JP2015124420A - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】寒冷地において使用される製品の素材として好適なフェライト系ステンレス鋼であって、溶接して製品を製造したときに、溶接部に優れた耐食性と低温靭性を付与可能なフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】質量%でC:0.001〜0.020%、Si:0.03〜0.30%、Mn:0.05〜0.30%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:22.0%超〜28.0%、Ni:0.01〜0.30%未満、Mo:0.2〜3.0%、Al:0.01〜0.15%、Ti:0.20〜0.40%、Nb:0.001〜0.10%、V:0.02〜0.20%、Co:0.01〜0.3%、N:0.001〜0.020%、O:0.0050%未満を含有するフェライト系ステンレス鋼において、Al、O、Ti、N、Co、Nb、Vの含有量が特定の関係を満たすように調整する。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶接部に優れた耐食性および低温靭性を付与できるフェライト系ステンレス鋼に関する。特に本発明は、寒冷地において使用される温水器缶体に好適である。
電気温水器の貯湯用缶体(以下、本明細書において「温水器缶体」という場合がある。)には、高温の水道水に長時間浸漬した状態であっても腐食が発生しない高い耐食性が求められる。高耐食性材料といえばステンレス鋼が挙げられる。しかし、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼を用いて製造してなる温水器缶体は、使用時に、応力腐食割れが発生する場合がある。このため、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼は温水器缶体用の素材に適さない。そこで、温水器缶体の素材として、応力腐食割れの感受性が小さい、高耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼が従来から使用されてきた。
温水器缶体はその両端が丸みを帯びた縦長の円筒形をしている。一般的な温水器缶体は、鏡と呼ばれるお椀状の鋼部材と胴板と呼ばれる円筒状の鋼部材をTIG溶接して作製される。このTIG溶接による方法で、フェライト系ステンレス鋼を加工してなる鋼部材を用いて温水器缶体を製造すると、温水器缶体のTIG溶接部で結晶粒が粗大化するため、母材と比較して低温靭性が低下する。
また、給排水用のパイプと温水器缶体をつなぐジョイント(SUS316L)もTIG溶接によって缶体に接合される。フェライト系ステンレス鋼とSUS316Lとの溶接において、溶接部に生成するCr炭窒化物は、粒界腐食を生じさせて耐食性を低下させる。この粒界腐食の腐食部分は切り欠き形状となるため、粒界腐食の先端に応力集中し、溶接部の低温靭性はより一層低下する。そのため、寒冷地においては溶接部の耐食性および靭性が不足し、溶接部において割れが発生する場合がある。
上記溶接部の靭性を改善する方法として、たとえば、特許文献1には、溶接熱影響部の靭性に優れるフェライト系ステンレス鋼が開示されている。上記特許文献1の鋼は溶接熱影響部の靭性をNbとVの添加により改善したものであり、特許文献1では、温水器缶体で問題となる溶接ワイヤを用いない溶接の溶接部の靭性については言及されていない。
特許文献2には、溶接部に優れた靭性を付与することができる溶融溶接用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。この鋼は溶接ビードに7%以上のマルテンサイト相を生成することで溶接部の靭性を確保している。しかし、溶接ビードにおいて、マルテンサイト相が形成されてフェライト相との2相組織となるとマクロセルが形成されて溶接部の耐食性が低下する。このため、特許文献2に記載の鋼は腐食環境の厳しい温水器缶体には適用できない。
特許文献3には、溶接部に優れた加工性並びに靭性を付与できる高耐食性低強度ステンレス鋼とその鋼を用いて製造してなる溶接継手が開示されている。この鋼はCrの含有量が低いため耐食性が不十分である。また、特許文献3には、鋼とSUS316Lとの溶接による鋭敏化についてはなんら言及されておらず、特許文献3に記載の鋼は、温水器缶体の素材に用いるには不適当である。
特公昭63−66378号公報 特許第2733786号公報 特許第3975882号公報
