JP6739978B2 - トナー - Google Patents
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Description
省エネルギーの観点からは、加熱のために多くの電力を消費する定着工程において、従来よりも低温で速やかに溶融することにより、素早く、かつ低エネルギーで定着させることのできるトナーの実現が望まれている。
この要求を満たすためには、トナーを軟化させる必要があるが、耐熱保存性や耐久性の観点から、単純にトナーに含まれるトナー粒子の結着樹脂を軟化させるだけでは達成できない。
また、近年、電子写真印刷の多様化に伴い、はがきや封筒など小サイズの紙に印字した直後にA4紙に印字するなど、様々な大きさの紙種を連続通紙する際、定着部材の非通紙部が昇温するため、ホットオフセットが発生するという問題がある。
そこで、特許文献1や2には、シャープメルト性を有する結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂からなる複合樹脂を含有させることで、低温定着性を向上させたトナーが提案されている。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂の含有量を増やすと、低温定着性が更に向上する反面、樹脂の強度が低下し、耐久性が低下する。その結果、熱的ストレスや機械的ストレスにより、耐ホットオフセット性や保存性が損なわれる。また、樹脂強度の低下から、表面の外添剤の遊離や埋め込みが起きやすくなるため、帯電性や流動性の低下が生じやすく、印刷時に感光体などの部材に融着するなどの問題が発生しやすい。
更に、結晶性ポリエステル樹脂を通じて電荷が漏洩するため、トナーの帯電量の低下が起こり、画像の乱れが発生するという問題もある。
一方、結晶性ポリエステル樹脂の含有量を抑えつつ、低温定着性を向上させるために、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂の相溶性を上げるという方法がある。
例えば、
特許文献3のように結晶性ポリエステル樹脂の分子量を小さいものにする態様、
特許文献4のように滑剤を含有させる態様、
特許文献5のように樹脂のSP値を調整する態様
などが挙げられる。
特許文献3の実施例では、分子量6100と分子量の小さい結晶性ポリエステル樹脂が挙げられているが、トナーの低温定着性を維持しつつ、近年求められるレベルの高画質を実現するには不十分である。
また、特許文献6のように、結晶性ポリエステル樹脂に結晶核剤を添加することにより結晶化度を高め、低温定着性と帯電安定性を両立したトナーが提案されている。特許文献6の実施例では、結晶性ポリエステル樹脂の分子量が17000以上と大きいため、結着樹脂の非晶性ポリエステル樹脂との相溶性が十分でなく、更なる高速化と省エネルギー化のために、近年求められるレベルの低温定着性を満たすには至っていない。
以上のことから、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、低温定着性に優れると共に、高速化及び高画質化に伴う帯電性や保存性、耐ホットオフセット性を満足させるには、さらなる検討の余地がある。
該結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、8000以上12000以下であり、
該結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数8以上20以下の脂肪族モノカルボン酸に由来する部位及び炭素数8以上20以下の脂肪族モノアルコールに由来する部位のいずれか一方のみを含有し、
該結晶性ポリエステル樹脂中の該部位の含有量が、0.5質量%以上15.0質量%以下であり、
該結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分との縮重合体であり、
該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上15.0質量部以下である
ことを特徴とするトナーである。
該結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、5000以上14000以下であり、
該結晶性ポリエステル樹脂が、
炭素数8以上20以下の脂肪族モノカルボン酸及び
炭素数8以上20以下の脂肪族モノアルコール
からなる群より選択される1種以上の脂肪族化合物に由来する部位を、0.5質量%以上15.0質量%以下含有することを特徴とする。
そのため、他の様々な結晶性ポリエステル樹脂と比べて、少ない添加量で、低温定着性を大きく向上させることが可能である。
一般に、結晶性ポリエステル樹脂の分子量を小さくすると、樹脂の強度が低下し、耐久性が低くなる。その結果、熱的ストレスや機械的ストレスにより、帯電性や保存性の低下が生じやすくなるため、印刷時の画像乱れや、感光体などの部材へのトナーの融着が発生する場合があった。
本発明者などは、鋭意検討を重ね、結晶性ポリエステル樹脂の分子量が小さい場合であっても、結晶性ポリエステル樹脂が、
炭素数8以上20以下の脂肪族モノカルボン酸及び
炭素数8以上20以下の脂肪族モノアルコール
からなる群より選択される1種以上の脂肪族化合物に由来する部位を特定量含有することにより、上述の問題を解決できることを見出した。
一般に、分子量の小さい結晶性ポリエステル樹脂は、より分子量の大きい結晶性ポリエステル樹脂に比べ、未反応モノマー由来の低分子量成分の含有量が多い。
しかし、分子量の小さい結晶性ポリエステル樹脂を合成する過程で、上記脂肪族化合物を添加すると、結晶性ポリエステル樹脂を構成する分子鎖の末端に反応し、エンドキャップのような役割をするため、分子鎖が長くなりにくい。
そのため、必要とする分子量の結晶性ポリエステル樹脂を合成するにあたり、未反応の遊離モノマーのほとんどが反応すると考えられる。その結果、未反応モノマー由来の低分子量成分が減少し、分子量分布がシャープな構造を実現できるため、保存性、耐久性、帯電性が著しく良化したと推測される。
該重量平均分子量(Mw)が、5000未満であると、保存性や耐ホットオフセット性が低下する。一方、14000を超えると、低温定着性が低下する。
該脂肪族モノカルボン酸の炭素数が8未満、又は、該脂肪族モノアルコールの炭素数が8未満である場合、保存性が低下する。
一方、該脂肪族モノカルボン酸の炭素数が21以上、又は、該脂肪族モノアルコールの炭素数が21以上である場合、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の相溶性が低下するため、低温定着性が低下する。
該脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、8以上18以下であることが好ましい。
一方、該脂肪族モノアルコールの炭素数は、8以上18以下であることが好ましい。
また、上記脂肪族化合物に由来する部位の含有量が、0.5質量%未満である場合、保存性や帯電性が低下する。一方、該含有量が、15.0質量%を超える場合、低温定着性が低下する。
該脂肪族化合物に由来する部位の含有量は、3.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。
また、帯電量と仕事関数に相関があることから、立ち上がりの時定数と仕事関数に相関があることを見出した。
つまり、横軸に測定サンプルに当てる紫外線のエネルギー、縦軸にそのエネルギー放出される光電子数の平方根をとると、光電子が放出され始めるエネルギーを表す仕事関数の値が高いものほど、帯電性に優れている。
