JP6824643B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーに関する。
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高い生産性を要求されるようになってきている。例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種にあわせてプロセススピードを変更せずに、あるいは定着器加熱設定温度を変えることなく印刷を続ける、メディア種によらない等速性が求められている。このメディア等速性の観点から、トナーには、低温から高温まで幅広い温度範囲で適正に定着を完了することが求められている。
低温定着性を達成するためにはトナーを軟化させる必要があるが、単純にトナーの結着樹脂を軟化させるだけでは耐熱保存性や耐久性が低下するため好ましくない。
そこで、特許文献1には、シャープメルト性を有する結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とからなる複合樹脂を添加することで、トナーの低温定着性能を向上させたトナーが開示されている。結晶性ポリエステル樹脂の含有量を増やすと、低温定着性が更に向上する反面、樹脂の強度が低下し耐久性が低くなる。その結果、熱的ストレスや機械的ストレスにより、耐ホットオフセット性や耐熱保存性が損なわれる。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量を抑えつつ、低温定着性を向上させるために、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の相溶性を上げるという方法がある。例えば特許文献2に開示されているように結晶性ポリエステル樹脂の分子量を小さいものにする、特許文献3に開示されているように滑剤を添加する、特許文献4に開示されているように樹脂のSP値を調整するなどの手段が挙げられる。しかし、トナーの低温定着性を維持しつつ、近年求められるレベルの高画質を実現するには不十分である。
以上のことから、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナーにおいて、低温定着性に優れると共に、耐熱保存性、耐ホットオフセット性を満足させるには、さらなる検討の余地がある。
特開2004−61875号公報 特開2012−118499号公報 特開2004−286842号公報 特開2013−242523号公報
本発明の目的は上記問題点を解消した、結晶性材料のごとき可塑剤を用いたトナーにおいても低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性に優れたトナーを提供することである。
上記の課題を解決するため、本発明によれば、
非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
該非晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を80mol%以上含むアルコール成分と、炭素数2以上14以下の直鎖状炭化水素の両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との縮重合体であり、カルボン酸成分の総モル数に対して、該脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ4.5mol%以上35.0mol%以下含有し、
該結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールが80mol%以上含むアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物が80mol%以上含むカルボン酸成分との縮重合体であり、
該着色剤は、下記の着色剤1、着色剤2、着色剤4および着色剤5からなる群より選択されるいずれかの着色剤であり、更に、C.I.ピグメントイエロー180またはカーボンブラックを含有する、トナーが提供される。
Figure 0006824643
本発明によれば、低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性に優れるトナーを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明のトナーは、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を有する。
該非晶性ポリエステル樹脂は、
ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を80mol%以上含むアルコール成分と、
炭素数2以上14以下の直鎖状炭化水素の両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との縮重合体であり、
カルボン酸成分の総モル数に対して、該脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ4.5mol%以上35.0mol%以下含有する。
該結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールが80mol%以上含むアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物が80mol%以上含むカルボン酸成分との縮重合体である。
該着色剤は、下記の着色剤1、着色剤2、着色剤4および着色剤5からなる群より選択されるいずれかの着色剤であり、更に、C.I.ピグメントイエロー180またはカーボンブラックを含有する。
Figure 0006824643
このような構成を有する本発明のトナーを用いることによる作用効果について、本発明者らは以下のように考える。
非晶性ポリエステル樹脂は、疎水性部分を増やすために組成(プロピレンオキサイド付加物の比率)を限定し、結晶性ポリエステル樹脂の炭素数を限定することにより、非晶性ポリエステルとの相溶性を上げ、トナー中に均一に分散することができる。それにより、低温定着時における非晶性ポリエステル樹脂の可塑化を促進し低温定着性に寄与する。
本発明に用いられる着色剤は上記式(1)で表される化合物を有することを特徴とし、有機溶剤への溶解性が高く、トナー樹脂中へ均一分散する。上記式(1)の化合物を用いることで、上記式(1)の化合物と結晶性ポリエステル樹脂とが相溶し、非晶性ポリエステル樹脂の強度を維持した状態で、結晶性ポリエステル樹脂の分散性を上げるため、耐熱保存性を向上させることができる。
非晶性ポリエステル樹脂は、
ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を80mol%以上含有したアルコール成分と、
炭素数4以上16以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸を含有したカルボン酸成分とを縮重合して得られた樹脂であり、
カルボン酸成分の総モル数に対して、該脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ4.5mol%以上35.0mol%以下含有することを特徴とする。
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールが80mol%以上含むアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物が80mol%以上含むカルボン成分を縮重合して得られた樹脂であることを特徴とする。
上記の非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、上記式(1)の化合物との相容性が高まり、低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性をバランス良く満足することができる。
非晶性ポリエステル樹脂中への分散性を上げるという観点から、前記非晶性ポリエステル樹脂、前記結晶性ポリエステル樹脂及び前記着色剤を含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を経て製造することで、上記効果がより発現しやすくなる。
本発明においてその目的を達成するに好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
<非晶性ポリエステル樹脂>
本発明のトナーに使用される非晶性ポリエステル樹脂は、
ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を90mol%以上含有したアルコール成分と、
炭素数6以上10以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸を含有したカルボン酸成分とを縮重合して得られた樹脂である。そして、該カルボン酸成分の総モル数に対して、該脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ10.0mol%以上30.0mol%以下含有する。非晶性ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはその両者を適宜選択して使用することが可能である。
アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、下記式(1−1)で表されるビスフェノール誘導体、下記式(1−1)の水添物、下記式(1−2)で示されるジオール類。
Figure 0006824643
[式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。]
Figure 0006824643
本発明における非晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を80mol%以上含有したアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮重合することにより得られた非晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする。
プロピレンオキサイド付加物の比率を上げることは、非晶性ポリエステル樹脂の疎水性を高め、結晶性ポリエステル樹脂の相容性が向上する。よって、優れた低温定着性を得ることができるという観点からビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量は90mol%以上がより好ましい。また、80.0mol%未満の樹脂を使用すると上記式(1)の化合物との相容性が低下し、非晶性ポリエステル樹脂の強度を維持することができず、耐熱保存性を満足することができなくなる。
一方、非晶性ポリエステル樹脂を構成する2価のカルボン酸成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステル。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、アジピン酸、n−ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらのうち、特に1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
本発明における非晶性ポリエステル樹脂は、
前記のアルコール成分と、炭素数4以上16以下(好ましくは6以上10以下)の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸を含有したカルボン酸成分とを縮重合して得られた樹脂であり、
カルボン酸成分の総モル数に対して、該脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ4.5mol%以上35.0mol%以下(好ましくは10.0mol%以上30.0mol%以下)含有していることを特徴とする。
これらの組成を満足することが上記式(1)の化合物との相容性を高め、低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性をバランス良く満足することができ、これらの組成を満足できないとき、本発明の効果が得られない。
さらに、アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられる。また、カルボン酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
上記非晶性ポリエステル樹脂は、通常用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物など、を用いても製造することができる。これら触媒の中でも特に、チタン系の触媒を用いて重縮合した非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
チタン系の触媒を用いて重縮合した非晶性ポリエステル樹脂は、均質なポリエステル樹脂になりやすいため、トナー粒子間でのばらつきも少なくなる。
上記非晶性ポリエステル樹脂は、帯電の安定性を向上させるという観点から、酸価は1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であることが好ましい。10mgKOH/g以下であることにより、磁性トナーの帯電性が安定化しやすいため、特に高温高湿環境下での現像効率が向上しやすい。
<結晶性ポリエステル樹脂>
本発明における結晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測されるポリエステル樹脂である。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂は、低温定着性と耐ホットオフセット性を満足し、上記式(1)化合物との相容性を高め、非晶性ポリエステル樹脂の強度を維持し耐熱保存性を満足するために、以下の特徴を有する。すなわち、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを80mol%以上含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を80mol%以上含有するカルボン酸成分との縮重合により得られることを特徴とする。アルコール成分は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを85mol%以上含有することが好ましい。カルボン酸成分は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を85mol%以上含有することが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましい。例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、が好ましい。
本発明において、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を併せて用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、以下のものが挙げられる。1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えば以下のものが挙げられる。n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性アルコール。
一方、脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
本発明において、脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、以下のものが挙げられる。イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸、これらの酸無水物または低級アルキルエステル。また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、等の脂肪族カルボン酸、これらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば以下のものが挙げられる。安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸。
本発明における結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応させた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで所望の結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化またはエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全単量体を一括混合したりしてもよい。また低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.80以上1.20以下であることが好ましい。
<着色剤>
本発明における着色剤は、下記式(1)の化合物を含むことを特徴とする。
Figure 0006824643
(式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、Hまたは炭素数1以上5以下であるアルキル基を示し、Arは置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
本発明における上記式(1)の化合物は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。下記式(2)で表される化合物を使用することによって、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性がさらに向上し、非晶性ポリエステル樹脂の強度を維持した状態で、結晶性ポリエステル樹脂の分散性を上げ、耐熱保存性をより向上させることができる
Figure 0006824643
(式(2)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、Hまたは炭素数1以上5以下であるアルキル基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1以上12以下のアルキル基を示す。)
