JP2015134531A - 自動車用内装構造、及び、自動車内装用蓋部材 - Google Patents

自動車用内装構造、及び、自動車内装用蓋部材 Download PDF

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Abstract

【課題】内装部材の貫通穴を塞ぐ分離可能な蓋部材を着脱することを容易にすることが可能な技術を提供する。【解決手段】自動車用内装構造ST1は、繊維性の表皮層12を有する内装部材(10)に形成された貫通穴20を蓋部材50で塞ぐものである。蓋部材50は、内装部材(10)から分離可能とされている。内装部材(10)の表皮層12は、一般部13よりも凹んで蓋部材50を受け入れる受入部14を有している。本内装構造ST1は、蓋部材50の裏側52と、受入部14の表皮層12と、を離脱可能に係合させる係合部63が設けられている。【選択図】図5

Description

本発明は、繊維性の表皮層を有する内装部材に形成された貫通穴を蓋部材で塞ぐ自動車用内装構造、及び、自動車内装用蓋部材に関する。
自動車の車体部材の車室側には、フロアカーペット等、繊維性の表皮層を有する内装部材が設けられている。この内装部材には厚み方向へ貫通した穴が様々な理由で形成されることがあり、この貫通穴を塞ぐための蓋部材が内装部材に設けられている。例えば、運手席付近のフロアカーペットには、フレームやシャーシといった車体部材に設けられた車体識別番号を視認するための開口(貫通穴)が形成されている。特許文献1には、通常時に開口を閉鎖し車体識別番号の確認時に開口を開放する傾動可能なカバーを有するカバーユニットがフロアカーペットに取り付けられていることが示されている。このカバーユニットは、フロアカーペットの開口の縁部を挟持する第一取付板部及び第二取付板部、並びに、薄肉部を介して第一取付板部と傾動可能に繋がったカバーを有し、合成樹脂により一体成形されている。前記開口縁部を挟持するための第一取付板部にカバーが繋がっているため、カバーはフロアカーペットから分離されない。
特開2007−69697号公報
フロアカーペットから分離されないカバーは、開けても手で保持しなければ薄肉部の復元力により閉じてしまうことがある。これは、車体識別番号を視認するのに不都合である。
なお、上述した不都合は、フロアカーペット以外にも繊維性の表皮層を有する内装部材にも考えられ、車体識別番号を視認すること以外にも考えられる。
本発明は、内装部材の貫通穴を塞ぐ分離可能な蓋部材を着脱することを容易にすることが可能な技術を提供する目的を有する。
本発明は、繊維性の表皮層を有する内装部材に形成された貫通穴を蓋部材で塞ぐ自動車用内装構造であって、
前記蓋部材は、前記内装部材から分離可能とされ、
前記内装部材の表皮層は、一般部よりも凹んで前記蓋部材を受け入れる受入部を有し、
前記蓋部材の裏側と前記受入部とを離脱可能に係合させる係合部が設けられている、態様を有する。
上記係合部があることにより、分離可能な蓋部材の裏側と、繊維性の表皮層において一般部よりも凹んだ受入部と、が離脱可能に係合する。従って、本態様は、内装部材の貫通穴を塞ぐ分離可能な蓋部材を着脱することが容易な自動車用内装構造を提供することができる。
また、本発明は、一般部よりも凹んだ受入部を有する繊維性の表皮層を備える内装部材に形成された貫通穴を塞ぐ自動車内装用蓋部材であって、
前記蓋部材の裏側には、前記受入部と離脱可能に係合する係合部が設けられている、態様を有する。
上記係合部があることにより、分離可能な蓋部材の裏側は、一般部よりも凹んだ受入部の繊維性の表皮層と離脱可能に係合する。従って、本態様は、着脱することが容易な自動車内装用蓋部材を提供することができる。
請求項1〜請求項4に係る発明によれば、内装部材の貫通穴を塞ぐ分離可能な蓋部材を着脱することが容易な自動車用内装構造を提供することができる。
請求項5に係る発明によれば、着脱することが容易な自動車内装用蓋部材を提供することができる。
蓋部材50が設けられる内装部材の例を示す斜視図。 内装部材に取り付けられた蓋部材50及びその周辺の例を示す斜視図。 内装部材の受入部14及びその周辺の例を示す平面図。 (a)は蓋部材50の例を示す側面図、(b)は蓋部材50の裏側52の例を示す底面図。 内装構造ST1を図3のA1−A1に相当する位置で切断した断面図の例。 内装構造ST1を図3のA2−A2に相当する位置で切断した断面図の例。 内装部材の受入部14から蓋部材50を外す様子を例示する斜視図。
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
(1)本技術の概要:
