JP6565722B2 - 乗物用シート - Google Patents
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また第1発明の乗物用シートは、機能部材が、内装部材側に配置する第一部位と、シートカバー側に配置する第二部位とを積層状態で一体的に有しているとともに、第一部位が、第二部位に比して柔軟である。本発明では、第一部位が相対的に柔軟であるため、機能部材に適度な可撓性を持たせることができるとともに、内装部材が衝突した際に過度に大きな衝突音が生じることを極力回避することができる。さらに第一部位と第二部位を積層状態で一体化したことにより、これら両部位によって、機能部材に適度な硬さを持たせることができる。
シートバック6は、上述の基本構成(6F,6P,6S)とともに、図2を参照して面状の機能部材20を有する(各部材の詳細は後述)。この機能部材20は、シートバック6の後面側に配設されており、図3を参照して、シートフレーム6Fとシートカバー6Sの間に配置されている。こうして機能部材20によってシートフレーム6Fを覆うことにより、シートバック6の後面に他部材が衝突したとしても、この衝突時の衝撃を機能部材20にて緩和することができる。そしてこの種のシート構成においては、シートフレーム6Fと機能部材20が衝突して異音が発生したり、シートフレーム6Fに機能部材20が引っかかってシートカバー6Sにシワが生じたりすることが懸念される。そこで本実施形態では、後述するように、シートカバー6Sとシートフレーム6Fの間に可撓性を有する面状の機能部材20を性能良く配置することとした。以下、各構成について詳述する。
ここでシートフレーム6Fは、図1を参照して、典型的に略アーチ状の枠体であり、剛性に優れる金属や硬質樹脂などの素材にて形成できる。このシートフレーム6Fは、本発明の内装部材に相当する部材であり、後述するシートカバー6Sに覆われた状態でシート内に配設されている。またシートフレーム6Fの前側には、シートパッド6P(図示省略)が配置されており、このシートパッド6Pは、例えばポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)等の発泡樹脂で形成できる。
機能部材20は、図3〜図5を参照して、シートバック6の後面において、シートカバー6Sとシートフレーム6Fの間に配置される可撓性を有する面材である。この機能部材20は、図6を参照して、複数の部位が重ねられた状態で一体化された面材であり、第一部位21と、第二部位22と、接着部位24を有する(各部位の詳細は後述)。そして機能部材20をなす第一部位21と第二部位22は、後述する樹脂とゴムとエラストマの少なくとも一種で且つ繊維体を非含有の素材にて構成できる。
第一部位21は、図6を参照して、内装部材であるシートフレーム6F側に配置する部位であり、機能部材20の略全面に配置されている。この第一部位21のシートフレーム6Fを臨む面21aが、本発明の「機能部材の内装部材側の面」に相当する。この第一部位21は、気泡を意図的に含ませた上記材料の発泡体(フォーム)又は多孔質形体からなる適度に柔軟な素材で構成でき、なかでもポリプロピレンフォームなどの樹脂発泡体からなる単一材料で形成された素材で構成することが好ましい。この第一部位21のシートフレーム6Fを臨む面21aは、繊維体を含まず且つ上記材料で構成されて好適な表面平滑性を備えており、シートフレーム6Fに対して引っかかりにくくされている。また第一部位21によって、機能部材20に好適な柔軟性を持たせることができ、これにより機能部材20が、テンションのかかったシートカバー6Sが押し当てられることで柔軟に変形することができる。さらに機能部材20とシートフレーム6Fが衝突した際の衝撃を第一部位21にて吸収することにより、過度に大きな衝突音が生じることを極力回避することができる。そしてポリプロピレンは比較的軽量であるため、機能部材20を過度に重くすることなく第一部位21を厚くすることができる。
第二部位22は、シートカバー6S側に配置する部位であり、第一部位21の略全面に対面状に配置されている。そして第二部位22は、気泡を意図的に含ませていない上記材料のソリッドな素材で構成することができ、なかでもポリプロピレン製でフィルム状の素材で構成することが好ましい。そして第二部位22によって、機能部材20に好適な硬さを持たせることができる。特にポリプロピレン製の第二部位22は、材料に由来する好適な硬さを有しており、適度な硬さを有しつつも薄く且つ軽くすることができる。さらに第一部位21と第二部位22を単一の素材で構成することで、一括して処理することが可能になるなどして、機能部材20のリサイクル性を向上させることができる。ここで単一の素材とは、各部位を構成する主材料が単一であることを意味し、微量に含まれる添加剤の種類が各部位ごとに異なっていてもよいことを意味する。
