JP6779623B2 - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

トナー及びトナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナー及びトナーの製造方法に関する。
電子写真法を用いた画像形成装置において、近年、プリントオンデマンド(POD)と呼ばれる、製版工程を経ずに直接印刷するデジタル印刷技術が注目されている。POD印刷では、様々な記録媒体(普通紙、厚紙、特殊紙)を用いて、1枚毎に内容を変えたバリアブル印刷や分散印刷にも対応していけることから、従来のオフセット印刷に対してアドバンテージがある。また、同時に省電力化やウェイトタイムの短縮化などの要望も高くなっている。これらに対応するために、トナーとしては低温定着性が求められている。さらに様々な使用環境下においても長期間にわたって安定した高品位な画像を出力するためには、トナーの帯電性が温度や湿度に影響されにくく、トナー帯電量の変化が小さいことが必要とされている。
低温定着性を達成する目的で、結着樹脂としてシャープメルト性に優れるポリエステル樹脂が従来用いられてきた。さらに近年においては、非晶性ポリエステル樹脂だけでなく、結晶性ポリエステル樹脂を使用するという提案が数多くされている。特許文献1では、低温定着性に優れ高い複写速度に対応すべく、結晶性ポリエステルセグメントを有する樹脂と層状ケイ酸塩を含有するトナーが提案されている。
トナーの帯電性改善のための提案も数多くされている。特許文献2及び特許文献3では、高湿環境における帯電安定性を確保するために、層状複水酸化物の塩を使用したトナーの提案がなされている。
特開2004−78180号公報 特許第4157525号公報 特開2012−133193号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、層状ケイ酸塩は、親水性が高いため高湿下での帯電低下が起こりやすく、画像濃度の変化が大きくなる場合があった。
また、特許文献2及び特許文献3に開示されている技術では、低温定着性が不十分なため、様々な記録媒体を高速出力することが困難であった。
上記のように、結晶性樹脂を用いる系においても、低温定着性と帯電安定性を同時に満足することできるトナーを得るには至っていない。
本発明の目的は、上記の課題を解決することを目的とする。結晶性材料のごとき可塑剤を用いたトナーにおいても、低温定着性に優れ、高湿環境下においても帯電安定性に優れたトナーを提供することである。
上記の課題は、下記の構成のトナーにより解決することができる。
すなわち、本発明によれば、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、層状複水酸化物塩及びワックスを有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記層状複水酸化物塩は、一般式[M 2+ 1−x 3+ (OH) ][A n− x/n ・yH O]で表される化合物であることを特徴とするトナーが提供される。
(式中、M 2+ は、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ca、Li、及びZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属の二価金属イオンを表す。M 3+ は、Al、Cr、Fe、Co、及びInからなる群から選択される少なくとも1つの金属の三価金属イオンを表す。A n− は、Cl 、NO 、及びCO 2− からなる群から選択される少なくとも1つのn価のアニオン、又はn価の有機アニオンを表す。)
また、本発明の他の態様によれば、前記トナーの製造方法であって、
前記トナー粒子は、前記非晶性ポリエステル樹脂、前記結晶性ポリエステル樹脂、前記層状複水酸化物塩及び前記ワックスを含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を経て製造されたトナー粒子であり、
前記層状複水酸化物塩は、一般式[M 2+ 1−x 3+ (OH) ][A n− x/n ・yH O]で表される化合物であることを特徴とするトナーの製造方法が提供される。
(式中、M 2+ は、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ca、Li、及びZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属の二価金属イオンを表す。M 3+ は、Al、Cr、Fe、Co、及びInからなる群から選択される少なくとも1つの金属の三価金属イオンを表す。A n− は、Cl 、NO 、及びCO 2− からなる群から選択される少なくとも1つのn価のアニオン、又はn価の有機アニオンを表す。)
本発明によれば、低温定着性及び高湿環境下においても帯電安定性を満足するトナーを提供することができる。
本発明のトナーの製造に用いることができる熱球形化処理装置の概略図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明のトナーは、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、層状複水酸化物塩及びワックスを有するトナー粒子を有することを特徴とする。なお、本発明における結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、吸熱ピークが観測される樹脂である。
上記のようなトナーを用いることで、低温定着性に優れ、かつ高湿環境下においてもトナーの帯電性が影響されにくく、トナー帯電量の変化が小さいことにより、長期間にわたって安定した高品位な画像を出力できるトナーを得るに至った。
本発明において、上記課題を解決するに至った理由を以下のように考えている。
低温定着性を改良するために、非昌性ポリエステル樹脂に対して可塑効果を有する結晶性ポリエステルを添加することが有効である。一方、結晶性を有する結晶性ポリエステルは、一般的に非晶性ポリエステル樹脂よりも電気抵抗が小さい。そのため、トナー中の結晶性ポリエステル樹脂の存在状態によっては、トナーの電気抵抗が小さくなりトナー帯電が不安定になりやすい。例えば、結晶性ポリエステル樹脂が大きなドメインで存在してしまうと、可塑効果が限定的となり、帯電性が安定しないトナーとなる。つまり、結晶性ポリエステル樹脂を使用する際に重要なことは、それぞれの樹脂の相溶度合いを調整することにより、トナー中で均一に分散させることである。それにより可塑効果が発現しやすく、かつ安定した帯電状態が得られる。
本発明のトナーは、層状複水酸化物塩及びワックスを含有している。層状複水酸化物塩は、層状の結晶構造を有する。そのため、層状複水酸化物塩が結晶性ポリエステル近傍に存在することにより、結晶性ポリエステルが大きなドメインになるのを抑制し、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を適度に調整することができる。さらに、ワックスは極性のあるポリエステル樹脂中に均一分散させることが難しい。そこで層状複水酸化物塩を用いることにより、結晶構造の層状部分近傍にワックスが存在することができ、トナー中に均一分散させることができる。その結果、トナーからワックスの染み出し性も均一となり、トナーの低温定着性をさらに向上させる。
上述の理由により、結晶性材料のごとき可塑剤を用いたトナーにおいても、層状複水酸化物塩を用いることにより、低温定着性に優れ、高湿環境下においても帯電安定性に優れたトナーが得られるに至った。
本発明においてその目的を達成するに好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
[非晶性ポリエステル樹脂]
本発明のトナーに用いられる非晶性ポリエステル樹脂は、芳香族ジオールを主成分としたアルコール成分と多価カルボン酸成分とを縮重合することにより得られることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂で用いられる芳香族ジオールとしては、特に限定されないが、下記式(A)で示されるビスフェノール誘導体及び下記式(B)で示されるジオール類が挙げられる。
Figure 0006779623
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜7である。)
Figure 0006779623
上記式(A)で示されるビスフェノール誘導体としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン。
また、場合により、他のジオール類を上記式(A)で示されるビスフェノール誘導体又は上記式(B)で示されるジオール類と併用することも可能である。他のジオール類としては例えば以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA。
その他、非晶性ポリエステル樹脂に用いることができるアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
上述のように、非晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分の主成分は、芳香族ジオールである。ここで、非晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分において、芳香族ジオールは、80mol%以上100mol%以下の割合で含有することが好ましく、90mol%以上100mol%以下の割合で含有することがより好ましい。
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価カルボン酸成分としては、以下の多価カルボン酸モノマーを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステル。
これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステル。
これらのうち、特に1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの2価のカルボン酸など及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