まず、図1〜7を参照して本技術の概要を説明する。
自動車用内装構造ST1は、繊維性の表皮層12を有する内装部材(例えばフロアカーペット10)に形成された貫通穴20を蓋部材50で塞ぐものである。前記蓋部材50は、前記内装部材(10)から分離可能とされている。前記内装部材(10)の表皮層12は、一般部13よりも凹んで前記蓋部材50を受け入れる受入部14を有している。本内装構造ST1は、前記蓋部材50の裏側52と前記受入部14とを離脱可能に係合させる係合部63が設けられている。蓋部材裏側52に係合部63があることにより、分離可能な蓋部材50の裏側52と、繊維性の表皮層12において一般部13よりも凹んだ受入部14と、が離脱可能に係合する。従って、本態様は、内装部材(10)の貫通穴20を塞ぐ分離可能な蓋部材50を着脱することが容易な自動車用内装構造ST1を提供することができる。
また、自動車内装用蓋部材50は、一般部13よりも凹んだ受入部14を有する繊維性の表皮層12を備える内装部材(10)に形成された貫通穴20を塞ぐものである。前記蓋部材50の裏側52には、前記受入部14と離脱可能に係合する係合部63が設けられている。蓋部材裏側52に係合部63があることにより、分離可能な蓋部材50の裏側52は、一般部13よりも凹んだ受入部14の繊維性の表皮層12と離脱可能に係合する。従って、本態様は、着脱することが容易な自動車内装用蓋部材50を提供することができる。
前記蓋部材50は、少なくとも表側51に繊維性の表皮材62を有してもよい。内装部材(10)に繊維性の表皮層12があり、蓋部材50の表側51に繊維性の表皮材62があることにより、内装部材(10)と蓋部材50との一体感が向上する。従って、本態様は、良好な意匠の自動車用内装構造ST1を提供することができる。
ここで、内装部材(10)の表皮層12と蓋部材50の表皮材62とは、異なる材料でもよいが、同じ材料であるとさらに一体感が向上する。内装部材(10)の表皮層12や蓋部材50の表皮材62は、繊維性であればよいが、パイルを含むとさらに一体感が向上する。むろん、内装部材(10)のパイルと蓋部材50のパイルは、異なる材料でもよいが、同じ材料であるとさらに一体感が向上する。
前記蓋部材50は、該蓋部材50の表側51から外周部53を連続して覆う繊維性の表皮材62を有してもよい。この態様は、蓋部材50の捲れ(めくれ)が抑制されるので、見栄えを向上させることが可能となる。
前記係合部63はホック、クリップ、ボタン、等でもよいが、係合部63が面ファスナーである態様は、内装部材(10)の受入部14に対して蓋部材50を着脱することがさらに容易な自動車用内装構造ST1を提供することができる。
前記蓋部材50は、柔軟性を有する蓋本体部61の少なくとも表側51が繊維性の表皮材62で覆われてもよい。前記蓋部材50の裏側52には、前記係合部63が設けられていない操作部であって前記蓋部材50の裏側52と前記受入部14との間への指F1の挿入を許容する操作部66が設けられてもよい。この操作部66と受入部14との間に指F1を挿入して蓋部材50を引っ張ることができるので、本態様は、内装部材(10)の受入部14から蓋部材50を外すことが容易な自動車用内装構造ST1を提供することができる。
前記蓋部材50の裏側52には、前記蓋部材50の裏側52と前記受入部14との間への指F1の挿入を許容する操作部66と、該操作部66から離隔した位置にある凹形状65と、が設けられてもよい。前記受入部14には、前記凹形状65に入る凸形状15が設けられてもよい。凹形状65と凸形状15とにより蓋部材裏側52と受入部14との接触面積が増えるので、本態様は、内装部材(10)の受入部14から蓋部材50を外すことが容易な自動車用内装構造ST1を提供することができる。
(2)具体例:
図1は、自動車内装用蓋部材50が設けられる内装部材の例としてフロアカーペット(内装部材)10の車室側を示している。図中、FRONT、REAR、LEFT、RIGHT、UP、DOWNは、それぞれ、前、後、左、右、上、下を示す。左右の位置関係は、自動車の前を見る方向を基準とする。また、符号D1は蓋部材50の長手方向、符号D2は蓋部材50の短手方向、符号D3は上下方向、を示す。図1の例では、長手方向D1が前後方向であり、短手方向D2が左右方向である。むろん、長手方向D1が左右方向であって短手方向D2が前後方向である等、長手方向D1及び短手方向D2の向きは限定されない。各方向D1,D2,D3は互いに直交するものとするが、互いに交わっていれば直交しない場合も本発明に含まれる。分かり易く示すため、各方向D1,D2,D3の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。