接着部位24は、第一部位21と第二部位22の間に配置してこれらを一体化する部位である。この接着部位24の形成方法は特に限定しないが、例えば第二部位22を押出成形しながら、予め成形された第一部位21に押付けることで接着部位24を形成することができる。この場合の接着部位24は、成形直後の軟化した第二部位22の表面部分が硬化することで形成されており、第一部位21と第二部位22の略全面の間に配置されている。このように接着部位24によって、第一部位21と第二部位22を全面的に安定的に一体化することにより、これら両部位21,22によって、機能部材20に好適な硬さを持たせることができる。また第一部位21と第二部位22と接着部位24を単一の素材で構成することにより、機能部材20のリサイクル性を更に向上させることができる。なお接着部位24は、各種の接着剤で形成することができ、この場合には、個別に成形された第一部位21と第二部位22の間に接着剤を付与することとなる。
ここで機能部材20は適度な硬さを有することが望ましく、上述の内突要件を考慮するとシートフレーム6Fが押し当てられた際に過度に変形しない程度の硬さを有することが好ましい。機能部材20の硬さは、例えば剛軟度(詳細後述)25N〜70Nの間に設定することができ、内突要件を考慮すると剛軟度36N(ショアA硬度50に相当)以上に設定することが好ましい(剛軟度の測定方法は後述)。また機能部材20の剛軟度を60N以下に設定することがより好ましく、こうすることで機能部材20によってシートカバー6Sが過度に凹凸状となってハイライトが生じることを好適に回避することができる。そして機能部材20の硬さは、第一部位21の厚み寸法T1と第二部位22の厚み寸法T2の少なくとも一方で調節することができ、このとき第一部位21の厚み寸法T1を相対的に大きくすることが好ましい。このように柔軟な第一部位21を相対的に厚くすることにより、機能部材20を、可撓性を極力損なうことなく適度に硬くすることができる。
そして図3〜図6を参照して、機能部材20を、シートカバー6Sの後面裏側に取付ける。このとき図6を参照して、第一部位21が、シートフレーム6F側に配置されるとともに、第二部位22が、シートカバー6S側に配置される。そして機能部材20の下端は、図3を参照して、各表皮ピースSP2〜SP4と下帯部材14の縫合箇所SEW3に共縫いすることができる。また第一表皮ピースSP1側に若干はみ出して配置された機能部材20の上端は、第一表皮ピースSP1に縫合してもよく、シートパッド6P側に取付けることもできる。つぎにシートカバー6Sを、シートフレーム6Fとシートパッド6Pに被せながら、シートクッション4側に下帯部材14を引き込みつつ、各掛止部材16を適所に掛け止める。こうして機能部材20が、シートバック6の後面において、シートフレーム6Fを後方から覆うように配置されることとなる。ところでシートカバー6Sは、シートの意匠面を構成する必要上、シワや弛みを生じさせないように適度なテンションがかけられており、この状態のシートカバー6Sが機能部材20に押し当てられている。このとき機能部材20が、テンションのかけられたシートカバー6Sからの押圧によって柔軟に潰れ変形又は撓み変形する。こうして機能部材20が柔軟に変形することで、シートカバー6Sに機能部材20による凹凸ができにくくなり、意匠性上好ましくないハイライトが生じることを好適に回避できる。
図3を参照して、通常運転時などにおいては、シートフレーム6Fに対して機能部材20が相対移動することがある。このとき機能部材20が適度な可撓性を有するとともに、図6に示す第一部位21が相対的に柔軟である。このためシートフレーム6Fと機能部材20の衝突音の発生が極力回避されることとなる。さらに第一部位21のシートフレーム6Fを臨む面21aが、適度な硬さを有し且つ繊維体を含まない素材で構成されている。このため機能部材20とシートフレーム6Fの引っかかりが好適に回避されて、シートカバー6Sのシワの発生が極力抑えられることとなる。また乗物衝突時においては、シートバック6の後面に、例えば後席に着座した乗員の膝部が衝突することがある。このとき適度な硬さの機能部材20が、シートカバー6Sとシートフレーム6Fの間に配置されていることから、乗員の膝部の衝突による衝撃を好適に緩和できる。
