しかしながら、前記特許文献1に記載されるような鉛−テルルガラスを含む厚膜ペースト組成物で電極を形成すると、浸食面が均一に形成されて滑らかになるため、電気的特性は優れるものの、はんだ付け等の接着強度が低くなる問題がある。
また、前記特許文献2、3に記載されるような無鉛テルルガラスを含む導電性ペーストでは、基板の浸食が弱すぎることから、接触抵抗を下げることが困難である。これら特許文献2、3には、この導電性ペーストを用いると、反射防止膜の浸食が不十分でも、従来とは異なるメカニズムで十分な電気的接触が得られることが説明されているが、本発明者等が追試を行っても、そのような効果は確認できなかった。また、前記特許文献4に記載されるような導電性ペーストも、同様に鉛を含まないことから、接触抵抗の制御が十分にできない問題があった。この導電性ペーストはビスマスを含むガラスを用いることで接触抵抗の制御が図られているが、鉛を含む場合に比較して制御性が低いのである。
ところで、前述したような太陽電池において、受光面側に位置するn層を薄くすることによって表面再結合速度を低下させ、より多くの電流を取り出せるようにすること、すなわちシャローエミッタ化することが試みられている。シャローエミッタ化すると、特に400(nm)付近の短波長側も発電に寄与するようになるため、太陽電池の効率向上の面では理想的な解と考えられている。シャローエミッタは受光面側のn層厚みが70〜100(nm)と、従来のシリコン太陽電池セルの100〜200(nm)に比較して更に薄くされたもので、受光により発生した電気のうちpn接合に達する前に熱に変わって有効に利用できなかった部分が減じられるので、短絡電流が増大し、延いては発電効率が高められる利点がある。
このような利点のある反面で、シャローエミッタでは、セルを高シート抵抗にする必要があるため表面近傍のドナー元素(例えば燐)濃度が低下し或いはpn接合が浅くなる。表面近傍のドナー元素濃度が低下するとAg-Si間のバリア障壁が増加し、受光面電極のオーミックコンタクトの確保が困難になる。また、pn接合が浅くなるとファイヤースルーで反射防止膜を十分に破り且つpn接合に電極が侵入しないような侵入深さ制御が非常に困難になる。
上記のようにn層が薄層化される場合にもオーミックコンタクトを確保するためには、電極−シリコン界面のガラス層中へのAg等の導電成分の溶解量を増大させる必要がある。前記各特許文献1〜4に記載されているようにガラス中にテルルを含む導電性ペーストが用いられると、従来よりもAg溶解量が増大するため、接触抵抗が低下してオーミックコンタクトの確保が容易になる。また、温度変化に対する導電成分溶解量の変化が小さくなることから、焼成処理の降温過程において、ガラス中に溶解していた導電成分が緩やかに析出するため、最適焼成温度範囲(すなわち焼成マージン)が広がる。これらが電気特性向上をもたらすものと考えられる。
しかしながら、Teは侵食抑制作用が強いため、添加量が多くなるとファイヤースルーが不十分になって、却って電気特性の低下や最適焼成温度範囲を狭めることになる。そのため、導電性ペーストにTeを添加する効果は、未だ十分に得られておらず、一層の特性向上が望まれていた。すなわち、前記各ペーストは、前述したようにファイヤースルーの制御性が未だ不十分であるため、テルルガラスを用いる効果を十分に享受できなかった。また、シャローエミッタを構成するためのn層が薄い基板(すなわちLightly Doped Emitter:LDE)に対応できる導電性ペーストが望まれていた。
本発明は、以上の事情を背景として為されたもので、その目的は、電気的特性に優れ且つ接着強度の高い電極を形成し得る太陽電池用導電性ペースト組成物およびその製造方法を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明の太陽電池用導電性ペースト組成物の要旨とするところは、導電性粉末と、無鉛テルルガラスフリットと、鉛含有添加物と、ベヒクルとを専ら含むことにある。
また、第2発明の要旨とするところは、導電性粉末と、無鉛テルルガラスフリットと、鉛含有添加物と、ベヒクルとを専ら含む太陽電池用導電性ペースト組成物の製造方法であって、(a)前記ガラスフリットに前記鉛含有添加物の一部または全部を担持させる鉛含有添加物担持工程と、(b)前記導電性粉末と、前記鉛含有添加物を担持させた前記ガラスフリットと、前記ベヒクルとを混合する混合工程とを、含むことにある。
前記第1発明によれば、導電性ペースト組成物は、ガラスフリットとして無鉛テルルガラスが用いられると共に、ガラスとは別に鉛含有添加物を含むことから、例えばシリコン基板に対してファイヤースルーによる電極形成に用いると、適度に凹凸を有する浸食面が得られるので、電気特性に優れ且つ接着強度の高い電極が得られる。ペースト中に含まれる鉛含有添加物(例えばPb3O4)は、ガラス中にネットワークフォーマーとして含まれる場合と同様に、基板を構成するシリコン(Si)との間で酸化還元反応を生じさせる。酸化還元反応によって形成されたSiO2は、ガラスに取り込まれて浸食されるので、ファイヤースルーの際に好ましい侵食性が得られる。このとき、Pbはガラスとは別に鉛含有添加物として添加されることから、ガラス中に含まれる場合よりも不均一な浸食作用をもたらす。そのため、TeとPbが共に作用する部分では浸食面が滑らかになる一方、Pbの浸食作用が強い部分では浸食面の凹凸が激しくなることから、適度に凹凸を有する浸食面が生じ、上述したように電気的特性と接着強度とが共に得られる。なお、本願において、「鉛含有添加物」は、単体の鉛または鉛化合物を意味する。
因みに、基板のSiとの酸化還元反応にはPbが必要であり、無いと浸食しにくくなる。上記のような浸食を促進する作用は、Pbがガラス中に含まれる場合も同様に得られるものであるが、鉛ガラスを含む導電性ペースト組成物が用いられると、浸食面の凹凸が激しくなり、電気的特性を得ることが困難である。これに対して、前記特許文献1に記載されるようにTeを含むガラスを用いると、浸食面が滑らかになって、電気的特性は向上するが、その反面で接着強度が低下することとなる。
なお、TeとPbが共に作用する部分を不均一に形成させる観点では、本発明とは反対に鉛ガラスとTe化合物とを用いることも考えられる。しかしながら、鉛ガラスを含む導電性ペーストにテルルを添加すると、融点の高いPb-Te酸化物が生成して軟化点が上昇する問題がある。テルルガラスに比べて軟化点の高い鉛ガラスにTe化合物を添加する場合は、Pb-Te酸化物が生成しないような低温の仮焼ではTe化合物を担持できないためである。これに対して、テルルガラスに鉛含有添加物を添加する場合には、低温で仮焼することができるので、Pb-Te酸化物の生成を避けて軟化点の上昇を避けることができる。
上述したような本発明の導電性ペースト組成物は、焼成によって電極を形成する用途に好適であり、安定なオーミック抵抗性を有するので、シート抵抗の低い基板はもちろん、80〜120(Ω/□)程度の高シート抵抗基板に対しても十分に低い接触抵抗が得られる。そのため、pn接合に電極材料が侵入しないようにファイヤースルー等の条件を制御することにより、リーク電流が低く(すなわち並列抵抗Rshが高く)なり、曲線因子FFが低下せず、電流値が大きく、且つ光電変換率の高い太陽電池を得ることができる。
また、前記第2発明によれば、太陽電池用導電性ペースト組成物を製造するに際して、鉛含有添加物担持工程では、ガラスフリットに鉛含有添加物の一部または全部が担持させられ、混合工程では、導電性粉末と、鉛含有添加物を担持させたガラスフリットと、ベヒクルとを混合することにより、導電性ペースト組成物が得られる。そのため、導電性ペースト組成物を調製するに際して、予めガラスフリットに鉛含有添加物の一部または全部が担持されることによってそれらが結合させられた状態でベヒクル中に混合されるため、導電性ペースト組成物を用いてファイヤースルーによって電極を形成する際には、部分的にPbとTeが共に作用する効果が一層顕著に得られ、その部分における滑らかさが高められる結果として、電気的特性が一層高められる。したがって、電気的特性に一層優れ且つ接着強度が十分に高い電極を得ることができる。なお、この構成によれば、接着強度は若干低下する傾向が認められるが、予め担持させることなく混合する場合との相違は僅かであり、必要強度は十分に満たすことができる。