従来技術の抱える上記のような問題点に鑑み、本発明は、寒冷地において溶接して使用される製品の素材として好適なフェライト系ステンレス鋼であって、溶接して製品を製造したときに、溶接部に優れた耐食性と低温靭性を付与可能なフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々のフェライト系ステンレス鋼について突合せTIG溶接を行い、溶接部の耐食性および低温靭性を調査し、以下の結果を得た。
溶接部のシャルピー試験片の破面を詳細に調査したところ、破壊起点および破面にTiNおよびAlの粗大な介在物が存在していることを確認した。Coの添加によりこれらの介在物の凝集が抑制され、低温靭性が向上した。
Si、Alの含有量の抑制により、溶接金属での結晶粒の粗大化が抑制され、溶接金属での板厚方向の結晶粒径が減少し、低温靭性が向上した。
Tiの添加により溶接ビードの結晶粒が微細化し溶接部の低温靭性が向上したが、Tiを過剰に含有すると逆に低温靭性が低下した。
溶接部の粒界腐食の抑制については、Ti、Nb、Vの含有量が合計で一定値以上となることで抑制効果が確認された。
以上の結果に基づき、本発明は構成される。すなわち本発明は下記の構成を要旨とするものである。
[1]質量%でC:0.001〜0.020%、Si:0.03〜0.30%、Mn:0.05〜0.30%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:22.0%超〜28.0%、Ni:0.01%〜0.30%未満、Mo:0.2〜3.0%、Al:0.01〜0.15%、Ti:0.20〜0.40%、Nb:0.001〜0.10%、V:0.02〜0.20%、Co:0.01〜0.3%、N:0.001〜0.020%、O:0.0050%未満を含有し、下記式(1)〜(4)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼。
Al×O≦0.0005 (1)
Ti×N≦0.005 (2)
Co/Ti≧0.05 (3)
Ti+Nb+V≧0.30 (4)
式(1)〜(4)における元素記号は、それらの元素の含有量を質量%で示したときの数値を意味する。
[2]Cu:1.0%以下、Zr:0.5%以下、W:1.0%以下、REM:0.1%以下およびB:0.01%以下から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、溶接により製造された製品の溶接部に優れた耐食性および低温靭性を付与することができる。すなわち、本発明のフェライト系ステンレス鋼を用いて溶接により製造した製品の溶接部は、耐食性および低温靭性に優れるため、寒冷地においても溶接部の割れが発生しにくい。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、質量%でC:0.001〜0.020%、Si:0.03〜0.30%、Mn:0.05〜0.30%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:22.0%超〜28.0%、Ni:0.01%〜0.30%未満、Mo:0.2〜3.0%、Al:0.01〜0.15%、Ti:0.20〜0.40%、Nb:0.001〜0.10%、V:0.02〜0.20%、Co:0.01〜0.3%、N:0.001〜0.020%、O:0.0050%未満を含有し、特定の式(1)〜(4)を満足するようにAl、O、Ti、N、Co、NbおよびVの含有量が調整されており、残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする。先ず、各成分の含有量について説明する。なお、各成分の含有量の説明において「%」は「質量%」を意味する。
C:0.001〜0.020%
Cは鋼に不可避的に含まれる元素である。Cの含有量が多いと鋼の強度が向上する。十分な強度を有する鋼を得るためには、Cの含有量を0.001%以上にする必要がある。しかし、Cの含有量が多過ぎると、溶接部においてCrと反応してなるCr炭化物を析出して局所的なCr欠乏による耐食性の低下を起こす場合がある。また、Cの含有量が多過ぎると、Cは粗大なNb(C、N)などの介在物を形成して溶接部の低温靭性を低下させる場合がある。そこで、Cの含有量は0.020%以下が適当である。上記の通り、Cの含有量は0.001〜0.020%とした。より好ましくは、0.002〜0.015%である。
Si:0.03〜0.30%
