部シール領域41、側部シール領域42及び下部シール領域43と非平行であってもよい。
図3に示すように、本実施の形態では、ポイントシール部50は、シール領域40と繋がっている。具体的には、ポイントシール部50の一のポイント側部52が、シール領域40の一の側部シール領域42に線状に接するようにして、ポイントシール部50とシール領域40とが繋がっている。また、ポイントシール部50の他のポイント側部52が側部シール領域42から最も離間し、ポイントシール部50はシール領域40から収容空間2側に向かって張り出した形状になっている。ただし、ポイントシール部50は、シール領域40と繋がっていなくてもよく、シール領域40から離間していてもよい。
ところで、シール領域40及びポイントシール部50は、同一のヒートシール条件下でヒートシールされた場合、シール領域40及びポイントシール部50内の任意の一地点における接合力は、シール領域40またはポイントシール部50内の他の一地点の接合力と等しくなる。このため、加熱に伴って収容空間2内の圧力が高まったときのシール領域40及びポイントシール部50における剥離のし易さは、シール領域40及びポイントシール部50の位置や形状等に起因して誘引される応力集中、並びに、シール領域40及びポイントシール部50の巾に大きく依存する。
この点、本実施の形態では、図3に示すように、ポイントシール部50の巾W1は、シール領域40の巾W2よりも狭くなっている。従って、シール領域40及びポイントシール部50内の各地点での接合力が等しい場合、シール領域40よりもポイントシール部50において剥離し易くなる。とりわけ、ポイントシール部50は、シール領域40から収容空間2側に向かって張り出していることから、シール領域40よりもポイントシール部50において一層剥離し易くなる。さらに、ポイントシール部50のうち、収容空間2の中央に近い部分ほど加熱時に高圧の蒸気の負荷を受け易い点を考慮すると、図示する例では、ポイント側部52とポイント下部53との接続位置周辺から剥離し易い。
また、本実施の形態のポイントシール部50での一対の積層フィルム10内のシール強さは、100°で35N/15mm以下になっている。この場合、電子レンジによる加熱に伴って収容空間2内の圧力が高まった際に、ポイントシール部50から剥離を確実に開始することができる。なお、ここでいうシール強さとは、JISZ0238に準拠して計測されたシール強さの値(N/15mm)をいう。なお、試料片の巾を15mm確保することができない場合には、15mmよりも小さい巾の試料片を採取してシール強さの計測を行い、得られた値に(15mm/試料片の巾mm)を掛けた値を、シール強さの値(N/15mm)として採用する。
次に、ポイントシール部50によって取り囲まれて収容空間2から隔離された通気室7について説明する。通気室7は、加熱に伴って収容空間2内の圧力が高まった際に収容空間2と連通して収容空間2内の蒸気を外部へ逃がすためのものである。通気室7は、パウチ1をなす一対の積層フィルム10の、ポイントシール部50に囲まれる部分16によって画定されている。
図示する例では、通気室7は、平面視において、各角を面取りした矩形の形状の輪郭を有している。なお、本明細書において、「平面視」とは、パウチ1をなす積層フィルム10を全体的かつ大局的に見た場合において当該積層フィルム10の平面方向に対する法線方向から視ることをいう。なお、図示する例では、平面視において、通気室7が、各角を面取りした矩形の形状の輪郭をもつ例を示したが、各角を面取りした多角形、円形、楕円形の形状の輪郭を有してもよい。
さらに、図3に示すように、通気室7を形成する各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に、蒸気抜き手段80が形成されている。蒸気抜き手段80が設けられていることにより、電子レンジによる加熱に伴って発生する蒸気によって収容空間2内の圧力が高まった際に、収容空間2内の蒸気を外部へ逃がすことができる。本実施の形態の蒸気抜き手段80は、通気室7を形成する各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に形成された蒸気抜き孔81からなる。本実施の形態では、平面視において、各積層フィルム10に形成された蒸気抜き孔81が互いに重なっている。言い換えると、表積層フィルム11aに形成された蒸気抜き孔81と、裏積層フィルム11bに形成された蒸気抜き孔81とが、互いに重なっている。
また、図1に示すように、シール領域40の側部シール領域42に、開封の際の起点となり得るノッチ8が形成されている。図示する例では、ポイントシール部50に対して上縁13側となる側部シール領域42の部分に、ノッチ8が形成されている。
なお、各部の寸法について一例を示すと、ポイントシール部50の巾W1は、例えば2.5〜5mm程度に設定され、シール領域40の巾W2は、例えば4〜12mm程度に設定される。また、蒸気抜き孔81の径は、例えば5〜7mm程度に設定され、一対のポイント側部52の間隔となる通気室7の長さL2は、例えば10mm〜16mm程度に設定され、ポイント上部51とポイント下部53との間隔となる通気室7の長さL3は、例えば15mm〜30mm程度に設定される。
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
パウチ1を電子レンジ内に設置して温めると、電子レンジから照射される高周波によって内容物に含まれる水分が温められて蒸発し、パウチ内の圧力が高まっていく。上述のように、ポイントシール部50は、シール領域40から収容空間2側に向かって張り出し、且つ、シール領域40よりも巾が狭くなっている。従って、収容空間2内の圧力が高まると、ポイントシール部50から一対の積層フィルム10の剥離が開始される。ポイントシール部50からの剥離が進行しパウチ1内の収容空間2が通気室7に通じると、収容空間2から通気室7に高圧の蒸気が流入する。通気室7に流入した高圧の蒸気は、蒸気抜き手段80としての蒸気抜き孔81から外部へ逃げていく。
電子レンジ内での加熱を終えると、積層フィルム10のうち通気室7を形成する部分のように蒸気に触れた部分は熱くなっている。一方、積層フィルム10に形成されたシール領域40は、蒸気に触れ難いため熱くなり難い。このため、シール領域40の側部シール領域42を指で摘まんで、当該側部シール領域42に設けられたノッチ8からパウチ1を開封する。これにより、過度な熱さを感じることなく、収容空間2に収容された内容物を取り出すことができる。
以上のように、本実施の形態によれば、パウチ1をなす積層フィルム10の多層共押出しフィルム31がポリアミド系樹脂層33を含むため、輸送時等に他のパウチの角から受ける突き刺し、パウチ1に伝わる衝撃あるいは当該衝撃に伴う屈曲に対して充分な耐性を発揮することができる。これにより、突き刺し、衝撃あるいは屈曲に起因したパウチ1へのピンホールの発生を効果的に防止することができる。また、積層フィルム10は、多層共押出しフィルム31のポリアミド系樹脂層33とシーラントフィルム38との間にポリエステル系樹脂フィルム36を含むため、当該ポリエステル系樹脂フィルム36が、積層フィルム10に耐熱性を付与する。このため、電子レンジでの加熱により内容物から伝わる熱をポリエステル系樹脂フィルム36によって妨げ、ポリアミド系樹脂層33に熱を伝わり難くすることができる。この結果、パウチ1が加熱時に高温となる食品を収容する場合であっても、加熱によりポリアミド系樹脂層33が溶け出してしまうことを防止することができる。加えて、多層共押出しフィルム31をなす第1ポリエステル系樹脂層32とポリアミド系樹脂層33とは、共押し出しにて成形されている。このため、パウチ1をなす積層フィルム10を作製するためにラミネートすべきフィルムの数を低減することができる。このため、ラミネート回数を低く抑えることができ、市場において競争力のある価格でパウチ1を提供することができる。
また、本実施の形態によれば、積層フィルム10は、多層共押出しフィルム31とシーラントフィルム38との間に配置されたバリア層37をさらに含む。このような形態によれば、バリア層37が、優れた蒸気バリア性及びガスバリア性を発揮し、内容物の酸化等の変質を防止しながら内容物を保存することができる。とりわけ、本実施の形態のバリア層37は、無機物を含む蒸着膜からなる。蒸着膜は金属箔を含まないため、使用済みのパウチ1を焼却処分することができる。また、空港等のセキュリティゲートを通過する際に、セキュリティゲートの金属探知機がパウチ1の金属箔を検知してしまう、ということも起こり得ない。