ここで、前記第1発明において、好適には、前記鉛含有添加物は一部または全部が前記ガラスフリットに担持されているものである。鉛含有添加物は、導電性粉末等と共にガラスに混合されてもよいが、予めガラスフリットに担持すれば、部分的にPbとTeが共に作用する効果が一層顕著に得られ、電気的特性が一層高められる。なお、鉛含有添加物の全部をガラスフリットに担持してもよいが、一部を担持させて鉛含有添加物を残存させ、ペースト組成物中に鉛含有添加物が存在する状態とすれば、ファイヤースルーの際に、鉛含有添加物が含まれることによる侵食性のばらつきが一層顕著に現れるため、電気的特性および接着強度の兼ね合いが一層好ましい電極を形成することができる。
なお、本発明においては、無鉛テルルガラスの組成は特に限定されず、種々の組成のガラスが用いられる場合において、ペースト中に鉛含有添加物を添加することによる改善効果を享受できる。しかしながら、以下に特に好ましいガラス組成の一例を挙げる。
例えば、無鉛テルルガラスフリットは、酸化物換算で30〜75(mol%)のTeO2と、0.1〜18(mol%)のLi2Oを含むものが好ましい。これらの範囲内であれば、電気的特性に一層優れ、例えばFF値が75(%)以上の太陽電池を容易に得ることができる。
また、無鉛テルルガラスフリットは、酸化物換算で25(mol%)以下のBi2O3、5(mol%)以下のCuO、20(mol%)以下のSiO2を含むことが一層好ましい。これらの範囲内であれば、電気的特性に一層優れ、例えばFF値が75(%)以上の太陽電池を容易に得ることができる。
また、無鉛テルルガラスフリットは、酸化物換算で50(mol%)以下のZnO、15(mol%)以下のMgO、15(mol%)以下のWO3、5(mol%)以下のFe2O3、5(mol%)以下のNiO、5(mol%)以下のCr2O3を含むことが一層好ましい。これらの範囲内であれば、電気的特性に一層優れ、例えばFF値が75(%)以上の太陽電池を容易に得ることができる。
また、無鉛テルルガラスフリットは、上述したもの以外の成分を適宜含み得る。例えば、酸化物換算で18(mol%)以下のB2O3、5(mol%)以下のAl2O3、12(mol%)以下のTiO2、19(mol%)以下のP2O5、26(mol%)以下のV2O5、15(mol%)以下のBaO等が挙げられる。
また、好適には、第1発明の太陽電池用導電性ペースト組成物は、前記ガラスフリットに対する酸化物換算の質量比でPbO/ガラス=0.5〜1.0の範囲内で前記鉛含有添加物を含むものである。PbO/ガラスが0.5未満或いは1.0を越えても、改善効果は認められるが、PbOが少なくなると添加しないペースト組成に対して侵食性の変化が小さくなり、また、PbOが多くなると上記範囲内にある場合に比較して侵食性が著しく強くなり、何れも改善効果が小さくなるので、上記範囲が一層好ましい。
また、前記第2発明において、好適には、前記鉛含有添加物担持工程は、前記ガラスフリットと前記鉛含有添加物の粉末とを混合して酸化雰囲気中において500(℃)以下の温度で仮焼処理を施すものである。このようにすれば、ガラスフリットに鉛含有添加物の一部が担持された状態が容易に得られる。なお、上記仮焼温度では、鉛含有添加物の一部はガラス相の中に入り、一部はガラスフリットに担持され、残部はガラスフリットに担持されず、そのまま残存することとなるが、仮焼温度が500(℃)を越えるとガラスと鉛含有添加物との化学反応が生じ、Pb−Te酸化物が生成されるため、軟化点が上昇しやすくなる。そのため、仮焼温度は500(℃)以下に留めることが好ましい。
また、好適には、前記鉛含有添加物担持工程は、前記ガラスフリットと前記鉛含有添加物の粉末とを混合してメカノケミカル法によってそのガラスフリットの粒子表面にその鉛含有添加物の粉末を固着させて複合粒子を得るものである。鉛含有添加物の担持方法としては前述した仮焼処理が簡便な方法であるが、担持方法は特に限定されず、メカノケミカル法も有効である。特にこの方法によれば、処理対象物に熱が加えられないため、無用な化学反応が抑制される利点もある。なお、「メカノケミカル法」は、非加熱の粉砕・混合操作であり、例えばロータを備えた容器内に処理対象の粉体を投入し、ロータを高速回転させることによって粉体粒子個々に衝撃力、圧縮力、剪断力を均一に作用させ、機械的エネルギで結晶構造を破壊し或いは結合状態を切断して活性化させることにより、固相反応を促進させる方法である。「メカノケミカル法」に用いられる処理装置は、例えば、軸心が略水平方向に伸びる円筒状の混合容器と、上述したように粒子個々に衝撃力等が均一に作用する特殊形状のロータとを備えたもので、そのロータは例えば周速50(m/s)以上の高速回転が可能なものが好ましい。
また、前記鉛含有添加物は特に限定されず、種々のものを用い得るが、例えば、鉛、酸化鉛(例えばPbOやPb3O4)、鉛を含む合金、レジネート、硝酸鉛、炭酸鉛、ステアリン酸鉛、その他の鉛を含む化合物が挙げられる。
また、前記鉛含有添加物は、適宜の粒子形状および粒径のものを用い得るが、例えば、形状は非球形、粒径は1〜5(μm)の範囲が好ましい。このような粒子を用いれば、ガラスフリットとの良好な分散性が得られ、担持が容易になる。
また、好適には、前記導電性粉末は、Ag粉末である。本発明が適用される導電性ペースト組成物に含まれる導電性粉末は特に限定されず、Au,Ag,Cu,Al等が挙げられる。この中でも、AgはTeが存在することによる溶解量増大効果が顕著に得られるため、本発明の適用対象として特に好ましい。
また、好適には、前記ガラスフリットは平均粒径(D50)が0.3〜10(μm)の範囲内である。ガラスフリットの平均粒径が小さすぎると、電極の焼成時に融解が早くなるため十分な電気的特性を得ることが困難になる。平均粒径が0.3(μm)以上であれば、このような問題が生じ難く、しかも、凝集が生じ難いのでペースト調製時に一層良好な分散性が得られる。また、ガラスフリットの平均粒径が導電性粉末の平均粒径よりも著しく大きい場合にも粉末全体の分散性が低下するが、10(μm)以下であれば一層良好な分散性が得られる。しかも、ガラスの一層の溶融性が得られる。
なお、上記ガラスフリットの平均粒径は空気透過法による値である。空気透過法は、粉体層に対する流体(例えば空気)の透過性から粉体の比表面積を測定する方法をいう。この測定方法の基礎となるのは、粉体層を構成する全粒子の濡れ表面積とそこを通過する流体の流速および圧力降下の関係を示すコゼニー・カーマン(Kozeny-Carmann)の式であり、装置によって定められた条件で充填された粉体層に対する流速と圧力降下を測定して試料の比表面積を求める。この方法は充填された粉体粒子の間隙を細孔と見立てて、空気の流れに抵抗となる粒子群の濡れ表面積を求めるもので、通常はガス吸着法で求めた比表面積よりも小さな値を示す。求められた上記比表面積および粒子密度から粉体粒子を仮定した平均粒径を算出できる。
また、好適には、前記導電性粉末は平均粒径(D50)が0.3〜3.0(μm)の範囲内の銀粉末である。導電性粉末としては銅粉末やニッケル粉末等も用い得るが、銀粉末が高い導電性を得るために最も好ましい。また、銀粉末の平均粒径が3.0(μm)以下であれば一層良好な分散性が得られるので一層高い導電性が得られる。また、0.3(μm)以上であれば凝集が抑制されて一層良好な分散性が得られる。なお、0.3(μm)未満の銀粉末は著しく高価であるため、製造コストの面からも0.3(μm)以上が好ましい。また、導電性粉末、ガラスフリット共に平均粒径が3.0(μm)以下であれば、細線パターンで電極を印刷形成する場合にも目詰まりが生じ難い利点がある。
