JP2015127402A - 太陽電池封止材用樹脂組成物、並びにそれを用いた太陽電池封止材及び太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
Description
太陽光発電は、一般にシリコン、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンなどの太陽電池素子を上部透明保護材と下部基板保護材とで保護し、太陽電池素子と保護材とを樹脂製の封止材で固定し、パッケージ化した太陽電池モジュールを用いるものであり、水力、風力などと比べて規模は小さいものの、電力が必要な場所に分散して配置できることから、発電効率等の性能向上と価格の低下を目指した研究開発が推進されている。また、国や自治体で住宅用太陽光発電システム導入促進事業として設置費用を補助する施策が採られることで、徐々にその普及が進みつつある。しかしながら、更なる普及には一層の低コスト化が必要であり、そのため従来型のシリコンやガリウム−砒素などに代わる新たな素材を用いた太陽電池素子の開発だけでなく、太陽電池モジュールの製造コストをより一層低減する努力も地道に続けられている。
また、太陽電池モジュールの封止材として、(a)約0.90g/cc未満の密度、(b)ASTM D−882−02により測定して約150メガパスカル(mPa)未満の2%割線係数、(c)約95℃未満の融点、(d)ポリマーの重量に基づいて少なくとも約15および約50重量%未満のα−オレフィン含量、(e)約−35℃未満のTg、ならびに(f)少なくとも約50のSCBDI、の1以上の条件を満たすポリオレフィンコポリマーを含むポリマー材料が提案されている(特許文献3参照)。
太陽電池モジュールの生産効率アップのため、封止材の架橋工程も短時間化する傾向がある。その際、オレフィン共重合樹脂系の太陽電池封止材は、短時間での架橋が困難でありモジュールの生産効率アップがはかれないことが問題となっていた。
成分(A):下記(a1)〜(a4)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分である
(a2)密度が0.860〜0.920g/cm3である
(a3)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が、0.50(個/total 1000C)以上である(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a4)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が、二重結合全体(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の合計数の55%以上である(ただし、ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
成分(B):有機過酸化物
(a5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下である
成分(C):ヒンダードアミン系光安定化剤
以下、本発明において用いられる各成分、得られる太陽電池封止材用樹脂組成物、それを用いた太陽電池封止材、太陽電池モジュール等について詳細に説明する。
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、下記の成分(A)であるエチレン・α−オレフィン共重合体及び成分(B)である有機過酸化物を含有することを特徴とする。
本発明に用いる成分(A)は、下記(a1)〜(a4)の特性を満たし、さらに、好ましくは、(a5)の特性を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体である。
(a1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分である
(a2)密度が0.860〜0.920g/cm3である
(a3)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.50(個/total 1000C)以上である(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a4)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が、二重結合全体(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の合計数の55%以上である(ただし、ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下である
しかし、オレフィン共重合体に含まれる種々の二重結合(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の全てが良好な橋特性発現に同程度関与するか否か、又は、分岐数、二重結合数はオレフィン共重合体において独立に決まるものであるが、架橋特性発現のためには、この2つの一方だけ満たせばいいのか否かについては言及されていない。
(a1)MFR
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、MFRが0.1〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、さらに好ましくは2〜40g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが0.1g/10分未満では、分子量が高すぎて混練時に押出しが困難になり、MFRが100g/10分を超えると溶融粘度が低くなりすぎて、取り扱い性に欠けるものとなる。
ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、触媒量、分子量調節剤としての水素の供給量などを適宜調整する方法がとられる。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、密度が0.860〜0.920g/cm3であり、好ましくは0.865〜0.910g/cm3、さらに好ましくは0.870〜0.900g/cm3である。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.860g/cm3未満では、加工後のシートがブロッキングしてしまい、密度が0.920g/cm3を超えると加工後のシートの透明性が悪化し好ましくない。
ポリマーの密度を調節するには、コモノマーであるα−オレフィンの含有量、重合温度、触媒量など適宜調節する方法がとられる。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(23℃)。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数当たりのビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.50(個/total 1000C)以上であり、好ましくは0.50〜5.0(個/total 1000C)であり、より好ましくは0.60〜4.5(個/total 1000C)であり、さらに好ましくは0.70〜4.0(個/total 1000C)であり、最も好ましくは、0.80〜4.0(個/total 1000C)である。