本発明では非晶性ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂を主成分とするならば他の樹脂成分を含有するハイブリッド樹脂であっても良い。例えば、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂とのハイブリッド樹脂が挙げられる。ハイブリッド樹脂のような、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニットとポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、以下のような方法が好ましい。
ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニット及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行う。
例えば、ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、本発明では非晶性ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂を主成分とするならば、上記のビニル系樹脂以外にも、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物を併用することができる。このような樹脂化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂。
本発明における非晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応させた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで所望のポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化またはエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。
また、本発明の非晶性ポリエステル樹脂のピーク分子量は8000以上13000以下であることが、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性を得ることができるという観点から好ましい。また、本発明の非晶性ポリエステル樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における優れた帯電安定性を得ることができるという観点から好ましい。さらに、本発明の非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが、優れた低温定着性と保存性を得ることができるという観点から好ましい。
また、本発明の非晶性ポリエステル樹脂は、高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H)と低分子量の非晶性ポリエステル樹脂(L)を混ぜ合わせて使用しても良い。高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H)と非晶性ポリエステル樹脂(L)の含有比率(H/L)は質量基準で10/90以上60/40以下であることが、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性を得ることができるという観点から好ましい。
高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H)のピーク分子量は10000以上20000以下であることが、優れた耐ホットオフセット性を得ることができるという観点から好ましい。また、高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H)の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における優れた帯電安定性を得ることができるという観点から好ましい。低分子量の非晶性ポリエステル樹脂(L)の数平均分子量は1500以上3500以下であることが、優れた低温定着性を得ることができるという観点から好ましい。また、低分子量の非晶性ポリエステル樹脂(L)の酸価は10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における優れた帯電安定性を得ることができるという観点から好ましい。
[結晶性ポリエステル樹脂]
本発明の結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを80mol%以上含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を80mol%以上含有するカルボン酸成分との縮重合により得られることが好ましい。炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを85mol%以上含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を85mol%以上含有するカルボン酸成分との縮重合により得られることがより好ましい。各成分の炭素数および含有量が前記特定の範囲であると、非晶性ポリエステル樹脂との相溶性をあげ、トナー中でより均一分散させることができる。それにより、トナーの低温定着性に寄与する。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上12以下であることがさらに好ましい。炭素数が前記特定の値より大きくすることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が進み易い。そのため、トナーの高温環境下での耐熱保存性が向上するとともに、トナーの強靭性が増し、電子写真工程の現像工程における外添剤の埋め込み等のトナー劣化の抑制となる。
脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましい。例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、が好ましく例示される。
本発明において、結晶性ポリエステルのアルコール成分として脂肪族ジオールを主成分とするならば、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を併せて用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、以下のものが挙げられる。
1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコール。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分として脂肪族ジオールを主成分とするならば、併せて1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えば以下のものが挙げられる。n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコールなどの1官能性アルコール。
一方、脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
本発明において、結晶性ポリエステルのカルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸を主成分とするならば、脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を併せて用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルなども含まれる。また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパンなどの脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルなどの誘導体なども含まれる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステルのカルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸を主成分とするならば、併せて1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば以下のものが挙げられる。安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸。
本発明における結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応させた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで所望のポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化またはエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、2−エチルヘキサン酸錫、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、2−エチルヘキサン酸錫、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化もしくはエステル交換反応または縮重合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全単量体を一括混合したりしてもよい。また低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりするなどの方法を用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.80以上1.20以下であることが好ましい。
[層状複水酸化物塩]
本発明の層状複水酸化物塩は、一般式[M2+ 1−x3+ (OH)][An− x/n・yHO]で表される化合物である(式中、M2+は、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ca、Li、Znの二価金属イオンを表し、M3+は、Al、Cr、Fe、Co、Inの三価金属イオンを表し、An−は、Cl、NO 、CO 2−のn価のアニオン、又は有機アニオンを表す)。