また、本発明者らは、結晶性ポリエステル樹脂に、未反応モノマー由来の低分子量成分が多く含まれる場合、この仕事関数の値が小さくなり、帯電性が低下することを見出した。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)を帯電性の観点から考察を加える。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が5000未満であるということは、未反応モノマー由来の低分子量成分が多く含まれていると考えられ、仕事関数の値が大きくなり、帯電性が低下する。
一方、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が14000を超えると、低分子量成分の総量が減少するため、仕事関数の値や帯電性の向上の効果が低下する。
〈結晶性ポリエステル樹脂〉
本発明のトナーが有するトナー粒子は、結晶性ポリエステル樹脂を含有する。
結晶性ポリエステルは、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量測定において、明瞭な融点ピークを示す。
本発明において、該結晶性ポリエステル樹脂は、
炭素数2以上22以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、
炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分と
の縮重合体である樹脂である。
その中でも、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分と
の縮重合体である樹脂であることが、低温定着性と保存性の観点から好ましい。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーの低温定着性が良化する理由を、以下のように考えている。
結着樹脂としての非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂が相溶し、非晶性ポリエステル樹脂の分子鎖の間隔を広げ、分子間力を弱めることで、トナー(トナー粒子)のガラス転移温度(Tg)を大幅に低下させ、溶融粘度を低い状態にするためである。
つまり、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を高めれば高めるほど、低温定着性は良化していく傾向にある。
非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を高めるためには、結晶性ポリエステル樹脂を構成する脂肪族ジオール及び/又は脂肪族ジカルボン酸の炭素数を短くし、エステル基濃度を高め、極性を高めるとよい。
しかし、ガラス転移温度(Tg)が大幅に低下したトナーにおいても、高温高湿環境下での使用や輸送などにおける保存性を確保する必要がある。そのためには、そのような環境下にトナーがさらされた場合には、相溶していたトナー中の結晶性ポリエステル樹脂を再結晶化させ、トナーのガラス転移温度(Tg)を非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)付近まで戻す必要がある。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度が高く、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の相溶性があまりにも高いと、結晶性ポリエステル樹脂を再結晶化させることが難しくなり、トナーの保存性は低下する傾向となる。
以上のことから、低温定着性及び保存性の両立の観点から、結晶性ポリエステル樹脂を構成する脂肪族ジオールの炭素数が6以上12以下であり、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が6以上12以下であることが好ましい。
これらの中でも、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、及び1,12−ドデカンジオールなどのような直鎖脂肪族α,ω−ジオールが好ましい。
本発明において、誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジオールをエステル化した誘導体が挙げられる。本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分において、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下である。)の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、全アルコール成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
該多価アルコールのうち、上記脂肪族ジオール以外のジオールとしては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、該多価アルコールのうち3価以上の多価アルコールとしては、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコールなどが挙げられる。
例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、及びイタコン酸が挙げられる。
本発明において、誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジカルボン酸成分の酸無水物、ジカルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分において、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下である。)の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、全カルボン酸成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
該多価カルボン酸のうち、上記脂肪族ジカルボン酸以外の2価のカルボン酸としては、
イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなども含まれる。
また、その他の多価カルボン酸において、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、及びピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、及び1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパンなどの脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなどの誘導体なども含まれる。
炭素数8以上20以下の脂肪族モノカルボン酸及び
炭素数8以上20以下の脂肪族モノアルコール
からなる群より選択される1種以上の脂肪族化合物が、縮合により結合した樹脂である。
具体的には、脂肪族化合物が結合する前の結晶性ポリエステル樹脂の末端に、カルボキシ基が存在する場合には、モノアルコールとの縮合反応が起こり、結合が生じる。また、脂肪族化合物が結合する前の結晶性ポリエステル樹脂の末端に、ヒドロキシ基が存在する場合には、モノカルボン酸との縮合反応が起こり、結合が生じる。
したがって、本発明において、「脂肪族化合物に由来する部位」とは、脂肪族モノカルボン酸のカルボキシ基からOHが取れた構造、及び、脂肪族モノアルコールのヒドロキシ基からHが取れた構造を意味する。