Siは脱酸に有用な元素である。また、Siは溶接によって形成されるテンパーカラーに濃縮して酸化皮膜の保護性を向上させ、テンパーカラーが形成された状態での溶接部の耐食性を良好なものとする元素である。これらの効果はSiの含有量を0.03%以上にすることで得られる。しかし、Siはフェライト粒径を粗大化させる元素であり、Siを過剰に含有すると、溶接による溶融部の結晶粒径が粗大化し、溶接部の低温靭性が低下する。Siの含有量が0.30%を超えると、溶接部の低温靭性の低下が顕著となる。よって、Siの含有量は0.03%〜0.30%とした。より好ましくは、0.05%〜0.20%である。
Mn:0.05〜0.30%
Mnは鋼の強度を高める効果がある。その効果はMnの含有量を0.05%以上にすることで得られる。しかし、Mnの含有量が過剰になると、腐食の起点となるMnSの析出が促進され、鋼の耐食性が低下する。このため、Mnの含有量は0.30%以下が適当である。よって、Mnの含有量は0.05〜0.30%とした。より好ましくは、0.08%〜0.25%である。
P:0.05%以下
Pは鋼に不可避的に含まれる元素である。Pを過剰に含有すると溶接性が低下するとともに、粒界に偏析したPがカソード反応を促進し粒界腐食を生じやすくさせる。本発明においてPの含有量は少ないほうが好ましく0%でもよい。そこで、本発明ではPの含有量は0.05%以下とした。より好ましくは0.03%以下である。
S:0.01%以下
Sは鋼に不可避的に含まれる元素である。Sの含有量が0.01%を超えるとCaSやMnSなどの水溶性硫化物の形成が促進され、鋼の耐食性が低下する。本発明においてSの含有量は少ないほうが好ましく0%でもよい。よって、Sの含有量は0.01%以下とした。
Cr:22.0%超〜28.0%
Crはステンレス鋼の耐食性を確保するために最も重要な元素である。Crの含有量が22.0%以下では溶接による酸化で表層のCrが減少するため、溶接ビードやその周辺において十分な耐食性が得られない。ここで、表層とは表面から深さ方向に1〜5μmの領域を指す。一方で、Crを過剰に含有すると、鋼の加工性、製造性が低下する。このため、Crの含有量は28.0%以下が適当である。よって、本発明では、Crの含有量は22.0%超〜28.0%とした。より好ましくは、22.2〜26.0%である。
Ni:0.01%〜0.30%未満
Niはステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。Niは、不動態皮膜が形成できず活性溶解が起こる腐食環境において腐食の進行を抑制する元素である。その効果はNiの含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Niの含有量が0.30%以上になると、鋼の加工性が低下する。また、Niの含有量が多くなると、Niは高価な元素であるため製造コストが増大する。よって、Niの含有量は0.01〜0.30%未満とした。より好ましくは、0.03%〜0.24%である。
Mo:0.2〜3.0%
Moは不動態皮膜の再不動態化を促進し、ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。CrとともにMo含有することによってその効果はより顕著となる。Moによる耐食性向上効果は、Moの含有量を0.2%以上とすることで得られる。しかし、Moの含有量が3.0%を超えると鋼の強度が増加し過ぎ、圧延負荷が大きくなるため製造性が低下する。よって、Moの含有量は0.2〜3.0%とした。より好ましくは、0.6〜2.4%である。
Al:0.01〜0.15%
Alは脱酸に有用な元素である。また、本発明では、AlはAlNを形成してTiNの粗大化を抑制し、良好な低温靭性を溶接部に付与する元素である。この効果は、Alの含有量が0.01%以上で得られる。しかし、AlはSiとともにフェライト結晶粒径を粗大化する元素である。Alの含有量が0.15%を超えると溶接部のフェライト結晶粒径が増大し過ぎ、溶接部の低温靭性が低下する。さらに、鋼中のOと結合して粗大なAl介在物を形成し、溶接部の低温靭性を低下させる。よって、Alの含有量は0.01〜0.15%とした。より好ましくは、0.03〜0.12%である。
Ti:0.20~0.40%
TiはC、Nと優先的に結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素である。Tiは溶接部において必要な耐食性を得るためにNb、Vとともに重要な元素である。また、本発明を完成するにあたって、溶融部の凝固後に析出した比較的微細な針状のTi(C、N)が結晶粒の粗大化を抑制し、溶接部の低温靭性を向上させる効果が見出された。その効果は、Tiの含有量を0.20%以上にすることで得られる。しかし、Tiの含有量が0.40%を超えると溶融部の凝固前に析出する粗大なTiNが、溶接部の低温靭性を低下させる。よって、Tiの含有量は0.20〜0.40%とした。より好ましくは、0.22〜0.35%である。