本発明における層状複水酸化物塩は、前記M2+として、Mg2+を含むことが好ましく、前記M3+として、Al3+を含むことが好ましい。層状複水酸化物塩中にMg2+又はAl3+を含むことにより、層状複水酸化物塩の層構造の熱安定性が向上する。そのため、例えば溶融混練法によるトナー製造時など、高温になった状態でもトナー中に安定して存在でき、前述した結晶性ポリエステルやワックスの分散安定化が効果的に得られる。
さらに、本発明における層状複水酸化物塩は、前記M2+としてMg2+を、前記M3+としてAl3+を同時に含むことがさらに好ましい。層状複水酸化物塩中のMg2+及びAl3+は、ポリエステル樹脂と部分的に金属架橋を形成すると考えられる。その結果、トナーの耐久性能が向上するため、耐久時の濃度変化が抑制される。
前記層状複水酸化物塩の原料は、主に市販されているハイドロタルサイトの無機アニオン(例、炭酸塩)である。本発明においては、前記無機アニオンを有機アニオンと置換することにより得られる層状の複水酸化物塩を用いることが好ましい。
前記層状複水酸化物塩における無機アニオンを有機アニオンへと置換することで、高い帯電安定性を達成できる。その理由は明確ではないが、筆者らは以下のように推察している。該有機アニオンが存在することで、そこが帯電サイトとなり高い帯電性を示す。それと同時に、無機アニオンの場合は吸湿性に富むために高湿環境下で帯電性が低下してしまうが、有機アニオンの場合は吸湿性が低く、高湿環境下での帯電性の低下を抑制できる。
有機アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。安息香酸アニオン、ナフトエ酸アニオン、4−t−ブチル安息香酸アニオン、フタル酸アニオン、イソフタル酸アニオン、スルホイソフタル酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、p−ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、2,2’−ジチオ安息香酸アニオン、t−ブチルサリチル酸アニオン、ジ−t−ブチルサリチル酸アニオン、3−ピロリン−2−カルボン酸アニオン、N−(4−カルボキシフェニル)ピロールアニオン、ピロール−2−カルボン酸アニオン、ピロール−3−カルボン酸アニオン、イミダゾール−1−カルボン酸アニオン、イミダゾール−2−カルボン酸アニオン、イミダゾール−4−カルボン酸アニオン、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸アニオン、2−イミダゾリジノン−4−カルボン酸アニオン、ピラゾール−4−カルボン酸アニオン、ピラゾール−3,5−ジカルボン酸アニオン、ピリジン−2−カルボン酸アニオン、ピリジン−3−カルボン酸アニオン、ピリジン−4−カルボン酸アニオン、ピリジン−2,3−ジカルボン酸アニオン、ピリジン−2,4−ジカルボン酸アニオン、ピリジン−2,5−ジカルボン酸アニオン、ピリジン−2,6−ジカルボン酸アニオン、ピリジン−3,4−ジカルボン酸アニオン、ピリジン−3,5−ジカルボン酸アニオン、ピリミジン−2−カルボン酸アニオン、ピリミジン−2,4−ジカルボン酸アニオン、ピリダジン−3,6−ジカルボン酸アニオン、ピリダジン−3−カルボン酸アニオン、ピラジン−2−カルボン酸アニオン、ピラジン−2,3−ジカルボン酸アニオン、2−ピロリジノン−5−カルボン酸アニオン、ピペリジン−2−カルボン酸アニオン、ピペリジン−3−カルボン酸アニオン、ピペリジン−4−カルボン酸アニオン、ピペラジン−2−カルボン酸アニオン、ピペラジン−2,3−ジカルボン酸アニオン。
本発明においては、有機アニオンとして安息香酸アニオンを少なくとも含有することが好ましく、高湿環境下での帯電性の低下抑制効果が特に顕著であった。
層状複水酸化物塩の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
[その他の荷電制御材]
本発明のトナーには、必要に応じて本発明の有機金属化合物以外の荷電制御剤をさらに含有させることもできる。この荷電制御剤としては、例えばネガ系荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩あるいはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩あるいはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。
[ワックス]
本発明のトナーは、ワックスを含有する。本発明のトナーに用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどのアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスなどの脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
前記ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下で使用されることが好ましい。ワックスの含有量がこの範囲にあるとき、高温でのホットオフセット性を維持に効率的に発揮することが可能となり易い。
また、トナーの保存性と高温オフセット性の両立の観点から、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上110℃以下であることが好ましい。
[着色剤]
本発明のトナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタ着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタ着色染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料。
シアン着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアン着色染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロー着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロー着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
上記着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
〔磁性体〕
本発明のトナーは磁性トナーであっても非磁性トナーであっても良い。磁性トナーとして用いる場合は、磁性体として磁性酸化鉄を用いることが好ましい。磁性酸化鉄としては、マグネタイト,マグヘマタイト,フェライトなどの酸化鉄が用いられる。トナーに含有される磁性酸化鉄の量は、結着樹脂100質量部に対して、25.0質量部以上95.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30.0質量部以上45.0質量部以下である。
〔流動性向上剤〕
本発明のトナーには、無機微粉体などの流動性向上剤を用いることができる。流動性向上剤としては、以下のものが挙げられる。フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末などのフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどの微粉末シリカ;これらのシリカをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、又はシリコーンオイルなどにより表面処理した処理シリカ。好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、乾式法シリカ又はヒュームドシリカである。
その中でも、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体が好ましく用いられる。処理シリカ微粉体は、メタノール滴定試験によって滴定された疎水化度が30以上98以下であることが好ましい。
シリカ微粉体の疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応する有機ケイ素化合物、あるいはシリカ微粉体を物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理する方法が挙げられる。好ましい方法は、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法である。有機ケイ素化合物としては、以下のものが挙げられる。ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1−ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、およびジメチルポリシロキサン。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
シリカ微粉体は、シリコーンオイルによって処理されていても良く、また、シリコーンオイルと上記有機ケイ素化合物とを併用して処理されていても良い。シリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30mm/秒以上1000mm/秒以下であるものが好ましい。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルによるシリカ微粉体の疎水化処理の方法としては、以下の方法が挙げられる。シランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて直接混合する方法;ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法。あるいは適当な溶剤中にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法。シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で温度200℃以上(より好ましくは250℃以上)で加熱し、表面のコートを安定化させたものがより好ましい。
無機微粉体は、トナー粒子100.0質量部に対して0.1質量部以上12.0質量部以下用いることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上8.0質量部以下である。
[その他外添剤]