ここで、「末端」とは、結晶性ポリエステル樹脂が分岐鎖を有している場合は、その分岐鎖の末端も含む。
また、脂肪族化合物の炭素数が上記の範囲であると、ポリエステル分子鎖の末端に縮合させることも容易であり、脂肪族化合物が遊離モノマーとして存在することはなくなるため、保存性の観点から好ましい。
カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシル酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデシル酸、ミリスチル酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデシル酸、アラキジン酸(イコサン酸)、及びヘンイコシル酸が挙げられる。
上記炭素数8以上20以下の脂肪族モノアルコールとしては、以下のものが挙げられる。
1−オクタノール(カプリルアルコール)、1−ノナノール(ペラルゴンアルコール)、デシルアルコール(デカノール)、ウンデカノール、ラウリルアルコール(ドデカノール)、トリデカノール、ミリスチルアルコール(テトラデカノール)、ペンタデカノール、パルミチルアルコール(ヘキサデカノール)、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール(オクタデカノール)、ノナデカノール、アラキジルアルコール(イコサノール)が挙げられる。
サンプル2mgを精秤し、クロロホルム2mLを加えて溶解させてサンプル溶液を作製する。樹脂サンプルとしては結晶性ポリエステル樹脂、又は、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーをサンプルとする。
次に、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)20mgを精秤し、クロロホルム1mLを添加して溶解させてマトリックス溶液を調製する。
また、トリフルオロ酢酸Na(NaTFA)3mgを精秤した後、アセトンを1mL添加して溶解させてイオン化助剤溶液を調製する。
このようにして調製したサンプル溶液25μL、マトリックス溶液50μL、イオン化助剤溶液5μLを混合してMALDI分析用のサンプルプレートに滴下させ、乾燥させることで測定サンプルとする。
分析機器として、MALDI−TOFMS(Bruker Daltonics製 ReflexIII)を用い、マススペクトルを得る。
得られたマススペクトルにおいて、オリゴマー領域(m/Zが2000以下)の各ピークの帰属を行い、分子末端に脂肪族化合物が結合した組成に対応するピークが存在するか否かを確認する。
数平均分子量が1000以下の低分子量成分の含有割合が5質量%を超えると、保存性、帯電性、及び耐ホットオフセット性が低下する傾向にある。該含有割合は、4質量%以下であることがより好ましい。
上述のように、分子量の小さい結晶性ポリエステル樹脂を合成する過程で、上記脂肪族化合物を添加すると、結晶性ポリエステル樹脂を構成する分子鎖の末端に反応する。そのため、未反応の遊離モノマーのほとんどが反応し、未反応モノマー由来の低分子量成分が減少する。これを利用して、数平均分子量が1000以下の含有割合を、上記範囲に調整するとよい。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸成分とアルコ−ル成分とをエステル化反応、又はエステル交換反応させた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。その後、さらに、上記の脂肪族化合物を加え、エステル化反応を行うことで、所望の結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて、硫酸、チタンブトキサイド、2−エチルヘキサン酸スズ、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、及び酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えば、チタンブトキサイド、2−エチルヘキサン酸スズ、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、及び二酸化ゲルマニウムなどの触媒を使用して行うことができる。重合温度、及び触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化若しくはエステル交換反応、又は縮重合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために、全モノマーを一括で仕込む方法を用いてもよい。また、低分子量成分を少なくするために、2価のモノマーをまず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させるなどの方法を用いてもよい。
本発明において、トナー粒子は、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を含有する。
この場合、結着樹脂中の非晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、50質量%以上である
ことが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と同様、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。
非晶性ポリエステル樹脂の製造に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)及びそれらの酸無水物又はそれらの低級アルキルエステルとが挙げられる。
ここで、分岐ポリマーを作成する場合には、非晶性ポリエステル樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用するとよい。すなわち、モノマーとして、3価以上のカルボン酸及びその酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は、3価以上のアルコールを含めるとよい。
非晶性ポリエステル樹脂の製造に用いられる多価アルコール及び多価カルボン酸としては、以下が例示できる。
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体、及び下記(B)式で示されるジオール類。
これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、アジピン酸、n−ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
リオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
これらのうち、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールが好適に例示される。
3価以上のカルボン酸は、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸が挙げられる。また、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルを用いてもよい。
これらのうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
上記2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。同様に、上記2価のカルボン酸など及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