式(2)中のR、R、およびRにおける炭素数1以上5以下のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などのアルキル基。
式(2)中のR、Rにおける炭素数1以上12以下のアルキル基としては、特に限定されるものではないが以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などのアルキル基。
本発明のトナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。
マゼンタ着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
シアン着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
イエロー着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
上記着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
<ワックス>
本発明のトナーは、必要に応じワックスを含有することができる。
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般的に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点から、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスの如き脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。
該ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下で使用されることが好ましい。該ワックスの含有量がこの範囲にあるとき、高温でのホットオフセット性を維持に効率的に発揮することが可能となりやすい。
また、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上110℃以下であることが好ましい。最大吸熱ピークのピーク温度がこの範囲にあるとき、トナーの耐熱保存性と高温オフセット性の両立を図ることができる。
<ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体>
また、本発明におけるトナーでは、ワックスとして炭化水素系ワックスを含有する場合、ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体を含有することがワックスを樹脂中に分散させるために好ましい。中でも、ビニル系樹脂にポリオレフィンがグラフトした構造を有するグラフト重合体又はポリオレフィンにビニル系モノマーがグラフト重合したグラフト重合体を更に含有することが好ましい。
該重合体が含有された場合、ワックスと樹脂との相溶性が促進され、ワックス分散不良による帯電不良、部材汚染などの弊害を引き起こしにくくなる。
また該ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体の含有量は、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下であることが好ましい。含有量がこの範囲にあるとき、非晶性ポリエステル樹脂中にワックスの分散状態が均一となりやすい。
ビニル系樹脂にポリオレフィンがグラフトした構造を有するグラフト重合体に関して、ポリオレフィンは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素の重合体または共重合体であれば特に限定されず、様々なポリオレフィンを用いることができる。特にポリエチレン系、ポリプロピレン系が好ましく用いられる。
ビニル系基を有するモノマーとしては、例えば以下のものが挙げられる。スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体などのスチレン系単位。メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアミノ基含有α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体などのN原子を含むビニル系単位。
マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を含むビニル系単位。
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンなどのヒドロキシ基を含むビニル系単位。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類などのアクリル酸エステルからなるエステル単位。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類などのメタクリル酸エステルからなるエステル単位。
本発明に用いられるポリオレフィンにビニル系モノマーがグラフト重合したグラフト重合体は、前述したこれらの重合体同士の反応や、一方の重合体のモノマーと他方の重合体との反応等、公知の方法によって得ることができる。
ビニル樹脂の構成単位として、スチレン系単位、さらにはアクリロニトリル、またはメタアクリロニトリルを含むことが好ましい。
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速くかつ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
<無機微粒子>
本発明のトナーには、必要に応じて無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子は、トナー粒子に内添しても良いし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m/g以上400m/g以下の無機微粉体が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m/g以上50m/g以下の無機微粉体であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粉体を併用してもよい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
<現像剤>
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが好ましい。また、長期にわたり安定した画像が得られるという点でも好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、以下のものを使用できる。表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持する結着樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
<製造方法>
本発明のトナーの製造方法は、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知のトナー製造方法であれば特に限定されないが、原材料の分散性を向上させるという観点から溶融混練法が好ましい。
溶融混練法は、トナー粒子の原材料であるトナー組成物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕することを特徴とする。製造方法の例を挙げて説明する。
原料混合工程で、トナー粒子を構成する材料として、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び上記式(1)で表される化合物を含む着色剤、並びに必要に応じてワックス、荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に他原材料等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機((株)神戸製鋼所製)、TEM型2軸押出機(東芝機械(株)製)、PCM混練機((株)池貝製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業(株)製)、スーパーローター(日清エンジニアリング(株)製)、ターボ・ミル(フロイント・ターボ(株)製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業(株)製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン(株)製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン(株)製)、ファカルティ(ホソカワミクロン(株)製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
他の製造方法として乳化凝集法について説明する。
乳化凝集法とは、目的の粒子径に対して、十分に小さい樹脂微粒子を前もって準備し、その樹脂微粒子を水系媒体中で凝集することによりコア粒子を製造する製造方法である。乳化凝集法では、樹脂微粒子の乳化工程、凝集工程、融合工程、冷却工程、洗浄工程を経てトナー粒子が製造される。また必要に応じて、冷却工程後にシェル化工程を加え、コアシェルトナーにすることもできる。