図1に示すフロアカーペット10は、車体の床面を構成するフロアパネル(車体部材70の一種)に載置される主部31、及び、乗員室前部においてフロアパネル面から上方へ立ち上がったトーボードパネル(車体部材70の一種)に載置される立ち上がり部32を有している。車体部材70は、例えば、金属で形成される。フロアパネルは、凹凸を有しているが、全体として略水平に配置されている。主部31は、このようなフロアパネルに沿った形状、すなわち、凹凸を有するが全体として略平坦な形状に形成されている。立ち上がり部32は、主部31からインストルメントパネル下側のダッシュパネルに向かって緩やかに立ち上がり、左右方向(D2)の中間部にインストルメントから延びるコンソール部を受け入れるための切欠部33が形成されている。フロアカーペット10は、前述の主部31及び立ち上がり部32を有する三次元形状にプレス成形され、車体部材70の車室側に敷設される。
フロアカーペット10には、図1に示すような複数の貫通穴(20,34,35)が形成されている。これらの貫通穴のうち、自動車用内装構造ST1が設けられる貫通穴20を除いて開口と呼ぶことにする。開口34は、座席をフロアパネルに固定するために形成され、運転席用に4箇所設けられ、助手席用に4箇所設けられている。開口35は、エアコンディショナーの風を後方へ送るための送気用の開口である。
図2は、フロアカーペット10に取り付けられた蓋部材50及びその周辺の車室側を例示している。図3は、フロアカーペット10の受入部14及びその周辺の車室側を例示している。図4(a),(b)は、蓋部材50の例を示している。図5,6は、内装構造ST1の断面を例示している。なお、本具体例における蓋部材50の表側51は受入部14に装着された状態の蓋部材50の上面となり、蓋部材50の裏側52は受入部14に装着された状態の蓋部材50の下面となる。蓋部材50の外周部53は、蓋部材50において上面と下面との間を略水平面内で一周する部位となる。
図5,6に示すように、フロアカーペット10は、基材層11と繊維性の表皮層12を有している。
フロアカーペット10には、タフテッドカーペット、ニードルパンチドカーペット、等を用いることができる。
タフテッドカーペットのパイルは、例えば、基布にパイル糸を刺し込むことにより形成される。この場合、基布の裏側にはパイルのバックステッチが形成される。基布には、各種の不織布、各種繊維の編織物、等を用いることができる。基布を構成する繊維には、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン(PP)繊維やエチレン−プロピレン共重合体繊維等が含まれるポリオレフィン系繊維、といった合成繊維等の繊維を用いることができる。
ニードルパンチドカーペットのパイルは、例えば、基布となる不織布をニードリングすることにより形成される。このニードリングにより、不織布に由来する繊維同士が絡められた基布が形成され、基布表面の毛羽がパイルとなる。
タフテッドカーペットやニードルパンチドカーペットのパイルには、ポリアミド系繊維、PP繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等のポリエステル系の繊維、アクリル系の繊維、といった合成繊維等の繊維を適用することができる。このようなパイル及び基布は、フロアカーペット10における繊維性の表皮層12に含まれる。
プレス成形されたフロアカーペット10の三次元形状を維持するため、基布の裏面(車体部材70側の面)に裏打ちが施されてもよい。この裏打ちには、樹脂材料、繊維材料、等を用いることができる。前記樹脂材料は、樹脂(エラストマーを含む)を含む材料であればよく、フィラーといった添加剤が添加された材料でもよい。前記樹脂材料を構成する樹脂は、合成樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が特に好ましい。この熱可塑性樹脂は、低融点(100〜150℃)の樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、酢酸ビニル、等を用いることができる。また、前記繊維材料を構成する繊維は、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、等を用いることができ、熱可塑性の繊維を含む繊維が好ましい。この熱可塑性の繊維を構成する樹脂は、低融点の熱可塑性樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル、等を用いることができる。このような裏打ちは、フロアカーペット10における基材層11に含まれる。