なお、前記銀粉末は特に限定されず、球状や鱗片状等、どのような形状の粉末が用いられる場合にも導電性を保ったまま細線化が可能である。但し、球状粉を用いた場合が印刷性に優れると共に、塗布膜における銀粉末の充填率が高くなるため、導電性の高い銀が用いられることと相俟って、鱗片状等の他の形状の銀粉末が用いられる場合に比較して、その塗布膜から生成される電極の導電率が高くなる。そのため、必要な導電性を確保したまま線幅を一層細くすることが可能となることから、特に好ましい。
また、好適には、前記太陽電池用導電性ペースト組成物は、25(℃)−20(rpm)における粘度が150〜250(Pa・s)の範囲内、粘度比(すなわち、[10(rpm)における粘度]/[100(rpm)における粘度])が3〜8である。このような粘度特性を有するペーストを用いることにより、スキージングの際に好適に低粘度化してスクリーンメッシュを透過し、その透過後には高粘度に戻って印刷幅の広がりが抑制されるので、スクリーンを容易に透過して目詰まりを生じないなど印刷性を保ったまま細線パターンが容易に得られる。ペースト組成物の粘度は、180〜240(Pa・s)の範囲が一層好ましく、粘度比は4.5〜7.5の範囲が一層好ましい。また、設計線幅が100(μm)以下の細線化には粘度比5〜7が望ましい。
なお、線幅を細くしても断面積が保たれるように膜厚を厚くすることは、例えば、印刷製版の乳剤厚みを厚くすること、テンションを高くすること、線径を細くして開口径を広げること等でも可能である。しかしながら、乳剤厚みを厚くすると版離れが悪くなるので印刷パターン形状の安定性が得られなくなる。また、テンションを高くし或いは線径を細くすると、スクリーンメッシュが伸び易くなるので寸法・形状精度を保つことが困難になると共に印刷製版の耐久性が低下する問題がある。しかも、太幅で設けられることから膜厚を厚くすることが無用なバスバーも厚くなるため、材料の無駄が多くなる問題もある。
また、好適には、前記太陽電池用導電性ペースト組成物は、前記導電性粉末を64〜90重量部、前記ベヒクルを3〜20重量部の範囲内の割合で含むものである。このようにすれば、印刷性が良好で線幅の細く導電性の高い電極を容易に形成できるペースト組成物が得られる。
また、好適には、前記導電性ペースト組成物は、前記ガラスフリットを前記導電性粉末100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で含むものである。0.1重量部以上含まれていれば十分な浸食性(ファイヤスルー性)が得られるので、良好なオーミックコンタクトが得られる。また、10重量部以下に留められていれば絶縁層が形成され難いので十分な導電性が得られる。導電性粉末100重量部に対するガラス量は、0.5〜8重量部が一層好ましく、0.5〜7重量部が更に好ましい。
また、本願発明の導電性ペースト組成物は、裏面電極形成に用いることもでき、例えば、銀を導電成分とするペースト組成物に適用した場合には、前述したような侵食性のバラツキによって接着強度の向上効果が得られる。また、アルミニウムを導電成分とするペースト組成物に適用した場合には、軟化点が低く、且つ鉛含有添加物がガラスの周りに担持されているため、低い焼成温度から適度にAl粉と反応し、BSF層の均一性が高められるため、電気特性が向上する。しかしながら、本願発明のペースト組成物は、前述したようにファイヤースルーによる電極形成時の銀の析出を好適に制御し得るものであるから、受光面電極に特に好適に用い得る。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の導電性組成物が適用されたシリコン系太陽電池10を備えた太陽電池モジュール12の断面構造を模式的に示す図である。図1において、太陽電池モジュール12は、上記太陽電池10と、これを封止する封止材14と、受光面側において封止材14上に設けられた表面ガラス16と、裏面側から太陽電池10および封止材14を保護するために設けられた保護フィルム(すなわちバックシート)18とを備えている。上記封止材14は、例えば、EVAから成るもので、十分な耐候性を有するように、架橋剤、紫外線吸収剤、接着保護剤等が適宜配合されている。また、上記保護フィルム18は、例えば弗素樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、或いはPETやEVA等から成る樹脂フィルムを複数枚貼り合わせたもの等から成るもので、高い耐候性や水蒸気バリア性等を備えている。
また、上記の太陽電池10は、例えばp型多結晶半導体であるシリコン基板20と、その上下面にそれぞれ形成されたn層22およびp+層24と、そのn層22上に形成された反射防止膜26および受光面電極28と、そのp+層24上に形成された裏面電極30とを備えている。上記シリコン基板20の厚さ寸法は例えば100〜200(μm)程度である。
上記のn層22およびp+層24は、シリコン基板20の上下面に不純物濃度の高い層を形成することで設けられたもので、その高濃度層の厚さ寸法はn層22が例えば70〜100(nm)程度、p+層24が例えば500(nm)程度である。n層22は、一般的なシリコン系太陽電池では100〜200(nm)程度であるが、本実施例ではそれよりも薄くなっており、シャローエミッタと称される構造を成している。なお、n層22に含まれる不純物は、n型のドーパント、例えば燐(P)で、p+層24に含まれる不純物は、p型のドーパント、例えばアルミニウム(Al)や硼素(B)である。
また、前記の反射防止膜26は、例えば、窒化珪素 Si3N4等から成る薄膜で、例えば可視光波長の1/4程度の光学的厚さ、例えば80(nm)程度で設けられることによって10(%)以下、例えば2(%)程度の極めて低い反射率に構成されている。
また、前記の受光面電極28は、例えば一様な厚さ寸法の厚膜導体から成るもので、図2に示されるように、受光面32の略全面に、多数本の細線部を有する櫛状を成す平面形状で設けられている。
上記の厚膜導体は、Ag、ガラス、および鉛含有添加物(鉛または鉛化合物)を含む厚膜銀から成るもので、Ag 100重量部に対してガラスを0.1〜10重量部の範囲内、例えば1.6重量部程度、鉛含有添加物を0.1〜10重量部の範囲内、例えば1.1重量部程度の割合で含むものである。また、鉛含有添加物のガラスに対する割合は、酸化物換算で、PbO/ガラス=0.5〜1.0の範囲内、例えば、1.1/1.6=0.7程度である。
上記ガラスは、例えば、Teがネットワークフォーマーとして働き、Pbを含まない無鉛テルルガラス、例えば、TeO2-Li2O-Bi2O3系無鉛ガラスである。この無鉛ガラスは、これら主要成分の他にCuO、SiO2、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3等を含むものが好ましいが、その組成は特に限定されず、一般に太陽電池の電極用とされる適宜のものが用いられている。
また、前記鉛含有添加物は、ガラスとは別に含まれるものであり、例えば、電極形成時に添加された単体または化合物に応じて、Pb、Pb3O4、Pb(NO3)2、PbO、PbCO3等が含まれている。
また、上記の導体層の厚さ寸法は例えば10〜25(μm)の範囲内、例えば15(μm)程度で、細線部の各々の幅寸法は例えば35〜80(μm)の範囲内、例えば45(μm)程度で、十分に高い導電性を備えている。
また、前記の裏面電極30は、p+層24上にアルミニウムを導体成分とする厚膜材料を略全面に塗布して形成された全面電極34と、その全面電極34上に帯状に塗布して形成された厚膜銀から成る帯状電極36とから構成されている。この帯状電極36は、裏面電極30に半田リボン38や導線等を半田付け可能にするために設けられたものである。前記受光面電極28にも裏面側と同様に半田リボン38が溶着されている。
上記のような受光面電極28は、例えば、導体粉末と、ガラスフリットと、鉛含有添加物と、ベヒクルと、溶剤とから成る電極用ペーストを用いて良く知られたファイヤースルー法によって形成されたものである。鉛含有添加物は、そのまま粉末で混合されてもよいが、一部または全部がガラスフリットに担持された状態で混合されてもよい。受光面電極形成を含む太陽電池10の製造方法の一例を以下に説明する。
