JP2017144648A - レトルト用共押出多層フィルムおよびレトルト用包装体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 イージーピール層、接着樹脂層、ポリアミド樹脂層の層順である共押出多層フィルムにおいて、イージーピール層が、プロピレン系樹脂、スチレン系エラストマー、およびエチレン系樹脂から構成され、接着樹脂層が、イージーピール層に隣接し、かつプロピレン系樹脂から構成されることを特徴とするレトルト用共押出多層フィルム、およびレトルト用包装体。
【選択図】 図1
Description
また、レトルト中にデラミネーション(剥離)が発生しない深絞り底材用フィルムとして、ポリアミド樹脂層/ポリエチレン樹脂層/{ヒートシール層またはイージーピール層}の共押出フィルムが提示されている(特許文献2)。
しかしながら、イージーピール層のポリロピレン樹脂の融点が140℃より低い場合は、高温殺菌時に包装体の開封きっかけ部の蓋材と底材とが融着してしまい、開封しにくくなる問題が発生する。他方、イージーピール層のポリプロピレン樹脂の融点が140℃以上の場合は、ヒートシール温度を160℃以上に設定する必要があり、その条件では蓋材外層のポリプロピレンがシール熱板に溶着する問題が発生してしまう。
尚、本明細書において、「主成分として構成される」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の50質量%以上100質量%以下、好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは85質量%以上100質量%以下を占めることを意味する。
本発明の包装体の作製する場合、本発明のフィルムと被着体フィルムとを用いる構成、本発明のフィルムを用いた蓋材と他の底材を用いる構成、他の蓋材と本発明のフィルムを用いた深絞り底材を用いる構成、等の各種の構成が挙げられる。
<イージーピール層>
本発明のフィルムは、フィルム同士や、蓋材と底材とがシールされた包装体における開封性を向上させる目的で、凝集破壊性を有するイージーピール(以下、EPと略記することがある)層を配する。ここで、凝集破壊性を有するとは、包装体を開封する際に、イージーピール層の内部で凝集破壊が起きることによって剥離すること意味し、凝集破壊後のイージーピール層はその上下の層の双方に残る。
イージーピール層の主成分として、プロピレン系樹脂を用いることにより、フィルムへ耐熱性を付与できる。イージーピール層におけるプロピレン系樹脂の混合比率の下限は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。上限値は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。プロピレン系樹脂の混合比率が50質量%以上であれば、高温処理などに対する耐熱性と、主としてポリプロピレン系樹脂からなる被着体とのヒートシール密着性が良好になる。また、前記混合比率が90質量%以下であれば、イージーピール性が良好となる。
中でも、高温殺菌時の開封きっかけ部の融着を防止する為、プロピレン系樹脂の融点は140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましく、155℃以上が更に好ましい。融点は、JIS K 7121法に準じて測定できる。
重合体ブロック(a)の水素添加ブロック共重合体中に占める割合または重合体ブロック(a)と重合体ブロック(c)のビニル芳香族化合物の含量の和は、通常3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%である。重合体ブロック(a)の割合または重合体ブロック(a)と重合体ブロック(c)のビニル芳香族化合物の含量の和が3質量%未満の場合には、得られる組成異物の機械的強度が劣る傾向となる。また、重合体ブロック(a)の割合または重合体ブロック(a)と重合体ブロック(c)のビニル芳香族化合物の含量の和が30質量%を超える場合は、組成物の柔軟性および透明性が劣る傾向がある。
また、プロピレン系樹脂とスチレン系エラストマーとの樹脂組成物として三菱化学製「ゼラス」(登録商標)等が挙げられる。