また、プレス成形されたフロアカーペット10の三次元形状を維持するため、基布を構成する繊維に低融点の熱可塑性樹脂を含む繊維を配合してもよい。このような基布はフロアカーペット10における基材層11に含まれ、パイルが表皮層12に含まれる。
裏打ちと基布の少なくとも一方に熱可塑性の成分が含まれる場合、軟化点以上の加熱によって熱可塑性の成分が軟化し、プレス成形後に熱可塑性の成分が固化してフロアカーペット10の三次元形状が維持される。
フロアカーペット10の裏側には、緩衝材や嵩上材等といった機能材が設けられてもよい。例えば、機能材の表側と接触する相手部位(例えば裏打ち又は基布)に熱可塑性の成分が含まれる場合、軟化点以上の加熱によって熱可塑性の成分が軟化し、プレス成形後に熱可塑性の成分が固化して裏側に機能材を有するフロアカーペット10の一体成形品が得られる。このような機能材も、フロアカーペット10における基材層11に含まれる。機能材と相手部位との間にさらに異なる材料が配置される場合、このような異なる材料もフロアカーペット10における基材層11に含まれる。
なお、フロアカーペット10の単位面積あたりの重量(目付)は、100〜4000g/m2が一般的であるものの、この範囲に限定されない。
ところで、蓋部材で覆われる貫通穴は表示確認用の穴に限定されないが、図3に示す貫通穴20は車体識別番号といった表示73を視認するための穴とされている。表示73は、フロアパネルといった車体部材70に設けられ、例えば、図5,6等に示すように車体部材70に取り付けられる車体番号プレート72に設けられてもよいし、車体部材70に直接刻印されてもよい。車体識別番号は、当該自動車の製造元や履歴を確認することができるように車体部材に設けられる番号であり、複数桁の英数字で構成される。このような車体識別番号は、運転者の足元近くに配置されることが多い。図3の例では、車体番号プレート72に設けられた表示73の位置に合わせて表示確認用の貫通穴20がフロアカーペット10に形成されていることが示されている。
車体識別番号は、自動車を運転するときには通常、確認する必要が無く、自動車の売買や輸出等を行うときに確認する必要がある。特開2007-69697号公報に記載の技術では、車体識別番号を視認するための開口を開閉するために合成樹脂製のカバーユニットがフロアカーペットに取り付けられている。カバーユニットのカバーの材料がフロアカーペットとは異なる合成樹脂であるため、カバーとフロアカーペットとの一体感が少ない。また、カバーユニットに一体形成された第一取付板部及び第二取付板部がフロアカーペットの開口の縁部を挟持し、薄肉部を介して第一取付板部と傾動可能に合成樹脂製カバーが繋がっているため、カバーがフロアカーペットから分離されない。このため、カバーを開けても手で保持しなければ薄肉部の復元力によりカバーが閉じてしまうことがある。これは、車体識別番号を視認するのに不便である。さらに、足下近くに配置される合成樹脂製カバーが周囲のフロアカーペットよりも出っ張った段差形状(凸形状)となるので、カバーを踏んだときに違和感が生じることがある。
車体識別番号は頻繁に視認する必要がないので、本技術では、少なくとも表側51に繊維性の表皮材62を有する蓋部材50で車体識別番号を開放可能に覆ってフロアカーペット10との一体感を向上させ、見栄えを向上させている。むろん、フロアカーペット10から蓋部材50を外すと、フロアカーペット10の背後にある車体識別番号を視認することができる。また、フロアカーペット10から蓋部材50を分離することも可能であるので、本内装構造ST1は便利である。さらに、本具体例では、足下近くに配置される蓋部材50の表側51の面がフロアカーペット一般部13の表側の面に合わせられるので、蓋部材50の表側51とフロアカーペット一般部13との一体感が良好である。
図5,6等に示すように、フロアカーペット10の表皮層12は、一般部13よりも凹んで蓋部材50を受け入れる受入部14を有している。なお、一般部13は、表皮層12のうち受入部14の近傍にある部位を意味する。受入部14の近傍が略水平に配置されている場合、受入部14における表皮層12が一般部13よりも凹んでいるとは受入部14の表面が一般部13の表面よりも下側にあることを意味する。図5には、フロアカーペット10における一般部13の裏側と車体部材70との間にサイレンサー(吸音材)40が設けられていることが示されている。サイレンサー40には、軟質ポリウレタンフォームといった発泡品、チップウレタンのように発泡品にバインダーを混ぜて成形した成形品、フェルトといった繊維の集合物、等を用いることができる。発泡品の材料には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、といった合成樹脂(エラストマーを含む)を含む樹脂材料を広く用いることができ、添加剤が添加されてもよい。