以下、本実施形態を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。実施例1においては、下記の[表1]を参照して、第一部位を、ポリプロピレンフォーム製で繊維体を含まないボード状の素材(発泡倍率:30倍、厚み寸法2mm)で構成した。また第二部位を、ポリプロピレン製で繊維体を含まないソリッドなフィルム状の素材(厚み寸法83μm)で構成した。そして第二部位を押出成形しながら、予め成形された第一部位に押付けて一体化することにより実施例1の機能部材を作製した。この作製過程において、成形直後の軟化した第二部位の表面部分が硬化することで接着部位が形成され、さらにこの接着部位が、第一部位と第二部位の間の略全面に配置された。
実施例1の機能部材を、図3に示す状態でシートカバーに設けつつ乗物用シート(トヨタ紡織社製)に配設した。つぎにシートバックを約1m後方から目視した。この条件においてシートカバーに機能部材に由来する線状の凹凸が目視で確認できなかった場合には「○」、シートカバーに凹凸がぼんやり現れた場合には「△」、シートカバーに凹凸がはっきり現れた場合には「×」と評価した。
実施例1の機能部材から、幅250mm×長さ250mmの試験片を3枚用意し、これら試験片の剛軟度を図7に示す試験機を用いて測定した。すなわち図7を参照して、中央に50mmの穴32Hを開けた台32(縦200mm×横200mm)の上に1枚の試験片を置いた。このとき第一部位を上側にして第二部位を下側に向けた。そして直径20mmの半球を先端に取付けたオートグラフ31で穴32Hの中心部を27mmまで押し込み、15mm押し込みに要する荷重(N)を計測した。このときオートグラフ31の押し込み速度を50mm/minに設定した。そして3枚の試験片における荷重の平均値を、実施例1の機能部材の剛軟度とした。また同様の手順で、実施例2〜10の機能部材の剛軟度を測定した。そして機能部材が十分な硬さ(ショアA硬度50以上に相当する硬さ)を有する場合には「○」、機能部材の硬さがやや不足であると判断した場合には「△」、機能部材の硬さが不十分であると判断した場合には「×」と評価した。
実施例1〜実施例10の機能部材においては、硬さの評価が「×」のものはなかった。特に実施例3〜実施例10の機能部材は十分な硬さを有しており内突要件を十分に満たすと判断された。また実施例1〜実施例10の機能部材においては、ハイライトの有無の確認試験において「×」と評価されたものはなかった。特に実施例1〜実施例7では、シートカバーに機能部材に由来する凹凸が確認できず、シートの意匠性向上に資する構成であることがわかった。この結果は、第一部位と第二部位を一体化して適度な硬さを確保し、さらに第一部位を相対的に柔らかくしたためと考えられる。そして第一部位は、繊維体を含まずその表面が平滑であったことから、シートフレームに引っかかりにくいことが容易に推察された。以上の結果から、本実施例によれば、シートカバーと内装部材の間に可撓性を有する面状の機能部材を性能良く配置できることがわかった。
4 シートクッション
6 シートバック
6F シートフレーム
6P シートパッド
6S シートカバー
10 収納部
11 心材
12 掛着部材
14 下帯部材
16 掛止部材
20 機能部材
21 第一部位
21a 第一部位の内装部材を臨む面(機能部材の内装部材側の面)
22 第二部位
24 接着部位
SP1 第一表皮ピース
SP2 第二表皮ピース
SP3 第三表皮ピース
SP4 第四表皮ピース
SP5 第五表皮ピース
SP6 第六表皮ピース
SPa 前方表皮ピース
SPb 側方表皮ピース
Claims (5)
- シートの意匠面を構成するシートカバーと、前記シートカバーに覆われた内装部材と、前記シートカバーと前記内装部材の間に配置されている可撓性を有する面状の機能部材とを備えた乗物用シートにおいて、
前記機能部材の前記内装部材を臨む面側が、樹脂とゴムとエラストマの少なくとも一種で且つ繊維体を非含有の素材にて構成されており、
前記機能部材が、前記内装部材側に配置する第一部位と、前記シートカバー側に配置する第二部位とを積層状態で一体的に有しているとともに、前記第一部位が、前記第二部位に比して柔軟である乗物用シート。 - 前記機能部材が単一の材料で形成されている請求項1に記載の乗物用シート。
- 前記第一部位が、発泡体からなる素材で構成されている請求項1又は2に記載の乗物用シート。
- 前記機能部材に、前記第一部位と前記第二部位を全面的に接着する接着部位が設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
- シートクッションに対して起立した状態で配設されているシートバックが、前記内装部材としてのシート骨格をなすシートフレームを有し、前記機能部材が、前記シートバックの後面を覆う前記シートカバーと前記シートフレームの間に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
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