また、本実施の形態によれば、通気室7を形成する各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分に蒸気抜き手段80が形成されている。このような形態によれば、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に、収容空間2から通気室7に流入する高圧の蒸気を、蒸気抜き手段80を介して外部に逃がすことができる。
また、本実施の形態によれば、平面視において、各積層フィルム10に形成された蒸気抜き孔81が互いに重なっている。このため、積層フィルム10の法線方向から孔空け工具を当該積層フィルム10に当てることにより、一対の積層フィルム10に蒸気抜き孔81を同時に形成することができ、蒸気抜き孔81の加工効率を向上させることができる。
≪第1の実施の形態の変形例≫
なお、上述した第1の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
上述した第1の実施の形態では、図2に示すように、多層共押出しフィルム31は、第1ポリエステル系樹脂層32とポリアミド系樹脂層33と第2ポリエステル系樹脂層34とを含む例を示したが、多層共押出しフィルム31の層構成は、上述した層構成に限定されない。多層共押出しフィルム31は、図4に示すように、第1ポリエステル系樹脂層32及びポリアミド系樹脂層33のみからなってもよい。このような形態によれば、積層フィルム10に耐熱性、耐突き刺し性、耐衝撃性及び耐屈曲性を付与しつつ、積層フィルム10を安価に作製することができる。
また、上述した第1の実施の形態では、パウチ1が、一対の表積層フィルム11aと裏積層フィルム11bとからなる平パウチ形式のパウチからなる例を示したが、パウチの形態は、このような例に限定されない。パウチは、スタンディング形式のパウチであってもよいし、三方シール形式、ピロー形式、あるいは、ガセット形式のパウチであってもよい。
また、上述した第1の実施の形態では、具体的に言及されていないが、蒸気抜き孔81が内容物よりも高い位置に位置するように専用のカートンに収容された状態で、電子レンジ内で加熱されるタイプになっている。しかしながら、このような例に限定されず、電子レンジ内で水平に載置された状態で加熱されるタイプのものであってもよい。図5乃至図7に、電子レンジ内で水平に載置した状態で加熱されるタイプのパウチ1を示す。図5乃至図7に示す例では、蒸気抜き手段80が、通気室7を形成する各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に形成された切込線82からなる。ここでいう切込線82とは、積層フィルム10を線状に切り裂いた際に形成される線状の跡をいう。切込線82が設けられていることにより、電子レンジによる加熱に伴って発生する蒸気によって収容空間2内の圧力が高まった際に、収容空間2内の蒸気を外部へ逃がすことができる。
ここで、水平に載置された状態で加熱されるタイプのパウチ1と、専用のカートンに収容された状態で加熱されるタイプのパウチ1と、を比較して、その相違について検討する。図3に示すような専用のカートンに収容された状態で加熱されるタイプのパウチ1では、ポイントシール部50に囲まれた部分に蒸気抜き孔81を確実に形成するために、ある程度の大きさの蒸気抜き孔81を形成する必要がある。このため、通気室7と外気との間で流体の移動は自由に行われる。
図3に示すパウチ1を電子レンジ内で水平に載置した状態で加熱すると、パウチ1内の蒸気と共に内容物が蒸気抜き孔81から吹き出してしまう場合がある。本件発明者らが調査したところ、加熱に伴って収容空間2内の圧力が高まると、ポイントシール部50が剥がれて、収容空間2がポイントシール部50に囲まれた通気室7に通じる。このとき、収容空間2内の高圧の蒸気が勢いよく通気室7内の蒸気抜き孔81に向かって流れることにより、当該蒸気と共に内容物が吹き出してしまうことが知見された。すなわち、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際における、収容空間2と外気との間の圧力差が内容物の吹き出しに大きく影響していることが知見された。
さらに図3に示すパウチ1の加熱を行うと、ポイントシール部50の大部分が剥がれて収容空間2と通気室7との間の境界がほとんどなくなる。そして、収容空間2内の蒸気は、通気室7内の蒸気抜き孔81から外部へ逃げ、収容空間2内の圧力は低減する。しかしながら、通気室7内の蒸気抜き孔81は、製造の制約上ある程度の大きさを必要とすることから、通気室7まで到達した内容物が蒸気抜き孔81から少しずつ漏れ出していく。このことにより、収容空間2が通気室7に通じた後においては、蒸気抜き孔81の大きさが、内容物の漏れに大きく影響していることが知見された。
そこで、このような知見に基づいて水平に載置された状態で加熱されるタイプのパウチ1の開発を試みたところ、各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に切込線82を形成する、という構成に想到するに至った。切込線82は、通気室7を画定する積層フィルム10を線状に切り裂いた跡であるため、図3に示す蒸気抜き孔81に比べて流体を通過させ難い。このため、通気室7と外気との間での流体の移動は、自由に行われず制限を受ける。つまり、通気室7内の流体は、積層フィルム10に形成された切込線82を介して外部に徐々に逃げるようになる。この形態によれば、加熱に伴って収容空間2内の圧力が高まると、ポイントシール部50が剥がれて、収容空間2がポイントシール部50に囲まれた通気室7に通じる。このとき、収容空間2から通気室7に高圧の蒸気が流入するが、この高圧の蒸気は、切込線82を介して外部に徐々にしか漏れ出さない。したがって、収容空間2から通気室7に流入する高圧の蒸気は、通気室7内に一時的に蓄えられることとなり、高圧の蒸気が勢いよく切込線82から吹き出すことを効果的に抑制することができる。切込線82からの蒸気の吹き出しを抑制したのに伴い、内容物が収容空間2から通気室7に勢いよく流れて切込線82から吹き出すことも回避される。以上の結果、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に、通気室7を画定する積層フィルム10に形成された切込線82から高圧の蒸気に合わせて内容物が勢いよく吹き出してしまうことを効果的に抑制することができる。
さらに加熱を行うと、ポイントシール部50の大部分が剥がれて収容空間2と通気室7との間の境界がほとんどなくなる。そして、収容空間2内の蒸気は、切込線82から外部へ逃げ、収容空間2内の圧力は低減する。上述のように、切込線82は、図3に示す蒸気抜き孔81に比べて流体を通過させ難くなっているため、収容空間2が通気室7に通じた後に内容物が通気室7に到達したとしても切込線82から漏れ出し難い。この結果、収容空間2が通気室7に通じた後において、切込線82から内容物が漏れ出すことを効果的に抑制することができる。
さらに、本件発明者らが、収容空間2と外気との間の圧力差による内容物の吹き出しと、切込線82の大きさによる内容物の漏れと、を効果的に抑制するべく鋭意研究を重ねたところ、切込線82の延長方向d1を、シール領域40のうちの当該切込線82が最も近接する部分42aの延長方向d2、言い換えると、シール領域40のうちの当該切込線82が最も近接する部分42aの延びる方向、と交差させると、これらの課題を有効に解決し得ることを見出した。加熱によってパウチ1が膨張することに伴い、パウチ1をなす積層フィルム10は、ヒートシールされたシール領域40のうちの互いに対向する部分を結ぶ方向に主として延びる。具体的には、パウチ1をなす積層フィルム10は、互いに対向する上部シール領域41と下部シール領域43とを結ぶ方向、及び、互いに対向する一対の側部シール領域42を結ぶ方向に主として延びる。したがって、加熱による積層フィルム10上の各地点の延びる方向(歪み方向)は、主として、シール領域40のうちの当該地点が最も近接する部分42aの延長方向d2に直交する方向になる。このため、加熱時に切込線60が形成された地点における積層フィルム10の延びる方向は、縁部シール部40のうち、当該地点が最も近接する部分42aの延長方向d2に直交する方向になる。一方、切込線82により積層フィルム10に画定される開口は、当該積層フィルム10が切込線82の延長方向d1に延びても拡がり難いが、当該積層フィルム10が切込線82の延長方向d1に直交する方向に延びると拡がり易い。上記のように、切込線82の延長方向d1は、シール領域40のうちの当該切込線82が最も近接する部分42aの延長方向d2と交差することから、加熱時に切込線82が形成された地点における積層フィルム10の延びる方向は、切込線82により積層フィルム10に画定される開口が拡がり難い方向となる。このため、収容空間2が通気室7に通じた後において、切込線82から内容物を一層漏れ出し難くすることができる。