表示視認用の貫通穴20は、受入部14の中に形成されている。貫通穴20の形状は特に限定されないが、図3に示す貫通穴20は、長手方向を蓋部材50の長手方向D1に向けた長穴とされている。以下、貫通穴20の長手方向も符号D1で示し、貫通穴20の短手方向も符号D2で示す。貫通穴20の大きさも特に限定されないが、車体識別番号を視認する貫通穴の場合、例えば、長手方向D1の長さを100〜500mm程度、短手方向D2の長さを30〜100mm程度とすることができる。受入部14の深さ、すなわち、一般部13から貫通穴20までの深さは、例えば、5〜50mm程度とすることができる。受入部14における貫通穴20の周縁部の幅(水平方向の長さ)は、長手方向D1において蓋部材50の操作部66とは反対側となる表皮延出部14aを除いて、例えば、5〜20mm程度とすることができる。なお、表皮延出部14aには、蓋部材50の裏側52の凹形状65に入る凸形状15が形成されている。
貫通穴20を開放可能に塞ぐ蓋部材50は、図1等に示すように、フロアカーペット10から分離可能とされている。図4〜6等に示す蓋部材50は、蓋本体部61、繊維性の表皮材62、係合部63、を有し、長手状に形成されている。
蓋本体部61には、例えば、サイレンサー40や基材層11と同様、軟質ポリウレタンフォームやビーズ法による発泡プラスチックといった発泡品、チップウレタンのように発泡品にバインダーを混ぜて成形した成形品、フェルトといった繊維の集合物、等を用いることができる。発泡品の材料には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、といった合成樹脂(エラストマーを含む)を含む樹脂材料を広く用いることができ、添加剤が添加されてもよい。これらの材料は、蓋本体部61に受入部14を立体的に埋める厚みを確保したうえで重量を極力大きくしない観点から、好ましい。また、蓋本体部61には、ゴムやエラストマーといった弾性を有する材料の成形品等を用いることも可能である。蓋本体部61が軟質ポリウレタンフォームやチップウレタンやゴム等のように柔軟性を有していると、受入部14から蓋部材50を取り出し易いので、好ましい。図4(b)には、蓋部材50の裏側52の一部に蓋本体部61が露出していることが示されている。
表皮材62は、繊維性でなくてもよいが、繊維性材料であるとフロアカーペット10との一体感が向上し、見栄えが向上する。繊維性である場合の表皮材62は、内装部材の表皮層12と同様、パイルが設けられた基布でもよいし、不織布等の繊維性材料でもよい。従って、表皮材62には、タフテッドカーペット、ニードルパンチドカーペット、等を適用してもよい。表皮層12のパイルと表皮材62のパイルは、異なる材料でもよいが、同じ材料であると一体感が向上する。表皮層12の材質と表皮材62の材質とを揃えることにより、普段使用しない貫通穴20の蓋部材50を内装部材(10)に対して目立たないように配置することができる。
表皮材62は、蓋本体部61の少なくとも表側(51)を覆うように設けられる。ただ、表皮材62が蓋部材50の表側51のみ覆っていると、蓋部材50の着脱操作により外周部53に表皮材62の反り返りといった捲れが生じる可能性がある。そこで、蓋本体部61の表側(51)から外周部(53)を連続して表皮材62で覆う方が好ましい。表皮材62が蓋部材50の表側51から外周部53を連続して覆っていると、蓋部材50の捲れが抑制され、見栄えが向上する。さらに、図4〜6に示すように表皮材62が蓋本体部61の表側(51)から外周部(53)を経て裏側(52)の少なくとも一部まで巻き込むように覆っていると、蓋部材50の捲れがさらに抑制され、見栄えがさらに向上する。蓋本体部61と表皮材62との接着には、両面粘着シート、両面テープ、液状接着剤、等を用いることができる。また、表皮材62の裏面に熱可塑性の裏打ちを設けて軟化点以上に加熱することにより蓋本体部61と表皮材62とを接着してもよい。
蓋部材50の裏側52にある係合部63は、受入部14と重なる部位の少なくとも一部を含む位置に設けられている。係合部63には、例えば、図5に示すような雄面ファスナーといった面接合材等を用いることができる。図5に示す雄面ファスナーは、弾性を有するフック部63aを多数有している。フック部63aは、表皮層12のパイル12aと離脱可能に係合する。フック部63aとパイル12aとが係合することにより、人為的な力を加えない限り蓋部材50が剥がれ難く、受入部14から蓋部材50が不用意に脱落することが抑制される。また、受入部14から蓋部材50を外すときには、フック部63aとパイル12aとの係合が容易に離脱する。従って、係合部63が面ファスナーであると、受入部14の表皮層12に対して蓋部材50を着脱することがさらに容易となる。むろん、係合部63は、フック部以外にも、粘着性を有する部材等でもよい。表皮材62を設けた蓋本体部61と接合部63との接着には、液状接着剤、両面テープ、両面粘着シート、等を用いることができる。