本発明では、流動性向上や摩擦帯電量調整のために、その他の外添剤が添加されていてもよい。
当該外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウムなどの無機微粒子が好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーなどの公知の混合機を用いることができるが、混合できればよく、特に装置は限定されるものではない。
[キャリア]
本発明のトナーは、長期にわたり安定した画像が得られるという点で、磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として用いることが好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、あるいは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、希土類などの金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライトなどの磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持する結着樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)など、一般に公知のものを使用できる。
[製造方法]
本発明のトナーの製造方法は、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知のトナー製造方法であれば特に限定されないが、原材料の優れた分散性を得ることができるという観点から溶融混練法が好ましい。
溶融混練法は、トナー粒子の原材料であるトナー組成物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕することを特徴とする。製造方法の例を挙げて説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、ポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂B、有機金属化合物、必要に応じてワックス、着色剤などの他の成分を、所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に他原材料などを分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機((株)神戸製鋼所製)、TEM型2軸押出機(東芝機械(株)製)、PCM混練機((株)池貝製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロールなどで圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどの粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業(株)製)、スーパーローター(日清エンジニアリング(株)製)、ターボ・ミル(フロイント・ターボ(株)製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業(株)製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン(株)製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン(株)製)、ファカルティ(ホソカワミクロン(株)製)などの分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
他の製造方法として乳化凝集法について説明する。
乳化凝集法とは、目的の粒子径に対して、十分に小さい樹脂微粒子を前もって準備し、その樹脂微粒子を水系媒体中で凝集することによりコア粒子を製造する製造方法である。乳化凝集法では、樹脂微粒子の乳化工程、凝集工程、融合工程、冷却工程、洗浄工程を経てトナー粒子が製造される。また必要に応じて、冷却工程後にシェル化工程を加え、コアシェルトナーにすることもできる。
<樹脂微粒子の乳化工程>
ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂微粒子は公知の方法で調製できる。例えば、前記樹脂を有機溶剤に溶かして水系媒体に添加し、界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水系媒体に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。溶解させるために使用する有機溶剤としては、前記樹脂を溶解させるものであればどのようなものでも使用可能であるが、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルムなどが優れた溶解性を有するという観点から好ましい。
また、水系媒体中に前記樹脂と界面活性剤、塩基などを加え、クレアミックス、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの高速剪断力をかける分散機により実質的に有機溶媒を含まない水系媒体で乳化分散することが環境負荷の点からこの好ましい。特に、沸点が100℃以下の有機溶剤の含有量が、100μg/g以下であることが好ましい。上記の範囲外の場合、トナーを製造する際、有機溶剤を除去、回収する工程が新たに必要になり、廃水処理対策に負荷がかかる。なお水系媒体中の有機溶剤含有量はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定することができる。
乳化時に使用する界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、以下のものが挙げられる。硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系などのアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型などのカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系などの非イオン系界面活性剤。当該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は0.05μm以上1.0μm以下が好ましく、0.05μm以上0.4μm以下がより好ましい。1.0μm超ではトナー粒子として適切な体積基準のメジアン径である4.0μm以上7.0μm以下のトナー粒子を得ることが困難になる。なお体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA−EX150:日機装(株)製)を使用することで測定可能である。
<凝集工程>
凝集工程とは、上述の樹脂微粒子、色材微粒子、離型剤微粒子を必要量に応じて混合し混合液を調製し、ついで、調製された混合液中に含まれる粒子を凝集し、凝集体を形成させる工程である。当該凝集体を形成させる方法としては、例えば凝集剤を上記混合液中に添加・混合し、温度、機械的動力などを適宜加える方法が好適に例示できる。
上記凝集剤としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどの1価の金属の金属塩;カルシウム、マグネシウムなどの2価の金属の金属塩;鉄、アルミニウムなどの3価の金属の金属塩があげられる。
前記凝集剤の添加・混合は、混合液中に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で上記混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。上記混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサーなどを用いて行うことができる。
ここで形成される凝集体の重量平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナー粒子の重量平均粒径と同じ程度になるよう4.0μm以上7.0μm以下に制御するとよい。制御は、例えば、上記凝集剤などの添加・混合時の温度と上記撹拌混合の条件を適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。なお、トナー粒子の粒度分布はコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:ベックマン・コールター(株)製)にて測定できる。
<融合工程>
融合工程とは、上記凝集体を、樹脂のガラス転移点(Tg)以上に加熱し融合することで、凝集体表面を平滑化させた粒子を製造する工程である。一次融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤などを適宜投入することができる。
キレート剤の例としては、例えば以下のものが挙げられる。エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩などのアルカリ金属塩、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、COOH及びOHの両方の官能性を含む多くの水溶性ポリマー類(高分子電解質)。
上記加熱の温度としては、凝集体に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)から、樹脂が熱分解する温度の間であればよい。加熱・融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。すなわち、加熱・融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分〜10時間である。
<冷却工程>
冷却工程とは、上記粒子を含む水系媒体の温度を、コア用樹脂のガラス転移点(Tg)より低い温度まで冷却する工程である。冷却をTgより低い温度まで行わないと、粗大粒子が発生してしまう。具体的な冷却速度は0.1℃/分以上50℃/分以下である。
<シェル化工程>
また本発明では必要に応じて、下記の洗浄乾燥工程の前にシェル化工程を入れることができる。シェル化工程はこれまでの工程で作製した粒子に、樹脂微粒子を新たに添加し付着させて、シェル化させる工程である。
ここで添加する結着樹脂微粒子はコアに使用した結着樹脂微粒子と同一の構造でも良いし、異なる構造の結着樹脂微粒子でも良い。