とりわけ、加熱によってパウチ1が膨張することに伴い、切込線82により積層フィルム10に画定される開口を拡がり難くするためには、切込線82の延長方向d1が、加熱時に切込線82が形成された地点における積層フィルム10の延びる方向となす角度が小さいことが好ましい。このことから、切込線82の延長方向d1は、シール領域40のうちの当該切込線82が最も近接する部分42aの延長方向d2に対して、45°より大きく135°未満の角度をなすことが好ましい。図示する例では、切込線82の延長方向d1は、シール領域40のうちの当該切込線82が最も近接する部分42aの延長方向d2、つまり、側部シール領域42が延びる方向と直交している。この場合、切込線82の延長方向d1は、加熱時に切込線82が形成された地点における積層フィルム10の延びる方向に沿うため、切込線82により画定される積層フィルム10の開口が益々拡がり難くなる。このため、収容空間2が通気室7に通じた後において、切込線82から内容物をさらに一層漏れ出し難くすることができる。
また、図3に示すように、切込線82の長さL1は、切込線82の延長方向d1における通気室7の長さL2の1/2以上2/3以下であることが好ましい。切込線82の長さL1を上記範囲内とすることにより、通気室7内の蒸気を、切込線82を介して外部に十分且つ適度な流量で逃がすことができる。このため、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に、収容空間2から通気室7に流入する高圧の蒸気が通気室7内に有効に蓄えられ、高圧の蒸気が勢いよく切込線82から吹き出すことを効果的に抑制することができる。また、切込線82の長さL1を上記範囲内とすることにより、収容空間2内の内容物を通気室7まで到達させ難くするだけでなく、内容物が通気室7に到達したとしても切込線82から漏れ出し難くすることができる。なお、具体的な値として、切込線82の長さL1は、例えば5〜8mm程度に設定される。
また、切込線82の延長方向d1における通気室7の長さL2は、切込線82の延長方向d1に直交する方向における通気室7の長さL3の1/3以上1/1以下であることが好ましい。この場合、パウチ1をなす一対の積層フィルム10内の空間に、収容空間2と通気室7とを好ましく区画することができ、収容空間2内の内容物を収容するスペースを広く確保することができる。
また、本実施の形態では、平面視において、各積層フィルム10に形成された切込線82が互いに重なっている。言い換えると、表積層フィルム11aに形成された切込線82と、裏積層フィルム11bに形成された切込線82とが、互いに重なっている。
さらに、図6Aに、図5に示す線VI−VIに沿ったパウチ1の断面を示す。図6Aに示すように、通気室7を形成する一対の積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16は、互いの間に隙間がほとんど形成されていない。
もっとも、図5に示す線VI−VIに沿ったパウチ1の断面の形態は、図6Aに示す形態に限定されない。図6Bに、図6Aに示すパウチ1の断面の他の形態を示す。図6Bに示す例では、通気室7を形成する一方の積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16は、通気室7を形成する他方の積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に対して離間するように膨らんでいる。別の見方をすると、通気室7を形成する一方の積層フィルム10のうちの、ポイントシール部50に囲まれる部分16は、他の部分よりも外方に膨らんでいる。本実施の形態では、通気室7を形成する他方の積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16も、通気室7を形成する一方の積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に対して離間するように膨らんでいる。なお、このような断面形状を積層フィルム10に賦型するためには、予め各積層フィルム10のうちポイントシール部50となるべき領域に囲まれる部分に、加熱されたエンボス用の型を押し当て、当該部分を他の部分よりも外方に膨らませればよい。このとき、通気室7を形成する積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16が他の部分よりも外方に膨らむ高さH1が、例えば1mm〜2mm程度になるように、エンボス用の型を押し当てる。
次に、以上のような構成からなる本変形例の作用について説明する。
パウチ1を電子レンジ内に設置して温めると、電子レンジから照射される高周波によって内容物に含まれる水分が温められて蒸発し、パウチ内の圧力が高まっていく。上述のように、ポイントシール部50は、シール領域40から収容空間2側に向かって張り出し、且つ、シール領域40よりも巾が狭くなっている。従って、収容空間2内の圧力が高まると、ポイントシール部50から一対の積層フィルム10の剥離が開始される。ポイントシール部50からの剥離が進行しパウチ1内の収容空間2が通気室7に通じると、収容空間2から通気室7に高圧の蒸気が流入する。本実施の形態では、各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に形成された切込線82は、積層フィルム10を線状に切り裂いた跡であるため、蒸気抜き孔81に比べて流体を通過させ難い。このため、通気室7内に流入した蒸気は、切込線82を介して外部に徐々にしか逃げていかない。このため、収容空間2から通気室7に流入する高圧の蒸気は、通気室7内に一時的に蓄えられることとなり、高圧の蒸気が勢いよく切込線82から吹き出すことを効果的に抑制することができる。切込線82からの蒸気の吹き出しを抑制したのに伴い、内容物が収容空間2から通気室7に勢いよく流れて切込線82から吹き出すことも回避される。以上の結果、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に、切込線82から高圧の蒸気の流出に合わせて内容物が勢いよく吹き出してしまうことを効果的に抑制することができる。
さらに電子レンジ内での加熱を行うと、ポイントシール部50の大部分が剥がれて収容空間2と通気室7との間の境界がほとんどなくなる。そして、収容空間2内の蒸気は、切込線82から外部へ逃げ、収容空間2内の圧力は低減する。上述のように、通気室7を形成する各積層フィルム10に形成された切込線82は、図4に示す蒸気抜き孔81に比べて流体を通過させ難い。このため、収容空間2が通気室7に通じた後に内容物が通気室7に到達したとしても切込線82から漏れ出し難い。この結果、収容空間2が通気室7に通じた後においても、切込線82から内容物が漏れ出すことを効果的に抑制することができる。
電子レンジ内での加熱を終えると、積層フィルム10のうちの通気室7を形成する部分のように蒸気に触れた部分は熱くなっている。一方、積層フィルム10に形成されたシール領域40は、蒸気に触れ難いため熱くなり難い。このため、シール領域40の側部シール領域42を指で摘まんで、当該側部シール領域42に設けられたノッチ8からパウチ1を開封する。これにより、過度な熱さを感じることなく、収容空間2に収容された内容物を取り出すことができる。