Nb:0.001〜0.10%
Nbは、C、Nと優先的に結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制し、溶接部の耐食性を向上させる元素である。NbはTiよりも低い温度でC、Nと結合し介在物を形成する。溶接後の冷却速度は高温側になるほど早いため、Tiの析出温度域では、冷却速度が速すぎて固溶しているC、Nを余すことなく介在物として無害化することが難しい。そのため、Tiのみの添加でCr炭窒化物の析出による粒界腐食を完全に抑制するには、過剰量のTiを添加することが必要となる。過剰量のTiを添加すると、溶接部に粗大なTiNが形成されて低温靭性が低下する。そこで、本発明ではTiの添加量を適正な範囲としたうえで、少量のNbを添加して溶接部のC、Nを、Tiの析出温度域とNbの析出温度域の2つの温度域で効率的に無害化し、溶接部の耐食性と低温靭性を両立させている。その効果はNbの含有量を0.001%以上にすることで得られる。Nbの含有量が0.10%を超えると、TiNに付着して析出するNb炭窒化物が増加し、もともと粗大になりやすいTiNをより粗大な析出物にして、溶接部の低温靭性を低下させる。よって、Nbの含有量は0.001〜0.10%とした。より好ましくは、0.01〜0.08%である。
V:0.02〜0.20%
Vは溶接部の低温靭性を向上させる重要な元素である。加えて、VがNとVNを形成することで、Tiと結合するN量を減少させ、粗大なTiNの形成を抑制する。その効果は、Vの含有量が0.02%以上で得られる。しかし、Vの含有量が0.20%を超えると、加工性が低下する。よって、Vの含有量は0.02〜0.20%以下とした。より好ましくは、0.03〜0.15%である。
Co:0.01〜0.3%
CoはTiNなどの粗大な介在物の凝集を抑制し、溶接部の低温靭性を向上させる重要な元素である。その効果はCoの含有量を0.01%以上にすることで得られる。Coの含有量が0.3%を超えると製造性が低下する。よってCoの含有量は0.01〜0.3%とした。より好ましくは0.02〜0.1%である。
N:0.001〜0.020%
Nは、Cと同様に鋼に不可避的に含まれる元素であり、固溶強化により鋼の強度を上昇させる効果がある。その効果はNの含有量を0.001%以上にすることで得られる。しかし、Nを過剰に含有することで析出したCr窒化物は、溶接部の耐食性を低下させる場合がある。また、過剰なNの含有はTiNの粗大化を促進し、溶接部の低温靭性を低下させる。このため、Nの含有量は0.020%以下が適当である。よって、本発明では、Nの含有量は0.001〜0.020%とした。より好ましくは、0.002〜0.015%である。
O:0.0050%未満
Oは鋼中に不可避的に含まれる元素である。本発明では、Oは鋼中のAlと結合して粗大なAl介在物を形成し、溶接部の低温靭性を低下させる。その影響は、Oの含有量が0.0050%以上で顕著となる。よって、Oの含有量は0.0050%未満とした。より好ましくは0.0030%未満である。
上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
以上の必須成分を含む本発明のフェライト系ステンレス鋼においては、下記式(1)〜(4)を満たすようにAl、O、Ti、N、Co、NbおよびVの含有量が調整されている。
Al×O≦0.0005 (1)
Ti×N≦0.005 (2)
Co/Ti≧0.05 (3)
Ti+Nb+V≧0.30 (4)
式(1)〜(4)における元素記号は、それらの元素の含有量を質量%で示したときの数値を意味する。
Al×O≦0.0005、Ti×N≦0.005
種々のフェライト系ステンレス鋼について、溶接部のシャルピー試験を行い、低温靭性の優れたもの、劣ったものそれぞれについて、シャルピー試験片の破面を詳細に調査したところ、低温靭性の劣ったものでは破壊起点および破面にTiNおよびAlの粗大な介在物が存在していることが明らかとなった。したがって、これらの介在物が溶接部の低温靭性を低下させる原因となっていると考えられた。TiNおよびAlはいずれも溶鋼の段階から析出を開始するため、粒径が数μmとなる粗大な介在物となる。この粗大な介在物の析出を抑制するためには、それぞれTiとNの濃度の積、AlとOの濃度の積を一定値以下として、溶鋼中での析出を極力抑制することが重要である。AlについてはAl×O≦0.0005、TiNについてはTi×N≦0.005であったときに、粗大な介在物の個数が減少し、溶接部の低温靭性が大きく向上した。よって、Al×O≦0.0005、TiN≦0.005とした。より好ましくは、Al×O≦0.0003、Ti×N≦0.003である。
