本発明のトナーは、結晶ポリエステルがトナー粒子断面上で針状に観察される結晶を形成し、該結晶の長軸長さの個数平均径(D1)が60nm以上250nm以下であり、該トナー粒子断面中の1.0μm×1.0μmの視野において該トナー粒子中の該結晶性ポリエステルの占める面積を求めたとき、該トナー断面中の該結晶性ポリエステルが占める面積の標準偏差が10.0%以下にすることが重要である。この大きさの結晶がこの分散状態で存在するトナーは、結晶性ポリエステルを含まない同程度の低温定着性を有するトナーと比べて、格段に耐オフセット性能が向上することが確認された。
この時の離型効果発現メカニズムは完全には明らかになっていないが、材料の「泣き別れ」効果により説明することが可能である。「泣き別れ」とは、所定界面において離型材が存在し、離型剤自身が2方向に割れて、離型したい材料(トナー)を保護して型(定着部材)に付着させないようにさせる効果である。ここでの離型剤の要件は、離型効果を発揮させたい温度において分離したいトナー本体の主たる結着樹脂よりも低粘度であり、離型剤に離型させたい材料の成分、特にトナーにおいては色材を離型剤内部に含まないことが挙げられる。
離型効果をより効果的に発現させるためには、定着時に、トナー表面にワックスがいち早く表出することが重要である。本発明の結晶性ポリエステルの分散状態を形成することにより、定着時に結晶性ポリエステルが非晶性ポリエステルと相溶し、その相溶部分を溶融したワックスが通過することでトナー表面へのワックスの表出が促進されると考えられる。
一方、この効果はトナー断面中の1.0μm×1.0μmの視野においてトナー中の結晶性ポリエステルの占める面積を求めたとき、結晶性ポリエステルが占める面積の標準偏差が10.0%より大きくなると、トナー中で結晶性ポリエステルが偏在しているため、ワックスが表出する経路が少なくなり、ホットオフセット性能の向上効果が発揮しないと考えられる。
また、この効果は結晶性ポリエステルにおける結晶の長軸長さが大きくなりすぎると、離型剤の表出が不均一になることがあり、耐ホットオフセット性が向上しないことがあった。逆に、結晶の長軸長さが小さすぎてもホットオフセット性能向上効果が見られなかった。これは前述のトナー中に含まれるワックスの表出が不十分となり離型効果を発揮できなかったためと考えられる。
また本発明によるとトナー粒子表面の無機微粉体の被覆率が50%以上75%以下とすることで、従来と比べ高いレベルの耐久安定性と耐ホットオフセット性を両立することが出来る。通常外添剤の被覆率を高くすると定着時にワックスがトナー表面に出難い、あるいは出てきても外添剤が定着部材とワックスの接触を阻害するのでホットオフセットが悪化すると考えている。しかしながら本発明では上記説明にあるようにワックスの表出が促進されたものになっている。そのため外添剤を高被覆にしてもワックスが瞬時にトナー表面に染み出し、外添剤の隙間に十分に存在することで、定着部材への塗付が定着時に瞬間的に成され、ホットオフセットが良好な状態を保てると考える。被覆率を50%未満とすると、ストレス付与後のトナーのスぺーサー作用が低下してしまい従来レベルの耐久安定性を有するトナーにとどまってしまう。また被覆率を75%を超えると本発明におけるワックスの表出が促進されたトナーにおいても、ホットオフセットが十分なレベルとはならない。
<非晶性樹脂A/B構成>
本発明のトナーは、結着樹脂として、芳香族ジオールを主成分とする重量平均分子量が小さいポリエステル樹脂Aと芳香族ジオールを主成分とする重量平均分子量が大きいポリエステル樹脂Bを含有しているのが好ましい。
重量平均分子量の異なる2つのポリエステルを結着樹脂に用いることで、重量平均分子量が小さいポリエステルによりトナーの低温定着性を向上させ、重量平均分子量が高いポリエステルによりトナーの耐ホットオフセット性を向上させることができる。
結着樹脂100質量部に対するポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの含有量の和が90質量部以上であることが好ましい。
本発明において、該ポリエステル樹脂Aに対する該ポリエステル樹脂Bの含有比率(A/B)は質量基準で80/20以上60/40以下であることを特徴とする。(A/B)がこの範囲であると、低温定着性と耐ホットオフセット性のバランスが良好である。
ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bはともに、多価アルコールユニットと多価カルボン酸ユニットを有している。本発明において多価アルコールユニットというのは、ポリエステルの縮重合の際に使用した多価アルコール成分に由来する構成要素である。また、本発明において多価カルボン酸ユニットというのは、ポリエステルの縮重合の際に使用した多価カルボン酸またはその無水物、低級アルキルエステルに由来する構成要素のことである。
本発明のポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bはともに、多価アルコールユニットと多価カルボン酸ユニットを有し、多価アルコールユニットの総モル数に対し、芳香族ジオールに由来する多価アルコールユニットを90mol%以上含有することを特徴とする。多価アルコールユニットの総モル数に対し、芳香族ジオールに由来する多価アルコールユニットが90mol%未満であると、カブリが悪化する。
ポリエステル樹脂Aの多価アルコールユニットが、ポリエステル樹脂Bと共通した芳香族ジオールに由来する構造を有しているため相溶しやすく、ポリエステルAとポリエステルBの分散性が向上する。
芳香族ジオールに由来する成分としては、例えば式(1)で表されるビスフェノール及びその誘導体が挙げられる。
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0乃至10である。)
中でも、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの式(1)中のRが同じであると溶融混練時に相溶しやすいため好ましい。さらに、Rがともにプロピレン基であり、x+yの平均値が2乃至4であるようなビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が帯電安定性の点で好ましい。
ポリエステル樹脂を主成分とするならば他の樹脂成分を含有するハイブリッド樹脂であっても良い。例えば、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂とのハイブリッド樹脂が挙げられる。ハイブリッド樹脂のような、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニットとポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニット及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行う方法が好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、本発明では結着樹脂として、ポリエステル樹脂を主成分とするならば、上記のビニル系樹脂以外にも、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物を併用することができる。このような樹脂化合物としては、例えばフェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