以上のように、本変形例によれば、パウチ1をなす積層フィルム10の多層共押出しフィルム31がポリアミド系樹脂層33を含むため、輸送時等に他のパウチの角から受ける突き刺し、パウチ1に伝わる衝撃あるいは当該衝撃に伴う屈曲に対して充分な耐性を発揮することができる。これにより、突き刺し、衝撃あるいは屈曲に起因したパウチ1へのピンホールの発生を効果的に防止することができる。また、積層フィルム10は、多層共押出しフィルム31のポリアミド系樹脂層33とシーラントフィルム38との間にポリエステル系樹脂フィルム36を含むため、当該ポリエステル系樹脂フィルム36が、積層フィルム10に耐熱性を付与する。このため、電子レンジでの加熱により内容物から伝わる熱をポリエステル系樹脂フィルム36によって妨げ、ポリアミド系樹脂層33に熱を伝わり難くすることができる。この結果、パウチ1が加熱時に高温となる食品を収容する場合であっても、加熱によりポリアミド系樹脂層33が溶け出してしまうことを防止することができる。加えて、多層共押出しフィルム31をなす第1ポリエステル系樹脂層32とポリアミド系樹脂層33とは、共押し出しにて成形されている。このため、パウチ1をなす積層フィルム10を作製するためにラミネートすべきフィルムの数を低減することができる。このため、ラミネート回数を低く抑えることができ、市場において競争力のある価格でパウチ1を提供することができる。
また、本変形例によれば、通気室7を形成する各積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分に切込線82が形成され、切込線82は、シール領域40のうちの当該切込線82が最も近接する部分42aの延長方向d2と交差する方向に延びている。このような形態によれば、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に、収容空間2から通気室7に流入する高圧の蒸気は、切込線82を介して外部に徐々に逃げる。このため、収容空間2から通気室7に流入する高圧の蒸気は、通気室7内に一時的に蓄えられることとなり、高圧の蒸気が勢いよく切込線82から吹き出すことを効果的に抑制することができる。切込線82からの蒸気の吹き出しを抑制したのに伴い、内容物が収容空間2から通気室7に勢いよく流れて切込線82から吹き出すことも回避される。以上の結果、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に、切込線82から高圧の蒸気と共に内容物が吹き出してしまうことを効果的に抑制することができる。上述のように、切込線82は、図3に示す蒸気抜き孔81に比べて流体を通過させ難いため、内容物が通気室7に到達したとしても切込線82から漏れ出し難い。この結果、収容空間2が通気室7に通じた後にさらに電子レンジ内での加熱を行っても、切込線82から内容物が漏れ出すことを効果的に抑制することができる。
さらに、加熱によってパウチ1が膨張することに伴い、パウチ1をなす積層フィルム10は、ヒートシールされたシール領域40のうちの互いに対向する部分を結ぶ方向に主として延びる。したがって、加熱による積層フィルム10上の各地点の延びる方向(歪み方向)は、主として、シール領域40のうちの当該地点が最も近接する部分42aの延長方向d2に直交する方向になる。一方、切込線82により積層フィルム10に画定される開口は、当該積層フィルム10が切込線82の延長方向d1に直交する方向に延びると拡がり易い。本実施の形態では、切込線82の延長方向d1は、シール領域40のうちの当該切込線82が最も近接する部分42aの延長方向d2と交差することから、加熱時に切込線82が形成された地点における積層フィルム10の延びる方向は、切込線82により積層フィルム10に画定される開口が拡がり難い方向となる。このため、収容空間2が通気室7に通じた後において、切込線82から内容物を一層漏れ出し難くすることができる。これらの結果、本実施の形態のパウチ1によれば、水平に配置された状態であっても、加熱によって内容物が吹き出すことを効果的に抑制することができる。
また、図6Bに示す例では、通気室7を形成する少なくとも一方の積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16は、通気室7を形成する他方の積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分16に対して離間するように膨らんでいる。この場合、通気室7の容積を予め広く確保することができることから、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に収容空間2から通気室7に流入する高圧の蒸気が、スムーズに通気室7内に蓄えられる。この結果、収容空間2から流入する高圧の蒸気が、切込線82から勢いよく吹き出すことをさらに効果的に抑制することができる。この結果、パウチ1内の収容空間2が通気室7に通じた際に、切込線82から高圧の蒸気と共に内容物が吹き出してしまうことをさらに効果的に抑制することができる。
また、本変形例によれば、積層フィルム10のポイントシール部50に囲まれる部分に切込線82が形成され、蒸気抜き孔81を形成する必要がないため、蒸気抜き孔81を形成することに伴い生じ得る検査や抜きカスの回収の問題も生じ得ない。
なお、図5に示す変形例では、通気室7を形成する表積層フィルム11a及び裏積層フィルム11bのポイントシール部50に囲まれる部分に、1つずつ切込線82が形成された例を示したが、切込線82の数は、上述した例に限定されない。図7に、切込線82の数の他の例を示す。図7に示す例では、通気室7を形成する表積層フィルム11a及び裏積層フィルム11bのポイントシール部50に囲まれる部分に、2つずつ切込線82が形成されている。各切込線82の延長方向d1は、シール領域40のうちの切込線82が最も近接する部分42aの延長方向d2と交差している。図示する例では、各積層フィルム10に形成された2つの切込線82は、互いに間隔を空けて平行に延びている。ただし、各積層フィルム10に形成された2つの切込線82の間隔は、仕様に応じて適宜設定可能である。また、各積層フィルム10に形成された2つの切込線82は、非平行に延びてもよい。
≪第2の実施の形態≫
次に、図8乃至図13を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図8乃至図13を参照して説明する第2の実施の形態は、蒸気抜き機構6及びシール領域40の構成が異なるが、その他の構成は、第1の実施形態と同様に構成することができる。第2の実施の形態に関する以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図8は、本発明の第2の実施の形態におけるパウチの一例を示す平面図である。図8に示すパウチ1は、胴部110と底部120とをヒートシールして形成されるスタンディング形式のパウチである。図1に示すように、胴部110は、互いに対向して配置された表主面シート111aと裏主面シート111bとからなる一対の主面シート111を含んでおり、重ね合せられた一対の主面シート111の側縁14近傍が互いにヒートシールされている。一対の主面シート111の下縁15間に、底部120をなす底面シート121が配置されている。そして、一対の主面シート111と底面シート121とによって囲まれる空間内に、内容物を収容する収容空間2が区画されている。底面シート121は、収容空間2側に向かって凸となるように曲げられ、その周縁近傍を、重なり合う主面シート111の下部とともにヒートシールされている。底面シート121が一対の主面シート111の下端の形状を保持することによって、パウチ1に自立性を付与している。
また、図8に示すように、パウチ1では、一対の主面シート111の上縁13間に開口4が形成され、当該開口4から内容物が充填されるようになっている。内容物が充填された後、開口4が設けられた上縁13近傍をヒートシールすることにより密閉して、パウチ1が得られる。