・樹脂微粒子の乳化工程
ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂微粒子は公知の方法で調製できる。例えば、前記樹脂を有機溶剤に溶かして水系媒体に添加し、界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水系媒体に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。溶解させるために使用する有機溶剤としては、前記樹脂を溶解させるものであればどのようなものでも使用可能であるが、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルムなどがより優れた溶解性を有するという観点から好ましい。
また、水系媒体中に前記樹脂と界面活性剤、塩基等を加え、クレアミックス、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの高速剪断力をかける分散機により実質的に有機溶媒を含まない水系媒体で乳化分散することが環境負荷の点からこの好ましい。特に、沸点が100℃以下の有機溶剤の含有量が、100μg/g以下であることが好ましい。上記の範囲外の場合、トナーを製造する際、有機溶剤を除去、回収する工程が新たに必要になり、廃水処理対策に負荷がかかる。なお水系媒体中の有機溶剤含有量はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定することができる。
乳化時に使用する界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、以下のものが挙げられる。硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤。当該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は0.05〜1.0μmが好ましく、0.05〜0.4μmがより好ましい。樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を上記範囲とすることによって、トナー粒子として適切な体積基準のメジアン径である4.0〜7.0μmのトナー粒子を得ることが容易になる。なお体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA−EX150:日機装(株)製)を使用することで測定可能である。
・凝集工程
凝集工程とは、上述の樹脂微粒子、色材微粒子、離型剤微粒子を必要量に応じて混合し混合液を調製し、ついで、調製された混合液中に含まれる粒子を凝集し、凝集体を形成させる工程である。当該凝集体を形成させる方法としては、例えば凝集剤を上記混合液中に添加・混合し、温度、機械的動力等を適宜加える方法が好適に例示できる。
上記凝集剤としては、例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩があげられる。
前記凝集剤の添加・混合は、混合液中に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で上記混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。上記混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
ここで形成される凝集体の重量平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナー粒子の重量平均粒径と同じ程度になるよう4.0μm〜7.0μmに制御するとよい。制御は、例えば、上記凝集剤等の添加・混合時の温度と上記撹拌混合の条件を適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。なお、トナー粒子の粒度分布はコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:ベックマン・コールター(株)製)にて測定できる。
・融合工程
融合工程とは、上記凝集体を、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上に加熱し融合することで、凝集体表面を平滑化させた粒子を製造する工程である。一次融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜投入することができる。
キレート剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩等のアルカリ金属塩、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、COOH及びOHの両方の官能性を含む多くの水溶性ポリマー類(高分子電解質)が挙げられる。
上記加熱の温度としては、凝集体に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)から、樹脂が熱分解する温度の間であればよい。加熱・融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、加熱・融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分〜10時間である。
・冷却工程
冷却工程とは、上記粒子を含む水系媒体の温度を、コア用樹脂のガラス転移温度(Tg)より低い温度まで冷却する工程である。具体的な冷却速度は0.1〜50℃/分である。
・シェル化工程
また本発明では必要に応じて、下記の洗浄乾燥工程の前にシェル化工程を入れることができる。シェル化工程はこれまでの工程で作製した粒子に、樹脂微粒子を新たに添加し付着させて、シェル化させる工程である。
ここで添加する結着樹脂微粒子はコアに使用した結着樹脂微粒子と同一の構造でも良いし、異なる構造の結着樹脂微粒子でも良い。
このようなシェル層を構成する樹脂としては、特に限定はなく、トナーに用いられる公知の樹脂、例えばポリエステル樹脂、スチレン−アクリル共重合体などのビニル系重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリエステル樹脂またはスチレン−アクリル共重合体が好ましく、低温定着性及び耐熱保存性が優れるという観点から、ポリエステル樹脂がより好ましい。ポリエステル樹脂は、主鎖中に剛直な芳香環を有する場合、スチレン−アクリル共重合体のようなビニル系重合体にくらべ可撓性を有するため、ビニル系重合体より低分子量のものであっても同等の機械的強度を付与できる。そのため、低温定着性に適した樹脂としてもポリエステル樹脂が好ましい。
本発明においては、上記のシェル層を構成する結着樹脂は単独で用いても良いが、2種以上組み合わせて用いてもよい。
・洗浄乾燥工程
上記工程を経て作製した粒子を、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpHを調整されたイオン交換水で洗浄ろ過を行い、続いて、イオン交換水で洗浄、ろ過を複数回行う。その後、乾燥し、乳化凝集トナー粒子を得ることができる。
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前のベースラインを延長した直線を第1の直線とし、比熱変化が出た後のベースラインを延長した直線を第2の直線とし、第1の直線と第2の直線とから縦軸方向に等距離にある直線を第3の直線とする。第3の直線と示差熱曲線との交点の温度(いわゆる、中間点ガラス転移温度)を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
<結晶性ポリエステル樹脂、ワックス及びトナーの融点の測定>
結晶性ポリエステル樹脂、ワックスの融点は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定したDSC曲線において、最大吸熱ピークのピーク温度を融点とする。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。なお、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピーク温度を融点とする。200℃まで昇温させてからの保持時間はなく、200℃まで到達したらすぐに30℃まで降温させる。
トナーを試料とする場合において、ワックス及び結結晶性樹脂の吸熱ピークが結着樹脂の最大吸熱ピークと重なっている場合、ワックスと結晶性樹脂の溶剤への溶解度の差を利用してトナーから結晶性樹脂を分離することで結晶性樹脂の吸熱ピークを特定できる。
<GPCによる樹脂の重量平均分子量測定>
樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mLの流量で流し、THF試料溶液を約100μL注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー(株)製あるいは昭和電工(株)製の分子量が10〜10程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが適当である。また、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせることが好ましく、例えば以下の組み合わせが挙げられる。昭和電工(株)製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー(株)製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せ。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料50mgをTHF10mL中に入れ、温度25℃で数時間静置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。なお、THF中における静置時間の合計が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー(株)製)などを使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。
<樹脂の軟化点の測定方法>
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとなるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの樹脂を、温度25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム(株)製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下のとおりである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/分
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、下記の装置と、測定条件設定及び測定データ解析をするための下記の付属の専用ソフトを用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
・100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)
・専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)を用いることができる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として下記の希釈液を約0.3mL加える。
・希釈液:「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈したもの
(3)下記の超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
・超音波分散器:発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵。電気的出力120W。「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス(株)製)
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス(株)製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下のとおりである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として下記の希釈液を約0.2mL加える。
・希釈液:「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈したもの
更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS−150」((株)ヴェルヴォクリーア製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス(株)製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3,000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に下記の標準ラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
・標準ラテックス粒子:Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈したもの
なお、本願実施例では、シスメックス(株)による校正作業が行われた、シスメックス(株)が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
以下、製造例及び実施例により本発明を説明する。以下の説明において、部数は質量部基準である。
<非晶性ポリエステル樹脂の製造例1>
冷却管、撹拌機及び液中バブリング可能な窒素導入管の付いた反応槽中に、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)1,617部とイオン交換水126部を入れた。そして、窒素にて液中バブリング下、90℃まで徐々に昇温し、90℃で4時間反応(加水分解)させることで、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)を得た。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:72.16質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:19.64質量部(0.12モル;多価カルボン酸総モル数に対して70.0mol%)
・アジピン酸(炭素数6の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸):4.94質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:3.26質量部(0.02モル;多価カルボン酸総モル数に対して10.0mol%)
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持した状態で3時間反応させた。そして、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が110℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め(第2反応工程)、非晶性ポリエステル樹脂A−1を得た。
得られた非晶性ポリエステル樹脂A−1は、アルコール成分としてはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が100.00mol%であった。また、カルボン酸成分としてはアジピン酸(炭素数6の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸)がカルボン酸成分の総モル数に対して20.0mol%であった。また、得られた非晶性ポリエステル樹脂A−1の重量平均分子量(Mw)は4,000、軟化点(Tm)は110℃、ガラス転移温度(Tg)は58℃であった。
<非晶性ポリエステル樹脂の製造例2〜12、14〜18>
表1に示した材料を適宜組み合わせて、非晶性ポリエステル樹脂A−1とほぼ同様にして樹脂を合成した。得られた非晶性ポリエステル樹脂A−2〜12、14〜18の物性は表1に示した。
Figure 0006824643
<結晶性ポリエステル樹脂の製造例1>
・1,10−デカンジオール(炭素数10の脂肪族ジオール):
46.9質量部(0.27モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・セバシン酸(炭素数10の脂肪族ジカルボン酸):
53.1質量部(0.26モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸スズ:
1.0質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、6時間反応させ、次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させて結晶性ポリエステル樹脂B−1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂B−1は、重量平均分子量13,000、示差走査熱量分析によるDSC曲線において、73℃に最大吸熱ピークを有した。
<結晶性ポリエステル樹脂の製造例2>
・1,10−デカンジオール(炭素数10の脂肪族ジオール):
37.6質量部(0.22モル;多価アルコール総モル数に対して85.0mol%)
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:13.6質量部(0.04モル;多価アルコール総モル数に対して15.0mol%)
・セバシン酸(炭素数10の脂肪族ジカルボン酸):
42.6質量部(0.21モル;多価カルボン酸総モル数に対して85.0mol%)
・テレフタル酸:
6.2質量部(0.04モル;多価カルボン酸総モル数に対して15.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸スズ:
1.0質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、6時間反応させ、次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させて結晶性ポリエステル樹脂B−2を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂B−2は、重量平均分子量13,000、示差走査熱量分析によるDSC曲線において、72℃に最大吸熱ピークを有した。
<結晶性ポリエステル樹脂の製造例3〜12>
アルコール成分、酸成分の種類を表2に記載の様に変更し、それ以外は、製造例1と同様にして結晶性ポリエステル樹脂B−3〜B−12を得た。これらの結晶性ポリエステル樹脂の物性を表2に示す。
Figure 0006824643
<着色剤1の合成例>
下記アミン化合物(Am1)0.721gのメタノール(MeOH)20mL溶液を5℃に冷却し、濃硫酸2mL、ニトロシル硫酸(40質量%)1.4mLを滴下した(ジアゾ化A液)。また別途、下記ピリドン化合物(P1)0.496gのメタノール(MeOH)20mL溶液を5℃に冷却し、これにジアゾ化A液を5℃以下の温度に保持されるようにゆっくりと滴下し、氷浴中で20分撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム水溶液を滴下し、pHを6に中和した後、クロロホルムで抽出した。その後、溶媒を留去して得られた固体をカラムクロマトグラフィーにより精製(展開溶媒:ヘプタン/酢酸エチル)し、さらにヘプタン溶液で再結晶して0.8gの下記式(S1)の構造を有する着色剤1を得た。
Figure 0006824643
なお、得られた着色剤1の同定は、MALDI‐TOF‐MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化‐飛行時間型質量分析、autoflex装置、ブルカー・ダルトニクス(株)製)を用いた分析方法によって行った。MALDI‐TOF‐MSにおいて検出イオンはネガティブモードを採用した。
MALDI−TOF−MSによる質量分析:m/z=618.612(M−H)
<着色剤2の合成>
ピリドン化合物(P1)の代わりに下記ピリドン化合物(P2)を使用した以外は、着色剤1と同様にして下記式(S2)の構造を有する着色剤2を得た。
Figure 0006824643
<着色剤3の合成>
アミン化合物(Am1)の代わりに下記アミン化合物(Am3)を使用し、ピリドン化合物(P1)の代わりに下記ピリドン化合物(P3)を使用した以外は、着色剤1と同様にして下記式(S3)の構造を有する着色剤3を得た。
Figure 0006824643
<着色剤4の合成>
アミン化合物(Am1)の代わりに下記アミン化合物(Am4)を使用し、ピリドン化合物(P1)の代わりに下記ピリドン化合物(P4)を使用した以外は、着色剤1と同様にして下記式(S4)の構造を有する着色剤4を得た。
Figure 0006824643
<着色剤5の合成>
アミン化合物(Am1)の代わりに下記アミン化合物(Am5)を使用し、ピリドン化合物(P1)の代わりに下記ピリドン化合物(P5)を使用した以外は、着色剤1と同様にして下記式(S5)の構造を有する着色剤5を得た。
Figure 0006824643
[実施例1]
<トナー1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂 A−1 90.0質量部
・結晶性ポリエステル樹脂 B−1 10.0質量部
・着色剤1 5.0質量部
・ビニル系樹脂重合体 5.0質量部
・炭化水素系ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 5.0質量部
・C.I.ピグメントイエロー180(PY180) 5.0質量部
・3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.3質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)を用いて、回転数20s−1、回転時間5分で混合した後、温度150℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、(株)池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、フロイント・ターボ(株)製)にて微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン(株)製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。運転条件は、分級ローター回転数を50.0s−1とした。
得られたトナー粒子100.0質量部に、下記の材料を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させトナー1を得た。
・イソブチルトリメトキシシラン15.0質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径50nmの酸化チタン微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン20.0質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径15nmの疎水性シリカ微粒子 1.0質量部
得られたトナー1は、示差走査熱量分析によるDSC曲線において、73℃に結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピーク、90℃にワックス成分由来の吸熱ピークを有した。
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe 62.7質量部
MnCO 29.5質量部
Mg(OH) 6.8質量部
SrCO 1.0質量部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した。その後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1,000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記のとおりである。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで直径0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0質量部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機(株))で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1,300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1,150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積基準のメジアン径(50%粒径、D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
<被覆樹脂1の調整>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して窒素ガスで系内を置換した。その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。得られた被覆樹脂1を30質量部、トルエン40質量部、メチルエチルケトン30質量部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック(CB。Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m/g、DBP吸油量75mL/100g)
上記材料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液1を得た。
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を充填コア粒子1の100質量部に対して樹脂成分として2.5質量部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積基準のメジアン径(50%粒径、D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
<二成分系現像剤1の製造例>
磁性キャリア1を92.0質量部に対し、トナー1を8.0質量部加え、V型混合機(V−20、(株)セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
以下の方法(1)〜(3)に従って、トナーの性能評価を行った
(1)低温定着性の評価
キヤノン(株)製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255のシアンステーションに二成分系現像剤1を入れた現像器を搭載し、定着器を取り外した状態で画像形成できるように改造を行った。そして、評価紙上に定着されていないトナー像(以下、未定着画像)を形成した。評価には、カラー複写機・プリンタ用普通紙 GF−C104(A4 104g/cm)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