高分子量の結着樹脂のピーク分子量は10000以上20000以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、高分子量の結着樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
低分子量の結着樹脂の数平均分子量は1500以上3500以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。また、低分子量の結着樹脂の酸価は10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
<非晶性樹脂B>
本発明のポリエステル樹脂Bは、多価アルコールユニットの総モル数に対し、多価アルコールユニットの総モル数に対し、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルに由来する多価アルコールユニットを0.1mol%以上10.0mol%以下含有することが好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルは、3価以上のアルコール性水酸基価を有し、酸成分と反応して網目の広い柔軟な架橋構造をとる。そのため、トナーの溶融混練工程においてポリエステル樹脂BがポリエステルAと混合される際、ポリエステルAの架橋構造の架橋点付近における立体障害が軽減され、ポリエステルBが絡みやすい。その結果、ポリエステル樹脂Bがポリエステル樹脂A中によく分散され、かつ結晶性ポリエステルの分散性も向上し、結晶性ポリエステルの結晶がきれいに分散された状態になり易い。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルは、ノボラック型フェノール樹脂と分子中1個のエポキシ環を有する化合物との反応物である。
ノボラック型フェノール樹脂としては、例えばエンサイクロベディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・テクノロジー(インターサイエンス・パブリッシャーズ)第10巻1頁のフエノリツク・レジンズの項に記載されるように、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸又はパラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸又は酢酸亜鉛などの金属塩を触媒としてフェノール類とアルデヒド類からの重縮合により製造されるものが挙げられる。フェノール類としては、フェノールや炭素数1乃至35の炭化水素基及び/又はハロゲン基を1個以上置換基として有する置換フェノールが挙げられる。置換フェノールの具体例としては、クレゾール(オルソ体、メタ体もしくはパラ体)、エチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、スチレン化フェノール、イソプロペニルフェノール、3−クロルフェノール、3−ブロムフェノール、3,5−キシレノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−ジクロルフェノール、2,4−ジクロルフェノール、3−クロル−5−メチルフェノ−ル、ジクロルキシレノール、ジブロムキシレノール、2,4,5−トリクロルフェノール、6−フェニル−2−クロルフェノール等が挙げられる。フェノール類は2種以上併用してよい。これらの中ではフェノール及び炭化水素基で置換された置換フェノールが好ましく、その中でも特にフェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールおよびノニルフェノールが好ましい。フェノールとクレゾールは価格及びトナーの耐オフセット性を付与する点で好ましく、t−ブチルフェノール及びノニルフェノールに代表される炭化水素基で置換された置換フェノールはトナーの帯電量の温度依存性を小さくする点で好ましい。アルデヒド類としては、ホルマリン(各種濃度のホルムアルデヒド溶液)、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂の数平均分子量は通常300乃至8000、好ましくは450乃至3000、更に好ましくは400乃至2000である。
ノボラック型フェノール樹脂中の数平均のフェノール類の核体数は通常3〜60、好ましくは3乃至20、更に好ましくは4乃至15である。また軟化点(JIS K2531;環球法)は、通常40乃至180℃、好ましくは40乃至150℃、更に好ましくは50乃至130℃である。軟化点が40℃未満では常温でブロッキングし取り扱いが困難となる。また軟化点が180℃を超えるとポリエステル樹脂の製造過程でゲル化を引き起こし好ましくない。
分子中1個のエポキシ環を有する化合物の具体例としては、エチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド(PO)、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等を挙げることができる。また炭素数1乃至20の脂肪族1価アルコールもしくは1価フェノールのグリシジルエーテルも使用できる。これらの中ではEOおよび/またはPOが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂1モルに対する、分子中1個のエポキシ環を有する化合物の付加モル数は通常1乃至30モル、好ましくは2乃至15モル、更に好ましくは2.5乃至10モルである。また、ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1個に対する分子中1個のエポキシ環を有する化合物の平均付加モル数は通常0.1乃至10モル、好ましくは0.1乃至4モル、更に好ましくは0.2乃至2モルである。
本発明で特に好ましく用いられるノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの構造を例示する。
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、xは0以上の数で、y1乃至y3は0以上の同一又は異なった数である。)