ただ、蓋部材裏側52の係合部63が受入部14と重なる部位の全てに設けられると、凹んだ受入部14から蓋部材50を外し難くなる。そこで、図4(b)及び図5,6に示すように、蓋部材50の裏側52には、係合部63が設けられず蓋部材裏側52と受入部14との間への指F1の挿入を許容する操作部66が設けられている。操作部66では蓋部材裏側52と受入部14とが係合していないので、利用者は蓋部材裏側52と受入部14との狭い隙間に指F1を入れて蓋部材50を略上方の取り外し方向D4へ引っ張ることができる。また、利用者が蓋部材50を引っ張る際に最も力が要る初期の力が小さくて済む。本具体例の蓋部材50の操作部66は、長手方向D1において受入部14の表皮延出部14aとは反対側となる端部50aの近傍に設けられている。操作部66が長手方向D1の端部50aの近傍にあるので、梃子の原理により利用者は蓋部材50を引っ張る力を加え易い。さらに、操作部66があることにより利用者の指F1が十分に蓋部材裏側52に回るので、受入部14と係合部63との係合が強くても容易に蓋部材50を外すことができる。
以上のことから、図6に示すように操作部66と受入部14との間に指F1を挿入して蓋部材50を引っ張ると、図5の仮想線で示される蓋部材501のように操作部66側から蓋部材を外していくことができ、やがて図5の仮想線で示される蓋部材503のように蓋部材をフロアカーペット10から分離することも可能である。操作部66があることにより、受入部14から蓋部材50を容易に外すことができる。
また、係合部63には、長手方向D1において操作部66側となる縁部に切欠部64が形成されている。切欠部64は、短手方向D2において右側(受入部14近傍の操作補助部16側)に設けられている。切欠部64の形状は、図4(b)に示すような略長方形状でもよいし、略長方形状以外の形状でもよい。受入部14の周囲にある表皮層12のうち、切欠部64の近傍、すなわち、長手方向D1において蓋部材50の中間位置LM1よりも操作部66側の位置、且つ、短手方向D2において右側の位置には、受入部14よりも高く一般部13よりも低い操作補助部16が形成されている。図6に示す具体例では、フロアカーペット10における操作補助部16の裏側と車体部材70との間にサイレンサー40が設けられている。操作補助部16を受入部14よりも高くしているのは、蓋部材裏側52と受入部14との隙間から車体部材(車体番号プレートを含む。)が見えないようにして見栄えを向上させるためである。一般部13よりも低い操作補助部16、及び、切欠部64があることにより、利用者は操作補助部16から容易に操作部66と受入部14との間に指F1を挿入することができ、蓋部材50を引っ張ることができる。
上記係合部63を有する蓋部材50は、フロアカーペットの受入部14をちょうど埋める程度の大きさを有する立体形状とされている。蓋部材50の厚み(上下方向D3の長さ)がほぼ受入部14の深さに合わせられているので、受入部14に挿入された蓋部材50がフロアカーペット一般部13から出っ張った形状(凸形状)とならず、表皮材62の表面と一般部13の表面とが略面一とされる。従って、蓋部材50の表側51とフロアカーペット一般部13との一体感が良好であり、足下近くにある蓋部材50に足が引っ掛かり難く、蓋部材50を踏んだときに違和感が生じ難い。なお、表皮材62の表面と一般部13の表面との段差が蓋部材50の厚みの0.3倍以下(より好ましくは0.2倍以下、さらに好ましくは0.1倍以下)であるとき、表皮材62の表面と一般部13の表面とが略面一であるとする。