このようなシェル層を構成する樹脂としては、特に限定はなく、トナーに用いられる公知の樹脂、例えばポリエステル樹脂、スチレン−アクリル共重合体などのビニル系重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂などを用いることができる。なかでも、ポリエステル樹脂またはスチレン−アクリル共重合体が好ましく、優れた定着性及び耐久性を得ることができるという観点から、ポリエステル樹脂がより好ましい。ポリエステル樹脂は、主鎖中に剛直な芳香環を有する場合、スチレン−アクリル共重合体のようなビニル系重合体にくらべ可撓性を有するため、ビニル系重合体より低分子量のものであっても同等の機械的強度を付与できる。そのため、低温定着性に適した樹脂としてもポリエステル樹脂が好ましい。
本発明においては、上記のシェル層を構成する結着樹脂は単独で用いても良いが、2種以上組み合わせて用いてもよい。
<洗浄乾燥工程>
上記工程を経て作製した粒子を、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpHを調整されたイオン交換水で洗浄ろ過を行い、続いて、イオン交換水で洗浄、ろ過を複数回行う。その後、乾燥し、乳化凝集トナー粒子を得ることができる。
また、本発明では、必要に応じ、上記、溶融混練法、又は乳化凝集製法などにより得られたトナー粒子の表面に、無機微粉体や樹脂粒子などの添加剤を固着させることが好ましい。トナー粒子と添加剤とを混合分散させ、その分散させた状態で熱風による表面処理を行うことによって添加剤をトナー粒子の表面に固着させることができる。
例えば、図1で表される表面処理装置を用いて熱風により表面処理を行い、必要に応じて分級をすることによりトナーを得ることができる。
原料定量供給手段101により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段102により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管103に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材104により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管105に導かれ熱処理が行われる処理室106に導かれる。
このとき、処理室に供給された混合物は、処理室内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段109によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された混合物は、処理室内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された混合物を熱処理するための熱は、熱供給手段107から供給され、分配部材112で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材113により、処理室内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材113が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。
処理室内に供給される熱風は、熱風供給手段107の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段の出口部における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を抑制しつつ、トナー粒子を均一に球形化処理することが可能となる。このときの円形度としては、0.955以上0.980以下であることが好ましい。熱風は熱風供給手段出口111から供給される。
更に熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段108から供給される冷風によって冷却され、冷風供給手段108から供給される温度は−20℃〜30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、混合物の均一な球形化処理を阻害することなく、熱処理トナー粒子の融着や合一を抑制することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m以上15.0g/m以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室の下端にある回収手段110によって回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口114は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、表面処理装置の回収手段110は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段108から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体供給口から供給される熱処理前トナー粒子の旋回方向、冷風供給手段から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、熱処理前トナー粒子に強力な遠心力がかかり、熱処理前トナー粒子の分散性が更に向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理トナー粒子を得ることができる。
その後、必要に応じ選択された無機微粉体や樹脂粒子などの外部添加剤を加えて混合他の無機微粒子を外添し、流動性付与、帯電安定性を向上させてもよい。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。
次に、本発明に関わる各物性の測定方法について記載する。
<非晶性ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)の測定方法>
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとなるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム(株)製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下のとおりである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/分
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
<結晶性ポリエステル及び非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量の測定>
樹脂のTHF可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mLの流量で流し、THF試料溶液を約100μL注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー(株)製あるいは昭和電工(株)製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば以下の組み合わせが挙げられる。昭和電工(株)製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー(株)製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せ。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料50mgをTHF10mL中に入れ、25℃で数時間静置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。なお、THF中における静置時間の合計が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー(株)製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。
<結晶性ポリエステル樹脂及びワックスの融点の測定>
結晶性ポリエステル樹脂、ワックスの融点は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定したDSC曲線において、最大吸熱ピークのピーク温度を融点とする。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。なお、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピーク温度を融点とする。
<トナーの体積平均粒径(D4)の測定>
トナーの体積平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムを脱イオン水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)を用いることができる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の(1)〜(7)のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mLの丸底ビーカー内に前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去する。
(2)ガラス製の100mLの平底ビーカー内に前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤を脱イオン水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。分散剤としては「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を使用する。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス(株)製)の水槽内に所定量の脱イオン水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液中に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカー内に、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、体積平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が体積平均粒径(D4)である。