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの数平均分子量は通常300乃至10000、好ましくは350乃至5000、更に好ましくは450乃至3000である。数平均分子量が300未満ではトナーの耐ホットオフセット性が充分確保できず、10000を超えるとポリエステル樹脂Aの製造過程でゲル化を引き起こして好ましくない。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの水酸基価(アルコール性及びフェノール性水酸基の合計)は通常10乃至550、好ましくは50乃至500、更に好ましくは100乃至450mgKOH/gである。また、水酸基価のうち、フェノール性水酸基価は通常0乃至500mgKOH/g、好ましくは0乃至350mgKOH/g、更に好ましくは5乃至250mgKOH/gである。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの製法を例示すると、必要により触媒(塩基性触媒又は酸性触媒)の存在下、ノボラック型フェノール樹脂に分子中1個のエポキシ環を有する化合物を付加反応させることにより得られる。反応温度は通常20乃至250℃、好ましくは70乃至200℃であり、常圧下、又は加圧下、更には減圧下においても行うことができる。また反応は溶媒(例えばキシレン、ジメチルホルムアミドなど)あるいは他の2価アルコール類及び/又は他の3価以上のアルコール類の存在下で行うこともできる。
ポリエステル樹脂Bのノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルに由来する多価アルコールユニットが0.1mol%未満であると、前述した網目の広い柔軟な架橋構造部分が少なくなる。そのため、ポリエステル樹脂Aと結晶性ポリエステルとの分散性が向上しにくい。一方、10mol%を超えると、ポリエステル樹脂Bのゲル分が多くなりすぎるため、溶融混練時にポリエステルAと結晶性ポリエステルが混ざりにくくなり、やはり結晶性ポリエステルの分散性が良くなりにくい。
ポリエステル樹脂Bの多価アルコールユニットを構成する成分としては、前記芳香族ジオールや、前記ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル以外に、必要に応じて、以下の多価アルコール成分を使用することができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
本発明のポリエステル樹脂Bは、多価カルボン酸ユニットの総モル数に対し、炭素数4以上16以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸に由来する多価カルボン酸ユニットを15mol%以上50mol%以下含有するのが樹脂同士の分散性が向上するので好ましい。
炭素数4以上16以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸は、アルコール成分と反応すると、ポリエステルの主鎖内に直鎖状の炭化水素構造を有するため、主鎖が部分的に柔軟な構造となる。そのため、トナーの溶融混練工程において、軟化点の低いポリエステル樹脂Aは、この柔軟な構造を起点に軟化点の高いポリエステル樹脂Bと混合され、架橋点ポリエステル樹脂Aの主鎖と絡み合って分散性が向上し、結晶性ポリエステルの分散性も向上する。
炭素数4以上16以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラデカン二酸やオクタデカン二酸などのアルキルジカルボン酸やその無水物、低級アルキルエステルなどが挙げられる。また、それらの主鎖の一部がメチル基やエチル基、オクチル基などのアルキル基、またはアルキレン基で分岐した構造を持つ化合物が挙げられる。該直鎖状炭化水素の炭素数は好ましくは4以上12以下であり、さらに好ましくは4以上10以下である。
該ポリエステル樹脂Bに含有されるその他の多価カルボン酸ユニットとしては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やそれらの無水物のような、芳香環をもつカルボン酸またはその誘導体が、耐ホットオフセット性が向上しやすいため好ましく用いられる。
<非晶性樹脂A>
本発明のポリエステル樹脂Aは、多価アルコールユニットと多価カルボン酸ユニットを有し、多価アルコールユニットの総モル数に対し、芳香族ジオールに由来する多価アルコールユニットを90mol%以上含有することを特徴とする。多価アルコールユニットの総モル数に対し、芳香族ジオールに由来する多価アルコールユニットが90mol%未満であると、カブリが悪化する。本発明におけるポリエステルBとの相溶性を確保するため、95mol%以上であることが好ましく、さらに好ましくは100mol%である。
ポリエステル樹脂Bの多価アルコールユニットを形成する芳香族ジオール以外の成分としては、以下の多価アルコール成分を使用することができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
本発明のポリエステル樹脂Aは、多価カルボン酸ユニットの総モル数に対し、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体に由来する多価カルボン酸ユニットを90mol%以上含有することを特徴とする。
芳香族ジカルボン酸またはその誘導体に由来する多価カルボン酸ユニットが上記範囲であると、ポリエステルAとの相溶性が向上し、長時間印刷後の濃度変動やカブリを抑制できる。
芳香族ジカルボン酸またはその誘導体としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
また、多価カルボン酸ユニットの総モル数に対し、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体に由来する多価カルボン酸ユニットを0.1mol%以上10.0mol%以下含有すると、トナーの低温定着性がより良化するため好ましい。
脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。中でも、コハク酸、アジピン酸、フマル酸やその酸無水物、低級アルキルエステルが好ましく用いられる。
これら以外の多価カルボン酸ユニットとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の3価または4価のカルボン酸等が挙げられる。
<その他の結着樹脂>
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、顔料分散性を向上させたり、トナーの帯電安定性、耐ブロッキング性を改善したりする目的で上記ポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂B以外に下記の重合体を本発明の効果を阻害しない量で添加することも可能である。