図8に示すスタンディング形式のパウチ1において、重なり合う胴部110をなす一対の主面シート111の上縁13と、重なり合う一対の主面シート111の側縁14と、重なり合う主面シート111の下縁15及び底面シート121の縁部と、によって、パウチ1の外縁5が規定されている。なお、胴部110をなす一対の主面シート111及び底部120をなす底面シート121は、積層フィルム10からなる。積層フィルム10は、上述した第1の実施形態で説明した図2に示す積層フィルムあるいは図4に示す積層フィルムと略同様に構成することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
(周囲領域)
積層フィルム10からなる一対の主面シート111及び底面シート121によって周囲領域3が画成される。一対の主面シート111と底面シート121とからなる周囲領域3は、内容物を収容する収容空間2を取り囲んでいる。また、周囲領域3には、加熱時に収容空間2内の蒸気を逃がすための蒸気抜き機構6が設けられている。
図8に示すように、周囲領域3は、重ねられた積層フィルム10がヒートシールされたシール領域40と、シール領域40によって収容空間2から隔離され、重ねられた積層フィルム10がヒートシールされていない第1未シール領域60と、を有している。
このうち、第1未シール領域60は、電子レンジによる加熱に伴って発生する蒸気によってパウチ内の圧力が高まった際に、収容空間2と連通してパウチ内の蒸気を外部へ逃がすために設けられている。第1未シール領域60は、パウチ1の外縁5から、収容空間2側に張り出している。本実施の形態の第1未シール領域60は、ヒートシールされない重ねられた主面シート111をなす積層フィルム10からなる。従って、第1未シール領域60には、重ねられた積層フィルム10の縁部によって規定される開口61が形成されている。図示する例では、開口61は、重ねられた一対の主面シート111の側縁14によって形成されている。なお、第1未シール領域60の全域が、主面シート111をなす積層フィルム10に覆われていなくてもよく、第1未シール領域60内に位置する各主面シート111の一部に孔や切り抜きを設けてもよい。
図9に、図8に示すパウチ1の第1未シール領域60を拡大して示す。図9に示すように、第1未シール領域60の縁部62は、開口61の周りから収容空間2側に延び出た第1縁部63及び第2縁部64と、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端との間を延びる第3縁部65と、を含んでいる。図示する例では、主面シート111の下縁15側に第1縁部63が配置されており、主面シート111の上縁13側に第2縁部64が配置されている。もっとも、主面シート111の上縁13側に第1縁部63が配置され、主面シート111の下縁15側に第2縁部64が配置されてもよい。
図9に示すように、第1未シール領域60の第1縁部63及び第2縁部64は、パウチ1の外縁5に交差する方向、より詳細には直交する方向に直線状に延び出している。本実施の形態では、第1縁部63は、第2縁部64に対して平行に延びている。加えて、第1縁部63の長さL11は、第2縁部64の長さL12と等しい。従って、第3縁部65が、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端との間を直線状に延びる場合、第3縁部65は、パウチ1の外縁5に平行に延び、第1縁部63及び第2縁部64と直交する。この場合、第1未シール領域60の縁部62は、略コの字状の形状に沿って延びるようになる。本実施の形態では、第3縁部65の長さL13は、第1縁部63の長さL11及び第2縁部64の長さL12よりも短い。
なお、図示する例では、第1縁部63、第2縁部64及び第3縁部65が、直線状に延び出す例を示したが、曲線状の経路に沿って延び出してもよい。また、第1縁部63は、第2縁部64に対して非平行に延びてもよいし、第2縁部64と異なる長さであってもよい。図10及び図11に、第1未シール領域60の縁部62が延びる経路の他の例を示す。図10に示す例では、第3縁部65は、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端との間を曲線状の経路に沿って延びている。具体的には、第3縁部65は、収容空間2側に凸となるように曲線状の経路に沿って延びている。言い換えると、第3縁部65は、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端とを結ぶ仮想直線よりも、収容空間2に近接した領域内で曲線状の経路に沿って延びている。
あるいは、図11に示す例では、第1未シール領域60は、パウチ1の外縁5から、収容空間2側に張り出した後、下縁15側に向かってさらに張り出している。具体的には、第3縁部65は、第1縁部63の先端から下縁15側に向かってU字状の経路に沿って延びた後、第2縁部64の先端に向かって直線状の経路に沿って延びている。
ところで、第1未シール領域60の縁部62を、略V字状の形状に沿って延びるように形成することも考えられる。言い換えると、第1未シール領域60の縁部が、開口61の周りから収容空間2側に延び出た第1縁部及び第2縁部のみからなり、第1縁部の先端と第2縁部の先端とを重ねた形態も考えられる。しかしながら、この場合、輸送時や保管時に意図しない振動や衝撃がパウチに伝わると、第1縁部の先端と第2縁部の先端との交点付近に集中的に大きな負荷がかかり、当該交点付近からシール領域40に剥離が生じてしまうおそれがある。一方、本実施の形態では、第1未シール領域60の縁部62は、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端との間を延びる第3縁部65をさらに含んでいる。このため、輸送時や保管時に意図しない振動や衝撃がパウチに伝わっても、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端との間に集中的に大きな負荷がかかることはなく、第3縁部65に隣接するシール領域40の部分(後述する張出部44)に剥離が生じることを防止することができる。
一方、シール領域40は、重ねられた積層フィルム10をヒートシールすることによって、内容物を収容する収容空間2を密閉する機能を有している。上述のように、シール領域40は、重ねられた積層フィルム10の周縁近傍をヒートシールすることにより形成され、主面シート111及び底面シート121は、同一の積層フィルム10から構成されている。従って、同一のヒートシール条件下で、重ねられた積層フィルム10の周縁近傍をヒートシールした場合、シール領域40内の任意の一地点における接合力は、他の一地点の接合力と等しくなる。このため、加熱に伴ってパウチ1内の圧力が高まったときのシール領域40の剥離のし易さは、シール領域40の位置や形状等に起因して誘引される応力集中、並びに、シール領域40の巾に大きく依存する。
図8に示すように、シール領域40の外縁40aは、主面シート111の縁部13〜15、第1未シール領域60の縁部62または後述する第2未シール領域70の縁部72に沿って、周状に延びている。一方、シール領域40の内縁40bは、外縁40aに対して間隔を空けながら、周状に延びている。
図8に示すように、本実施の形態のシール領域40は、一対の主面シート111の上縁13近傍をヒートシールした上部シール領域(図2において二点鎖線で囲まれた領域)41と、一対の主面シート111の側縁14近傍をヒートシールした側部シール領域42と、底面シート121の周縁近傍と主面シート111の下縁15近傍とをヒートシールした下部シール領域43と、を含んでいる。
図9に示すように、本実施の形態の側部シール領域42は、当該パウチ1の外縁5に沿って第1未シール領域60の第1縁部63まで延びる第1外縁シール部分45と、当該パウチ1の外縁5に沿って第1未シール領域60の第2縁部64まで延びる第2外縁シール部分46と、を含んでいる。加えて、側部シール領域42は、第1外縁シール部分45と第2外縁シール部分46との間に位置し、第1外縁シール部分45と第2外縁シール部分46よりも収容空間2に向けて張り出した張出部44を含んでいる。
張出部44は、少なくとも、第1縁部63の一部分及び第3縁部65に隣接している。本実施の形態では、張出部44は、第2縁部64の一部分にも隣接している。そして、図3に示すように、張出部44は、第1外縁シール部分45及び第2外縁シール部分46の両方に対して段差47、48を形成している。
図3に示すように、張出部44の巾W11は、シール領域40の張出部44以外の部分の巾よりも狭くなっている。従って、シール領域40内の各地点での接合力が等しい場合、シール領域40は、張出部44において最も剥離し易くなる。