この場合、ハイブリッド樹脂における、非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂とビニル系樹脂又はビニル系共重合体とのハイブリッド樹脂を製造する方法としては、
ビニル系樹脂又はビニル系共重合体、及び、
ポリエステル樹脂
のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方、又は両方の樹脂の重合反応を行う方法が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーのうち、ビニル系樹脂又はビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。
ビニル系樹脂又はビニル系共重合体を構成するモノマーのうち、非晶性ポリエステル樹脂と反応し得るものとしては、例えば、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、本発明において、本発明の効果を損なわない程度に、結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂を用いることもできる。
該樹脂としては、特に限定されることはなく、トナー粒子の結着樹脂として使用されている樹脂が挙げられる。例えば、ビニル系樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
また、非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
さらに、非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、2mgKOH/g以上20mgKOH
/g以下であることが、低温定着性と保存性の観点から好ましい。
本発明において、非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量が4000以上7500以下である低分子量の非晶性ポリエステル樹脂C、及び、ピーク分子量が8500以上11000以下である高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bを含有する態様もある。
この場合、高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bと低分子量の非晶性ポリエステル樹脂Cの混合比率(B/C)は、質量基準で10/90以上60/40以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
一方、高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bのピーク分子量は、8500以上9500以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bの酸価は、15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
低分子量の非晶性ポリエステル樹脂Cのピーク分子量は、5000以上7000以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。また、低分子量の非晶性ポリエステル樹脂Cの酸価は、10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
なお、上記酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価は、JIS K0070−1992に準じて測定する。
本発明のトナーのトナー粒子に用いられるワックスとしては、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、及びモンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、及びバリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、及びメリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、及びメリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及びラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、及びN,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、及び耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス、又は、カルナバワックスのような脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本
発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する観点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
本発明において、ワックスの含有量は、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。含有量が上記範囲であると、保存性と耐ホットオフセット性を両立させる観点からより好ましい。
また、ワックスの示差走査熱量分析計(DSC)を用いて測定された最大吸熱ピークのピーク温度は、45℃以上140℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲であると、トナーの保存性と耐ホットオフセット性を両立させる観点からより好ましい。
本発明のトナーのトナー粒子に用いられる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色トナー用着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点から好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
上記着色剤の含有量は、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
本発明において、トナー粒子は、必要に応じて、荷電制御剤を含有してもよい。
該荷電制御剤としては、無色でトナーの帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安
定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、例えば、
サリチル酸金属化合物;
ナフトエ酸金属化合物;
ジカルボン酸金属化合物;
スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物;
スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物;
カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物;
ホウ素化合物;
尿素化合物;
ケイ素化合物;
カリックスアレーン;
などが挙げられる。
ポジ系荷電制御剤としては、例えば、
四級アンモニウム塩;
前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;
グアニジン化合物;
イミダゾール化合物;
などが挙げられる。