本発明のトナーの結着樹脂に用いられるその他の樹脂としては、例えば以下の樹脂が挙げられる。ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
<離型剤(WAX)>
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスの如き脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
本発明では、ワックスは、結着樹脂100質量部あたり1質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。
また、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時の吸熱曲線において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度としては45℃以上140℃以下であることが好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であるとトナーの保存性と耐ホットオフセット性を両立できるため好ましい。
<着色剤>
トナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
<結晶性樹脂>
本発明のトナーは定着助剤として結晶性ポリエステルを含有する。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子に含まれる結晶性ポリエステルは、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールと、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸とを主成分として含む単量体組成物を重縮合反応させることにより得られる。
炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数2以上12以下)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。これらの中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールの如き直鎖脂肪族、α,ω−ジオールが好ましく例示される。
上記アルコール成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールから選ばれるアルコールである。
本発明において、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が挙げられる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えばn−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性アルコールなどが挙げられる。
一方、炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数4以上14以下)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
本発明において、上記カルボン酸成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸から選ばれるカルボン酸である。
本発明において、上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルなども含まれる。また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体等も含まれる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。
本発明における結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで所望の結晶性ポリエステルを得ることができる。
上記エステル化またはエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステルの強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
<無機微粉体(外添剤)>
本発明に使用できる無機微粉体としては、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらをシラン化合物、及び有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ等がある。
本発明に使用できるシリカとしては、湿式製法シリカ及び乾式製法シリカいずれも使用できる。湿式製法シリカとしては、特にアルコキシシランを水が存在する有機溶媒中において、触媒により加水分解、縮合反応させて得られるシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥して、粒子化する、ゾルゲル法により製造されるシリカ粒子がある。ゾルゲル法により製造されるシリカ粒子は、得られる粒子の粒度分布がシャープであり、且つ概略球状の粒子が得られるとともに、反応時間を変えることにより所望の粒度分布を有する粒子が得られるので、特に好ましく用いられる。
また、乾式製法シリカとしては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
また、酸化チタン微粉体であれば、硫酸法、塩素法、揮発性チタン化合物例えばチタンアルコキシド,チタンハライド,チタンアセチルアセトネートの低温酸化(熱分解,加水分解)により得られる酸化チタン微粒子が用いられる。結晶系としてはアナターゼ型,ルチル型,これらの混晶型,アモルファスのいずれのものも用いることができる。
そしてアルミナ微粉体であれば、バイヤー法、改良バイヤー法、エチレンクロルヒドリン法、水中火花放電法、有機アルミニウム加水分解法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、塩化アルミニウムの火焔分解法により得られるアルミナ微粉体が用いられる。結晶系としてはα,β,γ,δ,ξ,η,θ,κ,χ,ρ型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いられ、α,δ,γ,θ,混晶型,アモルファスのものが好ましく用いられる。
上記無機微粉体の疎水化方法としては、無機微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的、または物理的に処理することによって付与される。
好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