<トナーの平均円形度の測定方法>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス(株)製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス(株)製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512画素の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長Lなどが計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200〜1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
具体的な測定方法は、以下のとおりである。まず、ガラス製の容器中にあらかじめ不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」((株)ヴェルヴォクリーア製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に該コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した該フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス(株)製)を使用した。該手順に従い調整した分散液を該フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を指定することにより、その範囲の粒子の個数割合(%)、平均円形度を算出することができる。トナーの平均円形度は、円相当径1.98μm以上39.96μm以下とし、トナーの平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス(株)による校正作業が行われた、シスメックス(株)が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.98μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
以下、製造例及び実施例により本発明を説明する。以下の説明において、部数は質量部基準である。
<非晶性ポリエステル樹脂の製造例>
(低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)の製造例1)
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:72.0質量部
(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:28.0質量部
(0.17モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒): 0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:3質量部
(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させた。そして、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が94℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、(第2反応工程)、低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)−1を得た。得られた低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)−1の軟化点(Tm)は94℃、ガラス転移温度(Tg)は57℃であった。
(低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)の製造例2)
低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)の製造例1において、
エステル化触媒を、2−エチルヘキサン酸錫:0.5質量部から、ジオクチル錫オキサイド:0.3質量部に変更し、
アルコール成分を、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから、下記式(C)であらわされる1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンに変更した、以外は同様にして低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)−2を得た。
得られた低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)−2の軟化点(Tm)は93℃、ガラス転移温度(Tg)は56℃であった。
Figure 0006779623
(高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)の製造例1)
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:72.3質量部
(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸: 18.3質量部
(0.11モル;多価カルボン酸総モル数に対して65.0mol%)
・フマル酸:2.9質量部
(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して15.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸: 6.5質量部
(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させた。そして、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が132℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、(第2反応工程)、高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)−1を得た。得られた高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)−1の軟化点(Tm)は132℃、ガラス転移温度(Tg)は61℃であった。
Figure 0006779623
<結晶性ポリエステル樹脂の製造例1>
・1,6−ヘキサンジオール 50.0質量部
・ドデカン二酸 50.0質量部
・ジオクチル酸錫 1.0質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、6時間反応させ、次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させてポリエステル樹脂B−1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂1は、重量平均分子量10,000、示差走査熱量分析によるDSC曲線において、70℃に最大吸熱ピークを有した。
<結晶性ポリエステル樹脂の製造例2〜8>
アルコール成分、酸成分の種類を表2に記載の様に変更し、それ以外は、製造例1と同様にして結晶性ポリエステル樹脂2〜8を得た。これらのポリエステル樹脂Bの物性を表2に示す。
Figure 0006779623
<層状複水酸化物塩の製造例1>
ビーカー中に下記材料を秤量した。
Mg−Al水酸化物炭酸塩(化学量論のMg:Al比=2:1) 10g
イオン交換水 100g
その後、70℃で1時間、マグネチックスターラーで攪拌し、水酸化物炭酸塩懸濁液1を作製した。
次に、下記材料をビーカー中に調製し、攪拌した。
イオン交換水 100g
安息香酸 3g
その後、4Nの水酸化ナトリウム水溶液をpH8になるように滴下し、安息香酸水溶液1を作製した。
Mg−Al水酸化物炭酸塩懸濁液1に安息香酸水溶液1を添加し、70℃で6時間攪拌した。その後、メンブレンフィルターを用い懸濁液を濾過し、イオン交換水で洗浄した。さらに、洗浄された固体は真空において70℃で6時間乾燥し、層状複水酸化物塩1を得た。
<層状複水酸化物塩の製造例2〜5>
水酸化物炭酸塩、有機アニオンの種類を表3に記載の様に変更し、それ以外は、製造例1と同様にして層状複水酸化物塩2〜5を得た。
Figure 0006779623
[実施例1]
<トナー1の製造例>
・低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)−1 75.0質量部
・高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)−1 25.0質量部
・結晶性ポリエステル樹脂1 5.0質量部
・層状複水酸化物塩1 4.0質量部
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度90℃)5.0質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.00質量部
前記処方で示した原材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)を用いて、回転数20s−1、回転時間5分で混合した後、温度125℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、(株)池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、フロイント・ターボ(株)製)にて微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン(株)製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン(株)製)の運転条件は、分級ローター回転数を50.0s−1で分級を行った。得られたトナー粒子は、重量平均粒径(D4)が5.9μmであった。