まず、上記ガラスフリットを作製する。Li源として炭酸リチウム Li2CO3を、Si源として二酸化珪素 SiO2を、Cu源としてCuOを、Zn源としてZnOを、Bi源としてBi2O3を、Te源としてTeO2を、それぞれ用意し、所望するガラス組成になるように秤量して調合する。これを坩堝に投入して組成に応じた900〜1200(℃)の範囲内の温度で、30分〜1時間程度溶融し、急冷することでガラス化させる。このガラスを遊星ミルやボールミル等の適宜の粉砕装置を用いて粉砕する。粉砕時間は1〜8時間程度、粉砕後の平均粒径(D50)は例えば0.3〜10(μm)程度である。なお、上記ガラス粉末の平均粒径は空気透過法を用いて算出したものである。
また、鉛含有添加物として例えばPb3O4粉末を用意する。Pb3O4粉末は、例えば、平均粒径が2(μm)程度の市販の粉末を用いる。
次いで、このようにしてそれぞれ用意したガラス粉末およびPb3O4粉末を混合して、例えばセッター等に載せて、酸化雰囲気中にて300〜500(℃)程度の温度で仮焼処理を施す。仮焼処理温度は、ガラス粉末とPb3O4粉末とが焼結する温度より十分に低温に設定されており、これにより、ガラス相の中に若干量のPbが入った状態で、未反応のPb3O4を残したまま、その一部または全部がガラス粉末に担持された粉末が得られる。
なお、上記担持処理は、仮焼処理に代えて、メカノケミカル法を用いることもできる。メカノケミカル法に用いる処理装置は、例えば、ホソカワミクロン(株)製ノビルタ NOB-130などであるが、特に限定されず、適宜のものを用い得る。NOB-130を用いる場合の複合化処理の運転条件は、例えば、羽根回転数を2500(rpm)、処理時間を10〜20分間の範囲内、例えば10分間、動力負荷を4.5〜5.0(kW)の範囲内、例えば4.7(kW)である。羽根と容器内面との間には3(mm)程度の隙間が設けられており、容器内に材料を投入して運転すると、ガラス粉末および鉛含有添加物粉末が混合され、更には機械的作用力が加えられることで鉛含有添加物粉末がガラス粉末表面に一粒子層の厚みで強固に固着され、複合粒子が得られる。このようにして製造した複合粒子をガラスフリットに代えて用い得る。
また、導体粉末として、例えば、平均粒径(D50)が0.3〜3.0(μm)の範囲内、例えば平均粒径が1.6(μm)程度の市販の球状の銀粉末を用意する。このような平均粒径が十分に小さい銀粉末を用いることにより、塗布膜における銀粉末の充填率を高め延いては導体の導電率を高めることができる。また、前記ベヒクルは、有機溶剤に有機結合剤を溶解させて調製したもので、有機溶剤としては、例えばブチルカルビトールアセテートが、有機結合剤としては、例えばエチルセルロースが用いられる。ベヒクル中のエチルセルロースの割合は例えば15(wt%)程度である。また、ベヒクルとは別に添加する溶剤は、例えばブチルカルビトールアセテートである。すなわち、これに限定されるものではないが、ベヒクルに用いたものと同じ溶剤でよい。この溶剤は、ペーストの粘度調整の目的で添加される。
以上のペースト原料をそれぞれ用意して、例えば導体粉末を77〜90(wt%)の範囲内、例えば89(wt%)、ガラスフリットを0.1〜10(wt%)の範囲内、例えば1.4(wt%)、鉛含有添加物を0.1〜10(wt%)の範囲内、例えば1.0(wt%)、ベヒクルを3〜14(wt%)の範囲内、例えば5.0(wt%)、溶剤を2〜5(wt%)の範囲内、例えば3.6(wt%)の割合で秤量し、攪拌機等を用いて混合した後、例えば三本ロールミルで分散処理を行う。これにより、前記電極用ペーストが得られる。この実施例では、PbO/ガラス=0.7である。
上記のようにして電極用ペーストを調製する一方、適宜のシリコン基板に例えば、熱拡散法やイオンプランテーション等の良く知られた方法で不純物を拡散し或いは注入して前記n層22およびp+層24を形成することにより、前記シリコン基板20を作製する。次いで、これに例えばPE−CVD(プラズマCVD)等の適宜の方法で窒化珪素薄膜を形成し、前記反射防止膜26を設ける。
次いで、上記の反射防止膜26上に前記図2に示すパターンで前記電極用ペーストをスクリーン印刷する。これを例えば150(℃)で乾燥し、更に、近赤外炉において700〜900(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施す。これにより、その焼成過程で電極用ペースト中のガラス成分が反射防止膜26を溶かし、その電極用ペーストが反射防止膜26を破るので、電極用ペースト中の導体成分すなわち銀とn層22との電気的接続が得られ、前記図1に示されるようにシリコン基板20と受光面電極28とのオーミックコンタクトが得られる。受光面電極28は、このようにして形成される。
なお、前記裏面電極30は、上記工程の後に形成してもよいが、受光面電極28と同時に焼成して形成することもできる。裏面電極30を形成するに際しては、上記シリコン基板20の裏面全面に、例えばアルミニウムペーストをスクリーン印刷法等で塗布し、焼成処理を施すことによってアルミニウム厚膜から成る前記全面電極34を形成する。更に、その全面電極34の表面に前記電極用ペーストをスクリーン印刷法等を用いて帯状に塗布して焼成処理を施すことによって、前記帯状電極36を形成する。これにより、裏面全面を覆う全面電極34と、その表面の一部に帯状に設けられた帯状電極36とから成る裏面電極30が形成され、前記の太陽電池10が得られる。上記工程において、同時焼成で製造する場合には、受光面電極28の焼成前に印刷処理を施すことになる。
本実施例の太陽電池10は、上述したように受光面電極28がファイヤースルー法で設けられているが、その受光面電極28が、無鉛テルルガラスと鉛含有添加物とを含む厚膜銀ペーストを用いてファイヤースルーによって形成されていることから、Teの存在によってガラス中へのAg溶解量が増大すると共に、Pbがガラスとは別に添加されることによって、適度に凹凸を有する浸食面が得られるので、好適にオーミックコンタクトが得られ、電気的特性に優れ、しかも、接着強度の高い太陽電池10が得られる。
以下、ガラス組成、鉛含有添加物量、仮焼温度等を種々変更して評価した結果を説明する。下記の表1は、TeO2-Li2O-Bi2O3-CuO-SiO2系ガラスについて、各成分の割合を種々変更すると共に、追加のガラス成分としてB2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3のうちの1〜2種を含むものを用いた。表1に示す評価では、PbO/テルルガラス比を0.7、ガラスと鉛含有添加物との仮焼温度を360(℃)として、ペーストを調製した。明示しない他の条件は全て共通し、前記製造方法において説明した通りである。各試料は、何れも前述した製造工程に従ってペーストを調製して受光面電極28を形成し太陽電池10を製造して、その出力を測定してFF値を求めた。また、受光面電極28に半田リボンを接着して接着強度を評価した。太陽電池の出力は市販のソーラーシミュレータを用いて測定し、接着強度は市販の引張試験機を用いて評価した。表1において、「出力特性」は、FF値に基づいて適否を判断した結果を示したもので、FF値75以上を「○」(すなわち実施例)、75未満を「×」(すなわち比較例)とした。FF値は良好なオーミックコンタクトが得られているか否かの判定であり、一般に、太陽電池はFF値が70以上であれば使用可能とされているが、高いほど好ましいのはもちろんであり、本実施例においては、FF値が75より大きいものを合格とした。また、「接着強度」は、3(N)以上を「○」(すなわち良好)、3(N)未満を「×」(すなわち強度不足)と判定した。
上記表1において、No.1〜4は、TeO2量の範囲を検討したもので、TeO2が27.2〜78.6(mol%)、Li2Oが4.2〜13.0(mol%)、Bi2O3が3.2〜20.3(mol%)、CuOが1.1〜1.8(mol%)、SiO2が9.3〜13.9(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが0〜26.5(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、TeO2が30.6〜75.0(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であり、鉛含有添加物を添加することによる強度低下は生じていない。