本発明に使用できる無機微粉体として、前述した湿式法シリカや乾式法シリカを、アミノ基を有するカップリング剤或いは、シリコーンオイルで処理したものを本発明の目的を達成するために必要に応じて用いてもかまわない。
流動性向上のための外添剤としては、BET比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粉体が好ましく、耐久性安定化のためには、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上300nm以下の無機微粉体であることが好ましい。粒径が80nm未満であるとストレス付与後に外添剤が埋め込まれてしまう場合が多く、スぺーサー機能の低下に繋がり易い。一方、300nmを超えると定着時に母体表面が定着部材に十分に接触出来なくなる確率が増し、低温定着性の悪化を引き起こす場合がある。また本発明のトナー母体のように定着時にWaxの表出が促進された母体を用いても十分にWaxが定着部材に接触できなくなり、本発明で許容できるホットオフセットレベルに達しない。また300nmを超える外添剤は外添工程でトナー母体に固着させ辛い、あるいは耐久時にトナー母体から離脱し易いという難点もある。
上記の無機微粉体は、耐ホットオフセット性と耐久安定性の観点から、トナー粒子100質量部に対し2.0質量部以上含まれることが好ましい。
トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
<現像剤>
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、また長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
<製造方法>
トナー粒子を製造する方法としては、結着樹脂と、着色剤と、ワックスを溶融混練する必要があることから、結着樹脂と、着色剤と、ワックスを溶融混練し、混練物を冷却後、粉砕及び分級する粉砕法が好ましい。
以下、粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂及びワックス、着色剤、必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中にワックス等を分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、分級品(トナー粒子)を得る。中でも、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)は、分級と同時にトナー粒子の球形化処理を行うことができ、転写効率の向上という点で好ましい。
更に必要に応じて、トナー粒子の表面に外添剤が外添処理される。外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<TEM観察による結晶性ポリエステルの結晶状態の評価>
前記トナーの透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察及び結晶性ポリエステルドメインの評価は、以下のようにして実施した。
トナー断面をルテニウム染色することによって、結晶性ポリエステル樹脂が明瞭なコントラストとして得られる。結晶性ポリエステル樹脂はトナー内部を構成する有機成分よりも、弱く染色される。これは、結晶性ポリエステル樹脂の中への染色材料の染み込みが、密度の差などが有るために、トナー内部の有機成分よりも弱いためと考えられる。
染色の強弱によって、ルテニウム原子の量が異なるため、強く染色される部分は、これらの原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。
オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)およびナフタレン膜(20nm)を施し、光硬化性樹脂D800(日本電子社)で包埋したのち、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度1mm/sで膜厚60nm(or70nm)のトナー断面を作製した。
得られた断面を、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いてRuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM観察を行なった。STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelで取得した。
得られた画像については、画像処理ソフト「Image−Pro Plus(Media Cybernetics社製)」にて2値化(閾値120/255段階)を行なった。
得られた2値化前の断面画像を図1に示す。図1に見られるように、結晶性ポリエステルの結晶ドメインは黒く棒状に確認でき、得られた画像を2値化することで結晶ドメインを抽出した。無作為に選んだ20個のトナーについて、長さが測定可能な結晶性ポリエステルの結晶ドメインの長軸長さを全数計測し、計測した結晶ドメインの個数から、トナー中の結晶性ポリエステルの長軸長さの個数平均径(D1)を算出した。また、1.0μm間隔のメッシュでトナー断面を切り、1.0μm×1.0μmの視野(図3参照)の内部がすべてトナー内部からなるものを抽出し、その視野中におけるCPESが占める面積を求め、各視野のCPESが占める面積の標準偏差を算出した。
ここで、結晶性ポリエステルの結晶ドメインの長軸長さとは、図2に示すように、断面画像の結晶ドメインにおける最長距離(図2のa)であり、短軸長さは結晶長軸の中点位置での最短距離(図2のb)である。
なお、本発明における針状とは、細長く真直度が高い形状であり、短軸長さが25nm以下でかつ、アスペクト比が5以上でかつ、結晶の長軸方向両短部における短軸方向の中心点同士を直線で結んだ際、その直線からの結晶輪郭のずれが、結晶短軸長さの100%以内の長さに収まっている形状と定義した。
<樹脂の重量平均分子量の測定方法>
樹脂のTHF可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定した。
まず、室温で24時間かけて、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。その後得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得た。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整した。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定した。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用した。
<無機微粒子のBET比表面積の測定>