さらに、蓋部材50の着脱を容易にするため、蓋部材50の裏側52には、操作部66から離隔した位置に凹形状65が形成されている。蓋部材50の凹形状65は、長手方向D1において中間位置LM1よりも受入部14の表皮延出部14a側、すなわち、長手方向D1において操作部66とは反対側の端部50bの近傍に設けられている。凹形状65は、表皮延出部14aの凸形状15に合わせた形状とされ、この凸形状15を受け入れる。凸形状15と凹形状65の大きさや形は蓋部材の開閉のし易さを考慮して様々に設定することができ、緩やかな湾曲形状が好ましい。凹形状65の大きさは、限定されないが、例えば、深さ(上下方向D3の長さ)を2〜3mm程度、幅(長手方向D1の長さ)を20〜40mm程度、奥行き(短手方向D2の長さ)を40〜60mm程度とすることができる。凸形状15の大きさは、凹形状65に合わせて、例えば、高さ(上下方向D3の長さ)を2〜3mm程度、幅(長手方向D1の長さ)を20〜40mm程度、奥行き(短手方向D2の長さ)を40〜60mm程度とすることができる。凸形状15及び凹形状65があることにより、蓋部材裏側52と受入部14との接触面積が増える。このため、長手方向D1において操作部66のある端部50aの近傍から蓋部材50を取り外し方向D4へ引っ張ったときに蓋部材50の開閉動作の位置関係がより確実に決まり、フロアカーペットの受入部14から蓋部材50を外すことが容易となる。なお、蓋部材裏側52と受入部14との接触面積を増やす観点からは、表皮延出部14aに凹形状を形成し、蓋部材裏側52に前記凹形状に入る凸形状を形成してもよい。
本技術の自動車用内装構造ST1は、上記フロアカーペット10と上記蓋部材50とで構成される。フロアカーペット10と蓋部材50は、例えば、以下のようにして製造することができる。
フロアカーペット10については、例えば、基材層11となる基材と、繊維性の表皮層12となる繊維性材料と、を重ねて貫通穴(20,34,35)を有する三次元形状にプレス成形することにより、製造することができる。
蓋部材50については、例えば、蓋本体部61と繊維性の表皮層12とを接合した中間成形物を形成し、この中間成形物の裏側に係合部63を接合することにより、製造することができる。中間成形物の形成には、例えば、蓋部材50の形状に合わせたキャビティを有する金型を用い、繊維性の表皮材62となる繊維性材料を蓋本体部61となる基材の表側から外周部を経て裏側の一部まで巻き込むように両面粘着シートを介して合わせた複合材料を前記キャビティに入れて圧縮力を加えて成形することにより、形成することができる。蓋部材50は、例えば、中間成形体の裏側と係合部63とを接着剤により接着することにより、形成することができる。
(3)具体例の動作、作用、及び、効果:
次に、本具体例の自動車用内装構造ST1の動作、作用、及び、効果を説明する。
自動車の売買や輸出を行うとき等、車体識別番号といった表示73を視認する必要がある場合には、フロアカーペット10の受入部14に挿入された蓋部材50を受入部14から外す必要がある。蓋部材50を受入部14から外す際には、図6に示すように操作部66と受入部14との間に指F1を挿入して蓋部材50を図5に示す取り外し方向D4へ引っ張ればよい。すると、長手方向D1において操作部66側から蓋部材裏側52と受入部14との係合部63による係合が離脱されていき、図5の仮想線で示される蓋部材501のように操作部66側から蓋部材を外していくことができる。さらに蓋部材50を取り外し方向D4へ引っ張ると、図7に示される蓋部材502のように蓋部材50の傾きが急になる。このとき、受入部14の表皮延出部14aに凸形状15があり、蓋部材裏側52に凹形状65があることにより、蓋部材裏側52と受入部14との接触面積が大きく、開いていく蓋部材50の位置関係がより確実に決まる。
図7に示す状態でも貫通穴20から表示73を視認することができるが、蓋部材502を手で保持し続ける必要がある。本内装構造ST1では、さらに蓋部材50を取り外し方向D4へ引っ張ると、図5の仮想線で示される蓋部材503のように蓋部材をフロアカーペット10から分離することも可能である。本内装構造ST1は、外していく蓋部材50の位置を図7に示す状態で止めることもできるし、図5に示す蓋部材503のように蓋部材を受入部14から分離することもできるので、便利である。
一方、取り外した蓋部材50を受入部14に取り付ける際には、図1に示すように蓋部材50を受入部14に挿入すればよい。すると、蓋部材裏側52と受入部14とが係合部63により係合するので、受入部14から蓋部材50が不用意に脱落することが抑制される。
また、図7に示す状態からは、長手方向D1において凹形状65側を中心として下側(取り外し方向D4とは反対側)へ蓋部材50を動かせばよい。上述した凸形状15及び凹形状65があることにより、蓋部材裏側52と受入部14の表皮層12との接触面積が大きく、閉じていく蓋部材50の位置関係がより確実に決まる。
以上説明したように、蓋部材裏側52に係合部63があることにより、分離可能な蓋部材50の裏側52と、繊維性の表皮層12において一般部13よりも凹んだ受入部14と、が離脱可能に係合する。従って、本技術は、内装部材(10)の貫通穴20を塞ぐ分離可能な蓋部材50を着脱することを容易にすることが可能となる。