ビニル、ビニリデンの合計数が上記範囲であると、架橋速度に優れた封止材となり、0.50個未満であると、架橋速度が十分なものとならない。ビニル、ビニリデンの合計数は、適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマーの種類を適宜調節することにより、上記範囲に制御することができる。
なお、これら二重結合の数は、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルの特性ピークの積分強度を用いて算出した。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計数は、エチレン・α−オレフィン共重合体中の全ての二重結合(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の合計数の55%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、最も好ましくは70%以上を占める。ビニル、ビニリデンの合計数が二重結合の合計数の55%以上であると、架橋速度に優れた封止材となり、少ないと、架橋速度が十分なものとならない。
二重結合の合計数を調整する方法としては適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマーの種類を適宜調節する方法などが挙げられる。
なお、これら二重結合の数は、上記(a3)と同様に、1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルの特性ピークの積分強度を用いて算出した。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、さらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。Mz/Mnが8.0を超えると透明性が悪化する。Mz/Mnを所定の範囲に調整する方法としては適当なメタロセン触媒を選択する方法などが挙げられる。
なお、Mz、Mnの値は、GPCにより測定される値であるが、詳細な測定条件は、後述の実施例の項に記載のとおりである。
本発明に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン等を挙げることができる。かかるエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等が挙げられる。
一方、上記式の下側では、重合反応中のポリマー鎖(P)に、プロピレンが挿入し、引き続き錯体金属(M)のβ位の水素を引抜かれると中間体3が生じる。この中間体3においても、(a)又は(b)の水素からの脱離反応が考えられるが、立体的、電子的要因に理由により(b)の水素が優先的に脱離して、中間体4が生じる。さらに中間体4から次のモノマーがいずれに挿入してもビニリデンが生じる。
上記の理由から、プロピレン挿入後は、1−ヘキセン、1−オクテンといったα−オレフィン挿入後と対比して、優先的にビニリデンが生じると考えられる。なお、本発明において、ビニリデン等の二重結合の発生のメカニズムは、上記メカニズムに限定されるものではない。
コモノマーとして、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、及び1,9−デカジエン等のジエン化合物を、α−オレフィンに少量配合してもよい。これらのジエン化合物を配合すると、長鎖分岐ができるので、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶性を低下させ、透明性、柔軟性、接着性等が良くなるとともに、長鎖分岐の末端基は不飽和基となるため、有機過酸化物による架橋反応や、酸無水物基含有化合物若しくはエポキシ基含有化合物との共重合反応やグラフト反応を容易におこすことができる。またエチレン・α−オレフィン共重合体に少量配合されるジエン化合物として、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンのような環状ジエンも使用できる。
このようなコモノマーとしてのジエン化合物の含量は、柔軟性と架橋特性の観点から、好ましくは0.01〜5.00mol%であり、より好ましくは0.02〜1.00mol%、さらに好ましくは0.05〜0.50mol%である。
本発明で使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造に用いられる触媒としては、特に限定されず、従来公知のチーグラー触媒、バナジウム触媒又はメタロセン触媒等を用いることができるが、好ましくはバナジウム触媒又はメタロセン触媒、より好ましくはメタロセン触媒を用いる。
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。特に、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物を使用するのが好ましい。
製造法としては、特に限定されず、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等を用いることができるが、本発明に係る二重結合を調整したエチレン・オレフィン共重合体を得るためには150〜330℃の高温で重合を行うことが望ましいため、高圧イオン重合法利用するのが好ましい(「ポリエチレン技術読本」第4章、松浦一雄・三上尚孝 編著、2001年)。
本発明における成分(B)の有機過酸化物は、主に成分(A)を架橋するために用いられる。
有機過酸化物としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70〜180℃、とくに90〜160℃の有機過酸化物を用いることができる。このような有機過酸化物として、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物には成分(C)としてヒンダードアミン系光安定化剤を配合することが好ましい。ヒンダードアミン系光安定化剤は、ポリマーに対して有害なラジカル種を補足し、新たなラジカルを発生しないようにするものである。ヒンダードアミン系光安定化剤には、低分子量のものから高分子量のものまで多くの種類の化合物があるが、従来公知のものであれば特に制限されずに用いることができる。
前記含有量を0.01重量部以上とすることにより安定化への効果が十分に得られ、2.5重量部以下とすることによりヒンダードアミン系光安定化剤の過剰な添加による樹脂の変色を抑えることができる。
また、本発明において、成分(B)と成分(C)との重量比(B:C)を、好ましくは1:0.01〜1:10とし、より好ましくは1:0.02〜1:6.5とする。これにより、樹脂の黄変を顕著に抑制することが可能となる。
本発明の樹脂組成物には、上記成分(A)〜(C)以外に、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、任意成分を配合することができる。以下に用いることのできる任意成分の具体例について説明する。
(1)架橋助剤
本発明の樹脂組成物には架橋助剤を配合することができる。架橋助剤は、架橋反応を促進させ、エチレン・α−オレフィン共重合体の架橋度を高めるのに有効であり、その具体例としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を例示することができる。