Co/Ti≧0.05
溶接部の低温靭性に劣る材料の破面について、より詳細に観察したところ、TiNの凝集した領域では、破面単位が相対的に増加する傾向が確認された。これは、粗大なTiNが凝集してクラスターとなることで、一層亀裂の伝播が容易になるため破面単位が増加したと考えられる。したがって、TiNの凝集を抑制することで、低温靭性が向上すると考えられる。Co添加により、TiNの凝集が解消される傾向が確認できたが、Tiが多量に添加された鋼ではCoの添加量が少量ではTiNの凝集の解消には効果が小さい傾向が見られた。そこで、Co含有量とTi含有量についてTiNの凝集状態を調査したところ、Co/Ti≧0.05であるときに、TiNの凝集が解消され、TiNのクラスターが減少した。よって、Co/Ti≧0.05とした。より好ましくは、Co/Ti≧0.07である。
Ti+Nb+V≧0.30
溶接部の低温靭性は、溶接部に粒界腐食が発生すると大きく低下する。これは粒界腐食部がちょうど切り欠き形状となって、応力集中を引き起こし、破壊を発生させやすくするためである。したがって、低温靭性の確保のためには、溶接部の粒界腐食は発生しないほうが好ましい。溶接部の粒界腐食の発生は、CrとC、Nの結合によるCr炭窒化物の析出が原因となる。Ti、Nb、VはいずれもC、Nとの親和力がCrよりも強く、C、Nと結合してCr炭窒化物の形成を抑制する元素である。これらの元素を添加することで溶接部の粒界腐食は抑制できる。一方でこれらの元素を過剰に添加すると、溶接部の低温靭性が低下する。したがって、それぞれの元素については低温靭性の要請から含有量の上限が決定されるが、溶接部の粒界腐食抑制のためにはTi、Nb、Vを合計で一定量含有することが必要となる。調査の結果、Ti+Nb+V≧0.30で溶接部の粒界腐食が抑制される効果が得られた。よってTi+Nb+V≧0.30とした。より好ましくはTi+Nb+V≧0.35である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼では、上記の必須元素を含み、特定の必須元素については式(1)〜(4)を満たすようにその含有量を調整することで、目的とする特性が得られる。また、本発明のフェライト系ステンレス鋼には、所望の特性に応じて、任意成分として、以下の元素を含有させてもよい。
Cu:1.0%以下
Cuはステンレス鋼の耐食性を向上させる元素であり、その効果はCuの含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Cuを過剰に含有すると、不動態維持電流を増加させて不動態皮膜を不安定とし、鋼の耐食性が低下する場合がある。そのため、Cuを含有させる場合、Cuの含有量は1.0%以下が好ましい。
Zr:0.5%以下
ZrはC、Nと結合して、鋭敏化を抑制する効果がある。その効果はZrの含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Zrを過剰に含有すると、鋼の加工性が低下する。また、Zrは非常に値段が高い元素であるため、Zrの含有量が多くなるとコストの増大を招く。よって、Zrの含有量は0.5%以下が好ましい。
W:1.0%以下
WはMoと同様に耐食性を向上させる効果がある。その効果はWの含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Wを過剰に含有すると、鋼の強度が上昇し、製造性が低下する。よって、Wの含有量は1.0%以下が好ましい。
REM:0.1%以下
REMは、鋼の耐酸化性を向上して、酸化スケールの形成を抑制し、溶接時に生成するテンパーカラー直下のCr欠乏領域の形成を抑制する。REMの中でもLa、Ceに特にその効果がある。Cr欠乏領域の形成を抑制する効果は、REMの含有量を0.0001%以上にすることで得られる。しかし、REMを過剰に含有すると、酸洗性などの製造性が低下する。また、REMは高価であるため、REMの含有量が多くなるとコストの増大を招く。よってREMの含有量は0.1%以下が好ましい。
B:0.01%以下
Bは二次加工脆性を改善する元素であり、その効果を得るためには、Bの含有量は0.0001%以上が適当である。しかし、Bを過剰に含有すると、固溶強化による延性低下を引き起こす。よってBの含有量は0.01%以下が好ましい。
本発明のステンレス鋼はどのような製造方法を用いて製造してもよいが、好適な製造方法の一例を以下に示す。