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本発明は、フロアカーペットのみならず、ドアトリム、ピラートリム、ルーフトリム、等にも適用可能である。
上記蓋部材50のように裏側52に繊維性の表皮材62といった繊維性材料がある場合、受入部14の表皮層12に面ファスナーといった係合部を設けてもよい。この係合部も、蓋部材裏側52と受入部14とを離脱可能に係合させる本技術の係合部に含まれる。
なお、蓋部材裏側52と受入部14とを離脱可能に係合させる係合部があれば、蓋部材裏側52が一般部13よりも凹んだ受入部14の繊維性の表皮層12と離脱可能に係合するので、貫通穴20を塞ぐ分離可能な蓋部材50を着脱することが容易となる。従って、上記凸形状15、上記凹形状65、上記操作部66、の一部又は全部を有してない自動車用内装構造であっても、本発明の基本的な効果が得られる。むろん、上記凹形状65と上記操作部66の少なくとも一方を有していない自動車内装用蓋部材であっても、本発明の基本的な効果が得られる。
また、表示確認用の貫通穴20を蓋部材50で塞ぐ内装構造ST1において、上記係合部が無くても、蓋部材50の少なくとも表側51に繊維性の表皮材62があると、内装部材(10)と蓋部材50との一体感が向上する新規な効果が得られる。従って、本発明は、繊維性の表皮層12を有する内装部材(10)に形成された表示確認用の貫通穴20を蓋部材50で塞ぐ自動車用内装構造ST1において、
前記蓋部材50は、前記内装部材(10)から分離可能とされ、
前記内装部材(10)の表皮層12は、一般部13よりも凹んで前記蓋部材50を受け入れる受入部14を有し、
前記蓋部材50は、少なくとも表側51に繊維性の表皮材62を有する、態様を有する。
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、内装部材の貫通穴を塞ぐ分離可能な蓋部材を着脱することを容易にすることが可能な技術等を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項(実施形態に記載した態様を含む。)に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
10…フロアカーペット(内装部材)、11…基材層、
12…繊維性の表皮層、12a…パイル、13…一般部、
14…受入部、14a…表皮延出部、15…凸形状、16…操作補助部、
20…貫通穴、
31…主部、32…立ち上がり部、33…切欠部、34,35…開口、
40…サイレンサー、
50…蓋部材、50a,50b…端部、51…表側、52…裏側、53…外周部、
61…蓋本体部、62…繊維性の表皮材、63…係合部、63a…フック部、
64…切欠部、65…凹形状、66…操作部、
70…車体部材、72…車体番号プレート、73…表示、
D1…長手方向、D2…短手方向、D3…上下方向、D4…取り外し方向、
F1…指、LM1…中間位置、ST1…内装構造。

Claims (5)

  1. 繊維性の表皮層を有する内装部材に形成された貫通穴を蓋部材で塞ぐ自動車用内装構造であって、
    前記蓋部材は、前記内装部材から分離可能とされ、
    前記内装部材の表皮層は、一般部よりも凹んで前記蓋部材を受け入れる受入部を有し、
    前記蓋部材の裏側と前記受入部とを離脱可能に係合させる係合部が設けられている、自動車用内装構造。
  2. 前記蓋部材は、該蓋部材の表側から外周部を連続して覆う繊維性の表皮材を有する、請求項1に記載の自動車用内装構造。
  3. 前記蓋部材は、柔軟性を有する蓋本体部の少なくとも表側が繊維性の表皮材で覆われ、
    前記蓋部材の裏側には、前記係合部が設けられていない操作部であって前記蓋部材の裏側と前記受入部との間への指の挿入を許容する操作部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の自動車用内装構造。
  4. 前記蓋部材の裏側には、前記蓋部材の裏側と前記受入部との間への指の挿入を許容する操作部と、該操作部から離隔した位置にある凹形状と、が設けられ、
    前記受入部には、前記凹形状に入る凸形状が設けられている、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の自動車用内装構造。
  5. 一般部よりも凹んだ受入部を有する繊維性の表皮層を備える内装部材に形成された貫通穴を塞ぐ自動車内装用蓋部材であって、
    前記蓋部材の裏側には、前記受入部と離脱可能に係合する係合部が設けられている、自動車内装用蓋部材。
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