荷電制御剤は、トナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の含有量は、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーのトナー粒子は、必要に応じて、無機微粒子を含有してもよい。
該無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし、外添剤としてトナーに含有されてもよい。
外添剤として含有する場合は、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、及び酸化アルミニウム微粒子のような無機微粒子が好ましい。
該無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
該無機微粒子がトナーの流動性の向上のために使用される場合は、その比表面積が50m2/g以上400m2/g以下であることが好ましい。
一方、該無機微粒子がトナーの耐久性の向上のために使用される場合は、その比表面積が10m2/g以上50m2/g以下であることが好ましい。
該流動性の向上と耐久性の向上を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
該無機微粒子を外添剤として含有させる場合は、トナー粒子100質量部に対し、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。トナー粒子と無機微粒子の混合は、ヘンシェルミキサーのような混合機を用いるとよい。
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、また、長期にわたり安定した画像を供給するために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、
酸化鉄;
鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、及び希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、それらの酸化物粒子;
フェライトなどの磁性体;
磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア);
などを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、磁性キャリアとトナーの混合比率は、二成分系現像剤中のトナーの濃度が、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
本発明のトナーの製造方法は特に限定されることはないが、結晶性ポリエステル樹脂の分散性をより向上させ、本発明の効果をより発揮させるために、粉砕法を用いるとよい。以下、粉砕法を用いたトナーの製造手順について説明する。
まず、原料混合工程では、トナー(トナー粒子)の原料として、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ワックス及び着色剤などを所定量秤量して配合し、混合する。
該混合に使用される装置の一例としては、ヘンシェルミキサー(日本コークス社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)などがある。
次に、得られた混合物を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中にワックス及び着色剤などを分散させる(溶融混練工程)。
溶融混練に使用される装置としては、例えば、TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);ニーデックス(三井鉱山社製)などが挙げられる。ただし、連続生産できるなどの優位性から、バッチ式練り機よりも、1軸又は2軸押出機といった連続式の練り機が好ましい。
次に、得られた溶融混練物は、2本ロールなどで圧延され、水冷などにより冷却する。得られた冷却物は、所望の粒径にまで粉砕される。まず、クラッシャー、ハンマーミル、又はフェザーミルなどで粗粉砕され、更に、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)などで微粉砕され、トナー粒子を得る。
得られたトナー粒子は、所望の粒径に分級される。分級に使用される装置としては、ターボプレックス、ファカルティ、TSP、TTSP(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)などがある。
さらに、必要に応じて無機微粒子などをトナー粒子に外添しても構わない。無機微粒子などを添加する方法としては、トナー粒子と無機微粒子を所定量配合し、粉体にせん断力を与える高速撹拌機を用いて、撹拌及び混合する方法が挙げられる。粉体にせん断力を与える高速撹拌機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)などが挙げられる。
更に、必要に応じて、粗粒などを篩い分けるために、例えば、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ハイボルター(東洋ハイテック社製)などの篩分機を用いてもよい。
〈結晶性ポリエステル樹脂の分離〉
トナーをメチルエチルケトン(MEK)中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、トナーとMEKをよく混ぜ、試料の合一体が無くなるまで、更に12時間以上静置する。得られた溶液を3500rpmで20分間遠心分離(遠心機「H−18」、株式会社コクサン社)した後、固形分を回収し、乾固する。
乾固したサンプルを75℃の加熱下でMEKに溶解し、遠心分離によって分離した上澄み液から、結晶性ポリエステル樹脂を得る。
〈結晶性ポリエステル樹脂の分子量分布の測定〉
結晶性ポリエステル樹脂の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(
GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、試料50mgをクロロホルム5mLに入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、クロロホルムとよく混ぜ、試料の合一体が無くなるまで、更に24時間以上静置する。
そして、得られた溶液を、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク H−25−5」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「Labsolutions GPC」(島津製作所製)
カラム:PLgel 5μm MIXED−C 300×7.5mm(AgilentTechnologies製):2本、PLgel 5μm Guard 50×7.5mm(Agilent Technologies製):1本
溶離液:クロロホルム
流速:1.0mL/分
オーブン温度:45℃
試料注入量:60μL
検出器:RI(屈折率)検出器
試料の分子量は、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びピーク分子量(Mp)を算出する。
また、数平均分子量が1000以下の含有割合[単位は、質量%]は、積分分子量分布曲線において、曲線と数平均分子量1000との交点より算出する。
〈非晶性ポリエステル樹脂などの分子量分布の測定〉
非晶性ポリエステル樹脂などの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、試料をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ、試料の合一体が無くなるまで、更に12時間以上静置する。