得られたトナー粒子 100質量部に、一次平均粒子径115nmのシリカ微粒子を5.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で、回転数30s−1、回転時間5分で混合した。得られた混合物を用い、図1で示す表面処理装置によって熱処理を行い熱処理トナー粒子を得た。運転条件はフィード量=5kg/時とし、また、熱風温度C=210℃、熱風流量=6m/分、冷風温度E=5℃、冷風流量=4m/分、冷風絶対水分量=3g/m、ブロワー風量=20m/分、インジェクションエア流量=1m/分とした。得られた処理トナー粒子は、平均円形度が0.962、重量平均粒径(D4)が6.1μmであった。
得られたトナー粒子100.0質量部に、イソブチルトリメトキシシラン15.0質量%で表面処理した一次平均粒子径50nmの酸化チタン微粒子0.5質量部、及びヘキサメチルジシラザン20.0質量%で表面処理した一次平均粒子径15nmの疎水性シリカ微粒子1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製FM−75型)で混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させトナー1を得た。
得られたトナー1は、示差走査熱量分析によるDSC曲線において、70℃に結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピーク、90℃にワックス成分由来の吸熱ピークを有した。
前記トナー1とシリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(個数平均粒径35μm)とで、トナー濃度が9質量%になるようにV型混合機(V−10型:(株)徳寿製作所)で0.5s−1、回転時間5分で混合し、二成分系現像剤1を得た。
二成分系現像剤1を用い、後述する評価を行い結果を表5に示す。
[実施例2〜6]
表4に記載の様に、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、熱処理工程を変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー2〜6を作製し、同様に二成分現像剤2〜6を作製した。さらに、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
Figure 0006779623
<トナー7の製造例>
<高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)微粒子分散液(1)の製造例>
高分子量非晶性ポリエステル樹脂(1)−1を100質量部をテトラヒドロフラン150質量部に溶解した。このテトラヒドロフラン溶液を室温においてホモジナイザー(IKAジャパン製:ウルトラタラクス)にて10000rpmで2分間攪拌しながら、界面活性剤として水酸化カリウム5質量部およびドデシルベンゼン−スルホン酸ナトリウム10質量部を添加したイオン交換水1000質量部を滴下した。この混合溶液を約75℃に加温することによりテトラヒドロフランを除去した。その後、固形分が8%になるようにイオン交換水で希釈し、体積平均粒径0.09μmの高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)微粒子分散液(1)を得た。
<低分子量結晶性ポリエステル樹脂(L)微粒子分散液(1)及び(2)の製造例>
高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)−1を低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)−1に変更する以外は、高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)微粒子分散液(1)の製造製と同様にして、低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)微粒子分散液(1)を得た。
高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)−1を低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)−2に変更する以外は、高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)微粒子分散液(1)の製造製と同様にして、低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)微粒子分散液(2)を得た。
<結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(1)〜(4)の製造例>
前記高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)微粒子分散液(1)の調製において、前記高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)−1を結晶性ポリエステル樹脂5〜8に変更する以外は同様にして結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(1)〜(4)を得た。
<層状複水酸化物塩微粒子分散液(1)の製造例)
層状複水酸化物塩1 10.0質量部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK) 1.5質量部
イオン交換水 88.5質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)を用いて約1時間分散して、層状複水酸化物塩を分散させて得られる水系分散液を調製した。また、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装(株)製)を用いて測定し、0.30μmであった。
<層状複水酸化物塩分散液(2)〜(5)の製造例>
前記層状複水酸化物塩(1)の調製において、前記層状複水酸化物塩1を層状複水酸化物塩2〜5に変更する以外は同様にして層状複水酸化物塩分散液(2)〜(5)を得た。
<色材微粒子分散液の製造例>
色材(シアン顔料 大日精化工業(株)製:Pigment Blue 15:3) 10質量部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK) 1.5質量部
イオン交換水 88.5質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)を用いて約1時間分散して、色材を分散させて得られる色材微粒子の水系分散液を調製した。また、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装(株)製)を用いて測定し、0.20μmであった。
<離型剤微粒子分散液の製造例>
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度90℃)5.0質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK) 1.0質量部
イオン交換水 89質量部
以上を撹拌装置付きの混合容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)へ循環しながらローター外径が3cm、クリアランスが0.3mmの剪断撹拌部位にて、ローター回転数19000r/分、スクリーン回転数19000r/分の条件にて撹拌し、60分間分散処理した後、ローター回転数1000r/分、スクリーン回転数0r/分、冷却速度10℃/分の冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、離型剤微粒子の水系分散液を得た。また、体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装製)を用いて測定し、0.15μmであった。
(トナー粒子7の製造例)
・低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)微粒子分散液(1) 75.0質量部(樹脂相当分)
・高分子量非晶性ポリエステル樹脂(H)微粒子分散液(1) 25.0質量部(樹脂相当分)
・結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(1) 5.0質量部(樹脂相当分)
・層状複水酸化物塩分散液(1) 4.0質量部(有機金属相当分)
・離型剤微粒子分散液 5.0質量部(離型剤相当分)
・色剤微粒子分散液 5.0質量部(色剤相当分)
・1.5質量%硫酸マグネシウム水溶液 10質量部
上記を、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。続いて、0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.1に調整した。その後、加熱用ウォーターバス中で45℃まで撹拌翼にて撹拌しながら加熱した。45℃で1.5時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.7μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。5質量%クエン酸三ナトリウム水溶液40質量部加えた後、撹拌を継続しながら85℃まで昇温して90分間保持しコア粒子を融合させた。次いで、撹拌を継続しながら、ウォーターバス内に水を入れ、25℃まで冷却した。また、コア粒子の粒径をコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:ベックマン・コールター(株)製)で測定したところ、体積基準のメジアン径は5.8μmであった。
その後、ろ過・固液分離した後、水酸化ナトリウムでpHを8に調整した800質量部のイオン交換水を固形分に加え30分間撹拌洗浄した。その後再びろ過・固液分離を行った。続いて、800質量部のイオン交換水を固形分に加え30分間撹拌洗浄した。その後再びろ過・固液分離を行い、これを5回繰り返した。次に、得られた固形分を乾燥させることにより、トナー粒子7を得た。
得られたトナー粒子7の100質量部に、一次平均粒子径15.0nmのシリカ微粒子 1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型)で回転数31.6s−1、回転時間5分混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させトナー7を得た。