より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。架橋助剤は、成分(A)100重量部に対し、0〜5重量部程度の割合で配合することができる。
本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
これら紫外線吸収剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対し、0〜2.0重量部配合し、好ましくは0.05〜2.0重量部、より好ましくは0.1〜1.0重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部、最も好ましくは0.2〜0.4重量部配合するのがよい。
本発明の樹脂組成物には、主に太陽電池の上部保護材や太陽電池素子との接着力を向上させる目的でシランカップリング剤を用いることができる。
本発明におけるシランカップリング剤としては、例えばγ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロルシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましくは、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
これらのシランカップリング剤は、エチレン・α‐オレフィン共重合体100重量部に対して0〜5重量部使用し、好ましくは0.01〜4重量部、より好ましくは0.01〜2重量部、さらに好ましくは、0.05〜1重量部で使用される。
本発明の樹脂組成物に、配合することができる任意成分としては、上記以外に通常のポリオレフィン系樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、充填剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を挙げることができる。
本発明の太陽電池封止材(以下、単に「封止材」ともいう。)は、上記樹脂組成物をペレット化し、あるいはシート化したものである。
この太陽電池封止材を用いれば、太陽電池素子を上下の保護材とともに固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作成したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
また、下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層の保護材を例示することができる。このような上部及び/又は下部の保護材には、封止材との接着性を高めるためにプライマー処理を施すことができる。本発明においては、上部保護材としてガラスが好ましい。
カレンダー成形により製造する場合、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、好ましくは1〜10g/10分であり、より好ましくは1.5〜8.5g/10分、さらに好ましくは2〜7g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが1g/10分未満では、分子量が高すぎて混練時に剪断発熱し未架橋のシートの作成が困難になり、MFRが10g/10分を超えると溶融粘度が低くなりすぎて、カレンダー成形での取り扱い性に欠けるものとなる。
シート同士のブロッキングを回避するため、従来公知の方法により、シート表面をマット・シボ状の形状となるようにシート成形を行ってもよい。具体的には、T−ダイ押出やカレンダーでのシート成形では、溶融状態のシートをマット・エンボス形状に表面加工された冷却ロールと押し付けロールに挟み込むようにして冷却することでシート表面にマット・エンボス形状を転写することができる。
(1)メルトフローレート(MFR):エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
(3)分岐数、二重結合数、コモノマー数:ポリマー中の分岐数は、13C−NMRにより、末端ビニル、ビニリデン、ビニレン(シス−ビニレン及びトランス−ビニレンを含む)、三置換オレフィンの数は、1H−NMR及び13C−NMRにより、次の条件で測定し、コモノマー量は、主鎖及び側鎖の合計1000個の炭素あたりの個数で求めた。
装置 :ブルカー・バイオスピン(株) AVANCEIII cryo−400MHz
溶媒 :o−ジクロロベンゼン/重化ブロモベンゼン = 8/2混合溶液
<試料量>
460mg/2.3ml
<13C−NMR>
・1Hデカップル、NOEあり
・積算回数:256scan
・フリップ角:90°
・パルス間隔20秒
・AQ(取り込み時間)=5.45s D1(待ち時間)=14.55s
<1H−NMR>
・積算回数:1400scan
・フリップ角:1.03°
・AQ(取り込み時間)=1.8s D1(待ち時間)=0.01s
(3)Mz/Mn:GPCにより測定した。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:10mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
(1)HAZE
厚み0.7mmのプレスシートを用いて、JIS−K7136−2000に準拠して測定した。流動パラフィン(関東化学製)で満たしたセルにプレスシート片をセットし測定した。プレスシートは、150℃の条件で熱プレス機に30分間保管し、架橋させ準備した。HAZE値は、小さいほど良い。
厚み0.7mmのプレスシートを用いて、JIS−K7361−1−1997に準拠して測定した。流動パラフィン(関東化学製)で満たしたセルにプレスシート片をセットし測定した。プレスシートは、150℃の条件で熱プレス機に30分間保管し、架橋させ準備した。
光線透過率は、80%以上であり、好ましくは、85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
150℃で4,7,10、30分の時間でそれぞれ架橋したシートのゲル分率で評価した。ゲル分率が高いほど架橋が進行しており、耐熱性が高いと評価できる。ゲル分率は、当該シートを、約1gを切り取り精秤して、キシレン100ccに浸漬し110℃で24時間処理し、ろ過後残渣を乾燥し精秤して、処理前の重量で割りゲル分率を算出する。
(1)成分(A) エチレン・α−オレフィン共重合体
下記、製造方法により製造したエチレン・α−オレフィン共重合体(α1〜α8)を用いた。物性を表1に示す。
(i)触媒の調製
特開平10−218921号 公報に記載された方法で調製した錯体「rac−ジメチルシリレンビスインデニルハフニウムジメチル」0.05モルに、等モルの「N,Nジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」を加え、トルエンで50リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
内容積5.0リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を80MPaに保ち、エチレン、プロピレン、1−ヘキセンを適宜調整しながら、40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記「(i)触媒の調整」の項に記載の触媒溶液を連続的に供給し、重合温度は150〜220℃の範囲内で適宜調整することでα1〜α8のエチレン・α−オレフィン共重合体を得た。