試料が結晶性ポリエステル樹脂の場合は、少なくとも72時間以上かけて溶解する。
そして、得られた溶液を、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:Shodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800P(昭和電工社製)
溶離液:THF
流速:1.0mL/分
オーブン温度:40℃
試料注入量:100μL
検出器:RI(屈折率)検出器
試料の分子量は、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びピーク分子量(Mp)を算出する。
ワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の最大吸熱ピークのピークトップ温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TAインストルメント社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料5mgを精秤し、これを銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、測定開始温度20℃から測定終了温度180℃まで、昇温速度10℃/分で、1回の測定を行う。この1度目の昇温過程での温度20℃以上180℃以下の範囲におけるDSC曲線の最大吸熱ピークのピークトップ温度を求める。
本発明において、ワックスを試料とした場合の最大吸熱ピークのピークトップ温度を、ワックスの融点ともいう。
また、結晶性ポリエステル樹脂を試料とした場合の最大吸熱ピークのピークトップ温度を、結晶性ポリエステルの融点ともいう。
なお、トナーを試料とする場合において、トナーのトナー粒子中に存在するワックスによる吸熱ピークが観察される場合がある。ワックスの吸熱ピークと結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピークの判別は、次のように行う。すなわち、まず、トナーのトナー粒子からヘキサン溶媒を使用したソックスレー抽出によってワックスを抽出する。次に、ワックス単体の示査走査熱量測定を上記方法で行い、得られた吸熱ピークとトナーの吸熱ピークを比較することにより判別を行う。
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂組成物5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、測定範囲30℃以上180℃以下の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。
一度、180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、30℃以上180℃以下の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、DSC曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、樹脂のガラス転移温度(Tg:℃)とする。
・1,6−ヘキサンジオール: 34.5質量部
(0.29mol;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸: 65.5質量部
(0.28mol;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸スズ: 0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後、表1に示した、脂肪族化合物(ステアリン酸)を原料モノマー100質量部に対し、10.0質量部加え、常圧下にて200℃で2時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂A1を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂A1の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量が1000以下の含有割合[単位は質量%、また、表中、A*と記載]を表1に示す。
結晶性ポリエステル樹脂A1の製造例において、ジカルボン酸、ジオール、脂肪族化合物、脂肪族化合物の添加量、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が表1となるように、適宜条件を変更した。それら以外は、結晶性ポリエステル樹脂A1の製造例と同様の操作を行い、結晶性ポリエステル樹脂A2〜A22を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量が1000以下の含有割合[質量%]を表1に示す。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン: 72.3質量部
(0.20mol;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸: 18.3質量部
(0.11mol;多価カルボン酸総モル数に対して65.0mol%)
・フマル酸: 2.9質量部
(0.03mol;多価カルボン酸総モル数に対して15.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸スズ(エステル化触媒): 0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸: 6.5質量部
(0.03mol;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が所望温度に達したのを確認してから温度を下げて反応を止めた(第2反応工程)。このようにして、非晶性ポリエステル樹脂Bを得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂Bの軟化点は135℃であり、ガラス転移温度は63℃であり、ピーク分子量は9011であった。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン: 72.0質量部
(0.20mol;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸: 28.0質量部
(0.17mol;多価カルボン酸総モル数に対して96.2mol%)
・2−エチルヘキサン酸スズ(エステル化触媒): 0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸: 1.3質量部
(0.0068mol;多価カルボン酸総モル数に対して3.8mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤): 0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が所望温度に達したのを確認してから温度を下げて反応を止めた(第2反応工程)。このようにして、非晶性ポリエステル樹脂Cを得た。得られた結着樹脂Cの軟化点は87℃であり、ガラス転移温度は53℃であり、ピーク分子量は6264であった。
・非晶性ポリエステル樹脂B 35質量部
・非晶性ポリエステル樹脂C 65質量部
・結晶性ポリエステル樹脂A1 7.5質量部
・フィッシャートロプシュワックス 6質量部