また、張出部44での一対の主面シート111内のシール強さは、100℃で50N/15mm以下が好ましい。この場合、電子レンジによる加熱に伴ってパウチ1内の圧力が高まった際に、パウチ1が破袋するおそれを低減することができる。本実施の形態の張出部44での一対の主面シート111内のシール強さは、100℃で35N/15mm以下になっている。この場合、電子レンジによる加熱に伴ってパウチ1内の圧力が高まった際に、張出部44から剥離を確実に開始して、パウチ1内の蒸気を第1未シール領域60から確実に逃がすことができる。好ましくは、張出部44での一対の主面シート111内のシール強さは、100℃で30N/15mm以下になっている。
また、本実施の形態では、張出部44が第1外縁シール部分45に対して形成した段差47の大きさは、3mm以上になっている。この場合、パウチ1内の圧力が高まると、パウチ1の外縁5から収容空間2側に張り出した張出部44に、応力が集中的に負荷し易くなる。これにより、張出部44から一対の主面シート111の剥離が容易に開始されるようになる。
また、図3に示すように、第1外縁シール部分45の巾W12は、第2外縁シール部分46の巾W13よりも狭くなっている。また、巾方向に直交する方向において、第1外縁シール部分45の長さは、第2外縁シール部分46の長さよりも長くなっている。
図1に示すように、第2外縁シール部分46に、開封の際の起点となり得るノッチ8が形成されている。ノッチ8は、胴部110をなす主面シート111を貫通している。ノッチ8は、第2外縁シール部分46に形成された切れ目であってもよいし、所定の巾をもつ切欠きであってもよい。第2外縁シール部分46にノッチ8が形成されていることにより、ノッチ8から胴部110を容易に開封し始めることができる。
なお、上述した第1未シール領域60と開口61と張出部44とにより、加熱時に収容空間2内の蒸気を逃がすための蒸気抜き機構6が構成されている。
ところで、このようなパウチ1の製造方法について述べると、先ず、胴部110をなすようになる胴材シートと底部120をなすようになる底材シートを所定の位置に配置して、これらのシートのうち製袋される複数のパウチ1の各々の側部シール領域42、下部シール領域43及び張出部44となるべき領域をヒートシールする。このとき、胴材シートのうちのヒートシールされなかった領域は、各パウチ1の収容空間2となるべき領域と第1未シール領域60となるべき領域とに、ヒートシールされた領域によって区画される。その後、各パウチ1の形状に合わせてヒートシールされた部分を裁断する。続いて、各パウチ1をなす一対の積層フィルム10の上縁13間の開口4から内容物を充填した後、開口4が設けられた上縁13近傍をヒートシールすることにより密閉して、パウチ1が得られる。この製造方法において、ヒートシールされない第1未シール領域60が設計通りの寸法で形成されている場合、加工精度に起因して隣り合うパウチ1の間の裁断される位置がずれてしまうと、ヒートシールされた領域によって第1未シール領域60の開口61を閉じてしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、周囲領域3のうち、収容空間2を挟んで第1未シール領域60に対面する位置に、シール領域40によって収容空間2から隔離された第2未シール領域70が設けられている。この場合、胴材シート及び底材シートに、各パウチ1のシール領域40となるべき領域をヒートシールすると、一方のパウチ1の第1未シール領域60と他方のパウチ1の第2未シール領域70とが繋がった状態になる。従って、加工精度に起因して隣り合うパウチ1の間の裁断される位置がずれてしまっても、一方のパウチ1に第2未シール領域70が設けられていることにより、他方のパウチ1の第1未シール領域60の開口61が塞がれてしまうことを防止することができる。
第2未シール領域70は、パウチ1の外縁5から、収容空間2側に張り出している。本実施の形態の第2未シール領域70は、ヒートシールされない重ねられた主面シート111をなす積層フィルム10からなる。従って、第2未シール領域70には、重ねられた積層フィルム10の縁部によって規定される開口71が形成されている。図示する例では、開口71は、重ねられた一対の主面シート111の側縁14によって形成されている。
図12に、図8に示すパウチ1の第2未シール領域70を拡大して示す。図12に示すように、第2未シール領域70の縁部72は、略コの字状の形状に沿って延びている。第2未シール領域70の収容空間2側に延びる長さL14は、第1縁部63の長さL11及び第2縁部64の長さL12よりも短い。一方、この延びる方向に直交する方向における第2未シール領域70の長さL15は、第3縁部65の長さL13と等しい。
また、図12に示すように、第2未シール領域70と収容空間2との間に位置する側部シール領域42の巾W14は、張出部44の巾W11よりも広い。さらにいえば、第2未シール領域70に隣接する部分の側部シール領域42の巾は、張出部44の巾W11よりも広い。
なお、各部の寸法について一例を示すと、張出部44の巾W11は、例えば2.5〜5mm程度に設定され、第1外縁シール部分45の巾W12は、例えば5〜8mm程度に設定され、第2外縁シール部分46の巾W13は、例えば8〜15mm程度に設定される。また、段差47の大きさは、例えば3〜15mm程度に設定され、第2未シール領域70の収容空間2側に延びる長さL14は、例えば1〜3mm程度に設定される。第3縁部65の長さL13及び第2未シール領域70の長さL15は、例えば4〜15mm程度に設定される。とりわけ、第3縁部65の長さL13を4mm以上とすることにより、加熱に伴って剥離した張出部44から流出するパウチ1内の蒸気を、第1未シール領域60に形成された開口61に向けて十分な流量で導くことができる。なお、第3縁部65の長さL13を収容空間2の面積で割った値で表すと、当該値が1.8×10−4mm-1以上であることが好ましい。
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
パウチ1を電子レンジ内に設置して温めると、電子レンジから照射される高周波によって内容物に含まれる水分が温められて蒸発し、パウチ内の圧力が高まっていく。上述のように、収容空間2側に張り出した張出部44は、第1外縁シール部分45に対して3mm以上の大きさの段差47を形成し、且つ、シール領域40のうち最も巾が狭くなっている。従って、パウチ内の圧力が高まると、張出部44から一対の主面シート111の剥離が開始される。張出部44の剥離が進行し、収容空間2と第1未シール領域60とが繋がると、パウチ1内の蒸気を第1未シール領域60から外部へ逃がすことができる。
電子レンジ内での加熱を終えると、周囲領域3のうち、シール領域40の内縁40bに囲まれた部分など蒸気に触れた部分は熱くなっている。一方、周囲領域3に含まれるシール領域40は、蒸気に触れていないため熱くなり難い。とりわけ、本実施の形態によれば、第1外縁シール部分45の巾W12は、第2外縁シール部分46の巾W13よりも狭い。従って、第2外縁シール部分46は、第1外縁シール部分45よりも熱くなっていない部分が広い。このため、第2外縁シール部分46を指で摘まんでも、第1外縁シール部分45を指で摘まむよりは熱さを感じない。そこで、第2外縁シール部分46を指で摘まんで、当該第2外縁シール部分46に設けられたノッチ8から胴部110を開封する。これにより、過度な熱さを感じることなく、収容空間2に収容された内容物を取り出すことができる。