実際には、FFh画像のトナーの紙上への載り量が1.2mg/cmとなるように現像条件を適宜調整し、A4縦評価紙先端から3cm、評価紙の中心の位置に2cm×10cmの未定着画像を形成した。未定着画像は低温低湿環境下(温度15℃/相対湿度10%)に24時間調湿した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
続いて、キヤノン(株)製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255から定着器を取り出し、プロセススピード、上下の定着部材温度を独立に制御できるよう定着試験用治具を低温低湿環境下(温度15℃/相対湿度10%)準備した。プロセススピードを350mm/秒に調整し、前記定着試験用治具の上ベルト温度を100℃〜200℃の範囲で5℃おきに調整した。下ベルト温度は100℃に固定した状態で、前記の調湿済み未定着画像を通紙した。定着器を通過させた定着画像を4.9kPaの荷重をかけたレンズクリーニングワイパー(ダスパー 小津産業(株)製)で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着温度とした。10%を超えて濃度低下がおこると定着できていないとの判定基準のもと、画像濃度低下率10%を超えない最も低い上ベルト設定温度を低温定着温度とし、下記の評価基準に従って評価した。評価結果を表4に示す。
(評価基準:低温定着性)
A:120℃未満
B:120℃以上135℃未満
C:135℃以上150℃未満
D:150℃以上
(2)耐ホットオフセット性の評価
低温定着の評価と同様に、キヤノン(株)製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255のシアンステーションに二成分系現像剤1を入れ評価用未定着画像を作成した。評価紙は、カラー複写機・プリンタ用普通紙 GF−C104(A4 104g/cm)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
FFh画像のトナーの紙上への載り量が0.12mg/cmとなるように現像条件を調整し、未定着のFFh画像を得た。
その後、低温定着性評価と同様に、キヤノン(株)製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255から取り外した定着器を改造した定着評価治具を用いて常温低湿環境(温度23℃/相対湿度5%)にて評価を行った。
画出し前の評価紙について反射率をリフレクトメータ(「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」、(有)東京電色製)によって測定し、5箇所測定した平均値をD(%)とした。上記外部定着器における定着温度を100〜220℃の範囲で5℃おきに調整し、各定着温度における定着画像の白地部についてリフレクトメータで反射率を測定し、最大値をD(%)とした。
そして、D(%)とD(%)の差が0.5%を超えない、最も高い定着温度を定着上限温度とし、下記の評価基準にて耐ホットオフセット性を評価した。評価結果を表4に示す。
(評価基準:耐ホットオフセット性)
A:210℃以上
B:180℃以上210℃未満
C:160℃以上180℃未満
D:160℃未満
(3)耐熱保存性の評価
評価トナーサンプル 5.0gが入った樹脂製カップ(100mL (株)サンプラテック製)を、過酷環境下(温度50℃/相対湿度50%)において、3日間静置した。その後、常温常湿環境下(温度23℃/相対湿度50%)に移し、1晩静置した。
測定装置としては、「パウダーテスターPT−X」(ホソカワミクロン(株)製)を使用し、目開き75μmの篩を用いて、常温常湿環境(温度23℃/相対湿度50%)下で行った。篩の振幅を1.00mm(peak−to−peak)になるように調整し、篩上に評価用のトナーをのせ、40秒間振動を加えた。その後、篩上に残ったトナーの凝集物の量から耐熱保存性を評価し、下記の評価基準にて耐熱保存性を評価した。評価結果を表4に示す。
(評価基準:耐熱保存性試験)
A:メッシュ上のトナー残量が0.20g以下である。
B:メッシュ上のトナー残量が0.20gを超え、0.40g以下である。
C:メッシュ上のトナー残量が0.40gを超え、0.60g以下である。
D:メッシュ上のトナー残量が0.60gを超えている。
[実施例2〜9]
非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を表3に記載の様に変更
した以外は、実施例1と同様にして、トナー2〜9を作製し、同様に二成分現像剤2〜9を作製した。
さらに、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
なお、実施例3〜9は、参考例として記載するものである。
[実施例10]
<トナー10の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂 A−3 90.0質量部
・結晶性ポリエステル樹脂 B−5 10.0質量部
・着色剤3 5.0質量部
・エステル系ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度70℃) 5.0質量部
・C.I.ピグメントイエロー180(PY180) 5.0質量部
・3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.3質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)を用いて、回転数20s−1、回転時間5分で混合した後、温度150℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、(株)池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、フロイント・ターボ(株)製)にて微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン(株)製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。運転条件は、分級ローター回転数を50.0s−1とした。
得られたトナー粒子100.0質量部に、下記の材料を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させトナー10を得た。
・イソブチルトリメトキシシラン15.0質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径50nmの酸化チタン微粒子 0.5質量部
・ヘキサメチルジシラザン20.0質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径15nmの疎水性シリカ微粒子 1.0質量部
得られたトナー10は、示差走査熱量分析によるDSC曲線において、70℃に結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピーク、70℃にワックス成分由来の吸熱ピークを有した。
なお、実施例10は、参考例として記載するものである。
[実施例11〜24]
非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を表3に記載の様に変更した以外は、実施例10と同様にして、トナー11〜24を作製し、同様に二成分現像剤11〜24を作製した。
さらに、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
なお、実施例11〜14は、参考例として記載するものである。
[実施例25]
<非晶性ポリエステル樹脂A−12微粒子分散液の製造例>
非晶性ポリエステル樹脂A−12:100質量部をテトラヒドロフラン150質量部に溶解した。このテトラヒドロフラン溶液を室温においてホモジナイザー(IKAジャパン製:ウルトラタラクス)にて10,000rpmで2分間攪拌しながら、界面活性剤として下記のイオン交換水1,000質量部を滴下した。
・水酸化カリウム5質量部およびドデシルベンゼン−スルホン酸ナトリウム10質量部を添加したイオン交換水
この混合溶液を約75℃に加温することによりテトラヒドロフランを除去した。その後、固形分が8%になるようにイオン交換水で希釈し、体積平均粒径0.09μmの非晶性ポリエステル樹脂A−12微粒子分散液を得た。
<結晶性ポリエステル樹脂B−8微粒子分散液の製造例>
前記非晶性ポリエステル樹脂A−12微粒子分散液の調製において、非晶性ポリエステル樹脂A−12を結晶性ポリエステル樹脂B−8に変更する以外は同様にして結晶性ポリエステル樹脂B−8微粒子分散液を得た。
<着色剤5微粒子分散液の製造例>
・着色剤5 10.0質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK) 1.5質量部
・イオン交換水 88.5質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)を用いて約1時間分散して、着色剤5を分散させてなる着色剤5微粒子の水系分散液を調製した。また、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装(株)製)を用いて測定したところ、0.20μmであった。