エチレン系樹脂に上記混合物を用いる場合は、耐熱性の点から、エチレン系樹脂100質量%に対するHDPEの混合比率の下限は、50質量%超が好ましく、55質量%以上がより好ましい。上限は特に制限はないが、95質量%以下が挙げられる。
剥離強度が2.0N/15mm幅以上であれば、高温殺菌処理時に包装体がヒートシール部から破袋してしまう危険性が低減し、また12.0N/15mm幅以下であれば、包装体の開封性が良好となる。
レトルトなどの高温殺菌処理される包装体においては、被着体にはホモポリプロピレン樹脂で構成される成形体が多用されるが、本発明のフィルムとホモポリプロピレン樹脂で構成される被着体とを150℃でヒートシールした場合の放冷後23℃における剥離強度についても、上記の2.0N/15mm幅以上12.0N/15mm幅以下が、好ましい範囲として挙げられる。
開封きっかけ部の大きさや形状は、包装体の大きさや形状、厚さなどにより、適宜選択できる。
開封きっかけ部の非融着により、本発明のフィルムと被着体とを別々に把持して包装体シール部を引き開けることができ、使用利便性が高まる。
本発明のフィルムは、イージーピール層に隣接して、プロピレン系樹脂から構成される接着樹脂層を有する。また、他の層間強度を高めるために、それらの層間に接着樹脂層を設けることもできる。
本発明のフィルムは、耐ピンホール性を付与する目的で少なくとも1層のポリアミド樹脂(以下、PAと略記することもある)層を有する。また、本発明のフィルムを深絞り底材に用いる場合には、PA層の配設によりフィルムの深絞り成形性が向上して好ましい。
ポリアミド樹脂が共重合体である場合、ポリアミド成分は80モル%以上、好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含まれていることが望ましい。
またポリアミド樹脂がポリマーブレンドである場合には、ポリアミド成分はポリマーブレンド質量全体の70質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含まれていることが望ましい。
また、ポリアミド樹脂層は2層以上設けることもでき、その場合、各層が異なる種類のナイロン系樹脂で形成されていてもよい。
本発明のフィルムは、図1(b)のように、ポリアミド樹脂層の接着樹脂層側とは逆側に、即ち、包装体を作製した際の外気側に、プロピレン系樹脂層を有することができる。
包装体の外気側にプロピレン系樹脂層を配することにより、高温殺菌後のフランジ部(包装体における収容部の周囲のシール部分)のカール抑制に有効である。
使用可能なプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、エチレン等とのランダム共重合体またはブロック共重合体、等が挙げられる。高温殺菌後のカール抑制や白化防止の観点からホモポリプロピレンが好ましい。
本発明の共押出多層フィルムは、イージーピール層、接着樹脂層、ポリアミド樹脂層をこの順で有し、接着樹脂層がイージーピール層に隣接していることを満たせば、他の層を有することができる。
本発明のフィルムは、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法、等の公知の方法で製造でき、共押出法が製造工程を集約できる点から好ましい。
本発明のフィルムの各層には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
本発明のフィルムは深絞り底材に好適に用いることができ、その場合の被着体となる蓋材の構成例を以下に説明する。
レトルト用包装体の蓋材として、ポリプロピレン樹脂フィルムからなる外層と、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムからなる中間層と、ポリプロピレン樹脂フィルムからなる内層との積層体が挙げられる。外層とは包装体の外気側に位置し、内層とは収容物側に位置する層である。
以下に、各層のフィルムについて説明する。
蓋材は、ヒートシール時に外層より接触加熱される為、蓋材外層が熱板に溶着しない為には、外層PPフィルムの融点は、155℃以上が好ましく、158℃以上がより好ましく、160℃以上が更に好ましい。その観点からホモポリプロピレンの使用が好ましい。