また、No.5〜8は、Li2O量の範囲を検討したもので、TeO2が56.8〜71.2(mol%)、Li2Oが0〜20.3(mol%)、Bi2O3が3.1〜13.4(mol%)、CuOが1.1〜1.8(mol%)、SiO2が14.0〜17.8(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが0〜3.6(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、Li2Oが0.1〜18.0(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.9〜11は、Bi2O3量の範囲を検討したもので、TeO2が57.1〜59.2(mol%)、Li2Oが2.8〜12.6(mol%)、Bi2O3が0〜27.2(mol%)、CuOが1.0〜1.8(mol%)、SiO2が5.5〜13.8(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが4.2〜12.6(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、Bi2O3が0〜25.0(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.12〜14は、CuO量の範囲を検討したもので、TeO2が61.2〜68.2(mol%)、Li2Oが4.6〜13.2(mol%)、Bi2O3が3.2〜4.8(mol%)、CuOが0〜7.2(mol%)、SiO2が10.6〜16.1(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが0〜8.2(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、CuOが0〜4.8(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.15〜17は、SiO2量の範囲を検討したもので、TeO2が62.4〜71.8(mol%)、Li2Oが8.2〜12.5(mol%)、Bi2O3が4.2〜5.5(mol%)、CuOが0.4〜2.3(mol%)、SiO2が0〜22.5(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが0〜9.2(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、SiO2が0〜19.8(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.18、19は、ZnO量の範囲を検討したもので、TeO2が35.0〜37.2(mol%)、Li2Oが3.6〜8.6(mol%)、Bi2O3が2.6〜2.8(mol%)、CuOが0.8〜1.1(mol%)、SiO2が2.8〜3.2(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが49.5〜52.8(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、ZnOが49.5(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.20、21は、MgO量の範囲を検討したもので、TeO2が67.1〜67.3(mol%)、Li2Oが10.8〜11.5(mol%)、Bi2O3が2.0〜2.1(mol%)、CuOが1.1〜1.2(mol%)、SiO2が3.0〜3.1(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnOが全て0(mol%)、MgOが14.8〜16.0(mol%)、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、MgOが14.8(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.22、23は、WO3量の範囲を検討したもので、TeO2が67.7〜68.0(mol%)、Li2Oが10.8〜11.1(mol%)、Bi2O3が1.7〜1.9(mol%)、CuOが1.0(mol%)、SiO2が2.8〜3.0(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgOが全て0(mol%)、WO3が15.0〜16.0(mol%)、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、WO3が15.0(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.24、25は、Fe2O3量の範囲を検討したもので、TeO2が69.7〜70.1(mol%)、Li2Oが10.8〜11.7(mol%)、Bi2O3が2.6〜2.9(mol%)、CuOが1.7〜1.8(mol%)、SiO2が8.7〜9.1(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3が全て0(mol%)、Fe2O3が4.7〜6.2(mol%)、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、Fe2O3が4.7(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.26、27は、NiO量の範囲を検討したもので、TeO2が68.6〜70.4(mol%)、Li2Oが12.6〜12.9(mol%)、Bi2O3が3.4〜3.5(mol%)、CuOが1.9〜2.2(mol%)、SiO2が6.5〜7.0(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3が全て0(mol%)、NiOが4.6〜6.4(mol%)、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、NiOが4.6(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.28、29は、Cr2O3量の範囲を検討したもので、TeO2が70.9〜71.8(mol%)、Li2Oが12.5〜13.4(mol%)、Bi2O3が3.5〜3.6(mol%)、CuOが2.1〜2.2(mol%)、SiO2が4.2〜4.4(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiOが全て0(mol%)、Cr2O3が4.7〜6.7(mol%)の組成範囲では、Cr2O3が4.7(mol%)の場合にFF値が75と十分に高い値が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.30、31は、B2O3、Al2O3を含有する組成を評価したもので、TeO2が61.3〜64.6(mol%)、Li2Oが6.9〜10.2(mol%)、Bi2O3が2.2〜8.2(mol%)、CuOが0.2〜1.2(mol%)、SiO2が2.8〜4.5(mol%)、B2O3が10.3〜17.3(mol%)、Al2O3が3.0(mol%)、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが0〜7.3(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、何れもFF値が75以上の結果が