以上のように、本実施の形態によれば、パウチ1をなす積層フィルム10の多層共押出しフィルム31がポリアミド系樹脂層33を含むため、輸送時等に他のパウチの角から受ける突き刺し、パウチ1に伝わる衝撃あるいは当該衝撃に伴う屈曲に対して充分な耐性を発揮することができる。これにより、突き刺し、衝撃あるいは屈曲に起因したパウチ1へのピンホールの発生を効果的に防止することができる。また、積層フィルム10は、多層共押出しフィルム31のポリアミド系樹脂層33とシーラントフィルム38との間にポリエステル系樹脂フィルム36を含むため、当該ポリエステル系樹脂フィルム36が、積層フィルム10に耐熱性を付与する。このため、電子レンジでの加熱により内容物から伝わる熱をポリエステル系樹脂フィルム36によって妨げ、ポリアミド系樹脂層33に熱を伝わり難くすることができる。この結果、パウチ1が加熱時に高温となる食品を収容する場合であっても、加熱によりポリアミド系樹脂層33が溶け出してしまうことを防止することができる。加えて、多層共押出しフィルム31をなす第1ポリエステル系樹脂層32とポリアミド系樹脂層33とは、共押し出しにて成形されている。このため、パウチ1をなす積層フィルム10を作製するためにラミネートすべきフィルムの数を低減することができる。このため、ラミネート回数を低く抑えることができ、市場において競争力のある価格でパウチ1を提供することができる。
また、本実施の形態によれば、第1未シール領域60には、重ねられた積層フィルム10の縁部によって規定される開口61が形成されており、収容空間2に向けて張り出した張出部44は、第1外縁シール部分45に対して3mm以上の大きさの段差47を形成し、張出部44の巾W11は、シール領域40の張出部44以外の部分の巾よりも狭い。このような形態によれば、加熱に伴ってパウチ1内の圧力が高まると、張出部44から一対の主面シート111の剥離が開始されて、パウチ1内の蒸気を第1未シール領域60から外部へ逃がすことができる。従って、特開2010−36968号公報に記載のパウチのように、易剥離性を示す材料を部分的に設ける必要がなくなり、パウチ1をなすようになる積層フィルム10の材料コスト及び製造コストを安価に抑えることができる。さらに、第1未シール領域60は、ヒートシールされない重ねられた積層フィルム10によって形成されている。このような形態によれば、上述のように、パウチ1をなすようになる積層フィルム10を個別の型を用いて裁断する必要がなく、パウチ1の製造コストを一層安価に抑えることができる。これらの結果、本実施の形態の蒸気抜き機構6によれば、ヒートシールによって製袋されるパウチ1を安価で容易に製造することができる。
また、本実施の形態によれば、第1未シール領域60には、重ねられた積層フィルム10の縁部によって規定される開口61が形成されており、第1未シール領域60の縁部62は、開口61の周りから収容空間2側に延び出た第1縁部63及び第2縁部64と、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端との間を延びる第3縁部65と、を含んでいる。すなわち、第1未シール領域60は、積層フィルム10の縁部から収容空間2側に張り出している。この場合、内容物をパウチ内に充填する間口を広く確保することができ、内容物を容易に充填することができる。また、本実施の形態によれば、特許第4029590号公報に記載のパウチのように蒸気抜き孔を形成する必要がないため、蒸気抜き孔を形成することに伴い生じ得る検査や抜きカスの回収の問題も生じ得ない。
また、本実施の形態によれば、第1未シール領域60の第1縁部63は、第2縁部64に対して平行に延び、第1縁部63の長さL11は、第2縁部64の長さL12と等しい。この場合、加熱に伴って剥離した張出部44から流出するパウチ1内の蒸気を、第1未シール領域60に形成された開口61に向けてスムーズに導くことができる。
また、本実施の形態によれば、周囲領域3のうち、収容空間2を挟んで第1未シール領域60に対面する位置に、シール領域40によって収容空間2から隔離された第2未シール領域70が設けられ、第2未シール領域70には、重ねられた積層フィルム10の縁部によって規定される開口71が形成されている。このような形態によれば、加工精度に起因して隣り合うパウチ1の間の裁断される位置がずれてしまっても、パウチ1の第1未シール領域60の開口61が塞がれてしまうことを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、第1外縁シール部分45の巾W12は、第2外縁シール部分46の巾W13よりも狭い。この場合、電子レンジ内での加熱を終えた後、第2外縁シール部分46は、第1外縁シール部分45よりも熱くなっていない部分が広い。従って、電子レンジ内での加熱を終えた後、過度な熱さを感じることなく第2外縁シール部分46を指で摘まむことができる。とりわけ、本実施の形態によれば、第2外縁シール部分46にノッチ8が形成されている。したがって、過度な熱さを感じることなく第2外縁シール部分46を指で摘まむことができるため、第2外縁シール部分46に設けられたノッチ8から胴部110を素早く開封することができる。また、第1外縁シール部分45の巾W12が、第2外縁シール部分46の巾W13よりも狭くなっていることにより、第1外縁シール部分45の巾W12と第2外縁シール部分46の巾W13とが等しい場合に比べて、過度な熱さを感じることなく第2外縁シール部分46を指で摘まむことができる状態を維持しながら、収容空間2を広く確保することができる。
また、本実施の形態によれば、張出部44は、第2縁部64の一部分にも隣接しており、張出部44は、第1外縁シール部分45及び第2外縁シール部分46の両方に対して段差47、48を形成している。この場合、張出部44が収容空間2と広い範囲で隣接し易くなるため、加熱に伴って収容空間2の圧力が高まると、張出部44から剥離を開始し易くなる。
≪第2の実施の形態の変形例≫
なお、上述した第2の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第2の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
上述した第2の実施の形態では、図9に示すように、張出部44は、第2縁部64の一部分にも隣接しており、第1外縁シール部分45及び第2外縁シール部分46の両方に対して段差47、48を形成している例を示したが、シール領域40の形態は、上述した例に限定されない。図13に、シール領域の形態の他の例を示す。図13に示す例では、張出部44は、第1縁部63の一部及び第3縁部65に隣接し、第2縁部64には隣接していない。そして、張出部44は、第1外縁シール部分45に対して段差47を形成し、第2外縁シール部分46とは、平坦に繋がっている。すなわち、張出部44は、第2外縁シール部分46に対しては段差を形成していない。このような形態によれば、第2外縁シール部分46の巾W13を、第1外縁シール部分45の巾W12よりもより広く確保し易くなる。このため、電子レンジ内での加熱を終えた後、第2外縁シール部分46は、第1外縁シール部分45よりも一層熱くなっていない部分が広い。従って、電子レンジ内での加熱を終えた後、一層熱さを感じることなく第2外縁シール部分46を指で摘まむことができる。
また、上述した第2の実施の形態では、図8に示すように、パウチ1が、胴部110と底部120とをヒートシールして形成されるスタンディング形式のパウチからなる例を示したが、パウチの形態は、このような例に限定されない。パウチは、平パウチであってもよいし、三方シール形式、ピロー形式、あるいは、ガセット形式のパウチであってもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。以下に説明するようにして、サンプル1〜3及び比較サンプル1〜3に係るパウチを作製し、耐突き刺し性、耐熱性及びラミネート工数について評価した。
(サンプル1)
サンプル1に係る積層フィルムは、図2に示す層構成からなる積層フィルムにおいて蒸着膜をポリエステル系樹脂フィルムではなく多層共押出しフィルムに積層させた形態に対応している。
第1ポリエステル系樹脂層、ポリアミド系樹脂層及び第2ポリエステル系樹脂層を共押し出し成形することにより、多層共押出しフィルムを作製した。この第1ポリエステル系樹脂層及び第2ポリエステル系樹脂層として、ポリエチレンテレフタレート層(PET)を採用し、ポリアミド系樹脂層として、ナイロン−6を90重量%とアモルファスナイロンを10重量%とを配合した層を採用した。また、第1ポリエステル系樹脂層の厚みを2μm、ポリアミド系樹脂層の厚みを11μm、第2ポリエステル系樹脂層の厚みを2μmとした。