<色材微粒子分散液の製造例>
・色材(C.I.ピグメントイエロー180、PY180) 10.0質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK) 1.5質量部
・イオン交換水 88.5質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)を用いて約1時間分散して、色材を分散させてなる色材微粒子の水系分散液を調製した。また、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装(株)製)を用いて測定したところ、0.20μmであった。
<離型剤微粒子分散液の製造例>
・エステル系ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度60℃) 5.0質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK) 1.0質量部
・イオン交換水 89.0質量部
以上を撹拌装置付きの混合容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)へ循環しながらローター外径が3cm、クリアランスが0.3mmの剪断撹拌部位にて、下記の条件にて撹拌し、60分間分散処理した。
・ローター回転数19,000r/分、スクリーン回転数19,000r/分
その後、ローター回転数1000r/分、スクリーン回転数0r/分、冷却速度10℃/分の冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、離型剤微粒子の水系分散液を得た。また、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装(株)製)を用いて測定したところ、0.15μmであった。
<有機金属化合物微粒子分散液の製造例>
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 10.0質量部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK) 1.5質量部
イオン交換水 88.5質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)を用いて約1時間分散して、有機金属化合物を分散させてなる有機金属化合物微粒子の水系分散液を調製した。また、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装(株)製)を用いて測定したところ、0.30μmであった。
(トナー25の製造例)
・非晶性ポリエステル樹脂A−12微粒子分散液 100.00質量部(樹脂相当分)
・結晶性ポリエステル樹脂B−8微粒子分散液 5.00質量部(樹脂相当分)
・着色剤5微粒子分散液 5.00質量部(色剤相当分)
・色材微粒子分散液 5.00質量部(色剤相当分)
・離型剤微粒子分散液 5.00質量部(離型剤相当分)
・有機金属化合物微粒子分散液 1.00質量部(有機金属相当分)
・1.5質量%硫酸マグネシウム水溶液 10質量部
上記を、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。続いて、0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.1に調整した。その後、加熱用ウォーターバス中で45℃まで撹拌翼にて撹拌しながら加熱した。45℃で1時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.5μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。5質量%クエン酸三ナトリウム水溶液を40質量部加えた後、撹拌を継続しながら85℃まで昇温して90分間保持しコア粒子を融合させた。次いで、撹拌を継続しながら、ウォーターバス内に水を入れ、25℃まで冷却した。また、コア粒子の粒径をコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:ベックマン・コールター(株)製)で測定したところ、体積基準のメジアン径は5.8μmであった。
その後、ろ過・固液分離した後、水酸化ナトリウムでpHを8に調整した800質量部のイオン交換水を固形分に加え30分間撹拌洗浄した。その後再びろ過・固液分離を行った。続いて、800質量部のイオン交換水を固形分に加え30分間撹拌洗浄した。その後再びろ過・固液分離を行い、これを5回繰り返した。次に、得られた固形分を乾燥させることにより、トナー粒子25を得た。
得られたトナー粒子25の100質量部に、一次粒子の個数平均粒径15.0nmのシリカ微粒子 1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型)で回転数31.6s−1、回転時間5分混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させトナー25を得た。
さらに、実施例1と同様に二成分現像剤25を作製し、評価を行った。評価結果を表4に示す。
[実施例27]
非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を表3に記載の様に変更し、C.I.ピグメントイエロー180(PY180)をカーボンブラック(CB)に変更した。これらの変更以外は、実施例10と同様にして、トナー27を作製し、同様に二成分現像剤27を作製した。
さらに、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
[比較例1〜10]
非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を表3に記載の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較トナー1〜10を作製し、同様に比較二成分現像剤1〜10を作製した。
さらに、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
Figure 0006824643
Figure 0006824643

Claims (6)

  1. 非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
    該非晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を80mol%以上含むアルコール成分と、炭素数2以上14以下の直鎖状炭化水素の両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との縮重合体であり、該カルボン酸成分の総モル数に対して、該脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ4.5mol%以上35.0mol%以下含有し、
    該結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを80mol%以上含むアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を80mol%以上含むカルボン酸成分との縮重合体であり、
    該着色剤は、下記の着色剤1、着色剤2、着色剤4および着色剤5からなる群より選択されるいずれかの着色剤であり、更に、C.I.ピグメントイエロー180またはカーボンブラックを含有する、
    ことを特徴とするトナー。
    Figure 0006824643
  2. 該着色剤が、該着色剤1または該着色剤2である請求項1に記載のトナー。
  3. 該着色剤が、該着色剤1である請求項1に記載のトナー。
  4. 前記非晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を90mol%以上含むアルコール成分と、炭素数4以上8以下の直鎖状炭化水素の両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との縮重合体であり、該カルボン酸成分の総モル数に対して、該脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ10.0mol%以上30.0mol%以下含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー。
  5. 該脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸、ドデカン二酸、フマル酸およびヘキサデカン二酸からなる群より選択されるジカルボン酸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー。
  6. 前記結晶性ポリエステル樹脂は、脂肪族ジオールを85mol%以上含むアルコール成分と、脂肪族ジカルボン酸化合物を85mol%以上含むカルボン酸成分との縮重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナー。
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