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.32、33は、TiO2を含有する組成を評価したもので、TeO2が61.8〜62.5(mol%)、Li2Oが12.8〜14.8(mol%)、Bi2O3が1.3〜5.6(mol%)、CuOが1.5〜2.8(mol%)、SiO2が8.7〜10.5(mol%)、B2O3、Al2O3が0(mol%)、TiO2が5.8〜11.9(mol%)、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、何れもFF値が75以上の結果が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.34、35は、P2O5を含有する組成を評価したもので、TeO2が57.4〜75.0(mol%)、Li2Oが12.9〜14.8(mol%)、Bi2O3が4.8〜15.9(mol%)、CuOが0.4〜1.3(mol%)、SiO2が1.2〜3.7(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2が0(mol%)、P2O5が2.3〜10.3(mol%)、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、何れもFF値が75以上の結果が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.36、37は、V2O5を含有する組成を評価したもので、TeO2が64.7〜72.0(mol%)、Li2Oが4.8〜14.9(mol%)、Bi2O3が1.2〜2.4(mol%)、CuOが1.2〜1.8(mol%)、SiO2が3.2〜10.4(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5が0(mol%)、V2O5が5.8〜17.6(mol%)、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、何れもFF値が75以上の結果が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
また、No.38、39は、BaOを含有する組成を評価したもので、TeO2が64.5〜68.1(mol%)、Li2Oが13.2〜16.8(mol%)、Bi2O3が2.1〜3.9(mol%)、CuOが0.3〜0.4(mol%)、SiO2が1.4〜8.2(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5が0(mol%)、BaOが6.2〜14.9(mol%)、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲では、何れもFF値が75の結果が得られ、出力特性の評価が「○」の結果となった。また、接着強度は、何れも「○」の結果であった。
なお、上記各評価結果において、FF値が74に留まった各組成においても、Pb3O4を添加しない場合に比較するとFF値が向上する結果が得られている。表1には示していないが、No.1、8、11、14、17、19、23、29の各ガラス組成について、鉛含有添加物を添加しないペーストを用いて評価したところ、FF値はそれぞれ68、64、66、65、68、66、64、67であった。また、接着強度は全て「×」の結果であった。したがって、これらのガラス組成では鉛含有添加物を添加しても特に好ましいFF値75は得られなかったものの、FF値74はこれらに比較すると顕著な改善が認められるもので、更に、接着強度が改善される結果からも、各成分の量に拘わらず、テルルガラスに鉛含有添加物を添加する効果がある。
以上の評価結果によれば、無鉛テルルガラスに鉛含有添加物を添加した導電性ペーストは、特に組成が限定されることなく、種々の組成のガラスに対して、鉛含有添加物の添加によってFF値の改善効果が得られることが確かめられた。
表2、表3は、種々の組成のガラスに対して、PbOの添加量を変化させることにより、適切なPbO/ガラス量の範囲を確かめたものである。No.40〜46は、TeO2が68.9(mol%)、Li2Oが11.4(mol%)、Bi2O3が4.4(mol%)、CuOが1.3(mol%)、SiO2が14.0(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜78の高いFF値を得ることができた。
No.47〜49は、PbOを含むテルルガラスを用いたペーストの評価結果である。PbO-TeO2-Li2O-Bi2O3-CuO-SiO2ガラス、PbO-TeO2-Li2O-Bi2O3ガラス、PbO-TeO2-Li2O-Bi2O3-CuO-B2O3-Al2O3-TiO2-ZnOガラスの3種を用いてペーストを調製し、受光面電極を形成して特性を評価した。何れもFF値は75以上と優れるものの、接着強度が低く、使用に適しないことが確かめられた。
No.50〜54は、TeO2が61.3(mol%)、Li2Oが6.9(mol%)、Bi2O3が8.2(mol%)、CuOが0.2(mol%)、SiO2が2.8(mol%)、B2O3が10.3(mol%)、Al2O3が3.0(mol%)、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが7.3(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜76の高いFF値を得ることができた。
No.55〜59は、TeO2が72.1(mol%)、Li2Oが10.8(mol%)、Bi2O3が4.4(mol%)、CuOが0.5(mol%)、SiO2が6.4(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnOが全て0(mol%)、MgOが5.8(mol%)、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜78の高いFF値を得ることができた。
No.60〜64は、TeO2が62.9(mol%)、Li2Oが8.3(mol%)、Bi2O3が16.9(mol%)、CuOが2.4(mol%)、SiO2が5.6(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgOが全て0(mol%)、WO3が3.9(mol%)、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜78の高いFF値を得ることができた。
No.65〜69は、TeO2が57.2(mol%)、Li2Oが13.9(mol%)、Bi2O3が8.2(mol%)、CuOが0.4(mol%)、SiO2が16.9(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3が全て0(mol%)、Fe2O3が3.4(mol%)、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜78の高いFF値を得ることができた。
No.70〜74は、TeO2が67.0(mol%)、Li2Oが6.3(mol%)、Bi2O3が10.4(mol%)、CuOが1.4(mol%)、SiO2が3.5(mol%)、B2O3が0(mol%)、Al2O3が3.5(mol%)、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが0(mol%)、ZnOが5.8(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3が全て0(mol%)、NiOが2.1(mol%)、Cr2O3が0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜78の高いFF値を得ることができた。