(3)成分(C) ヒンダードアミン系光安定化剤:コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(BASF社製、TINUVIN 622LD)
(4)紫外線吸収剤:2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(サンケミカル社製、CYTEC UV531)
(5)シランカップリング剤:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM503)
(6)酸化防止剤:n−オクダデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製 IRGANOX(登録商標)1076)
エチレン・α−オレフィン共重合体(α1)100重量部に対して、有機過酸化物として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルカーボネイト(アルケマ吉富社製、TBEC)を1.0重量部、ヒンダードアミン系光安定化剤として、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(BASF社製、TINUVIN 622LD)0.05重量部、紫外線吸収剤として、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(サンケミカル社製 CYTEC UV531)0.3重量部、シランカップリング剤として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM503)0.3重量部、酸化防止剤として、n−オクダデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製 IRGANOX(登録商標)1076)0.025重量部を配合した。これを十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いて設定温度100℃、押出量(17kg/時)の条件でペレット化した。
得られたペレットを、150℃−0kg/cm2の条件で、3分予熱した後、150℃−100kg/cm2の条件で27分加圧(150℃で30分間プレス成形)し、その後、30℃に設定された冷却プレスに100kg/cm2の加圧の条件で、10分間冷却することで、厚み0.7mmのシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性、ブロッキング性を測定、評価した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α1に替えて、α2を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α1に替えて、α3を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α1に替えて、α4を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α1に替えて、α5を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α1に替えて、α6を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α1に替えて、α7を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α1に替えて、EG8407(デュポン・ダウ社製、エチレン・オクテン共重合体)を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、α7に替えて、タフマーA35070S(三井化学社製、エチレン・1−ブテン共重合体)を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。評価結果を表1に示す。
この結果、表1から明らかなように、150℃で30分架橋したシートのゲル分率について、実施例1〜5は比較例1〜4よりも高い値を示している。よって、実施例のシートは比較例のものと比較して、架橋特性が良く高い耐熱性を有していることがわかる。
HAZEについては、比較例4は10.0%であり比較的高い値であるが、実施例1〜5はいずれも1.0%以下であり良好である。一方、光線透過率については、実施例、比較例いずれも90%以上を示している。従って、実施例で示される本発明から得られるシートは透明性に優れていることがわかる。
Claims (9)
- 下記の成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物。
成分(A):下記(a1)〜(a4)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分である
(a2)密度が0.860〜0.920g/cm3である
(a3)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.50(個/total 1000C)以上である(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a4)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が、二重結合全体(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の合計数の55%以上である(ただし、ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
成分(B):有機過酸化物 - 成分(A)が、さらに下記(a5)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
(a5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下である - 前記エチレン・α−オレフィン共重合体がメタロセン触媒により製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
- 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.2〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
- さらに、下記の成分(C)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
成分(C):ヒンダードアミン系光安定化剤 - 成分(C)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.01〜2.5重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
- 前記エチレン・α−オレフィン共重合体がコモノマーとしてプロピレンを10〜30モル%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物からなる太陽電池封止材
- 請求項8に記載の太陽電池封止材を用いた太陽電池モジュール。
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