OPAフィルムに用いられるポリアミド樹脂は、本発明のフィルムのポリアミド樹脂層に例示の樹脂を用いることができる。フィルム延伸倍率は、延伸効果が現れる倍率であれば特に限定されないが、フィルム流れ方向を縦。フィルム幅方向を横とした場合、延伸温度50〜150℃で、縦2.5倍以上、横3.0倍以上、好ましくは縦2.7〜3.2倍、横3.3〜4.0倍である。OPAフィルムの95℃5分間における熱水収縮率は縦1.0〜3.0%、横1.5〜3.5%、好ましくは縦1.5〜2.5%、横1.8〜2.8%である。
また、OPAフィルムとして、市販の6ナイロン/MXD6ナイロン/6ナイロンの構成、又は6ナイロン/EVOH/6ナイロンの構成の延伸フィルムも好適に用いることができる。
蓋材内層は、高温殺菌時に底材と融着しない為に、内層PPフィルムの融点の下限は、125℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、135℃以上が更に好ましい。また、蓋材外層がシール熱板に溶着せずに蓋材内層がヒートシールされる為に、内層PPフィルムの融点の上限は、155℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が更に好ましい。この観点から、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体の使用が好ましい。
蓋材の総厚は、ヒートシール性の点から150μm以下が好ましく、50〜130μmがより好ましく、70〜110μmが更に好ましい。150μm以下により、シール加熱時間を短く設定でき、且つ良好なヒートシール性により十分な包装能力が得られる。
本発明のフィルムは、袋体のフィルムとしても、深絞り包装体の蓋材としても底材としても使用できるが、下記実施例においては、本発明のフィルムを深絞り底材に用いた例を示す。
尚、樹脂の融点はJIS K 7121法に準じて測定したものである。
PP ;ポリプロピレン樹脂
EVOH ;エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(高耐熱グレード)
MXD ;MXD−6ナイロン
ADPP ;ポリプロピレン系接着樹脂(密度0.89kg/m3、融点161℃)
EP2 ;プロピレン系樹脂(融点140℃)、スチレン系エラストマー、および高密度ポリエチレン(融点130℃)の組成物、組成質量比66:4:30
EP3 ;プロピレン系樹脂(融点140℃)と高密度ポリエチレン(融点130℃)の組成物、組成質量比70:30
EP4 ;プロピレン系樹脂(融点125℃)と高密度ポリエチレン(融点130℃)の組成物、組成質量比70:30
<実施例1> PA(100)/ADPP(10)/EP1(10)
<実施例2> PP(50)/PA(50)/ADPP(10)/EP1(10)
<実施例3> PA(100)/ADPP(10)/EP2(10)
<実施例4> PA(90)/EVOH(10)/ADPP(10)/EP2(10)
<実施例5> PA(90)/MXD(10)/ADPP(10)/EP2(10)
<実施例6> PP(50)/PA(50)/ADPP(10)/EP2(10)
<比較例1> PA(100)/ADPP(10)/EP3(10)
<比較例2> PA(100)/ADPP(10)/EP4(10)
(1)深絞り包装体の作製
各例で作製した共押出多層フィルムを深絞り底材用フィルムとして用い、また下記の蓋材を用い、深絞り包装機(大森機械工業社製FV6300)にて、シール幅7mm、シール時間を2秒、シール温度を140℃、150℃、160℃にそれぞれ設定して、図2に示すような包装体を作製した。
図2、図3において、網掛け表記部5は、内容物8としてハンバーグを含んだ深絞り成形部であり、内容物の周縁部は、底材と蓋材とのヒートシール部6である。角部は、蓋材と底材をヒートシールしていない、開封きっかけ部7である。包装体の長辺は140mm、短辺は120mm、開封きっかけ部は縦横30mmである。
次の略号で示す各フィルムを用い、ドライラミネート法にて積層フィルムを作製した。
h−CPP; 無延伸ホモポリプロピレンフィルム(融点160℃、30μm厚)
OPA ; 二軸延伸ナイロン6フィルム(融点220℃、15μm厚)
OPET ; 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(融点250℃、12μm厚)
r−CPP; 無延伸ランダムポリプロピレンフィルム(融点140℃、40μm厚)
<蓋材2> OPA//r−CPP