次に、この多層共押出しフィルムの袋内方となる側に、バリア層として二酸化ケイ素(siO2)からなる蒸着膜を形成して、中間積層体を作製した。バリア層としての蒸着膜の厚みを0.05μmとした。得られた中間積層体と、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、ドライラミネート法を用いて貼り合わせて積層フィルムを作製した。このポリエステル系樹脂フィルムとして、厚み12μmからなるポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を採用した。シーラントフィルムとして、厚み60μmからなる無延伸ポリプロピレン(CPP)を用いた。
(サンプル2)
サンプル2に係る積層フィルムは、サンプル1に係る積層フィルムからバリア層を省いた形態に対応している。すなわち、サンプル2に係る積層フィルムは、多層共押出しフィルムと、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、ドライラミネート法を用いて貼り合わせたものである。
また、サンプル2に係る積層フィルムで用いた多層共押出しフィルム、ポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムは、材料や厚み等において、サンプル1に係る積層フィルムの多層共押出しフィルム、ポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムと、それぞれ同様にした。
(サンプル3)
サンプル3に係る積層フィルムは、サンプル2に係る積層フィルムの多層共押出しフィルムとは異なる多層共押出しフィルムを用い、その他の点ではサンプル2に係る積層フィルムと同一とした。すなわち、サンプル3に係る積層フィルムは、サンプル2とは異なる多層共押出しフィルムと、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、ドライラミネート法を用いて貼り合わせたものである。
サンプル3に係る積層フィルムの多層共押出しフィルムは、第1ポリエステル系樹脂層及びポリアミド系樹脂層を共押し出し成形することにより作製された。この第1ポリエステル系樹脂層として、ポリエチレンテレフタレート層(PET)を採用し、ポリアミド系樹脂層として、ナイロン−6を90重量%とアモルファスナイロンを10重量%とを配合した層を採用した。また、第1ポリエステル系樹脂層の厚みを3μm、ポリアミド系樹脂層の厚みを12μmとした。
また、サンプル3に係る積層フィルムで用いたポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムは、材料や厚み等において、サンプル1に係る積層フィルムのポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムと、それぞれ同様にした。
(比較サンプル1)
比較サンプル1に係る積層フィルムは、サンプル1に係る積層フィルムの多層共押出しフィルムの代わりにポリエステル系樹脂フィルムである基材フィルムを用い、ポリエステル系樹脂フィルムである基材フィルムにバリア層として蒸着膜を積層した。その他の点ではサンプル1に係る積層フィルムと同一とした。すなわち、比較サンプル1に係る積層フィルムは、蒸着膜を形成したポリエステル系樹脂フィルムと、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、ドライラミネート法を用いて貼り合わせたものである。
ポリエステル系樹脂フィルムとして、厚み12μmからなるポリエチレンテレフタレート層(PET)を採用した。また、比較サンプル1に係る積層フィルムで用いた蒸着膜、ポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムは、材料や厚み等において、サンプル1に係る積層フィルムの蒸着膜、ポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムと、それぞれ同様にした。
(比較サンプル2)
比較サンプル2に係る積層フィルムは、比較サンプル1に係る積層フィルムの中間層のポリエステル系樹脂フィルムの代わりにポリアミド系樹脂フィルムを用い、その他の点では比較サンプル1に係る積層フィルムと同一とした。すなわち、比較サンプル2に係る積層フィルムは、蒸着膜を形成したポリエステル系樹脂フィルムである基材フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、ドライラミネート法を用いて貼り合わせたものである。
ポリアミド系樹脂フィルムとして、厚み15μmからなる延伸ナイロン(ONy)を採用した。また、比較サンプル2に係る積層フィルムで用いた蒸着膜、基材フィルム及びシーラントフィルムは、材料や厚み等において、比較サンプル1に係る積層フィルムの蒸着膜、基材フィルム及びシーラントフィルムと、それぞれ同様にした。
(比較サンプル3)
比較サンプル3に係る積層フィルムは、比較サンプル1に係る積層フィルムにおいて、ポリエステル系樹脂フィルムである基材フィルムと中間層のポリエステル系樹脂フィルムとの間にポリアミド系樹脂フィルムをさらに積層させた形態に対応している。すなわち、比較サンプル3に係る積層フィルムは、蒸着膜を形成した基材フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムと、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、ドライラミネート法を用いて貼り合わせたものである。
ポリアミド系樹脂フィルムとして、厚み15μmからなる延伸ナイロン(ONy)を採用した。また、比較サンプル3に係る積層フィルムで用いた蒸着膜、基材フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムは、材料や厚み等において、比較サンプル1に係る積層フィルムの蒸着膜、基材フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム及びシーラントフィルムと、それぞれ同様にした。
(評価結果)
各サンプルに係る積層フィルムを用いて、図1に示す形態に対応するパウチと、図8に示す形態に対応するパウチと、を作製した。得られた各パウチについて、耐突き刺し性、耐熱性及びラミネート工数について評価した結果を、表1に示す。耐突き刺し性の評価は、JIS−Z1707に基づく突き刺し強度を測定することにより行った。表1の耐突き刺し性の評価結果の欄において、突き刺し強度が17N以上であれば○とし、17N未満であれば×とした。耐熱性の評価は、200グラムの市販のパスタソースを収容した各パウチを市販の電子レンジに入れて600Wで3分間温め、加熱中に蒸気抜き機構から蒸気が抜け出すこと、及び、パウチをなす積層フィルムが溶け出さないことを目視にて確認した。表1の耐熱性の評価結果の欄において、加熱中に蒸気抜き機構から蒸気の抜け出しを確認でき、且つ、パウチをなす積層フィルムが溶け出さなかった場合を○とした。一方、加熱中に蒸気抜き機構から蒸気の抜け出しが確認できなかった場合、または、パウチをなす積層フィルムの一部が溶け出した場合を×とした。ラミネート工数の評価は、ラミネートにて貼り合わせる層の数に基づいて行った。表1のラミネート工数の評価結果の欄において、ラミネートにて貼り合わせる層の数が2つ以下である場合を○とし、ラミネートにて貼り合わせる層の数が2つを越える場合を×とした。
サンプル1〜3に係る積層フィルムから作製された各パウチは、耐突き刺し性、耐熱性及びラミネート工数のいずれの点においても、優れた特性を示した。したがって、サンプル1〜3に係る積層フィルムから作製された各パウチは、充分な耐突き刺し性及び耐熱性を発揮し、市場において競争力のある価格で提供されるものであるといえる。
一方、比較サンプル1に係る積層フィルムから作製された各パウチは、JIS−Z1707に基づく突き刺し強度が17N未満であり、耐突き刺し性が充分ではなかった。比較サンプル2に係る積層フィルムから作製された各パウチは、電子レンジ内での加熱によりパウチをなす積層フィルムのポリアミド系樹脂層が溶け出してしまった。このため、積層フィルムに穴あきが発生してしまい、耐熱性が充分ではなかった。比較サンプル3に係る積層フィルムから作製された各パウチは、耐突き刺し性及び耐熱性の点では優れた特性を示したものの、ラミネートにて貼り合わせる層の数が3つとなったため、製造費用の点で他のパウチよりも著しく劣っていた。