<二成分現像剤7の製造例>
前記トナー7とシリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(個数平均粒径35μm)とで、トナー濃度が9質量%になるようにV型混合機(V−10型:(株)徳寿製作所)で0.5s−1、回転時間5分で混合し、二成分系現像剤7を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
[実施例8〜15 及び 比較例1及び2]
低分子量非晶性ポリエステル樹脂(L)、結晶性ポリエステル樹脂及び層状複水酸化物塩を、表4に記載の様に変更した以外は、実施例7と同様にして、トナー8〜15及び比較トナー1及び2を作製し、同様に二成分現像剤8〜17を作製した。
さらに、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
[画像評価]
画像形成装置として、キヤノン(株)製フルカラー複写機imagePRESS C800を用いた。高温高湿環境下(温度30℃/相対湿度80%、以下「H/H環境」とも表す)において2万枚(A4横通紙)の耐久画像出力試験を行い、以下の方法で評価を行った。
なお、2万枚連続通紙時間中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととする。耐久画像は、画像の印字比率は5%とし、初期の画像濃度が1.45となるように現像バイアスを調整した。耐久及び評価には、コピー普通紙CS−680(A4、坪量68g/m2、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
以下の方法に従って、トナーの性能評価を行った。
<耐久画像濃度の評価>
画像濃度の評価は、H/H環境での耐久画像出力試験後に、A3紙(コピー普通紙CS−680、A3、坪量68g/m2、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)全面にベタ画像を3枚出力し、3枚目の画像を評価に用いた。分光濃度計500シリーズ(X−Rite社)を用いて濃度測定を行い、5点の平均値をとって画像濃度とし、初期画像の濃度と比較し、下記の指標で判断した。評価結果を表5に示す。
(評価基準)
A:耐久画像出力試験後の画像濃度維持率が90%以上
B:耐久画像出力試験後の画像濃度維持率が80%以上90%未満
C:耐久画像出力試験後の画像濃度維持率が70%以上80%未満
D:耐久画像出力試験後の画像濃度維持率が60%以上70%未満
E:耐久画像出力試験後の画像濃度維持率が60%未満
<H/H環境静置後の画像濃度の評価>
H/H環境での耐久画像出力試験後、さらに同環境にて3日間静置後、A3紙全面にベタ画像を10枚出力し、3枚目と10枚目の画像を評価に用いた。分光濃度計500シリーズ(X−Rite社)により濃度測定を行い、5点の平均値をとって画像濃度とし、耐久初期の画像濃度と比較し、下記の指標で判断した。評価結果を表5に示す。
(評価基準)
A:静置後の画像濃度維持率が90%以上
B:静置後の画像濃度維持率が80%以上90%未満
C:静置後の画像濃度維持率が70%以上80%未満
D:静置後の画像濃度維持率が60%以上70%未満
E:静置後の画像濃度維持率が60%未満
<定着性評価>
キヤノン(株)製フルカラー複写機imagePRESS C1+のシアンステーションに上記二成分系現像剤を入れた現像器を搭載し、定着温度を取り外した状態で画像形成できるように改造し、未定着画像を形成した。評価には、高白色用紙:GF−C209(A4、坪量209g/m、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
FFh画像(以下、ベタ部)のトナーの紙上への載り量が1.2mg/cmとなるように現像条件を適宜調整し、A4評価紙先端から3cm、評価紙中心の位置に2cm×10cmのベタ未定着画像を形成した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目である。未定着画像は常温常湿環境下(温度23℃/相対湿度50%、以下「N/N環境」とも表す)に24時間静置した。
続いてキヤノン(株)製フルカラー複写機imagePRESS C800から定着器を取り出し、プロセススピード、上下の定着部材温度を独立に制御できるように改造した定着試験用治具を用いN/N環境下にて準備した。プロセススピードを450mm/秒に調整し、下ベルト温度は90℃に固定した状態で、前記定着試験用治具の上ベルト温度を100〜200℃の範囲で5℃おきに調整した。前記の調湿済み未定着画像を通紙した。定着器を通過させた定着画像を4.9kPaの荷重をかけたレンズクリーニングワイパー(ダスパー 小津産業(株)製)で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着温度とした。10%を超えて濃度低下がおこると定着できていないとの判定基準のもと、画像濃度低下率10%を超えない最も低い上ベルト設定温度を定着開始温度とし、下記の評価基準に従って評価した。評価結果を表5に示す。
(評価基準)
A:120℃未満
B:120℃以上140℃未満
C:140℃以上160℃未満
D:160℃以上180℃未満
E:180℃以上
Figure 0006779623
101 原料定量供給手段、 102 圧縮気体流量調整手段
103 導入管、 104 突起状部材
105 供給管、 106 処理室
107 熱風供給手段、 108 冷風供給手段
109 規制手段、 110 回収手段
111 熱風供給手段出口、 112 分配部材
113 旋回部材、 114 粉体粒子供給口

Claims (8)

  1. 非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、層状複水酸化物塩及びワックスを有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記層状複水酸化物塩は、一般式[M2+ 1−x3+ (OH)][An− x/n・yHO]で表され
    前記非晶性ポリエステル樹脂は、
    芳香族ジオールを80mol%以上含有したアルコール成分と、
    多価カルボン酸成分と
    を縮重合して得られた非晶性ポリエステル樹脂であり、
    前記結晶性ポリエステル樹脂は、
    炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを80mol%以上含有するアルコール成分と、
    炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を80mol%以上含有するカルボン酸成分と
    を縮重合して得られた結晶性ポリエステル樹脂である
    ことを特徴とするトナー。
    (式中、M2+は、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ca、Li、及びZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属の二価金属イオンを表す。M3+は、Al、Cr、Fe、Co、及びInからなる群から選択される少なくとも1つの金属の三価金属イオンを表す。An−は、Cl、NO 、及びCO 2−からなる群から選択される少なくとも1つのn価のアニオン、又はn価の有機アニオンを表す。)
  2. 前記層状複水酸化物塩は、前記M2+としてMg2+を少なくとも含有する請求項1に記載のトナー。
  3. 前記層状複水酸化物塩は、前記M3+としてAl3+を少なくとも含有する請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記層状複水酸化物塩は、前記有機アニオンとして安息香酸アニオンを少なくとも含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナー。
  5. 前記脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上12以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 前記ワックスが、炭化水素系ワックスである請求項1〜のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載のトナーの製造方法であって、
    前記トナー粒子は、前記非晶性ポリエステル樹脂、前記結晶性ポリエステル樹脂、前記層状複水酸化物塩及び前記ワックスを含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を経て製造されたトナー粒子であり、
    前記層状複水酸化物塩は、一般式[M2+ 1−x3+ (OH)][An− x/n・yHO]で表される化合物であり、
    前記非晶性ポリエステル樹脂は、
    芳香族ジオールを80mol%以上含有したアルコール成分と、
    多価カルボン酸成分と
    を縮重合して得られた非晶性ポリエステル樹脂であり、
    前記結晶性ポリエステル樹脂は、
    炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを80mol%以上含有するアルコール成分と、
    炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を80mol%以上含有するカルボン酸成分と
    を縮重合して得られた結晶性ポリエステル樹脂である
    ことを特徴とするトナーの製造方法。
    (式中、M2+は、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ca、Li、及びZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属の二価金属イオンを表す。M3+は、Al、Cr、Fe、Co、及びInからなる群から選択される少なくとも1つの金属の三価金属イオンを表す。An−は、Cl、NO 、及びCO 2−からなる群から選択される少なくとも1つのn価のアニオン、又はn価の有機アニオンを表す。)
  8. 前記トナー粒子を熱処理する工程をさらに有する請求項に記載のトナーの製造方法。
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