<蓋材3> OPET//OPA//r−CPP
各例の共押出し多層フィルムと、蓋材とを用い、各温度にてヒートシールした際に、蓋材がシール熱板に溶着するかを観察した。溶着なしの場合を「○」、溶着ありの場合を「×」と評価した。
各例の共押出多層フィルムと、蓋材とを用い、各温度にてヒートシールした際の剥離強度をオートグラフ機(エー・アンド・デイ社製MCT−2150)、剥離速度200mm/分の条件で測定した。
各例の共押出多層フィルムと、蓋材とを用い、150℃にてヒートシールした深絞り包装体を121℃30分間レトルト処理し放冷させた後、図2に示すように、包装体の底材4を上側に、蓋材5を下側にして置いた場合の水平面6に対するフランジ部の最も高いカール箇所の高さを測定した。
各例の共押出多層フィルムと、蓋材とを用い、150℃にてヒートシールした深絞り包装体を121℃30分間レトルト処理し、開封きっかけ部の底材と蓋材との融着の有無を観察した。融着なしの場合を「○」、融着ありの場合を「×」と評価した。
(6)底材フィルム同士の融着
各例の共押出多層フィルム10cm角を2枚用い、イージーピール層同士を内側へ向け、シール幅7mm、シール時間を2秒、シール温度150℃の条件でフィルム周囲の四辺をヒートシールし袋体を作製した。その袋体を121℃30分間、または130℃30分間のレトルト処理を行い、フィルム同士の融着の有無を観察した。融着なしの場合を「○」、融着ありの場合を「×」と評価した。
各例の共押出多層フィルムと蓋材1とを用い、評価方法(1)〜(6)を行った結果を表1に記す。尚、表中の「EP」は、評価方法(3)の剥離強度を意味し、数値の単位は(N/15mm)である。また、「カール」は、評価方法(5)の最大カール高さを意味し、数値の単位は(mm)である。
実施例2では、最外層にPP層を配したことにより、カールが特に小さかった。
実施例3〜6は、イージーピール層に高融点のポリエチレンを用いたため、130℃ハイレトルト条件においてもフィルムのイージーピール層同士が融着しなかった。
比較例2は、イージーピール層にスチレン系エラストマーが含まれていないが、融点の低いプロピレン系樹脂の配合により剥離強度2.0N/15mm幅以上を得たが、レトルト後の開封きっかけ部の融着が発生した。
実施例1の共押出多層フィルムと蓋材1〜3を用い、評価方法(1)〜(5)を行った結果を表2に示す。
また、実験例6の共押出多層フィルムと蓋材1〜3を用い、評価方法(1)〜(5)を行った結果を表3に示す。
尚、表中の略語は表1と同じである。
2 接着樹脂層
3 ポリアミド樹脂層
4 プロピレン系樹脂層
5 深絞り成形部
6 ヒートシール部
7 開封きっかけ部
8 内容物
9 蓋材
10 水平面
11 カール高さ
Claims (7)
- イージーピール層、接着樹脂層、およびポリアミド樹脂層をこの順に有する共押出多層フィルムであって、前記イージーピール層が、プロピレン系樹脂、スチレン系エラストマー、およびエチレン系樹脂で構成され、前記接着樹脂層が、プロピレン系樹脂で構成され、かつ、イージーピール層に隣接することを特徴とするレトルト用共押出多層フィルム。
- 前記イージーピール層のプロピレン系樹脂の融点が140℃以上であり、かつ、前記イージーピール層のエチレン系樹脂がエチレン系樹脂100質量%に対し、高密度ポリエチレン樹脂を55質量%以上含有する、請求項1に記載のレトルト用共押出多層フィルム。
- ポリプロピレン樹脂で構成される被着体と150℃でヒートシールし、放冷後23℃における剥離強度が2.0N/15mm幅以上12.0N/15mm幅以下である請求項1または2に記載のレトルト用共押出多層フィルム。
- ポリプロピレン系樹脂で構成される被着体とヒートシールを行い、そのうち一部分をヒートシールせず開封きっかけ部とし、121℃30分間レトルト処理しても開封きっかけ部が融着しない、請求項1〜3の何れかに記載のレトルト用共押出多層フィルム。
- ポリアミド樹脂層の接着樹脂層側とは逆側にプロピレン系樹脂層を有する、請求項1〜4の何れかに記載のレトルト用共押出多層フィルム。
- 請求項1〜5の何れかに記載のレトルト用共押出フィルムを用いた蓋材または深絞り底材。
- 請求項6に記載の蓋材または深絞り底材と、ポリプロピレン系樹脂被着体とからなるレトルト用包装体。
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