上記成分組成を有するスラブ(板厚180〜300mm)を1100℃〜1300℃に加熱後、仕上温度を700℃〜1000℃、巻取温度を400℃〜850℃として、板厚が2.0mm〜5.0mmになるように熱間圧延を施す。こうして作製した熱間圧延鋼板を800℃〜1000℃の温度で焼鈍(熱延板焼鈍)し酸洗を行い、次に、冷間圧延を行い、700℃〜1000℃の温度で冷延板焼鈍を行う。冷延板焼鈍後には酸洗を行い、スケールを除去する。スケールを除去した冷間圧延鋼板にはスキンパス圧延を行ってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
表1に示す成分組成を有するステンレス鋼を真空溶製して得た厚み200mmのスラブを1200℃に加熱し、仕上温度を800℃、巻取温度を450℃として熱間圧延し、950℃で熱延板焼鈍し、酸洗によりスケールを除去した。さらに、板厚0.8mmまで冷間圧延し、900℃で冷延板焼鈍し、酸洗を行い、供試材とした。
作製した供試材をSUS316Lと突合せ溶接を行った。溶接はTIG溶接とし、溶接電流は90A、溶接速度は60cm/minとした。溶接ワイヤは用いていない。溶接ビードへのSUS316Lの溶け込み比率がおよそ50質量%となるように溶接位置を調整した。シールドガスは、表側(トーチ側)、裏側ともに100%のArガスを使用し、流量は表側が15L/min、裏側が10L/minとした。表側の溶接ビードの幅はおよそ4〜5mmであった。
作製した溶接部の溶接ビード中央に2mmのVノッチを入れたシャルピー衝撃試験片を作製し、JIS Z 2242に準拠したシャルピー衝撃試験を行った。試験温度は−25℃とした。結果を表1に示す。−25℃のシャルピー衝撃値が15J/cm以上で非常に良好な低温靭性、10J/cm以上で、良好な低温靭性と判定した。本発明例であるNo.2、3、4、6、7、9、12、13、15、16および比較例のNo.18で溶接部の低温靭性が非常に良好となった。No.1、5、8、10、11、14および比較例のNo.26で溶接部の低温靭性が良好となった。No.17、19〜25、27、28では成分の範囲または成分含有量で表す式が本発明の範囲から外れ、低温靭性が基準を下回った。
溶接部を含む60×80mmの試験片を採取し、溶接により形成されたスケールや溶接ビードの凹凸を研磨により除去し、#600のエメリー研磨紙を用いて仕上げ研磨し、JIS H 8502に準拠した中性塩水噴霧サイクル試験によって溶接部の耐食性を評価した。10サイクルの試験によって腐食が発生したものを「×」、腐食が発生しなかったものを「○」として表1に示した。No.18、19、23および26で腐食が発生し、不合格となった。いずれも成分または成分含有量で表す式が本発明の範囲から外れたため溶接部の耐食性が不十分となった。
Figure 2015124420
本発明のフェライト系ステンレス鋼を用いれば、寒冷地においても使用可能な、溶接により製造される製品の溶接部に優れた耐食性と低温靭性を付与できる。本発明で得られるフェライト系ステンレス鋼は、溶接によって構造体の作製が行われ、屋外で使用される用途、たとえば、電気温水器の貯湯用缶体材料などへの適用に好適である。

Claims (2)

  1. 質量%でC:0.001〜0.020%、Si:0.03〜0.30%、Mn:0.05〜0.30%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:22.0%超〜28.0%、Ni:0.01%〜0.30%未満、Mo:0.2〜3.0%、Al:0.01〜0.15%、Ti:0.20〜0.40%、Nb:0.001〜0.10%、V:0.02〜0.20%、Co:0.01〜0.3%、N:0.001〜0.020%、O:0.0050%未満を含有し、下記式(1)〜(4)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼。
    Al×O≦0.0005 (1)
    Ti×N≦0.005 (2)
    Co/Ti≧0.05 (3)
    Ti+Nb+V≧0.30 (4)
    式(1)〜(4)における元素記号は、それらの元素の含有量を質量%で示したときの数値を意味する。
  2. Cu:1.0%以下、Zr:0.5%以下、W:1.0%以下、REM:0.1%以下およびB:0.01%以下から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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