無機微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なう。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明における無機微粒子のBET比表面積とする。
尚、BET比表面積は以下のようにして算出する。
まず、無機微粒子に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)と外添剤の窒素吸着量Va(モル・g-1)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル・g-1)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、外添剤の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル・g-1)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きと切片の値が算出できる。これらの値を用いて該の傾きと切片の連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
さらに、該で算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm2)から、下記の式に基づいて、無機微粒子のBET比表面積S(m2/g)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10-18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル-1)である。)
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤する。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.1gの外添剤を入れる。
無機微粒子を入れた該試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。尚、真空脱気の際には、無機微粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋との差から外添剤の正確な質量を算出する。尚、この際に、試料セル内の外添剤が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、無機微粒子が入った該試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、該装置の分析ポートに試料セルをセットする。尚、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なう。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を、同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入してトナーに窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより該吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。尚、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、上述したように無機微粒子のBET比表面積を算出する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定した。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定した。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れた。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定した。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なった。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡をあらかじめ除去した。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加えた。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加した。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させた。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整した。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させた。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続した。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節した。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整した。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なった。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出した。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<X線光電子分光分析(ESCA)による表面組成分析>
本発明において、トナー粒子表面の外添剤被覆率は、X線光電子分光分析(ESCA)による表面組成分析を行い算出される。ESCAの装置及び測定条件は、下記の通りである。
使用装置:PHI社(Physical Electronics Industries,INC.)製、PHI5000 VersaProbeII Scanning XPS Microprobe
測定条件:
X線源;AlKα(100μ25W15KV)
Angle;45°
Pass Energy;58.70eV
測定試料としては、固着されていない無機微粒子を分離したトナー粒子を用いる。
以上の条件により測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出する。
測定元素としては、C、O、Si、Ti、Al、Ca、Srの7種類を測定し、これら7種類の元素中のSiの割合を算出する。各々の原子に関して、C:1s、O:1s、Si:2p、Ti:2p軌道、Al:2p軌道、Ca:2p軌道、Sr:3d軌道に基づくピーク強度を参照する。