No.75〜79は、TeO2が71.4(mol%)、Li2Oが8.6(mol%)、Bi2O3が1.5(mol%)、CuOが2.2(mol%)、SiO2が6.8(mol%)、B2O3が8.3(mol%)、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiOが全て0(mol%)、Cr2O3が1.2(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜78の高いFF値を得ることができた。
No.80〜84は、TeO2が57.4(mol%)、Li2Oが14.8(mol%)、Bi2O3が15.9(mol%)、CuOが0.4(mol%)、SiO2が1.2(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2が全て0(mol%)、P2O5が10.3(mol%)、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75の高いFF値を得ることができた。
No.85〜89は、TeO2が72.0(mol%)、Li2Oが4.8(mol%)、Bi2O3が1.2(mol%)、CuOが1.2(mol%)、SiO2が3.2(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5が全て0(mol%)、V2O5が17.6(mol%)、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75の高いFF値を得ることができた。
No.90〜94は、TeO2が63.9(mol%)、Li2Oが13.2(mol%)、Bi2O3が2.1(mol%)、CuOが0.3(mol%)、SiO2が1.4(mol%)、B2O3およびAl2O3が0(mol%)、TiO2が4.2(mol%)、P2O5およびV2O5が0(mol%)、BaOが14.9(mol%)、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、PbO/ガラスが0.4〜1.1の範囲となるようにPb3O4を添加したものである。PbO/ガラスが0.5〜1.0の範囲では、75〜76の高いFF値を得ることができた。
なお、表2、表3の何れの組成においても、PbO/ガラスが0.4或いは1.1の場合は、FF値が74に留まっているが、PbOを添加しない場合に比較するとFF値が向上している。表2,3には示していないが、No.40、50、60、70、85、90の各ガラス組成について、鉛含有添加物を添加しないペーストを用いて評価したところ、FF値はそれぞれ64、67、66、68、64、67であった。また、接着強度は全て「×」の結果であった。したがって、これらのガラス組成では鉛含有添加物を添加しても特に好ましいFF値75は得られなかったものの、FF値74はこれらに比較すると顕著な改善が認められるもので、更に、接着強度が改善される結果に照らせば、何れの組成においても、特に好ましい効果が得られるのは、0.5〜1.0の範囲であるが、これを外れるPbO量においても、改善効果が得られる。
表4,表5は、種々の組成のガラスに対して、鉛含有添加物を添加する際の適切な仮焼温度の範囲を確かめると共に、鉛含有添加物の他の担持方法を評価した結果を示したものである。No.95〜98は、TeO2が61.3(mol%)、Li2Oが6.9(mol%)、Bi2O3が8.2(mol%)、CuOが0.2(mol%)、SiO2が2.8(mol%)、B2O3が10.3(mol%)、Al2O3が3.0(mol%)、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが7.3(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、鉛含有添加物としてPb3O4を用意し、仮焼温度を360〜550(℃)の範囲でガラスと鉛含有添加物の混合物にそれぞれ仮焼を施したものである。No.95は混合しただけで仮焼を施していない。仮焼温度が500(℃)以下であれば、仮焼を施さないものも含めてFF値が76〜78と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。また、仮焼後の析出物をXRDで同定したところ、500(℃)以下の仮焼温度では添加したPb3O4のピークのみが検出されたが、550(℃)で仮焼したNo.98は、Pb3O4のピークはなく、Pb2Te3O8およびPb3TeO5のピークが検出された。この同定結果によれば、No.98は仮焼温度が高すぎるために添加したPbとガラス中のTeとが反応して高融点のPb-Te酸化物が生じ、電気的接触が低下したものと考えられる。
No.99〜102は、No.95〜98と同じガラスを用いて、鉛含有添加物としてPb3O4に代えてPb(NO3)2を用いて同様に評価したものである。Pb(NO3)2を用いた場合にも、仮焼温度が500(℃)以下であれば、仮焼を施さないものも含めてFF値が75〜77と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。また、仮焼後の析出物をXRDで同定したところ、400(℃)以下の仮焼温度では添加したPb(NO3)2のピークのみが検出されたが、500(℃)で仮焼したNo.101、102は、Pb(NO3)2のピークはなく、PbOのピークが検出された。Pb-Te酸化物は生じていないが、ガラスとの反応が生じ、電気的接触が低下したものと考えられる。
No.103〜108は、異なるガラス組成で同様に評価したもので、TeO2が68.9(mol%)、Li2Oが11.4(mol%)、Bi2O3が4.4(mol%)、CuOが1.3(mol%)、SiO2が14.0(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、鉛含有添加物としてPb3O4を用意し、仮焼温度を360〜550(℃)の範囲でガラスと鉛含有添加物の混合物にそれぞれ仮焼を施したものである。なお、No.103は混合しただけで仮焼を施しておらず、No.108はメカノケミカル法でガラスフリットに鉛含有添加物を担持したものである。このガラス組成においても、500(℃)以下の仮焼温度であれば、鉛含有添加物とガラスとの反応が生じず、75〜78の高いFF値が得られる結果となった。また、メカノケミカル法で担持した場合にも、低温で仮焼した場合と同等の出力特性および接着強度が得られることを確認した。
No.109〜114は、No.103〜109と同じガラスを用いて、鉛含有添加物としてPb3O4に代えてPbCO3を用いたものである。PbCO3を用いた場合にも、仮焼温度が500(℃)以下であれば、仮焼を施さないものも含めてFF値が75〜77と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。また、仮焼後の析出物をXRDで同定したところ、300(℃)以下の仮焼温度では添加したPbCO3のピークのみが検出されたが、400〜500(℃)で仮焼したNo.111、112は、PbOのピークが検出された。また、550(℃)で仮焼すると、Pb-Te酸化物が生じている。この結果、550(℃)で仮焼した場合には、電気的接触が低下したものと考えられる。
No.115〜120は、No.103〜109と同じガラスを用いて、鉛含有添加物としてPb3O4に代えて単体のPbを用いたものである。Pbを用いた場合にも、仮焼温度が500(℃)以下であれば、仮焼を施さないものも含めてFF値が75〜77と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。また、仮焼後の析出物をXRDで同定したところ、500(℃)以下の仮焼温度ではPbOのピークのみが検出されたが、550(℃)で仮焼するとPb-Te酸化物が生じている。この結果、550(℃)で仮焼した場合には、電気的接触が低下したものと考えられる。