(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃)
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.3質量部
(ボントロンE88 オリエント化学工業社製)
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数
20s−1、回転時間5分で混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらに、ファカルティF−300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子1を得た。ファカルティF−300の運転条件は、分級ローター回転数を130s−1、分散ローター回転数を120s−1とした。
得られたトナー粒子100質量部に、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理した疎水性シリカ微粒子(BET:200m2/g)1.0質量部、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)を用いて、回転数30s−1、回転時間10分で混合して、トナー1を得た。
トナー1の製造例において、結晶性ポリエステル樹脂の種類、結晶性ポリエステル樹脂の量(添加部数:質量部)を表2に示したように変更した以外は同様の操作を行い、トナー2〜28を得た。
・工程1(秤量及び混合工程):
Fe2O3 62.7質量部
MnCO3 29.5質量部
Mg(OH)2 6.8質量部
SrCO3 1.0質量部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0質量部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温した。その後、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合した。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。
得られた30質量部の被覆樹脂1を、トルエン40質量部、及びメチルエチルケトン30質量部に溶解して、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75mL/100g)
を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を、100質量部の磁性コア粒子1に対して、樹脂成分として2.5質量部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
磁性キャリア1を92.0質量部に対し、トナー1を8.0質量部加え、V型混合機(V−20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
二成分系現像剤1の製造例において、表3のようにトナーの組合せを変更した以外は同様の操作を行い、二成分系現像剤2〜28を得た。
得られた二成分系現像剤1を用い、評価を行った。
画像形成装置として、キヤノン株式会社製デジタル商業印刷用プリンターであるimageRUNNER ADVANCE C9075 PRO(商品名)の改造機を用いた。シアン位置の現像器に二成分系現像剤1を入れ、静電潜像担持体である感光ドラム又は紙上のトナーの載り量が所望になるよう現像剤担持体である現像スリーブの直流電圧VDC、感光ドラムの帯電電圧VD、レーザーパワーを調整し、後述の評価を行った。改造点としては、定着温度、及びプロセススピードを自由に設定できるように変更したことである。
〈評価1〉
(帯電性)
感光ドラム上のトナーを金属円筒管と円筒フィルターを用いて吸引捕集することにより、トナーの摩擦帯電量及びトナーの載り量を算出した。
具体的には、感光ドラム上のトナーの摩擦帯電量及びトナーの載り量は、例えばファラ
デー・ケージ(Faraday−Cage)によって測定した。
ファラデー・ケージとは、同軸の2重筒のことで内筒と外筒は絶縁されている。この内筒の中に電荷量Qの帯電体を入れたとすると、静電誘導によりあたかも電荷量Qの金属円筒が存在するのと同様になる。この誘起された電荷量をエレクトロメーター(ケスレー6517A ケスレー社製)で測定し、内筒中のトナーの質量M(kg)で電荷量Q(mC)を割ったもの(Q/M)をトナーの摩擦帯電量とした。
また、吸引した面積Sを測定することで、トナーの質量Mを吸引した面積S(cm2)で除して、単位面積あたりのトナーの載り量とした。
トナーは感光ドラム上に形成されたトナー層が中間転写体である中間転写ベルトに転写される前に感光ドラムの回転を止め、感光ドラム上のトナー像を直接、エアー吸引して測定した。
トナーの載り量(mg/cm2)=M/S
トナーの摩擦帯電量(mC/kg)=Q/M
上記画像形成装置において、高温高湿環境下(32.5℃、80%RH)で感光ドラム上のトナーの載り量が0.35mg/cm2となるように調整し、上記金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、及び捕集されたトナーの質量Mを測定し、単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を計算し、感光ドラム上の単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)とした(初期評価)。
上記の評価(初期評価)を行った後に、現像器を機外に取り外し、高温高湿環境下(32.5℃、80%RH)に72時間放置した。その後、再度現像器を機内に装着し、初期評価と同じ直流電圧VDCで感光ドラム上の単位質量当たりの電荷量Q/Mを測定した(放置後評価)。
上記の初期評価における感光ドラム上の単位質量当たりのQ/Mを100%とし、72時間放置後(放置後評価)の感光ドラム上の単位質量当たりの電荷量Q/Mの維持率(放置後評価/初期評価×100)を算出して以下の基準で判断した。
(評価基準)
A:維持率が80%以上:非常に良好である
B:維持率が70%以上、80%未満:良好である
C:維持率が60%以上、70%未満:本発明において許容レベルである
D:維持率が60%未満:本発明において不可レベルである
(低温定着性)
紙 :CS−680(68.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
トナーの載り量 :1.20mg/cm2
評価画像 :上記A4用紙の中心に10cm2の画像を配置
定着試験環境 :低温低湿環境、15℃/10%RH(以下「L/L」)
プロセススピード:450mm/秒
定着温度 :130℃
上記画像形成装置を用い、上記条件で出力した定着画像の低温定着性を評価した。
低温定着性の評価は、下記画像濃度低下率の値を指標とした。
画像濃度低下率は、X−Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X−Rite社製)を用い、まず、中心部の定着画像の濃度を測定する。次に、定着画像の濃度を測定した部分に対し、4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけて、シルボン紙により定着画像を摺擦(5往復)し、定着画像の濃度を再度測定する。そして、摺擦前後での定着画像の濃度の低下率(%)を測定した。
(評価基準)
A:濃度低下率が1.0%未満 (非常に優れている)
B:濃度低下率が1.0%以上、5.0%未満 (良好である)
C:濃度低下率が5.0%以上、10.0%未満 (本発明では問題ないレベルである)D:濃度低下率が10.0%以上 (本発明では許容できない)