シリカ(SiO2)におけるSiの元素濃度は33%であるため、上記で得られたSi濃度(原子%)をSiの元素濃度33%で割った値をシリカの被覆率とした。同様にチタン(TiO2)におけるTiの元素濃度は33%であるため、上記で得られたTi濃度(原子%)をTiの元素濃度33%で割った値をチタンの被覆率とした。
尚、上記の7種類の元素は、トナー粒子表面に存在する元素、或いは、外添剤を構成する代表的な元素である。
<非晶性ポリエステル樹脂Aの製造例1>
・2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:64.7質量部(0.18モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:24.1質量部(0.15モル;多価カルボン酸総モル数に対して96.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・アクリル酸:0.2質量部
・スチレン:8.2質量部
・2−エチルヘキシルアクリレート:1.6質量部
・ジブチルパーオキサイド(重合開始剤):1.5質量部
その後、上記混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、1時間保持した(StAc化反応工程)。
・無水トリメリット酸:1.2質量部(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、1時間反応させ(第2反応工程)、重量平均分子量(Mw)5000である非晶性樹脂A1を得た。
<非晶性ポリエステル樹脂Bの製造例1>
・2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:47.1質量部(0.13モル;多価アルコール総モル数に対して90.0mol%)
・ノボラック型フェノール樹脂(核体数約5のプロピレンオキシド5mol付加物):11.9質量部(0.01モル;多価アルコール総モル数に対して10.0mol%)
・テレフタル酸:16.3質量部(0.10モル;多価カルボン酸総モル数に対して80.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・アクリル酸:0.5質量部
・スチレン:16.4質量部
・2−エチルヘキシルアクリレート:3.1質量部
・ジブチルパーオキサイド(重合開始剤):1.5質量部
その後、上記混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、1時間保持した(StAc化反応工程)。
・無水トリメリット酸:6.4質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ(第2反応工程)、重量平均分子量(Mw)100000である非晶性樹脂B1を得た。
<非晶性ポリエステル樹脂Bの製造例2>
ノボラック型フェノール樹脂(核体数約5のプロピレンオキシド5mol付加物)11.9質量部を0質量部にした以外は非晶性樹脂Bの製造例1と同様にして、重量平均分子量(Mw)100000である非晶性樹脂B2を得た。
<結晶性ポリエステル樹脂Cの製造例1>
・1,10−デカンジオール:46.9質量部(0.27モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・セバシン酸:53.1質量部(0.26モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
・2−エチルヘキサン酸錫:0.5質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させ、結晶性ポリエステル樹脂C1を得た。
<結晶性ポリエステル樹脂Cの製造例2>
1,10−デカンジオールを1,6−ヘキサンジオールに、セバシン酸をフマル酸にした以外は結晶性ポリエステル樹脂Cの製造例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂C2を得た。
<無機微粉体(外添剤)>
実施例で使用した80nm乃至300nmのシリカ粒子は以下の製造法により得た。
四塩化珪素、酸素、水素の混合気体をバーナーに導き、バーナー温度1100℃で焼成
した後冷却し、バクフィルターで捕集した。
得られたヒュームドシリカ微粒子を気相中で分散し、ヒュームドシリカ微粒子100質
量部に対して、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン6質量部を噴霧し、粒子の合
一が起こらないように十分に撹拌しながら反応させた。
次いで25℃における粘度が70mm2/sであるジメチルシリコーンオイルを10質
量%添加し、粒子の合一が生じないように十分に撹拌しながら反応させた。
得られた反応物を乾燥した後、130℃で2時間加熱処理を行ったあと、分級によって
所望の粒度分布に調整し、シリカ粒子1を得た。
平均ガス供給速度を変更させ、シリカ粒子1と同様にして、シリカ粒子2、3を得た。それぞれの粒径、BET比表面積を表1に示す。
上記シリカ以外にシリカ粒子4としてBET比表面積130m2/gの疎水性シリカと、チタン粒子1としてBET比表面積100m2/gのルチル型酸化チタンを使用した。
<トナー製造例1>
・ポリエステル樹脂A1 75質量部
・ポリエステル樹脂B1 15質量部
・ポリエステル樹脂C1 10質量部
・炭化水素ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度78℃) 6質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.8質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.25質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて吐出温度150℃にて混練した。得られた混練物を15℃/minの冷却速度で冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF−300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
得られたトナー粒子に、シリカ粒子1を4.0質量部とシリカ粒子4を0.5質量部、チタン粒子1を0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min混合して、トナー1を得た。トナー1の重量平均粒径(D4)は7.0μmであった。
<トナー製造例2乃至32>
樹脂Bの種類、樹脂Cの種類/量、混練回転数、混練温度を振り、その他はトナー製造例1と同様にしてトナー2乃至32を製造した。材料処方と製造条件を表2に示す。また使用した外添剤の種類と量も表2に合せて示す。
得られたトナーの結晶性ポリエステルの分散状態、外添剤被覆率の結果を表3に示す。ここでの外添剤被覆率はシリカ被覆率とチタンの被覆率を合せた値を示している。