No.121〜124は、MgOを含む更に異なるガラスを用い、鉛含有添加物としてPb(NO3)2を用いて、同様に評価したものである。TeO2が59.2(mol%)、Li2Oが10.8(mol%)、Bi2O3が13.0(mol%)、CuOが1.4(mol%)、SiO2が7.4(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnOが全て0(mol%)、MgOが8.2(mol%)、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲で、仮焼温度が500(℃)以下であれば、仮焼を施さないものも含めてFF値が75〜77と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。また、仮焼後の析出物をXRDで同定したところ、400(℃)の仮焼温度では添加したPb(NO3)2のピークのみが検出されたが、500(℃)以上で仮焼したNo.123、124は、PbOのピークが検出された。550(℃)の仮焼温度では、Pb-Te酸化物は生じていないが、ガラスとの反応により電気的接触が低下したものと考えられる。
No.125〜128は、No.121〜124と同じガラスを用い、鉛含有添加物としてステアリン酸鉛を用いて、同様に評価したものである。この構成でも、仮焼温度が500(℃)以下であれば、仮焼を施さないものも含めてFF値が75〜77と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。仮焼するとステアリン酸鉛が分解してPbOが生じ、特に、仮焼温度が550(℃)になると、Pb-Te酸化物が生じるため、電気的接触が低下したものと考えられる。
No.129〜132は、WO3を含む更に他のガラスを用い、鉛含有添加物としてPb3O4を用いて、同様に評価したものである。TeO2が50.7(mol%)、Li2Oが14.4(mol%)、Bi2O3が21.8(mol%)、CuOが0.3(mol%)、SiO2、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaO、ZnO、MgOが全て0(mol%)、WO3が12.8(mol%)、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲でも、仮焼温度が500(℃)以下であれば、仮焼を施さないものも含めてFF値が76〜78と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。仮焼するとPb-Te酸化物が生じるため、電気的接触が低下したものと考えられる。また、この構成でも、メカノケミカル法による担持処理をしたNo.132で、低温で仮焼を施した場合と同様な結果が得られた。
No.133〜136は、TiO2やFe2O3等を含む更に他のガラスを用い、鉛含有添加物としてPbCO3を用いて、同様に評価したものである。TeO2が62.7(mol%)、Li2Oが8.2(mol%)、Bi2O3が4.6(mol%)、CuOが0(mol%)、SiO2が6.2(mol%)、B2O3が3.2(mol%)、Al2O3が0(mol%)、TiO2が5.2(mol%)、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが6.9(mol%)、MgOおよびWO3が0(mol%)、Fe2O3が2.4(mol%)、NiOおよびCr2O3が0(mol%)の組成範囲でも、仮焼温度が500(℃)以下であればFF値が76〜78と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。550(℃)で仮焼するとPb-Te酸化物が生じるため、電気的接触が低下したものと考えられる。
No.137〜140は、NiO等を含む更に他のガラスを用い、鉛含有添加物としてPb3O4を用いて、同様に評価したものである。TeO2が66.1(mol%)、Li2Oが12.6(mol%)、Bi2O3が2.6(mol%)、CuOが2.4(mol%)、SiO2が5.6(mol%)、B2O3、Al2O3、TiO2、P2O5、V2O5、BaOが全て0(mol%)、ZnOが9.5(mol%)、MgO、WO3、Fe2O3が全て0(mol%)、NiOが1.2(mol%)、Cr2O3が0(mol%)の組成範囲でも、仮焼を施さないものも含めて、仮焼温度が500(℃)以下であればFF値が76〜78と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。550(℃)で仮焼するとPb-Te酸化物が生じるため、電気的接触が低下したものと考えられる。
No.141〜145は、Cr2O3等を含む更に他のガラスを用い、鉛含有添加物としてPb3O4を用いて、同様に評価したものである。TeO2が58.2(mol%)、Li2Oが16.8(mol%)、Bi2O3が2.4(mol%)、CuOが0.2(mol%)、SiO2が10.3(mol%)、B2O3が0(mol%)、Al2O3が4.3(mol%)、TiO2が2.4(mol%)、P2O5およびV2O5が0(mol%)、BaOが1.2(mol%)、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiOが全て0(mol%)、Cr2O3が4.2(mol%)の組成範囲でも、仮焼を施さないものも含めて、仮焼温度が500(℃)以下であればFF値が76〜78と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。550(℃)で仮焼するとPb-Te酸化物が生じるため、電気的接触が低下したものと考えられる。また、メカノケミカル法を用いたNo.145もFF値で78の高い特性が得られた。
No.146〜149は、P2O5およびV2O5を含む更に他のガラスを用い、鉛含有添加物としてPb3O4を用いて、同様に評価したものである。TeO2が43.8(mol%)、Li2Oが4.2(mol%)、Bi2O3が4.8(mol%)、CuOが3.2(mol%)、SiO2、B2O3、Al2O3、TiO2が全て0(mol%)、P2O5が18.2(mol%)、V2O5が25.8(mol%)、BaO、ZnO、MgO、WO3、Fe2O3、NiO、Cr2O3が全て0(mol%)の組成範囲でも、仮焼を施さないものも含めて、仮焼温度が500(℃)以下であればFF値が75〜76と高く、接着強度も高い結果が得られたが、仮焼温度が550(℃)になると、FF値が74に低下し、出力特性がやや低下した。550(℃)で仮焼するとPb-Te酸化物が生じるため、電気的接触が低下したものと考えられる。また、メカノケミカル法を用いたNo.149もFF値で78の高い特性が得られた。
表6は、TeおよびPbを含むペースト組成において、Pbの存在形態と特性との関係を検討したものである。No.Aは、前記特許文献1等に示されるPb-Teガラスを用いたもので、出力は高いが、接着強度が低い傾向にある。No.Bは、前記各実施例に示したような無鉛テルルガラスに鉛含有添加物を担持させた態様である。前述したように、この構成によれば、出力および接着強度が共に優れる電極を得ることができる。No.Cも本発明の範囲内にあるもので、無鉛テルルガラスに鉛含有添加物を混合するが、仮焼は施さないものである。担持させた場合に比較してやや劣るものの、十分に高い出力が得られ、同等の接着強度を有する。No.DはPb-Teガラスの接着強度を添加物で補った態様である。添加物としてはZnO等が挙げられる。この態様では、高い出力を保ったまま接着強度は改善するものの焼成マージンが狭くなる難点がある。
上述したように、本実施例によれば、受光面電極28の形成に用いられる導電性ペーストは、前述したような種々の組成の無鉛テルルガラスを用いて、これに種々の鉛含有添加物を混合し、好ましくは仮焼やメカノケミカル法等の適宜の方法で担持させることから、ファイヤースルーで受光面電極28を形成すると、適度に凹凸を有する浸食面が得られるので、電気的特性および接着強度を共に満足できる利点がある。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。