(保存性)
100mLのプラスティック容器にトナー5gを入れ、温度及び湿度可変型の恒温槽(設定;55℃、41%RH)に48時間放置し、放置後にトナーの凝集性を評価した。
凝集性は、ホソカワミクロン社製パウダーテスタPT−Xにて0.5mmの振幅にて10秒間、目開き20μmのメッシュで篩った際に、残ったトナーの残存率を評価指標とした。
(評価基準)
A:残存率が2.0%未満 (非常に優れている)
B:残存率が2.0%以上10.0%未満 (良好である)
C:残存率が10.0%以上15.0%未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:残存率が15.0%以上 (本発明では許容できない)
(耐ホットオフセット性)
紙 :CS−680(68.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
トナーの載り量 :0.08mg/cm2
評価画像 :上記A4用紙の両末端に10cm2の画像を配置
定着試験環境 :常温低湿環境、23℃/5%RH(以下「N/L」)
プロセススピード:450mm/秒
定着温度 :210℃
上記画像形成装置の定着器の、定着ベルトの中心位置に無地のはがきを10枚通紙した後、上記条件で定着画像を出力し、該定着画像のカブリの値を耐ホットオフセットの評価指標とした。
カブリは、リフレクトメータ(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって、画出し前の評価紙の平均反射率Dr(%)と上記定着試験後の白地部の反射率Ds(%)を測定し、下記式を用いて算出した。得られたカブリを下記の評価基準に従って評価した。
カブリ(%)=Dr(%)−Ds(%)
(評価基準)
A:0.2%未満 (非常に優れている)
B:0.2%以上0.5%未満 (良好である)
C:0.5%以上1.0%未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:1.0%以上 (本発明では許容できない)
表3に示した二成分系現像剤2〜21を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表4に示す。なお、実施例6,7,10〜21は、それぞれ参考例6,7,10〜21とする。
表3に示した二成分系現像剤22〜28を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表4に示す。
比較例1で用いたトナー22は、結晶性ポリエステル樹脂の合成時に、特定の脂肪族化合物を含有していないトナーである。脂肪族化合物を含有していないため、結晶性ポリエステル樹脂における未反応モノマー由来の低分子量成分の量が多い。その結果、樹脂の強度が弱く耐久性が悪化したため、保存性や、帯電性が低下したと考えられる。
比較例2で用いたトナー23は、結晶性ポリエステル樹脂の合成時に、脂肪族化合物のステアリン酸(C18)を18.0質量部添加したトナーである。脂肪族化合物に由来する部位の含有割合が多いため、結晶性ポリエステル樹脂の可塑効果が低減されてしまう。その結果、トナーの低温定着性が低下したと推測される。
比較例3で用いたトナー24は、結晶性ポリエステル樹脂の合成時に、脂肪族化合物のベヘン酸(C22)を添加したトナーである。脂肪族化合物の炭素数が多く、結晶性ポリエステル樹脂の可塑効果が低減されてしまう。その結果、トナーの低温定着性が低下した
と推測される。
比較例4で用いたトナー25は、結晶性ポリエステル樹脂の合成時に、脂肪族化合物のカプロン酸(C6)を添加したトナーである。脂肪族化合物の炭素数が少なく、結晶性ポリエステル樹脂における低分子量成分の量が増加したため、保存性や耐ホットオフセット性が低下したと考えられる。
比較例5で用いたトナー26のトナー粒子が含有する結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が4100と小さい。結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が小さいため、結晶性ポリエステル樹脂に未反応モノマー由来の低分子量成分の量が多い。その結果、樹脂の強度が弱く耐久性が低下したため、保存性や、帯電性が低下したと考えられる。
比較例6で用いたトナー27のトナー粒子が含有する結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が15600と大きく、特定の脂肪族化合物を含有していないトナーである。
この結晶性ポリエステル樹脂は、脂肪族化合物を含有していなくても、重量平均分子量が大きいため、未反応モノマー由来の低分子量成分の量が比較的少ない。そのため、比較例5のトナー26よりも保存性、耐ホットオフセット性及び帯電性は良化するが、非晶性ポリエステル樹脂との相溶性が低いため、低温定着性が低下したと考えられる。
比較例7で用いたトナー28のトナー粒子が含有する結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が15200と大きい。また、結晶性ポリエステル樹脂の合成時に、脂肪族化合物のステアリン酸(C18)を10.0質量部添加したトナーである。
この結晶性ポリエステル樹脂は、特定の脂肪族化合物を含有しており、かつ、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量も大きいため、未反応モノマー由来の低分子量成分の量が少ない。そのため、比較例5のトナー26よりも保存性、耐ホットオフセット性及び帯電性は良化するが、低温定着性が低下したと考えられる。
一方、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が14000を超えているので、低分子量成分の総量が減少するため、仕事関数の値や帯電性の向上の効果が低下したと考えられる。
Claims (3)
- 非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ワックス、及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、8000以上12000以下であり、
該結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数8以上20以下の脂肪族モノカルボン酸に由来する部位及び炭素数8以上20以下の脂肪族モノアルコールに由来する部位のいずれか一方のみを含有し、
該結晶性ポリエステル樹脂中の該部位の含有量が、0.5質量%以上15.0質量%以下であり、
該結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分との縮重合体であり、
該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上15.0質量部以下である
ことを特徴とするトナー。 - 前記結晶性ポリエステル樹脂のクロロホルム可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布において、数平均分子量が1000以下の含有割合が5質量%以下である請求項1に記載のトナー。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂が、前記炭素数8以上20以下の脂肪族モノカルボン酸に由来する部位を含有し、前記炭素数8以上20以下の脂肪族モノアルコールに由来する部位を含有しない、請求項1または2に記載のトナー。
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