<磁性コア粒子の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 60.2質量%
MnCO3 33.9質量%
Mg(OH)2 4.8質量%
SrCO3 1.1質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、ジルコニア(φ10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で1000℃で3時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
上記式において、a=0.39、b=0.11、c=0.01、d=0.50
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(φ10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで2時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(φ1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで4時間粉砕し、フェライトスラリーを得た。
工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、バインダーとして仮焼フェライト100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、約36μmの球状粒子に造粒した。
工程5(本焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%以下)で、1150℃で4時間焼成した。
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、磁性コア粒子1を得た。
<コート樹脂の製造例>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量部
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量部
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量部
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量部
メチルエチルケトン 31.3質量部
上記材料を、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、2.0質量部のアゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してコート樹脂を得た。
<磁性キャリア製造例>
コート樹脂 20.0質量%
トルエン 80.0質量%
上記材料をビーズミルで分散混合し、樹脂液を得た。
該磁性コア粒子100質量部をナウタミキサに投入し、さらに、該樹脂液を樹脂成分として2.0質量部になるようにナウタミキサに投入した。減圧下で温度70℃に加熱し、100rpmで混合し、4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、得られた試料をジュリアミキサーに移し、窒素雰囲気下、温度100℃で2時間熱処理した後、目開き70μmの篩で分級して磁性キャリアを得た。得られた磁性キャリアの体積分布基準50%粒径(D50)は、38.2μmであった。
〔実施例1乃至24、比較例1乃至8〕
以上のトナー1乃至32と該磁性キャリアで、トナー濃度が8.0質量%になるようにV型混合機(V−10型:株式会社徳寿製作所)で0.5s-1、回転時間5minで混合し、二成分系現像剤1乃至32を得た。
<定着性(ホットオフセット性)評価>
キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075PROを、定着温度、プロセススピードを自由に設定できるように改造して定着温度領域の試験を行った。画像は単色モードで常温常湿度環境下(23℃/50%Rh)において、紙上のトナー載り量が0.8mg/cm2になるように調整し、未定着画像を作成した。評価紙は、コピー用紙GF−C081(A4、坪量81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用い、画像印字比率25%で画像を形成した。その後、高温低湿度環境下(30℃/15%Rh)において、プロセススピードを450mm/secに設定し、定着温度を100℃から順に5℃ずつ上げ、オフセットが生じない温度幅(定着可能温度〜オフセット発生温度)を定着可能領域とし、その下限温度を低温定着温度、上限温度を耐ホットオフセット温度とした。
(評価基準:耐ホットオフセット性)
A:220℃以上(優れている)
B:210℃以上220℃未満(少し優れている)
C:200℃以上210℃未満(本発明において許容レベル)
D:200℃未満(本発明において許容出来ないレベル)
以上の評価方法・基準によりトナーを評価した結果を表4に示す。
<耐久性評価>
キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5051の現像器を空回転(トナー無補給)し現像剤にストレスを与えた後の転写性の評価を行った。具体的には高温多湿環境下(30℃/80%Rh)においてimageRUNNER ADVANCE用の現像空回転治具により1h空回転させた後の転写効率を評価した。転写効率の評価はimageRUNNER ADVANCE C5051を用いて高温多湿環境下(30℃/80%Rh)で行い、感光ドラム上に0.4mg/cm2のトナーを現像させ1次転写後の感光体上に残ったトナーと中間転写体に転写されたトナーをテーピングし紙上に貼り付け濃度を測定した。濃度測定はX−Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X−Rite社製)を使用した。
転写効率(%)=中間転写体上トナー濃度/(中間転写体トナー濃度+感光体上残トナー濃度)
また転写効率は1次転写電流を変化させ最適な値となる所を採用した。
評価基準は以下の様にした。(1h空回転後転写効率)
A:97%以上 (優れている)
B:92%以上97%未満 (少し優れている)
C:87%以上92%未満 (本発明において許容レベル)
D:87%未満 (本発明において許容出来ないレベル)
以上の評価方法・基準によりトナーを評価した結果を表4に示す。
以上の結果で示されるように、トナー断面の針状で観察される結晶性ポリエステルの存在状態を本発明の範囲内とし、外添剤被覆率を50%以上75%以下とすることで優れた耐ホットオフセット性と耐久安定性の両立が成される。さらに外添剤として80nm以上300nm以下のものを2質量部以上用いることで、耐ホットオフセット性を損なわず更に優れた耐久安定性を達成することが出来る。